以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのイオン化装置を例示するものであって、本発明はイオン化装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
図6〜図10に、本発明の実施の形態1に係るイオン化装置300を示す。図6はイオン化装置300の外観を示す斜視図、図7は分解斜視図、図8はケーシング部材を下方から見た示す斜視図、図9はケーシング部材82を上方から見た斜視図、図10はケーシング部材同士の連結部分を示す拡大図を、それぞれ示している。これらの図に示すイオン化装置300は、高電圧配板58と、高電圧配板58を保持する保持板80と、高電圧配板58と電気的に接続されて先端からイオンを放出するための電極針12と、保持板80を内部に収納する複数のユニット状ケーシング部材82と、ケーシング部材82の連結体の上方を閉塞する外ケース84と、ケーシング部材82の下面を覆う対向電極プレート18とを備える。
図6の外観斜視図に示すように、このイオン化装置は本体を構成する放電電極バー300と、外部ユニット92とをケーブル90で接続している。放電電極バー300は、本体をケース状に構成し、全体を細長い角柱状としている。本体ケースは、図7の分解斜視図に示すように上下に2分割して、上ケースと下ケースとをネジ止め等により固定する。上ケースは外ケース84、下ケースは対向電極プレート18を構成する。
この放電電極バー300は、3つの電極針12を有するケーシング部材82Aに、4つの電極針12を有するケーシング部材82Bを連結し、全体として7つの電極針12を有する放電電極バーを構成している。このように放電電極バー300の内部ではケーシング部材82を複数連結しており、外形は一体物の外ケース84と対向電極プレート18とで構成する。これによって、ユニット状ケーシング部材同士の連結部分の強度を維持しつつ、放電電極バー300が大型化する事態を回避できる。単に放電電極バー同士を連結する構成では、連結部分の機械的な補強が必要となり、金属プレート等で補強する結果、装置が重く大きくなるという問題がある。これに対して本実施の形態では、外ケース84と対向電極プレート18を、予め連結後のケーシング部材82を挿入できる長さに設計し、これらの内部でケーシング部材82同士を連結する構成としている。この方法であれば、本体ケース内部に配置するケーシング部材82を共通化し、これらを複数本組み合わせて所望の数の電極針12とできると共に、ケーシング部材82を収納する外ケース84や対向電極プレート18のみを、それぞれ放電電極バーの長さに応じたものに設計することで対応できる。この結果、要求される放電電極の数に応じてケーシング部材82や保持板80、高電圧配板58を設計せずとも、内部部材を共通化してコストを低減できる。一方で、外ケース84等は一体物を使用することで強度を確保し、部材の大型化を回避している。特に対向電極プレート18は、ステンレス等の金属板で構成できるので、薄くとも十分な強度を発揮でき、放電電極バーの補強が図られる。
さらにこのケーシング部材82は、ケーシング部材82同士の連結部でも主エア通路S1と高電圧経路とを確実に分離できるよう、後述するケーシング部材82の連結ポート88の形状を、搬送エア用のエアポート89Aと高電圧経路用の高電圧ポート89Bとに分離している。これによって、主エア通路S1と高電圧経路とが物理的に隔離されるので、両者間の絶縁が確実に保たれる。エアポート89Aと高電圧ポート89Bとは、Oリング87A、87Bを介してそれぞれのエアポート89Aと高電圧ポート89Bに連結される。
(ユニット状ケーシング部材82)
以下、各部材の詳細について図6〜図10に加えて、図11〜図14に基づいて説明する。図11は放電電極バーの長手方向における縦断面図、図12はユニット状ケーシング部材の連結部分を示す拡大断面図、図13は横断面図、図14は放電電極バー200の制御回路のブロック図を、それぞれ示す。図7の分解斜視図に示すように、この放電電極バーは2つのユニット状ケーシング部材82A、82Bを連結した連結体を、ケース本体に収納している。図7において、右側のケーシング部材82Bは電極針を4本、略等間隔に装着可能としており、左側のケーシング部材82Aは電極針を3本装着可能としている。左側のケーシング部材82Aは、右側のケーシング部材82Bとほぼ同様の間隔で電極針を3本とし、図において左端には電極針を装着せず、高電圧線を配線している。また各ケーシング部材82A、82Bには、保持板80を挿入している。保持板80は、挿入先のケーシング部材と同軸に電極針をセットするための第1スリーブ29を設けている。図7の例では、右側の保持板80では4つ、左側の保持板80では3つの電極針を装着可能に構成している。このように、異なるタイプのケーシング部材を連結することで、所望の数の放電電極数を備える放電電極バーを構成できる。また、同じタイプのケーシング部材を連結してもよく、またケーシング部材を2本に限らず、3本以上連結させてもよい。ただ、ケース本体による連結部分の強度を考慮すると、好ましくは4本以内とする。
各ケーシング部材82の内部には、図7の分解斜視図に示すように、保持板80を収納している。保持板80は、高電圧配板58を保持している。高電圧配板58は、インサート形成等により保持板80内に一体的に設けられている。保持板80はOリング86を介してケーシング部材82に気密に挿入される。Oリング86は、保持板80の周囲に隙間無く配置される大きさに構成され、この例では保持板80の外形よりも僅かに小さい略矩形状の環状に形成される。
(ケーブル90)
さらに、本体ケースの長手方向端面には、イオンを送出するための搬送エア及び高電圧を供給するケーブル90を連結するための連結ポート88を設けている。ケーブル90は、エアを通過させるエア経路と、高電圧を電導させる高電圧経路を構成する電気線とを、個別に設ける他、一本のケーブル内にエア経路と電気線とを分離して内蔵させることもできる。エア経路と電気線とを一本のケーブルに纏めることで、ケーブルの使用本数を少なくできるが、ケーブルが太くなる。特に、高電圧を伝送するケーブルは二重に被覆するなどの安全対策を施すと太くなる。ケーブルが太くなると、ケーブルを接続する連結ポートも太くなり、イオン化装置の小型化を阻害する。一方、エア経路と電気線とを個別のケーブルで構成する場合は、ケーブルの安価にできると共に、ケーブルの太さを細くし各ケーブルの取り回しがよくなる。個別のケーブルで構成する場合は、本体ケースの一方の端面に電気線を、他方の端面にエア経路を接続できる。図6の例では、エア経路と電気線とを個別のケーブル90で構成すると共に、図において放電電極バーの左側の端面に設けた連結ポート88に電気線を接続すると共に、右側の端面に設けた連結ポート88Bには搬送エア用のケーブルを接続可能としている。このように、各ケーブル90をケーシング部材82の両端壁に各々取り付けることにより、エア経路と電気線とを確実に分離できる。高電圧とエアとは、放電電極バーとは別部材の制御ユニット14、エア供給ユニット11からそれぞれ供給される。
(外部ユニット92)
放電電極バー300に対して外付けの制御ユニット14には、高電圧ユニット13や電源回路、表示回路、CPU等が設けられる。制御ユニット14と放電電極バーとは、ケーブル90を介して電気的に接続されている。一方搬送エアは、制御ユニット14と共に外付けで設けられたエア供給ユニット11からケーブル90を介して搬送される。ケーブル90を介して搬送エアを放電電極バーに供給するために、ケーブル90と放電電極バーの連結ポート88の接合部分は、Oリング等を用いて気密に連結される。
制御ユニット14とエア供給ユニット11は、それぞれ個別の部材とすることもできるが、好ましくは一体の外部ユニット92として、ケーブル90を介して放電電極バーと接続されて高電圧を搬送エアをそれぞれ供給する。図6に示す例では、外部ユニット92と放電電極バーとをケーブル90で接続することにより、放電電極バーから制御ユニット14のスペースを省略し、小型化を図ることができる。
(外ケース84、対向電極プレート18)
ケーシング部材82同士を連結した連結体の上面は、外ケース84で閉塞される。さらにケーシング部材82連結体の下面には、対向電極プレート18が被覆される。対向電極プレート18は、金属等の導電性を有する部材で構成され、グランドに接地されている。図7の例では、外ケース84は一方の端面に端面板85を一体に成型して下方に端面板85を垂下させ、他方の端面は上半分のみを構成し、下端面は別部材の下端面部材94を連結可能に構成している。そして対向電極プレート18の両端に突出部18Aを形成し、外ケース84の端面板85と下端面部材94に、それぞれ突出部18Aを挿入するスリット85A、94Aを形成する。これにより、対向電極プレート18の一方の突出部18Aを端面板85のスリット85Aに挿入し、他方の突出部18Aを下端面部材94のスリット94Aに挿入して嵌合できる。さらに、対向電極プレート18と下端面部材94を貫通し、ケーシング部材82の下面に嵌め込まれたナットにネジでネジ止めすることで、これらの部材を固定できる。これにより、一方の端部のみで固定でき、ネジの使用本数を少なくできる。
この放電電極バーは、制御ユニット14で発生された高電圧をケーブル90を介して放電電極バーの各電極針12に供給し、コロナ放電によって空気をイオン化して針先端から放出する。またこのイオン化装置300は、電極針12で発生されるイオンを遠方まで運ぶため搬送エアを電極針12の周囲から放出する。この搬送エアを各電極針12の周囲から外部に放出することで、電極針12の先端回りでイオン化したエアが除電対象物(ワーク)に向けて下方に強制的に送り込まれ、ワークを除電する。このようにイオン化装置300は、エアを利用したダウンフロー機構によって、イオンを確実に送出して除電性能を発揮できる。
(ケーシング部材82)
各ケーシング部材82は、略平行に離間した2つの側壁と、これに連続する2つの端壁と、底壁とを有する上方を開口した矩形形状の箱形に形成される。ケーシング部材82の開口部側には、保持板80が挿入される。保持板80は、上下にリブを設けて、ケーシング部材82の開口部に挿入できる大きさ及び形状に形成される。ケーシング部材は、プラスチック製等とすることで、絶縁と軽量化、低コスト化を図る。
ケーシング部材82の開口部分に、Oリング86等を介して保持板80を気密に挿入することで、直線状の主エア通路S1を構成する密閉空間が形成される。これにより、図7、図13等に示すように、保持板80の下面と電極組立体36の間で、エア経路の一部を構成する主エア通路S1が構成される。
ケーシング部材82は、その底壁に、保持板80に設けられた比較的短い第1スリーブ29と同軸の比較的長い円筒状の第2スリーブ31を備えている。この第2スリーブ31は、ケーシング部材82の底壁から下方に延び、その両端を開放している。すなわち、第2スリーブ31は上下に延びる貫通孔を構成しており、この第2スリーブ31は第1スリーブ29よりも大きな径を有しているのが好ましい。第2スリーブ31の外周面には、第2スリーブ31の基端部分に、沿面距離を拡大するための2つの円周フランジ32が形成されている。
(高電圧配板58)
高電圧配板58は、ステンレス鋼で構成される。高電圧配板58をステンレス製とすることで、導電性を維持しつつイオン化装置の長さ方向について補強板の役目を果たし、剛性を向上させることができる。この高電圧配板58は、ケーブル90を介して制御ユニット14内の高電圧ユニットに接続されている。この高電圧配板58は、保持板80の一端から他端まで直線状に延長された形状を有している。また、高電圧配板58の一端は、高電圧ユニットからの高電圧エネルギを受け入れるコネクタ用端子58Aを構成しており、コネクタ用端子58Aを保持板80の端面で突出させてケーブル90の配線と電気接続される。
高電圧配板58は、インサート成型によって保持板80に一体的に介装される。これにより高電圧配板58は保持板80に確実に固定され、不要な部分を本体ケース内部に露出させず、沿面経路を排除できる。保持板80は、プラスチック成形材料等で構成され、上方を開口した有底の枠状に形成し、この枠状の底面に高電圧配板58が表出するようにインサート成型している。また枠状の開口は、高電圧配板58の形状にほぼ沿うように細長い矩形状に形成される。さらに枠状の開口面積は高電圧配板58よりも多少小さくすることで、高電圧配板58の周囲を保持板80で覆い、確実に固定できる。高電圧配板58の上面を表出させることで、必要に応じて電気回路基板等を配置できる。
また保持板80の周囲からは複数の爪81を突出させている。爪81の側面には突起81Aを設け、さらにケーシング部材82の突起81Aと対応する位置には、溝82aが形成される。保持板80をケーシング部材82に挿入する際は、爪81の突起81Aを溝82aに案内することで、保持板80をケーシング部材82に位置決めして固定できる。図7の例では、左側の保持板80では長さ方向に沿って左右に各々3カ所ずつ、計6つの爪81を設けており、右側の保持板80では、長さ方向に沿って左右に各々4カ所ずつ、計8つの爪81を設けている。
さらに図7に示すように、保持板80の下面も枠状に形成し、枠状の内部に第1スリーブ29を設けると共に、第1スリーブ29の無い部分にはリブを渡して補強している。保持板80の下面では、第1スリーブ29の部分を除いて高電圧配板58が表出しないよう完全に覆い、沿面経路の形成を阻止している。一方、第1スリーブ29の部分では、円筒形の第1スリーブ29の底面に高電圧配板58を表出させ、電極針12との接触面を構成している。
(連結機構)
ケーシング部材82は、図8に示すように、高電圧配板58を有する保持板をセットした状態でユニット状に連結可能としている。それぞれのケーシング部材82に応じた形状、放電電極数の保持板をセットした状態で、端面で接続することにより長手方向に連結された連結体が構成される。各ケーシング部材82は、他のケーシング部材82を連結するために、少なくとも一方の端面に連結ポート88を形成する。図8の例では、2本のケーシング部材82A、82Bを連結しているため、一方の端面のみに連結ポート88を形成すれば足りる。ただ、3本以上のケーシング部材を連結できるよう、両端に連結ポートを設けてもよい。
連結ポート88は、搬送エア用のエアポート89Aと高電圧経路用の高電圧ポート89Bとを備え、これらを物理的に分離された状態で連結する。図10に示す連結部分の拡大図から明らかなように、各ポートは、Oリング87A、87Bで気密に封止され、連結部分からの絶縁やエア漏れ、これらの干渉等が防止される。
図10に示すように、連結ポートは、一方のケーシング部材82を雄型、他方を雌型に形成している。これによって、連結機構自体に機械的な強度を持たせると共に、接続方向を規定し、逆向きの接続を排除する。そして雄型に突出させた円筒状の側面と、雌型に窪ませた内壁との間にOリング87A、87Bを介在させることで、これらの連結を容易に行うと共に、封止も確実に実現される。
さらに、図7の分解斜視図に示すように、連結部分での強度を補強するために、連結板98が装着される。連結板98は側面を折曲して剛性を増した金属板等が利用でき、ケーシング部材同士の連結部分を跨いだ状態でネジ止めなどにより固定される。これによって、連結部分の機械的強度が補強される。特に、プラスチック製のケーシング部材を使用する場合、金属製の連結板98で補強することで連結部分の強度が大幅に向上する。また、周囲の全面に連結板98を設けず、部分的に固定することで、この部分が肥大化したり重くなることを回避できる。特にプラスチック製のケーシング部材とすることで軽量化を図った放電電極バーの利点を維持しつつ、強度面での信頼性を高めることができる。なお図7の例では、連結板98はケーシング部材の下面のみに設けているが、上面側や側面に設けてもよい。あるいは2面等、複数面に設けてもよいが、連結板を多く、あるいは大きくするほど放電電極バーの軽量化、小型化が損なわれるため、強度面とのバランスを考慮して設計される。
(接触片59)
この高電圧配板58によってケーシング部材82に取付られた全ての電極針12に高電圧を供給するための配電ラインを構成している。高電圧配板58には、保持板80の第1スリーブ29に対応する部分に、電極針12と電気接続するための接触片59が設けられている。接触片59は図11に示すように一対の接触面を対向させており、この間に電極針12の上端面を挿入して狭持する。接触片59の先端は、湾曲させて接触面同士の間隔を狭くするようにし、この間で弾性的に電極針12を保持して確実に電気接続を得る。接触片59は好ましくは高電圧配板58と同じ部材で構成し、例えばステンレス板をコ字状に接触して高電圧配板58と固定する。あるいは、高電圧配板を切り起こして接触片を設けてもよい。
(充填材)
高電圧配板58には高電圧が印加されるので、高電圧に晒される部分が接地電位と近接していると、放電を生じるおそれがある。これを防止するために、イオン化装置においては、高電圧経路が表出しないように主エア通路S1と高電圧経路とを分離する。さらに、高電圧経路が表出していると沿面経路が形成されるおそれがあるため、高電圧経路や高圧電源回路をシリコーン樹脂等の充填材で充填している。しかしながら、イオン化装置では複数の部材を連結して構成している構造のため、部分的に連通している領域が残っていることがある。この際、部材間に生じた隙間から、充填材の一部が主エア通路S1に漏れることがある。主エア通路S1は、電極針12の針先近傍で開口しているため、この部分から漏れ出したシリコーン樹脂が帯電した電極針12にシリコーン樹脂が析出するおそれがあった。イオン発生装置から突出している電極針12に異物が付着すると、電界を発生する電極と対向電極との間で短絡が発生し易くなり、イオン発生を行なうための充分な電界が得られず、除電性能を低下させるという問題もあった。
これに対して本実施の形態では、上述の通り保持板80とケーシング部材82との間をOリング86で気密に封止できるため、エア経路と高電圧経路との隙間を無くして完全に分離でき、このような問題も回避できる。具体的には、ケーシング部材82に保持板80を挿入し、高電圧配板58を電気接続する等必要な配線を行った後、図13に示すように保持板80の上面に形成される中空部S4に、充填材で充填し、高電圧配板58の上面からコネクタ用端子58Aの部分までを覆う。これによって沿面経路を無くし、完全に絶縁できる。また同時に防塵対策も実現される。充填材にはシリコーン、エポキシ等の樹脂が利用でき、特にシリコーン樹脂は、万一部分放電が内部で起こっても、炭化しないので沿面放電経路が形成されず、好ましい。このように本実施の形態は、エアの通路と高電圧経路とを完全に分離して、シリコーン樹脂の析出を防止できる。
さらに、従来は高電圧配板58を充填材で充填する際、高電圧配板58が側壁などに接した状態で行っていた。この状態では、高電圧配板58の表面は充填材で被覆できるものの、高電圧配板58と側壁との接触面は充填材で被覆されない。その結果、接触面に凹凸がある等して隙間が生じると、この部分で高電圧配板58が表出することとなり、エア経路と連通するおそれがあった。
そこで本実施の形態では、図15の断面図に示すように、特に高電圧配板58の端子面において、コネクタ用端子58Aの周囲を区画する区画壁99と離間して配置している。この状態では、コネクタ用端子58Aが周囲から浮いた状態となるため、この区画壁99内に充填材Xを充填すると、高電圧配板58の周囲を完全に被覆できるので、全周を確実に絶縁して沿面経路を遮断できる。
(電極針12)
電極針12は、これを保護するための保護部材35と一体化されて電極組立体36を構成し、この電極組立体36は、ケーシング部材82の第2スリーブ31及び保持板80の第1スリーブ29によって着脱自在に保持される。そして、ケーシング部材82に取り付けられた電極組立体36は、ケーシング部材82から下方に向けて垂下し、電極組立体36の下端部分が対向電極プレート18から外部に露出した状態になる。
(電極組立体36)
電極組立体36の電極針12は、例えばタングステン等から作られており、電極針12は、その先端部及び後端部つまり上端部とを除いた本体部分が、保護部材35によって被覆されている。保護部材35は、電極針12に沿って延びる小径内筒部分40と、小径内筒部分40の下端つまり電極針12の先端部分から径方向外方に広がる円形部分41と、円形部分41の外周縁から上方向に延びる大径外筒部分42とを有する。大径外筒部分42は、円形部分41から上方に延びて、第2スリーブ31の外周面に沿ってこの第2スリーブ31の基端部分まで延び、上端には沿面距離を拡大するためにフランジ43が形成されている。
電極組立体36をケーシング部材82に装着すると、各電極針12が位置決めされると共に、ケーシング部材82の第2スリーブ31の内周面と、保護部材35の内筒部分40の外周面とで、ケーシング部材82の主エア通路S1に連なり且つ主エア通路S1に直交して下方に延びる各電極針12毎の円筒状分岐エア通路45が形成され、この円筒状分岐エア通路45は、保護部材35の円形部分41に形成された複数の貫通孔46を通じて外部と連通している。
すなわち、ケーシング部材82内の主エア通路S1を通るエアは、本体ケースの長手方向に沿って横方向に延びる主エア通路S1に直交して分岐した各円筒状分岐エア通路45及び貫通孔46を通って、各々の電極針12の先端の回りから外部に吐出される。
図13に示すように、保護部材35には、小径内筒部分40の上端に円周溝を有し、この円周溝にはパッキン等の弾性バンド50が装着される。また、保護部材35の円形部分41の上面には、大径外筒部分42の内側に円周溝が形成され、この円周溝にOリング51が装着される。
保護部材35の内筒部分40は、電極組立体36をケーシング部材82に装着したときに、図13に示すように、保持板80の第1スリーブ29の深部まで侵入できる長さ寸法を有する。また、小径内筒部分40の径は、第1スリーブ29の中に密に嵌入することのできる寸法に設定されている。
電極組立体36をケーシング部材82に装着するに際し、ケーシング部材82の第2スリーブ31の外周面には図7に示すように突起55を設け、一方電極組立体36の大径外筒部分42には、図13に示すように突起55を受け入れる斜行スリット56を設けることが好ましい。突起55を斜行スリット56の中に入れた状態で電極組立体36を押し込むことで、電極組立体36及び電極針12を位置決めしつつ、ケーシング部材82に組み付けることができる。
以上の構成により、電極組立体36をケーシング部材82に装着すると、高電圧配板58の接触片59は、電極針12の上端面と圧接して導通状態になる。この電極針12と接触片59との接触部分を含む領域は、保持板80の第1スリーブ29の中に電極組立体36の小径内筒部分40の先端部分が嵌入することにより、ケーシング部材82の密閉空間つまり主エア通路S1及び円筒状分岐エア通路45から隔絶された独立した密閉空間S2となる。この隔絶状態は、電極組立体36の弾性バンド50によって確かなものになる。
したがって、電極針12の上端露出部分を含む、接触片59との接触部分は、エアの通路となるエア供給ユニット11の主エア通路S1及び円筒状分岐エア通路45から完全に隔離されて、ケーシング部材82内を通るエアの影響を受けることはない。
電極組立体36は電極針12を保持しており、電極針12の後端部は電極組立体36の後端部より突出して高電圧配板58と接触している。保持板80から下方に突出する第1スリーブ29の開口端に、電極組立体36の後端に配置された弾性バンド50を挿入することで、第1スリーブ29の内側に、密閉空間S2を形成する。この密閉空間S2内に高電圧配板58を収納することにより、主エア通路S1のエアが高電圧配板58に接触することを防止できる。
さらに、上述の通り電極組立体36に設けられたOリング51がケーシング部材82の第2スリーブ31の下端と協働して、円筒状分岐エア通路45の気密性を維持している。一方で搬送エアは、主エア通路S1から円筒状分岐エア通路45、貫通孔46を通じて、電極針12先端が配置されている電極組立体36の先端部に送出され、ここから外部へ放出される。
なお、搬送エアを放出するエア放出口は、図13の例では電極針12を小径内筒部分40で密閉して、その周囲に開口した貫通孔46からエアを放出している。この例では、電極針12の先端部が外気に触れる部分とは個別に貫通孔46を形成し、電極針12の先端部を中心とする直径状に離間した位置に2つの貫通孔46を設けている。ただ、この例に限られず、電極針の周囲を密閉せず、電極針に沿って搬送エアを送出する構成とすることもできる。図16に、このような構成に係る電極組立体36Bの例を示す。図16は、ケーシング部材82の第2スリーブ31に装着される電極組立体36Bの断面図であり、電極針12Bの後端を突出させた状態で、部分的に保持し、かつ小径内筒部分40Bの内面を、電極針12Bの外周から離間させて電極針エア通路S5を電極針12Bに沿って形成している。この電極組立体36Bを、放電電極バー200Bに装着する様子を、図17に示す。この図に示すように、電極組立体36Bの上方に形成された小径内筒部分40Bの上端には弾性バンド50Bが設けられており、この部分から放電電極バー200Bの第2スリーブ31Bに挿入する。そして、第1スリーブ29Bの内側に弾性的に押し込み、気密に密閉空間S2を形成する。一方で、電極組立体36Bに設けられたOリング51Bがケーシング部材82Bの第2スリーブ31Bの下端で押圧されて、円筒状分岐エア通路45Bの気密性が図られる。さらに、円筒状分岐エア通路45Bと電極針エア通路S5とを連通する連通口46Cが開口される。連通口46Cは、密閉空間S2に連通しないよう、これよりも下方に開口される。
(シリコン針12a)
さらに、図16及び図17に示す電極針12Bは、先端をシリコン製としている。多くの場合、電極針はタングステンで構成される。電極針は使用と共に摩耗し、摩耗した微細な粉末が空中に飛散される。しかしながら、放電電極バーをシリコンウェハなどを製造するクリーンルームで使用する際、シリコンウェハ上にタングステン等の異質の微細粒子が付着することは、ウェハの特性上好ましくない。そこで、電極針をシリコン製とすることで、摩耗して飛散したとしても、シリコンウェハに対してシリコン粒子という同質の物質とすることで、このような問題を解消できる。
ただ、シリコン製の電極針は、堅い反面、脆いという問題がある。このため電極針を電極組立体に固定する際に破損するおそれがある。これを回避するために、図16の電極組立体36Bでは、電極針12Bの先端をシリコン製とし、後端の電極組立体と固定する部分をステンレス製として、これらを電気的に接続することで、コロナ放電にはシリコン製の電極針を使用しつつ、固定にはステンレス製の電極針を利用することを実現した。この電極針の構成を、図18に示す。図18に示すように、この電極針12Bは、ステンレス製の中空体12cの先端にシリコン針12aを、後端にステンレス軸12bを挿入し、電気的に導通させている。さらに中空体12c内部での導通を得るために、ステンレス製のスプリング12dを挿入し、この部分でもシリコン針12aとステンレス軸12bとの導通を図っている。これにより、シリコンウェハ等を製造する半導体クリーンルーム内に設置可能なイオン化装置を実現できる。
一方、保持板80は、少なくとも高電圧配板58を保持する機能を有している。図19〜図22に、高電圧配板58を保持板80で保持する状態を示す。これらの図において、図19は高電圧配板58と保持板80を下方から見た斜視図、図20は上方から見た斜視図、図21は高電圧配板58を保持した保持板80を上方から見た外観図、図22は下方から見た外観図を、それぞれ示している。これらの図に示す保持板80は、高電圧配板58を保持するに際して、エア経路側、すなわち下面側において、電極組立体36の電極針12が挿入される部分を除き、高電圧配板58がエア経路に表出しないようにするために、高電圧配板58を覆う構造としている。逆にいえば、高電圧配板58はエア経路側で表出しないように被覆すれば足り、上面側、すなわち高電圧経路側では表出していても構わない。高電圧配板58のエア経路側では、電極針12が接触する部分のみ、接触片59を設けてエア経路側の表面で露出しており、その露出部分を取り囲むように第1スリーブ29が形成されている。電極組立体36が第1スリーブ29に装着された際には、この露出部分がエア通路のエアと触れないようにするため、上述の通り弾性バンド50によって密閉空間S2を形成する。
(ブロック図)
図6に示すように、制御回路を含む制御ユニット14は、外部ユニット92として放電電極バーとは別部材に構成され、ケーブル90によってこれらを接続している。次に、放電電極バー300の制御回路を図14のブロック図に示す。図14は、放電電極バー300の制御回路の概要を示すものである。放電電極バー300は、同一の電極針12からプラスイオンとマイナスイオンとが交互に発生するパルスAC式イオン発生方式を採用している。放電電極バー300は、プラス側高電圧発生回路60とマイナス側高電圧発生回路61とを有し、これらの高電圧発生回路60、61で高電圧ユニットが構成されており、この高電圧ユニットは密閉ボックスの中に収容されている。
プラス側高電圧発生回路60とマイナス側高電圧発生回路61は、共に、トランス62、63の一次側コイルに接続された自励発振回路64、65と、二次側コイルに接続された、例えば倍整流回路からなる昇圧回路66、67とを含む。高電圧発生回路60、61と電極針12との間には保護抵抗つまり第1抵抗R1が設けられている。トランス62、63の二次コイルの接地端GNDと、フィールドグランドFGとの間には、第2抵抗R2と第3抵抗R3とが直列に接続され、また、対向電極プレート18とフィールドグランドFGとの間には、第4抵抗R4と上述した第3抵抗R3とが直列に接続されている。
第4抵抗R4を流れる電流をイオン電流検知回路68で検出することにより、電極針12の近傍のイオンバランスを知ることができる。また第3抵抗R3を流れる電流をイオン電流検知回路68で検出することにより、ワークの近傍のイオンバランスを知ることができる。さらに第2抵抗R2を流れる電流を異常放電電流検知回路69で検出することで、電極針12と対向電極プレート18又はフィールドグランドFGとの間の異常放電を検出することができ、CPU14で異常放電と判別したときには、アラーム手段である表示LED70を点灯する等して操作者に異常を知らせることができる。またこの例では、プラス側高電圧発生回路60とマイナス側高電圧発生回路61の一方の電圧値を固定し、他方を可変としているが、両方を可変にしてもよい。
以上、パルスAC式放電電極バー300の回路を説明したが、イオン化装置の給電は、ACであってもDCであってもよい。例えば、プラスイオンとマイナスイオンが同時に発生するSSDC式であってもよく、プラスイオンとマイナスイオンとが交互に発生するパルスDC式であってもよい。
さらに放電電極バー同士を、ケーブルなどを介して複数本を連結して使用することもできる。図6の斜視図の例では、後端面の連結ポート88にケーブル90を介して外部ユニット92を接続している。前方の端面に開口された連結ポートにも、ケーブルを介して他の放電電極バーを連結し、複数の放電電極バーを同期させて使用することもできる。この場合、外部ユニット92に含まれる制御ユニット14は、複数の放電電極バーが接続されたことを検出して、これらを連動して制御できる。また連結される放電電極バーは、同じタイプのものとする他、長さの異なるもの、電極針の数が異なるもの等、異なるタイプの放電電極バーを連結することもできる。
(低背化)
本実施の形態に係るイオン化装置300で装置本体の薄型化を実現できる様子を、図23に基づいて説明する。図23は、説明のため電極針のない部分で主エア通路S1と高電圧経路S3とが分離される様子を説明する断面図であり、図23(a)は従来例に係るイオン化装置100、図23(b)は本実施の形態に係るイオン化装置300をそれぞれ示している。従来は主エア通路S1と高電圧経路S3とを分離するために、図23(a)に示すように固定プレート57と支持プレート25とで高電圧配板58を狭持した状態で、図23(a)に示すAの部分で超音波溶着で接着した後、さらにこの支持プレート25とボックス状部材30とを図23(a)のBの部分で超音波溶着等で気密に連結していた。この構成では、4つの部材を組み立てる必要があり、特に超音波溶着等の工程に手間がかかり、組み立てコストがかかるという問題があった。
これに対して本実施の形態に係るイオン化装置300では、予め高電圧配板58を保持板80にインサート成型すると共に、保持板80とケーシング部材82とをOリング86で気密に連結することによって、主エア通路S1と高電圧経路S3とを隔離している。この構成によれば、複数の部材を組み合わせて絶縁していた構成を、一枚の保持板80で実現できるので、高さ方向での小型化が図られる上、部品点数を少なくして工程も低減し省力化、低コスト化も図られる。特に超音波溶着を不要にできるので、超音波溶着工程を省力化できる他、超音波溶着のために従来設けていたリブや溝等の構造も不要にできるので、全体構成も簡素化できる。図23の例では、ケーシング部材82の内側に保持板80を配置するので、上端縁も保持板80とケーシング部材82の端縁とをほぼ同一平面とでき、支持プレート25に相当する分だけ薄型化が可能となる。また、幅方向への段差も少なくできる。さらに、このように薄型化しても高電圧配板58の絶縁は十分に維持できるので、性能や安全性を低下させることなく小型化、低背化を実現できる。
保持板80とケーシング部材82はそれぞれ、保持板80の側端面とケーシング部材82の側壁とでケーシング内部空間を形成する。特に保持板80により仕切られる空間は、電極針12からのイオンを外部へ放出するためのエアの通路となる主エア通路S1として活用される。また保持板80の上端が、ケーシング部材82の上端とほぼ同じか、これよりも低い内側に位置することにより、上下方向への大型化を抑止している。
さらに加えて、従来例では支持プレート25の上部に、高電圧等を制御するための制御ユニット14を配置していたが、本実施の形態ではこの部材をイオン化装置本体である放電電極バーと別部材とすることで、さらにイオン化装置を小型化、薄型化できる利点が得られる。
さらに、小型化のみならず組み立て工程の省力化も実現できる。特に予め高電圧配板58を保持板80にインサート成型しておくことで、高電圧配板58の絶縁が実現できる。さらにOリング86で保持板80とケーシング部材82とのシーリングを容易に実現することができ、超音波溶着に比べて極めて簡単である上、気密性の維持を安定して得ることができるメリットも得られる。
加えて、保持板80によって放電電極バーの内部で搬送エアを搬送するエア経路と高電圧経路S3とを分離できるので、本体ケース10の上側領域と下側領域との間を仕切る仕切壁等を設けることなく、これら領域間の間での気体の流通を実質的に防ぐことができる。
上記のように、簡素な構成でシール性を確保しながら装置の小型化を実現することができる。特に上記の例では、Oリング86で保持板80とケーシング部材82とを気密に連結することによって、主エア通路S1と高電圧経路とを隔離している。この構成によれば、複数枚の部材を組み合わせて絶縁していた構成を、一枚の保持板80で実現できるので、高さ方向での小型化が図られる上、部品点数を少なくして工程も低減し省力化、低コスト化も図られる。
(実施の形態2)
また、以上の例では制御ユニット14を放電電極バーから分離して外付けとしている。ただ、放電電極バーに制御ユニット14を内蔵させることもできる。制御ユニット内蔵型のイオン化装置の例を、図24の断面図に示す。この図に示すように、保持板80の上方の空間の空間を利用し、ここに回路部材を配置することで制御ユニット14やエア供給ユニット11を一体的に放電電極バーに組み込んでいる。また漏電対策のため、高圧電源回路等を組み込んだ制御ユニット14を構成後、シリコーン樹脂等の充填材で充填することが好ましい。これにより、イオン化装置は放電電極バー単体で使用可能となる。
以上のように、本実施の形態に係るイオン化装置は、ケース本体内部の電極針に関する部材をユニット状として、放電電極数の変更に柔軟に対応すると共に、ケース本体を構成する部材は、各々一体物として構成することで剛性を確保しており、コスト面と強度面でのバランスを図っている。