図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路100(図2、図3参照)内の図示しない切換弁などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したり、伝動ベルト48の挟圧力(以下、ベルト挟圧力という)を発生させたり、ロックアップクラッチ26を係合解放制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ(プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ(セカンダリシーブ)46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力すなわちベルト挟圧力を介して動力伝達が行われる。
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅を可変とする推力を付与する入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されており、入力側油圧シリンダ42cの油圧(変速制御圧PRATIO)が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、出力側油圧シリンダ46cの油圧(ベルト挟圧、挟圧力制御圧PBELT)は、伝動ベルト48が滑りを生じないように油圧制御回路100によって調圧制御される。
図2は、図1の車両用駆動装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTすなわち出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32(図1参照)に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18内等の作動油(CVTフルード)の油温TCVTを表す信号、アクセル操作量センサ66により検出されたアクセルペダル68の踏込操作量であるアクセル操作量(アクセル開度)Accを表すアクセル操作量信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号などが供給されている。
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号例えば変速制御圧PRATIOを制御するための指令信号、ベルト挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号例えば挟圧力制御圧PBELTを制御するための指令信号、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御させる為のロックアップ制御指令信号例えば油圧制御回路100内の図示しないオンオフソレノイド弁やロックアップクラッチ26のトルク容量を調節するリニアソレノイド弁を駆動するための指令信号、ライン油圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを駆動するための指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
このライン油圧PLは、例えば無段変速機18へ入力される変速機入力トルクTINに応じた値が得られるように出力された上記指令信号に従って駆動されるリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLTに基づいて、油圧制御回路100内の図示しない例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によってエンジン12により回転駆動される機械式オイルポンプ28から発生する油圧を元圧として調圧される。
シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、および「L」(図3参照)のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は車両用駆動装置10の動力伝達経路を解放しすなわち車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させられるエンジンブレーキポジション(位置)である。
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18のベルト挟圧力制御、変速比制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関する部分を示す要部油圧回路図であり、伝動ベルト48が滑りを生じないように出力側油圧シリンダ46cの油圧である挟圧力制御圧PBELTを調圧する挟圧力コントロールバルブ110、変速比γが連続的に変化させられるように入力側油圧シリンダ42cの油圧である変速制御圧PRATIOを調圧する変速比コントロールバルブUP116および変速比コントロールバルブDN118、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ120を備えている。
上記マニュアルバルブ120において、入力ポート120aにはライン油圧PLを元圧として図示しないモジュレータバルブによって調圧された一定圧のモジュレータ油圧PMが供給される、すなわちモジュレータバルブによってモジュレータ油圧PMに調圧された作動油が供給される。
そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが前進走行用出力圧として前進用出力ポート120fを経て前進用クラッチC1に供給され且つ後進用ブレーキB1内の作動油が後進用出力ポート120rから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが後進走行用出力圧として後進用出力ポート120rを経て後進用ブレーキB1に供給され且つ前進用クラッチC1内の作動油が前進用出力ポート120fから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート120aから前進用出力ポート120fへの油路および入力ポート120aから後進用出力ポート120rへの油路がいずれも遮断され且つ前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1内の作動油が何れもマニュアルバルブ120からドレーンされるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1共に解放させられる。
変速比コントロールバルブUP116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116tおよび入出力ポート116iを開閉するスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し、スプール弁子116aに入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向の推力を付与するために電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aに入出力ポート116iを閉弁する方向の推力を付与するために電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室116dとを備えている。
また、変速比コントロールバルブDN118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート118tを開閉するスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し、スプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与するために電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室118dとを備えている。
ソレノイド弁DS1は、入力側油圧シリンダ42cへ作動油を供給してその油圧(変速制御圧PRATIO)を高め入力側可変プーリ42のV溝幅を小さくして変速比γを小さくする側すなわちアップシフト側へ制御するために制御油圧PS1を出力する。また、ソレノイド弁DS2は、入力側油圧シリンダ42cの作動油を排出して変速制御圧PRATIOを低め入力側可変プーリ42のV溝幅を大きくして変速比γを大きくする側すなわちダウンシフト側へ制御するために制御油圧PS2を出力する。
具体的には、制御油圧PS1が出力されると変速比コントロールバルブUP116に入力されたライン油圧PLが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて変速制御圧PRATIOが連続的に制御され、制御油圧PS2が出力されると入力側油圧シリンダ42cの作動油が入出力ポート116tから入出力ポート116iさらに入出力ポート118tを経て排出ポート118xから排出されて変速制御圧PRATIOがな連続的に制御される。
例えば、無段変速機18の目標入力回転速度としての後述する最終目標回転速度NIN *と実際の入力軸回転速度(以下、実入力軸回転速度という)NINとが一致するように、それ等の回転速度差(偏差)ΔNIN(=NIN *−NIN)に応じて無段変速機18の変速が実行される、すなわち入力側油圧シリンダ42cに対する作動油の供給および排出により変速制御圧PRATIOが調圧されて変速比γが連続的に変化させられる。
挟圧力コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート110tを開閉するスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し、スプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために電子制御装置50によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLTを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力した挟圧力制御圧PBELTを受け入れるフィードバック油室110dとを備えており、リニアソレノイド弁SLTからの制御油圧PSLTをパイロット圧としてライン油圧PLを連続的に調圧制御して挟圧力制御圧PBELTを出力する。
例えば、可変プーリ42、46にベルト挟圧力を付与するために必要な出力側油圧シリンダ46cの目標ベルト挟圧である後述する必要油圧PBELT *が得られるように出力側油圧シリンダ46cの挟圧力制御圧PBELTが調圧され、この挟圧力制御圧PBELTに応じてベルト挟圧力が増減させられる。
図4は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、目標駆動力算出手段150は、加速要求量としてのアクセル操作量Accに基づいて目標駆動力F*を算出する。例えば、目標駆動力算出手段150は、図5に示すようなアクセル操作量Accをパラメータとして車速Vと目標駆動力F*との予め実験的に求められて記憶された関係(マップ、駆動力マップ)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて目標駆動力F*(=map(車速V、アクセル操作量Acc))を求める。この図5の駆動力マップは、車速Vが小さい程またアクセル操作量Accが大きい程目標駆動力F*が大きくなるように設定されている。
また、目標駆動力算出手段150は、予め設定された速度すなわち目標車速V*となるようにアクセル操作量Accに拘わらず車速Vを自動的に制御する所謂クルーズコントロール等の自動車速制御中には、車速Vを目標車速V*に維持するための目標駆動力F*を算出する。
目標出力算出手段152は、車速Vおよび目標駆動力算出手段150により算出された目標駆動力F*から P*=f(F*、V)=F*×V×1000/3600 に従って目標出力P*を算出する。目標出力算出手段152は、オルタネータやエアコン用コンプレッサやウォーターポンプやパワーステアリングポンプ等の補機負荷によって低下する駆動輪24における出力P−を補償するために、その補機負荷に基づいてその低下分の出力P−に相当するエンジン出力PEの増加分PE +を補機負荷補償出力PAUXとして算出し、その補機負荷補償出力PAUXを加えて目標出力P*を算出しても良い。
基本目標回転速度算出手段154は、前記目標出力算出手段152により算出された目標出力P*に基づいて無段変速機18の定常回転速度である基本目標回転速度NINBSEを算出する。例えば、基本目標回転速度算出手段154は、入力軸回転速度NINとエンジントルクTEとで構成される二次元座標内において運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図6の実線に示すようなエンジン12の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン12が作動させられるように、図6の破線に示すような入力軸回転速度NINとエンジントルクTEとに基づいて予め求められて記憶された目標出力P*の等出力曲線(等出力マップ、関係)から目標出力P*に基づいて基本目標回転速度NINBSE(=map(目標出力P*))を求める。すなわち、基本目標回転速度算出手段154は、上記最適燃費率曲線および等出力曲線から目標出力P*を充足させるために必要な基本目標回転速度NINBSEを算出する。
最終目標回転速度算出手段156は、前記基本目標回転速度算出手段154により算出された基本目標回転速度NINBSEに基づいて無段変速機18の過渡回転速度である最終目標回転速度NIN *を算出する。例えば、最終目標回転速度算出手段156は、図7に示すように基本目標回転速度NINBSEに向かって所定の変化勾配で徐々に近づくような最終目標回転速度NIN *を設定する。図7に示すような過渡特性は、例えば変速ショックや応答の遅れ感が生じない程度の変速速度で変速が実行されるように基本目標回転速度NINBSEに対して一律に所定の変化勾配が予め設定されていても良いし、アクセル操作量Accやアクセル操作量の変化量(以下、アクセル変化量という)ΔAccや車速Vなどのパラメータに基づいて変化させられても良い。例えば、アクセル変化量ΔAccが大きい程立ち上がりが早くなるように設定される。或いは、最終目標回転速度算出手段156は、基本目標回転速度NINBSEに対して一次遅れの最終目標回転速度NIN *を設定しても良い。この一次遅れの最終目標回転速度NIN *は変速速度や変速ショックの抑制が両立するように時定数が定められる。例えば、この時定数は、予め設定された一定値であっても良いし、予め記憶された関係からアクセル操作量Accやアクセル変化量ΔAccや車速Vなどのパラメータに基づいて変化させられても良い。例えば、アクセル変化量ΔAccが大きい程立ち上がりが早くなるように設定される。また、上記所定の変化勾配や時定数は、スロットル弁開度θTHの全開や作動油温等を考慮して上限制限値(上限ガード値)が設けられても良い。
目標エンジントルク算出手段158は、前記目標出力算出手段152により算出された目標出力P*に基づいて目標エンジントルクTE *を算出する。例えば、目標エンジントルク算出手段158は、前記図6の実線に示すようなエンジン12の最適燃費率曲線に沿ってエンジン12が作動させられるように、図6の破線に示すような目標出力P*の等出力曲線から目標出力P*に基づいて目標エンジントルクTE *(=map(目標出力P*))を求める。すなわち、目標エンジントルク算出手段158は、上記最適燃費率曲線および等出力曲線から目標出力P*を充足させるために必要な目標エンジントルクTE *を算出する。
要求スロットル開度算出手段160は、前記目標エンジントルク算出手段158により算出された目標エンジントルクTE *に基づいて要求スロットル開度θTHRを算出する。例えば、要求スロットル開度算出手段160は、図8に示すようなスロットル弁開度θTHをパラメータとしてエンジン回転速度NEとエンジントルク推定値TE0との予め実験的に求められて記憶された関係(エンジントルクマップ)から実際のエンジン回転速度NEに基づいて目標エンジントルクTE *が得られるためのエンジントルク推定値TE0となるように要求スロットル開度θTHRを算出する。
ベルト挟圧力設定手段162は、前記要求スロットル開度算出手段160により算出された要求スロットル開度θTHRに基づいて伝動ベルト48のベルト挟圧力すなわち出力側油圧シリンダ46cの必要油圧PBELT *を算出する。例えば、ベルト挟圧力設定手段162は、図9に示すような要求スロットル開度θTHRをパラメータとして変速比γと必要油圧PBELT *(ベルト挟圧力に相当)とのベルト滑りが生じないように予め実験的に求められて記憶された関係(挟圧力マップ)から実際の変速比γおよび要求スロットル開度θTHRに基づいて必要油圧PBELT *を設定する。
変速制御手段164は、実入力軸回転速度NINが前記最終目標回転速度算出手段156によって算出された最終目標回転速度NIN *と一致するように、それ等の回転速度差(偏差)ΔNIN(=NIN *−NIN)に応じて無段変速機18の変速比γをフィードバック制御する。すなわち、入力側油圧シリンダ42cの変速制御圧PRATIOを調圧する変速制御指令信号(油圧指令)STを油圧制御回路100へ出力して変速比γを連続的に変化させる。
ベルト挟圧力制御手段166は、前記ベルト挟圧力設定手段162により設定された必要油圧PBELT *が得られるように出力側油圧シリンダ46cの挟圧力制御圧PBELTを調圧する挟圧力制御指令信号SBを油圧制御回路100へ出力してベルト挟圧力を増減させる。
油圧制御回路100は、上記変速制御指令信号STに従って無段変速機18の変速が実行されるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を作動させて変速制御圧PRATIOを調圧すると共に、上記挟圧力制御指令信号SBに従ってベルト挟圧力が増減されるようにリニアソレノイド弁SLTを作動させて挟圧力制御圧PBELTを調圧する。
エンジン出力制御手段168は、エンジン12の出力制御の為にエンジン出力制御指令信号SE、例えばスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などをそれぞれスロットルアクチュエータ76や燃料噴射装置78や点火装置80へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段168は、前記要求スロットル開度算出手段160により算出された要求スロットル開度θTHRとなるように電子スロットル弁30を開閉するスロットル信号をスロットルアクチュエータ76へ出力すると共に、要求スロットル開度θTHRに対応する吸入空気量QAおよび燃料噴射量F(すなわち空燃比QA/F)となるように噴射信号を燃料噴射装置78へ出力してエンジントルクTEを制御する。
ここで、アクセルオフ等の車両減速時においてアップシフトが行われる際は、実入力軸回転速度NINに対して段階的に小さく設定された基本目標回転速度NINBSEに向かって徐々に低下させられるように最終目標回転速度NIN *が設定され、実入力軸回転速度NINが最終目標回転速度NIN *に追従させられるようにフィードバック制御される。結果として、車両減速時にアップシフトする際は、基本目標回転速度NINBSEに向かって実入力軸回転速度NINが徐々に低下させられるように変速比γが小さくさせられる。
ところで、上記アップシフト過程においてアクセルペダル68が踏込み操作されると、アクセル操作量Accに基づいて段階的に大きくされた基本目標回転速度NINBSEが新たに設定され、この基本目標回転速度NINBSEに向かって徐々に近づく最終目標回転速度NIN *が設定される。このとき、アクセルペダル68の踏込みに伴って新たに設定された基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINよりも低い場合には、この基本目標回転速度NINBSEに向かって低下させられる最終目標回転速度NIN *が設定されるので、アクセルペダル68が踏込み操作されたにも拘わらず実入力軸回転速度NINが引き続き低下させられて実質的にアップシフトが継続された状態となり、運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じる可能性がある。
そこで、アップシフト禁止手段170は、車両減速時のアップシフト過程において、アクセルペダル68の踏込み操作等の加速要求が生じたときは、実入力軸回転速度NINが低下しないように無段変速機18のアップシフトを禁止する。
具体的には、オフアップ判定手段172は、前記変速制御手段164により車両減速時のアップシフトが行われているか否かを、すなわち車速Vの低下と共に実入力軸回転速度NINが低下するような減速走行状態であるか否かを、例えば前記変速制御手段164により出力されているアクセルオフに伴うアップシフト実行中であることを表すオフアップフラグFUPがオンであるか否か、或いはブレーキ操作信号BONがオンとされているか否か、或いは惰性走行(コースト走行)中であることを表すコーストフラグFCがオンであるか否か等に基づいて判定する。
減速走行状態継続判定手段174は、車速Vの低下と共に実入力軸回転速度NINが引き続き低下して減速走行状態が継続中であるか否かを、例えばオフアップフラグFUPがオフ、且つブレーキ操作信号BONがオフ、且つコーストフラグFCがオフである車両状態となってから所定時間TC以内であるか否かに基づいて判定する。この所定時間TCは、オフアップ判定手段172の判定が否定された後であっても引き続き減速状態が継続されていることを判定するための予め実験的に求められて記憶された減速走行状態継続判定値である。
加速要求判断手段176は、前記変速制御手段164による車両減速時のアップシフト過程において加速要求が生じたか否かを判断する。例えば、加速要求判断手段176は、アクセル操作量Accが所定操作量Acc’以上であり、且つアクセル変化量ΔAccが所定変化量ΔAcc’以上(実際には所定の周期で判定が実行されるので、アクセル変化率が所定変化率以上と同等)であるときに、加速要求が生じたと判断する。この所定操作量Acc’および所定変化量ΔAcc’は、実入力軸回転速度NINが低下すると運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じる可能性があるようなアクセルペダル68の踏込み操作であることを判定するための予め実験的に求められて記憶された加速要求判断値である。
前記アップシフト禁止手段170は、前記加速要求判断手段176により加速要求が生じたと判断されたときは、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINより低い場合であっても実入力軸回転速度NINが低下しないように、無段変速機18のアップシフトを禁止する指令を前記変速制御手段164へ出力する。
例えば、アップシフト禁止手段170は、変速比γが固定されるようにすなわち変速比γが結果的に一定とされるように、最終目標回転速度NIN *に替えて固定中目標回転速度NINRHを設定する変速比固定指令を前記最終目標回転速度算出手段156へ出力して、無段変速機18のアップシフトを確実に禁止する。同時に、アップシフト禁止手段170は、変速比γを固定するための制御中であることを表す変速比固定フラグFRHをオンとする。最終目標回転速度算出手段156は、アップシフト禁止手段170による変速比固定指令に従って、最終目標回転速度NIN *に替えて、変速比γが結果的に一定とされるような固定中目標回転速度NINRHを設定する。また、変速制御手段164は、実入力軸回転速度NINが最終目標回転速度算出手段156によって設定された固定中目標回転速度NINRHと一致するように、無段変速機18の変速比γをフィードバック制御すると共に、変速比固定フラグFRHがオンとされたことによりオフアップフラグFUPをオフとする。
アップ禁止終了判定手段178は、前記アップシフト禁止手段170によるアップシフトの禁止を終了する車両状態であるか否かを判定する。
例えば、アップ禁止終了判定手段178は、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINよりも高くなって実入力軸回転速度NINの低下が回避される車両状態になるまでは前記アップシフトが禁止されるように、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINすなわち固定中目標回転速度NINRHよりも高くなったときに、アップシフトの禁止を終了する車両状態であると判定する。
また、アップ禁止終了判定手段178は、前記アップシフトの禁止が確実に終了させられるように、前記加速要求判断手段176により加速要求が生じたと判断されたときから所定時間TS経過したときに、アップシフトの禁止を終了する車両状態であると判定する。この所定時間TSは、アップシフトの禁止を終了したとしても運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じ難いような車両状態例えば基本目標回転速度NINBSEと実入力軸回転速度NINとの回転速度差が小さくされた状態となっている経過時間であることを判定するための予め実験的に求められて記憶された禁止終了判定値であり、アップシフトの禁止を確実に終了させるための予め実験的に求められて記憶されたガードタイマでもある。
また、アップ禁止終了判定手段178は、運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じ難い状態になるまでは前記アップシフトが禁止されるように、例えばアクセル操作量Accが所定操作量Acc’より小さく且つアクセル変化量ΔAccの絶対量が所定変化量ΔAcc’以上となるような減速要求が生じたときに、アップシフトの禁止を終了する車両状態であると判定する。この所定操作量Acc’および所定変化量ΔAcc’は、実入力軸回転速度NINが低下するようなアップシフトが行われたとしても運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じ難いようなアクセルペダル68の戻し操作であることを判定するための予め実験的に求められて記憶された減速要求判断値である。
前記アップシフト禁止手段170は、前記アップ禁止終了判定手段178によりアップシフトの禁止を終了する車両状態であると判定されたときは、前記変速制御手段164へ出力していた無段変速機18のアップシフトを禁止する指令を解除する。
例えば、アップシフト禁止手段170は、前記最終目標回転速度算出手段156へ出力していた変速比固定指令を解除して、無段変速機18のアップシフトの禁止を終了する。同時に、アップシフト禁止手段170は、変速比固定フラグFRHをオフとする。最終目標回転速度算出手段156は、アップシフト禁止手段170による変速比固定指令の解除に従って、固定中目標回転速度NINRHの設定を終了して、通常通り基本目標回転速度NINBSEに基づいて最終目標回転速度NIN *を算出する。
図10は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわち車両減速時のアップシフト過程における加速要求の際に運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、所定の周期例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図11は、図10のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートである。
図10において、先ず、前記オフアップ判定手段172に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、車両減速時のアップシフトが行われているか否かが、すなわち車速Vの低下と共に実入力軸回転速度NINが低下するような減速走行状態であるか否かが、例えばオフアップフラグFUPがオンであるか否か、或いはブレーキ操作信号BONがオンとされているか否か、或いはコーストフラグFCがオンであるか否か等に基づいて判定される。
前記S1の判断が否定される場合は前記減速走行状態継続判定手段174に対応するS2において、車速Vの低下と共に実入力軸回転速度NINが引き続き低下して減速走行状態が継続中であるか否かが、例えばオフアップフラグFUPがオフ、且つブレーキ操作信号BONがオフ、且つコーストフラグFCがオフである車両状態となってから所定時間TC以内であるか否かに基づいて判定される。このS2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。
図11のt1時点以前は、アクセル操作量が一定の定常状態において基本目標回転速度NINBSEと最終目標回転速度NIN *とが略一致し、実入力軸回転速度NINが基本目標回転速度NINBSEに略一致させられている状態を示している。t1時点において、破線に示すようにアクセルオフに伴って段階的に小さくされた基本目標回転速度NINBSEが設定され、オフアップフラグFUPがオンとされる。続いて、t1時点乃至t2時点において、実線に示すように基本目標回転速度NINBSEに向かって所定の勾配で徐々に低下させられる最終目標回転速度NIN *が設定され、実入力軸回転速度NINが最終目標回転速度NIN *に追従させられるようにフィードバック制御されてオフアップシフトが実行される。
前記S1の判断が肯定されるか或いは前記S2の判断が肯定される場合は前記加速要求判断手段176に対応するS3において、車両減速時のアップシフト過程において加速要求が生じたか否かが、例えばアクセル操作量Accが所定操作量Acc’以上であり且つアクセル変化率が所定変化率以上であるか否かに基づいて判断される。
図11のt2時点は、オフアップシフトの途中でアクセルペダル68が踏込み操作されて加速要求が生じた状態を示している。そして、このt2時点では、その加速操作に基づいて段階的に大きくされた新たな基本目標回転速度NINBSEが設定される。
前記S3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は前記アップシフト禁止手段170に対応するS4において、変速比γが固定されるようにすなわち変速比γが結果的に一定とされるように、最終目標回転速度NIN *に替えて固定中目標回転速度NINRHを設定する変速比固定指令が出力されて無段変速機18のアップシフトが禁止されると共に、変速比固定フラグFRHがオンとされる。
図11のt2時点において、変速比固定フラグFRHがオンとされてオフアップフラグFUPがオフとされると共に、破線に示すように基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NIN(最終目標回転速度NIN *)より低い場合であっても実入力軸回転速度NINが低下しないように、最終目標回転速度NIN *に替えて変速比γが結果的に一定とされるような固定中目標回転速度NINRHが設定されて、無段変速機18のアップシフトが確実に禁止される。そして、t2時点乃至t3時点において、実入力軸回転速度NINが固定中目標回転速度NINRHと一致するように、無段変速機18の変速比γがフィードバック制御される。このt2時点乃至t3時点では、結果的に変速比γが固定され、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINより低い場合でも実入力軸回転速度NINが低下せず、アクセル踏込みに伴う車速Vの上昇に伴って実入力軸回転速度NINが上昇させられる。
続いて、前記アップ禁止終了判定手段178に対応するS5において、前記S4にて実行されているアップシフトの禁止を終了する車両状態であるか否かが判定される。例えば、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINすなわち固定中目標回転速度NINRHよりも高くなったときに、または加速要求が生じたと判断されたときから所定時間TS経過したときに、またはアクセル操作量Accが所定操作量Acc’より小さく且つアクセル変化量ΔAccの絶対量が所定変化量ΔAcc’以上となるような減速要求が生じたときに、アップシフトの禁止を終了する車両状態であると判定される。
図11のt3時点は、アップシフトが禁止されているときに基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINよりも高くなった状態を示している。
前記S5の判断が否定される場合は前記S4へ戻るが肯定される場合は前記アップシフト禁止手段170に対応するS6において、前記S4にて出力された変速比固定指令が解除され、固定中目標回転速度NINRHの設定に替えて、通常通り基本目標回転速度NINBSEに基づいて最終目標回転速度NIN *が算出されて無段変速機18のアップシフトの禁止が終了されると共に、変速比固定フラグFRHがオフとされる。
図11のt3時点において、変速比固定フラグFRHがオフとされると共に、固定中目標回転速度NINRHの設定に替えて通常通り基本目標回転速度NINBSEに基づいて最終目標回転速度NIN *が算出されて、無段変速機18のアップシフトの禁止が終了される。t3時点以降は、実入力軸回転速度NINが最終目標回転速度NIN *と一致するようにフィードバック制御されて、基本目標回転速度NINBSEと最終目標回転速度NIN *とが略一致し、実入力軸回転速度NINが基本目標回転速度NINBSEに略一致させられている状態を示している。尚、仮にこのt3時点が、加速要求が生じたと判断されたt2時点から所定時間TS経過した時点であっても、同様に、無段変速機18のアップシフトの禁止が終了される。
上述のように、本実施例によれば、車両減速時のアップシフト過程において、加速要求判断手段176によって加速要求が生じたと判断されたときは、実入力軸回転速度NINが低下しないように、アップシフト禁止手段170により無段変速機18のアップシフトが禁止されるので、車両減速時のアップシフト途中においてアクセルペダル68の踏み増し操作等の加速要求が生じたときに、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINより低い場合であっても、実入力軸回転速度NINの低下が抑制されて運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が抑制される。
また、本実施例によれば、アップシフト禁止手段170によって無段変速機18の変速比γが固定されることによりアップシフトが禁止されるので、確実にアップシフトが禁止される。また、加速要求に伴う再加速性が確保される。
また、本実施例によれば、アクセル操作量Accが所定操作量Acc’以上であり且つアクセル変化量ΔAccが所定変化量ΔAcc’以上であるときに、加速要求判断手段176により加速要求が生じたと判断されるので、運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じやすいような加速要求時にアップシフトの禁止が適切に実行される。
また、本実施例によれば、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINよりも高くなったときには、アップシフト禁止手段170によりアップシフトの禁止が終了させられるので、基本目標回転速度NINBSEが実入力軸回転速度NINすなわち固定中目標回転速度NINRHよりも高くなって実入力軸回転速度NINの低下が回避される車両状態になるまではアップシフトが禁止される。
また、本実施例によれば、加速要求判断手段176によって加速要求が生じたと判断されたときから所定時間TS経過したときには、アップシフト禁止手段170によりアップシフトの禁止が終了させられるので、アップシフトの禁止が確実に終了させられる。
また、本実施例によれば、アクセル戻し操作されるような減速要求が生じたときには、アップシフト禁止手段170によりアップシフトの禁止が終了させられるので、運転者の実入力軸回転速度NINの変化に対する違和感が生じ難い状態になるまではアップシフトが禁止される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例における入力軸回転速度NINやそれに関連する基本目標回転速度NINBSEや最終目標回転速度NIN *は、それら入力軸回転速度NINなどに替えて、エンジン回転速度NEやそれに関連する目標エンジン回転速度NE *など、或いはタービン回転速度NTやそれに関連する目標タービン回転速度NT *などであっても良い。
また、前述の実施例では、車両状態に基づいて基本目標回転速度NINBSEや最終目標回転速度NIN *が設定され、実入力軸回転速度NINが最終目標回転速度NIN *と一致するように、無段変速機18の変速比γがフィードバック制御されるような変速制御態様であったが、車両状態に基づいて目標変速比γ*が設定され、実際の変速比γが目標変速比γ*と一致するように、或いはその目標変速比γ*とするための目標回転速度NIN *と一致するように、無段変速機18の変速比γがフィードバック制御されるような変速制御態様であっても良い。
また、前述の実施例では、要求スロットル開度算出手段160により目標エンジントルクTE *が得られるための要求スロットル開度θTHRが算出されたが、必ずしも要求スロットル開度θTHRでなくとも良く目標エンジントルクTE *が得られるための他の要求値が用いられても良い。例えば、目標エンジントルクTE *が得られるための燃料噴射量や点火時期などが用いられてもよい。
また、前述の実施例において、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられているトルクコンバータ14が用いられていたが、ロックアップクラッチ26は必ずしも設けられなくてもよく、またトルクコンバータ14に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式動力伝達装置が用いられてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。