JP4845244B2 - リチウム電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム電池に関し、特に電極を改良したリチウム電池に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
携帯電話やパーソナルコンピュータに代表される携帯機器の近年の目覚しい発達に伴い、その電源としての電池の需要も急速に増加している。特に、リチウム電池は原子量が小さく、かつイオン化エネルギーが大きなリチウムを使う電池であることから、高エネルギー密度を得ることができる電池として盛んに研究され、現在では携帯機器の電源をはじめとして広範囲に用いられるに至っている。
【0003】
一般的に、リチウム電池は、正極活物質と炭素系導電剤を有機系バインダーで結着したシート状正極と、同じく負極活物質を有機系バインダーで結着したシート状負極がセパレータを介して捲回された極群を電槽缶内に挿入し、そこに有機電解液を注入して封口した構造となっている。
【0004】
また、リチウム電池では、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)やマンガン酸リチウム(LiMn24)が一般的に用いられ、負極活物質には、コークスや炭素繊維などの炭素材料が用いられている。これらの正極活物質と負極活物質を組み合わせることでリチウム電池は公称電圧3.5V以上の高電圧を達成している。
【0005】
しかしながら、電解質に有機電解液を用いるため、有機電解液に起因する漏液や作動温度範囲が狭いといった問題がある。
【0006】
さらに、負極活物質に炭素材料を用いるリチウム電池は炭素材料の充放電電圧が0V付近であることから、電池の充電過程でリチウム金属が負極表面に析出して内部短絡を引き起こす可能性があり、十分な信頼性を有しているとはいえない。
【0007】
かかる問題を解決する方法として、例えば特開平7−296850号公報では負極活物質にNb24を用いると共に、正極活物質にLi2MnO3を用いた電池が提案されており、また特開平8−22841号公報では正極および負極活物質にスピネル系リチウム含有金属酸化物を用いた電池が提案されている。
【0008】
このように、正極および負極活物質に酸化物を用いると、サイクル寿命や耐過放電特性が改善され、高信頼性を有するリチウム電池となるが、電解質に有機電解液を用いているため、やはり漏液や作動温度範囲が狭いといった電解液に起因する問題を解決することができない。
【0009】
そこで、これら安全上の問題を解決するために、不燃性の無機固体材料で構成される無機固体電解質を用いた耐熱性、信頼性に優れた全固体リチウム電池の開発が進められている。電解質に無機固体電解質を用いたリチウム電池の例としては、例えば特開平11−7942号公報に開示されるように、固体電解質として硫化物ガラスを用いたものがある。しかし、硫化物ガラスは水分や酸素に対する安定性が乏しく電池製造コストの上昇につながるという問題がある。
【0010】
一方、リチウム電池に対する要求は安全性、信頼性だけに止まらず、携帯機器の小型化軽量化に伴い、さらなる高エネルギー密度化や高出力化が求められている。
【0011】
かかる課題を解決するために、正極に含まれる導電剤の改良が種々試みられている。例えば、黒鉛とカーボンブラックの混合物を用いたり(特開平8−222206号)、形状の異なる鱗片状黒鉛と繊維状炭素を混合したり(特開平9−27344号)、炭素材料以外では遷移金属炭化物を用いたり(特開平5−217582号)、アルミニウム粉末やタンタル粉末を用いる(特開平8−78054号)ことが提案されている。しかしながら、これらの導電剤はいずれも電池容量の増加には直接寄与しないため、導電剤を使用しないことで電池の高容量化、ひいては高エネルギー密度化を図る試みがなされている。
【0012】
特開平8−148141号では導電剤やバインダーなどの電池容量の低下を招く材料を使わずに活物質のみの焼成体を電極とすることで優れた充放電特性を有するリチウム電池を提案している。
【0013】
しかしながら、前記提案では活物質層に結着剤を含まないために、電極が脆くて取扱が困難であるという問題がある。さらに、電極に導電性を付与していないために、活物質層の厚みが20μmを越えると充放電容量が極端に低下し、実用電池として充分なエネルギー密度が得られないという問題があることが明らかとなった。
【0014】
そこで、本発明者らは酸化物ガラスを用いて活物質を結着した20μm以上の厚みを有する電極に導電性を付与してリチウム電池の電極として使用することを鋭意研究した結果、導電剤としてSb23ドープSnO2および/またはSnO2ドープIn23、あるいはカーボンブラックおよび/または黒鉛を添加することで厚い電極が使用可能となることを見出した。しかしながら、電極内の導電剤の分布状態によって電極特性が大きく変化することが明らかとなり、最適な分布状態について研究することによって本発明を完成するにいたった。
【0015】
したがって、本発明は上述のような従来の技術に鑑みてなされたものであり、高エネルギー密度、高出力密度を有し、安全性および信頼性に優れたリチウム電池を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明のリチウム電池は、一対の電極間に、リチウムを含む酸化物系無機固体電解質を介在させてなるリチウム電池において、前記一対の電極は、活物質とともに導電剤を含み、前記活物質が酸化物ガラスを介して結合されてなり、前記無機固体電解質と反対の側の表面近傍において、導電剤を中心部に比べて高濃度に含有していることを特徴とするリチウム電池。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明のリチウム電池は、一対の電極間に、リチウムを含む無機固体電解質を介在させてなるリチウム電池において、前記一対の電極の少なくとも一方は、活物質とともに導電剤を含むとともに、前記無機固体電解質と反対の側の表面近傍において、導電剤を中心部に比べて高濃度に含有していることを特徴とする。また、前記一対の電極の少なくとも一方は、前記無機固体電解質と反対の側の表面近傍に加え、前記無機固体電解質側の表面近傍においても、導電剤を中心部に比べて高濃度に含有していてもよい。また、前記一対の電極は、前記活物質が酸化物ガラスを介して結合されていてもよい。
【0018】
また、上記リチウム電池では、前記導電剤がカーボンブラックおよび/または黒鉛であることが望ましい。
【0019】
また、上記リチウム電池では、前記正極と負極の活物質がLi1+XMn2-X4(0≦X≦0.2)、LiMn2-YMeY4(Me=Ni、Cr、Cu、Zn,0<Y≦0.6)、Li4Ti512およびLi4Mn412よりなる群から選択される少なくとも1種類からなることが望ましい。
【0020】
【作用】
活物質を酸化物ガラスで結着することで、電極が強固になり、製造工程での電極の取扱いが容易になる。特に、電極表面近傍の導電剤濃度を中心部に比べて高くすることで集電体からの電子の流入がスムーズになって抵抗が下がるほか、電解質側ではリチウムイオンの挿入反応がスムーズに進行するものと考えられる。これらのことからリチウム電池のエネルギー密度、出力密度を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のリチウム電池の実施形態について説明する。図1は、本発明に係るリチウム電池の構成例を示す断面図である。図1において、1は正極、2は固体電解質、3は負極、4は正極電槽、5は負極電槽、6は封口樹脂である。
【0022】
正極1および負極3は主として活物質と酸化物ガラスとで構成される。正極1および負極3に用いる活物質としては、次のような遷移金属酸化物が挙げられる。例えば、リチウムマンガン複合酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウムチタン複合酸化物、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タングステンなどとそれらの誘導体が挙げられる。
【0023】
上述の遷移金属酸化物のうち、特にLi1+XMn2-X4(0≦X≦0.2)、LiMn2-YMeY4(Me=Ni、Cr、Cu、Zn,0<Y≦0.6)、Li4Ti512およびLi4Mn412よりなる群は、充放電中の活物質の体積変化が小さい結晶系がスピネル系の活物質であり、酸化物ガラスで結着した場合に良好なサイクル特性を示すものである。
【0024】
ここで、正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の遷移金属酸化物の充放電電位を比較してより貴な電位を示すものを正極に、より卑な電位を示すものを負極にそれぞれ用いて任意の電圧の電池を構成することができる。正極活物質と負極活物質に遷移金属酸化物を用いると、電池が過充電された場合にも金属リチウムの析出が起こらず、電池の信頼性が向上する。
【0025】
本発明にかかる酸化物ガラスとしては、リン酸塩ガラスやホウ酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラスを中心とした多成分系酸化物ガラスを挙げることができる。また、アルカリ金属元素の添加は体積抵抗を低減でき、特にリチウムを添加した場合にはリチウムイオン伝導性が期待されるので好ましい。
【0026】
電極の隙間に導電剤を後から添加するので、電池容量の低下を招くことなく電極に導電性を付与でき、厚みが20μmを超える電極でも優れた充放電特性が得られる。
【0027】
また、一般的に酸化物の充放電電圧は炭素材料の充放電電圧よりも貴な電位を示すことから、活物質、特に負極活物質にリチウム含有遷移金属酸化物を用いると、原理的にリチウムの析出反応が起こらず、電池の信頼性および安全性が向上する。
【0028】
酸化物ガラスの組成は特に限定しないが、活物質粒子を結着するための熱処理は酸化物ガラスのガラス転移点以上、活物質の合成温度以下で行われるため、この温度範囲において流動性を示す酸化物ガラスを選定するのが好ましい。
【0029】
酸化物ガラスの添加量は、活物質と酸化物ガラスの組み合わせで種々最適値が異なると考えられるが、概して30重量%以下が好ましい。30重量%を超えると電極体積中に占める酸化物ガラスの体積が大きくなり、かえって活物質の充填率を下げることとなる。
【0030】
正極1は、正極活物質と酸化物ガラスに成形助剤を加えて加圧成形して熱処理した多孔質体から成り、負極3は、正極1中の正極活物質の充放電電位よりも卑な充放電電位を有する遷移金属酸化物を活物質とした多孔質体から成る。
【0031】
正極1および負極3を作製するには、(1)活物質と酸化物ガラスを成形助剤を溶解させた水もしくは溶剤に分散させてスラリーを調製し、このスラリーを基材フィルム上に塗布して乾燥した後、加圧成形して裁断したものを熱処理する方法、あるいは(2)活物質と酸化物ガラスの混合物を直接あるいは成形助剤を加えて造粒して金型に投入し、プレス機で加圧成形した後、熱処理する方法、(3)造粒した混合物をロールプレス機で加圧成形してシート状に加工した後、そのシートを裁断して熱処理する方法などが用いられる。(2)、(3)の造粒は、(1)の方法で述べたスラリーから造粒する湿式造粒であっても溶剤を用いない乾式造粒であっても構わない。
【0032】
次に、これら正極1および/または負極3に添加する導電剤には、導電性酸化物や炭素材料、金属粉を用いることができる。導電性酸化物では、例えばSnO2やIn23、TiO2-X、ZnO、Fe34、ReO3、MoO2、RuO2、VO、WO2など室温で大凡1×10-4Ω・m以下の抵抗率を有する酸化物を用いることができる。さらに好ましくは、安定した低抵抗率を得るためにSb23がドープされたSnO2とSnO2がドープされたIn23が帯電防止や透明電極用に量産されており、これらを用いることが品質、コストの面からも有利である。
【0033】
また、炭素材料では例えばファーネスブラックやアセチレンブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと鱗片状や繊維状の天然黒鉛や人造黒鉛などを挙げることができる。なかでも一次粒子の平均粒径が0.025〜0.07μmのファーネスブラック、アセチレンブラックが充填性が良好でカーボンブラックとして適している。また、黒鉛には鱗片状の黒鉛をサブμmまで微粉砕したものが充填性、導電性に優れ適当である。なお、これらの炭素材料は予めシランカップリング剤などで表面改質処理を施したものを用いることもできる。
【0034】
また、金属粉では例えば、AuやAg、Al、Cu、Ni、Feなどを挙げることができる。
【0035】
さらに、導電剤としてSb23ドープSnO2および/またはSnO2ドープIn23、あるいはカーボンブラックおよび/または黒鉛を用いると導電性が良好で優れた充放電特性が得られることとなる。
【0036】
添加方法としては、例えば活物質の平均粒径の10分の1以下の平均粒径を持つ炭素材料の微粒子を水もしくは有機溶剤に分散させた懸濁液に熱処理して得られた正極1および/または負極3の多孔質体を浸漬して含浸する方法や電解質2を介して一括熱処理して一体化した発電要素を浸漬して含浸する方法がある。また、含浸を加速するために減圧あるいは減圧加圧含浸することも可能である。さらに、懸濁液を電極表面に滴下して導電剤を含浸する方法や吸引ろ過の方法を応用して電極を用いて懸濁液をろ過するような方法も可能である。一方、粒子を用いない方法としては、導電剤の出発材料を電極中に含浸しておいて熱分解反応を利用して導電剤を生成する方法が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコールなどの有機物を含浸しておいて熱分解して炭素材料を添加したり、SnやInなどの有機金属材料を含浸しておいて熱分解して導電性酸化物を電極内で合成する方法などが考えられる。なお、発電要素に含浸した場合は、発電要素の周縁部に付着した導電剤を除去するために周縁部を研磨あるいは切断加工することが必要である。
【0037】
導電剤微粒子を分散させた懸濁液を用いて導電剤を含浸した場合導電剤粒子は溶媒と共に電極1、3内に侵入していくため、電極1、3の中心部へは染み込みにくい。これは電極1、3内の活物質粒子間に目詰まりしたように堆積し易いためで、これによって必然的に電極1、3表面近傍の導電剤濃度を高くすることができる。
【0038】
Sb23ドープSnO2を分散した懸濁液に熱処理して得られた多孔質体電極を浸漬し、導電剤を含浸したのち、その断面をX線マイクロアナリシスで分析しSnの分布状態を評価したところ、電極表面近傍の濃度は中心部に比べ3から4倍高いことが確認された。だたし、電極が薄いためにSnの厚み方向での部分的な定量分析はできていない。ちなみに電極全体では電極重量の約3重量%のSb23ドープSnO2が含浸される。
【0039】
一方、電極1、3に懸濁液を滴下して導電剤を含浸した場合には一方向からだけの含浸となるため、反対側の表面にまでは懸濁液が含浸しにくく、また含浸途中に活物質間に堆積してしまうため、導電剤濃度は必然的に特定の電極1、3の表面近傍で高くなる。
【0040】
この現象を利用することで、特に集電体近傍に導電剤を高濃度に配置することができ、集電体と活物質間の電子の授受をスムーズに進行させる効果、つまり接触抵抗を低減する効果が得られる。
【0041】
固体電解質2に用いられる酸化物系無機固体電解質には、例えばLi1.3Al0.3Ti1.7(PO43やLi3.6Ge0.60.44などの結晶質固体電解質、30LiI−41Li2O−29P24や40Li2O−35B23−25LiNbO3、10Li2O−25B23−15SiO2−50ZnOなどの非晶質固体電解質、あるいは結晶質固体電解質と非晶質固体電解質の混合体もしくは焼成体を挙げることができる。
【0042】
固体電解質2は、例えば上記製法(1)〜(3)と同様にして酸化物系無機固体電解質である結晶質固体電解質と非晶質固体電解質の混合体に成形助剤を加えて成形体を作製し、熱処理することで作製することができる。
【0043】
上述の正極1、負極3および電解質層2を積層してなる発電要素を作製する方法としては、(イ)個別に熱処理して多孔質体とした正極1と負極3を電解質層2を介して積層する方法や、(ロ)熱処理後の正極1と負極3を熱処理前の電解質層2を介して積層して熱処理する方法や、(ハ)熱処理前の各層を積層して一括して熱処理する方法などが考えられる。ただし、各層の接触状態を考慮すると層間の接着が可能な(ロ)または(ハ)の方法が好ましい。
【0044】
いずれにしても、ここで使用可能な成形助剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリブチラール、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドンなどの1種もしくは2種以上の混合物が挙げられる。
【0045】
基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属箔などが使用可能である。
【0046】
正極電槽4と負極電槽5に用いる金属製薄板は、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銅、コバール、42アロイ、チタンあるいはアルミニウム合金などの金属材料であればよい。また、封口樹脂6は前記金属材料と接着性を有する接着性樹脂であればよく、封口にはヒートシーラーや熱板などを用いることができる。正極電槽4と負極電槽5の板厚は、電池のエネルギー密度の観点から薄いものを用いるのが望ましいが、ピンホールの有無や外装材としての強度の面から適当な厚みが選択されるべきである。例えば、アルミニウムの場合30μm以上とすることが望ましい。一方、厚いほうでは、封止方法による制約や封止部の接着強度やエネルギー密度の観点から500μm以下とするのが好ましい。
【0047】
正極電槽4および/または負極電槽5の極群収納部を予め凹状に成形してもよく、この凹状の成形方法には既存の従来技術を用いることができる。例えば成形金型によるプレス加工が一般的である。形状は、極群収納部から見て凹状であれば良く、深さや寸法は特に限定されないが、極群の厚みと封口樹脂7の厚みを考慮して極群と電槽が面で接触できる寸法、形状にすべきである。また、成形方法によっては成形する際に凹状の極群収納部が台形となったり、屈曲部に曲面を設けたほうが好都合な場合があり、成形方法に適した任意の設計とすることで何ら問題はない。
【0048】
封口樹脂6には、上記金属製電槽と接着性を有する接着性樹脂を用いることができる。例えば、変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどの熱熔着性の接着性樹脂が取扱が簡便で適当である。
【0049】
本発明のリチウム電池の形状は、カード型、フィルム型、コイン型、円筒型および扁平型などの四角や三角、円形など特に限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
[実施例1]
水酸化リチウムと二酸化マンガンをLiとMnのモル比が1:2となるように混合し、この混合物を大気中、700℃で15時間加熱焼成することでリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)を調製し、これを正極活物質とした。次に、水酸化リチウムと二酸化チタンをLiとTiのモル比が4:5となるように混合し、この混合物を大気中、750℃で15時間加熱焼成することでリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti512)を調製して負極活物質とした。
【0051】
このLiMn24とLi4Ti512のそれぞれと酸化物ガラス、ここでは50P25−30PbO−20ZnOとを重量比80:10:10で乾式混合して混合粉とした。この混合粉100に対して成形助剤のエチルセルロースが重量比で10となるように加え、さらにテレピネオールを加えてスラリーを調製した。このスラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した後に乾燥させてシート状に成形したものをロールプレスで加圧圧縮成形して、正極、負極とも厚み0.25mmのシートとした。それぞれのシートを金型で打ち抜き20mm角のシート状の正極および負極成形体を得た。
【0052】
酸化物系無機固体電解質、ここでは10Li2O−25B23−15SiO2−50ZnOとLi1.3Al0.3Ti1.7(PO43を重量比50:50で混合した混合粉と成形助剤のエチルセルロースを重量比100:10で混合し、さらにテレピネオールを加えてスラリーを調製し、PETフィルム上に同じく成形して裁断することで20mm角、厚み0.1mmのシート状電解質成形体を作製した。
【0053】
上記正極成形体と負極成形体を電解質成形体を介して積層し、これを大気中、550℃で一括熱処理して正極1と負極3の間に固体電解質2を介した18mm角、厚み0.55mmの発電要素を作製した。
【0054】
導電剤の添加は、次のようにして行った。導電剤にはSb23ドープSnO2水分散体を用い、まずこれを純水で導電剤の濃度が約5重量%となるように希釈してSb23ドープSnO2の懸濁液を調製した。次にこの懸濁液に一括熱処理して作製した発電要素を浸漬し、5分間放置してから取り出し、表面の液を拭き取った後、120℃で10分間乾燥した。この浸漬と乾燥の操作を5回繰り返し、さらに発電要素の周囲を軽く研磨して不用部分の炭素材料を除去して発電要素とした。なお、化学分析の結果、このときの導電剤の添加量は発電要素から固体電解質の重量を引いた電極重量の約5重量%であった。
【0055】
正極電槽4と負極電槽5には厚み0.1mmのアルミニウムを25mm角に裁断した金属薄板を用いた。ただし、正極電槽4には予めプレス成形で極群収納部を凹状に成形したものを用いた。負極電槽5には、予め幅5mmの窓枠状に裁断加工しておいた電槽と接着性を有する封口樹脂6をヒートシールしておいたものを用いた。
【0056】
最後に、電池の組み立ては負極電槽5の中央に上記発電要素を載置したのちに正極電槽4を被せて正極電槽4と負極電槽5をヒートシールして接着して表面近傍に高濃度に導電剤を含有した電極を用いたリチウム電池を作製した。
【0057】
[実施例2]
導電剤にカーボンブラックが導電粒子として配合された導電性インクを用い、これを専用溶剤でカーボンブラックの濃度が約3重量%となるように希釈した懸濁液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム電池を組み立てた。なお、化学分析の結果、導電剤の添加量は電極重量の約2重量%であった。
【0058】
[実施例3]
実施例2で作製したカーボンブラックの懸濁液に微粉砕した鱗片状天然黒鉛をカーボンブラックと黒鉛の重量比が4:1となるように添加して充分混合、分散してカーボンブラックと黒鉛の混合懸濁液としたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム電池を組み立てた。なお、化学分析の結果、導電剤の添加量は電極重量の約2重量%であった。
【0059】
[比較例1]
炭素材料を後含浸する工程を省いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム電池を作製した。
【0060】
[比較例2]
実施例1と同様にして作製したLiMn2O4と結着剤としての酸化物ガラス50P25−30PbO−20ZnO、導電剤としてのSb23ドープSnO2と、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンとを活物質、結着剤、導電剤およびバインダーの重量比が90:10:5:5になるように混合して混練した後、溶剤であるトルエンを加えて十分混練してロールプレスで厚み0.25mmの短冊状シートに成形した。このシートを金型で打ち抜き20mm角のシート状の正極成形体を得た。
【0061】
次に、実施例1と同様にして作製したLiTi12と結着剤としての酸化物ガラス50P−30PbO−20ZnO、導電剤としてのSbドープSnOと、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンとを活物質、結着剤、導電剤およびバインダーの重量比が87:13:5:8となるように混合して混練した後、溶剤であるトルエンを加えて十分混練してロールプレスで厚み0.25mmの短冊状シートに成形した。このシートを金型で打ち抜き20mm角のシート状の負極成形体を得た。上記シート状正極成形体および負極成形体を用いたこと以外は実施例1と同様に発電要素を作製してSbドープSn 電剤が均一に分散した電極を用いたリチウム電池を作製した。
【0062】
[比較例3]
実施例1と同様にして正極、負極とも厚み0.25mm、寸法20mm角のシート状の正極および負極成形体を得た。これを大気中550℃で熱処理し、ついでSb23ドープSnO2を実施例1と同様にして後含浸してそれぞれ正極1と負極3を得た。なお、化学分析の結果、導電剤の添加量は電極重量の約5重量%で実施例1とほぼ同じであった。
【0063】
次に、電解液は、プロピレンカーボネートと1,2―ジメトキシエタンが体積比で1:1の割合で混合された非水溶媒に電解質として過塩素酸リチウム(LiClO4)をその濃度が1mol/lになるように溶解させて調製した。
【0064】
上記正極を正極電槽に載置し、上記電解液を含浸させた厚み100μmのポリプロピレン製不織布からなるセパレータを、前記正極上に載せて上記負極ならびに負極電槽を積層して正極電槽と負極電槽をヒートシールして電解質に有機電解液を用いたリチウム電池を作製した。
【0065】
上記正極と負極を用いたこと以外は比較例2と同様にしてリチウム電池を作製た。
(導電剤の分布状態)
実施例1から3および比較例2と3のリチウム電池に用いた発電要素もしくは電極中の導電剤の分布状態を電子顕微鏡およびX線マイクロアナリシスで調査した。実施例1から3では、電極の集電体側に高濃度に導電剤が分散していることが確認された。これは電解質側からは懸濁液が含浸しにくかったためと推定される。比較例2では、電極全体に均一に導電剤が分布していることが確認された。比較例3の電極では電極の両側の表面近傍に導電剤が集中していることが分かった。
(電池特性評価)
上記実施例1から3および比較例1から3で作製した電池の放電容量測定を実施し、放電容量と放電平均電圧を求めた。なお、電池の放電容量は、充電終止電圧を2.8V、電流値を0.2mAとして定電流充電した後、1時間放置して電流値1.0mAでまず2.0Vまで定電流放電し、4時間開回路状態で放置したのち引き続き電流値0.2mAで2.0Vまで定電流放電して求めた。なお、0.2mA放電時の放電容量は1.0mA放電時の放電容量と引き続き行った0.2mA放電時の放電容量の合算値とした。放電平均電圧は、1.0mA放電時の放電容量の中間値での電圧とした。
【0066】
また、得られた1.0mA放電時の放電容量、放電平均電圧から体積エネルギー密度を算出したので、この結果も併せて表1にまとめて示す。なお、体積エネルギー密度の計算には電槽を含まない固体電解質2あるいは電解液を含浸したセパレータを介して一体化された正極1および負極3から成る発電要素のみの体積を分母に放電容量と放電平均電圧の積を分子に用いて求めた。
【0067】
【表1】
Figure 0004845244
【0068】
実施例1から3と比較例1の1.0mA放電時の放電容量と放電平均電圧を比較すると実施例1から3では導電剤が添加されているために大きな放電容量を示したが、導電剤を含浸していない比較例1の電池は全く放電することができず放電容量は0mAhとなった。また、実施例の電池は電極の厚みが200μm以上と厚いにもかかわらず充放電が可能となった。このことから酸化物導電剤の添加が電池の充放電特性を大きく改善していることがわかる。
【0069】
実施例1と比較例2を比較すると導電剤として同じSb23ドープSnO2をほぼ同量添加したにもかかわらず、高率放電時(1.0mA放電時)の放電容量に大きな差が現われ、電極表面近傍に集中的に導電剤を配置した方が出力特性に優れることが確認された。これは実施例1のリチウム電池のほうが集電体、電極間の電子移動がスムーズであったためと推定できる。
【0070】
比較例3のリチウム電池は、実施例1と同様電極表面の導電剤濃度が高い電極を用いている上、電解質にイオン伝導性の高い有機電解液を用いているために高率放電時の放電平均電圧が高く、放電容量も大きくなり、結果として体積エネルギー密度が大きくなったものである。
(信頼性評価)
次に実施例1から3および比較例2、3の電池を使って高温(60℃)サイクル試験を行った。サイクル試験は、充電電流値を0.2mA、放電電流値を同じ0.2mAとして電圧範囲2.8から2.0Vで50サイクルまで行った。表2に放電容量測定で得られた放電容量を初期放電容量とし、50サイクル目の放電容量と合せて示す。
【0071】
【表2】
Figure 0004845244
【0072】
表2の結果から、電解質に酸化物系無機固体電解質を用いた実施例1から3および比較例2のリチウム電池はほとんど容量低下がなく安定しているのに対し、有機電解液を用いた比較例3のリチウム電池は放電容量が約2分の1まで低下した。
【0073】
サイクル試験が終了した電池の外観を目視で確認したところ、有機電解液を用いた比較例3の電池では、電池の膨れが確認された。これに対して固体電解質を用いた実施例1から3および比較例2の電池では外観上の変化はなかった。
【0074】
これらのことから、高温において比較例2の電池は活物質と電解液がガス発生を伴う何らかの反応をして電池の内圧が上昇して電池が膨れたものと考えられる。
【0075】
以上のことから電解質に酸化物系無機固体電解質を用いた本発明にかかるリチウム電池はエネルギー密度、出力密度、さらに安全性、信頼性が高次にバランスしていることが分かった。
【0076】
本実施例では正極活物質、負極活物質ともそれぞれ一種類の例しか開示しなかったが、電解質に酸化物系無機固体電解質を用いさらに導電剤を少なくとも一方の表面近傍に高濃度に含有した電極を用いれば、他の活物質や導電剤を用いてもエネルギー密度、出力密度、安全性ならびに信頼性の向上に同様の効果が得られることは明白である。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、正極と負極が活物質を酸化物ガラスで結着して成り、かつその表面近傍において導電剤を中心部に比べて高濃度に含有することから、エネルギー密度が高く、出力密度、安全性、信頼性に優れたリチウム電池を提供できる。また、酸化物の充放電電圧は炭素材料の充放電電圧よりも貴な電位を示すことから、活物質、特に負極活物質に遷移金属酸化物を用いると、原理的にリチウムの析出反応が起こらず、電池の信頼性および安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリチウム電池の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・正極、2・・・・・・固体電解質、3・・・・・・負極、4・・・・・・正極電槽、5・・・・・・負極電槽、6・・・・・・封口樹脂

Claims (5)

  1. 一対の電極間に、リチウムを含む酸化物系無機固体電解質を介在させてなるリチウム電池において、
    前記一対の電極は、活物質とともに導電剤を含み、前記活物質が酸化物ガラスを介して結合されてなり、前記無機固体電解質と反対の側の表面近傍において、導電剤を中心部に比べて高濃度に含有していることを特徴とするリチウム電池。
  2. 前記一対の電極の少なくとも一方は、前記無機固体電解質と反対の側の表面近傍に加え、前記無機固体電解質側の表面近傍においても、導電剤を中心部に比べて高濃度に含有していることを特徴とする請求項1記載のリチウム電池。
  3. 前記導電剤がSb23ドープSnO2および/またはSnO2ドープIn23であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池。
  4. 前記導電剤がカーボンブラックおよび/または黒鉛であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム電池。
  5. 前記正極と負極の活物質がLi1+xMn2-X4(0≦X≦0.2)、LiMn2-YMeYO4(Me=Ni、Cr、Cu、Zn,0<Y≦0.6)、Li4Ti512およびLi4Mn412よりなる群から選択される少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム電池。
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