以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る車両の制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。無段変速機はベルト式無段変速機であるが、内燃機関の動力を連続的に変速して駆動輪に伝達する変速機であればよく、特にベルト式無段変速機に限定されるものではない。無段変速機は、たとえば、トロイダル式無段変速機であってもよいし、車輪に連結される第1のモータジェネレータと、エンジンの始動およびエンジンの動力を用いた発電を行なう第2のモータジェネレータと、エンジンの動力を、第1、第2のモータジェネレータに分割して伝達する動力分割機構とを含むハイブリッド車両の変速機構であってもよい。
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、無段変速機10と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000とを含む。無段変速機10は、トルクコンバータ200と、前後進切換装置290と、ベルト式無段変速機構300と、油圧制御部1100とを含む。
エンジン100は、出力軸であるクランクシャフト102と、エンジン回転数センサ430と、気筒104と、燃料供給装置106と、吸気管108と、吸気管108の途中に設けられる電子スロットル110と、電子スロットル110に設けられるスロットル開度センサ112と、吸気管108の途中であって電子スロットル110よりも上流吸入口側に設けられるエアフローメータ114と、排気管(図示せず)と、水温センサ130とを含む。
燃料供給装置106は、ECU1000からの制御信号に基づいてエンジン100に燃料を供給する。燃料供給装置106は、エンジン100の吸気ポート(図示せず)に燃料を噴射するポートインジェクタであってもよいし、エンジン100の気筒104内に直接燃料を噴射する筒内インジェクタであってもよいし、ポートインジェクタおよび筒内インジェクタを含むものであってもよく、特に限定されるものではない。
エンジン回転数センサ430は、クランクシャフト102の回転数(すなわち、エンジン回転数)を検出する。エンジン回転数センサ430は、検出されたエンジン回転数を示す信号をECU1000に送信する。
スロットル開度センサ112は、電子スロットル110のスロットル開度を検出する。スロットル開度センサ112は、検出されたスロットル開度を示す信号をECU1000に送信する。
エアフローメータ114は、吸気管108における吸入空気量を検出する。エアフローメータ114は、検出された吸入空気量を示す信号をECU1000に送信する。
水温センサ130は、エンジン100の内部に設けられる冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出する。水温センサ130は、検出された冷却水温を示す信号をECU1000に送信する。
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ430により検出されるエンジン100の出力軸回転数(エンジン回転数)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
また、エンジン100には、エンジン100を動力源とする複数の補機が設けられる。補機としては、エンジン100を動力源として、車両の状態に応じて作動するものであれば、特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、エンジン100には、たとえば、エアコンディショナコンプレッサ118(以下、A/Cコンプレッサとも記載する)と、オルタネータ116とを含む補機が設けられるとして説明する。
エンジン100の出力軸には、クランクシャフトプーリ124が接続される。クランクシャフトプーリ124は、オルタネータ116の入力軸に連結されるプーリ126とA/Cコンプレッサ118の入力軸に連結されるプーリ122とに対してベルト120を介して接続されている。そのため、クランクシャフトプーリ124が回転するとともにプーリ122,124も回転することとなる。
オルタネータ116は、補機バッテリ(図示せず)の充電状態に応じてエンジン100の動力を用いて発電して、補機バッテリを充電する。オルタネータ116における発電量は、ECU1000により制御される。
また、オルタネータ116は、ECU1000からの制御信号を受信した場合に発電を開始したり、発電を停止したりする。ECU1000は、たとえば、補機バッテリ(図示せず)の電圧が予め定められた電圧以下になる場合にオルタネータ116において発電が行なわれるように制御信号を送信し、補機バッテリの電圧が予め定められた電圧以上になる場合にオルタネータ116において発電が停止するように制御信号を送信する。
オルタネータ116において発電が行なわれる場合には、発電が行なわれている間、エンジン100に対してオルタネータ116の作動にともなう負荷が発生することとなる。
A/Cコンプレッサ118は、エンジン100の動力を用いて冷媒を圧縮する。A/Cコンプレッサ118の入力軸に連結されるプーリ122には、電磁クラッチ(図示せず)が設けられる。そのため、電磁クラッチが動力を伝達しない解放状態である場合には、プーリ122の回転は、A/Cコンプレッサ118の入力軸には伝達されない。一方、電磁クラッチが動力を伝達する係合状態である場合には、プーリ122の回転は、A/Cコンプレッサ118の入力軸に伝達される。電磁クラッチは、エアコンECU128からの制御信号を受信して、係合状態になったり、解放状態になったりする。エアコンECU128とECU1000とは双方向の通信が可能であって、エアコンECU128は、ECU1000に対してA/Cコンプレッサ118の作動情報を送信する。
電磁クラッチが係合状態になることによりA/Cコンプレッサ118が作動する場合には、電磁クラッチが係合状態である間、エンジン100に対してA/Cコンプレッサ118の作動にともなう負荷が発生することとなる。
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とベルト式無段変速機構300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検出される。
トルクコンバータ200とベルト式無段変速機構300との間には、オイルポンプ260が設けられる。オイルポンプ260は、たとえば、ギヤポンプであって、入力軸側のポンプ羽根車220が回転するとともに作動する。オイルポンプ260は、油圧制御部1100の各種ソレノイドに油圧を供給する。
ベルト式無段変速機構300は、前後進切換装置290を介在させてトルクコンバータ200に接続される。ベルト式無段変速機構300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ600は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。
プライマリプーリ500およびセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータ(いずれも図示せず)には、それぞれ作動油が給排されている。変速は、各プーリ500,600の固定シーブと可動シーブとの間の溝幅を連続的に変化させることにより、ベルトの巻き掛け半径が大小に変化して行なわれる。
油圧制御部1100は、プライマリプーリ500の回転数を目標回転数に一致させる変速比となるように、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。さらに、油圧制御部1100は、セカンダリプーリ600の可動シーブを固定シーブ側に押圧してベルトを挟みつけてトルクを伝達するのに必要な張力が発現するようにセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。
ベルト式無段変速機構300のプライマリプーリ500の回転数Ninは、プライマリプーリ回転数センサ410により検出され、セカンダリプーリ600の回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により検出される。
これら回転数センサは、プライマリプーリ500やセカンダリプーリ600の回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、ベルト式無段変速機構300の、入力軸であるプライマリプーリ500や出力軸であるセカンダリプーリ600の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
前後進切換装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリヤCRとリングギヤRとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、Rポジション、Nポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。ECU1000には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数Ninを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ライン圧制御部1130と、ロックアップ係合圧制御部1132と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000は、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220と、ライン圧制御用リニアソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に対して制御信号を出力する。
変速速度制御部1110は、車輪速に基づく車速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(1)1200により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量を制御することにより増速側の変速速度を制御する。さらに、変速速度制御部1110は、車輪速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(2)1210により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータからの作動油の流出量を制御して減速側の変速速度を制御する。変速速度制御部1110によりプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに対する作動油の流入量と流出量とを制御することにより変速制御が行なわれる。
ベルト挟圧力制御部1120は、プライマリプーリ500の入力軸トルクと変速比とに応じてベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220により、セカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御して、ベルト挟圧力を制御する。入力軸トルクは、たとえば、エンジン100の回転数、吸入空気量等に基づくエンジン100の出力トルクとトルクコンバータ200におけるトルク比とから推定されてもよいし、直接的に検出されてもよい。
ライン圧制御部1130は、ベルト挟圧力に対応するベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に対する指示値とプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧の推定値とからライン圧制御用リニアソレノイド1230によりライン圧を制御する。プライマリプーリ500のアクチュエータの油圧は、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量と流出量とに基づいて推定される。ここで、ライン圧とは、オイルポンプ260により供給された油圧がレギュレータバルブ(図示せず)により調圧された油圧である。
ロックアップ係合圧制御部1132は、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240によりロックアップクラッチ210の係合と解放の切換え、および、ロックアップクラッチ210の係合圧の漸増および漸減を制御する。
マニュアルバルブ1150は、運転者のシフトレバーの操作に連動して作動して、油路を切換える。クラッチ圧制御部1140は、入力クラッチC1またはリバースブレーキB1の係合時に、ライン圧制御用リニアソレノイド1230によりマニュアルバルブ1150を経由して供給される油圧を制御する。
車輪速センサ440は、車輪(図示せず)の回転数(以下、車輪速と記載する)を検出する。車輪速センサ440は、検出された車輪速を示す車輪速信号をECU1000に送信する。ECU1000は、受信した車輪速に基づいて車速を算出する。なお、本実施の形態においては、車速が検出できれば、特に車輪速を検出することに限定されるものではなく、たとえば、セカンダリプーリ回転数と無段変速機から駆動輪までの減速比とに基づいて車速を演算するようにしてもよい。
また、車両には、さらに、アクセルペダル462と、アクセルペダル462の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ460とが設けられる。アクセルペダルポジションセンサ460は、アクセルペダル462の踏み込み量を示す信号(アクセルペダル踏み込み量検出信号)をECU1000に送信する。
上述したような無段変速機10が搭載された車両において、ECU1000は、補機が作動していない場合は、アクセルペダル踏み込み量の実測値をエンジン100および無段変速機10のそれぞれの制御に用いられる要求量として算出する。
なお、要求量は、アクセルペダル462の踏み込み量を単位とするものであってもよいし、スロットル開度、トルクあるいは駆動力を単位とするものであってもよい。
ECU1000は、車速と第1の要求量とに基づいてエンジン100の動作点が最適燃費線上の位置になるようにエンジン100のトルクの目標値を算出する。ECU1000は、算出されたトルクの目標値が発生するスロットル開度を決定し、決定されたスロットル開度になるように電子スロットル110を制御する。最適燃費線は、トルクと回転数とで規定される座標平面上に予め定められた動作線であって、エンジン100の特性等に応じて実験により適合される。
さらに、ECU1000は、車速とアクセルペダル462の踏み込み量とスロットル開度とに基づいて目標プライマリプーリ回転数Nintを算出し、実プライマリプーリ回転数Ninが算出された目標プライマリプーリ回転数Nintになるように無段変速機10を制御する。
すなわち、ECU1000は、目標プライマリプーリ回転数Nintが設定された場合に、実プライマリプーリ回転数Ninが目標プライマリプーリ回転数Nintに近づくように、変速制御用デューティソレノイド(1)、変速制御用デューティソレノイド(2)1210、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220およびライン圧制御用リニアソレノイド1230に対して制御信号を出力して実プライマリプーリ回転数Ninをフィードバック制御する。
ECU1000は、メモリ1002を有する。メモリ1002には、各種情報、ECU1000が実行するプログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じてデータが読み出されたり、格納されたりする。
車両の走行中であって、かつ、補機が作動している場合は、ECU1000は、アクセルペダル462の踏み込み量に補機の負荷トルク(ΔTo)に相当する補正値を算出する。
ECU1000は、補機の作動状態、作動している補機の種類等によって補機の負荷トルクを算出する。たとえば、ECU1000は、補機の作動状態、作動している補機の種類等の情報を含む補機作動情報を受信して、受信した補機作動情報に基づいて補機の負荷トルクを算出するようにしてもよい。本実施の形態においては、ECU1000は、エアコンECU128からA/Cコンプレッサ118が作動しているか否かおよび作動量等を含む補機作動情報を受信する。ECU1000は、受信した補機作動情報に基づいてA/Cコンプレッサ118の負荷トルクを算出する。
あるいは、ECU1000が補機の動作を直接制御している場合は、制御量等を含む補機作動情報に基づいて補機の負荷トルクを算出する。本実施の形態においては、ECU1000は、オルタネータ116に対する制御量に基づいてオルタネータ116の負荷トルクを算出する。
ECU1000は、図2に示すように、算出された補機の負荷トルクをアクセルペダル462の踏み込み量の補正値に換算する。ECU1000は、アクセルペダル462の踏み込み量に補正値を加算した値を最終的なアクセルペダルの踏み込み量として、すなわち、エンジン100および無段変速機10のそれぞれの制御に用いられる要求量として算出する。
しかしながら、補機の負荷トルクをアクセルペダル462の踏み込み量の補正値として無段変速機10を制御する場合には、補機の作動が開始した後に一時的にエンジン100の動作点が最適燃費線からずれた位置で動作することとなる。そのため、エンジン100の動作点が再び最適燃費線に収束するまでに実プライマリプーリ回転数が不必要に上昇して車両の加速および燃費の悪化等が生ずる場合がある。
以下、このような車両の加速および燃費の悪化等が生ずる過程について図3乃至図6を用いて説明する。車両が定常走行中である場合を想定する。図3に示すように、エンジン100の動作点がA点であるとする。以下に説明する図3乃至図5の横軸は、いずれもエンジン回転数を示し、図3乃至図5の縦軸は、いずれもエンジントルクを示すものとする。
エアコンが運転者の操作等によりオンされるなどして、補機(A/Cコンプレッサ118)が作動を開始した場合、ECU1000は、補機負荷を考慮してエンジン100のトルクおよび無段変速機10の変速比を制御する。
すなわち、ECU1000は、補機の負荷トルクをパワーに換算する。ECU1000は、加算したパワーをトルクと回転数とに分担してエンジン100側でエンジントルクを補正し、無段変速機10側で実プライマリプーリ回転数Ninを補正する。
図3に示すように、たとえば、補機負荷トルクがΔToとし、A点でのエンジン回転数をNA、エンジントルクをTA、パワーに換算された補機負荷をΔPとすると、ΔP=ΔTo×NAとなる。
補機が作動した時点のエンジン回転数はNAのままであるため、ECU1000は、エンジン100のトルクが現在のトルクTAから補機負荷トルクΔToだけ増加させるようにスロットル開度を制御する。
ECU1000は、トルクTA+ΔToに相当するスロットル開度を決定し、決定されたスロットル開度に基づいて目標プライマリプーリ回転数Nintを算出する。
具体的には、ECU1000は、エンジン100のトルクTA+ΔToに相当するスロットル開度に対応したスロットル線と最適燃費線との交点である点Bを算出する。スロットル線は、たとえば、スロットル開度毎のエンジントルクとエンジン回転数との関係を示す。ECU1000は、算出された点Bに対応する回転数NBを目標プライマリプーリ回転数Nintとして算出する。
そのため、本来、(T+ΔTo)×NAの等パワー線と最適燃費線の交点である点Dでエンジン100が動作することが望ましいところ、結果的に、ECU1000は、点Cを動作点の目標としてエンジン100を制御することとなる。
次に、図3で示した状態から一定の時間が経過した後に、エンジン100の動作点が図4に示すE点となった場合を想定する。
A点を基準としたエンジントルクの補正量ΔTEは、ΔTE=ΔP/NEの関係が成立することから、ΔTE=ΔTo×NA/NEの式より算出される。ECU1000は、TA+ΔTEに相当するスロットル開度を決定し、決定されたスロットル開度に基づいて目標プライマリプーリ回転数Nintを算出する。
具体的には、ECU1000は、エンジン100のトルクTA+ΔTEに相当するスロット開度に対応したスロットル線と最適燃費線との交点である点Fを算出する。ECU1000は、算出された点Bに対応する回転数NFを目標プライマリプーリ回転数Nintとして算出する。
そのため、ECU1000は、図4の点Gを動作点の目標としてエンジン100を制御する。点Gは、点Cよりも点Dに近い位置となる。
図3および図4で説明したエンジン100および無段変速機10の制御が繰返されることにより、エンジン100の動作点は、図5に示すように、最終的に最適燃費線上の点Hに収束することとなる。なお、点Hは、補機負荷に変動がない場合は、図3および4の点Dと同一の位置となる。
図6に、補機が作動を開始した場合の最終的なアクセルペダルの踏み込み量、エンジントルク、プライマリプーリ回転数および前後Gの変化のタイミングチャートを示す。
補機の作動開始時に上述したような制御が行なわれる場合には、図6に示すように、時間T(0)にて、補機が作動すると、補機負荷に応じた補正値がアクセルペダル462の踏み込み量に加算された値が最終的なアクセルペダル462の踏み込み量として算出される。そのため、算出された最終的なアクセルペダル462の踏み込み量に基づいてエンジン100および無段変速機10に対する制御が行なわれるため、目標エンジントルクおよび目標プライマリプーリ回転数Nintは急激に上昇することとなる。
その結果、実エンジントルクおよび実プライマリプーリ回転数も急激に増加することとなる。このとき、上述したとおり、内燃機関の動作点は、補機が作動した場合に収束後の動作点(点H)よりも出力が上昇する側にずれた位置となるように制御される。そのため、補機の作動が開始した後に車両は加速することとなる。また、出力が上昇した結果、不必要に燃料が消費されることとなるため、燃費が悪化することとなる。
そこで、本実施の形態においては、ECU1000が、補機が作動を開始したと判定された場合に、補機負荷を考慮した補正値をアクセルペダル462の踏み込み量の実測値に加算した値をエンジン制御用要求量としてエンジン100を制御し、予め定められた値を上限値として補機負荷を考慮した補正値を制限し、制限された補正値をアクセルペダル462の踏み込み量の実測値に加算して変速制御用要求量を算出し、算出された変速制御用要求量に基づいて無段変速機10を制御する点に特徴を有する。
予め定められた値は、車両の定常走行時に補機の作動が開始されてからエンジン100のトルクおよび回転数の変化が収束した後のエンジン100の状態に対応する補正値である。ECU1000は、補機が作動を開始したと判定された後に、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値を初期値として補正値が予め定められた値になるまで時間の経過とともに補正値を増加させて変速制御用要求量を算出する。なお、「エンジン制御用要求量」は「第2の要求量」に対応し、「変速制御用要求量」が「第3の要求量」に対応する。
図7に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU1000の機能ブロック図を示す。ECU1000は、走行状態判定部1050と、補機作動判定部1052と、第1の要求量算出部1054と、エンジン・CVT制御部1056と、補正値算出部1058と、第2の要求量算出部1060と、エンジン制御部1062と、第3の要求量算出部1064と、CVT制御部1066とを含む。
走行状態判定部1050は、車両が定常走行中であるか否かを判定する。走行状態判定部1050は、たとえば、車速およびアクセルペダルの踏み込み量の時間変化量が予め定められた値以下であれば、車両が定常走行中であると判定する。なお、走行状態判定部1050は、たとえば、車両が定常走行中であると判定した場合に定常走行判定フラグをオンするようにしてもよい。
補機作動判定部1052は、補機が作動中であるか否かを判定する。具体的には、補機作動判定部1052は、たとえば、エアコンECU128からの補機作動情報を受信して、受信した補機作動情報に基づいてA/Cコンプレッサ118が作動中であるか否かを判定する。なお、補機作動判定部1052は、たとえば、補機が作動中である場合に補機作動判定フラグをオンするようにしてもよい。
第1の要求量算出部1054は、補機が作動中でない場合に、アクセルペダル踏み込み量検出信号に基づいて最終的なアクセルペダル462の踏み込み量(以下、第1の要求量と記載する)を算出する。
すなわち、第1の要求量算出部1054は、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値を第1の要求量として算出する。第1の要求量算出部1054は、たとえば、補機作動判定フラグがオフである場合に、第1の要求量を算出するようにしてもよい。
エンジン・CVT制御部1056は、車速と、算出された第1の要求量とに基づいてエンジン100および無段変速機10を制御する。エンジン・CVT制御部1056は、車速と、算出された第1の要求量とに基づいてエンジン制御信号および変速制御信号を生成して、エンジン100および無段変速機10に送信する。
補正値算出部1058は、補機が作動中である場合に、補機作動情報に基づいて補機の負荷トルクを算出し、算出された補機の負荷トルクに基づいて補正値を算出する。
たとえば、エンジン回転数がN(1)であるときに補機が作動を開始した場合であって、かつ、補機の負荷トルクとしてΔT(1)を算出した場合には、補正値算出部1058は、ΔP=ΔT(1)×N(1)の式より負荷トルクΔT(1)をパワーΔPに換算した値を算出する。そして、補正値算出部1058は、エンジン回転数がN(2)となった場合には、ΔT(2)=ΔP/N(2)の式より、ΔT(2)を算出し、算出されたΔT(2)に基づいてアクセルペダル462の踏み込み量の補正値を算出する。したがって、補正値は、補機の作動が開始した直後に急激に上昇し、その後、時間の経過とともにエンジン回転数が上昇した場合においては、補正値は減少していくこととなる。
なお、補正値算出部1058は、たとえば、補機作動判定フラグがオンである場合に、補正値を算出するようにしてもよい。
第2の要求量算出部1060は、補機が作動中である場合に、アクセルペダル踏み込み量検出信号と、補正値算出部1058により算出された補正値とに基づいて、エンジン100の制御に用いられる最終的なアクセルペダル462の踏み込み量(以下、第2の要求量と記載する)を算出する。
すなわち、第2の要求量算出部1060は、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値に補正値を加算した値を第2の要求量として算出する。
エンジン制御部1062は、車速と、算出された第2の要求量とに基づいてエンジン100を制御する。エンジン制御部1062は、車速と、算出された第2の要求量とからスロットル開度を決定する。エンジン制御部1062は、補機が作動を開始した直後においては、補機の負荷トルクΔToだけ増加したエンジントルクを目標値としてスロットル開度を決定する。なお、エンジントルクとスロットル開度との関係は、たとえば、マップ等により予め設定されるようにすればよい。エンジン制御部1062は、車速と、算出された第2の要求量とに基づいてエンジン制御信号を生成して、エンジン100に送信する。
第3の要求量算出部1064は、補機が作動中である場合に、アクセルペダル踏み込み量検出信号と、補正値算出部1058により算出された補正値とに基づいて、変速制御に用いられる最終的なアクセルペダル462の踏み込み量(以下、第3の要求量と記載する)を算出する。
すなわち、第3の要求量算出部1064は、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値に予め定められた値を上限値(以下、ガード値ともいう)としたスイープアップ量SWPを加算した値を第3の要求量として算出する。
ここで、予め定められた値とは、少なくとも算出された補正値を超えない値であって、好ましくは、補機の作動が開始されてからエンジン100のトルクおよび回転数の変化が収束した後のエンジン100の状態に対応した補正値であることが望ましい。このようにすると、実プライマリプーリ回転数が不必要に上昇することを抑制できるからである。
第3の要求量算出部1064は、たとえば、補機が作動を開始した場合に、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値を初期値として、予め定められた時間毎に増分値Cだけ増加させたスイープアップ量SWPを初期値に加算することにより第3の要求量を算出する。そのため、第3の要求量は、予め定められた値になるまで時間の経過とともに増加することとなる。
なお、増分値Cは、エンジン100の特性等に応じた予め定められた値であってもよいし、エンジン100の動作状態(エンジン回転数、トルク)に応じて設定するようにしてもよい。
図8に示すように、ガード値Eを上限値とした場合、スイープアップ量SWPは、補機が作動を開始した後に時間の経過に比例して増加していくこととなる。なお、スイープアップ量SWPの増加の態様としては時間の経過に比例して増加していくものに限定されるものではなく、たとえば、非線形で増加していくようにしてもよい。
CVT制御部1066は、車速と、算出された第3の要求量とに基づいて無段変速機10を制御する。CVT制御部1066は、車速と算出された第3の要求量と図9に示す変速線マップとから目標プライマリプーリ回転数Nintを算出する。
図9の横軸は、車速を示し、図9の縦軸は、目標プライマリプーリ回転数Nintを示す。CVT制御部1066は、たとえば、車速がV(1)であって、第3の要求量が10%である場合には、図9に示す変速線マップから目標プライマリプーリ回転数Nint(1)を算出する。
CVT制御部1066は、算出された目標プライマリプーリ回転数Nintに基づいて変速制御信号を生成し、無段変速機10に送信する。
本実施の形態において、走行状態判定部1050と、補機作動判定部1052と、第1の要求量算出部1054と、エンジン・CVT制御部1056と、補正値算出部1058と、第2の要求量算出部1060と、エンジン制御部1062と、第3の要求量算出部1064と、CVT制御部1066とは、いずれもECU1000のCPUがメモリ1002に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図10を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU1000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、ECU1000は、以下の処理を予め定められた時間毎に実行する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU1000は、車両が定常走行中であるか否かを判定する。車両が定常走行中である場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、この処理は終了する。
S102にて、ECU1000は、補機が作動しているか否かを判定する。補機が作動していると判定された場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、処理はS114に移される。
S104にて、ECU1000は、ガード値Eを設定する。ECU1000は、補機負荷に相当する補正値をガード値Eとして設定するようにしてもよいし、補機の作動が開始されてからエンジン100の動作点が収束した後のエンジン100の状態に対応した補正値をガード値Eとして設定するようにしてもよい。
S106にて、ECU1000は、前回のスイープアップ量SWP(I−1)に増分値Cを加算して今回のスイープアップ量SWP(I)を算出する。なお、Iは、自然数であって、初期値SWP(0)は、たとえば、ゼロであってもよいし、予め定められた値であってもよい。
S108にて、ECU1000は、算出された今回のスイープアップ量SWP(I)がガード値E以上であるか否かを判定する。算出された今回のスイープアップ量SWP(I)がガード値E以上である場合(S108にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでない場合(S108にてNO)、処理はS110に移される。
S110にて、ECU1000は、今回のスイープアップ量SWP(I)を最終的なスイープアップ量SWPとして更新する。S112にて、ECU1000は、ガード値Eを最終的なスイープアップ量SWPとして更新する。S114にて、ECU1000は、アクセルペダルの踏み込み量の実測値にスイープアップ量SWPを加算して第3の要求量を算出する。S116にて、ECU1000は、算出された第3の要求量に基づいて無段変速機10を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU1000の動作について図11および図12を用いて説明する。
図11に示すように、時間T(0)になるまでにおいて、車両が定常走行中でなかったり(S100にてNO)、補機が作動していなかったりする場合には(S102にてNO)、第1の要求量が算出され、第1の要求量に基づいてエンジン100のスロットル開度制御および無段変速機10の変速比制御が実行される。
一方、時間T(0)にて、車両が定常走行中であって(S100にてYES)、エアコンがオンされるなどして、A/Cコンプレッサ118が作動した場合に(S102にてYES)、ガード値Eが設定され(S104)、今回のスイープアップ量SWP(I)が算出される(S106)。
算出されたスイープアップ量SWP(I)がガード値Eよりも小さい場合(S108にてNO)、スイープアップ量SWP(I)が最終的なスイープアップ量SWPとして更新され(S110)、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値に最終的なスイープアップ量SWPが加算されて第3の要求量が算出される。そのため、時間T(0)以降、第3の要求量は、時間の経過に比例して増加していくこととなる。
そのため、目標プライマリプーリ回転数Nintの増加は、図6に示す第2の要求量に基づいて目標プライマリプーリ回転数Nintを設定する場合よりも緩やかとなる。そのため、実プライマリプーリ回転数Ninの増加も第2の要求量に基づいて変速制御を実行する場合よりも緩やかとなる。
一方、補機が作動を開始した直後においては、補機負荷に相当する補正値が加算されるため、補機の負荷トルクΔToだけ増加したエンジントルクを目標値としてスロットル開度が制御されることとなる。そのため、実エンジントルクは、時間T(0)以降に目標値に追従するように上昇する。エンジントルクの目標値は、補機負荷のパワー換算値ΔPが一定であるため、実プライマリプーリ回転数の上昇に反比例して減少していく。
算出されたスイープアップ量SWP(I)がガード値E以上である場合(S108にてYES)、ガード値Eが最終的なスイープアップ量SWPとして更新され(S112)、アクセルペダル462の踏み込み量の実測値に最終的なスイープアップ量SWPが加算されて第3の要求量が算出される(S114)。
このとき、第3の要求量は第2の要求量と一致し、エンジン100のトルクおよび回転数の変化は収束することとなる。
このように、第3の要求量に上限値を設定し、かつ、時間の経過とともに第3の要求量を増加させることにより、補機の作動が開始したことによりエンジン100の動作点は、図12に示すように変化する。すなわち、エンジン100の動作点は、図12に示すように、補機の作動が開始したことによりA’点からB’点に移動した後、第3の要求量に基づいて変速制御を実行することにより、図12の実線矢印に示すように、B’点からD’点に移動することとなる。そのため、図12の破線矢印に示す第2の要求量に基づいて変速制御を実行する場合よりもエンジン回転数をオーバーシュートさせることなく、B’点からD’点に動作点を移動させることができる。そのため、図11に示すように、車両を加速させることなくエンジン100のトルクおよび回転数の変化が収束することなる。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、無段変速機を制御するための第3の要求量を算出するための補正値に上限値を設けることにより、補機の作動が開始した後の第3の要求量に基づいて算出される無段変速機の目標プライマリプーリ回転数Nintが過大となることを抑制することができる。そのため、無段変速機の実プライマリプーリ回転数Ninが不必要に上昇することを抑制することができる。これにより、補機が作動を開始した後の内燃機関の動作点が補機負荷により最適燃費動作線からずれた場合でも不必要に内燃機関の回転数が上昇することなく速やかに最適燃費動作線上に収束させることができる。したがって、補機の作動開始時の車両の加速および燃費の悪化を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。