JP4851739B2 - 生分解性濾材 - Google Patents

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Description

本発明は、濾材に関するものであり、さらに詳しくはクリーンルーム用エアフィルター、ビル空調用エアフィルターなどの用途として、フィルター加工性に優れ、今後ますます問題視されつつある不燃ゴミ対策、並びに酸性雨等による土壌の酸性化防止に配慮した濾材に関するものである。
フィルターの環境負荷で大きな問題となっているのは使用済みのフィルターの廃棄である。ビル空調、産業空調のエアフィルターの廃棄量は年間3000〜4000トンといわれており、これらの使用済みフィルターは産業廃棄物として焼却処理、埋め立て処理されている。フィルターを使用しているユーザーにとって廃棄物の発生とその処理は深刻な問題であり、このためフィルターの環境対策は廃棄量の減少や環境に負荷を与えない処理法の適用に集中している。この問題を解決するために、使用後の廃棄の問題を考慮して生分解性繊維からなる不織布にて構成されるエアフィルター基材が出願されている(特許文献1参照)。
エアフィルターは、その集塵効率によって、粗塵フィルター、中性能フィルター、高性能フィルター、HEPAフィルター、ULPAフィルターに分類される。上記生分解性繊維からなる不織布にて構成されるエアフィルター基材は、使用する繊維の繊維径が0.5〜100デシテックスであり、捕集効率は低く、台所用換気扇やレンジ用、空気清浄機用の粗塵フィルターに限定され、ビル空調用やクリーンルーム用の中・高性能フィルターには適さないものであった。
また、酸性雨等による土壌の酸性化防止を考慮した生分解性濾材はなかった。
特開2003−126628号公報
本発明の課題は、ビル空調用やクリーンルーム用に使用可能であり、生分解性を有し、濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現し、酸性雨等による土壌の酸性化防止を考慮した生分解性濾材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)ガラス繊維と、生分解性繊維とを主成分として含有し、生分解性繊維の一部がポリ乳酸系重合体からなる生分解性繊維であることを特徴とする生分解性濾材、
(2)生分解性繊維の一部が再生繊維または半合成繊維であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性濾材、
(3)ガラス繊維の繊維径が3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性濾材、
(4)濾材に対するガラス繊維の含有量が1〜50質量%、濾材に対する生分解性繊維の含有量が50〜99質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性濾材、
(5)濾材が湿式抄紙法で製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性濾材、
を見いだした。
本発明者らは、ガラス繊維が酸性溶液に晒された時に徐々にリーチングされることに着目し、酸性雨により酸性域となった土壌のpHを中性領域に近づける作用を活用し、土壌の酸性化を防止出来ると共に、良好な生分解性を有する濾材を見いだした。すなわち、ガラス繊維は鉱物原料で無害であるばかりでなく、大気中の二酸化炭素・亜硫酸ガス・窒素酸化物などの酸化物を取り込んだ酸性雨を中和しようとしてガラス繊維自身のアルカリ性の成分とが中和反応をおこすことにより、土壌のpHを酸性から中性に近づける役割を果たす。使用後に埋め立てられた生分解性濾材は、土中のバクテリアによって分解される。土壌のpHが中性域付近である場合、バクテリアの代謝活動が活発であり、生分解性濾材は容易に分解される。一方、酸性雨に晒されて土壌のpHが酸性域に傾いた場合、バクテリアは、酸性下ではその代謝活動が弱いため、有機物の分解が抑制され、生分解性が阻害される。本発明の生分解性濾材は、土中のpHを中性に近づけることによりバクテリアの代謝活動を活性化させる事が出来る。
また、ガラス繊維、特に繊維径3μm以下のマイクロガラス繊維は、圧力損失が低く、高い捕集効率が得られる事からエアフィルター用濾材、液体濾過用フィルター濾材に好適に使用され、生分解性繊維と最適に配合する事により、濾材の均一性、固体粒子の捕捉能、圧力損失といった性能をバランス良く発現し、強度の高い濾材と成りうる。また、再生繊維または半合成繊維を配合することにより濾材製造時の湿式抄紙性が高まり、ビル空調用やクリーンルームの中性能エアフィルター用として好適である。また、濾材に配合される生分解性繊維は、使用後のコンポスト処理や埋めたてにより最終的には炭酸ガスと水まで分解できる。
以下、本発明を詳説する。本発明においてガラス繊維とは、SiO2を主体としてAl23、Na2O、CaO、K2O、B23等を含むものである。これら組成に関して特に制限はないが、クリーンルーム等に使用する場合、B23を極力少なくしたり、もしくはなくする事が好ましい。また、埋め立て後に樹木を植樹することを考慮すると、酸性雨で溶出し樹木の害となるAl3+を含むAl23を極力少なくしたり、もしくはなくす事が好ましい。ガラス繊維の繊維径は、濾材の捕集効率を高める働きをする事から細い事が重要であり、通常20μm以下であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。
本発明の濾材において、ガラス繊維のみで構成する事は生分解性の観点から好ましくなく、1種以上の生分解性繊維を併用することにより均一なネットワークを形成して、圧力損失を低く抑え、均一性を高める事により捕集効率を高めることが出来る。さらに生分解性繊維として、再生繊維または半合成繊維を使用することにより、湿式抄紙機で製造する際に湿紙状態での保水率が高まり、フェルトからの剥離性が向上する。
本発明の濾材において、ガラス繊維の配合比率は特に限定しないが、濾材に対する含有量が、1〜50質量%、好ましくは、1〜30質量%である。ガラス繊維の配合比率が50質量%を超えた場合、埋め立て後の生分解性成分が少なくなるばかりでなく、捕集効率は十分得られるものの圧力損失、通気抵抗、通液抵抗が高くなりすぎる場合があり、濾材の寿命が短くなる傾向がある。一方、1質量%未満では、満足な捕集効率が得られない。
本発明の生分解性濾材(以下濾材と称す)において、生分解性繊維として、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂等の脂肪族ポリエステルからなる繊維が挙げられるが、生分解性繊維の一部がポリ乳酸系重合体からなる生分解性繊維である。脂肪族ポリエステルとしては、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、またはこれらを主たる繰り返し単位とする共重合体が挙げられる。また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)や、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシカプロネート、ポリ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ポリ−3−ヒドロキシオクタノエートのようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)や、これらの繰り返し単位とポリ−3−ヒドロキシバリレートまたはポリ−4−ヒドロキシブチレートの繰り返し単位との共重合体などが挙げられる。
また、グリコールとジカルボン酸の縮重合体からなるポリアルキレンアルカノエートの例として、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートまたはこれらを主繰り返し単位とするポリアルキレンアルカノエート共重合体が挙げられる。
これらの中でもポリ乳酸系重合体は、機械的特性や剛性に優れるだけでなく難燃性をも有するものである。具体的には、45°ミクロバーナ法による区分3程度の難燃性を有するため、リン系難燃剤を使用することなくエアフィルター基材にリン系難燃剤が配合された従来品と同等の難燃性を付与できる。
また、ポリ乳酸系重合体は、芳香族ポリエステル繊維に比べて発熱量が低いため焼却炉を傷める恐れが少なく、また、有害ガスを発生することもないため、埋め立て処理だけでなく焼却処理も好適に行える。さらに、ポリ乳酸系重合体は、他の脂肪族ポリエステルと比較して剛性が高く、使用時の変形量を少なくできるためより好ましい。
ポリ乳酸系重合体としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体とから選ばれるいずれかの重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ(L−乳酸)やポリ(D−乳酸)の融点は約180℃であるが、ポリ乳酸系重合体として前記コポリマーを用いる場合には、実用性と融点等を考慮してポリマー成分の共重合量比を決定することが好ましく、L−乳酸とD−乳酸との共重合比が、モル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜90/10、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=10/90〜100/0であることが好ましい。
乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体である場合におけるヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられ、中でも特に、ヒドロキシカプロン酸またはグリコール酸を用いることが生分解性および低コストの点から好ましい。
具体的には、ポリ乳酸からなる生分解性繊維(ラクトロン カネボウ社製)、ポリヒドロキシブチレートとバリレートの共重合体組成からなる生分解性繊維(バイオポール 米国モンサント社製)、ポリカプロラクトンからなる生分解性繊維(セルグリーン ダイセル化学工業社製)、脂肪族ポリエステルからなる生分解性繊維(ビオノーレ 昭和高分子社製)、でんぷんと変性ポリビニルアルコール組成からなる生分解性繊維(マタービー イタリア国ノバモント社製)等が挙げられる。また、これら生分解性繊維は1種類の使用に限られず、それぞれ分解挙動に特徴を持った生分解性繊維を2種類以上混合して用いてもよい。
本発明において生分解性繊維として、再生繊維または半合成繊維が含まれる。具体的には、生分解性を有するレーヨン繊維、リヨセル繊維、キュプラ、アセテート等が挙げられる。その繊維径は、特に限定されないが30μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下である。好ましくは、再生繊維または半合成繊維が繊維径の異なる2種類以上の繊維等を含んだ場合、ネットワークにさらなる空間が生まれ通気性、通液性が向上する。
また、繊維径1μm以下の生分解性を有するフィブリル化リヨセル繊維を併用することにより、更なるネットワークが確保され、捕集効率を高める事が可能となる。
また、併用出来るその他の繊維としては、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含む。これらの繊維はフィブリル化されていても通液性、通気性を阻害しない範囲であればなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も含まれる。
本発明の濾材において、生分解性繊維は、生分解性熱融着繊維であっても良い。生分解性熱融着繊維を含有させて、該熱融着繊維の溶融温度以上に濾材の温度を上げる工程を濾材の製造工程に組み入れることで、濾材の機械的強度が向上する。例えば、濾材を湿式抄造法で製造し、その後の乾燥工程で、該熱融着繊維を溶融させることができる。
本発明の濾材に係わる生分解性熱融着繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、濾材の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。
本発明の濾材において、生分解性熱融着繊維の繊維径は特に限定されないが、3〜30μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
本発明の濾材の坪量は特に限定しないが、フィルターに加工する際の強度や必要濾材面積を考慮すると、10〜150g/m2が好ましく、より好ましくは、50〜100g/m2である。
本発明の濾材は、単層構造に限定されず、粗密構造の2層以上で構成されても良い。2層以上の構造にする場合には、密層を湿式抄紙法で作製し、粗層を一般的な乾式不織布の製法で作製した後にそれらを一体化させることも可能であり、粗層と密層とを湿式抄紙法で作製しても良い。2層以上の構成の場合で、用途がエアフィルター用の濾材の場合、上流側が粗層になる様に使用する事により寿命の長い濾材となる。一方、液体濾過用フィルターに使用する場合、密層を上流側にして使用した方が寿命が長い場合がある。
本発明の濾材には、必要に応じて濾材の特性を阻害しない範囲で、バインダー、架橋剤、撥水剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、染料などの添加剤を適宜配合することができる。その場合、生分解性であることが好ましい。
本発明の濾材は、一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機が単独、またはこれらの抄紙機が同種または異種の2機以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機などにより製造される。抄紙機で製造された湿紙は、ドライヤーで乾燥させる。乾燥させた後、熱可塑性樹脂を含有させ、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥する。熱可塑性樹脂は、生分解性であることが好ましい。
以下、本発明を実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
ガラス繊維(B−26−R、繊維径約2.6μm、ラウシャ製)を2質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を48質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例1の濾材を作製した。
ガラス繊維(B−06−F、繊維径約0.6μm、ラウシャ製)を5質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を45質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例2の濾材を作製した。
ガラス繊維(B−10−F、繊維径約1.0μm、ラウシャ製)を20質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を30質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例3の濾材を作製した。
ガラス繊維(B−10−F、繊維径約1.0μm、ラウシャ製)を40質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を10質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例4の濾材を作製した。
ガラス繊維(B−15−F、繊維径約1.5μm、ラウシャ製)を60質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を10質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を30質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例6の濾材を作製した。
粗密構造の2層構造の濾材を作製するために、粗層用としてレーヨン繊維(繊維径約25μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を質量50%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量40g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した、別途密層用として、ガラス繊維(B−06−F、繊維径約0.6μm、ラウシャ製)を20質量%、レーヨン繊維(繊維径約8μm、繊維長が5mm ダイワボウレーヨン社製)を30質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量20g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、湿紙の状態で粗層と密層を重ね合わせて、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例6の粗密構造の濾材を作製した。
(比較例1)
生分解性繊維としてポリ乳酸(融点170℃、共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)からなる繊維径約11μm、繊維長が5mmの繊維を50質量%、生分解性熱融着繊維として融点が170℃であるポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)が芯部に、融点が130℃のポリ乳酸(共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=8/92)が鞘部となるように質量比1:1で芯鞘型に複合された繊維径約15μm、繊維長が5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、比較例1の濾材を作製した。
(比較例2)
ガラス繊維(B−26−R、繊維径約2.6μm、ラウシャ製)を2質量%、生分解性繊維としてポリ乳酸(融点170℃、共重合モル比:D−乳酸/L−乳酸=2/98)からなる繊維径約11μm、繊維長が5mmの繊維を48質量%、ユニチカファイバー社製のポリエステルバインダー繊維「メルティ4080」繊維径約15μm繊維長5mmの芯鞘型熱融着短繊維を50質量%の比率で水に分散し、乾燥重量60g/m2になる量の分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度140℃のシリンダードライヤーで乾燥して、比較例2の濾材を作製した。
<濾材の評価>
上記実施例1〜3及び比較例1〜2で作製した濾材について、坪量、圧力損失、粒子捕集効率、引張強度、生分解性、プリーツ加工性を以下の方法で評価した(表1)。
<圧力損失(単位:Pa)>
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。
<粒子捕集効率(単位:%)>
JIS B9908に準じて面風速5.3cm/秒の条件で測定した。測定対象粒子は、大気塵を使用して、粒子径0.3〜0.5μmの粒子についての捕集効率をパーティクルカウンター(商品名「KC−11」、リオン社製)を使用して測定した。
捕集効率が15%以上であれば、ビル空調用エアフィルターやクリーンルーム用中・高性能エアフィルターに使用可能となる。
<引張強度(単位:kN/m)>
JIS P8113に則り、濾材を幅15mm、長さ200mmに裁断し、テンシロン測定機(オリエンテック社製、HTM−100)を用いて、フルスケール4kgで、破断時の荷重を各々10回測定し、その平均値を示した。
<生分解性>
濾材を6ヶ月間土中に埋設し、その後フィルターの形状が維持されているか観察した。そして、6ヶ月経過後に原型をとどめていないか、強度維持していないものを○、ほぼそのままの形状で、ほぼ強度を維持していたものを×で表した。
<土壌のpH>
濾材を6ヶ月間、茨城県つくば市の屋外の土中に埋設し、その後に濾材の真下の土壌を採取した。採取した土壌10gに蒸留水を25g加えて良く撹拌し、上澄み液のpHを測定した。
<プリーツ(ひだ折り)加工性試験>
サンプルをひだ状に加工し、加工性の良いものを○、悪いものを×で評価した。
Figure 0004851739
Figure 0004851739
表1の結果より、ガラス繊維を使用した実施例1〜5の濾材は、圧力損失、捕集効率のバランスが良く、エアフィルターの濾材に適していることが分かる。実施例6の濾材は粗密の2層構造である事から、圧力損失と捕集効率のバランスが良く、粗層を上流にして使用した際の粉塵保持量が多く、ライフが長いフィルターとなった。
また、土壌のpHが中性領域に近づいていることにより、比較例1の濾材より生分解の進行が早かった。
比較例1の濾材はガラス繊維を使用していないため、捕集効率が極めて低く、ビル空調やクリーンルームの中性能エアフィルターには適さない。
比較例2の濾材は、生分解性ではないポリエステル繊維を使用したため、生分解性が悪かった。
本発明の濾材は、エアフィルター等に有効に用いる事が出来る。

Claims (5)

  1. ガラス繊維と、生分解性繊維とを主成分として含有し、生分解性繊維の一部がポリ乳酸系重合体からなる生分解性繊維であることを特徴とする生分解性濾材。
  2. 生分解性繊維の一部が再生繊維または半合成繊維であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性濾材。
  3. ガラス繊維の繊維径が3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性濾材。
  4. 濾材に対するガラス繊維の含有量が1〜50質量%、濾材に対する生分解性繊維の含有量が50〜99質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性濾材。
  5. 濾材が湿式抄紙法で製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性濾材。
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