JP4852807B2 - ウイルス検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウイルスを特異的に捕捉する方法と、核酸増幅反応に用いることができる高純度のウイルス核酸溶液の調製法によって、簡便、迅速にウイルスを検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR(Polymerase Chain Reaction)法に代表される核酸増幅のためには、これに先立ってウイルスを含む生体試料から核酸を抽出する操作が必要である。生体試料からの核酸抽出法には様々な方法が用いられているが、煩雑な操作と長時間を要し、操作中のコンタミネーションの機会が多かった。
このような、核酸抽出と核酸増幅を簡略化する目的で、生体試料に界面活性剤を含有する核酸増幅反応液を添加する核酸合成法も提案されている(特開平9-187277号公報、特開平10-80279号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような生体試料を直接界面活性剤を含有する核酸増幅反応液と混合し核酸増幅を行う方法では、生体試料中に存在するウイルス以外の不純物の量を抑制する必要のため、5μl程度のごく少量の生体試料を用いるか、予めウイルス等を濃縮する必要があった。通常行われる数百μlの生体試料から核酸抽出し、核酸増幅する場合に比較して、5μl程度の生体試料を用いて直接核酸増幅する場合は、ウイルス数が低い検体においては検出不十分となることが多かった。また、予めウイルス等を濃縮する場合は、通常行われる数100μl程度の生体試料から核酸抽出した場合と同等かそれ以上の作業時間が必要となり、核酸抽出と核酸増幅の簡略化のメリットは生じなかった。
さらに、上記公報に例示されているTween、NP-40、Triton X100等の界面活性剤では、ウイルスの破壊効果が不十分であり、検出感度が非常に低いことが多かった。
そこで本発明は、ウイルス含有生体試料中のウイルスの核酸を簡便に、感度良く増幅できる事に基づき、ウイルス核酸を検出する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【発明を解決するための手段】
本発明は、下記a〜dの工程を含むことを特徴とするウィルス検出方法を提供するものである。
a.ウイルスを含有する可能性がある試料を水性媒体中で水不溶性担体と接触させる工程
b.水不溶性担体をアルカリ性水溶液と接触させる工程
c.水性媒体を中和する工程
d.核酸を増幅する工程
本発明において試料とは、動植物の組織、血液、血漿、血清、細胞破砕液、尿、唾液等の各種体液、培養細胞破砕液等であってウィルスの存在する可能性があるものを挙げることができる。このような試料は採取されたままの状態であっても、希釈された状態であってもよい。
本発明を適用できるウィルスとしては、例えばヘパドナウイルス(B型肝炎ウイルス等)、アデノウイルス、フラビウイルス(日本脳炎ウイルス等)、ヘルペスウイルス、(単純ヘルペスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス等)、ポックスウイルス、パルボウイルス(アデノ関連ウイルス等)、オルソミクソウイルス(インフルエンザウイルス等)、ラブドウイルス(狂犬病ウイルス等)、レトロウイルス(後天性免疫不全症候群ウイルス等)、C型肝炎ウイルス等のウイルスなどを挙げることができる。
【0005】
次に本発明の各工程を説明する。
a.ウイルスを含有する可能性のある試料と水不溶性担体を接触させる工程
本発明の方法では、試料と水不溶性担体を接触させて水不溶性担体上にウイルスを吸着させる。
本発明に用いられる試料の量に特に制限はないが、操作上20〜1500μl程度が好ましい。
【0006】
本発明に用いる水不溶性担体の形状は、粒子状、繊維状、シート状、チューブ状、板状などが挙げられる。これらの形状の中でも特に操作性の点から粒子状のものが好ましい。ここで、粒子の粒径は0.1μm〜4mm、好ましくは0.3μm〜3mmである。
本発明に用いる水不溶性担体としては特に限定されないが、耐熱性があれば、PCR反応等の加熱工程を含む核酸増幅反応に、水不溶性担体を共存させうるので特に好ましい。
本発明に用いる水不溶性担体の例としては、セルロースやその誘導体などの天然高分子材料;ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステルなどの高分子材料;ガラス、酸化珪素、ケイソウ、アルミナなどの無機材料を挙げることができる。
また、蛍光色素により核酸増幅反応のReal Time検出を可能にしたReal Time PCRに適用するためには、光学的に透明なガラス等の材料を好適に用いることができる。
【0007】
本発明においては、水不溶性担体に磁性体を含有することもできる。
水不溶性担体内部に磁性体を含有させた場合は、ウイルス核酸溶液から水不溶性担体を分離する際に磁気による分離が可能であり、操作上好ましい。
このような磁性体としては、例えば四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)等の各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、クロムなどの金属またはこれらの金属の合金を用いることができる。
この磁性体は、該材料の内部にのみ含有され、表面に露出していないことが好ましい。
【0008】
本発明においては、上記水不溶性担体はその表面に、検出しようとするウイルスに結合可能な物質(以下、「ウィルス結合性物質」という)を有することにより、水不溶性担体とウィルスの吸着をより容易にすることができる。
ここで、ウイルス結合性物質としては、ウイルス表面抗原に対する抗体、ウイルス表層に結合できるレクチン、糖質、イオン性の低分子または高分子などを挙げることができる。抗体としては種々のウイルス特異抗体、レクチンとしてはフィトエマグルチニン(PHA)やコンカナバリンA(ConA)等のウイルス結合性レクチン、ウイルスレセプタとしてはウイルスが細胞に感染する際に認識するP抗原やCD4抗原、ヘパリン、イオン性の低分子としては、アニオン性基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基からなる群から選ばれる基を有する化合物、カチオン性基としては、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ピリジル基からなる群から選ばれる基を有するアミン化合物をあげることができる。イオン性の高分子としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジニウムを挙げることが出来る。また、アニオン性基を含む担体を用いる場合は、ウイルスの吸着を促進するために多価金属イオンを添加することも可能である。
これらのウイルス結合性物質は、水不溶性担体表面上に固定されるが、その固定化方法としては物理吸着法または化学結合法を用いることができる。
水不溶性担体の使用量は、ウイルスを含有すると考えられる検体の量と、利用する反応容器のサイズにあわせて調整し、例えば、200μlの反応容器を用い、水不溶性担体として粒子状のものを用いる場合には、直径3mmの水不溶性担体で1〜2個、直径1μmの水不溶性担体で0.02〜50mg程度である。
【0009】
水不溶性担体へのウイルス吸着は通常、試料と水不溶性担体を1〜60分間接触させることにより行う。
水不溶性担体と試料との1〜60分間の接触によりウイルスを吸着した水不溶性担体は、次に任意の方法により試料から分離し、試料を反応容器から系外に取り除く。
水不溶性担体の分離方法としては、デカンテーション、遠心分離、フィルター分離などの任意の方法を用いることが可能であり、磁性体を含有した水不溶性担体の分離には磁気分離法を採用することも可能である。
また、一度試料の取り除かれた水不溶性担体は、水不溶性担体から試料を完全に取り除くために、生理食塩水やトリス緩衝塩溶液などの水溶液を添加して、水不溶性担体の周りに付着した試料を洗い流し、再度、水不溶性担体と水溶液とを分離して水溶液を系外に取り除くことによる、水不溶性担体をリンスする操作を加えることは、ウイルス核酸溶液の高純度化を図る上で好ましい。
【0010】
b.水不溶性担体をアルカリ性水溶液と接触させる工程
本工程は、前記工程aの後に水性媒体をアルカリ性とすることによりウイルスから核酸を遊離し、核酸溶液を得る工程である。
本発明においては、水不溶性担体を試料から分離した後、アルカリ性水溶液と水不溶性担体を接触させることが好ましい。
本発明に用いることのできるアルカリ性水溶液はアルカリ性化合物の水溶液であり、アルカリ性化合物としては、金属の水酸化物、特に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどである。アルカリ性化合物の必要量は、水不溶性担体に接触させる時に、アルカリ水溶液の濃度として0.04M〜0.5M、より好ましくは0.1M〜0.3Mである。アルカリ性化合物の濃度が0.1Mよりも低くければ、ウイルスの外殻の変性が不十分となり、ウイルス核酸の溶出が不完全となる。
また、金属水酸化物の濃度が0.5Mよりも高ければ、ウイルス核酸が加水分解されて失われる頻度が高くなるばかりでなく、後の中和工程で生じる塩が核酸増幅工程に悪影響を及ぼすため、核酸増幅工程の反応に提供するウイルス核酸溶液量が制限され、高感度のウイルス核酸検出が妨げられる。
【0011】
本工程では、ウイルス外殻の変性を補助する目的で、界面活性剤を共存させることもできる。界面活性剤を共存させる方法としては、アルカリ性水溶液にあらかじめ含有させておいても良いし、アルカリ性水溶液の添加の前、あるいは後に水不溶性担体に界面活性剤を別に添加しても良い。界面活性剤としては、ウイルスの外殻破壊作用が十分で、かつ核酸増幅反応の阻害がないことが重要である。
本発明においては、界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤を用いることが好ましく、例えば、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリン酸エステルナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、スピクリスポール酸、ポリオキシエチレンリン酸エステルなどを挙げることができる。さらに、ステロイド骨格を持つアニオン性界面活性剤、特にデオキシコール酸、コール酸、胆汁酸またはそれらの塩も好適に用いることができる。
これらの界面活性剤は単独でも混合して用いることもできる。これら界面活性剤の濃度は、高すぎればPCR等の核酸増幅工程に悪影響を及ぼすため、核酸増幅工程に使用できる溶液量が制限されてしまうため、その濃度範囲は水性媒体の0.01〜1重量%、さらには0.02〜0.4重量%が好ましい。
水性媒体をアルカリ性に保持する時間は、0℃〜50℃の反応温度では1分〜30分であり、50℃〜90℃の反応温度では1分〜10分である。本工程において、加熱操作を加えることは必須ではなく、室温の操作で、ウイルス核酸は効率的に溶出される。
【0012】
c.水性媒体を中和する工程
本工程は、前記工程cの後に水性媒体を中和する工程である。
本発明に用いる酸性水溶液としては、塩酸酸性水溶液が好ましく、その使用量はアルカリとの当量から大きくずれない量である。よって、酸性水溶液の添加容量は、その濃度によって変化し、その濃度は制限されるものではない。この中和工程の結果生じる溶液の液性は、後の核酸増幅工程を妨げない水素イオン濃度(pH)に調製する必要がある。そのpHは、核酸増幅反応に用いる触媒、たとえば、Taq DNAポリメラーゼの至適pHであり、その値はTaq DNAポリメラーゼの由来により定まった値に合わせる必要がある。中和反応によって、確実にこのpHに調製するために、アルカリ性水溶液および酸性水溶液のいずれか一方、あるいはその両方に、pHの緩衝剤を含有させることが好ましい。この緩衝剤としては、TrisやTAPSの塩が好ましく、その濃度は、20mM〜500mMが好ましい。
d.上記核酸を増幅する工程
以上により得られたウイルス核酸溶液は、次に、水不溶性担体を分離することにより、PCR等の核酸増幅反応にそのまま用いる事が出来る。水不溶性担体の分離方法としては、デカンテーション、遠心分離、フィルター分離などの任意の方法を用いることが可能であり、磁性体を含有した水不溶性担体の分離には磁気分離法を採用することも可能である。また、水不溶性担体が耐熱性を有するものであれば、水不溶性担体をウイルス核酸溶液から分離することなく、核酸増幅反応に共することも出来る。水不溶性担体共存下で核酸増幅反応を行う場合、水不溶性担体へ核酸増幅反応液の成分が吸着することを抑制するため、アルブミンまたはゼラチンなどを添加することもできる。
【0013】
アルブミンまたはゼラチンの核酸増幅反応液中での濃度は、1〜5000μg/mlであることが好ましく、20〜2000μg/mlであることが特に好ましい。
アルブミンまたはゼラチンの濃度が10μg/ml未満では、水不溶性担体への核酸増幅反応液中の成分の吸着を抑制する効果が不十分となるため好ましくない。また、5000μg/mlをこえると、核酸増幅反応を阻害する可能性があるため好ましくない。
以上にして得られたウイルス核酸溶液は、核酸増幅反応を妨げないため、そのままの状態で、核酸増幅反応により高感度でウイルス核酸を検出することが可能である。
【0014】
核酸増幅法としては、特に限定されないが、例えば、ロシュ社のPCR(Polymerase chain reaction)法、ジェン・プローブ社のTMA(Transcription mediated amplification-hybridization protection assay)法、アボット社のLCR(Ligase chain reaction)法、栄研化学社のLAMP(Loop-mediated isothermal amplification of DNA)法、宝酒造社のICAN(Isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acid)法等を利用することができる。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例1 抗HBs抗体結合磁性粒子の調製
1)油性磁性流体「フェリコロイドHC50」[タイホー工業(株)製]にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、親油化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性体(粒子径:0.01μm)を得た。
ついで、超常磁性体40部にシクロヘキシルメタクリレート95部、メタクリル酸5部およびベンゾイルペルオキシド(重合開始剤)3部を添加し、この系を混合攪拌することにより超常磁性体を均一に分散させてモノマー組成物を調整した。
一方、ポリビニルアルコール10部、ラウリル酸ナトリルム0.05部およびポリエチレンオキシドノニルフェニルエーテル0.1部を水1000部に溶解してモノマー組成物を調整した。
得られた水性媒体(水相)中に上記のモノマー組成物を添加し、ホモジナイザーで予備攪拌した後、超音波分散機で分散処理することにより平均粒子径が1μmの油滴(油相)が水性媒体に分散されてなる懸濁液(油滴分散体)を調整した。
次に、得られた懸濁液を容量2リットルの攪拌機付き三つ口フラスコに仕込み、この系を75℃に昇温し、窒素雰囲気下において攪拌しながら5時間にわたり油滴中のモノマーを重合(懸濁重合)させ磁性粒子を製造した。
得られた粒子を光学顕微鏡で写真撮影し、粒子200個の直径を計測してその平均を求めた結果、1.2mmであった。
(2)上記(1)で得られた磁性粒子を5mM水酸化ナトリウム水溶液に分散し、80℃、12時間処理してカルボキシ変性磁性粒子とした。
(3)得られた表面カルボン酸磁性粒子1g(乾燥重量)を20mlの10mM MES緩衝溶液(pH6.0)に添加し、水溶性カルボジイミド試薬であるEDC塩酸塩(1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド)0.2gを添加し、20℃、1時間反応させた後、10mM HEPES緩衝溶液(pH7.4)で洗浄し、同緩衝溶液10mlに分散させた。そこへ、抗HBs抗体(抗原決定基a)(株式会社特殊免疫研究所)10mgを添加し、20℃、2時間反応させた後、生理食塩水で洗浄してB型肝炎ウイルス結合性磁性粒子を得た。得られた粒子はリン酸緩衝溶液(PBS)に0.5%となるように分散させた。
【0016】
参考例2 スチレンスルホン酸シード重合磁性粒子
上記参考例1、(1)で得られた磁性ポリマー粒子を10部、ドデシル硫酸ナトリウム0.03部を含む水100部に分散した。スチレン4部およびスチレンスルホン酸ナトリウム4部を加え、80℃に加温した後、過硫酸カリウム0.01gを加え10時間反応を行った。反応終了後、蒸留水、続いて生理食塩水にて粒子を洗浄し、表面にイオン性基を有するスチレンスルホン酸シード重合磁性粒子(以下、磁性スルホン酸粒子)を得た。得られた粒子はリン酸緩衝溶液(PBS)に5%となるように分散させた。
【0017】
実施例1
ウイルス濃度2×102コピー/mlおよび2×104コピー/mlのHBV陽性血清それぞれにつき、以下の操作を行った。
1.5mlの蓋つきチューブにHBV陽性血清100μlならびに参考例1で得られたB型肝炎ウイルス結合性磁性粒子の0.5%分散液100μlを添加し、室温で10分間穏やかに撹拌した。
その後、チューブを市販の磁気スタンドに立てて、磁性粒子を分離し、血清をピペットで除去した。次にTBS500μlを加え、粒子を再分散させてリンスした後、再度チューブを磁気スタンドに立てて粒子を磁気分離し、TBSを除去した。
次に、界面活性剤として0.1%のデオキシコール酸ナトリウムを含有させた150mM NaOH水溶液30μlを添加して粒子を分散させ、そのまま室温で10分間静置した。
続いて緩衝剤として100mMのTris-HCl (pH8.3)を含有する150mM HCl水溶液を30μl添加して試験サンプルを中和した。チューブを磁気スタンドに立て磁気分離し、上澄としてウイルス核酸水溶液を得た。
得られたウイルス核酸水溶液から20μlを取り、PCR反応液(ロシュ・ダイアグノスティックス社製、PCRコアキット)30μlと混合してNested−PCR法により検出をおこなった。35回の1st−PCR、25回の2nd−PCRの増幅過程によりDNAを増幅した。PCRのプライマー配列は、Hiroaki Okamoto, Igaku no ayumi, (1992),162(9),544−549.に従った。得られたPCR増幅産物を3%アガロースを用いて電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色によりDNAを検出し、得られた目的DNAの量をバンドの蛍光が検出されたものを+、検出されなかったものを−として判定した。
【0018】
実施例2
実施例1において、界面活性剤としてデオキシコール酸ナトリウムの代わりに、0.05%N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして核酸の遊離を行い、実施例1と同様にしてPCR法によりウィルス検出核酸を行った。
実施例3
ウイルス濃度2×102コピー/mlおよび2×104コピー/mlのHBV陽性血清それぞれにつき、以下の操作を行った。
【0019】
1.5mlの蓋つきチューブにHBV陽性血清100μlならびに参考例2で得られた磁性スルホン酸粒子の5%分散液100μlを添加し、さらに1M酢酸亜鉛水溶液を2μl加え室温で10分間インキュベートした。
その後、チューブを市販の磁気スタンドに立てて、磁性粒子を分離し、血清をピペットで除去した。次にTBS500μlを加え、粒子を再分散させてリンスした後、再度チューブを磁気スタンドに立てて粒子を磁気分離し、TBSを除去した。
次に、界面活性剤として0.1%のデオキシコール酸ナトリウムを含有させた150mM NaOH水溶液30μlを添加して粒子を分散させ、そのまま室温で10分間静置した。
続いて緩衝剤として100mMのTris-HCl (pH8.3)を含有する150mM HCl水溶液を30μl添加して試験サンプルを中和した。チューブを磁気スタンドに立て磁気分離し、上澄としてウイルス核酸水溶液を得た。
得られたウイルス核酸水溶液につき、実施例1と同様にPCR法によりウィルス検出核酸を行った。
【0020】
比較例1
実施例1において、界面活性剤として用いたデオキシコール酸ナトリウムを抜いて、界面活性剤を用いずに操作した以外は実施例1と同様にして核酸の遊離を行い、実施例1と同様にしてPCR法によりウィルス検出核酸を行った。
比較例2
実施例1において、界面活性剤としてデオキシコール酸ナトリウムの代わりに、1% Tween 20 を用いた以外は実施例1と同様にして核酸の遊離を行い、実施例1と同様にしてPCR法によりウィルス検出核酸を行った。
比較例3
実施例1において、TBSによる洗浄、TBSの除去までは実施例1と同様に操作し、続いて、0.1%デオキシコール酸ナトリウム水溶液30μlを添加して粒子を分散させ、95℃で10分間加熱しウイルス核酸を溶出させたのち、チューブを磁気スタンドに立て磁気分離し、上澄としてウイルス核酸水溶液を得た。以下、実施例1と同様にしてPCR法によりウィルス検出核酸を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめた。表1に示した通り、比較例の結果では、高ウイルス濃度の試料からはウイルス核酸を検出することが出来たが、低ウイルス濃度の試料からは、ウイルス核酸の溶出効率の低さのためにウイルス核酸を検出することが出来なかった。一方、アニオン性の界面活性剤とアルカリ性水溶液を用いることによる実施例では、それらの協同的な働きにより、PCR反応が阻害されることもなく、低濃度のウイルス含有試料からもウイルス核酸を効率よく検出することが出来た。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
本発明では、試料を水不溶性担体で処理することにより試料からウイルスを分離し、ウイルスが結合した担体に、アニオン性界面活性剤とアルカリ性水溶液を作用させてウイルス核酸を溶出し、酸で中和することにより、そのままで核酸増幅反応に用いることが出来る高純度のウイルス核酸溶液を得ることが可能であり、核酸増幅反応により供することで高感度、簡便にウイルス核酸を検出することを可能とする。
Claims (5)
- 下記a〜dの工程を含むことを特徴とするウイルス検出方法。
a.ウイルスを含有する可能性がある試料を水性媒体中で、ウイルス表面抗原に対する抗体及びスルホン酸基を有する化合物から選ばれるウイルスに結合可能な物質をその表面に有する磁性体を含有する水不溶性担体と接触させる工程
b.水不溶性担体を、0.01〜1重量%濃度のアニオン性界面活性剤を共存させた0.1M〜0.3M濃度のアルカリ性水溶液に接触させて、ウイルスから核酸を溶出する工程
c.水性媒体を中和する工程
d.核酸を増幅する工程 - 水不溶性担体が、ウイルス表面抗原に対する抗体をその表面に有する磁性粒子又はスチレンスルホン酸シード重合磁性粒子である請求項1に記載のウイルス検出方法。
- 前記工程bにおいて、アルカリ性水溶液が水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液もしくはいずれか一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウイルス検出方法。
- 前記工程b〜工程dを同一容器内で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウイルス検出方法。
- 前記工程aにおいて、多価金属イオンの存在下、試料を水不溶性担体と接触させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス検出方法。
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