JP4837404B2 - ポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法 - Google Patents
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Description
これらの技術によれば、ポリエチレン系樹脂押出発泡シートの生産性を大きく改善できるが、そのようにして製造されたポリエチレン系樹脂発泡シートを透明性や光沢性が要望されるプラスチック部材やガラス部材などが使用された家電製品などの包装材として使用すると、その被包装物表面に添加された前記収縮防止剤や前記安定性調整剤が移行して白っぽく見える現象、いわゆるくもり現象を引き起こす問題があった。
前記ポリエチレン系樹脂として樹脂密度が0.925〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂、前記発泡剤としてイソブタンを60モル%以上含有する発泡剤を使用し、密度が0.06g/cm3未満のポリエチレン系樹脂発泡シートを得ることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法である。
本発明で用いるポリエチレン系樹脂は、樹脂密度が0.925g/cm3以上、0.935g/cm3以下の低密度ポリエチレン系樹脂である。樹脂密度が0.925g/cm3未満では、押出後の発泡シートの発泡剤の逸散が速く、樹脂自体の剛性が小さく、収縮を抑制できなくなり、一方、樹脂密度が0.935g/cm3を超えると樹脂自体の剛性が大きすぎて、発泡シートの包装材としてのクッション性を損なうことがある。
本発明では、発泡剤としてイソブタンを60モル%以上、好ましくは65モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有する発泡剤を用いる。イソブタンの含有量が60モル%未満の発泡剤では、樹脂密度が0.925〜0.935g/cm3の低密度ポリエチレン系樹脂に用いる発泡剤としては、透過性が大きすぎるため、収縮が大きくなりすぎるからである。
発泡シートの密度は0.06g/cm3未満とし、好ましくは0.01g/cm3以上、0.05g/cm3以下の範囲のポリエチレン系樹脂発泡シートにする。密度が0.06g/cm3以上では、発泡シートの柔軟性が不足して緩衝性が低下する。一方、密度が小さすぎると発泡シートの強度がなく、緩衝性が低下する。さらに、本発明の製造方法であっても、気泡膜の厚みが薄くなりすぎて、収縮が大きくなり、長尺に巻くことが困難になる。したがって、0.01g/cm3以上が好ましく、0.015g/cm3以上がより好ましい。
<気泡調整剤>
本発明のポリエチレン系樹発泡シートの製造においては、必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、シリカなどの無機粉末や分解型発泡剤としても用いられる多価カルボン酸と炭酸ナトリウムあるいは重曹(重炭酸ナトリウム)との混合物、アゾジカルボン酸アミドなどが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもよい。添加量は、ポリエチレン系樹脂100重量部あたり0.5重量部以下が好ましい。
<その他の添加剤>
また必要に応じて、更に、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を添加することもできる。
前記ポリエチレン系樹脂と前記発泡剤とを原材料成分として用いれば、複雑な製造工程を必要としない。例えば、図1に示すように、原料を押し出し発泡して押出発泡シートを与える押出発泡工程1、押し出されたシートを巻取り機により巻き取る巻き取り工程2、巻き取ったシートを放置する熟成工程3、巻き直し機などでシートを商品用に巻きなおす化粧巻き工程4を経ることで出荷可能となる。
具体的には、例えば、樹脂密度が0.925〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂に、イソブタンを60モル%以上含有する発泡剤を加えて押出発泡して押出発泡シートを得た後、この押出発泡シートを巻取り機にてロール状に巻き取り、これを放置して熟成し、その後巻き直し機にて巻き直して、密度が0.06g/cm3未満のロール状のポリエチレン系樹脂発泡シートを得る製造方法を採用することができる。
なお、前記化粧巻き工程は、前記熟成工程中に行ってもよい。すなわち、化粧巻き工程後、更にシートを熟成させることもできる。これらの個々の工程の大枠は公知の工程であるが、収縮防止剤を用いずに特定のポリエチレン系樹脂と発泡剤を使用して押出発泡し、密度が0.06g/cm3未満のポリエチレン系樹脂発泡シートを得る簡素化された一連の製造工程としては新規である。本発明の製造方法を適用するに当たっての特異な条件や留意点について以下説明する。
本発明の巻取り機による巻き取り工程では、巻き取り時にできるだけ小さい張力で緩く巻き取ることが好ましい。小さい張力で緩く巻き取ることにより、収縮した厚みが回復するスペースをシート同士間の空隙に確保することができ、一旦収縮した発泡シートが回復する時に、元の厚みに近くなりやすい。またロール内の厚みバラツキをより少なくできる。すなわち、張力が強いと、柔らかい高発泡のポリエチレン系樹脂発泡シートは、引っ張られて伸びたり、巻き縮まって厚みが実際よりも薄くなった状態で巻かれることになるだけでなく、厚みがつぶされて、製品厚みが薄くなってしまうおそれがある。反対に、張力が小さすぎるとロール状に巻くことが困難になる。具体的にはシート幅1mあたり4.9〜29.4Nの平均張力とすることが好ましい。
なお、本発明において、前記メルトマスフローレイト(MFR)は、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)」及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法により測定した。
発泡シートの製造においては、押出発泡が終了したシートは、寸法回復及び余分な発泡剤を発散・除去するため一定期間放置して熟成させる。収縮防止剤を加えた発泡シートの場合、通常10日間ほど熟成させる必要がある。しかし、本発明の製造方法では、収縮防止剤を用いない場合、熟成工程における発泡剤の逸散及び空気の侵入が早く、熟成期間を短縮することができ、およそ3〜4日で足りる。熟成工程においては、巻き取った発泡シート内で均一に厚みを回復しやすくするために、巻き芯が水平になるようにし、かつ、空中に浮かした吊り状態でロール状の発泡シートを放置して行うことが好ましい。また、熟成温度は、低いと寸法回復や発泡剤の空気との置換などに長時間要し、高いと発泡シートが熱収縮する恐れがあるので、15〜55℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
表1記載のポリエチレン樹脂C100重量部、重曹−クエン酸のマスターバッチ(大日精化社製、商品名「ファインセルマスターP0410K」)0.1部をΦ90mm−Φ150mmのタンデム押出機のΦ90mmの第一押出機に供給し、押出機内で溶融した後、押出機途中から発泡剤としてイソブタン/ノルマルブタン=70/30(モル比)を18重量部圧入し、混練した後、Φ150mmの第二押出機で発泡に適する温度域(110℃)まで冷却し、出口直径が145mm(スリット0.15mm)の環状ダイスより大気中に押出発泡した。
ポリエチレン原料として、表1記載のポリエチレン樹脂Dを使用したこと以外は、実施例1と同様にロール状の発泡シートを作成した。本実施例の発泡シートの密度(下記のT1基準値)は0.026g/cm3であった。室温にて5日間放置した後の当該発泡シートの密度(下記のT2基準値)は0.023g/cm3であった。
発泡剤として、イソブタン/ノルマルブタン=95/5(モル比)を使用したこと以外は、実施例1と同様にロール状の発泡シートを得た。本実施例の発泡シートの密度(下記のT1基準値)は0.025g/cm3であった。室温にて5日間放置した後の当該発泡シートの密度(下記のT2基準値)は0.023g/cm3であった。
ポリエチレン原料として、表1記載のポリエチレン樹脂A(比較例1)、ポリエチレン樹脂B(比較例2)をそれぞれ使用し、巻取り時のシート幅1mあたりの平均張力を49Nにしたこと以外は、実施例1と同様にロール状の発泡シートを作成した。比較例1の発泡シートの密度(下記のT1基準値)は0.046g/cm3、比較例2の発泡シートの密度(下記のT1基準値)は0.039g/cm3であった。室温にて5日間放置した後の当該発泡シートの密度(下記のT2基準値)は0.023g/cm3、比較例2の発泡シートの密度(下記のT2基準値)は0.023g/cm3であった。
一方、比較例1、2とも、巻取り時の張力を上げずに張力を9.8Nにした場合は、巻取り中の厚みの減少により、ロール内に隙間が生じ、きれいにロール状に巻取りすることができなかった。
発泡剤として、イソブタン/ノルマルブタン=35/65を使用し、巻取り時の張力を19.6Nにしたこと以外は、実施例1と同様にロール状の発泡シートを作成した。本比較例の発泡シートの密度(下記のT1基準値)は0.032g/cm3であった。室温にて5日間放置した後の当該発泡シートの密度(下記のT2基準値)は0.024g/cm3であった。
一方、巻取り時の張力を上げずに張力を9.8Nにした場合は、巻取り中の厚みの減少により、ロール内に隙間が生じ、きれいにロール状に巻取りすることができなかった。
表1記載のポリエチレン樹脂Aを100重量部、重曹−クエン酸のマスターバッチ(大日精化社製、商品名「ファインセルマスターP0410K」)0.1部をΦ90mmの押出機に供給し、押出機内で溶融した後、押出機途中から発泡剤としてイソブタン/ノルマルブタン=35/65を18重量部及び収縮防止剤としてステアリン酸モノグリセライドを1.5部圧入した事以外は、実施例1と同様にロール状の発泡シートを得た。ロール内の発泡シートの厚み減少も少なく、厚み均一性は良いが、下記のくもり評価試験にてはっきりとしたくもりが確認された(くもり評価:5)。
実施例、比較例でそれぞれ得られた前記ロール状の発泡シートから長さ方向に約100m間隔で切片を7枚切り出し、それぞれの切片の厚みを幅方向に10点測定し、10点平均値をそれぞれの切片の厚みとした。また、それぞれの切片を室温にて5日間放置した後、同様に切片の幅方向の厚みを測定した。各厚みの定義は次のとおりである。なお、実施例、比較例でそれぞれ得られた前記ロール状の発泡シートから最初に切り出された前記切片について発泡シート密度をあわせて測定し、その平均値(T1基準値)を得た。本発明の発泡シートの密度はT1基準値に基いて特定される。また同様に、それを室温にて5日間放置した後、発泡シート密度を測定し、その平均値(T2基準値)を得た。
・ロール内平均厚みT1: 7枚の切片の厚みの平均値
・ロール内最小厚みTm: 7枚の切片の厚みのうちの最小値
・放置後厚みT2: 5日間放置後の7枚の切片の厚みの平均値
なお、本発明における前記発泡シートの厚みは、定圧厚み測定機(Teclock社製、型式SCM−627)で測定した。発泡シートの密度は、JIS K 6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
包装物の汚染性は、包装物の板の上に発泡シートを乗せ、その上に重りを乗せて放置し、包装物の汚れ具合を肉眼で観察して5段階に分けた。すなわち、発泡シートを2.6cm×2.6cmの大きさに切り、これをガラス板またはポリカーボネート板の上に乗せ、その上にさらに1kgの重りを乗せて(荷重0.15kg/cm2)、温度60℃、湿度80%の槽内に24時間放置した後、温度25℃、湿度60%にて1時間自然冷却する。そして、発泡シートを取り除いてガラス板叉はポリカーボネート板の表面のくもり発生(汚れ具合)を肉眼で評価し、結果を表2記載の5段階に分けた。
Claims (6)
- 収縮防止剤を加えずに、ポリエチレン系樹脂に発泡剤を加えて押出発泡シートを得た後、この押出発泡シートを巻取り機にてロール状に巻き取り、これを放置して熟成し、その後巻き直し機にて巻き直して、ロール状のポリエチレン系樹脂発泡シートを得るポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法において、
前記ポリエチレン系樹脂として樹脂密度が0.925〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂、
前記発泡剤としてイソブタンを60モル%以上含有する発泡剤を使用し、
密度が0.06g/cm3未満のポリエチレン系樹脂発泡シートを得ることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。 - 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの密度が0.01〜0.05g/cm3である
請求項1記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。 - 前記発泡剤がイソブタン60モル%以上とノルマルブタン2モル%以上の混合ブタンである請求項1又は2記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
- 樹脂密度が0.925〜0.935g/cm 3 のポリエチレン系樹脂に、イソブタンを60モル%以上含有する発泡剤を加えて押出発泡して押出発泡シートを得た後、この押出発泡シートを巻取り機にてロール状に巻き取り、これを放置して熟成し、その後巻き直し機にて巻き直して、密度が0.06g/cm 3 未満のロール状のポリエチレン系樹脂発泡シートを得る請求項1乃至3のいずれかの項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
- 前記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)が、2〜5g/10minである請求項1乃至4のいずれかの項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
- 前記押出発泡シートの熟成は、巻き芯が水平になるように、かつ、空中に浮かした状態に吊るして放置する請求項4又は5記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
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