JP4837483B2 - 高強度コンクリート用シリカフュームスラリー - Google Patents
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Description
このような問題を解決するものとして、シリカフュームをあらかじめ水でスラリー化したシリカフュームスラリーが提案されている。しかしながら、これら従来のシリカフュームスラリーは、シリカフュームスラリー濃度が50質量%程度、すなわち、その約半分が水であったため、輸送コスト低減の観点から、シリカフュームスラリーの高濃度化が求められていた。
しかしながら、単に水を減らして従来のシリカフュームスラリーを高濃度化した場合、シリカフュームスラリーの粘度が高くなり過ぎるため、取扱いが著しく困難になり、また、コンクリート中の分散性も著しく低下するという問題があった。
また、特許文献2には、強酸又は弱酸をpH調整剤として加え、シリカフュームスラリーのpHを1.0〜5.8に調整することで粘性を下げることが提案されている。
さらに、特許文献3には、脂肪族(不飽和)スルホン酸と不飽和カルボン酸の共重合体、あるいは、ポリアクリル酸塩とナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等を組み合わせた分散剤と無機酸または有機酸のpH調整剤とを併用することで、濃度40〜60質量%の低粘性シリカフュームスラリーを得ることが開示されている。
pH調整によってシリカフュームスラリーの流動性を改善する場合、酸の種類あるいは添加量の多寡によっては、高強度コンクリートの物性に悪影響を与えるという問題がある。また、強酸等を加えてシリカフュームスラリーのpHを1.0〜5.8に調整することによって粘性を下げる特許文献2の方法は、スラリーの貯蔵や輸送に高価な耐酸設備が必要とされる。
さらに、いずれの場合も長期間保存しておくとシリカフュームが沈降したり、ゲル化して流動性が失われるという大きな問題がある。
すなわち、本発明は、
(1)シリカフュームと水からなるスラリーに、シリカフュームに対して、濃度97質量%硫酸換算で0.03〜0.18質量%の硫酸が添加されたスラリーであって、継続的な機械的強制撹拌を施すことによってスラリーの流動性が保持されているセメント混和用高濃度シリカフュームスラリー;
(2)シリカフュームの濃度が60〜70質量%である上記(1)の高濃度シリカフュームスラリー;
(3)高濃度シリカフュームスラリーの調製が、まずシリカフューム濃度が15〜35質量%のスラリーを調製して硫酸を加え、その後、さらにシリカフュームを加えて、シリカフューム濃度が60〜70質量%のスラリーとすることにより得られたものである上記(2)の高濃度シリカフュームスラリー;
(4)その流動性がPロート流下時間で16秒以内である上記(1)〜(3)のいずれかの高濃度シリカフュームスラリー;
(5)継続的な機械的強制撹拌が、低速連続式または高速間欠式である上記(1)〜(4)のいずれかの高濃度シリカフュームスラリー;
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの高濃度シリカフュームスラリーを用いて製造することを特徴とするコンクリートの製造方法;
(7)シリカフュームと水と、シリカフュームに対して濃度97質量%硫酸換算で0.03〜0.18質量%の硫酸とを混合してシリカフュームスラリーを調製し、さらに、スラリーの流動性が保持されるよう継続的な機械的強制撹拌を施すことを特徴とする高濃度シリカフュームスラリーの製造方法;
を提供するものである。
本発明で使用されるシリカフュームは、シリカ質を主成分とする超微粒子材料であり、JIS A 6207に規定される「コンクリート用シリカフューム」、あるいはそれに準じた品質のものである。このようなシリカフュームとしては、例えば、シリコン、含シリコン合金、フェロシリコン等を製造する際に生成する超微粒子の副産物が挙げられる。
硫酸の添加量が0.03質量%未満では、スラリーの粘性が高く機械撹拌や定量供給が難しくなり、0.18質量%を超えるとシリカフュームスラリーを配合した高強度コンクリートの流動性や強度発現が不十分になる。
継続的な機械的強制撹拌とは、連続的もしくは断続的に機械的な強制撹拌を行うことを意味するが、消費電力の削減の観点から低速連続撹拌あるいは高速間欠撹拌であることが好ましい。
(1)高濃度シリカフュームスラリーの製造
[使用材料]
水:上水道水(以下、水と略記)
シリカフューム:マイクロシリカ940−U(エルケムジャパン株式会社、以下SFと略記)
濃度97質量%硫酸:1級試薬(和光純薬株式会社、以下硫酸と略記)
分散剤:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤「マイテイ150」(花王株式会社、以下マイテイと略記)
[高濃度SFスラリーの製造]
20℃恒温下にて、SF濃度60質量%の場合、水8kgを円筒型30リットルポリエチレン容器に入れ、ハンドミキサーで高速機械撹拌しながらSFの半分量(6kg)を少しずつ投入し、1分間撹拌して濃度30質量%のSFスラリーを調整した。このSFスラリーに硫酸またはマイテイを所定量添加した後、ハンドミキサーで高速機械撹拌しながら、残った半分量のSF6kgを少しずつ投入し、4分間撹拌して濃度60質量%のSFスラリーを得た。SF濃度70質量%および75質量%の場合、水6kgまたは5kgを円筒型30リットルポリエチレン容器に入れ、ハンドミキサーで高速機械撹拌しながらSFの半分量(7kgまたは7.5kg)を少しずつ投入し、1分間撹拌して濃度35質量%または濃度37.5質量%のSFスラリーを調製した。このSFスラリーに硫酸を所定量添加した後、ハンドミキサーで高速機械撹拌しながら、残った半分量のSFを少しずつ投入し、4分間撹拌して濃度70質量%または75質量%のSFスラリーを得た。
硫酸の添加量は、SF濃度60質量%の場合、SF質量に対して0%、0.02%、0.03%、0.10%、0.15%、0.18%、0.20%の7水準、SF濃度70質量%および75質量%の場合、SF質量に対して0.10%の各1水準とし、マイテイの添加量は、SF質量に対して0.5%として、計10配合のSFスラリーを調製した。
表1にSFスラリーの混合割合を示す。
SFスラリー(2)〜(9)は硫酸を添加するが、30〜37.5質量%のSFスラリーに硫酸を添加した中途のスラリーpHが約4〜5であり、最終のスラリーpHが約6〜7であって、金属製機械設備の腐食の危険性はない。
製造したSFスラリーをそれぞれ2個の円筒型20リットルポリエチレン容器に均等に分け、20℃恒温室内で密封保存した。本発明の実施例用SFスラリーは、製造後1日1回ハンドミキサーで1分間高速機械撹拌を行った。一方、比較例用SFスラリーは、比較例1及び3を除き機械撹拌を一切行わなかった。
保存期間は最長56日間とし、所定の保存期間ごとにスラリーの状態を目視で確認し、SFスラリーの流動性をPロートの流下時間(JSCE−F521−1999「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法」準拠)で評価した。
表2に20℃恒温におけるSFスラリーのPロート流下時間を示す。
一方、比較例1は、硫酸無添加で機械撹拌を行ったが、製造直後からスラリーの粘性が極めて高く、流動性は悪かった。比較例2は、硫酸無添加の上、機械撹拌を行わなかったため流動性は悪く、製造後数日で材料分離及びゲル化してしまった。
比較例3は、硫酸添加量0.02%で機械撹拌を行ったが、製造直後からスラリーの粘性が極めて高く、流動性は悪かった。比較例4は、硫酸0.02%の上、機械撹拌を行わなかったため製造直後から流動性は悪く、製造後数日で材料分離及びゲル化してしまった。
比較例5〜8は、所定量の硫酸を添加したが機械撹拌を行わなかったため、製造直後の流動性は良好であったが、製造翌日には粘性が増し、流動性が低下した。さらに保存期間が7日以降は材料分離及びゲル化してしまった。
比較例9は、従来技術としてSFの分散性に優れたマイテイを添加し機械撹拌を行わなかった場合で、製造直後から製造後28日までの流動性は問題なかったが、製造後56日で材料分離及びゲル化してしまった。
比較例10は、SF濃度70質量%、硫酸添加量0.10%で機械撹拌を行わなかったため、製造直後の流動性は良好であったが、製造翌日には粘性が増し、流動性が低下した。さらに保存期間が7日以降は材料分離及びゲル化してしまった。
比較例11は、SF濃度75質量%、硫酸添加量0.10%の上、機械撹拌を行わなかったため、製造直後から流動性は悪く、製造後数日で材料分離及びゲル化してしまった。
参考例1は、20℃の水道水のみをPロートで流下させた場合の流下時間を示した。この値に近いほどSFスラリーの流動性は優れていると判断できる。
[使用材料]
水:上水道水
セメント:低熱ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社)
SFスラリー:表1の(3)〜(7)及び(10)
細骨材1:千葉県君津産山砂1
細骨材2:高知県鳥形山産石灰石砕砂
粗骨材:茨城県岩瀬産硬質砂岩砕石
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤:「シーカメント1200N」(日本シーカ株式会社、以下SPと略記)
消泡剤:「シーカアンチフォームW」(日本シーカ株式会社)
表3の配合で高強度コンクリートの配合試験を実施した。1配合の練り混ぜ量は35リットルとし、20℃恒温室内で容量55リットルのニ軸強制ミキサー(太平洋機工製)を用いた。
材料の投入及び練り混ぜ手順は、まず粗骨材と細骨材1、細骨材2とセメントを投入して空練りを10秒間行い、次にSFスラリーと水を投入して予備練りを20秒間行った後、最後にSPと消泡剤を投入して480秒間の本練りを行った。
なお、SFスラリーは、いずれも製造後7日間保存しておいたものを使用した。実施例6〜9及び比較例12の硫酸を添加したSFスラリーは、保存中、毎日1分間高速機械撹拌を行い、比較例13及び14のマイテイを添加したSFスラリーは、保存中、機械撹拌を一切行わなかった。
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤SPの添加量は実施例6〜9及び比較例13及び14が結合材(セメント+シリカフューム)質量に対して2.2%である。比較例14は、流動性を改善するため結合材質量に対して3.5%に増量した。また、消泡剤の添加量は、結合材質量に対して0.025%一定とした。なお、SP及び消泡剤は、練り混ぜ水とみなして水量を補正した。
練り上がり後、直ちにコンクリート試験を実施し、圧縮強度測定用供試体を作製した。フレッシュコンクリートのスランプフローはJIS A 1150、空気量はJIS A1101、コンクリートの圧縮強度はJIS A1108に従って実施した。圧縮強度の材齢は1、7、28、56、91日とした。
高強度コンクリートの配合試験結果を表4に示す。
また、比較例13及び14は、従来技術としてSFの分散性に優れたマイテイを添加し機械撹拌を行わなかった場合であるが、SF用分散剤マイテイと高強度コンクリート用AE減水剤SPの相性が悪く、コンクリートの流動性は悪かった。比較例14は、SPの添加量を2.2%から3.5%まで増量しても流動性は改善されず、強度も若干低下してしまった。
Claims (4)
- シリカフュームと水からなるスラリーに、シリカフュームに対して、濃度97質量%硫酸換算で0.03〜0.18質量%の硫酸が添加され、シリカフュームの濃度が60〜70質量%であるスラリーであって、低速連続式または高速間欠式である継続的な機械的強制撹拌を施すことによってスラリーの流動性がPロート流下時間で16秒以内に保持されているセメント混和用高濃度シリカフュームスラリー。
- 高濃度シリカフュームスラリーの調製が、まずシリカフューム濃度が15〜35質量%のスラリーを調製して硫酸を加え、その後、さらにシリカフュームを加えて、シリカフューム濃度が60〜70質量%のスラリーとすることにより得られたものである請求項1に記載の高濃度シリカフュームスラリー。
- 請求項1又は2に記載の高濃度シリカフュームスラリーを用いて製造することを特徴とするコンクリートの製造方法。
- シリカフュームと水と、シリカフュームに対して濃度97質量%硫酸換算で0.03〜0.18質量%の硫酸とを混合してシリカフュームの濃度が60〜70質量%であるシリカフュームスラリーを調製し、さらに、スラリーの流動性がPロート流下時間で16秒以内に保持されるよう、低速連続式または高速間欠式である継続的な機械的強制撹拌を施すことを特徴とする高濃度シリカフュームスラリーの製造方法。
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