JP4834932B2 - シートリクライニング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートリクライニング装置に関するもので、シートバックに大きな荷重が加わった場合でも十分耐えうるシートリクライニング装置の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置としては特開平10−71042に示されるものが公知となっている。即ち、シートクッションに固定されるロアアームと、シートバック側に取付けられロアアームと回転可能なアッパアームと、ロアアームに対するアッパアームの回転を規制するロック機構を備えるリクライニング装置において、互いに対称形状に構成した一対のリクライニング機構を組み合わせ大きな荷重に耐えるように強度を向上させたものである。シートベルトがシートバックに取付けられ、シートベルトから大きな荷重がシートバックの一方側に加わるように構成されたシートに対して、大きな荷重の掛かる側にこのような強度を向上させたリクライニング装置が、他方側に通常のリクライニング装置とセットにして取付けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記する強度を向上させたリクライニング装置では、そのロアアーム、アッパアームおよびロック機構の部品がそれぞれ2つづつで構成され、部品点数が多くなり高価なものとなってしまう。
【0004】
部品点数を増やさず、強度を向上させるリクライニング装置を実現することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、シートクッションとシートバックのいずれか一方に支持される第1のアームと、該第1のアームに回動自在に支持され、シートクッションとシートバックのいずれか他方に支持される第2のアームと、前記第1のアームに被係合部を形成し、前記第2のアームに前記被係合部と係合可能な係合部を有するポールを複数個備えるリクライニング装置において、前記第1のアームに円形の第1凹部と、該第1凹部の径方向内側に該第1凹部と同心に第2凹部をそれぞれ形成し、前記被係合部を第1凹部の内面に第1被係合部と、第2凹部の内面に第2被係合部とに分けて設け、前記ポールの全てにおいて、前記係合部を前記第1被係合部と係合する第1係合部と、前記第2被係合部と係合する第2係合部とに分けて設けるとともに、前記第1または第2のアームに作用する荷重が所定以下のとき、前記第1係合部と前記第1被係合部が当接して係合し、第2係合部と前記第2被係合部は互いに隙間を有して係合するよう設定したことである。
【0006】
このように構成されたリクライニング装置は、そのポールの第1と第2の係合部と、第1のアームの第1と第2の被係合部が2重の係合するように作動して、シートクッションに対してシートバックの位置をロックする。
【0007】
【発明の実施の形態】
図7に示されるように、本発明に関わる強度を向上させたリクライニング装置10は、2人以上が着座可能なシート100の一方側に取付けられる。シート100はシートバック110とシートクッション120、さらにシートベルト101と201が備えている。一方のシートベルト101の一端はシートバック110上部の取付部102で固定され、また他のシートベルト201は車体の取付部202に固定されるように構成されている。このような構成のシートでは、車両の緊急時に、シートベルト101側に取付部102を介して、シートベルト201側より過大な荷重が作用する。この過大な荷重に対応するように、シートベルト101側には強度を向上させたシートリクライニング装置10が適用される。一方シートベルト201側には、従来と同じシートリクライニング装置10Aが適用される。
【0008】
図1と図2に示されるように、シートリクライニング装置10は、円盤状の外形をしたロアアーム1とアッパアーム2を備えている。ロアアーム1は、シートクッションフレームAに溶接によって固定され、アッパアーム2は、シートバックフレームBに溶接によって固定されている。ロアアーム1とアッパアーム2は、それぞれ円盤形状が重なり合うように対向して組みつけられる。
【0009】
ロアアーム1には材料の厚み方向にプレスして段差を付けて窪みを作る、いわゆる半抜き工法で凹部11が形成されている。凹部11は、アッパアーム2の方向に開口し、且つアッパアーム2とロアアーム1の共通の回動軸線Cを中心とする内周面11aを有している。
【0010】
アッパアーム2は、その円形の外周面21で、ロアアーム1の内周面11aと摺接するように配置され、ロアアーム1とアッパアーム2の摺接面は、互いの回動における軸と軸受として機能している。
【0011】
さらに、アッパアーム2の外周を覆うようにフォルダ90が配置され、フォルダ90の内側面はロアアーム1の側面と接し支持している。これによって、アッパアーム2とロアアーム1を互いに回動自在に組み付けられた状態を保持する構成となっている。
【0012】
アッパアーム2には、凹部25が半抜き形成され、この凹部25はロアアーム1側に開口し、凹部25の回転軸線Cを中心とした内周部には、全周亘って第1の内歯25a(第1被係合部)が形成されている。凹部25の内側には、凹部25と同心の内周面部を有するようにさらに一段深く半抜きされた円形の凹部26が形成されている。凹部26の内周面部上には、全周亘って第2の内歯26a(第2被係合部)が形成されている。さらに凹部26の内側には、凹部25、26と同心の内周面部を有するようにもう一段深く半抜き形成された円形の凹部27が形成されている。凹部27の内周面部分には、回転軸線Cに向かって突起するように第1ストッパ部27aと第2ストッパ部27bが所定の角度の間隔を持って形成されている。また、第1ストッパ部27aと第2ストッパ部27bの間に凸部27cが成形されている。凸部27cは、各ストッパ部27a、27bより低い形状となっている。
【0013】
ロアアーム1とアッパアーム2との間には、ロック機構3が配設されている。このロック機構3は、回転軸線Cと直交する面内に3つ、それぞれ等しい角度間隔をもって配置され、図3,4に示すような2種類のポール50、60を備えている。ポール50(第1のポール)は側面上に突起51を有し、ポール60(第2のポール)は突起51を有してないだけで、ポール50と同一形状である。そしてポール50が1つとポール60が2つ備えられている。
【0014】
図3、図4に示されるように、各ポール50、60は、板状の鋼材から鍛造などの工法で作製され、それぞれ第1面部52、62と第2面部53、63の2つの面部分が、互いに段差を持って接続し、全体として外形が略矩形に成形されている。第1面部52、62の先端面はさらに2段に段差を付けて形成され、この第1面部52、62の各先端面には、アッパアーム2の第1の内歯25aと噛合係合が可能な第1の外歯54a、64a(第1係合部)と、第2の内歯26aと噛合係合可能な第2の外歯54b、64b(第2係合部)とが形成されている。図6に示されるように第1の内歯25aと第1の外歯54a、64aが当接して噛み合っているとき、第2の内歯26aと第2の外歯54b、64bとは、各歯の間に微小の隙間を確保するように形成されている。
【0015】
また、図1と図5に示されるように、ポール50、60の図3、4に示される側とは反対側で、外歯54、64と対抗する端面上、即ち第1面部52、62と第2面部53、63の段差部にはカム面55、65が形成されている。第2面部53、63には板厚方向に貫通するように、カム穴56、66が形成されている。図3、4において各ポール50、60の左右幅の端面は、上下方向に一定の幅寸法を有して直線に形成されている。
【0016】
一方、図1に示されるように、ロアアーム1の凹部11内に、ポール50、60の左右幅と略同寸法の間隔をもって突起して成形された3対の平行なガイド壁12が設けられている。このガイド壁12の間にポール50、60が嵌まって組付けられ、各ポール50、60はガイド壁12に沿って摺接して回転軸線Cに近づいたり、または離れたり移動できる構成となっている。
【0017】
図1と図2に示されるように、ロック機構3は、さらにカム40を備えている。
【0018】
カム40はカム面41を有し、カム面41はアッパアーム2の凹部25と26内にあって、回転軸線Cを中心として回転可能に配置されている。カム面41は、等間隔の角度をもって3つ形成され、各ポール50、60のカム面55、65(図5、図6)と当接可能になっている。カム面41と各ポール50、60のカム面55、65は、カム40が図1において反時計方向に回転することによってポール50、60の第1と第2の外歯54a、64a、54b、64bを内歯25、aと噛み合うように押し付けることができる形状となっている。各カム面41より回転軸線Cに近い部分のカム40の側面上には、ポール50、60のカム穴56、66に挿入されるように突出する突起ピン47が形成されている。カム穴56、66の形状は、突起ピン47によってカム40が図1において時計方向に回転すると、ポール50、60の各第1と第2の外歯54a、54b、64a、64bをそれぞれアッパアーム2の第1と第2の内歯25a、26aとの噛合いから引き離すことができる形状となっている。
【0019】
図1、図2に示されるように、ヒンジ軸70が回転軸線C上に配置され、ロアアーム1、カム40、アッパアーム2のそれぞれに設けられた貫通穴13、42、23に挿通されている。ヒンジ軸70の軸方向の略中央部分には、その外周面上に径方向に開口し軸方向に延びる複数の溝を有するスプライン71が成形されている。一方、カム40の貫通穴42の内周には、ヒンジ軸70のスプライン71に係合する雌型のスプライン42aが形成され、ヒンジ軸70とカム40は一体的に回転する構成となっている。ヒンジ軸70は留め輪88で組み付け状態に保持される。
【0020】
さらに図2に示されるように、ヒンジ軸70の一方側先端の外周部には、軸方向に延びる複数の歯溝を持つセレーション74が形成されている。このセレーション74と係合するセレーション穴を有する操作ハンドル85が一体的に取り付けられる。操作ハンドル85を操作することによってカム40を回転させることができる構成となっている。ヒンジ軸70は、さらに操作ハンドル85が取付けられている端部と反対側端部に、セレーション75を有し、このセレーション75に係合する連結ロッド78が取付けられている。連結ロッド78は、シート100(図7)の他方側に取付けられたリクライニング装置10Aのヒンジ軸(図示せず)とを連結する。これによって、リクライニング装置10と10Aは互いに同時にロック、またはロックの解除が可能となるように構成されている。
【0021】
図1と図2に示すように、ロアアーム1には、凹部11と同心で凹部11よりさらに一段深く半抜きされた円形の凹部16が形成されている。凹部16の内周面の一個所に、径方向外側に延びる溝14が形成され、一方カム40のボス部45には、図1に示されるように溝46が設けられている。スプリング86が溝14に一方端が、溝46に他方端が係止されて取付けられている。スプリング86は、回転軸線Cにその中心が略一致する渦巻き形状のスプリングである。そして、図1において、カム40を常に反時計方向に回転させるように作用力を及ぼし、カム40のカム面41によって、ポール50、60のカム面55、65を押し付け、各外歯54a、54b、64a、64bをそれぞれ各内歯25a、26aに強固に噛み合わせる構成となっている。
【0022】
次に、以上のように構成されたリクライニング装置10の作動について説明する。
【0023】
図1は、リクライニング装置10のロック状態を示している。この状態でカム40とポール50、60のカム面55、65とは当接し、ポール50、60が押され、ポール50、60の外歯54a、54b、64a、64bとアッパアーム2の内歯25a、26aとが噛合って、アッパアーム2とロアアーム1の回動が規制されている。
【0024】
この状態で操作ハンドル85を操作すると、ヒンジ軸70は、カム40と一体に、スプリング86の付勢力に抗して、図1において時計方向に回転する。ポール50、60のカム面55、65からカム面41の当接が外れると共に、ポールのカム穴56、66とカム40の突起ピン47との作用によって、ポール50、60がガイド壁12に沿って回転軸線C側に引き寄せられる。そして、ポール50、60の外歯54a、54b、64a、64bとアッパアーム2の内歯25a、26aとの噛合が解除され、リクライニング装置10はロックが解除された状態となる。また、連結ロッド78で連動するように構成されたリクライニング装置10Aのロックも解除される。
【0025】
この状態でシートクッションフレームAに支持されるシートクッションに対して、シートバックフレームBが支持するシートバックは任意の位置に回動できるようになる。
【0026】
このようにロック解除状態で、シートバックを所定の角度以上前方に、いわゆる前倒し角度範囲に回転させると、アッパアーム2の凹部26の内周面に形成された突起27cは、図1に示される位置から反時計回り方向に回転移動し、ポール50の側面に形成された突起51と内歯25a、26aの間の位置に入ってくる。この状態で、操作ハンドル85を離すと、スプリング86の作用力でカム40が、ポール50を内歯25aの噛み合い方向に押し付けるが、突起27cと突起51の面51aの当接でポール50の移動は阻止され、噛み合いは生じない。このとき、カム長穴56と突起ピン47が当接してカム40はロック解除位置に保持される。従って、カム40で作動される他の2つのポール60も同様に内歯25a、26aから解除された位置に保たれる。このように突起27cが形成された角度範囲では、シートバックはロックされずに回転させる。通常、シートバックをシートクッションに対して前方に倒すように作用するばね手段〔図示せず〕が取付けられ、この前倒し角度範囲では、ばね手段の作用力で大きな角度範囲を一挙に回転し、後部席に対する乗降をし易くする。
【0027】
シートバックを前倒し方向、すなわち図1においてアッパアーム2をロアアーム1に対して反時計周り方向に回転させると、ポール50の突起51はその側面51bで第1のストッパ27aと当接し、これ以上のロアアーム1に対するアッパアーム2の回転は阻止される。
【0028】
シートバックを乗員が着座して使用する位置に戻すときは、操作ハンドル85を操作し、ポール50、60を内歯25a、26aとの噛み合いから解除し、そしてシートバックを引き起こす。
【0029】
アッパアーム2の凹部27の内周面には、上記したシートバックを前倒しの方向に回転させたときの最大倒れ角度を規定する第1のストッパ27aの他に、後ろ倒れの方向に回転させたときの最大角度を規定する第2のストッパ27bが設けられている。作動は第1のストッパ27aの場合と同じで、突起51とストッパ27bは当接して、それ以上のアッパアーム2の回転を阻止する。シートバックの最大後ろ倒れ位置では、シートバックはシートクッションとほぼ水平になるように大きく回転するように設定することができる。
【0030】
上記のように、リクライナ装置10の通常のロック作動では、第1の内歯25aと第1の外歯54a、64aのみが当接して噛み合う構造であるため、噛み合いが隙間無く保たれ、振動の影響を受けたりしない。車両の前方衝突などで、シートベルト101からシートバックに前方方向の過大な荷重が作用する緊急の場合は、この過大な荷重によって、第1の内歯25aと第1の外歯54a、64aがわずかに変形を起こす。その結果、第2の内歯26aと第2の外歯54b、64b間の微小隙間が無くなり互いに当接するようになって、過大な荷重を分担するように作用する。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、リクライニング装置は通常の作動のときは1組のポールの外歯とアッパアームの内歯の当接して係合することによって、従来のリクライニング装置と変わらず振動などの影響を受けて、異音、ガタなどの発生がないように確実なロックを確保できる。さらに、過大な負荷が作用したときは、さらに別の組のポールの外歯とアッパアームの内歯の当接して係合させ、荷重を分担させることによってリクライニング装置の強度を向上させることが可能となる。
【0032】
外歯を1つのポール上に分離して形成し、内歯を1つのアッパアームに分離して形成することによって、部品点数を増加させることなく、リクライニング装置の強度を向上させることが可能となる。
【0033】
また、アッパアームは成形後、第1の内歯より外側の部分を削除すると、従来のリクライナ装置のアッパアームと同じ形状となるため、同じ製造型を用いて製作ができ、シートの他方側に装着されるリクライナ装置の部品とすることができ、製作費用の低減をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートリクライニング装置の平面図で、部分的に図2のII−II部分での断面図を含む。
【図2】図1に示すII−II部分での断面図である。
【図3】本発明に係るリクライニング装置のポールの斜視図を示す。
【図4】本発明に係るリクライニング装置のポールの斜視図を示す。
【図5】本発明に係るリクライニング装置のポールで、図3、4に示される状態に対して、その背面からの斜視図を示す。
【図6】図1に示すVI部分の拡大図である。
【図7】本発明に係るシートリクライニング装置が装着されるシートを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ロアアーム(第2のアーム)
2 アッパアーム(第1のアーム)
25 第1凹部
25a 内歯(第1被係合部)
26 第2凹部
26a 内歯(第2被係合部)
50 ポール
54a 外歯(第1係合部)
54b 外歯(第2係合部)
60 ポール
64a 外歯(第1係合部)
64b 外歯(第2係合部)
Claims (1)
- シートクッションとシートバックのいずれか一方に支持される第1のアームと、
該第1のアームに回動自在に支持され、シートクッションとシートバックのいずれか他方に支持される第2のアームと、
前記第1のアームに被係合部を形成し、前記第2のアームに前記被係合部と係合可能な係合部を有するポールを複数個備えるリクライニング装置において、
前記第1のアームに円形の第1凹部と、該第1凹部の径方向内側に該第1凹部と同心に第2凹部をそれぞれ形成し、前記被係合部を第1凹部の内面に第1被係合部と、第2凹部の内面に第2被係合部とに分けて設け、
前記ポールの全てにおいて、前記係合部を前記第1被係合部と係合する第1係合部と、前記第2被係合部と係合する第2係合部とに分けて設けるとともに、
前記第1または第2のアームに作用する荷重が所定以下のとき、前記第1係合部と前記第1被係合部が当接して係合し、第2係合部と前記第2被係合部は互いに隙間を有して係合するよう設定したことを特徴とするシートリクライニング装置。
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