JP5525629B2 - 固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法、バインダー用組成物、固体高分子電解質膜及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Description
(1)含フッ素系イオン交換樹脂を主成分として含有する固体高分子電解質の溶液を液膜の状態で加熱して濃縮することにより固体高分子電解質濃縮溶液を得る濃縮工程を含み、
前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液のチクソトロピーインデックスが0.3〜3となるように濃縮する、固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(2)前記含フッ素系イオン交換樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体を含む、(1)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
−(CFZCF2)− (1)
(式(1)中、Zは水素原子、塩素原子、フッ素原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる化学種を示す。)
−(CF2CF(−O−(CF2CF(CF3)O)n−(CF2)m−SO3H))− (2)
(式(2)中、mは0〜12の整数を示し、nは0〜2の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。)
(3)前記固体高分子電解質の溶液に含まれる溶媒が水及び有機溶媒からなる群より選ばれる1種以上の溶媒を含む、(1)又は(2)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(4)前記有機溶媒が極性溶媒である、(3)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(5)前記極性溶媒がプロトン性溶媒である、(4)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(6)前記プロトン性溶媒がアルコール類である、(5)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(7)前記アルコール類が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール及びt−ブタノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである、(6)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法
(8)前記溶媒が、水、アルコール類、及び、30質量%以上100質量%未満の水と0質量%超70質量%以下の前記アルコール類との混合溶媒、からなる群より選ばれる溶媒である、(3)〜(7)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(9)前記固体高分子電解質の溶液の固形分濃度が1〜30質量%である、(1)〜(8)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(10)前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液の固形分濃度が10〜45質量%となるように濃縮する、(1)〜(9)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(11)前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液のゲル分率が0.00〜0.05となるように濃縮する、(1)〜(10)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(12)前記濃縮工程において、薄膜式蒸発装置により前記固体高分子電解質の溶液を濃縮する、(1)〜(11)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(13)前記薄膜式蒸発装置が遠心式薄膜蒸発装置である、(12)の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
(14)固体高分子形燃料電池が備える電極触媒層のバインダーを形成するために用いられるバインダー用組成物であって、(1)〜(13)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法によって得られた固体高分子電解質濃縮溶液であるバインダー用組成物。
(15)(1)〜(13)のいずれか一つの固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法によって得られた固体高分子電解質濃縮溶液から形成された固体高分子形燃料電池用の固体高分子電解質膜。
(16)(14)のバインダー用組成物を用いて形成されたバインダーを含有する電極触媒層、及び/又は、(15)の固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜、を備える固体高分子形燃料電池。
まず、準備工程において固体高分子電解質を準備する。準備される固体高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基などの陽イオン交換基を有するポリマー、あるいは、第1級ないし第3級アミン基などの陰イオン交換基を有するポリマーに代表される、電解質基を有する固体高分子材料である。より具体的には、固体高分子電解質として、例えば、ポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物;ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンスルホンなどの構造を有するポリマーにスルホン酸基又はリン酸基(含ドープ)、カルボン酸基等を導入したポリマー;パーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマー;パーフルオロアルキルカルボン系酸ポリマー;並びに、上記ポリマーを親水性成分ブロックとし疎水性基を有するポリマーを疎水性成分ブロックとしたこれらの共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。このような固体高分子電解質のうち、含フッ素系イオン交換樹脂又は炭化水素系イオン交換樹脂を主成分として含有するものが好ましく、含フッ素系イオン交換樹脂を主成分として含有するものがより好ましい。固体高分子電解質中の含フッ素系イオン交換樹脂又は炭化水素系イオン交換樹脂の含有量は、1〜100質量%であると好ましく、30〜100質量%であるとより好ましく、50〜100質量%であると更に好ましい。ただし、固体高分子電解質は上述のものに限定されない。
本実施形態において用いられる含フッ素系イオン交換樹脂は、下記一般式(3)で表されるフッ化オレフィンのモノマーと下記一般式(4)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物(以下、単に「フッ化ビニル化合物」という。)のモノマーとの共重合体を含む含フッ素系イオン交換樹脂前駆体を加水分解して得られるものであると好ましい。この含フッ素系イオン交換樹脂は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位と上記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体を含むものとなる。
CF2=CFZ (3)
ここで、式(3)中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる化学種を示す。
CF2=CF(−O−(CF2CF(CF3)O)n−(CF2)m−W) (4)
ここで、式(4)中、Wは加水分解により−SO3H(スルホン酸基)に変換し得る官能基を示し、例えば−SO2F、−SO2Cl、−SO2Brが挙げられるが、これらに限定されない。mは0〜12の整数を示し、nは0〜2の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。
EW=(W/M)−22
本実施形態に係る溶液調製工程では、上述のようにして準備した固体高分子電解質から、その溶液を調製する。ここで、固体高分子電解質の溶液(以下、単に「高分子電解質溶液」という。)は、通常の意味での分子分散した高分子電解質溶液のみでなく、固体高分子電解質が溶媒に溶解若しくは部分溶解したもの、固体高分子電解質がミセルのような分子会合体を形成して溶媒に溶解したもの、固体高分子電解質が溶媒により膨潤して分散したもの、又は、固体高分子電解質が溶媒中にコロイド状に分散したものをも含む。
本実施形態における濃縮工程では、高分子電解質溶液を液膜の状態で加熱して濃縮することにより固体高分子電解質濃縮溶液(以下、単に「濃縮溶液」という。)を得る。より具体的には、加熱面上に高分子電解質溶液の液膜を形成させ、その溶液中の溶媒を蒸発させて濃縮する(以下、この濃縮方法を「薄膜式」と記載する。)。固体高分子電解質が含フッ素系イオン交換樹脂である場合、その樹脂の濃縮溶液中の含有量(すなわち固形分濃度)を10〜45質量%となるように濃縮することが好ましい。これにより、濃縮溶液の耐保存性が良好なものとなる。
TI=η3.83/η191.5 (I)
上述のようにして得られた濃縮溶液は、固体高分子形燃料電池が備える電極触媒層のバインダーを形成するために用いられるバインダー用組成物として有用である。固体高分子形燃料電池の電極触媒層は、触媒金属の微粒子と、これを担持した導電剤と、これを結合したバインダーから構成され、必要に応じて触媒の被毒が生じない範囲で他の成分を含んでいてもよい。そのような他の成分としては、例えば、可塑剤、安定剤、密着助剤、離型剤、保水剤、無機又は有機固体粒子、増感剤、レベリング剤、着色剤、撥水剤等の添加剤が挙げられる。
本実施形態の固体高分子形燃料電池用の固体高分子電解質膜(以下、単に「高分子電解質膜」という。)は、イオン交換膜であって、上記濃縮溶液から形成されたものである。
本実施形態に係る固体高分子形燃料電池のMEAは高分子電解質膜と、その両面に接合したアノード及びカソードの2種類の電極触媒層とを備える。このMEAは、電極触媒層の更に外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものであってもよい。本実施形態に係るMEAは、上記本実施形態に係る高分子電解質膜及び/又は電極触媒層を備える以外は、公知のMEAと同様の構成を有していればよい。このMEAの製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、高分子電解質溶液に電極物質となる白金担持カーボンを分散させて電極インク(ペースト)を調製する。この電極インクをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。次に、PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に高分子電解質膜を挟み込み、100℃〜200℃で熱プレスにより転写接合してMEAを得ることができる。
本実施形態の固体高分子形燃料電池は、本実施形態に係る電極触媒層及び/又は高分子電解質膜を備えるものであり、それ以外は公知のものと同様の構成を有していればよい。上記MEAのアノードとカソードとを高分子電解質膜の両面に位置する電子伝導性材料を介して互いに結合させると、作動可能な固体高分子形燃料電池を得ることができる。固体高分子形燃料電池の作製方法は、例えば、FUEL CELL HANDBOOK(VAN NOSTRAND REINHOLD、A.J.APPLEBY et.al、ISBN 0−442−31926−6)、化学One Point、燃料電池(第二版)、谷口雅夫,妹尾学編,共立出版(1992)等に詳しく記載されている。
本発明における諸物性の試験方法は次の通りである。
酸型の電解質膜(一主面の面積がおよそ2〜10cm2のもの)を50mLの25℃飽和NaCl水溶液(0.26g/mL)に浸漬し、攪拌しながら10分間放置した。その後、和光純薬工業社製試薬特級フェノールフタレインを指示薬として和光純薬工業社製試薬特級0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和後に得られたNa型の電解質膜を純水ですすいだ後、110℃にて真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、Na型の電解質膜の質量をW(mg)とし、下記式により当量質量(g/eq)を求めた。
当量質量(EW)=(W/M)−22
乾燥した室温の秤量瓶の質量を精秤し、この質量をW0とした。測定した秤量瓶に測定対象の濃縮溶液を10g入れ、精秤し、その質量をW1とした。これをエスペック株式会社製LV−120型真空乾燥機を用いて温度110℃、相対真空度−0.09MPa以下で3時間以上乾燥した。その後の濃縮溶液を、シリカゲル入りのデシケーター中で冷却し、室温になった後に精秤し、その質量をW2とした。(W2−W0)/(W1−W0)の計算式で導出した値を百分率で表し、5回測定しその相加平均値を濃縮溶液の電解質濃度とした。
東機産業株式会社製TV−33形粘度計・コーンプレートタイプ(E型粘度計)及び1°34’×R24の標準コーンロータ(ロータコード01)を用い、温度25℃、ずり速度3.83sec-1及び191.5sec-1にて測定を開始した。測定開始後、2分経過後の値を濃縮溶液の粘度とした。
濃縮溶液中の固形分濃度をイオン交換水で1質量%に希釈した後、その希釈した濃縮溶液の電解質濃度を上記、濃縮溶液の電解質濃度の測定方法に準じて測定し、これをW3とした。次に、希釈した濃縮溶液10gを佐久間製作所社製M−160−IV型遠心分離機を用いて、5000rpmで30分間、遠心分離処理した。その後、上澄み液の電解質濃度を上記と同様にして測定し、これをW4とした。1−(W4/W3)の計算式で導出した値をゲル分率とした。
上記一般式(3)においてZがフッ素原子であるフッ化オレフィン(CF2=CF2)と、上記一般式(4)においてm=2、n=0、Wが−SO2Fであるフッ化ビニル化合物(CF2=CF(−O−(CF2)2−SO2F))との共重合体(EW=720)からなる含フッ素系イオン交換樹脂前駆体を準備した。続いて、この含フッ素系イオン交換樹脂前駆体を押出機を用いて、丸口金から270℃で押し出した後に切断し、直径2〜3mm、長さ4〜5mmの円柱状のペレットを形成した。これとは別に、KOH濃度15質量%及びDMSO濃度30質量%となるようにKOHとDMSOとを水に添加してKOH水溶液を調製した。上記含フッ素系イオン交換樹脂前駆体のペレット510gを、そのKOH水溶液2460gに6時間浸漬し、含フッ素系イオン交換樹脂前駆体における−SO2Fを−SO3Kに変換した。
上記一般式(3)においてZがフッ素原子であるフッ化オレフィン(CF2=CF2)と、上記一般式(4)においてm=2、n=1、Wが−SO2Fであるフッ化ビニル化合物(CF2=CF(−O−(CF2CF(CF3)O)−(CF2)2−SO2F))との共重合体(EW=880)からなる含フッ素系イオン交換樹脂前駆体を準備した。続いて、この含フッ素系イオン交換樹脂前駆体を押出機を用いて、丸口金から270℃で押し出した後に切断し、直径2〜3mm、長さ4〜5mmの円柱状のペレットを形成した。これとは別に、KOH濃度15質量%及びDMSO濃度30質量%となるようにKOHとDMSOとを水に添加してKOH水溶液を調製した。上記含フッ素系イオン交換樹脂前駆体のペレット510gを、そのKOH水溶液2460gに6時間浸漬し、含フッ素系イオン交換樹脂前駆体における−SO2Fを−SO3Kに変換した。
まず、円錐型蒸発管を備える遠心式薄膜蒸発装置である大川原製作所社製エバポール(登録商標)CEP−1型薄膜式蒸発装置を準備した。製造例1で得られた20kgの含フッ素系イオン交換樹脂溶液Aをその蒸発装置の円錐型蒸発管の中心部に1.7kg/minで連続的に供給した。このとき、65℃にて円錐型蒸発管を1500rpmで回転させながら、液膜周囲の圧力20kPa(絶対圧力)の処理条件で、含フッ素系イオン交換樹脂濃度が20質量%になるまで濃縮し、濃縮溶液AS1を得た。濃縮溶液AS1の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
含フッ素系イオン交換樹脂溶液Aに代えて製造例2で得られた含フッ素系イオン交換樹脂溶液Bを用いた以外は実施例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液BS1を得た。濃縮溶液BS1の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
処理条件の温度を65℃から85℃に代えた以外は実施例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS2を得た。濃縮溶液AS2の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
処理条件の絶対圧力を20kPaから30kPaに代えて、含フッ素系イオン交換樹脂濃度を20質量%から30質量%に代えた以外は実施例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS3を得た。濃縮溶液AS3の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂30.0質量%、エタノール0.0質量%、水70.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
処理条件の温度及び絶対圧力を65℃、20kPaから45℃、10kPaに代えて、含フッ素系イオン交換樹脂濃度を20質量%から30質量%に代えた以外は実施例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS4を得た。濃縮溶液AS4の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂30.0質量%、エタノール0.0質量%、水70.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
濃縮の際に蒸発した溶媒の一部をリサイクルして液膜表面の局部的な乾燥を抑制させた以外は実施例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS5を得た。濃縮溶液AS5の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管しても、粘度及びTI値に変化がみられなかった。
実施例1で得られた含フッ素系イオン交換樹脂溶液の濃縮溶液AS1を、シリコーン系離型剤で表面処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にダイコータを用いて塗布した。この際、乾燥後に50μmの厚みになるように濃縮溶液AS1を塗布した。その後、110℃で60分間塗膜を乾燥し、続いて170℃で60分間の加熱処理を施して高分子電解質膜を得た。
さらに160℃、面圧0.1MPaでそれらの積層体をホットプレスすることによりMEAを作製した。
実施例1で得られた含フッ素系イオン交換樹脂溶液の濃縮溶液AS11.82gに、Pt担持カーボン(田中貴金属(株)社製、商品名「TEC10E40E」、Pt担持量:36.4質量%)1.00gを添加し、さらに4.00gのエタノールを添加して後、ホモジナイザーでよく混合して電極インク(ペースト)を得た。
評価は実施例7と同様の方法で実施した。
製造例1で得られた含フッ素系イオン交換樹脂溶液Aを攪拌機付き回分式反応器に20kg仕込み、65℃にて10rpmで攪拌しながら30kPa(絶対圧力)で含フッ素系イオン交換樹脂濃度が20質量%になるまで濃縮し、濃縮溶液AS6を得た。濃縮溶液AS6の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管したところ、粘度及びTI値は若干高くなった。
含フッ素系イオン交換樹脂溶液Aに代えて製造例2で得られた含フッ素系イオン交換樹脂溶液Bを用いた以外は比較例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液BS1を得た。濃縮溶液BS1の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管したところ、粘度及びTI値は若干高くなった。
処理条件の温度及び絶対圧力を65℃、25kPaから85℃、30kPaに代えた以外は比較例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS7を得た。濃縮溶液AS7の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管したところ、粘度及びTI値は若干高くなった。
処理条件の温度及び絶対圧力を65℃、25kPaから65℃、30kPaに代えた以外は比較例1と同様にして濃縮し、濃縮溶液AS8を得た。濃縮溶液AS8の組成は、含フッ素系イオン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水80.0質量%であった。この濃縮溶液を3ヶ月間密閉容器内で常温保管したところ、粘度及びTI値は若干高くなった。
また、本発明の固体高分子電解質濃縮溶液は、固体高分子形燃料電池の電極触媒層のバインダーとして好適に用いられる。
Claims (16)
- 含フッ素系イオン交換樹脂を主成分として含有する固体高分子電解質の溶液を液膜の状態で加熱して濃縮することにより固体高分子電解質濃縮溶液を得る濃縮工程を含み、
前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液のチクソトロピーインデックスが0.3〜3となるように濃縮する、固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。 - 前記含フッ素系イオン交換樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体を含む、請求項1に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
−(CFZCF2)− (1)
(式(1)中、Zは水素原子、塩素原子、フッ素原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる化学種を示す。)
−(CF2CF(−O−(CF2CF(CF3)O)n−(CF2)m−SO3H))− (2)
(式(2)中、mは0〜12の整数を示し、nは0〜2の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。) - 前記固体高分子電解質の溶液に含まれる溶媒が水及び有機溶媒からなる群より選ばれる1種以上の溶媒を含む、請求項1又は2に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記有機溶媒が極性溶媒である、請求項3に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記極性溶媒がプロトン性溶媒である、請求項4に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記プロトン性溶媒がアルコール類である、請求項5に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記アルコール類が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール及びt−ブタノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである、請求項6に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記溶媒が、水、アルコール類、及び、30質量%以上100質量%未満の水と0質量%超70質量%以下の前記アルコール類との混合溶媒、からなる群より選ばれる溶媒である、請求項3〜7のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記固体高分子電解質の溶液の固形分濃度が1〜30質量%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液の固形分濃度が10〜45質量%となるように濃縮する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記濃縮工程において、前記固体高分子電解質濃縮溶液のゲル分率が0.00〜0.05となるように濃縮する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記濃縮工程において、薄膜式蒸発装置により前記固体高分子電解質の溶液を濃縮する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 前記薄膜式蒸発装置が遠心式薄膜蒸発装置である、請求項12に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法。
- 固体高分子形燃料電池が備える電極触媒層のバインダーを形成するために用いられるバインダー用組成物であって、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法によって得られた固体高分子電解質濃縮溶液であるバインダー用組成物。 - 請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法によって得られた固体高分子電解質濃縮溶液から形成された固体高分子形燃料電池用の固体高分子電解質膜。
- 請求項14に記載のバインダー用組成物を用いて形成されたバインダーを含有する電極触媒層、及び/又は、請求項15に記載の固体高分子形燃料電池用固体高分子電解質膜、を備える固体高分子形燃料電池。
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JP2013024775A JP5525629B2 (ja) | 2013-02-12 | 2013-02-12 | 固体高分子電解質濃縮溶液の製造方法、バインダー用組成物、固体高分子電解質膜及び固体高分子形燃料電池 |
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