JP4834551B2 - 平面結合器を一体成形したアンテナシステム - Google Patents

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Description

本発明は、性質の異なる二つ以上の高周波伝送回路を結合させるトランスまたは結合器(カプラ)を組み込んだアンテナシステムに関するものである。
高周波(RF)信号を扱う伝送回路の入出力は、多くの場合、片側アースの不平衡回路であるから、その端子に直結される伝送ケーブルは不平衡の同軸線路やマイクロストリップ線路が用いられる。これに対し、アンテナとしては、その基本素子であるダイポールやループなどの平衡系が多用される。従って、その場合の接続にはバラン(RFトランスの1種)が必要となる。
テレビ放送等の受信では、従来はその結合に図2(イ)に示す眼鏡形のフェライトコアに銅線を巻いたトランスが用いられている。また、波長の短いマイクロ波帯では、コイル(その自己誘導をLとする)やコンデンサ(容量をCとする)といった集中定数が使いにくい一方、波長(以下λとする)が短いので分布定数回路を用いて比較的小形にバランを作ることができる。その最も簡単なものは図2(ロ)の構造であり、フェライトコアは用いられない。いずれにしても、平衡回路と不平衡回路は磁気的にのみ結合(その相互誘導をMで示した場合、M結合)されており、等価回路は図2(ハ)のようになる。これらは立体的構造であり、当初からアンテナなどの隣接素子または隣接伝送回路との一体成形を意識したものではない。
これに対して、最近のテレビ帯域(UHF)ではアンテナ・バランを共に平面構成にする動きがある。この長所は一体成形によるコストダウンを図れることである。例えば、下記の特許文献1に、このような平面構成のものが開示されており、その結合部は図3に示すように同一平面(コプラナ)構造であり、製造が容易である。
特許第3323442号公報
しかしながら、同一平面上にアンテナおよびバランを形成した平面構成のものでは、平衡回路と不平衡回路の結合部において十分な電気的結合を得る事ができない。
本発明の課題は、従来型バランにおける上記の欠点を、バランのみならず、その他の線形カプラにおいても解消しようとするものである。
すなわち、本発明の課題は、結合器を平面化することにより、アンテナ・伝送システム全体の
(1)軽量短小化
(2)製造コストの削減
(3)伝送特性の改善(挿入損失の低減、動作周波数範囲の広帯域化)
を達成する方法を提案することにある。
上記の課題を解決するために、本発明のアンテナシステムの平面結合器には、充分薄いRF両面プリント回路基板(以下、両面基板または単に基板という。)を用いる。すなわち本発明は、前記基板の第1導体面(表面)に一部をカットしたループパターン(以下、C形ループという。)を形成する一方、第2導体面(裏面)にも同形・同サイズのC形ループを形成して、これらで基板中層の誘電体板を挟ませ、端子をずらせて対向配置したことを特徴としている。従って、第1導体面上のC形ループ(以下、C形1次ループという。)の切れ目を給電側の端子、第2導体面上のC形ループ(以下、C形2次ループという。)の切れ目を負荷側の、即ちアンテナ側の端子とすれば、両ループは相互に容量結合および誘導結合(以下、CM結合という。)する。
また、本発明では、前記基板の前記第2導体面上に平面アンテナパターンを形成することにより、給電回路と一体化された平板状アンテナを実現している。
次に、平面結合器を多層構造にすることも可能である。この場合には、前記両面基板に例えば1枚の片面基板(充分薄いRF片面プリント回路基板)を重ね合わせる。その際も、前記1次・2次ループと同形・同サイズのC形ループ(3次ループ)を形成し、結合部のみを対向配置して重ね合わせ、端子等は回路間直接結合を避けるためずらせ、結合部のみで相互にCM結合されていることを特徴としている。勿論この場合は、外側の2表面に形成された延長コプラナ線路先端の端子に、それぞれ別のアンテナパターンを形成することにより、2帯域分離特性を有する回路一体型平板状アンテナ等を得ることができる。
C形1次ループ、C形2次ループおよびC形3次ループのアースとの関係は、それぞれに接続する外部回路により独立に定まり、外部回路に不平衡回路・平衡回路がそれぞれ1個以上含まれるとき、この結合器はバランとして機能する。
本発明では、基板として、大きな回路間容量Cを確保するため、充分薄いRF両面および片面プリント回路基板を用いることにより、軽量短小化を実現できる。また、バランなどのトランスまたは結合器を、隣接する伝送回路や伝送回路素子と一体成形することにより、大幅な製造コストの削減を達成できる。
挿入損失は、従来製品で使われていたフェライトコアを避けることとRF損失の少ない薄い基板を用いることにより改善でき、広帯域化は、選定した薄い基板について、設計された大きさと形状のループを作り、それらを精度良く積層することで可能となる。よって、伝送特性を大幅に改善できる。
すなわち、本発明により生み出される効果は、VHF、UHF、SHFの周波数範囲で線形動作する各種伝送回路および隣接素子に対して発揮される。マイクロ波帯では従来からフェライトなどの異方性を利用したアイソレータ、サーキュレータなどがあるが、一方でRFトランスなどのようにフェライトの低損失、高透磁率のみを利用したコンポーネントも多い。後者は本来線形動作が望ましいにも拘らず、フェライトに頼らざるを得なかったため、大振幅時には非線形動作を余儀なくされていた上、バランや分波器などの結合器は3次元構造となっていた。しかし薄く良質なRF基板が出現した今日、面ループを十分接近させることにより、フェライトを用いなくても満足な磁気的結合(M結合)が得られる。またこのループ基板の薄さがRFに対しては十分な結合容量Cになるので、これらのループを後述の図4に示す等価回路になるように配置することで、平面結合器に充分なCM結合を持たせることが可能になる。
本発明に係る両面基板に形成された、1次側給電端子付きの平面結合部およびそれと一体成形された負荷端子付きの2次平面伝送線路(コプラナ線路)の導体部分全体を統合した透視図である。立体縮尺については、厚み方向のみを拡大して、見やすくしてある。 (イ)は従来のVHF、UHFの地上波テレビ放送受信において、通常はアンテナ直下に配備されているバラン、合波器、分波器などの接続回路部品に現在広く用いられているフェライトコアを示す説明図であり、(ロ)はマイクロ波帯の測定用ダイポールやループアンテナと同軸線路を仲介する分割スロット形バランを示す説明図であり、(ハ)は、(イ)を用いたバラン、および(ロ)に共通の等価回路である。 従来の単一導体面容量結合形バランを示す説明図である。 (イ)は図1において、1次ループに不平衡回路を、2次ループに平衡回路を外部接続した場合の結合部の、集中定数による等価回路であり、(ロ)は前記(イ)において容量結合波源と誘導結合波源を2次平衡系の等価波源と見做したときの整合時等価回路である。 本発明に係る平面容量・誘導結合器の多層型応用例を示す図であり、図1に示した結合部において1次側に不平衡回路を、2次・3次ループ端子に平衡系各2回路、計3開口として、バランとして用いる場合の透視図である。
1 結合部のC形1次ループ導体
1a、1b C形1次ループ端子
2 結合部のC形2次ループ導体
2a、2b C形2次ループ端子
3 3開口形バランの結合部の追加導体
3a、3b C形3次ループ端子
4 コプラナ線路
4a、4b 負荷側端子(アンテナ側端子)
5 2次伝送回路の負荷(たとえばアンテナ)
x、y、z 立体構造の方向をわかりやすくするための直角座標系
O 原点(x=0,y=0,z=0)
P 2次ループの中心点(x=−t,y=0,z=0)
Q 3次ループの中心点(x=t,y=0,z=0)
t プリント基板の中身、即ち誘電体板の厚さ
C、C,C キャパシタの容量
、L 等価回路中コイルの自己誘導、即ちC形ループ実物の自己誘導
M 等価回路中コイル間の相互誘導、即ち複数のC形ループ実物間の相互誘導
01、Z02 1次側、2次側伝送回路の特性インピーダンス
、Z 1次側、2次側回路の入力インピーダンス
、R 同上の抵抗分(整合時)
E'OC(ω) 容量結合に起因する2次側等価起電力(ベクトル表示)
E'OM(ω) 磁気結合に起因する2次側等価起電力(ベクトル表示)
ω 電磁波の角周波数
λ 電磁波の自由空間波長
以下に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1を参照して、本発明の基本となる結合部の動作原理について説明する。図1は両面基板の表面および裏面の対向位置に、一部をカットした円形ループ1、2(円形C形1次ループ、円形C形2次ループ)を形成することにより、厚さtの誘電体板(説明の都合で、透視できるよう描いた)を挟んで、円形ループ1、2が対向した構成とする。ループ1の切込みを入れた部分の端子1a、1bを1次ループ端子、ループ2のその部分2a、2bを2次ループ端子として、そこからコプラナ線路4を、端子4a、4bまでZ方向に延長する。この構成は、最も単純な結合器の構成例であり、両ループが重なった部分が結合部、また、コプラナ線路が2次側伝送回路である。したがって例えば、端子1a、1bに同軸線路を接続し、端子4a、4bにダイポールのような平衡アンテナを接続して、この結合器をバランとして用いることができる。
ここで、誘電体の厚さtを充分小さくすればループ間容量Cと相互誘導Mが大きくなり、結果として、図3に示す従来構成の同一平面上の容量に比し遥かに大きな容量結合を得る事ができる。また、誘導結合にはフェライトを用いていないが、間隔tが小さいので、漏れ磁束が少なく、フェライトを用いた場合と結合の強さは拮抗する。
図4(イ)は、この結合部(カプラ)を、左右に接続した回路の特性インピーダンスZ01、Z02と共に集中定数素子で示した等価回路図である。この回路は一見高域フィルタに見えるが、電流IL1とIとの比率が角周波数ωによって変わるため、M結合とのクロスオーバー周波数fを適切に選定することにより、広帯域特性や分離帯域特性を期待する事ができる。
図4(ロ)は、2次回路に等価波源を考えた整合時の等価電源図で、E'OCが容量結合起電力、E'OMが誘導結合起電力であることを示す。これらは共に角周波数ωの関数であり、通過帯域内の高い周波数ではEOC(ω)の効果が大きく、低い周波数ではE'OM(ω)が支配的である。これらの起電力は、次式のようにそのベクトル和となって作用する。
E'(ω)=E'OC(ω)+E'OM(ω)
なお、高い周波数帯では、厳密には等価回路自体をこのように集中定数で表すのではなく、分布定数回路として取り扱う必要がある。
図1に示す結合器は、1次側に同軸線を、2次側に平衡系アンテナを接続した場合に対応し、バランとしての代表的実施例となる。例えばループの外側を直径約30mmの円形とし、t=0.3mm程度の両面基板を用いると本結合部は、UHF帯テレビ放送受信用のバランとなる。その際、コプラナ線路4の特性インピーダンスを適当に選んだうえ、アンテナ5の入力インピーダンスに整合させるべく、長さを適当に設計する必要がある。
なお、端子4a、4bにアンテナを接続しない場合でも、コプラナ線路4の長さなどを適切に設計することにより、このまま、フラスコ形の室内狭帯域アンテナとしてテレビ受信に使うことができる。
図5は、前項の円形カプラを3層にして負荷側の開口を2個にした実施例である。端子2a、2bおよび3a、3bから先は自由に設計できるので、例えば周波数帯域や入力インピーダンスの異なる二つのアンテナまたは負荷の接続に用いることができる。
3層以上の多層構造では、回路を全て平衡または不平衡にして用いることが多くなるが、その選択は専ら基板に接続する外部回路の接地方法で定まるので、結合部自体としてはいずれの場合も共通して使うことができる。

Claims (2)

  1. 平面結合器とアンテナパターンを有し、
    前記平面結合器は、
    RF両面プリント回路基板(以下、両面基板という。)と、
    前記両面基板の一方の第1導体面に形成し、一部をカットした導体平面1次ループパターン(以下、C形1次ループという。)と、
    前記両面基板の他方の第2導体面に形成し、一部をカットした導体平面2次ループパターン(以下、C形2次ループという。)とを有し、
    前記C形1次およびC形2次ループは、前記両面基板の中層の誘電体板を挟み対向配置され、相互に容量結合および誘導結合(以下、「CM結合」という。)されており、
    前記平面結合器の等価回路では、前記CM結合における、前記C形1次ループ・2次ループ間の分布結合容量が直列接続となっており、
    前記第2導体面には前記C形2次ループの各端子に接続されたコプラナ線路と見なせる構造の2次側伝送回路が形成されていると共に、当該2次側伝送回路に接続された前記アンテナパターンが形成されていることを特徴とする平面結合器を一体成形したアンテナシステム
  2. 平面結合器と、第1および第2アンテナパターンとを有し、
    前記平面結合器は、
    RF両面プリント回路基板(以下、「両面基板」という。)と、
    前記両面基板の一方の第1導体面に形成し、一部をカットした導体平面1次ループパターン(以下、「C形1次ループ」という。)と、
    前記両面基板の他方の第2導体面に形成し、一部をカットした導体平面2次ループパターン(以下、「C形2次ループ」という。)と、
    1枚のRF片面導体基板(以下、「片面基板」という。)とを有し、
    前記片面基板は、その導体面(以下、「第3導体面」という。)が外側となるように前記第1導体面に重ね合わされており、
    前記C形1次およびC形2次ループは、前記両面基板の中層の誘電体板を挟み対向配置され、相互に容量結合および誘導結合(以下、「CM結合」という。)されており、
    前記第2導体面には、前記C形2次ループの各端子に接続されたコプラナ線路と見なせる構造の2次側伝送回路が形成されていると共に、当該2次側伝送回路に接続された前記第1アンテナパターンが形成されており、
    前記第3導体面には、前記C形1次ループあるいは前記C形2次ループと同形・同サイズの導体平面ループ(以下、「C形3次ループ」という。)が形成されており、
    前記C形3次ループは、前記片面基板の中層の誘電体板を挟み、前記C形1次ループに対向配置され、相互にCM結合されており、
    前記平面結合器の等価回路では、前記CM結合における、前記C形1次ループ・2次ループ間の分布結合容量、および、前記C形1次ループ・3次ループ間の分布結合容量が直列接続となっており、
    前記片面基板の前記第3導体面には、前記C形3次ループの各端子に接続された第2のコプラナ線路と見なせる構造の3次伝送回路が形成されていると共に、当該3次伝送回路に接続された前記第2アンテナパターンが形成されていることを特徴とする平面結合器を一体成形したアンテナシステム。
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