以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従う網膜走査型ディスプレイ(以下、単に「RSD」と略称する。)200の構成がブロック図で概念的に表されるとともに、このRSD200から出射した光が観察者の眼Mに到達するまでの光路が光路図で示されている。このRSD200は、画像表示装置の一例であって、表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼Mの網膜M4上において走査することにより、画像を直接に網膜M4上に投影するものである。
RSD200は、同じ表示画像上に複数のオブジェクトを一斉に表示することが可能である。それら複数のオブジェクトがそれぞれ表示されるべき奥行き位置が互いに異なる場合には、奥行き位置の違いが観察者によって知覚されるようにそれら複数のオブジェクトの各奥行き位置、すなわち、それらオブジェクトを表示するための各画像光の波面曲率が制御される。
本実施形態においては、表示される複数のオブジェクトのうちの観察者が着目(注視)しているものが特定オブジェクトとして選択される。この場合、その選択された特定オブジェクトが観察者によって鮮明に目視されるように、それら複数のオブジェクトを含む画像の表示態様を変更する画像処理が施される。この画像処理は、具体的には、その選択された特定オブジェクトと、複数のオブジェクトのうちその特定オブジェクト以外の非特定オブジェクトとを互いに異なる表示態様で表示するために実行される。
さらに具体的には、本実施形態においては、特定オブジェクトの輝度が通常値より増加させられ、それにより、観察者による特定オブジェクトの鮮明な目視が可能となっている。
図1に示すように、RSD200は、画像情報Gに応じて変調された被変調光Hを眼Mの網膜M4上において直接に走査して網膜M4上に画像を直接に投影する光学機器である。
このRSD200は、外部メモリ202と、被変調光出力部204と、走査部206と、波面曲率変調部208と、視線方向検出部210と、制御部212とを備えている。
外部メモリ202は、表示されるべき画像を表示するのに必要な画像情報Gを予め記憶する電子部品である。観察者がRSD200の作動スイッチ213を操作してRSD200を起動すると、RSD200は、外部メモリ202に予め記憶されている画像情報Gに基づき画像を表示する。
画像情報Gは、(a)表示されるべき画像の2次元上の位置を特定する平面位置情報と、表示されるべき画像の奥行き位置を特定する奥行き位置情報とを有する複数の幾何学情報と、(b)表示されるべき画像の色彩を特定する色彩情報と、(c)表示されるべき画像の輝度を特定する輝度情報とを含んでいる。
制御部212は、色彩情報および輝度情報に基づき被変調光出力部204を制御し、同期信号に基づき走査部206を制御し、奥行き位置情報に基づき波面曲率変調部208をそれぞれ制御する。
被変調光出力部204は、前述の色彩情報と輝度情報に基づき光を変調して被変調光Hとして出力する光学機器である。この被変調光出力部204から出力された被変調光Hは、波面曲率変調部208による波面曲率変調、走査部206における偏向および光反射部214における反射を経て、観察者の眼Mの虹彩M1で囲まれた瞳孔M2に入射する。その入射した被変調光Hは、水晶体M3において結像された後、網膜M4に到達する。
走査部206は、前述の同期信号に基づき、被変調光Hを網膜M4上において走査することによって網膜M4上に画像を投影する光学機器である。
波面曲率変調部208は、被変調光Hが光反射部214において反射した反射光であって眼Mに入射するものの拡散の角度、すなわち、被変調光Hの波面曲率を変化させることにより、観察者が画像を知覚する奥行き位置を変化させる光学機器である。この波面曲率変調部208の作動は、前述の奥行き位置情報に基づき、制御部212によって制御される。
具体的には、波面曲率変調部208は、図1において一点鎖線で示すように、観察者が画像を観察者に接近した位置P1において知覚するように、画像を表示することが可能である。それに代えて、波面曲率変調部208は、同図において二点鎖線で示すように、観察者が画像を観察者から離間した位置P2において知覚するように画像を表示することも可能である。それに代えて、波面曲率変調部208は、同図において破線で示すように、観察者が画像を遠方の位置P3にあるように画像を表示することも可能である。
視線方向検出部210は、観察者の視線方向を検出する装置である。その視線方向検出部210によって検出された観察者の視線方向を用いることにより、表示画像のうち観察者が着目している部分すなわち特定画像と、観察者が着目していない部分画像すなわち非特定画像とを互いに区別することができる。今回の表示画像は複数のオブジェクトを含んでいるため、特定画像は特定オブジェクト、非特定画像は非特定オブジェクトとそれぞれ称することとする。
視線方向検出部210は、既に知られている原理に従って観察者の両眼の視線方向を検出する。この視線方向検出部210は、例えば、特開平7−167618号公報や特公昭61−59132号公報に開示されているように、赤外線カメラと両眼との距離が既知である状態において、その赤外線カメラによって両眼の眼球を撮影し、その撮影された眼球の角膜反射像と瞳孔中心との相対位置関係に基づいて視線方向を検出するように設計することが可能である。視線方向を検出する他の従来例が、特開2004−255074号公報および特開平5−199996号公報に開示されている。
本実施形態に従うRSD200においては、表示画像が複数のオブジェクトを有し、かつ、それらオブジェクトが、奥行き位置に関して互いに異なるオブジェクトを含む場合に、それらオブジェクトの表示態様を制御するための画像処理が行われる。
本実施形態においては、同じ表示画像上に複数のオブジェクトを一斉に表示するために、前述のように、各オブジェクトに関連付けて、各オブジェクトが表示されるべき奥行き位置を特定する奥行き位置情報と、その奥行き位置における平面上において各オブジェクトが表示されるべき位置を特定する平面位置情報とを含む複数の画像情報が外部メモリ202に格納される。
本実施形態においては、オブジェクトは、例えば特定の物体を表現する画像を意味し、その画像が表示される領域がオブジェクト領域として定義される。そのオブジェクト領域内に存在する画素(着目画素)については、その画素に対応する平面位置情報(後述のX座標値およびY座標値)と奥行き位置情報(後述のZ座標値)とが特定されれば、その画素が属するオブジェクトを特定することが可能である。
例えば、オブジェクト領域内のすべての画素について、平面位置情報および奥行き位置情報を特定のオブジェクトに対応付けて予め記憶させておけば、各画素の平面位置および奥行き位置からオブジェクトを特定することが可能である。ただし、特定のオブジェクトの全体が同一の奥行き位置に表示される場合には、その奥行き位置情報さえ特定のオブジェクトに対応付けて予め記憶させておけば、各画素の奥行き位置のみからオブジェクトを特定することが可能である。また、オブジェクトの形状如何では、そのオブジェクトに属する複数の画素のうちの少なくとも一部について、平面位置情報を特定のオブジェクトに対応付けて予め記憶させることを省略することが可能である。
それら奥行き位置情報および平面位置情報をさらに具体的に説明するに、表示画面上の各画素は、例えば図6に示すように、XYZ直交座標系によって定義される。表示画面上の各画素の奥行き位置はZ座標値によって定義される一方、各画素の、その奥行き方向と直交する平面上における位置はX座標値とY座標値とによって定義される。
したがって、奥行き位置情報は、各画素ごとにZ座標値を表す情報を含んでいる。一方、各画素の奥行き位置は、同じオブジェクトに属する複数の画素については共通するかまたは互いに近接する。よって、奥行き位置情報は、各オブジェクトごとにZ座標値を表す情報を含むことが可能である。
これに対し、平面位置情報は、各画素ごとにX座標値とY座標値との組合せを表す情報を含んでいる。さらに、平面位置情報は、各オブジェクトにつき、各オブジェクトと同じ奥行き位置を有する平面上においてオブジェクトが存在する領域と存在しない領域とを互いに区別するための情報も含んでいる。
各オブジェクトが、対応する奥行き位置に表示されるようにするために、図1における波面曲率変調部208が上述の奥行き位置情報に基づいて作動させられる。この波面曲率変調部208によって波面曲率が変調される原理については、後に図4を参照して具体的に説明する。
ところで、奥行き位置が互いに異なる複数のオブジェクトが一斉に観察者に知覚されるようにすることは、それらオブジェクトが同じ視線方向において重なり合うことがないという前提においては、波面曲率変調部208が、波面曲率を変調する変調素子を1個のみ含み、その変調素子によって波面曲率を高速で変調することにより、実現することが可能である。
これに対し、それらオブジェクトが同じ視線方向において重なり合うことが許容される前提においては、例えば、波面曲率変調部208が、互いに独立して波面曲率を変調可能な複数の変調素子を含み、それら変調素子を一斉に作動させて各オブジェクトごとに異なる波面曲率を実現することが必要である。
ただし、一画面を構成する複数本の走査線のすべてを同じオブジェクトに割り当てるのではなく、それら走査線を複数のグループに分けて各グループごとに各オブジェクトに割り当てるようにすれば、波面曲率変調部208が1個の変調素子しか用いなくても、眼の残像現象と相俟って、観察者から見て重なり合う複数のオブジェクトが一斉に観察者によって知覚されるようにすることが可能である。
図1に示すように、制御部212は、コンピュータ220を主体として構成されている。コンピュータ220は、よく知られているように、CPU222とROM224とRAM226とを含むように構成される。制御部212は、ROM224に予め格納されている各種プログラムがCPU222によって実行されることにより、所定の動作を実行する。
制御部212は、前述のように、色彩情報および輝度情報に基づき被変調光出力部204を制御し、同期信号に基づき走査部206を制御し、奥行き位置情報に基づき波面曲率変調部208をそれぞれ制御する。この制御部212は、RSD200本来の機能である通常の画像表示機能を実現するのみならず、観察者による特定オブジェクトの鮮明な目視を可能にすることを目的として、特定オブジェクトの輝度を変更する画像処理を実行する。
具体的には、この制御部212は、各オブジェクトが表示されるべき奥行き位置に基づいて、各オブジェクトに対応する輝度情報を変更する画像処理を実行する。この画像処理を実行するために、この制御部212は、外部メモリ202に予め記憶されている画像情報Gに対して、実行すべき画像処理の内容に応じた変更を加え、その変更された画像情報GをRAM226に記憶させる。このように、制御部212は、RAM226に記憶されている輝度情報、平面位置情報および奥行き位置情報に基づき、被変調光出力部204、走査部206および波面曲率変調部208をそれぞれ制御する。
次に、外部メモリ202、被変調光出力部204、波面曲率変調部208および走査部206の各構成をさらに具体的に説明する。
図2に示すように、被変調光出力部204は、画像信号処理回路230を備え、さらに、光源として、赤色光源232、緑色光源234および青色光源236を備えている。この被変調光出力部204は、さらに、光源ドライバとして、赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244を備えている。
この被変調光出力部204は、さらに、コリメータレンズ246,248,250と、波長選択性ミラー252,254,256と、フォーカスレンズ258とを備えている。
画像信号処理回路230は、前述の制御部212から出力される色彩情報および輝度情報に基づき、赤色光源232、緑色光源234および青色光源236をそれぞれ駆動する赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244に対して、それぞれの色に対応する強度変調信号を出力する。
この画像信号処理回路230は、色彩情報および輝度情報に対して前述の画像処理が施されていない場合には、もともとの色彩情報および輝度情報に基づき赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244に対して強度変調信号を出力する。
一方、色彩情報に変更が加えれれば、この画像信号処理回路230は、その変更された色彩情報に応じて強度変調信号を変更する。その結果、表示される画像の色彩を任意に変更することも、色彩を出力しないことにより画像を透明に表示することもできる。
また、輝度情報に変更が加えられれば、この画像信号処理回路230は、その変更された輝度情報に応じて強度変調信号を変更して赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244を制御する。その結果、赤色光源232、 緑色光源234および青色光源236のうちの該当するものの発光度(強度)を強めたり弱めたりして、画像の輝度を任意に変更することができる。
次に、図3および図4を参照することにより、前述の波面曲率変調部208の構成を具体的に説明する。
図3に示すように、この波面曲率変調部208は、凸レンズ260と、位置可変ミラー262と、ミラー駆動部264と、ハーフミラー266とを備えている。図2および図3に示すように、前述の被変調光出力部204から出射した被変調光Hは、光ファイバ270を介してハーフミラー266に伝送される。そのハーフミラー266は、波面曲率変調部208への被変調光Hの入口である。
図4に示すように、位置可変ミラー262は、凸レンズ260の光軸上に設けられている。この位置可変ミラー262は、凸レンズ260の焦点位置fと、この焦点位置fから凸レンズ260に接近した位置aとの間を移動可能に設けられている。図4において位置bは、位置aと焦点位置fとの中間の位置である。図4には、位置可変ミラー262が、それの反射面が位置aに位置する状態で示されている。
図4に示すように、位置可変ミラー262が凸レンズ260の焦点位置fより凸レンズ260側にある位置aに位置する場合には、図3において一点鎖線で示すように、観察者は画像を観察者の近傍の位置P1において知覚する。その理由は次の通りである。
図4に示す例においては、位置可変ミラー262が、凸レンズ260の焦点fの内側に位置している。そのため、図4において一点鎖線で示すように、凸レンズ260側から位置可変ミラー262に向けて平行光として出射した被変調光Hは、その位置可変ミラー262において反射されて拡散光に変換される。このように拡散光に変換された被変調光Hが観察者の眼Mに入射すると、観察者は画像を図3における位置P1において知覚する。
これに対し、位置可変ミラー262が凸レンズ260の焦点位置fに位置する場合には、その位置可変ミラー262から反射した被変調光Hは平行光として観察者の眼Mに入射する。その結果、観察者は、図3において破線で示すように、画像を遠方の位置P3において知覚する。
さらに、位置可変ミラー262が凸レンズ260の焦点位置fと前述の位置aとの間の位置bに位置する場合には、観察者は、図3において二点鎖線で示すように、画像を位置P2において知覚する。
図4に示すミラー駆動部264は、例えば圧電素子を用いて形成される。ミラー駆動部264を圧電素子を用いて形成する場合には、例えば、圧電素子の複数の面のうち電界印加方向と交差する面に前述の位置可変ミラー262を取り付けることが可能である。
この例においては、その圧電素子に印加する電圧すなわち電界を変化させれば、その圧電素子の厚さが変化する。その圧電素子の厚さが変化すれば、位置可変ミラー262を凸レンズ260から離間させたり凸レンズ260に接近させることができ、その結果、位置可変ミラー262を前述の位置a、位置bおよび焦点位置fのうちの任意のものに移動させることができる。
位置可変ミラー262の位置は、奥行き位置情報に基づいて制御される。したがって、奥行き位置情報を変更することにより、表示されるべき画像の奥行き位置を、例えば、図3に示す位置P1と位置P3との間における任意の位置に変化させることができる。
次に、図3を参照して前述の走査部206の構成を具体的に説明する。
図3に示すように、走査部206は、水平走査ミラー280と、リレーレンズ(例えば、凸レンズ)282,284と、垂直走査ミラー286と、リレーレンズ(例えば、凸レンズ)288,290とを備えている。
図3に示すように、水平走査ミラー280は、回転軸L1まわりに回転可能に設けられている。この水平走査ミラー280は、前記ハーフミラー266から出射した被変調光Hを、この水平走査ミラー280の回転位置に応じた方向へ反射する。この水平走査ミラー280の回転は、前述の同期信号に基づいて制御される。
垂直走査ミラー286は、回転軸L2まわりに揺動可能に設けられている。この垂直走査ミラー286の回転は、前述の同期信号に基づいて制御される。
リレーレンズ282,284は、水平走査ミラー280から反射した被変調光Hを垂直走査ミラー286に伝送する。リレーレンズ288,290は、垂直走査ミラー286から反射した被変調光Hを、瞳孔M2および水晶体M3を順次経由して、網膜M4に伝送する。
観察者による特定オブジェクトの鮮明な目視を目的とした前述の画像処理を行うために、コンピュータ220のROM224に画像処理プログラムが予め記憶されている。図5には、その画像処理プログラムがフローチャートで概念的に表されている。
この画像処理プログラムはコンピュータ220によって繰返し実行される。各回の実行時には、まず、図5のS101において、視線方向検出部210により、観察者の視線方向が検出される。
次に、S102において、その検出された視線方向と、今回の表示画像における複数のオブジェクトをそれぞれ表示するために外部メモリ202に格納されている複数の画像情報によって表される各オブジェクトの幾何学情報との関係から、それら複数のオブジェクトのうち観察者が現在着目(注視)しているものが特定オブジェクトとして選択される。
このS102においては、例えば、各オブジェクトごとに、各オブジェクトと同じ奥行き位置を有する平面と、前記検出された視線方向との交点が求められ、その求められた交点が、そのオブジェクトの領域内に存在するか否かが判定される。そのオブジェクトの領域内に存在すれば、そのオブジェクトが、観察者が現在注目しているオブジェクトであると判定される。
続いて、S103において、前記複数の画像情報のうち、その選択された特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報に基づき、その特定オブジェクトの奥行き位置、すなわち、観察者から前方に延びるように観察者に設定されたZ軸上における座標値が取得される。
その後、S104において、その取得されたZ軸座標値と予め定められた基準値との比較結果に基づき、前記選択された特定オブジェクトが観察者に接近しているか否かが判定される。その特定オブジェクトが観察者に接近している場合には、このS104において、その特定オブジェクトが表示されるべき輝度が通常値より増加するように、その特定オブジェクトに対応する輝度情報が変更される。輝度情報は、各オブジェクトに関連付けて外部メモリ202に格納されている。
続いて、S105において、その変更された輝度情報に基づき、特定オブジェクトの表示に関連して、赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244のうち該当するものが制御される。それにより、特定オブジェクトの表示に関連して、赤色光源232、緑色光源234および青色光源236のうち該当するものの発光度(強度)が通常値より増加させられ、その結果、特定オブジェクトの輝度が通常値より増加させられる。本実施形態においては、特定オブジェクト全体の輝度が通常値より増加させられる。
以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
次に、図6に示す画像を例により、この画像処理プログラムの実行によって実行される画像処理をさらに具体的に説明する。
図6に示す例においては、水槽内にエイA、鯛Bおよび珊瑚Cが観察者に近い側から順に位置する様子が画像として立体的に表示される。この例においては、それらエイAの画像、鯛Bの画像および珊瑚Cの画像が、一斉に表示されるべき複数のオブジェクトの一例である。それらオブジェクトが一斉に表示された状態において、観察者は、鯛Bの画像に着目したと仮定する。
この状態において前記画像処理プログラムがコンピュータ220によって実行されると、まず、S101において、視線方向検出部210によって観察者の視線方向が検出される。次に、S102において、複数のオブジェクトのうちその検出された視線方向に位置するもの、すなわち、今回は鯛Bの画像が、観察者が着目している特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S103において、外部メモリ202に予め記憶されている画像情報Gのうちの奥行き位置情報に基づき、鯛Bの画像の奥行き位置、すなわち、図6において鯛Bの画像が位置するZ軸上の座標値が取得される。
その後、S104において、鯛Bの画像のZ軸上における位置が観察者に接近しているか否かが判定され、接近している場合には、このS104において、鯛Bの画像の輝度が増加するように、鯛Bの画像に関する輝度情報に対して変更が加えられる。
続いて、S105において、鯛Bの画像に関する輝度情報に対して変更が施された画像情報が被変調光出力部204に入力される。それにより、鯛Bの画像の表示に同期して、赤色光源ドライバ240、緑色光源ドライバ242および青色光源ドライバ244を介して、赤色光源232、緑色光源234および青色光源236の各発光度が増加させられる。その結果、鯛Bの画像全体の輝度が増加させられる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、観察者が着目している特定オブジェクトが観察者に接近している場合には、その特定オブジェジェクトの輝度が増加させられることにより、その特定オブジェクトより遠方に位置する他のオブジェクトより、その特定オブジェクトが強調されて表示される。
本実施形態によれば、観察者が特定の動作を行えば、それを契機にして表示画像の出現およびその出現後の移動が自動的に行われる。さらに、本実施形態によれば、複数のオブジェクトが一斉に表示される場合に、それらオブジェクトのうち観察者が注目しているものが特定オブジェクトとして自動的に選択され、その選択された特定オブジェクトが相対的に鮮明に表示されるための画像処理が自動的に開始される。
このように、本実施形態によれば、観察者がいちいち操作を行うことなく、観察者の意思が自動的に画像表示処理に反映され、その結果、使い勝手が改善された画像表示装置が提供される。
なお付言するに、本実施形態においては、特定オブジェクトの輝度が、その特定オブジェクトが観察者に接近している場合と接近していない場合とで2段階に切り換えられる。これに対し、それより多段階で特定オブジェクトの輝度が変化させられる態様で本発明を実施することが可能である。また、特定オブジェクトが観察者に接近するにつれて連続的にその特定オブジェクトの輝度が変化させられる態様で本発明を実施することも可能である。
さらに付言するに、特定オブジェクトの輝度が、その特定オブジェクトが観察者から遠ざかるにつれて増加する態様で本発明を実施することが可能である。この態様を採用する場合には、観察者は、特定オブジェクトが遠方に位置するにもかかわらず、その特定オブジェクトを鮮明に目視することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図5のS101およびS102を実行する部分と視線方向検出部210とが互いに共同して、前記(1)項における「選択部」の一例と、前記(3)項における「特定オブジェクト検出部」の一例とを構成し、コンピュータ220のうち同図のS103およびS104を実行する部分が、前記(1)項における「画像処理部」の一例と、前記(2)項における「画像処理部」の一例とを構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図9のS101を実行する部分と視線方向検出部210とが互いに共同して、前記(4)項における「視線方向検出部」の一例を構成し、コンピュータ220のうち同図のS102を実行する部分が、同項における「決定部」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図9のS104およびS105が前記(7)項における「画像処理部」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、特定オブジェクトの輝度が増加させられることにより、特定オブジェクトの強調表示が行われる。これに対し、本実施形態においては、特定オブジェクトの輪郭が通常より明瞭に、すなわち、本実施形態においては明るく表示されることにより、特定オブジェクトの強調表示が行われる。
この画像処理を実行するために、ROM224に、図7にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図5に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図7に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S201において、S101と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S202において、S102と同様にして、その検出された視線方向に基づき、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S203において、S103と同様にして、その選択された特定オブジェクトの奥行き位置が求められる。その後、S204において、特定オブジェクトを構成する複数の画素のうち、その特定オブジェクトの輪郭を形成するものの輝度が通常値より増加するように、対応する輝度情報が変更される。
続いて、S205において、S105と同様にして、その変更された輝度情報に基づいて被変調光出力部204が制御される。その結果、特定オブジェクトの輪郭の輝度が局部的に通常値より増加させられ、その輪郭が強調されて表示される。
以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図6に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、特定オブジェクトである鯛Bの画像の輪郭の輝度のみが増加するように、外部メモリ202に予め記憶されている輝度情報に変更が加えられる。被変調光出力部204は、その変更された輝度情報に基づき、鯛Bの画像の輪郭を形成する複数の画素の輝度を高める。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図7のS204およびS205を実行する部分が前記(8)項における「画像処理部」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、特定オブジェクトの輝度が増加させられることにより、特定オブジェクトの強調表示が行われる。これに対し、本実施形態においては、特定オブジェクトの輪郭の外側においてその輪郭に沿って位置している複数の周辺画素が通常より明瞭に、すなわち、本実施形態においては明るく表示されることにより、特定オブジェクトの強調表示が行われる。
この画像処理を実行するために、ROM224に、図8にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図5に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図8に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S301において、S101と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S302において、S102と同様にして、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S303において、S103と同様にして、その選択された特定オブジェクトの奥行き位置が求められる。その後、S304において、特定オブジェクトと同一の奥行き位置を有する平面上に仮想的に位置する複数の画素のうち、その特定オブジェクトの輪郭の外側に、その輪郭から設定距離離れて位置する複数の画素が複数の周辺画素として選択される。このS304においては、さらに、その選択された複数の周辺画素の輝度が通常値より増加するように、対応する輝度情報が変更される。
続いて、S305において、S105と同様にして、その変更された輝度情報に基づいて被変調光出力部204が制御される。その結果、特定オブジェクトの輪郭の周辺画素の輝度が通常値より増加させられ、その周辺画素が強調されて表示される。
以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図6に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、特定オブジェクトである鯛Bの画像の輪郭外側の周辺画素の輝度のみが増加するように、外部メモリ202に予め記憶されている輝度情報に変更が加えられる。被変調光出力部204は、その変更された輝度情報に基づき、鯛Bの画像の輪郭外側の周辺画素の輝度を高める。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図8のS304およびS305を実行する部分が前記(9)項における「画像処理部」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、特定オブジェクトの輝度が増加させられることにより、特定オブジェクトの強調表示が行われる。これに対し、本実施形態においては、一斉に表示されるべき複数のオブジェクトのうち特定オブジェクトより手前に表示されるべき非特定オブジェクトが存在する場合に、その非特定オブジェクトが透明に表示される。これにより、本来であれば特定オブジェクトの手前に非特定オブジェクトが存在するにもかからず、観察者は、その非特定オブジェクトによって邪魔されることなく、特定オブジェクトを明瞭に目視することができる。
以上説明した画像処理を実行するために、ROM224に、図9にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図5に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図9に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S401において、S101と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S402において、S102と同様にして、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S403において、S103と同様にして、その選択された特定オブジェクトの奥行き位置を表すZ座標値が求められる。その後、S404において、特定オブジェクトと一緒に表示されている他の非特定オブジェクトの各々につき、表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S405において、各非特定オブジェクトごとに、それのZ座標値と特定オブジェクトのZ座標値との比較結果に基づき、本来であれば各非特定オブジェクトが特定オブジェクトの手前に表示されるべきであるか否かが判定される。
今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきであると仮定すれば、S405の判定がYESとなり、S406において、特定オブジェクトの手前に表示されるべき非特定オブジェクトが透明に表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する色彩情報が変更される。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきではないと仮定すれば、S405の判定がNOとなり、S407において、特定オブジェクトより遠方に表示されるべき非特定オブジェクトが色彩の変更なしで表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する色彩情報に対する変更が行われない。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図6に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、S402において、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。続いて、S403において、鯛Bの画像に対応する奥行き位置情報に基づき、鯛Bの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S404において、非特定オブジェクトであるエイAの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値と、非特定オブジェクトである珊瑚Cの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値とが求められる。続いて、S405において、それらエイAの画像と珊瑚Cの画像とのそれぞれにつき、対応するZ座標値と特定オブジェクトである鯛Bの画像のZ座標値との比較により、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるか否かが判定される。
エイAの画像については、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S405の判定結果がYESとなり、S406において、エイAの画像が透明に表示されるように、対応する色彩情報が変更される。これに対し、珊瑚Cの画像については、鯛Bの画像より奥に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S405の判定結果がNOとなり、S407において、珊瑚Cの画像は、色彩の変更なしで表示される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図7のS404ないしS406を実行する部分が前記(10)項における「画像処理部」の一例を構成しているのである。
なお付言するに、他のオブジェクトより手前に表示されるべき手前オブジェクト(図6に示す例においては、エイAの画像)が透明に表示されるのではなく、半透明に表示される態様で本発明を実施することが可能である。
この態様を実施する場合には、例えば、手前オブジェクトに関連付けて外部メモリ202に予め記憶されている本来の色彩情報によって表される色彩と、その手前オブジェクトより奥に表示されるべき奥オブジェクトに関連付けて外部メモリ202に予め記憶されている本来の色彩情報によって表される色彩とを所定の混合の割合で混合した混合色彩を、手前オブジェクトの輪郭線の内側に付すことが可能である。その所定の割合は、例えば、手前オブジェクトの本来の色彩と奥オブジェクトの本来の色彩との比率が9対1となるように設定することが可能である。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第4実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第4実施形態においては、特定オブジェクトより手前に表示されるべき非特定オブジェクトが透明に表示される一方、奥に表示されるべき非特定オブジェクトが色彩の変更なしで表示される。これに対し、本実施形態においては、特定オブジェクトより手前に表示されるべき非特定オブジェクトが奥行き位置の変更なしで表示される一方、奥に表示されるべき非特定オブジェクトが、もとの奥行き位置より特定オブジェクトに接近した位置において表示される。
以上説明した画像処理を実行するために、ROM224に、図10にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図9に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図10に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S501において、S401と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S502において、S402と同様にして、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S503において、S403と同様にして、その選択された特定オブジェクトの奥行き位置を表すZ座標値が求められる。その後、S504において、S404と同様にして、特定オブジェクトと一緒に表示されている他の非特定オブジェクトの各々につき、表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S505において、S405と同様にして、各非特定オブジェクトごとに、それのZ座標値と特定オブジェクトのZ座標値との比較結果に基づき、各非特定オブジェクトが、本来であれば特定オブジェクトの手前に表示されるべきであるか否かが判定される。
今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきであると仮定すれば、S505の判定がYESとなり、S506において、特定オブジェクトの手前に表示されるべき非特定オブジェクトが、奥行き位置の変更なしで表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報が変更されない。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきではないと仮定すれば、S505の判定がNOとなり、S507において、特定オブジェクトより遠方に表示されるべき非特定オブジェクトが、もとの奥行き位置より特定オブジェクトに接近した位置に表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報に対する変更が行われる。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図6に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、S502において、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。続いて、S503において、鯛Bの画像に対応する奥行き位置情報に基づき、鯛Bの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S504において、非特定オブジェクトであるエイAの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値と、非特定オブジェクトである珊瑚Cの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値とが求められる。続いて、S505において、それらエイAの画像と珊瑚Cの画像とのそれぞれにつき、対応するZ座標値と特定オブジェクトである鯛Bの画像のZ座標値との比較により、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるか否かが判定される。
エイAの画像については、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S505の判定結果がYESとなり、S506において、エイAの画像が、奥行き位置の変更なしで、すなわち、もとの奥行き位置に表示される。これに対し、珊瑚Cの画像については、鯛Bの画像より奥に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S505の判定結果がNOとなり、S507に移行する。
このS507においては、珊瑚Cの画像を鯛Bの画像に近づけて表示するために、珊瑚Cの画像に対応する奥行き位置情報に変更が加えられる。波面曲率変調部208は、その変更された奥行き位置情報に基づき、珊瑚Cの画像を表示するための画像光の波面曲率を変調する。その結果、珊瑚Cの画像は、もとの奥行き位置より鯛Bの画像に接近した奥行き位置に表示される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図10のS504ないしS507を実行する部分が、前記(1)項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例と、前記(12)項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例とを構成し、被変調光出力部204が前記(12)項における「光束出力部」の一例を構成し、波面曲率変調部208が同項における「波面曲率変調部」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図10のS503およびS504を実行する部分が前記(13)項における「奥行き位置検出部」の一例を構成し、コンピュータ220のうち同図のS505およびS507を実行する部分が同項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第5実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第5実施形態においては、特定オブジェクトより遠方に表示されるべき非特定オブジェクトが、もとの奥行き位置より特定オブジェクトに接近した奥行き位置に表示される。これに対し、本実施形態においては、特定オブジェクトより遠方に表示されるべき非特定オブジェクトが、もとの奥行き位置より特定オブジェクトから遠ざけられた奥行き位置に表示される。
以上説明した画像処理を実行するために、ROM224に、図11にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図10に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図11に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S601において、S501と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S602において、S502と同様にして、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S603において、S503と同様にして、その選択された特定オブジェクトの奥行き位置を表すZ座標値が求められる。その後、S604において、S504と同様にして、特定オブジェクトと一緒に表示されている他の非特定オブジェクトの各々につき、表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S605において、S505と同様にして、各非特定オブジェクトごとに、それのZ座標値と特定オブジェクトのZ座標値との比較結果に基づき、各非特定オブジェクトが、本来であれば特定オブジェクトの手前に表示されるべきであるか否かが判定される。
今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきであると仮定すれば、S605の判定がYESとなり、S606において、特定オブジェクトの手前に表示されるべき非特定オブジェクトが、奥行き位置の変更なしで表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報が変更されない。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回の非特定オブジェクトは、特定オブジェクトの手前に表示されるべきではない、すなわち、特定オブジェクトより遠方に表示されるべきであると仮定すれば、S605の判定がNOとなり、S607において、特定オブジェクトより遠方に表示されるべき非特定オブジェクトが、もとの奥行き位置より特定オブジェクトから遠ざけられた奥行き位置に表示されるように、その非特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報に対する変更が行われる。以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図6に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、S602において、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。続いて、S603において、鯛Bの画像に対応する奥行き位置情報に基づき、鯛Bの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値が求められる。
その後、S604において、非特定オブジェクトであるエイAの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値と、非特定オブジェクトである珊瑚Cの画像が表示されるべき奥行き位置を表すZ座標値とが求められる。続いて、S605において、それらエイAの画像と珊瑚Cの画像とのそれぞれにつき、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるか否かが判定される。
エイAの画像については、鯛Bの画像より手前に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S605の判定結果がYESとなり、S606において、エイAの画像が、奥行き位置の変更なしで、すなわち、もとの奥行き位置に表示される。これに対し、珊瑚Cの画像については、鯛Bの画像より奥に表示されるべき非特定オブジェクトであるため、S605の判定結果がNOとなり、S607に移行する。
このS607においては、珊瑚Cの画像を鯛Bの画像から遠ざけて表示するために、珊瑚Cの画像に対応する奥行き位置情報に変更が加えられる。波面曲率変調部208は、その変更された奥行き位置情報に基づき、珊瑚Cの画像を表示するための画像光の波面曲率を変調する。その結果、珊瑚Cの画像は、もとの奥行き位置より鯛Bから遠ざけられた奥行き位置に表示される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図11のS604ないしS607を実行する部分が、前記(1)項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例と、前記(12)項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例とを構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図11のS603およびS604を実行する部分が前記(14)項における「奥行き位置検出部」の一例を構成し、コンピュータ220のうち同図のS605およびS607を実行する部分が同項における「表示オブジェクト位置変更部」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第7実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、特定オブジェクトが、それの手前に位置する非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分を有するか否かの判定が行われるようにはなっていないが、本実施形態においては、その判定が行われる。さらに、本実施形態においては、特定オブジェクトのうち、非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分が半透明に表示される。
具体的には、本実施形態においては、特定オブジェクトのうち、非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分の色彩が、もとの色彩から、特定オブジェクトのもとの色彩と非特定オブジェクトのもとの色彩とが所定の割合で混合された混合色彩に変更される。
以上説明した画像処理を実行するために、ROM224に、図12にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図5に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図12に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S701において、S101と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S702において、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
このS702においては、図13に示すように、まず、観察者の両眼の注視点の位置(少なくとも左右方向位置と奥行き位置)が、両眼M,Mの各視線方向α1,α2をそれぞれ表す角度β1,β2と、両眼間の距離Wとに基づき、三角測量の原理に従って測定される。図13において「K」は、両眼M,Mを互いに結ぶ基線を表しており、その基線Kと各視線方向α1,α2との成す角度として角度β1,β2がそれぞれ定義されている。距離Wは、固定値として予めROM224(またはRAM226)に記憶させておくことが可能である。
このS702においては、さらに、複数のオブジェクトに対応する前述の幾何学情報に基づき、前記測定された注視点が位置するオブジェクトが特定オブジェクトとして選択される。
図13には、図6に示す例に関連して、エイAの画像および鯛Bの画像が平面視で示されている。図14には、それらエイAの画像および鯛Bの画像が正面視で示されている。図14に示すように、エイAの画像の一部が鯛Bの画像と観察者の視線方向において重なっており、このことが図13に平面視で示されている。図13には、さらに、観察者の注視点がエイAの画像にではなく鯛Bの画像に存在することも示されている。この例においては、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。
なお付言するに、このS702においては、特定オブジェクトが三角測量によって自動的に選択されるが、例えば、観察者が特定オブジェクトを選択するための操作(例えば、特定オブジェクトを表示する別の画面(例えば、モニタ画面)上において観察者がその特定オブジェクトにおいてマウスをクリックする操作)に応じて特定オブジェクトが手動で選択される態様で本発明を実施することが可能である。
続いて、図12のS703において、その選択された特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報および平面位置情報によって表される特定オブジェクトの幾何学量と、非特定オブジェクトに対応する奥行き位置情報および平面位置情報によって表される非特定オブジェクトの幾何学量と、前記検出された視線方向とに基づき、特定オブジェクトのうち、それより手前に位置する非特定オブジェクトとの重なり部分が幾何学的に検出される。
その後、S704において、特定オブジェクトのうち非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分ではない部分が、色彩の変更なしで、すなわち、もとの色彩が付された状態で表示される。
続いて、S705において、特定オブジェクトの色彩と、その特定オブジェクトより手前においてその特定オブジェクトに重なって表示されるべき非特定オブジェクトの色彩とが所定の割合で混合された混合色彩が決定される。
このS705においては、さらに、特定オブジェクトのうち非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分に対応する色彩情報が、上記決定された混合色彩を表すように変更される。その結果、特定オブジェクトのうち非特定オブジェクトと重なって表示されるべき部分が、それの色彩がもとの色彩から上記混合色彩に変更された状態で、表示される。
以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
さらに具体的に説明するに、図13および図14に示す例についてこの画像処理プログラムが実行されると、S702において、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。続いて、S703において、鯛Bの画像の一部が、それより手前の非特定オブジェクトであるエイAの画像と重なっていることが検出される。
その後、S704において、制御部212が波面曲率変調部208を制御することにより、鯛Bの画像が、外部メモリ202に予め記憶されている本来の奥行き位置に存在するように表示される。
このS704においては、さらに、鯛Bの画像のうちエイAの画像と重なっていない部分につき、外部メモリ202に予め記憶されている本来の色彩がその部分に付されるように、外部メモリ202に予め記憶されている色彩情報が変更されない。
続いて、S705において、鯛Bの画像のうちエイAの画像と重なっている部分につき、外部メモリ202に予め記憶されている鯛Bの画像に付されるべき本来の色彩と、エイAの画像に付されるべき本来の色彩とが所定の割合で混合された混合色彩が付されて表示されるように、外部メモリ202に予め記憶されている色彩情報が変更される。
このように、本実施形態においては、鯛Bの画像のうち、エイAの画像と重なる部分が、鯛Bの画像の本来の色彩と、エイAの画像の本来の色彩とが混合された混合色彩を付された状態で表示され、その結果、観察者は、鯛Bの画像の手前にエイAの画像が存在するにもかかわらず、エイAの画像によって邪魔されることなく鯛Bの画像を明瞭に目視することができる。
なお付言するに、このS705においては、前述の混合割合を任意に設定することが可能である。例えば、特定オブジェクトの本来の色彩と、その手前に位置する非特定オブジェクトの本来の色彩との混合比率が9対1で表される割合に設定することが可能である。
さらに付言するに、このS705においては、特定オブジェクトの手前においてそれと重なる非特定オブジェクトがそもそも半透明に表示される場合には、前述の混合割合を、もとの混合割合から変更しなくてもよい。
さらに付言するに、図13に示すように、特定オブジェクト(鯛Bの画像であって実線で示す。)の手前に非特定オブジェクト(エイAの画像であって、一点鎖線で示す。)が重なっている場合には、観察者の視線方向のみが判明しても、それら特定オブジェクトと非特定オブジェクトのうち観察者によって注目されているものを正確に検出することはできない。
これに対し、本実施形態においては、観察者の視線方向のみならずその観察者の注視点の奥行き位置も検出されるため、互いに重なり合う特定オブジェクトと非特定オブジェクトとのうち観察者が注目しているものを正確に特定することが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、被変調光出力部204が前記(15)項における「光束出力部」の一例を構成し、視線方向検出部210とコンピュータ220のうち図12のS701およびS703を実行する部分とが互いに共同して、同項における「重なりオブジェクト検出部」の一例を構成し、コンピュータ220のうち図12のS705を実行する部分が、同項における「重なりオブジェクト表示部」の一例と、前記(17)項における「第2表示部」の一例と、前記(18)項における「混合割合変更部」の一例とを構成しているのである。
次に、本発明の第8実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、特定オブジェクトを非特定オブジェクトより相対的に強調して表示するための画像処理に関する要素について異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、所定の視角をなす範囲内に特定オブジェクトと非特定オブジェクトとが共存する場合に、その非特定オブジェクトが透明に表示されるようにはなっていないが、本実施形態においては、その非特定オブジェクトが透明に表示される。
以上説明した画像処理を実行するために、ROM224に、図15にフローチャートで概念的に表されている画像処理プログラムが記憶されている。以下、この画像処理プログラムを説明するが、図5に示す画像処理プログラムと共通するステップについては、対応するステップの番号を引用することにより、詳細な説明を省略する。
図15に示す画像処理プログラムの各回の実行時には、まず、S801において、S101と同様にして、観察者の視線方向が検出される。次に、S802において、S702と同様にして、一斉に表示されている複数のオブジェクトのうち観察者が着目しているものが特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S803において、複数のオブジェクトのうち特定オブジェクトを除くものの中に、前記検出された視線方向に対して所定角度αを成す視角範囲内に存在する非特定オブジェクトが選択される。
その後、S804において、その選択された非特定オブジェクトに対応する色彩情報がRAM226において消去される。その結果、特定オブジェクトの周辺に位置して表示されるはずであった非特定オブジェクトが透明に表示され、このことは、その非特定オブジェクトが表示画面上において消去されたことを意味する。したがって、観察者は、周辺の非特定オブジェクトに邪魔されることなく、特定オブジェクトを明瞭に目視することが可能である。
以上で、この画像処理プログラムの一回の実行が終了する。
前述の所定角度αは、例えば、観察者が特定オブジェクトの全体を観察するのに必要な画角を基準に設定することが可能であり、例えば、その必要な画角の整数倍に設定することが可能である。また、所定角度αは、観察者による指定に応じて任意の値に設定することも可能である。
図16に示すように、図6に示す例に対して上記画像処理プログラムが実行されると、S802において、鯛Bの画像が特定オブジェクトとして選択される。
続いて、S803において、前記視角範囲内に存在する非特定オブジェクトが選択される。その視角範囲は、観察者の視線方向Pに対して所定角度αを成す範囲として定義される。その所定範囲αは、例えば、鯛Bの画像の全体を観察するのに必要な画角(例えば、5度)を整数倍した値(例えば、10度)に設定される。図16に示す例においては、エイAの画像がその視角範囲内に存在する非特定オブジェクトとして選択される。
その後、S804において、鯛Bの画像とおよび珊瑚Cの画像は表示されるが、エイAの画像は表示されない。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ220のうち図15のS803およびS804を実行する部分が前記(11)項における「画像処理部」の一例を構成しているのである。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。