JP4844858B2 - 水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法 - Google Patents

水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高重合度の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法に関するもので、詳しくは、残存単量体量が低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法に関するものであって、化学品製造技術に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
高重合度の水溶性ポリアクリル酸系重合体、特に、粉末状の水溶性ポリアクリル酸系重合体は、クリーム、ローション、歯磨き、シャンプーなどの化粧品、水性塗料、水性接着剤、シーリング剤などの増粘剤、ハップ剤の基剤又は粘着性向上剤、顔料や骨材の分散剤・バインダー及び沈降防止剤、乾電池の金属粉の分散安定剤などとして様々な分野で使用されている。
【0003】
これらの用途において、特に化粧品、ハップ剤などに使用されるに際しては、それら製品の臭い、皮膚への刺激性、保存安定性などの理由により、残存単量体量をできる限り低減した水溶性ポリアクリル酸系重合体粉末が強く望まれている。
【0004】
高重合度の水溶性ポリアクリル酸系重合体、特にその粉末は、通常、水溶液中でアクリル酸を主とする単量体を重合し、乾燥、粉砕によって得るという方法で製造されている。
この際の乾燥方法としては、内部に蒸気等の熱媒体を通して高温にした回転ドラム表面や回転ディスクの上面あるいは2本ロールの間隙に重合体水溶液を薄膜状に付着させ乾燥する方法、スプレードライヤーなどを用いた噴霧による乾燥方法などが採用されている。
【0005】
前者の方法においては、水分と未反応の残存単量体を除去するためには、かなりの高熱をかけて乾燥しなければならない。
その結果として、水溶性ポリアクリル酸系重合体が熱の影響で、再度水に溶解したとき元の液性と異なった液性を示し、甚だしいときには水不溶性の重合体に変質してしまうという欠点がある。
また、この方法は、回転ドラム表面や回転ディスクの上面、あるいは2本ロールの表面から乾燥した重合体の剥離を容易にするため、一般的にシリコーン系の剥離剤を使用しなければならないため、再溶解した水溶液に濁りが生じるといった欠点も有している。
【0006】
このような熱履歴を少なくするには、後者の方法、すなわち、スプレードライヤーで乾燥する方法が優れている。
しかしながら、この方法では、残存の単量体が除去しきれないだけでなく、水溶性ポリアクリル酸系重合体の水溶液が良好なスプレー状態とならず、ドライヤー内が重合体で蜘蛛の巣状態になってしまい、事実上乾燥することができないという状態が発生しやすいという問題点を有している。
【0007】
また、水溶性ポリアクリル酸系重合体は、単量体及び重合体のいずれにも不溶性の有機溶剤を分散媒とする逆相懸濁重合による方法、単量体は可溶で重合体には不溶性の有機溶剤を使用する析出重合による方法などによっても製造されている。
【0008】
これらの方法は重合工程はやや複雑ではあるが、比較的容易に残留単量体低含有の粉末状の水溶性ポリアクリル酸系重合体を得ることができる方法である。
しかしながら、上記のように工程中に溶剤、一般的には、炭化水素系の有機溶剤を使用するため、重合体中の有機溶剤の残留を避けることが難しく、化粧品やハップ剤などへ使用するに好ましい重合体の調製が困難である。
【0009】
さらに、残存単量体を低減した水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法として、特開昭56−103207号公報には、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩などを乾燥の際に添加する方法が開示されている。
この方法は、重合体の分子量を低下させたり、重合体が着色したり、さらには水不溶性の重合体を生じ易いという問題点を有している。
【0010】
また、溶剤による水溶性ポリアクリル酸系重合体の洗浄方法も提案されている。
その際、使用する溶剤として、水によく溶ける水溶性ポリアクリル酸系重合体が溶け難く、単量体は溶け易い溶剤、一般的には、アルコール類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素系の溶剤が挙げられている。
【0011】
特開平11−49816号公報には、水溶性ポリアクリル酸塩の粉体に特定の溶媒を接触させ、適度に重合体を膨潤させ残存溶剤を溶媒層に移行させる方法が開示されて、水とエタノールの混合溶剤が推奨されている。
【0012】
しかしながら、これらの溶剤を使用する方法は、多量の溶剤を必要とする上、製品のロスが生じ、さらに回収溶剤の処置に費用がかかるなどの問題を含み、使用する溶剤によっては、残留溶剤による問題を発生させるおそれがある方法である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑み、この発明の発明者等は、アクリル酸などの残存単量体含有量が低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体、特に、その粉末の製造方法を提供すべく鋭意検討を行った。
その結果、アクリル酸などの残存単量体含有量が低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体、特にその粉末の製造において、ある特定の条件を選択すれば、再溶解して得られる重合体水溶液が透明感に優れ、ドラム、ディスク、ロールなど乾燥機器から混入する鉄分などの異物が少なく、品質上のバラツキも少なく、さらに操業上安全で簡素化された水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法となり得ることを見出し、この発明を完成した。
【0014】
この発明は、化粧品やハップ剤などの増粘剤として好適に使用することのできるとともに、操業上安全で簡素化された、残存アクリル酸含有量が大幅に低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法を提供せんとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
薄膜状にしたポリアクリル酸系重合体水溶液を、減圧度5,000Pa以下の減圧下に温度90℃以上200℃以下の温度で乾燥させて、
重合体中の残存単量体を、重合体100質量%に対して1.0質量%以下に低減させること
を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法である。
【0016】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の発明において、
前記ポリアクリル酸系重合体水溶液が、
平板状の非粘着性体の平板表面上で、薄膜状とされていること
を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法である。
【0017】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の発明において、
前記平板状の非粘着性体が、
弗素樹脂製又は弗素樹脂を含浸したガラスクロス製のベルト又はシートであること
を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法である。
【0018】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
前記減圧は、
減圧度が1,333Pa以下であること
を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法である。
【0019】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
前記ポリアクリル酸系重合体水溶液の粘度が、
ブルックフィールド型回転粘度で5,000〜100,000mPa・sであること
を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
水溶性ポリアクリル酸系重合体>
この発明における水溶性ポリアクリル酸系重合体は、アクリル酸を主成分とした単量体から構成されるもので、アクリル酸が構成単量体の70〜100質量%を占めているものが好ましい。
【0021】
前記アクリル酸以外の構成単量体としては、アクリル酸塩、特にアクリル酸ナトリウム塩が、得られる重合体の増粘剤としての性能も良好なため好ましく併用される。
その際、その他のビニル系単量体も、水溶性を損なわない限りにおいて、併用することができる。
【0022】
具体的なその他のビニル系単量体としては、例えば、オレフィン系不飽和カルボン酸、及びそれらのカルボン酸塩、スチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルニトリル、メタクリロニトリルなどがある。
【0023】
具体的なオレフィン系不飽和カルボン酸、及びそれらのカルボン酸塩としては、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸など、及びそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0024】
具体的なアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類としては、メチル、エチル、ブチル、イソブチル、オクチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルエクリレートなどのエーテル結合を有する(メタ)アクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有単量体、グリシジルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0025】
具体的なアクリルアミド類、メタクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0026】
また、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリメチルメタクリレート、末端メタクリレートポリスチレン、末端メタクリレートポリエチレングリコール、末端メタクリレートアクリロニトリルスチレン共重合体などのマクロモノマー類なども使用可能である。
【0027】
同様に、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエステル類なども使用することができる。
さらに必要に応じて、トリメトキシビニルシラン、トリトキシビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなども使用できる。
【0028】
さらに、架橋性単量体を使用することもできる。
その具体的な架橋性単量体としては、テトラアリルオキシエタン、アリルペンタエリスリトール、アリルサッカロース、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0029】
前記の架橋性単量体の使用量は、水溶性を損なわない程度で、全単量体100質量部に対して、2.0質量部以下が好ましい。
【0030】
この発明におけるポリアクリル酸系重合体水溶液は、前記のような単量体を、析出重合や逆相懸濁重合によって重合体粉末を得たのちに水溶液化したもの、単量体と生成する重合体のどちらにも良溶媒である低揮発性有機溶剤中で溶液重合したものを溶剤置換によって水溶液化したもの、あるいは直接前記の単量体を水溶液重合して得たものであっても良いが、工程の簡便さから直接前記の単量体を水溶液中で重合して得たものが好ましい。
【0031】
この水溶液重合の際に、少量の低揮発性の有機溶剤を使用することは差し支えない。
使用される有機溶剤としては、沸点が110℃以下の水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、メタノール(沸点65℃)、エタノール(沸点78℃)、イソプロパノール(沸点82℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)、アセトン(沸点56℃)、テトラハイドロフラン(沸点66℃)などが挙げられる。
【0032】
重合反応としては、通常のラジカル重合反応を用いることができる。
例えば、水媒体に単量体を10〜50質量%の濃度で仕込み、通常のラジカル重合開始剤を単量体100質量部に対して0.05〜2質量部使用し、窒素などの不活性ガス雰囲気下、温度50〜90℃の範囲で、2〜12時間反応させることにより重合体を得ることができる。
【0033】
あるいは、予め単量体とラジカル重合開始剤を混合し、温度50〜90℃の範囲で所定の温度にコントロールされた水媒体に、30分〜2時間の間隔で2〜10回に分割して投入し、重合させる方法でもよい。
【0034】
ラジカル開始剤は、過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物又はそれらの混合物が使用でき
また、過硫酸アンモニウムや過酸化水素水など水系重合開始剤を併用しても良い。
【0035】
具体的な過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0036】
具体的なアゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などが挙げられる。
【0037】
前記の方法で得られたポリアクリル酸系重合体水溶液の残存単量体は、後述するこの発明における乾燥工程で効率的に除去できるが、重合反応に際しても、できる限り少なくしておくことが好ましい。
【0038】
その具体的な方法として、反応時間の長期化、反応温度の高温化、反応末期又は終了期の触媒追加、密閉反応釜による反応制御、反応前の媒体及び単量体中の溶存酸素の低減化などが挙げられる。
【0039】
<乾燥工程>
この発明における乾燥工程は、水分を除去するのみならず、残存する単量体の除去も目的としており、薄膜化したポリアクリル酸系重合体水溶液を、減圧かつ高温で処理する工程である。
【0040】
その具体的な薄膜化の方法としては、シリコーンなどで離型処理された金属シート又は金属パッド、若しくは樹脂シートや樹脂パッド、あるいは回転ドラム表面や回転ディスクの上面などに、ポリアクリル酸系重合体水溶液を一定量又は連続的に供給するという方法でも良いが、弗素樹脂製又は弗素樹脂を含浸したガラスクロス製のシートやベルトに塗布し薄膜化するという方法が好ましい。
【0041】
シリコーンなどによる離型処理は、粉末化した水溶性ポリアクリル酸系重合体にシリコーンが移行し、該重合体を水溶液化した際に濁りが生じるため、使用は控えるのが好ましい。
また、回転ドラム表面や回転ディスクの上面での薄膜化は、その金属表面から剥ぎ取る際に、金属の微細な破片が混入し易いので、厳重な管理が必要である。
【0042】
また、減圧かつ高温での処理は、通常の真空乾燥機を用いて行うのが好ましい。
ポリアクリル酸系重合体水溶液に、引火性の有機溶剤が混入している場合は、防爆型の真空乾燥機を用いるのが好ましい。
【0043】
薄膜化されたポリアクリル酸系重合体水溶液を、前記の真空乾燥機に導入し、所定の減圧度、所定の温度で一度に水分を除去し乾燥しても良く、数回に分けて減圧度及び温度を変更して水分を除去し乾燥しても良い。
【0044】
さらには、工業的な観点から真空乾燥機内に連続的に薄膜化されたポリアクリル酸系重合体水溶液を導入し、連続的に水分を除去し乾燥することが好ましい。
そのような連続真空乾燥機として、大川原製作所のベルト式連続真空乾燥装置「ベルマックス」や、同じく大川原製作所の遠心式薄膜真空蒸発装置「エバポール」等が挙げられる。
【0045】
ベルト式連続真空乾燥装置としては、乾燥すべき溶液を表面に薄膜状に展延できる弗素樹脂を含浸したガラスクロス製ベルトなどを装備しおり、さらに内部が複数の区画に分割され、温度条件を変化させて乾燥することができ、さらには冷却も可能であり、溶液供給も製品の取り出しも容易な構造を有するものが、この発明における乾燥装置として特に好ましいものである。
【0046】
この発明において、ポリアクリル酸系重合体水溶液の薄膜化の度合いとしては、1cm以下の厚みの薄膜に調整するのが好ましく、より効率的に乾燥させるためには、0.5cm以下の厚みに調整するのがさらに好ましい。
【0047】
薄膜化に供されるポリアクリル酸系重合体水溶液の粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、5,000〜100,000mPa・sの範囲にあることが好ましい。
5,000mPa・s未満では、液垂れを起こし易くなり、100,000mPa・sを超えると、その高い粘調性のため取り扱いが難しくなるので、ポリアクリル酸系重合体水溶液の粘度がこの範囲になるように、濃縮や水又は水溶性有機溶剤によって稀釈して調整することが望ましい。
【0048】
この発明における適切な減圧度は、薄膜化の度合い、雰囲気温度、処理時間又はラインスピードによって異なるものであるが、5,000Pa以下であることが要求され、1,333Pa以下であることが好ましい
5,000Paを超えると水分の除去のみならず、残存単量体の除去も不十分となる
【0049】
この発明における適切な乾燥温度は温度90℃以上で、薄膜化の度合い、減圧度、処理時間又はラインスピードによって異なるが、好ましくは温度100℃以上であり、上限としては温度200℃である。
温度200℃を超えると、ポリアクリル酸系重合体の熱劣化が起こり、温度90℃未満では水分の除去のみならず、残存単量体の除去も不十分となる。
【0050】
また、乾燥温度は段階的に変化させることもできる。
例えば、急激な温度上昇による発泡を抑えるため、初期の一定時間を、例えば温度50℃程度に保ち、その後、緩やかに所定の温度まで上昇させるという手段を採用することは好ましいことである。
【0051】
水溶性粉末状ポリアクリル酸系重合体>
この発明の水溶性ポリアクリル酸系重合体は、以上のような条件により得られ、それをそのまま製品化してもよいが、目的に合わせて粉砕、微粉化し粉末状の水溶性ポリアクリル酸系重合体とするのが好ましい。
その際、粒径、粒度分布などは各種の粉砕機によって調整されうるもので、粉砕機としては、粗粒用ではジョークラッシャー、ロールクラッシャー、衝撃粉砕機など、微粉用として、ジェットミル、ボールミルなどが挙げられる。
【0052】
この発明における水溶性ポリアクリル酸系重合体は、その10質量%水溶液のブルックフィールド型回転粘度が、50〜5,000mPa・sであるものが好ましく、50mPa・s未満では、増粘剤として使用にて適さず、5,000mPa・sを超えると水溶液系重合では得難く実用的でない。
【0053】
また、この発明において製造される水溶性ポリアクリル酸系重合体、重合体中に含まれる残存単量体の量が、水溶性ポリアクリル酸系重合体を100質量%としたときに1.0質量%以下のもので、それはまた、この発明により容易に得られるものである。
【0054】
残存単量体の算出方法は、ヨウ化カリ−チオ硫酸ナトリウムによる滴定分析であっても、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーによる定量分析であっても良い。
【0055】
【作用】
この発明によれば、ポリアクリル酸系重合体水溶液を薄膜化し、5,000Pa以下の減圧、かつ温度90℃以上200℃以下の雰囲気温度下で乾燥し、必要によりその後に粉砕することによって、残存単量体含有量が低減され、残存単量体含有量が1.0質量%以下に低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体を得ることができる。
【0056】
アクリル酸を主とする残存単量体量が低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体は、商品の臭い、皮膚への刺激性、保存安定性などが重量な化粧品、ハップ剤などの増粘剤としての使用が可能となる。
【0057】
さらに、弗素樹脂製又は弗素樹脂を含浸したガラスクロス製のベルトに塗布し薄膜化することによって、通常は必要となるシリコーン系離型剤を使用する必要がなく、それにより、得られる水溶性ポリアクリル酸系重合体で水溶液を作製すると極めて透明感のあるものを得ることができる。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって、この発明の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法をさらに具体的に説明する。
【0059】
<実施例1>
ジブロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管及び攪拌翼を備えた3リットルの4つ口フラスコに、1,600gのイオン交換水を仕込み、200ml/minの流量の窒素ガスを吹き込みながら昇温した。
液温が温度80℃に達した時点で、あらかじめ2gのアゾビスシアノ吉草酸(以下、ACVAという。)を溶解させた400gのアクリル酸を、約100g/hrで連続的に投入し重合させた。
なお、重合中は、100ml/minの流量の窒素ガスを吹き込み続け、またアクリル酸の投入が終了してから1時間後に、少量のアセトンに溶解した1gのACVAを追触として投入し、その2時間後に冷却した。
重合中及び追触反応中は、温度90±2℃に制御した。
【0060】
得られたポリアクリル酸水溶液の固形分は20質量%、ブルックフィールド型回転粘度は60,000mPa・s、残存単量体はガスクロマトグラフィー分析で1.5質量%(対固形分)であった。
このポリアクリル酸水溶液を、シリコーン系離型剤を均一に薄く塗布し乾燥させたステンレスパッドに深さ5mm程になるように流し込み、このパッドを真空乾燥機に入れた。
減圧度を1333Paに調整し、温度90℃で2時間、さらに温度150℃で5時間保持し乾燥し固体状の水溶性ポリアクリル酸を得た。
【0061】
該固体状のポリアクリル酸を、コーヒーミルで3分間粉砕して粉末状とした水溶性ポリアクリル酸の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で0.8質量%(対固形分)で、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は700mPa・sであったが、離型剤であるシリコーンの残留による濁りが見られた。
【0062】
<実施例2>
ジブロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管及び攪拌翼を備えた3リットルの4つ口フラスコに、1800gのイオン交換水を仕込み、200ml/minの流量の窒素ガスを吹き込みながら昇温した。
液温が温度70℃に達した時点で、あらかじめ1gのアゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を溶解させた200gのアクリル酸を約100g/hrで連続的に投入し重合させた。
なお、重合中は、100ml/minの流量の窒素ガスを吹き込み続け、またアクリル酸の投入が終了してから1時間後に、少量のアセトンに溶解した1gのACVAを追触として投入し、その2時間後に冷却した。
重合中及び追触反応中は温度75±2℃に制御した。
【0063】
得られたポリアクリル酸水溶液の固形分は10質量%、ブルックフィールド型回転粘度は50,000mPa・s、残存単量体はガスクロマトグラフィー分析で2.3質量%(対固形分)であった。
このポリアクリル酸水溶液を、シリコーン系離型剤を均一に薄く塗布し乾燥させたステンレスパッドに深さ5mm程になるように流し込み、このパッドを真空乾燥機に入れた。
減圧度を1333Paに調整し、温度80℃で2時間、さらに温度150℃で7時間保持して固体状の水溶性ポリアクリル酸を得た。
【0064】
該固体状の水溶性ポリアクリル酸を、コーヒーミルで3分間粉砕して粉末状とした水溶性ポリアクリル酸の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で0.8質量%(対固形分)で、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は4000mPa・sであったが、離型剤であるシリコーンの残留による濁りが見られた。
【0065】
<実施例3>
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を、大川原製作所のベルト式連続真空乾燥装置「ベルマックスBV−101」を使用して乾燥し、固体状の水溶性ポリアクリル酸を得た。
乾燥装置内の減圧度は1,000Paに調整し、乾燥装置内第一ゾーンを温度140℃、第二ゾーンを温度120℃、第三ゾーンを温度30℃に設定し、各々の通過時間は、第一ゾーンで16分、第二ゾーンで24分、第三ゾーンで12分であった。
また、ポリアクリル酸水溶液の投入量は400g/hr、膜厚はおおよそ10mmであった。
【0066】
該固体状の水溶性ポリアクリル酸を、コーヒーミルで3分間粉砕し粉末状とした水溶性ポリアクリル酸の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で0.5質量%(対固形分)で、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は700mPa・sであり、水溶液の透明性は極めて良好であった。
【0067】
<実施例4>
ジブロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管及び攪拌翼を備えた3リットルの4つ口フラスコに、1,600gのイオン交換水を仕込み、200ml/minの流量の窒素ガスを吹き込みながら昇温した。
液温が温度80℃に達した時点で、あらかじめ2.5gのACVAを溶解させた380gのアクリル酸と20gのメタアクリル酸を約100g/hrで連続的に投入し重合させた。
なお、重合中は、100ml/minの流量の窒素ガスを吹き込み続け、またアクリル酸等の投入が終了してから1時間後に、少量のアセトンに溶解した1gのACVAを追触として投入し、その2時間後に冷却した。
重合中及び追触反応中は温度90±2℃に制御した。
【0068】
得られたアクリル酸共重合体水溶液の固形分は20質量%、ブルックフィールド型回転粘度は50,000mPa・s、残存単量体はガスクロマトグラフィー分析で1.8質量%(対固形分)であった。
【0069】
このアクリル酸共重合体水溶液を実施例3と全く同じ条件で、大川原製作所のベルト式連続真空乾燥装置「ベルマックスBV−101」を使用して乾燥し固体状の水溶性アクリル酸共重合体を得た。
【0070】
該固体状の水溶性アクリル酸共重合体を、コーヒーミルで3分間粉砕し粉末状とした水溶性アクリル酸共重合体の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で0.4質量%(対固形分)であり、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は1000mPa・sで、この水溶液の透明性は極めて良好であった。
【0071】
比較例1
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を、シリコーン系離型剤を均一に薄く塗布し乾燥させたステンレスパッドに深さ5mm程になるように流し込み、このパッドを真空乾燥機に入れた。
減圧度を7,000Paに調整し、温度90℃で3時間、さらに温度150℃で5時間保持し固体状の水溶性ポリアクリル酸を得た。
【0072】
該固体状の水溶性ポリアクリル酸を、コーヒーミルで3分間粉砕して得られた粉末状の水溶性ポリアクリル酸の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で1.2質量%(対固形分)であり、また、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は700mPa・sであった。
【0073】
<比較例
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を、シリコーン系離型剤を均一に薄く塗布し乾燥させたステンレスパッドに深さ10mm程になるように流し込み、このパッドを真空乾燥機に入れた。
減圧度を2,000Paに調整し、温度80℃で20時間保持して固体状の水溶性ポリアクリル酸を得た。
【0074】
該固体状の水溶性ポリアクリル酸を、コーヒーミルで3分間粉砕して粉末状とした水溶性ポリアクリル酸の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー分析で1.4質量%(対固形分)であり、また、10質量%の水溶液のブルックフィールド型回転粘度は700mPa・sであった。
【0075】
【発明の効果】
この発明によれば、ポリアクリル酸系重合体水溶液を薄膜化し、5,000Pa以下の減圧下に、温度90℃以上200℃以下の雰囲気温度下で乾燥させることによって、重合体中の残存単量体が、重合体100質量%に対して1.0質量%以下に低減した水溶性ポリアクリル酸系重合体を得ることができる。
また、必要に応じて粉砕することによって、残存単量体としてのアクリル酸量が大幅に低減された粉末状の水溶性ポリアクリル酸系重合体を得ることができる。
【0076】
前記手段によって得られた残存アクリル酸含有量が低減された水溶性ポリアクリル酸系重合体は、商品の臭い、皮膚への刺激性、保存安定性などが重要な化粧品、ハップ剤などの増粘剤として問題なく使用が可能なものである。
【0077】
さらに、弗素樹脂製又は弗素樹脂を含浸したガラスクロス製のベルトに塗布して薄膜化すれば、通常のシリコーン系離型剤を使用する必要がないので、得られる製品をきわめて透明感のある水溶液を作り得るものとすることができる。

Claims (5)

  1. 薄膜状にしたポリアクリル酸系重合体水溶液を、減圧度5,000Pa以下の減圧下に温度90℃以上200℃以下の温度で乾燥させて、
    重合体中の残存単量体を、重合体100質量%に対して1.0質量%以下に低減させること
    を特徴とする水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法。
  2. 前記ポリアクリル酸系重合体水溶液が、
    平板状の非粘着性体の平板表面上で、薄膜状とされていること
    を特徴とする請求項1に記載の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法。
  3. 前記平板状の非粘着性体が、
    弗素樹脂製又は弗素樹脂を含浸したガラスクロス製のベルト又はシートであること
    を特徴とする請求項2に記載の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法。
  4. 前記減圧は、
    減圧度が1,333Pa以下であること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法。
  5. 前記ポリアクリル酸系重合体水溶液の粘度が、
    ブルックフィールド型回転粘度で5,000〜100,000mPa・sであること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性ポリアクリル酸系重合体の製造方法。
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