以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に、共重合ポリエステル樹脂、粒子、並びに、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤により形成される被覆層を設けてなるヘイズが1.5%以下の積層熱可塑性樹脂フィルムのロール状物であって、下記の式1及び式2に定義される核を有する欠点が下記式3及び式4に定義される状態で連なった連弾状塗布筋欠点の数が、30本/m2以下であり、式5及び式6に定義される長尺塗布筋欠点の数が、幅500mm、長さ10m当たり3本以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムロールである。
式1 10μm≦Dd1≦35μm
式2 30nm≦Dt1≦5000nm
式3 n≧2
式4 t1≧10mm
式5 0.5mm≦Dd2≦2.0mm
式6 t2≧50cm
Dd1:核の長径
Dt1:核の最大高さ
n:連弾状欠点1mm当たりの、式1及び式2で定義される核の平均数
t1:連弾状欠点部の長さ
Dd2:長尺塗布筋欠点の幅
t2:長尺塗布筋欠点の長さ
(基材フィルム)
本発明において、基材となる熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂を溶融押出し又は溶液押出しして得た未配向シートを、必要に応じ、長手方向又は幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸又は同時二軸延伸し、熱固定処理を施したフィルムである。
当該熱可塑性樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理が施されてもよい。
基材として用いる熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、30〜300μmの範囲で、使用する用途の規格に応じて任意に決めることができる。熱可塑性樹脂フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、特に好ましくは75μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、フィルム中に存在する異物の絶対量が増加するため、光学欠点となる頻度が高くなる。また、フィルムを所定の幅に切断する際のスリット性も悪化し、製造コストが高くなる。さらに、剛性が強くなるため、長尺のフィルムをロール状に巻き取ることが困難になりやすい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、共重合成分を少量含む共重合体であってもよい。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用する以外に、他の熱可塑性樹脂を1種以上ブレンドして使用してもよい。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、ポリエステルやポリアミドのような極性官能基を有する樹脂は、被覆層との密着性の観点から好ましい。特に基材には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体が好適に用いられるが、ポリエチレンテレフタレートから形成された二軸配向フィルムが最も好適である。
熱可塑性樹脂フィルムを形成する樹脂としてポリエステル共重合体を用いる場合、例えば、そのジカルボン酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が用いられる。共重合体組成比の一例としては、ポリエチレンテレフタレートを構成するモノマー成分に、他のコモノマー成分を20モル%未満(コモノマー成分がカルボン酸成分である場合には、全カルボン酸成分中。コモノマー成分がグリコール成分である場合も同様)添加するのが好ましい。20モル%以上ではフィルム強度、透明性、耐熱性が劣る場合がある。上記のカルボン酸成分とグリコール成分とを所定量調合して、触媒に、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などを使用して、ポリエステル共重合体が製造される。
また、基材を製造するにあたり、前記熱可塑性樹脂に本発明の効果を妨げない範囲で、触媒やそれ以外にも各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、UV吸収剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
前記の無機粒子、耐熱性高分子粒子は、熱可塑性樹脂フィルムの製造時やロール状に巻取る際・巻出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)の点から、フィルム表面に適度な表面凹凸を付与するために用いられる。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどが挙げられる。また、耐熱性高分子粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などが挙げられる。
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合、前記の粒子の中でも、シリカ粒子が、ポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性を得やすいため、透明性が強く要求される用途では最も好適である。また、熱可塑性樹脂フィルム中に含有させる粒子は1種類を使用しても複数種を併用してもよい。
前記の粒子の種類、平均粒径、添加量は、透明性とハンドリング性とのバランスの点から用途に応じて決めればよく、特に、平均粒径は0.01〜2μm、フィルム中の粒子含有量は0.01〜5.0質量%の範囲で決めればよい。また、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムを、透明性が高度に要求される用途に使用する場合、基材の熱可塑性樹脂フィルム中には、透明性を低下させる原因となる粒子を実質的に含有させず(すなわち、基材に粒子を配合しない)、被覆層に粒子を含有させる構成とすることが好ましい。「基材の熱可塑性樹脂フィルム中には、粒子が実質的に含有されていない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
また、本発明で基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムの層構成は単層でもよいし、単層では得られない機能を付与するために積層構造とすることもできる。積層構造とする場合には、共押出法が好適である。
基材の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。粒子を含有した又は実質的に含有していない熱可塑性樹脂のペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、溶融温度以上でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向熱可塑性樹脂シートを製膜する。この際、溶融樹脂が任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。得られた未配向シートを、ガラス転移点以上に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向熱可塑性樹脂フィルムを得る。
さらに、熱可塑性樹脂フィルムの原料としてポリエステルを用いた場合を代表例として、基材フィルムを得るための製造方法について、以下で詳しく説明する。
基材フィルム原料として用いるポリエステルペレットの固有粘度は、0.45〜0.7dl/gの範囲が好ましい。より好ましくは、機械的強度、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl〜0.7dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.7dl/g、最も好ましくは0.60〜0.7dl/gである。固有粘度が0.45dl/g未満であると、フィルム製造時に破断が発生しやすくなり生産性が低下する他、熱収縮特性が低下する傾向がある。一方、固有粘度が0.7dl/gを超えると、濾圧上昇が大きく高精度濾過が困難となり、生産性が低下する。
また、光学機能性フィルムまたはシートに用いる場合には、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合のSi、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物、及び高融点有機物が除去性能に優れ好適である。
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠点の少ないフィルムを得るには極めて重要である。
溶融樹脂の押出し工程において、濾材を通過する微細な異物であっても、シート状溶融物の冷却工程において異物の周囲で結晶化が進み、これが配向工程において配向の不均一性を引き起こし、微小な厚みの差異を生じせしめレンズ状態となる箇所が生じる。ここでは、レンズがあるかの様に光が屈折又は散乱し、肉眼で観察した時には実際の異物より大きく見えるようになる。この微小な厚みの差は、凸部の高さと凹部の深さの差として観測することができ、凸部の高さが1μm以上で、凸部に隣接する凹部の深さが0.5μm以上であると、レンズ効果により、大きさが20μmの形状の物でも肉眼的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。
高透明なフィルムを得るためには、基材フィルム中に粒子を含有させないことが好ましいが、粒子含有量が少なく透明性が高いほど、微小な凹凸による光学欠点はより鮮明となる傾向にある。
また、厚手のフィルムの表面は薄手のフィルムより急冷となりにくく、結晶化が進む傾向にあるため、未配向シート製造時にフィルム全体を急冷することが必要となる。未配向シートを冷却する方法としては、溶融樹脂を回転冷却ドラム上にファウンテンダイのスリット部からシート状に押し出し、シート状溶融物を回転冷却ドラムに密着させながら、急冷してシートとする方法が好適である。この未配向シートのエア面(冷却ドラムと接触する面との反対面)を冷却する方法としては、高速気流を吹きつけて冷却する方法が有効である。
得られた未配向シートを、ガラス転移点以上に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向熱可塑性樹脂フィルム(本例ではポリエステルフィルム)を得る。
(共重合ポリエステル樹脂)
本発明の被覆層に用いる共重合ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分としてエチレングリコール及び分岐したグリコールとを構成成分とすることが好ましい。前記の分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
前記の分岐したグリコール成分のモル比は、全グリコール成分に対し、下限が10モル%であることが好ましく、特に好ましくは20モル%である。一方、上限は80モル%であることが好ましく、さらに好ましくは70モル%、特に好ましくは60モル%である。また、必要に応じて、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。全ジカルボン酸成分に対し、10モル%以下の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、特に、ジフェニルカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
共重合ポリエステルを製造するに際し、アンチモン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物等の重合触媒を用いることができる。
本発明で被覆層の樹脂成分として使用する共重合ポリエステル樹脂は、水溶性または水分散が可能な樹脂を使用することが好ましい。そのために、前記ジカルボン酸成分の他に、ポリエステルに水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸類又はそのアルカリ金属塩を、全ジカルボン酸成分に対し1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、その例としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸又はそれらのアルカリ金属塩などを挙げることができる。
一般に、共重合ポリエステル樹脂には、芳香族ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸)とエチレングリコールの3量体、同5量体、同6量体、芳香族ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸)と分岐したグリコール(例えば、ネオペンチルグリコール)の4量体等の低分子量成分が多く含まれるが、これら低分子量成分と粒子凝集物を主成分とし、共重合ポリエステルの重合触媒から生成される金属酸化物、金属水酸化物等を含む混合物がアプリケーターロール又はメタリングロール上で乾燥、固化してドクターブレード表面に固形物として析出し、該固形物の大きさ数十μmから数百μmの小片がドクターブレードから脱落し、これが前述のようにメタリングロール、及びアプリケーターロールを介してアプリケーターロールと基材フィルムのキス部に生じる液溜まり中に移行し、これによって本発明が規定する長尺塗布筋が発生するものと考えられる。また、共重合ポリエステルの組成、架橋剤の種類によっても前記ドクターブレードに析出する固形物の析出量は異なるが、塗布液の樹脂成分として共重合ポリエステル樹脂単独の場合より、架橋剤を添加している場合の方が前記のドクターブレードへの固形物の析出は多くなる傾向にある。これは、一般に酸性を有する共重合ポリエステル樹脂水溶液と一般に塩基性を有するメラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系の架橋剤水溶液を混合した場合に分散安定性が低下し、凝集物が生成しやすくなるためと推察される。
また、連弾状塗布筋欠点は、前述のように塗布時にアプリケーターロールと基材フィルムのキス部に生じる液溜まり中で、粒子の凝集体を核とし、この粒子と塗布液中の樹脂成分や架橋剤が核の周囲を覆い、さらにこれが直径20〜1000μm程度の集合体を形成し、この集合体がある一定以上の大きさになった時、削れながら、走行するフィルムに付着して連弾状塗布筋欠点を発生させると考えられる。そして、樹脂成分のうち、特に低分子量成分が核の周辺を覆い易いものと考えられる。
よって、塗布液中の共重合ポリエステル樹脂の低分子量成分(6量体以下の成分)の含有量を低減させ、それにより、ドクターブレードへの固形物の析出を低減させることが本発明が規定する光学欠点の少ない熱可塑性樹脂フィルムロールを得る上で重要である。
そこで、本発明においては、共重合ポリエステル樹脂として、低分子量成分の含有量を低減させたものを用いる。共重合ポリエステル樹脂の低分子量成分の含有量を低減させる方法には特に制限はないが、共重合ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させて溶液化し、当該溶液を液温度15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過し、次いで50℃以上、70℃未満に加温した後、さらに15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過する方法が好ましい。
共重合ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させて溶液化する際の溶媒としては、共重合ポリエステル樹脂が溶解する限り特に制限はなく、例えば、水溶性または水分散性のポリエステル樹脂については、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が好適に使用でき、水、イソプロピルアルコールが最も好ましい。
溶液化は、例えば、共重合ポリエステル樹脂に溶媒を加えて攪拌し、固形分濃度20〜40質量%、好ましくは25〜35質量%の共重合ポリエステル樹脂溶液とする。この溶液は、このまま静置し、粗大なオリゴマー凝集物を沈降させる。静置時間としては、5〜20日間が好ましく、静置時の温度は35℃未満が好ましい。35℃以上では低分子量樹脂成分の沈降が十分に行われない場合がある。この静置したものより、その上澄み液の好ましくは約10分の9を取り出し、濾過に用いる。上澄み液は、濾過の前に、水又は水と有機溶剤(例、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール)との混合溶媒で、5cps以上、15cps未満の溶液粘度になるまで希釈される。15cps以上では後述する濾過工程でのフィルター及びポンプへ負荷が大きくなり、処理効率に劣るため好ましくない。また5cps未満では希釈倍率が大きくなり、濾過処理量が不必要に大きくなるため好ましくない。ここでいう溶液粘度とは、東京計器社製B型粘度計(BL式)No.1アダプター使用時の25℃における値である。
この希釈した液について、精密濾過処理する。精密濾過処理により、静置期間中に生成したオリゴマー凝集物及び、添加されている場合には共重合ポリエステルの重合触媒である金属分(金属酸化物、金属水酸化物の結晶物等)が除去される。当該精密濾過に使用される濾材は、濾過性能として濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μm以下、0.5μm以上であり、好ましくは5μm以下、1μm以上である。当該範囲内で濾過性能が異なる2種以上のフィルターを組み合わせて用いることがさらに好ましい。濾過粒子サイズが10μmを超えると、粗大オリゴマー凝集物の除去が不十分となりやすい。濾過性能が0.5μm未満の場合、必要な粒子凝集体までもが除去され、本来要求されている易滑性、耐ブロッキング性が低下する場合があるため好ましくない。濾過性能が異なるフィルターを組み合わせて用いる場合、濾過粒子サイズの大きいフィルターから順次細かいフィルターとするのが効果的である。塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、上記性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。濾過時の共重合ポリエステル溶液の液温度は15℃以上、35℃未満、好ましくは20℃以上、35℃未満である。35℃以上ではオリゴマーが溶解してその除去が不十分となり、15℃より低いと、液粘度が高くなり、濾過効率が低下するため好ましくない。フィルターを通過する濾過回数は10回以上、好ましくは20回以上、さらに好ましくは30回以上である。濾過回数に上限はないが、効率を考慮すると最大でも、50回程度でよい。
ついで、この共重合ポリエステル溶液の濾液を50℃以上、70℃未満、好ましくは55℃以上、65℃未満まで加温し、濾過処理では除去困難な小さい低分子量樹脂成分及び触媒金属化合物を溶解させる。50℃未満では、低分子量物及び触媒金属化合物を十分に溶解させることができない。70℃以上では、共重合ポリエステル成分の変質が起こりやすく好ましくない。この時、溶液の温度を均一に保つために、必要に応じて攪拌することが好ましい。加温時間は1時間以上、3時間未満が好ましい。1時間未満では十分な効果が得られないおそれがある。また3時間以上では共重合ポリエステル樹脂が変質する可能性があるため好ましくない。
その後、温度を下げ、静置して微細な低分子量成分を沈降させて再び精密濾過処理を行う。この再濾過処理により、再度生成した低分子量成分の凝集物、及び触媒金属化合物結晶物が除去されるのである。静置時間としては、2〜10時間が好ましく、静置時の温度は30℃未満が好ましい。再濾過処理に用いるフィルターの濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)の上限は10μm、好ましくは3μmであり、下限は0.5μm、好ましくは1μmである。濾過温度は、塗布時に好ましい液温度に近い温度、具体的には15℃以上、35℃未満であり、20℃以上、35℃未満が好ましい。また、フィルターを通過する濾過回数は10回以上、好ましくは20回以上、さらに好ましくは30回以上である。濾過回数に上限はないが、効率を考慮すると最大でも、50回程度でよい。
共重合ポリエステル樹脂の低分子量成分の含有量が低減されていることの確認は、上記加熱濾過処理した共重合ポリエステル樹脂溶液のヘイズを測定することにより、行うことができる。具体的には、10mm(石英セルの光路長)のセルを用いてヘイズメーター(日本電色社製モデルTNDH2000)により上記共重合ポリエステル樹脂溶液のヘイズを測定し、ヘイズが5%以下であれば低分子量成分の含有量が低減されていると判断できる。
その他、共重合ポリエステル樹脂の低分子量成分を低減させる手段としては、液体クロマトグラフィーによる分取等が挙げられる。
以上に例示されたような精製処理等により得られる、低分子量成分の含有量が少ない共重合ポリエステル樹脂を塗布工程に用いることにより、効果的に、本発明が規定する光学欠点の少ない熱可塑性樹脂フィルムが得られる。
(粒子)
被覆層に粒子を含有させ、被覆層表面に適切な凹凸を形成させることで、滑り性、巻き取り性、耐スクラッチ性が付与される。このため、基材中に粒子を含有させる必要がなく、高透明性を保持することができる。
被覆層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子;架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。
これらの粒子の中でも、酸化珪素からなる粒子(特に、シリカ粒子)が、被覆層の樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高透明のフィルムを得やすいという点から好適である。
また、粒子の形状は特に限定されないが、易滑性を付与する点からは、球状に近い粒子が好ましい。
被覆層中の粒子の含有量は、被覆層に対して20質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下にする。被覆層中の粒子の含有量が20質量%を超えると、透明性が悪化し、フィルムの密着性も不十分となりやすい。一方、粒子の含有量の下限は、被覆層に対して好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは1質量%、特に好ましくは3質量%とする。
また、被覆層中には平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。いずれにしても、粒子の平均粒径、および総含有量を前記の範囲内にすればよい。
また、粒子の平均粒径は、通常、20〜150nmが好ましく、さらに好ましくは40〜60nmである。平均粒径が20nm未満であると、十分な耐ブロッキング性を得ることが困難な他、耐スクラッチ性が悪化する傾向がある。一方、粒子の平均粒径が150nmを超えると、ヘイズが上昇し且つ、粒子が脱落しやすくなるため好ましくない。
しかし、本発明では、平均粒径が20〜150nmの粒子P1のみでは、十分な耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性が得られない場合がある。そのために、さらに耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性を向上させるために、さらに平均粒径の大きな粒子P2を少量併用することが好ましい。平均粒径の大きな粒子P2の平均粒径は160〜1000nmが好ましく、特に好ましくは200〜800nmである。粒子P2の平均粒径が160nm未満の場合、耐スクラッチ性、滑り性、巻き性が悪化する場合がある。一方、粒子P2の平均粒径が1000nmを超える場合、ヘイズが高くなる傾向がある。また、粒子P2は一次粒子が凝集した凝集体粒子であることが好ましく、この場合、平均粒径は、凝集体粒子の平均粒径で考える。さらにこの場合、凝集体粒子の平均粒径と一次粒子の平均粒径の比が、4以上であることが、耐スクラッチ性の点から好ましい。
2種類の粒子を用いる場合、例えば被覆層中の粒子P1(平均粒径:20〜150nm)と粒子P2(平均粒径:160〜1000nm)の含有量比(P1/P2)を5〜30とし、かつ粒子P2の含有量を被覆層の固形分に対し0.1〜1質量%とする。2種類の特定粒径の粒子の含有量を前記範囲に制御することは、被覆層表面の三次元中心面平均表面粗さを適正化し、透明性と、ハンドリング性や耐ブロッキング性を両立させる上で好適である。被覆層に対し、粒子P2の含有量が1質量%を超えると、ヘイズの上昇が著しくなる傾向がある。
前記粒子の平均粒径の測定は次の方法により行う。電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径を測定し、その平均値を平均粒径とする。また、積層フィルムの被覆層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、被覆層の断面に存在する粒子の最大径を測定することができる。粒子P2が凝集体粒子であった場合の平均粒径は、積層フィルムの被覆層の断面を、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で300〜500個撮影し、それらの凝集体粒子の最大径を測定する。
(架橋剤)
本発明では被覆層の耐湿熱性を向上させるために、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を含有させる。当該架橋剤の具体的種類は、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤である限り特に限定はなく、使用する共重合ポリエステル樹脂との親和性、及び被覆層に要求される接着性、耐熱性、耐水性を考慮しながら選定するのがよい。エポキシ系架橋剤の例としては、ナガセ化成工業株式会社製デナコール(登録商標)シリーズの水溶性のエポキシ架橋剤であるEX−521、EX−512、EX−421、EX−810、EX−811、EX−851等が挙げられる。メラミン系架橋剤の例としては、住友化学社製スミテックス(登録商標)レジンシリーズのM−3、MK、M−6、MC等や株式会社三和ケミカル社製メチル化メラミン樹脂MW−22、MX−706等が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤の例としては、日本触媒社製エポクロス(登録商標)シリーズWS−700、新中村化学工業社製NX Linker FXが挙げられる。架橋剤は、特に高い耐湿熱性を要求される場合などにおいては、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましい。
架橋剤の添加量は、被覆層中の共重合ポリエステル樹脂と架橋剤の合計質量を100質量%として、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。架橋剤の添加量が40質量%より大きいと、被覆層が脆くなり、アクリレート系のハードコート層や拡散層形成後の加工工程においては高速カッティングに耐える密着性が得られない場合がある。架橋剤の添加量が5質量%未満では、近年要求される耐久性が得られにくい。尚、塗布液には、架橋を促進するために必要に応じて触媒を添加しても良い。尚、本発明でいう耐久性とは、光硬化型アクリル系コート層のような機能層を積層後、高温、多湿環境下で保管し、粘着テープによる碁盤目剥離評価法で測定したときの密着性を意味する。
(ヘイズ)
本発明においてヘイズとは、ヘイズメーターを用い、フィルムの異なる箇所3カ所について測定して得られた値の平均値をいう。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘイズは1.5%以下であることが、透明性が高度に要求される光学機能性フィルムまたはシートの基材フィルムとして使用する際に、重要である。前記のヘイズは1%以下であることがさらに好ましい。ヘイズが1.5%を超えると、フィルムをLCD用のレンズフィルムや、バックライト用基材フィルム等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムのヘイズを1.5%以下にするためには、基材フィルム中に粒子を含有させないことが好ましい。基材フィルム中に粒子を含有させない場合、被覆層に耐スクラッチ性やロール状に巻取る際や巻出す際のハンドリング性(滑り性、走行性、ブロッキング性、巻取り時の随伴空気の空気抜け性など)を改善するために、被覆層中に適切な大きさの粒子を特定量含有させて、被覆層表面に適度な凹凸を形成させることが好ましい。
(核)
本発明でいう連弾状塗布筋欠点の発生条件は、今まで不明であったが、本発明者らは、特定の長径と高さを有するフィルム表面の、ピーク形状のように鋭く高さの変化した部分(隆起した部分)が特定間隔内に複数並んだ場合に、連弾状塗布筋欠点が発生することを見出した。
フィルム表面は、理想的には完全な平面となるのであるが、実際には、フィルム表面の平均高さを取った場合に、平均高さよりも高さが高くなった部分(凸部)が存在する。具体的には、多くの場合、図1及び図2が示すように、凸部は、鋭いピーク形状とそのまわりに山のすそののように広がる小高い部分とからなっており、ピーク形状部は主に粒子の凝集体、山のすそののように広がる小高い部分は主に樹脂成分からなっている。本発明において、核とは、このフィルム表面に存在する凸部のピーク形状部であって、下記式1及び式2を満たす大きさを満たすものをいう。
式1 10μm≦Dd1≦35μm
式2 30nm≦Dt1≦5000nm
Dd1で表される核の長径とは、この鋭いピーク形状のピーク幅(すなわち、フィルム表面の平均高さを基準として1つの凸部の高さを、凸部の両端から見ていった場合に、高さが急激に増大する2つの点(2つの変曲点)の間の距離)であって、かつ、その長さがその1つの凸部のピーク形状部において最大となるものとして定義される値である(図2参照)。Dt1で表される核の最大高さとは、核の高さの最大値とフィルム表面の平均高さの差によって定義される値である(図2参照)。
Dd1及びDt1の測定方法について具体的に例示すると、積層熱可塑性樹脂フィルムについて、非接触3次元形状測定装置(例、マイクロマップ社製非接触3次元形状測定装置TYPE550)を用いて測定する。この装置を用いた場合、例えば、1664×1248μmの視野の表面形状をwaveモードで測定し、高さを疑似カラーで表す等高線モードデータを表示させる(図1参照)。このとき、表面のうねりを除去するため、面補正(4次関数補正)を行っておく。測定範囲内の平均高さを0nmとし(上記視野の測定範囲内の平均高さをフィルム全体の平均高さとみなす。フィルム全体の平滑性を考えれば、上記視野の測定範囲内の平均で、充分にフィルム全体の平均の高さとみなして問題ない。)、カーソルを適切に凸部にあわせて凸部のプロファイル曲線を表示させ、視野内にある核(鋭いピーク形状部)のピーク幅及び0nmとした平均高さからのピークトップの距離を測定する(このとき、ピーク幅及び0nmとした平均高さからのピークトップの距離の値が、その凸部において最大の値となるよう、必ず適切にカーソルを合わせる)。このピーク幅がDd1であり、0nmとした平均高さからのピークトップの距離がDt1である(図2参照)。
(連弾状塗布筋欠点)
本発明においては、上記の核を有する部分を欠点と呼び、特に、当該欠点が下記式3及び式4に定義される状態で連なっているものを連弾状塗布筋欠点と呼ぶ。
式3 n≧2
式4 t1≧10mm
n:連弾状塗布筋欠点1mm当たりの、式1及び式2で定義される核の数
t1:連弾状塗布筋欠点の長さ
すなわち、10mm以上の長さのある部分において、1mm辺り2個以上の上記欠点が並んだものが連弾状塗布筋欠点である。ここで、連弾状塗布筋欠点中の核の数を数える場合、連弾状塗布筋の幅方向に対し0.5mm以内の幅に並ぶ核は同一塗布筋欠点の核として数える。この定義された連弾状塗布筋欠点は、実際に、極薄であるが、暗室内で後述する特定の条件下で三波長蛍光管を用いた検出方法及び同環境下でブロムライトを用いて検出する方法の両方法を組み合わせて、筋として検出される。また、本発明が規定する連弾状塗布筋欠点は、核の部分が複数個に分割された形状のものも含まれる。尚、本発明が規定する連弾状塗布筋欠点は、ブロムライトのみを用いて比較的容易に検出できる、塗布液中に存在する粒子凝集物がフィルム上で密集し、さらに筋状に点在した粗大塗布筋欠点とは大きさ、形状が異なり、さらに発生メカニズムも異なるものである。本発明が規定する連弾状塗布筋欠点についてブロムライトを用いた方が検出されやすい連弾状塗布筋と三波長蛍光管を用いた方が検出されやすい連弾状塗布筋が存在する理由は定かではないが、核の高さと核の周囲に存在する山すその部の大きさが関与しているものと推察する。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムにおいては、連弾状塗布筋欠点数30本/m2以下である。かかる本数以下の連弾状塗布筋欠点を有する積層熱可塑性樹脂フィルムは、本願出願以前には確認されていない。連弾状塗布筋欠点数は、少ないほど光学特性に優れるため、好ましくは20本/m2以下、より好ましくは10本/m2以下、さらに好ましくは5本/m2以下であり、連弾状塗布筋欠点数が存在しない(すなわち0本/m2である)ことが最も好ましい。なお、フィルム幅方向に対し同一位置にある連弾状塗布筋欠点は一本と数えるが100mm以上離れている場合は別個の連弾状塗布筋欠点として数える。
レンズフィルムや拡散板等の光学用基材フィルムとして用いる場合、通常、フィルム長さは、フィルム厚さが100μm以上の比較的厚手のフィルムにおいても少なくとも1000m以上、時には2000m以上のロール状の形態でプリズム層や拡散層の積層工程に供される。一方で、この連弾状塗布筋欠点は、積層熱可塑性樹脂フィルムの全表面に均一に発生するわけではない。よって、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムをロールとした場合には、「連弾状塗布筋欠点数が30本/m2以下である」については、連弾状塗布筋欠点をフィルムロール長手方向の100m間隔で10点測定した時に、10点の測定点とも30本/m2以下であればよい。すなわち、100m間隔で測定した10点の測定点のうちの最大連弾状塗布筋欠点数が、30本/m2以下であればよく、好ましくは20本/m2以下、より好ましくは10本/m2以下、さらに好ましくは5本/m2以下であり、最も好ましくは0本/m2である。
(長尺塗布筋欠点)
本発明において、長尺塗布筋欠点とは、下記式5及び6を満たす塗布筋状の欠点、
式5 0.5mm≦Dd2≦2.0mm
式6 t2≧50cm
Dd2:長尺塗布筋欠点の幅
t2:長尺塗布筋欠点の長さ
すなわち、長さ50cm以上、幅が0.5〜2mmの塗布筋状の欠点をいい、フィルムを暗室内で垂直方向に垂らし、ブロムライト(例、VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W LPL社製)を用い、フィルム面に対し約10°から45°の範囲で該ブロムライトの角度を変えながらフィルム正面から観察し、検出される欠点である。
Dd2で表される長尺塗布筋欠点の幅は、塗布筋欠点の最大の幅であり、長尺塗布筋欠点の長さとは、塗布筋欠点の最大の長さをいう。なお、塗布筋欠点の最大長さは、フィルムの全長となる。
本発明のフィルムは、当該長尺塗布筋欠点が、10mあたり3本以下であり、好ましくは、2本以下、より好ましくは1本以下、最も好ましくは0本である。本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムがロールであった場合には、「長さ10m当たり3本以下である」については、100m間隔で、幅500mm、長さ10m当たりの長尺塗布筋欠点数を10点測定した場合に、10点の測定点とも、3本以下であればよい。すなわち、100m間隔で測定した10点の測定点のうちの最大長尺塗布筋欠点数が、3本以下であればよく、好ましくは2本以下、より好ましくは1本以下、最も好ましくは0本である。
また、長尺塗布筋欠点は、塗工装置のドクターブレードに、塗布液中に含まれる樹脂成分や粒子、及び金属成分を含む固形物の堆積物が、塗工キス部に移行し、この移行した小片によって本発明が規定する長尺塗布筋欠点が発生するものと考えられるが、その他の原因(気泡等)による塗布筋欠点であっても、長さが50cm以上、幅が0.5〜2mmである限り、長尺塗布筋欠点として数える。よって、上記連弾状塗布筋欠点の長さが50cm以上であった場合、この連弾状塗布筋欠点も長尺塗布筋欠点として数える。
本発明において被覆層には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、触媒(無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、有機フィラーおよび潤粒子等の種々の添加剤が含有されていても良い。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムを、光学機能性フィルムまたはシート用の基材用途に使用する場合、フィルムの被覆層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa)は、0.002〜0.01μmと平滑であることが好ましい。SRaの上限は、透明性の点から、0.008μmがより好ましく、特に好ましくは0.006μmである。一方、SRaの下限は、滑り性や巻き性などのハンドリング性、耐スクラッチ性の点から、0.0025μmがより好ましく、特に好ましくは0.0030μmである。被覆層のSRaが0.002μm未満の平滑な表面では、耐ブロッキング性、滑り性や巻き性などのハンドリング性、耐スクラッチ性が低下し、好ましくない。一方、被覆層のSRaが0.01μmを超えると、ヘイズが上昇して透明性が悪化するため、光学機能性フィルムまたはシート用の基材フィルムとしては好ましくない。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムロールのフィルム厚みは、用途によって適宜決定されるが、30.2〜300.2μmが好ましく、より好ましくは50.2〜250.2μmである。フィルム厚みが30.2μm未満では、剛性が不十分となり好ましくない。一方、フィルム厚みが300.2μmを超えると、フィルム中に存在する光学欠点となる異物が増加する可能性が高くなり、また、コスト高となるため好ましくない。
被覆層の厚みとしては0.005〜0.2μmが好ましく、より好ましくは0.008〜0.15μmである。被覆層の厚みは、被覆層の断面をミクロトームで切断し、電子顕微鏡で観察することにより測定できるが、被覆層が柔らかい場合、切断時に変形する場合がある。簡便的には、塗布量が既知であれば、被覆層の密度から厚み換算することができる。例えば、被覆層の密度が1g/cm3の場合、塗布量が1g/m2であれば、厚みは1μmに相当する。被覆層の密度は、被覆層を構成する樹脂、粒子の種類からそれぞれの材料の密度を求め、各材料の密度に材料の質量比を乗じ、その和を求めることで被覆層の厚みを推定することができる。
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムをロールとする場合には、その巻き長及び幅は、当該フィルムロールの用途により適宜決定されるが、巻き長として好ましくは1500m以上であり、より好ましくは1800m以上である。また、巻き長の上限としては5000mが好ましい。また、フィルムロールの幅は0.5m以上であることが好ましく、より好ましくは0.8m以上である。なお、フィルムロールの幅の上限としては2.0mが好ましい。
ロールとする場合、積層熱可塑性樹脂フィルムは、通常、巻き取りコアに巻き取られるが、巻き取りコアの径、素材には特に制限がなく、通常、一般に使用される3インチ、6インチ、8インチなどの紙管やプラスチックや金属からなるコアを使用できる。
(製造方法)
本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、特に限定はないが、例えば、共重合ポリエステル樹脂、粒子、並びに、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を含む塗布液を、走行する熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に塗布する塗布工程、塗布層を乾燥する乾燥工程、次いで少なくとも一軸方向に延伸する延伸工程、さらに延伸された塗布フィルムを熱固定処理する熱固定処理工程を含み、共重合ポリエステル樹脂が、共重合ポリエステル樹脂の溶液を、液温度15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過し、50℃以上、70℃未満に加温した後、さらに15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過して処理して得られたものであり、且つ、塗布工程において、塗工時のアプリケーターロールとフィルムのキス長さが1mm以上、5mm未満である製造方法によって製造され、当該製造方法は本発明の一部を構成する(当該製造方法を以下、本発明の製造方法ともいう)。
優れた耐湿熱性を有し、塗布斑の少ない均質な面質が維持されており、且つ本発明が規定する光学欠点の少ない積層熱可塑性樹脂フィルムの製造は、通常の、被覆層形成のために調合された塗布液を単に濾過処理を行い、塗布液中の凝集物、異物の低減を行うのみでは達成できず、塗工キス部に生じる液溜まりでの凝集物の生成を、塗工方法につき検討して低減し、また、ドクターブレードへの樹脂成分の析出を、共重合ポリエステル樹脂について高度な精製処理を施すことによって低減することにより初めて達成される。
以下、本発明の製造方法を具体的に説明する。
(塗布工程)
塗布工程は、該フィルムの製造工程中に塗布するインラインコート法により実施することが好ましく、例えば、走行する基材フィルムの片面、若しくは両面に、上記共重合ポリエステル樹脂、上記粒子、並びに、上記エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を含む塗布液を連続的に塗布する。結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布することがより好ましい。塗布方法は例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、オフセットコート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。これらの塗布方法はロール上の余分な塗布液をドクターブレードで掻き落とす機構を有しており、塗布斑の少ない均質な塗布面を得るには好適である。本発明においては面質の観点からリバースキスロール・コート法を用いるのが好ましい。
本発明において、被覆層形成のための塗布液は、水性塗布液とするのが環境上及び安全上の観点から好ましい。よって、本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂は、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
塗布液は、例えば、溶媒中に、撹拌下、樹脂を分散化または溶解させ、次いで、架橋剤、粒子、必要に応じて界面活性剤、各種添加剤を添加し、可溶分は溶解させ、所望する固形分濃度にまで希釈して調製する。
本発明において、塗布液に用いる溶媒は、樹脂を溶解する液だけではなく、樹脂を粒子状に分散させるために用いる分散媒も広義的に含むものであり、有機溶媒、水性溶媒等の各種溶媒を用いることができ、上記の観点から水性溶媒が好ましい。
塗布液に用いる溶剤は、水に、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が30〜50質量%の範囲で混合した溶媒が好ましい。また、アルコール類の混合量が10質量%未満である場合には、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計量は、50質量%未満とする。アルコール類の混合量(その他の有機溶剤を用いる場合には、アルコール類と当該有機溶剤の合計量)が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水単独の場合と比較して塗布層の外観が向上するという利点がある。有機溶媒の添加量が、全溶媒に対し50質量%以上の場合には、前記ドクターブレードへの固形物の析出が多くなる傾向にある。また、溶媒の蒸発速度が速くなり、塗工中に塗布液の濃度変化が起こりやすくなる。その結果、塗布液の粘度が上昇して、塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす場合がある。さらに、有機溶媒の揮発により、火災などの危険性も高くなる。また、有機溶媒の添加量が全溶媒に対し30質量%未満では、塗布液中に気泡が混入しやすくなる傾向にあり、結果として塗布面に筋状の欠点が発生しやすくなるため好ましくない。本発明では塗布工程において前記混合溶媒濃度のバランスが大きくくずれないようにすることが好ましい。
塗工中における混合溶媒濃度バランス策を具体的に例示すると、アプリケーターロール2、メタリングロール3、塗布液受け皿7を含む装置に、図3に示すように溶媒揮散防止カバー8を設け、溶媒揮散防止カバー8の内部をアルコール類(イソプロピルアルコール等)の飽和蒸気圧に近づける工夫を施すことが効果的である。構造上完全に密閉することは困難であるが、開放部を小さくすることによって、特にアプリケーターロール2上の塗布液の溶媒濃度バランスの安定性は大幅に向上するのである。なお、混合溶媒濃度バランス策は上記に限られない。
塗布液を調合するに際し、共重合ポリエステル樹脂は、低分子量成分の含有量が少ないものを用いるが、共重合ポリエステル樹脂の低分子量成分の含有量を低減させるためには、前記の方法、すなわち、共重合ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させて溶液化し、当該溶液を液温度15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過し、次いで50℃以上、70℃未満に加温した後、さらに15℃以上、35℃未満の条件下で濾過粒子サイズ0.5μm以上、10μm以下のフィルターで濾過して処理する方法を用い、得られる濾液は、そのまま塗布液調製に供してよい。また、濾液の溶媒の一部又は全部を気化させて除去したり、また、別途溶媒を添加して共重合ポリエステル樹脂溶液を再調製してよい。
粒子を調合中の液に添加する際には、予め粒子を水、または有機溶媒に2質量%以上、25質量%未満の濃度の分散液として添加する方法が好ましい。調合中の液に直接粒子を添加した場合、均一な分散が困難となり、結果として、粒子凝集体が核となり、アプリケーターロール上で粒子と親和性の高い樹脂成分との集合体が成長しやすくなり、結果として連弾状塗布筋欠点が発生しやすくなるのである。粒子の分散液を作製する際、攪拌機を用いて十分分散させることが好ましい。攪拌機としては例えば粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)が挙げられ、分散条件は分散液10kgに対し回転数5000rpm以上、好ましくは10000rpm以上、攪拌時間30分以上、好ましくは60分以上である。また、攪拌中は液温が30℃以上に上昇しないよう冷却しながら攪拌するのが好ましい。
塗布液のフィルムへの濡れ性を上げ、塗布液を均一に塗布するために、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤の種類は、良好な塗布性が得られるものであれば特に限定されず、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を好適に使用することができ、微量の添加で良好な塗布性を得るには、フッ素系界面活性剤が特に好適である。界面活性剤の添加量は、ハードコート層や拡散層の密着性を阻害せず、良好な塗布性を得られる範囲であれば適宜選択することができ、塗布液に対し0.01〜0.18質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.02〜0.1質量%配合する。添加量が0.01質量%未満であると、良好な塗布性が得られないおそれがあり、0.18質量%を超えると、塗布液中に含まれる粒子が凝集しやすくなるため、異物の発生頻度が上昇するおそれがある。また、フッ素系界面活性剤の場合には、純水に対する臨界ミセル濃度から、その30倍以下が好適である。臨界ミセル濃度の30倍を超えると、塗布液中に含まれる粒子が凝集しやすくなるため、塗布筋が発生しやすく、さらに得られた積層フィルムのヘイズ上昇に繋がり、特に光学用基材フィルムとしては好ましくない。また、界面活性剤成分がブリードアウトし、密着性に悪影響を及ぼす場合もある。臨界ミセル濃度以下では良好な塗布性が得られない場合があるため好ましくない。
また塗布液のpHを調節するために、pH調整剤としてアルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。pH調整剤としては密着性、耐ブロッキング性、塗布性に悪影響を及ぼさないもの又は影響が無視できる程度であるものであれば特に限定されないが、例示すればpHを上昇させる場合は重曹、炭酸ナトリウム、下げる場合は酢酸等が挙げられる。本発明の塗布液の好ましいpHは4以上、8未満である。pH4未満では被覆層表面に共重合ポリエステル成分が偏析しやすくなる傾向にあり、ハードコートフィルムにおけるハードコート層や拡散板における拡散層、プリズムシートにおけるプリズム層に対して十分な密着性が得られない場合がある。pHが8以上では粒子の種類によっては凝集が起こりやすくなり、連弾状塗布筋欠点が発生しやすくなる他、ヘイズが上昇するため好ましくない。
塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば、無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が触媒に用いられる。
さらに塗布液には、易接着性を消失しない限りにおいて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、有機フィラーおよび潤粒子等の種々の添加剤を混合してもよい。
塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは10質量%以下である。固形分濃度の下限は1質量%が好ましく、さらに好ましくは3質量%、特に好ましくは5質量%である。
塗布液は、塗布液の樹脂成分及び粒子を均一に分散させるため、また、粗大な粒子凝集物及び工程内埃等の異物を除去するために、精密濾過することが好ましい。塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは濾過性能15μm以下、さらに好ましくは濾過性能10μm以下、さらに好ましくはこれらのフィルターを組み合わせて用いる方法である。濾過粒子サイズが25μmを超えると、粗大凝集物の除去が不十分となりやすい。そのため、濾過で除去できなかった粗大凝集物は、塗布乾燥後の一軸延伸又は二軸延伸工程での延伸応力により広がって、100μm以上の凝集物として認識され、光学欠点の原因となる。ただし、濾過性能が0.5μm以下の場合、必要な粒子凝集体までも除去され、本来要求されている易滑性、耐ブロッキング性が低下する場合があるため好ましくない。実用的には、塗布液のフィルター濾過粒子サイズの下限は5μmとするのが、フィルター目詰まりを発生させる頻度も少なく、易滑性、耐ブロッキング性を保持しやすく、さらに塗布液に不必要に剪断力をかけないためにも好適である。塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、上記性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
本発明における被覆層の塗工方法は前述の方法であれば特に限定されないが、アプリケーターロールに基材フィルムを水平または垂直など種々な配置により接触させて、塗布液が形成するメニスカスにより、アプリケーターロール上の塗布液を基材フィルムに転写させる方法が好ましい。特に光学用途用の積層フィルムの製造においては、走行する基材フィルムとアプリケーターロールの接線の下流側に生じる僅かに液溜まりに含まれる気泡を素早く取り除くために、図3に見るように基材フィルムを垂直に走行させる方法が好ましい。さらに基材フィルムを垂直方向に走行させる方式では両面同時に塗工することが容易となり好適である。
本発明の製造方法を詳細に説明するためにリバースコート法を例に挙げ説明する。
リバースコート法とは図3に示すようにフィルム走行方向と逆回転するアプリケーターロール2とメタリングロール3を用い、走行するフィルム1にアプリケーターロール2を接触させ、塗布液をフィルムに転写させることによって塗布する方法である。
リバースコート法において、ロールの直径はアプリケーターロールおよびメタリングロールともに10cm〜50cmであることが好ましく、アプリケーターロール/メタリングロールの直径比は0.5〜2の範囲であることが好ましい。
この塗布時において基材フィルムへの塗布液供給不足による転写不良を防止し、均一に塗布するために、走行するフィルム1とアプリケーターロール2の接線の下流側に図4に示すような僅かな液溜まり9が生じる塗布条件を設定する必要がある。しかしながら、この液溜まり9において、混合溶媒濃度のバランス、本発明の具体例では水とイソプロピルアルコールの濃度バランスが変化すると、塗布液中の粒子とこの粒子と親和性の高い樹脂成分が凝集体を形成しやすくなり、結果として本発明の規定する連弾状塗布筋欠点が発生しやすくなるのである。このため本発明では極力液溜まりを小さくし、且つ、塗布液の混合溶媒濃度バランスの変動を小さくすることが重要である。
まず、塗布液をコーターに供給する塗布液タンクは、図5に見るように調合用タンク12と調合用タンク12より容量の小さい循環用タンク11とに分けて配置し、循環用タンク11とコーターとの間でのみ塗布液を循環させるのが好ましい。循環用タンクを設けない場合は、塗布液の消費によりタンク内の液量が減少した場合に、コーター間での塗布液の循環回数が増加して溶媒のバランスが変動しやすくなる他、粒子の粗大な凝集物が発生しやすくなるので好ましくない。一方、受け皿7の容量に対して循環用タンク11の容量を大きくすることが混合溶媒濃度バランスを安定化させる上で効果的であり、具体的には塗布液の受け皿7の容量を1とした時、循環用タンク11の容量の比は1:10以上、好ましくは1:50以上にするのがよい。1:10より循環用タンク11の容量が小さいと混合溶媒濃度バランスの変動が大きくなりやすく、好ましくない。さらに好ましくは循環用タンク11の容量と調合用タンク12の容量の比を1:10以上、好ましくは1:20以上にする。この時、循環用タンク11の容量が稼働時常に一定になるように調合用タンク12から循環用タンク11に塗布液を供給するのが好ましい。塗布液の供給において重要な点は、アプリケーターロール2とメタリングロール3との間隙間が十分な塗布液で満たされるだけの供給量が最低限必要であることである。
塗布液中の気泡による長尺塗布筋の発生を防止するために、脱泡を行うことが好ましい。脱泡は例えば、塗布液に極力空気を巻き込まないようにする手段と、微量に存在する塗布液中の空気を除去する手段により行う。
塗布液に極力空気を巻き込まないようにする手段とは、ファウンテンダイ4及びメタリングロール3からドクターブレード6によって掻き取られた塗布液が、直接受け皿7に落下し、この衝撃で空気が混入することを防止するために、図3に見るように、ファウンテンダイ4とドクターブレード6の下にガイド板5を設置し、塗布液がこのガイド板5に沿って滑らかに受け皿7に流れ込むようにした手段である。また、微量に存在する塗布液中の空気を除去する手段とは、塗布液を循環用タンク11からファウンテンダイ4に供給する配管の途中に、図5に見るように、上方に伸びる冷却装置(図示しない)を有する分岐配管10を設け、この配管10から塗布液中に含まれる空気を除去する手段である。この分岐配管10の出口の温度を、冷却装置によって20℃以下、好ましくは10℃以下にすることにより、揮発性の高い溶媒の揮散を抑制でき、塗布液の混合溶媒のバランスの変化を小さくできる。尚、この分岐配管10の出口の高さは、塗布液流出を防止するため、及び十分な冷却効果を得るべく塗布液循環用タンク11の液面より少なくとも10cm以上とすることが好ましく、さらに好ましくは20cm以上とする。液体の脱気方法として、減圧脱気による空気の除去が行われる場合があるが、本発明では、混合溶媒のバランスがくずれやすくなるため好ましくない。
塗布液の温度、アプリケーターロール2、メタリングロール3の表面温度は10℃以上、30℃未満とするのが好ましい。塗布液の温度が30℃以上になると、塗布液が変質しやすくなるため、好ましくない。10℃未満では塗布液の粘度が高くなりウネスジが発生しやすい。また、それぞれの温度の差は10℃より大きくならないことが均一な品質を得る上で好ましい。
フィルム1がアプリケーターロール2と接触することにより、接触フィルム面に塗布液溜まり9ができる(塗布液溜まりと基材に塗られた樹脂との境界は明確に目視で観察される)。この塗布液溜まり9は塗工キス部と呼ばれるが、本発明において、キス長さとは、フィルムの走行方向に平行な方向の塗工キス部の長さをいう。キス長さを求めるには、塗布液溜まりと基材に塗られた樹脂との境界が、平行した2つの筋として観察されるが、この2つの境界間の距離を測定すればよい。
塗工時の基材フィルムとアプリケーターロールのキス長さは、通常5〜20mmの範囲に設定されることが一般的であり、特に光学用途の積層フィルムの製造においては8mm以上に設定される場合が多い。これは一般にキス長さ5mm未満では基材フィルムとアプリケーターロールの接圧が弱く、塗布液中に含まれる空気がメニスカス部分で発泡して長尺塗布筋欠点が発生しやすいためである。また、一般に20mm未満としているのは特にアプリケーターロールと基材フィルムの接触によって基材フィルムに微小なキズが多数入り致命的な欠陥と成りうるためである。しかし、本発明においては、塗工時のアプリケーターロール2と基材フィルム1のキス長さは、1mm以上、5mm未満とする。アプリケーターロール2と基材フィルム1のキス長さを5mm未満としたのは、アプリケーターロール2と基材フィルム1の接触によるキズ発生を最大限に抑制するためである。アプリケーターロール2と基材フィルム1のキス長さを5mm未満にすると前述のように気泡による塗布斑が発生しやすくなるが、本発明では塗布時の基材フィルム1の走行方向を垂直にする以外に、後述する手段によってこの問題を解決し、キス長さを5mm未満にすることを成し得たのである。
キス長さは、フィルム走行速度(F)とフィルム走行方向に対して逆回転するアプリケーターロール2の周速(A)の比(以下A/F比と記す)を変化させることにより、コントロールすることが可能であり、キス長さを上記範囲内とするために、A/F比は、1.02以上、1.15未満の範囲に設定するのが好ましく、さらに好ましくは1.05以上、1.1未満である。A/Fが1.02未満では液溜まりが極度に小さくなり、塗布液による潤滑作用が低下するため、基材フィルムとアプリケーターロールの接触によるキズが発生しやすくなる。1.15以上では前述のように液溜まりが大きくなり、液溜まり中で前述した塗布液中の樹脂成分(特に低分子量成分)、架橋剤及び粒子を主成分とする凝集体が生成及び成長しやすく、結果として本発明が規定する連弾状の塗布筋が発生しやすくなる。また、液溜まり部分に前述のドクターブレードより脱落した塗布液中の樹脂成分及び粒子よりなる固形物の小片が存在した場合、フィルム走行速度とアプリケーターロールの速度差が大きいために、固形物の小片がより強く塗布面に押しつけられ、長尺塗布筋が顕著に表れやすくなる。通常、A/F比が1.15未満では、フィルムとアプリケーターロール間の液だまりが小さくなり、キズが発生しやすくなるため、本発明の製造方法においては、上記キズの発生を抑制するために、硬質クロムメッキ処理がなされ、且つ表面粗度0.1S以下の鏡面加工されたロールを用いることが好ましい。
フィルム走行速度としては特に制限はされないが10m/分〜100m/分が好ましく、20m/分〜80m/分がより好ましい。10m/分未満では生産性が低く、コスト高となる他、後述する塗布から乾燥炉入り口までの時間が長くなりやすく、結果として本発明が規定する連弾状塗布筋欠点が発生しやすい。100m/分を超えると塗布液に気泡が混入しやすくなる他、塗布斑が発生しやすくなるため好ましくない。
また、フィルムに対するロールの押付け量を調整することによっても、キス長さをコントロールすることができ、A/F比を上記範囲内に設定した上で、キス長さが1mm以上、5mm未満となるように押付け量を設定する方法が好ましい。
塗布時においては、前述のようにロールが乾くと固形物がドクターブレード6に析出するため、ロールが乾かないようにすることが重要である。そして、さらにドクターブレードカスの発生を抑制には、使用するロールは硬質クロムメッキ処理がなされていることが好ましく、且つ、表面粗度0.3S以下の鏡面加工されたロールを用いることが好ましい。この表面粗度は、より好ましくは0.2S以下、より好ましくは0.1S以下である。0.3Sを超えると、ドクターブレードカスが発生しやすくなる。
また、ドクターブレード6のメタリングロール3への接圧の下限は、通常20gf/cm(0.20N/cm)、好ましくは30gf/cm(0.29N/cm)、上限は、通常100gf/cm(0.98N/cm)、好ましくは80gf/cm(0.78N/cm)である。20gf/cm(0.20N/cm)未満ではメタリングロール3上の塗布液の掻き取り効果が不足し、結果として塗布斑が発生しやすくなる。また100gf/cm(0.98N/cm)を超えると固形物がドクターブレード6に析出しやすくなるため、好ましくない。
ドクターブレード6の材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリアセタール等の樹脂製でも良く、ステンレス鋼、スエーデン鋼等の金属製やセラミック製でも良いが、スリット後に研磨処理がなされ、真直性の高いものが好ましい。
また、塗布装置のロールの精度(真円度と円筒度)を向上させることによってもドクターブレード6とこれに接するロール3の接圧を安定させることができ、ドクターブレード6への固形物析出を低減する上で有効である。本発明においては、現在入手できる技術でロール精度(真円度と円筒度)を向上させることにより、長さ方向の塗膜厚さのバラツキを最小幅にできることから、具体的には、ロール精度(真円度と円筒度)を5/1000mm以下にすることが好ましい。ここでいうロール精度に関する真円度とは、JIS B 0621で示されているように、記録式真円度測定器を用いて決定された最小領域法による二つの同心円の各半径の差で表され、その単位はmmである。また、円筒度は、ロールを定盤上に置いた測微器付きスタンドを軸線方向に移動して、円筒上面に測定子を当てた状態で、全長にわたって種々の測定平面中で測定を実施し、そのときの読みの最大差の1/2で表され、その単位はmmである。
塗布液の未乾燥時の塗布量(以下、ウェット塗布量と略す)は、2g/m2以上10g/m2未満とすることが好ましい。ウェット塗布量が2g/m2未満で、設計の最終的な被覆層の塗布量(乾燥後、延伸前のフィルム単位面積当りの固形分質量)を得ようとすると、塗布液の固形分濃度を高くする必要がある。塗布液の固形分濃度を高くすると、塗布液の粘度が高くなるため、筋状の塗布斑が発生しやすい。一方、ウェット塗布量が10g/m2以上では、乾燥炉内の乾燥風の影響を受けやすく、塗布斑が発生しやすい。また、最終的な被覆層の塗布量(乾燥後、延伸前のフィルム単位面積当りの固形分質量)は、0.005〜0.2g/m2に管理することが好ましく、より好ましくは0.008〜0.15g/m2に管理する。塗布量が0.005g/m2未満では十分な密着性が得られにくい。なお、埃の付着による欠点を防止するために、クリーン度がクラス5000以下のクリーンな環境下で塗布液を塗布することが好ましい。当該塗布量の塗布液が塗布されたフィルムは、配向および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、積層熱可塑性樹脂フィルムとなる。
なお、塗布液を塗布する際は、埃付着による欠点を防止するために、クリーン度をクラス5000以下にするのが好ましい。
また、塗工時のフィルムテンションを4000〜10000N/原反幅(原反幅は1〜2m)にするのがよく、フィルムテンションが当該範囲内にあると、工業的規模でフィルムの平面性が保持され(テンションはフィルムの厚さにより異なり、比較的薄いフィルムはより低いテンションを掛けることで平面性が保持される)、アプリケーターロールと基材フィルムの局所的接触が防止でき、さらに塗布液の転写量がフィルムの長さ方向で均一となる効果が得られる。10000N/原反幅を超えると、フィルム原反が変形し、アプリケーターロールと基材フィルムに局所的に接圧の高い部分ができ、キズが発生しやすくなるため好ましくない。4000N/原反幅未満においても、塗工時のフィルムの平面性が不十分となり、アプリケーターロールと基材フィルムの局所的接触によるキズが発生しやすくなる他、フィルムの蛇行も発生することがあり、さらに塗布液の転写量がフィルムの長さ方向で不均一となる。また、フィルムのウェット塗布量が大きく変動することにより、塗膜厚さのバラツキもより大きくなるため好ましくない。
(乾燥工程)
塗布後の乾燥工程において、乾燥炉では、温度を120℃以上150℃未満に維持しながら、0.1〜5秒間乾燥させることが好ましい。乾燥時間は、さらに好ましくは0.5〜3秒である。乾燥時間が0.1秒間未満では、塗膜の乾燥が不十分となり、乾燥工程から横延伸工程までの間に配置されたロールを通過する際に、該ロールを乾燥不十分な塗布面で汚染する傾向がある。一方、乾燥時間が5秒間を超えると、基材フィルムの結晶化が起こりやすくなり、横延伸時に破断が発生する頻度が増える。
前記の乾燥炉で、120℃以上150℃未満の温度で塗膜を乾燥した後、被覆層を有する積層フィルムを直ちに室温近くまで冷却することが好ましい。前記積層フィルムの表面温度が100℃以上の高温のまま乾燥炉を出て、室温近くのロールに積層フィルムが接触した場合、フィルムの収縮によってキズが発生しやすくなる。
乾燥炉において、乾燥風からの埃の混入を防止するために、HEPAフィルターで清浄化した空気を用いることが好ましい。この際に用いるHEPAフィルターは、公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットする性能を有するフィルターを用いることが好ましい。
乾燥工程における乾燥及び冷却条件は、炉の温度および時間の条件を順次変えた、いわゆる1〜8段程度の乾燥ゾーン(実際には、乾燥するためのゾーンと冷却するためのゾーンからなる)が配列された、好ましくは3〜6段程度の多段乾燥を採用することが、適正な乾燥方法の一実施態様である。この乾燥工程における各段(ゾーン)の決定は、分散液の濃度、塗布量、塗布された走行フィルムの走行速度、熱風の温度、風速、風量などの諸条件を考慮して、製造現場で適宜、適正値を決めることができる。
例を示すと、塗布液を、一軸配向熱可塑性樹脂フィルムの片面または両面に塗布し、コーター真上に配置した多段の乾燥炉で乾燥する場合、次の方法が好適である。
例えば、4段階で乾燥する場合には、4つの乾燥ゾーンに分かれた乾燥炉にて乾燥を行う。具体的には、第1乾燥ゾーンでは、温度125〜140℃で0.1〜4秒間、第2乾燥ゾーンでは、温度55〜100℃で0.1〜4秒間、第3乾燥ゾーンでは、温度35〜55℃で0.1〜4秒間、第4乾燥ゾーンでは、温度25〜35℃で0.1〜4秒間、乾燥させる方法が挙げられる。
前記の乾燥条件の数値範囲は、塗布液の固形分濃度により多少の変動があり、この設定例に限定されるものではないが、乾燥のための風量にも各段階で変化をもたせることが重要である。風量の例を示すと、第1乾燥ゾーンでは、乾燥風の風速を20〜50m/秒、乾燥風の給気風量を100〜150m3/秒、排気風量を150〜200m3/秒に設定する。第2乾燥ゾーンから第4乾燥ゾーンまでは、給気風量を60〜140m3/秒、排気風量を100〜180m3/秒に設定する。いずれの乾燥ゾーンにおいても、コーター側に乾燥風が流れないように設定する。
(延伸工程)
乾燥後、フィルムの端部をクリップで把持して、通常、80〜180℃(好ましくは100〜140℃)に加熱され、風速が10〜20m/秒である熱風ゾーンに導き、幅方向に2〜6倍(好ましくは2.5〜5.0倍)に延伸する。さらに別方向に延伸を行ってもよい。
(熱固定処理工程)
引き続き、通常、220〜240℃、好ましくは225℃〜235℃の熱処理ゾーンに導き、通常、1〜20秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。220℃未満では、得られた積層フィルムの熱収縮率が大きくなり好ましくない。また、240℃を超えると、ハードコート層や拡散層に対する密着性が低下する場合がある。この工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
一般に横延伸工程、熱固定工程、冷却工程は、温度の均一化を目的として10〜30ゾーンに分割され、それぞれのゾーンについてそれぞれ温度制御がなされている。特に横延伸ゾーン後半から熱固定最高温度設定ゾーンにおいても段階的に昇温させ、温度を均一化させることが幅方向の熱収縮率の均一なフィルムを得る上で好ましい。
かくして得られる積層フィルムは、易接着性に優れ、優れた光学特性を有し、且つ連弾状塗布筋欠点の少ないという特徴を有しており、プリズムレンズシート用ベースフィルムやAR(アンチリフレクション)フィルム用ベースフィルム等に好適に使用できる。
また、積層フィルムを、巻き取り機等によって常法によりロール化することによって、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムロールが製造される。当該フィルムロールは、スリッター等により適当な幅に裁断されてもよい。
次に、本発明の積層熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)基材を例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。また、実施例における、特性の評価は下記の方法によった。
(1)連弾状塗布筋欠点検出方法
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの幅1mの製品フィルムロール表層から10mの部分を取り除き、続く長さ1m以上のフィルムを抜き出し、暗室内で垂直方向に垂らした。次いでフィルム背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し前面(被覆層面)から三波長昼白色蛍光灯(FL20SS EX−N/18P:ナショナル社製)を用いてフィルム面に対し約10°から45°の範囲で該蛍光灯の角度を変えながらフィルム正面から観察し、評価面積1m2について長さ10mm以上の塗布筋欠点を検出しマーキングを行った。(製品フィルムロールの幅が1m未満であっても評価面積が1m2であればよい。)尚、筋欠点の長さは定規を用いて直接フィルムに接触しない程度に近づけ測定した。さらに評価する被覆層面と反対側にブロムライト(VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W LPL社製)を用いて前記と同様に約10°から45°の範囲で照射し、ブロムライト照射面側(反被覆層面側)から観察し塗布筋欠点を抽出し、マーキングを行った。この時、光沢の無い黒色の布は観察者と反対側に配置した。尚、フィルム幅方向に対し同一位置にある筋は一本と数えるが100mm以上離れている場合は別個の筋として数えた。
このマーキングした塗布筋欠点存在部分について、本発明でいう連弾状塗布筋欠点と、塗布液中に存在する粒子凝集物がフィルム上で密集しさらに筋状に点在した粗大塗布筋欠点等とを区別するために、マイクロマップ社製非接触3次元形状測定装置TYPE550を用い、1664×1248μmの視野の表面形状を以下の測定条件で測定した。
測定条件:waveモード
対物レンズ 10倍
0.5倍ズームレンズ使用
次いで等高線表示モードにて、測定面が高さによって色分けされた画像を表示させた。この時、表面形状のうねりを除去するため面補正(4次関数補正)を行った。等高線表示モードでは、測定範囲内の平均高さを0nmとし、高さ最高値を100nm、高さ最低値を−100nmに設定し、高さ100nm以上の突起部分が赤色に表示されるように表示させた。次いで同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが突起の最高高さ位置を通るように移動させた。プロット画面では、高さのスケールを突起全体が表示されるように調整した。プロット画面で2本のカーソルを突起の両端に合わせ、突起の大きさ(長径)を読みとった。次いで一本のカーソルを突起の最高点に、もう一本のカーソルを高さ0nm(測定範囲内の平均高さが0nmである)に合わせ、突起高さを求めた。さらに測定位置を、測定した筋の延長線方向にずらし(ここで、連弾状塗布筋の幅方向に対し0.5mm以内の幅に並ぶ核は同一筋の核として数える)、同一といえる筋の測定長が10mmとなるまで、前記測定を繰り返した。
上記測定の結果、下記の式1および式2に定義される核を有する欠点が下記式3及び式4に定義される状態で連なった塗布筋欠点を、連弾状塗布筋欠点と判定し、フィルム1m2当たりのその数を数え、そのフィルムの連弾状塗布筋欠点数とした。
式1 10μm≦Dd1≦35μm
式2 100nm≦Dt1≦5000nm
式3 n≧2
式4 t1≧10
Dd1:連弾状欠点部の一つ核の長径
Dt1:連弾状欠点部の一つの核の最大高さ
n:連弾状塗布筋欠点1mm当たりの式1、式2を満足する核の数
t1:連弾状塗布筋欠点の長さ
また、フィルムの長手方向に沿って100m間隔で1m2当たりの連弾状筋状欠点を評価する場合は、実施例で得られた積層ポリエステルフィルムロールについて、巻きだし後10mの部分、100mの部分、200m・・・と100m間隔で10箇所について、筋状欠点の抽出を行い、連弾状塗布筋欠点の数を数えた。
この測定された10箇所の連弾状塗布筋欠点数のうち、最大値をフィルムロールの最大連弾状塗布筋欠点数とした。
(2)長尺塗布筋欠点検出方法
実施例及び比較例で得られた熱可塑性積層フィルムを、幅500mm、長さ100mのサイズのフィルムにカットし、暗室内で垂直方向に垂らした。この時、フィルムの表層10mは取り除き、続く10mを試料とした。次いでフィルム背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し、前面(被覆層面)からブロムライト(VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W LPL社製)を用い、積層フィルムを巻き出しながらフィルム面に対し約10°から45°の範囲で該ブロムライトの角度を変えながらフィルム正面から観察し、フィルム長さ10mについて長さ50cm以上、幅0.5〜2mmの塗布筋欠点を評価し、10m2当たりの長尺塗布筋欠点数とした。尚、塗布筋の幅は拡大率10倍のスケール付きルーペ(PEAK社製SCALE LUPE ×10)を用いて測定した(フィルムの長さが10m未満であっても評価長さが10mであればよい)。また、フィルム長さ方向に長さ100m間隔で10点測定する場合は巻き長さ1500m以上のフィルムロールから巻きだし後、10mの部分を取り除き、続く10mの試料を採取し、同様にして連続した100mの長さフィルム試料を10箇所採取し、各試料について同様にして長尺塗布筋欠点を数え、その最大欠点数をフィルムロールにおける10m当たりの最大長尺塗布筋欠点数とした。
(3)耐湿熱性の評価方法
実施例及び比較例で得られたフィルム試料を、温度60℃、湿度90%の環境下で1000時間保管した。次いで、清浄に保った厚さ5mmのガラス板上に、ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B))約5gをのせ、上記フィルム試料の被覆層面とハードコート剤が接するように重ね合わせ、フィルム試料の上から幅10cm、直径4cmの手動式荷重ゴムローラーでハードコート剤を引き延ばすようにして圧着した。次いで、フィルム面側から、高圧水銀灯で照射量500mJ/cm2、照射距離15cm、走行速度5m/分の条件下で、紫外線を照射して、ハードコート層を硬化させた。
次いで、ハードコート層を有するフィルム試料をガラス板から剥がし、ハードコートフィルムを得た。両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、前記のハードコートフィルムのハードコート層とは反対側の面を貼り付けた。次いで、ハードコート層及び被覆層を貫通して基材フィルムにまで達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を、升目状の切り傷のある面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して逃がして除き、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直方向に引き剥がした。目視により剥がれた升目の個数を数え、密着性を下記の式より求めた。これを3カ所について行い、密着性の平均値を求め、下記の判断基準に従って耐湿熱性を判定した。なお、1個の升目でも部分的に剥がれているものは、剥がれた個数とした。
密着性(%)=(1−剥がれた升目の個数/100個)×100
密着性の平均値の判定基準。
○:71〜100%
△:51〜70%
×:0〜50%
(4)ヘイズの測定
実施例及び比較例で得たロールから巻き出したフィルムをヘイズメーター(日本電色社製モデルTNDH2000)を用いて異なる箇所3カ所について測定し、その平均値をヘイズとした。
(5)キス長さ
塗工フィルムがアプリケーターロールと接触することにより接触フィルム面にできる塗布液溜まり(塗工キス部)の、フィルム走行方向に平行方向(縦方向)の長さについて金尺で測定した(単位:mm)。
(実施例1)
(1)塗布液の調合
本発明に用いる塗布液を以下の方法に従って調製した。
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂(A)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液を10日間静置し、その上澄み液の約10分の9を取り出し塗布液調合に供した。この共重合ポリエステル系樹脂(A)の水分散液を、液温度25℃の条件下で濾過粒子サイズ5μmのフェルト型フィルターで循環回数20回になるまで濾過(濾過工程1−1と記す)し、さらに濾過粒子サイズ1μmのフェルト型フィルターで循環回数30回になるまで濾過(濾過工程1−2と記す)した。次いで60℃に加温し2時間保持した後、さらに25℃の条件下で濾過粒子サイズ1μmのフェルト型フィルターで循環回数20回になるまで濾過(濾過工程2と記す)した。
以上の処理をして得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の水分散液を12.8質量部、メラミン系架橋剤住友化学社製スミテックス(登録商標)レジンシリーズのM−3(住友化学社製)1.1質量部、水を43.7質量部およびイソプロピルアルコールを39.1質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファック(登録商標)F142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子P1としてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックス(登録商標)OL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子P2として乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジル(登録商標)OX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。前記粒子P2の3.5質量%水分散液を調合する際、分散液10kgに対し、粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)を用いて回転数10000rpmで、60分間攪拌した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、塗布液Aとした。
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
原料ポリマーとして、粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(133.3Pa)した。次いで、乾燥後のPET樹脂ペレットを押し出し機に供給し、約285℃でシート状に溶融押出しして、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。この際、溶融樹脂中の異物を除去する濾材として、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
得られたキャストフィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで95℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍に延伸して一軸配向PETフィルムを得た。次いで、前記塗布液Aを濾過性能10μmのフェルト型フィルターにて濾過(濾過工程3)し、40m/分の速度で走行するフィルムにリバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。その後、コーター真上に配置した4ゾーンに分かれた乾燥炉にて、第1ゾーン温度135℃、1.0秒間、第2ゾーン温度65℃、2.2秒間、第3ゾーン温度40℃、1.8秒間、第4ゾーン温度30℃、1.8秒間として塗布面を乾燥した。また、塗布量は最終的な固形分量として0.08g/m2になるようにした。
尚、この時の塗工条件は以下のようにした。
(a)アプリケーターロール、メタリングロールの温度共に22℃
(b)ファウンテンダイに供給される塗布液の温度:23℃
(c)メタリングロールに対するドクターブレードの接圧:30gf/cm(0.29N/cm)
(d)A/F比 1.06; 押付け量を以下のキス長になるように調整
(e)塗工時のアプリケーターロールとフィルムのキス長さ:2mm
さらに、この時の塗工においては以下のような特徴を有する塗工装置を用いた(図3、図5参照)。
(A)アプリケーターロール、メタリングロール及び塗布液受け皿を含む塗布装置に溶媒揮散防止カバー設けた塗布装置を使用
(B)アプリケーターロール径φ250mm、メタリングロール径φ220mm
(C)アプリケーターロール及びメタリングロールの真円度:3/1000mm
(D)アプリケーターロール及びメタリングロールの表面粗度:0.1S
(E)ドクターブレード:材質SUS402 厚さ0.075mm、幅50mm(ミラーグラフィックス社製商品名エコーブレード)
(F)塗布液の受け皿の容量と循環用タンクの容量比=1:50
(G)循環用タンクの容量と調合用タンクの容量比=1:40
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、第1熱固定ゾーン(温度:200℃)、第2熱固定ゾーン(温度:210℃)、第3熱固定ゾーン(温度:220℃)、第4熱固定ゾーン(温度:230℃)、第5熱固定ゾーン(温度:210℃)第6熱固定ゾーン(温度:170℃、幅方向に3%の緩和処理)、第7熱固定ゾーン(温度:120℃)を順次連続して通過させた後、フィルム両端部のコートされていない部分をトリミングし、巻き取り装置にて巻き取り、さらにこれを幅方向に4等分してスリットし、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例2)
実施例1の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の静置期間を10日間から5日間に変更し、塗布液Bとした。塗布液Bを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例3)
実施例1の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の加温処理前の濾過処理のうち、濾過工程1−2を行わず、塗布液Cとした。塗布液Cを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例4)
実施例1の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の加温処理後の濾過処理(濾過工程2)の濾過精度を1μmから5μmに変更し、塗布液Dとした。塗布液Dを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例5)
実施例1の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の加温温度を60℃から55℃に変更し、塗布液Eとした。塗布液Eを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例6)
実施例1の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の加温時間を2時間から1時間に変更し、塗布液Fとした。塗布液Fを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例7)
実施例1の塗布液の調合において、水を47.4質量部、イソプロピルアルコールを32.5質量部とし、塗布液Gとした。塗布液Gを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例8)
実施例1の塗布液の調合において、水を38.1質量部、イソプロピルアルコールを41.8質量部とし、塗布液Hとした。塗布液Hを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例9)
実施例1と同様にして得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の水分散液を12.8質量部、エポキシ系架橋剤デナコール(登録商標)EX−521(ナガセ化成工業株式会社製)を0.68質量部、水を44.1質量部およびイソプロピルアルコールを39.1質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子P1としてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子P2として乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。
前記粒子P2の3.5質量%水分散液を調合する際、分散液10kgに対し、粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)を用いて回転数10000rpmで、60分間攪拌した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、塗布液Iとした。塗布液Iに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例10)
実施例1と同様にして得られた共重合ポリエステル系樹脂(A)の水分散液を12.8質量、オキサゾリン系架橋剤日本触媒製エポクロス(登録商標)シリーズWS−700を2.7質量部、水を42.1質量部およびイソプロピルアルコールを39.1質量部、それぞれ混合した。さらに、フッ素系ノニオン型界面活性剤(大日本インキ化学工業製、メガファックF142D)の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子P1としてコロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスOL;平均粒径40nm)の20質量%水分散液を2.3質量部、粒子P2として乾式法シリカ(日本アエロジル製、アエロジルOX50;平均粒径200nm、平均一次粒径40nm)の3.5質量%水分散液を0.5質量部添加した。前記粒子P2の3.5質量%水分散液を調合する際、分散液10kgに対し、粉体溶解機(T.K.ホモジェッターM型)を用いて回転数10000rpmで、60分間攪拌した。次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、塗布液Jとした。塗布液Jに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例11)
アプリケーターロール及びメタリングロールの表面粗度が0.3Sである塗布装置を用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例12)
アプリケーターロール及びメタリングロールの真円度が6/1000mmである塗布装置を用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例13)
メタリングロールに対するドクターブレードの接圧を60gf/cm(0.59N/cm)とした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例14)
アプリケーターロール、メタリングロールの表面温度、及びファウンテンダイに供給される塗布液の温度を17℃とした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例15)
実施例1において、循環用タンクとは別に調合用タンクを用いることはせず、塗布液は循環用タンクで調合し、塗布液が無くなった時点で再調合した以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例16)
共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の静置日数を10日間から1日に変更した以外、実施例1と同様の方法で塗布液を調合し、塗布液Kとした。塗布液Kを用いた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例17)
実施例1において、メタリングロールに対するドクターブレードの接圧を110gf/cm(1.08N/cm)とした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例18)
実施例1において、アプリケーターロール、メタリングロール及び塗布液受け皿を含む塗布装置に、溶媒揮散防止カバーが設置されていない塗布装置を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例19)
押付け量を変えて塗工時のアプリケーターロールとフィルムのキス長さを5mmとした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例20)
A/F比を1.09とし、キス長さが2mmとなるように押付け量を変えた以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(実施例21)
実施例1の塗布液の調合において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の水分散液を14.7質量部とメラミン系架橋剤スミテックス(登録商標)レジンシリーズM−3(住友化学社製)を0.15質量部、水を42.8質量部およびイソプロピルアルコールを39.0質量部とし、塗布液Oとした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(比較例1)
実施例1において、共重合ポリエステル樹脂(A)の30質量%水分散液の静置期間を1日にし、また、濾過工程1及び2並びに加熱工程を行わず、さらに下記で異なる塗布装置及び方法を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
塗工装置
(A')アプリケーターロール、メタリングロール及び塗布液受け皿を含む塗布装置に溶媒揮散防止カバー不使用
(H)循環用タンクとは別に調合用タンクを用いることはせず、塗布液は循環用タンクで
調合し、塗布液が無くなった時点で再調合した。
(I)濾過工程3において、濾過粒子サイズ3μmのフェルト型フィルターを用いた。
(比較例2)
比較例1において、濾過工程3のフェルト型フィルターの濾過粒子サイズを1μmに変更した以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(比較例3)
実施例1において、共重合ポリエステル系樹脂(A)の30質量%水分散液の加温処理を行なわず塗布液Lとしたこと以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(比較例4)
実施例1の塗布液の調合において、架橋剤を添加せず、塗布液Mとした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
(比較例5)
押付け量を変えて塗工時のアプリケーターロールとフィルムのキス長さを20mmとした以外は実施例1と同様の方法で、幅1m、フィルム長さ1500m、厚さ125μmの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
各実施例及び各比較例のフィルム作成条件及び評価結果を、以下の表1〜4にまとめる。