JP4839724B2 - 光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法 - Google Patents

光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法 Download PDF

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本発明は、医薬および光学材料の重要中間体である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法に関する。
本発明で対象とする光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の従来の製造方法は、次の三つに大別でき、それぞれ代表的な文献を引用する。
1)光学活性α−アミノ酸誘導体をフッ化水素・ピリジン錯体中で脱アミノフッ素化する方法(非特許文献1)、2)ラセミのα−フルオロカルボン酸エステル誘導体を酵素による不斉加水分解で光学分割する方法(非特許文献2)と、3)光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体を種々の手法で脱ヒドロキシフッ素化する方法が開示されている。3)の製造方法は、本発明と関連しており、3−1)DAST[(C252NSF3]による方法(非特許文献3)、3−2)フルオロアルキルアミン試薬による方法(非特許文献4)と、3−3)ヒドロキシル基をスルホン酸エステル基に変換してフッ素アニオン(F-)で置換する方法(非特許文献5)がある。
またパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドを使用する脱ヒドロキシフッ素化反応として、4)ヒドロキシル基を有する基質をDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン)等の特殊な有機塩基の存在下にパーフルオロブタンスルホニルフルオリド(C49SO2F)等のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリド(RfSO2F;Rfはパーフルオロアルキル基を表す)で脱ヒドロキシフッ素化する方法(特許文献1、特許文献2)と、5)ヒドロキシル基を有する基質をトリエチルアミン[(C253N]等の有機塩基とトリエチルアミン・三フッ化水素錯体[(C253N・3HF]等のフッ素化剤の存在下にパーフルオロブタンスルホニルフルオリドで脱ヒドロキシフッ素化する方法(非特許文献6、非特許文献7)が開示されている。
米国特許第5760255号明細書 米国特許第6248889号明細書 Tetrahedron Letters(英国),1993年,第34巻,第2号,p.293−296 Organic Syntheses(米国),1990年,第69巻,p.10−18 Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1:Organic and Bio−Organic Chemistry(1972−1999)(英国),1980年,第9号,p.2029−2032 日本化学会誌(日本),1983年,第9号,p.1363−1368 Tetrahedron;Asymmetry(英国),1994年,第5巻,第6号,p.981−986 Organic Letters(米国),2004年,第6巻,第9号,p.1465−1468 第227回 米国化学会 春季年会要旨集(227th ACS Spring National Meeting Abstracts),2004年3月28日〜4月1日,ORGN 198,D.Zarkowsky他(Merck)
本発明の目的は、医薬および光学材料の重要中間体である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の工業的な製造方法を提供することにある。
非特許文献1および非特許文献4の製造方法では、光学純度の高いα−フルオロカルボン酸エステル誘導体を得ることができなかった。非特許文献2の製造方法では、ラセミ体の光学分割であるために収率が50%を超えることがなかった。非特許文献3の製造方法では、非常に高価で且つ大量の取り扱いが危険なDASTを使用する必要があった。非特許文献5の製造方法では、ヒドロキシル基をスルホン酸エステル基に変換する工程とフッ素アニオン(F-)で置換する工程を別々に行う必要があった。また該二工程を通して光学純度の低下が有意に認められ、基質として使用した光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の光学純度が目的生成物である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度に反映されないという問題点があった。
特許文献1、特許文献2、非特許文献6および非特許文献7においては、ヒドロキシル基を有する基質のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドを使用する脱ヒドロキシフッ素化反応が広く開示されており、ヒドロキシル基をスルホン酸エステル基(パーフルオロアルカンスルホン酸エステル基)に変換する工程とフッ素アニオン(F-)で置換する工程を一つの反応器内で連続的に行えるというメリットを有している。しかしながら、環境への長期残留性と毒性が指摘され工業的な使用が制限されている炭素数4以上のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドを使用しており[例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸誘導体の環境への長期残留性と毒性については、ファルマシア Vol.40 No.2 2004を参照]、さらに特許文献1および特許文献2の製造方法では、工業的な使用において高価なDBU等の特殊な有機塩基を使用する必要があり、また非特許文献6および非特許文献7の製造方法では、トリエチルアミン・三フッ化水素錯体等のフッ素化剤をパーフルオロブタンスルホニルフルオリドの他に別途加える必要があった。
また特許文献1、特許文献2、非特許文献6および非特許文献7の脱ヒドロキシフッ素化反応では、パーフルオロアルカンスルホニルフルオリドは基質のヒドロキシル基をパーフルオロアルカンスルホニル化し、引き続くフッ素アニオン(F-)との置換反応においてパーフルオロアルカンスルホネートアニオン(RfSO3 -;Rfはパーフルオロアルキル基を表す)として脱離するため、フッ素の原子経済性の観点から言及すれば、充分なスルホニル化能と脱離能を有するものであれば、炭素鎖が短い方が工業的な使用においてより有利であるが[パーフルオロオクタンスルホニルフルオリド(C817SO2F)<パーフルオロブタンスルホニルフルオリド<トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)]、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドを使用する脱ヒドロキシフッ素化反応は具体的には開示されていなかった。さらに非特許文献7のトリフルオロメタンスルホン酸無水物−トリエチルアミン・三フッ化水素錯体−トリエチルアミン系からなる脱ヒドロキシフッ素化反応では、反応系中でガス状(沸点−21℃)のトリフルオロメタンスルホニルフルオリドを生成し、基質のヒドロキシル基が効率的にトリフルオロメタンスルホニル化できず、沸点の高い(64℃)パーフルオロブタンスルホニルフルオリドとの組み合わせ(パーフルオロブタンスルホニルフルオリド−トリエチルアミン・三フッ化水素錯体−トリエチルアミン系)が好適であると開示されており、脱ヒドロキシフッ素化剤のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドとして沸点の低いトリフルオロメタンスルホニルフルオリドは好適でないことが明示されていた。
さらに特許文献1、特許文献2、非特許文献6および非特許文献7の脱ヒドロキシフッ素化反応の好適な基質として、本発明で対象とする光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体は開示されておらず、該脱ヒドロキシフッ素化反応が光学純度の高い光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法に適応できることも開示されていなかった。
この様に光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を工業的に製造できる方法が強く望まれていた。
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体をトリエチルアミン等の工業的に安価で且つ汎用されている有機塩基の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリドと反応させることにより光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体が製造できることを明らかにした。
本製造方法の特徴は、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のトリフルオロメタンスルホニル化がトリフルオロメタンスルホニルフルオリドを使用することにより良好に進行し、引き続くフッ素置換反応がトリフルオロメタンスルホニル化において反応系内で等量副生したトリエチルアミン等の有機塩基のフッ化水素塩または錯体だけで良好に進行することにある。この様な反応条件で脱ヒドロキシフッ素化反応が良好に進行する基質は未だ公知文献に開示されておらず、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の基質特異性によるものである。また該脱ヒドロキシフッ素化の反応条件では、光学純度の低下が殆ど認められず、基質として使用した光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の光学純度が目的生成物である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度に反映されることを明らかにした。
すなわち、本発明は、一般式[1]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体を有機塩基の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反応させることにより、一般式[2]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法を提供する。
[式中、Rは炭素数1から12の直鎖のアルキル基または炭素数3から12の分岐鎖のアルキル基を表し、アルキル基の任意の炭素原子上に、芳香族炭化水素基、不飽和炭化水素基、炭素数1から6の直鎖のアルコキシ基または炭素数3から6の分枝のアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体またはヒドロキシル基の保護体が一つまたは任意の組み合わせで二つ置換することもできる。R1は炭素数1から8の直鎖のアルキル基または炭素数3から8の分岐鎖のアルキル基を表す。RとR1のアルキル基の任意の炭素原子同士が共有結合を形成してもよい。*は不斉炭素を表す]
また、本発明は、一般式[3]
Figure 0004839724
[式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体をトリエチルアミン[(C253N]の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反応させることにより、一般式[4]
Figure 0004839724
[式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法を提供する。
また、本発明は、式[5]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体をトリエチルアミン[(C253N]の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反応させることにより、式[6]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法を提供する。
また、本発明は、上記の何れかにおいて、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)のみをフッ素化剤として使用し、他のフッ素化剤を併用しないことを特徴とする、上記の何れかに記載した製造方法を提供する。
また、本発明は、上記の方法で製造した、一般式[2]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、一般式[7]
Figure 0004839724
で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法を提供する。
[式中、Rは炭素数1から12の直鎖のアルキル基または炭素数3から12の分岐鎖のアルキル基を表し、アルキル基の任意の炭素原子上に、芳香族炭化水素基、不飽和炭化水素基、炭素数1から6の直鎖のアルコキシ基または炭素数3から6の分枝のアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体またはヒドロキシル基の保護体が一つまたは任意の組み合わせで二つ置換することもできる。R1は炭素数1から8の直鎖のアルキル基または炭素数3から8の分岐鎖のアルキル基を表す。RとR1のアルキル基の任意の炭素原子同士が共有結合を形成してもよい。*は不斉炭素を表す]
また、本発明は、上記の方法で製造した、一般式[4]
Figure 0004839724
[式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、式[8]
Figure 0004839724
[式中、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法を提供する。
また、本発明は、上記の方法で製造した、式[6]
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、式[9]
Figure 0004839724
で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法を提供する。
本発明の製造方法は、現在までに公知文献に開示されている光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法の中で工業的に最も安価に実施できる手段である。本発明の製造方法が従来の技術に比べて有利な点を以下に述べる。
非特許文献1および非特許文献4に対しては、目的生成物である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度が基質として使用した光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の光学純度に反映されるため、光学純度の高い基質を使用することにより光学純度の高い目的生成物を得ることができる。
非特許文献2に対しては、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の脱ヒドロキシフッ素化反応による光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体への変換であるために収率が50%に制限されない。
非特許文献3に対しては、DASTの様な非常に高価で且つ大量の取り扱いが危険な試薬を使用する必要がない。
非特許文献5に対しては、ヒドロキシル基をスルホン酸エステル基に変換する工程とフッ素アニオン(F-)で置換する工程を一つの反応器内で連続的に行うことができ、また該脱ヒドロキシフッ素化の反応条件では、光学純度の低下が殆ど認められず、基質として使用した光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の光学純度が目的生成物である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度に反映される。
特許文献1、特許文献2、非特許文献6および非特許文献7に対しては、環境への長期残留性と毒性が問題となっている炭素鎖が長いパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドを使用する必要がなく、フッ素の原子経済性が最も高いトリフルオロメタンスルホニルフルオリドが使用できる。さらに特許文献1および特許文献2に対しては、DBU等の様な工業的な使用において高価で特殊な有機塩基を使用する必要がなく、また非特許文献6および非特許文献7に対しては、トリエチルアミン・三フッ化水素錯体等のフッ素化剤を反応系内に別途加える必要がなく、本発明の製造方法ではフッ素置換反応がトリフルオロメタンスルホニル化において反応系内で等量副生したトリエチルアミン等の有機塩基のフッ化水素塩または錯体だけで良好に進行する。
また本発明で対象とする光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドによる脱ヒドロキシフッ素化反応では、特許文献1および特許文献2で好適な有機塩基として開示されたDBUを使用すると、目的生成物である光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体が収率良く得られず、本発明で開示したトリエチルアミンの使用が好適であるという新たな発明の効果を見出した(実施例3 vs.比較例1、比較例2)。DBUはトリエチルアミンに比べて塩基性が強い有機塩基に分類され、この強い塩基性に起因してカルボン酸エステル基の加水分解や、パーフルオロアルカンスルホン酸エステル体からパーフルオロアルカンスルホン酸が脱離して不飽和化合物を副生する等の副反応が起こっているものと考えられる。従って本発明で対象とする光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドによる脱ヒドロキシフッ素化反応では、トリエチルアミン等の様なDBUに比べて弱い有機塩基を使用する方が優れており、該有機塩基との好適な組み合わせは光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の基質特異性によるところが大きい。
本発明で開示した特徴を有する脱ヒドロキシフッ素化反応は、従来のパーフルオロアルカンスルホニルフルオリドを使用する脱ヒドロキシフッ素化反応の特許文献1、特許文献2、非特許文献6および非特許文献7では開示されておらず、また本発明で対象とする光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法に好適に適応できることも開示されていなかった。
本発明の製造方法は選択性が高く分離の難しい不純物を殆ど副生しないため、光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を工業的に製造するための極めて有用な方法である。
以下、本発明の光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の製造方法について詳細に説明する。
本製造方法は、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体を有機塩基の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリドと反応させることによりなる。さらに得られた光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることによりなる(スキーム1)。
Figure 0004839724
初めに第一工程のフッ素化では、先ず一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のトリフルオロメタンスルホニル化が進行し、引き続いて反応系内で副生した有機塩基のフッ化水素塩または錯体によりフッ素置換反応が進行し、目的生成物である一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を与える。本フッ素化では、引き続くフッ素置換反応がトリフルオロメタンスルホニル化において反応系内で等量副生したトリエチルアミン等の有機塩基のフッ化水素塩または錯体だけで良好に進行することが重要な特徴である。このため該フッ素化ではトリフルオロメタンスルホニルフルオリドの他にフッ素化剤(トリエチルアミン・三フッ化水素錯体等)を併用することなく実施することが好ましい。トリフルオロメタンスルホニル化ではα位の立体化学は保持され、引き続くフッ素置換反応ではα位の立体化学は反転する。従って光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のα位R体からは光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体のα位S体が得られ、同様にα位S体からはα位R体が得られる。
一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基が挙げられ、炭素数3以上のアルキル基は直鎖または分枝を採ることができる。またアルキル基の任意の炭素原子上に、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、ビニル基等の不飽和炭化水素基、炭素数1から6の直鎖のアルコキシ基または炭素数3から6の分枝のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体またはヒドロキシル基の保護体が一つまたは任意の組み合わせで二つ置換することもできる(「置換されたアルキル基」)。カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基としては、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.に記載された保護基を使用することができ、具体的にカルボキシル基の保護基としてはエステル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としてはベンジル基、アシル基(アセチル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基等)、フタロイル基等が挙げられ、ヒドロキシル基の保護基としてはベンジル基、2−テトラヒドロピラニル基、アシル基(アセチル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基等)、シリル基(トリアルキルシリル基、アルキルアリールシリル基等)等が挙げられ、特に1,2−ジヒドロキシル基の保護基としては2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを形成する保護基等が挙げられる。
本発明で対象とする製造方法は、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のRが「芳香族炭化水素基(光学活性炭素(C*)に直接、芳香族環が結合するものをいう。例えば、フェニル基、トリル基など)」である場合にも採用はできる。しかし、この場合、Rがアルキル基もしくは、置換されたアルキル基の場合に比べて、目的生成物である一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度が有意に低下する。このため、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のRとしては、アルキル基もしくは置換されたアルキル基が好適である(基質として光学活性マンデル酸エステル誘導体を使用した場合に目的生成物であるフッ素化物がラセミ体として得られるという同様の現象が非特許文献5においても開示されている)。
なお、不斉炭素(C*)に直接、芳香族炭化水素基が結合する場合には、光学純度が有意に低下するが、アルキル炭素を1原子以上介して、その置換基として芳香族炭化水素基が存在する場合(「置換されたアルキル基」に該当する)(例えば、実施例3に示されるPh−CH2CH2基)には、そのような光学純度の低下は起こらない。
一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のR1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられ、炭素数3以上のアルキル基は直鎖または分枝を採ることができる。 さらに一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体のRとR1のアルキル基の任意の炭素原子同士が共有結合を形成してラクトンを採ることもできる。
一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体の不斉炭素の立体化学としては、R配置またはS配置を採ることができ、エナンチオマー過剰率(%ee)としては、特に制限はないが、90%ee以上のものを使用すればよく、通常は95%ee以上が好ましく、特に97%ee以上がより好ましい。
一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体は、Synthetic Communications(米国),1991年,第21巻,第21号,p.2165−2170を参考にして市販されている種々の光学活性α−アミノ酸から同様に製造することができる。また実施例および比較例で使用した(S)−乳酸エチルエステルと(R)−4−フェニル−2−ヒドロキシブタン酸エチルエステルは市販品を利用した。
トリフルオロメタンスルホニルフルオリドの使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に1〜5モルがより好ましい。上記の様に、本発明は引き続くフッ素置換反応がトリフルオロメタンスルホニル化において反応系内で等量副生したトリエチルアミン等の有機塩基のフッ化水素塩または錯体だけで良好に進行することが重要な特徴であり、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドの他にフッ素化剤を併用することなく実施するという利点を生かすためには、トリフルオロメタンスルホニルフルオリドの使用量としては、光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1モルに対して等モルから小過剰の1〜3モルがさらに好ましい。
有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,4−コリジン、2,4,5−コリジン、2,5,6−コリジン、2,4,6−コリジン、3,4,5−コリジン、3,5,6−コリジン等が挙げられる。その中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジンおよび3,5,6−コリジンが好ましく、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンおよび2,4,6−コリジンがより好ましい。
有機塩基の使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に1〜5モルがより好ましい。
反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもn−ヘプタン、トルエン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、特にトルエン、メシチレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、特に制限はないが、一般式[1]で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1モルに対して0.1L(リットル)以上を使用すればよく、通常は0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、−100〜+100℃であり、通常は−80〜+80℃が好ましく、特に−60〜+60℃がより好ましい。トリフルオロメタンスルホニルフルオリドの沸点以上の温度条件で反応を行う場合には耐圧反応容器を使用することができる。
反応時間としては、0.1〜48時間であるが、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液をアルカリ金属の無機塩基(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム等)の水溶液に注ぎ込み、回収有機層を水洗、無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硝酸または硫酸等)の水溶液または塩化カルシウムの水溶液で洗浄し、直接、分別蒸留することにより粗生成物を得ることができる。必要に応じて精密蒸留することにより、目的生成物である一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を高い化学純度で得ることができる。
次に第二工程のハイドライド還元では、第一工程のフッ素化で得られた一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、一般式[7]で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を与える。本ハイドライド還元ではフッ素原子が置換した炭素原子の立体化学は保持され、光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体のα位R体からは光学活性2−フルオロアルコール誘導体の2位R体が得られ、同様にα位S体からは2位S体が得られる。本ハイドライド還元は公知の方法、例えば日本国特許第2879456号明細書を参考にして同様に行うことができる。
ハイドライド還元剤としては、(i−Bu)2AlH、LiAlH4、NaAlH2(OCH2CH2OCH32等のアルミニウムハイドライド系、ジボラン、BH3・テトラヒドロフラン、BH3・S(CH32、BH3・N(CH33、NaBH4、LiBH4等のホウ素ハイドライド系等が挙げられる(i−Buはイソブチル基を表す)。その中でも(i−Bu)2AlH、LiAlH4、NaAlH2(OCH2CH2OCH32、ジボラン、BH3・テトラヒドロフラン、NaBH4およびLiBH4が好ましく、特に(i−Bu)2AlH、LiAlH4およびNaAlH2(OCH2CH2OCH32がより好ましい。これらのハイドライド還元剤は各種の無機塩の存在下に使用することもできる。
ハイドライド還元剤の使用量としては、特に制限はないが、一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体1モルに対して0.5モル以上を使用すればよく、通常は0.5〜5モルが好ましく、特に0.5〜3モルがより好ましい。
反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系等が挙げられる。その中でもn−ヘプタン、トルエン、メシチレン、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノールおよびi−プロパノールが好ましく、特にトルエン、メシチレン、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、メタノールおよびエタノールがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、特に制限はないが、一般式[2]で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体1モルに対して0.1L(リットル)以上を使用すればよく、通常は0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、−100〜+100℃であり、通常は−80〜+80℃が好ましく、特に−60〜+60℃がより好ましい。
反応時間としては、0.1〜24時間であるが、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液に水、硫酸ナトリウム・水和物、メタノールまたはエタノール等を加え、過剰に使用したハイドライド還元剤を分解し、無機物を濾過し、濾液を分別蒸留することにより粗生成物を得ることができる。必要に応じて精密蒸留することにより、目的生成物である一般式[7]で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を高い化学純度で得ることができる。
以下、実施例と比較例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体137.00g(1159.74mmol、1.00eq、光学純度98.5%ee)、メシチレン380mlとトリエチルアミン120.10g(1186.88mmol、1.02eq)を加え、内温を−40℃付近に冷却してトリフルオロメタンスルホニルフルオリド208.80g(1373.05mmol、1.18eq)をボンベより吹き込んだ。攪拌しながら約4時間かけて室温に戻し、さらに室温で約15時間攪拌した。反応の変換率をガスクロマトグラフィーにより測定したところ99.8%であった。二層に分離した反応終了液を10%炭酸カリウム水溶液1200mlに注ぎ込み、有機層を洗浄した。回収有機層は、1N塩化水素水溶液1400ml、引き続いて10%塩化カルシウム水溶液400mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウム50gで乾燥し、濾過し、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の粗生成物のメシチレン溶液410.40gを得た。得られた粗生成物のメシチレン溶液全量を分別蒸留し、本留として99.63g(沸点120〜127℃/常圧)を回収した。本留の1H−NMRスペクトルよりメシチレンが3.7%含まれていることが分かり、トータル収率は69%(後留と釜残を併せたトータル収率は72%)であった。本留のガスクロマトグラフィー純度は100.0%(メシチレンを除く)であった。光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の1H−NMRスペクトルと19F−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR(基準物質:(CH34Si,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:1.32(t,7.2Hz,3H),1.58(dd,23.6Hz,6.9Hz,3H),4.26(q,7.2Hz,2H),5.00(dq,49.0Hz,6.9Hz,1H).19F−NMR(基準物質:C66,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:−21.88(dq,48.9Hz,24.4Hz,1F).
[実施例2]
水素化リチウムアルミニウム22.70g(598.00mmol、0.76eq)を含むテトラヒドロフラン溶液(テトラヒドロフラン使用量630ml)に、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体97.97g(化学純度96.3%、785.42mmolとする、1.00eq)を含むテトラヒドロフラン溶液(テトラヒドロフラン使用量160ml)を氷冷下、内温を10℃以下に制御しながら徐々に加え、同温度で20分間攪拌し、さらに室温で2時間10分攪拌した。反応の変換率をガスクロマトグラフィーにより測定したところ100%であった。反応終了液に硫酸ナトリウム・10水和物を氷冷下、内温を12℃以下に制御しながら徐々に加え、過剰に使用した水素化リチウムアルミニウムを粗方分解し、さらに50〜60℃で硫酸ナトリウム・10水和物を加えながら約1時間攪拌した。硫酸ナトリウム・10水和物はトータルで149.40g(463.63mmol、0.59eq)を加えた。室温に降温した後、さらに無水硫酸ナトリウム65.00g(457.62mmol、0.58eq)を加えて乾燥し、無機物を濾過し、無機物をテトラヒドロフラン80mlで2回洗浄し、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体の粗生成物のテトラヒドロフラン溶液を得た。得られた粗生成物のテトラヒドロフラン溶液全量を分別蒸留し、本留として36.77g(沸点108〜110℃/常圧)を回収した。本留の1H−NMRスペクトルよりメシチレンが5.0%含まれていることが分かり、トータル収率は57%(初留と釜残を併せたトータル収率は75%)であった。本留のガスクロマトグラフィー純度は99.8%(メシチレンを除く)であった。本留の光学純度はMosher酸エステルに誘導してガスクロマトグラフィーにより決定したところ98.0%ee(R体)であった。光学活性2−フルオロアルコール誘導体の1H−NMRスペクトルと19F−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR(基準物質:(CH34Si,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:1.33(dd,23.6Hz,6.4Hz,3H),2.00(br,1H),3.50−3.85(m×2,2H),4.76(dm,49.6Hz,1H).
19F−NMR(基準物質:C66,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:−21.40(d/sextet,48.9Hz,24.4Hz,1F).
[実施例3]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体2.00g(9.60mmol、1.00eq、光学純度99.2%ee)、トルエン10mlとトリエチルアミン2.00g(19.76mmol、2.06eq)を加え、反応容器を−78℃のドライアイス/アセトン浴に浸けてトリフルオロメタンスルホニルフルオリド3.00g(19.73mmol、2.06eq)をボンベより吹き込み、直ちに氷浴に移して1時間攪拌した。反応の変換率をガスクロマトグラフィーにより測定したところ100%であった。反応終了液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、トルエンで抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の粗生成物2.18gを得た。粗生成物の19F−NMRスペクトルによる内部標準法(内部標準物質;C66)で含量を算出したところ、上記式で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体が1.52g含まれており、収率は75%であった。得られた光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度はキラル液体クロマトグラフィーにより決定したところ99.2%ee(S体)であった。光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の1
−NMRスペクトルと19F−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR(基準物質:(CH34Si,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:1.30(t,7.2Hz,3H),2.10−2.30(m×2,2H),2.70−2.85(m×2,2H),4.23(q,7.2Hz,2H),4.88(dt,48.8Hz,6.2Hz,1H),7.20−7.40(Ar−H,5H).
19F−NMR(基準物質:C66,重溶媒:CDCl3)、δ ppm:−31.38(dt,48.9Hz,27.4Hz,1F).
[比較例1]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1.00g(4.80mmol、1.00eq、光学純度99.2%ee)、トルエン20mlとDBU2.20g(14.45mmol、3.01eq)を加え、反応容器を−78℃のドライアイス/アセトン浴に浸けてトリフルオロメタンスルホニルフルオリド1.10g(7.23mmol、1.51eq)をボンベより吹き込み、直ちに氷浴に移して1時間攪拌した。反応の変換率をガスクロマトグラフィーにより測定したところ100%であった。反応終了液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、トルエンで抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の粗生成物0.86gを得た。粗生成物の19F−NMRスペクトルによる内部標準法(内部標準物質;C66)で含量を算出したところ、上記式で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体が0.32g含まれており、収率は32%であった。得られた光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度はキラル液体クロマトグラフィーにより決定したところ99.2%ee(S体)であった。光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の1H−NMRスペクトルと19F−NMRスペクトルは実施例3で得られたものと同様であった。
[比較例2]
ガラス性反応容器に、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体1.00g(4.80mmol、1.00eq、光学純度99.2%ee)、トルエン20mlとDBU2.20g(14.45mmol、3.01eq)を加え、反応容器を0℃の氷浴に浸けてパーフルオロブタンスルホニルフルオリド2.15g(7.12mmol、1.48eq)を加え、同温度で1時間攪拌した。反応の変換率をガスクロマトグラフィーにより測定したところ100%であった。反応終了液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、トルエンで抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、下記式
Figure 0004839724
で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の粗生成物1.17gを得た。粗生成物の19F−NMRスペクトルによる内部標準法(内部標準物質;C66)で含量を算出したところ、上記式で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体が0.42g含まれており、収率は42%であった。得られた光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の光学純度はキラル液体クロマトグラフィーにより決定したところ98.7%ee(S体)であった。光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体の1H−NMRスペクトルと19F−NMRスペクトルは実施例3で得られたものと同様であった。

Claims (7)

  1. 一般式[1]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体を有機塩基の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反応させることにより、一般式[2]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法。
    [式中、Rは炭素数1から12の直鎖のアルキル基または炭素数3から12の分岐鎖のアルキル基を表し、アルキル基の任意の炭素原子上に、芳香族炭化水素基、不飽和炭化水素基、炭素数1から6の直鎖のアルコキシ基または炭素数3から6の分枝のアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体またはヒドロキシル基の保護体が一つまたは任意の組み合わせで二つ置換することもできる。R1は炭素数1から8の直鎖のアルキル基または炭素数3から8の分岐鎖のアルキル基を表す。RとR1のアルキル基の任意の炭素原子同士が共有結合を形成してもよい。*は不斉炭素を表す]
  2. 一般式[3]
    Figure 0004839724
    [式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
    で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体をトリエチルアミン[(C253N]の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反
    応させることにより、一般式[4]
    Figure 0004839724
    [式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法。
  3. 式[5]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−ヒドロキシカルボン酸エステル誘導体をトリエチルアミン[(C253N]の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)と反
    応させることにより、式[6]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体を製造する方法。
  4. 請求項1及至請求項3の何れかにおいて、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF3SO2F)のみをフッ素化剤として使用し、他のフッ素化剤を併用しないことを特徴とする、請求項1及至請求項3の何れかに記載した製造方法。
  5. 請求項1に記載の方法で製造した、一般式[2]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、一般式[7]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法。
    [式中、Rは炭素数1から12の直鎖のアルキル基または炭素数3から12の分岐鎖のアルキル基を表し、アルキル基の任意の炭素原子上に、芳香族炭化水素基、不飽和炭化水素基、炭素数1から6の直鎖のアルコキシ基または炭素数3から6の分枝のアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体またはヒドロキシル基の保護体が一つまたは任意の組み合わせで二つ置換することもできる。R1は炭素数1から8の直鎖のアルキル基または炭素数3から8の分岐鎖のアルキル基を表す。RとR1のアルキル基の任意の炭素原子同士が共有結合を形成してもよい。*は不斉炭素を表す]
  6. 請求項2に記載の方法で製造した、一般式[4]
    Figure 0004839724
    [式中、R2はメチル基、エチル基またはイソプロピル基を表し、*は不斉炭素を表す]
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、式[8]
    Figure 0004839724
    [式中、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法。
  7. 請求項3に記載の方法で製造した、式[6]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性α−フルオロカルボン酸エステル誘導体をハイドライド還元剤と反応させることにより、式[9]
    Figure 0004839724
    で示される光学活性2−フルオロアルコール誘導体を製造する方法。

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