以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係るカラー画像を形成可能な画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の構成図、図2は同画像形成装置の現像装置の構成図である。
この画像形成装置は、ベルト状感光体(OPC)からなる像担持体1と、この像担持体1の周回方向(矢示方向)に沿って上流側から下流側に配置した、イエローの像を形成するために像担持体1を一様に帯電(均一帯電)させる帯電装置2Y、像担持体1上に書込み装置3Yによって形成された潜像にイエローのトナーを付着させて現像する現像装置4Yと、マゼンタの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2M、像担持体1上に書込み装置3によって形成された潜像にマゼンタのトナーを付着させて現像する現像装置4Mと、シアンの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2C、像担持体1上に書込み装置3Cによって形成された潜像にシアンのトナーを付着させて現像する現像装置4Cと、ブラックの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2K、像担持体1上に書込み装置3Kによって形成された潜像にブラックのトナーを付着させて現像する現像装置4Kと、像担持体1上に各色のトナー像が重ね合わされて形成されたフルカラートナー像を転写する転写装置5と、定着装置6と、転写材7を収容する給紙装置8などとを備えている。
ここで、像担持体1は、搬送ローラ11、従動ローラ12、転写装置5を構成する転写対向ローラ5B、現像装置4Y、4M、4C、4K(色を区別しないときは「現像装置4」という。)に対向する対向ローラ13Y、13M、13C、13Kの間に架け渡され、搬送ローラ11の回転により矢示方向に例えば100mm/secの速度で周回移動する。
帯電装置2Y、2M、2C、2K(以下、区別しないときは「帯電装置2」という。なお、その他の部材及び手段の符号についても同様である。)は、スコロトロン帯電器を使用し、像担持体1表面を均一帯電する。帯電装置2Y、2M、2C、2Kは、図示しない電源より、例えば、図2に示すように、その中心に張られた直径80μmのタングステンワイヤー21に−5.0kV、ワイヤー21と像担持体(ベルト状感光体)1間で像担持体1より1.5mm上に張られたグリッド電極(例えばエッチングされた金属薄板)22に、−300V、−240V、−180V、−120Vがそれぞれ印加される。
書込み装置3Y、3M、3C、3Kは、画像情報に従って帯電装置2によって均一帯電された像担持体1に対して潜像を書き込むものであり、レーザーを用いた光走査装置やLEDアレイ等、種々のものを使用することができる。ここでは、各書込み装置3は、それぞれ、5mWのレーザダイオードを1個使用し、露光光強度を相対値で、0.12、0.15、0.21、0.47と変えている。ただし、先行して現像されているトナーのある部分でそのトナーによる光吸収分、光強度を上げる等の補正はしていない。
転写装置5は、転写ローラ5Aと転写対向ローラ5Bとを備えている。定着装置6は、加熱ローラ6A及びこれに対向する加圧ローラ6Bを備えている。転写装置5の転写ローラ5Aは、例えば−500Vの転写バイアスが印加される金属ローラの周りに厚さ3mmの半導電性ゴム層が形成されたものを用いている。
そして、この画像形成装置においては、複写機として機能するときには、図示しないスキャナから読み込まれた画像情報がA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理を施されて書込みデータに変換される。また、プリンタとして機能するときには、コンピュータ等から転送されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施され書込みデータに変換される。
そして、画像形成に先駆けて、像担持体1は表面の移動速度が所定の速度となるように、図1の矢印方向に周回移動を開始する。このとき、所定のタイミングで、帯電装置2Yによって像担持体1が均一に帯電され、帯電させられた像担持体1に対し、書込み装置3Yは、イエロー画像の書込みデータに応じてレーザー光3a(図2参照)を照射して露光を行なう。すなわち、光照射によって画像部の電位を変化させることで光照射されなかった非画像部の電位との差を発生させ、この電位コントラストによる静電潜像を形成する。その後、現像装置4Yによってイエローのトナーが像担持体1上に形成された静電潜像の画像部に付着されて、イエローのトナー像が像担持体1上に形成される。
次に、イエローのトナー像が形成された領域を含めて、帯電装置2Mによって像担持体1が均一に帯電され、帯電させられた像担持体1に対し、書込み装置3Mは、マゼンタ画像の書込みデータに応じてレーザー光3aを照射して露光を行ない、マゼンタ画像の静電潜像を形成する。そして、現像装置4Mによってマゼンタのトナーが像担持体1上に形成された静電潜像の画像部に付着されて、イエローのトナー像にマゼンタのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成される。
以下、同様にして、帯電、露光(書込み)、現像が行なわれて、イエローとマゼンタのトナー像にシアンのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成され、これら3色が重ね合わされたトナー像にブラックのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成される。
一方、所定のタイミングで給紙装置8から転写材7が給紙されて搬送路9を介して搬送され、転写装置5によって像担持体1上の色重ねされたトナー像が転写材7に転写され、定着装置6で定着処理された後、フルカラー画像が形成された転写材7が排紙部10に排紙される。
ここで、現像装置4の詳細について図2をも参照して説明する。なお、図2は同現像装置の拡大説明図である。
現像装置4は、ケース41内に、像担持体1上の静電潜像を現像するために移相電界によって粉体であるトナーを移動させる静電搬送部材を構成するロール状の静電搬送部材(静電搬送ローラ)42と、トナー等を収容する収容部43と、収容部43のトナー粒子を静電搬送ローラ42に供給する供給手段を構成する供給ローラ(現像剤担持体)44、静電搬送ローラ42で移動されるトナーを回収するための回収ローラ45などとを備えている。
供給ローラ(現像剤担持体)44は、内部に、固定された磁石が配置されおり、供給ローラ44の回転と磁力及び攪拌スクリュー48によって収容部43内の現像剤が供給ローラ44表面に供給される。また、供給ローラ44の外周側に対向して現像剤層規制部材46を設け、供給ローラ44上の現像剤を一定量の現像剤層厚に規制している。この供給ローラ44に供給された現像剤は供給ローラ44の回転に伴って静電搬送ローラ42と対向する領域まで搬送される。
ここで、供給ローラ44には図示しない電圧印加手段によって供給バイアスが印加されている。また、静電搬送ローラ42には後述する電圧印加手段(駆動回路)によって電極に搬送電界を形成する電圧が印加されている。
これにより、供給ローラ44と静電搬送ローラ42が対向する領域においては静電搬送ローラ42と供給ローラ44との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから解離し、静電搬送ローラ42表面に移動する。そして、静電搬送ローラ42表面に達したトナーは、電極に印加される電圧によって形成される搬送電界(移相電界)によって、静電搬送ローラ42表面上をホッピングしながら搬送される(移動する)。なお、静電搬送ローラ42への帯電トナーの供給は二成分現像器に限らず、一成分現像器でもよいし、電荷注入でもよいし、あるいは、帯電済みのトナーを蓄えておいて供給してもよい。
ここで、トナーを搬送、現像、回収する電界を発生するための複数の電極を有する静電搬送ローラ42は、画像形成時には、像担持体1に対して最近接位置で、50〜1000μm、好ましくは150〜400μm(ここでは300μmとしている。)の間隙をあけて非接触で対向している。
この静電搬送ローラ42の構成について図3を参照して詳細に説明する。図3は、同静電搬送ローラ42の像担持体1側表面を拡大した断面図である。静電搬送ローラ42は、支持基板101上に、複数の電極102、102、102……を、n本を1セットとして、トナー移動方向に沿って所要の間隔で配置し、この上に静電搬送面103aを形成する絶縁性の静電搬送面形成部材となり、電極102の表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものである。なお、ここでは、電極102のピッチは60μm、電極102の幅は30μmとしている。
本実施形態における支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。電極102は、支持基板101上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。表面保護層103としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。
図3において、各電極102から伸びる線は各電極102に電圧を印加するための導電線をあらわしており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極102に対しては、本体側の駆動回路(電圧印加手段)104からn相の異なる駆動電圧V11〜V13、V21〜V23が印加される。なお、本実施形態では3相の駆動電圧が印加される場合(m=3)について説明するが、トナーが搬送される限りにおいて、m>2を満たす任意の自然数mについて適用可能である。
本実施形態では、各電極102は現像装置4側の接点S11、S12、S13,S21、S22、S23のいずれかに接続されており、各接点S11、S12、S13,S21、S22、S23は、現像装置41が画像形成装置本体10に装着された状態においては、それぞれ駆動波形V11、V12、V13、V21、V22、V23を与える本体側電圧印加手段104と接続される。
静電搬送ローラ42は、トナーを像担持体1近傍まで移送し、また現像領域通過後の現像に寄与しなかったトナー粒子を回収するための搬送領域、像担持体1の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成するための現像領域とに分けられる。
現像領域は、像担持体1に近接した領域のみに存在し、搬送領域は静電搬送ローラ42の周上、現像領域以外の全域に存在する。本実施形態では、トナーが移相電界によって移動可能な領域を「静電搬送面」という。本実施形態の場合、静電搬送ローラ42の表面全体が静電搬送面である。
搬送領域では電圧印加手段104によって各電極102に駆動波形V11、V12、V13が印加され、現像領域では電圧印加手段104によって各電極102に駆動波形V21、V22、V23が印加される。
そこで、静電搬送ローラ42におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。静電搬送ローラ42の複数の電極102に対してn相の駆動波形を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(進行波電界)が発生し、静電搬送ローラ42上の帯電したトナー粒子は反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向に移動する。
例えば、図4に示すように、A相(VA)、B相(VB)、C相(VC)の3相の電圧を、ピーク間電圧160Vの矩形波(Duty=50%)、周波数3kHzで位相を120度ずらした電圧として、3本の電極102に各々印加すると、帯電トナーは、進行波電界に同期して、静電搬送ローラ42の表面上をホッピングしながら移動する。なお、進行波電圧の平均値Vbは、現像領域でいわゆる現像バイアスと同じ働きをする。なお、A相(VA)、B相(VB)、C相(VC)は上記の電圧V11、V12、V13、V21、V22、V23に対応し、この例では現像領域と搬送領域とを区別していない。
このとき、ホッピングの高さは、200〜300μmになるので、静電搬送ローラ42より300μmの高さに静電潜像があると、ホッピングしたトナーは、像担持体1の潜像(画像部)の形成する電界に入って潜像に進みこれを現像する。逆に、地肌部では、潜像が、トナーを押し戻す方向の電界を形成しているので、地肌部(非画像部)に向かったトナーは像担持体1に到達することなく途中からUターンして静電搬送ローラ42に戻り、さらに進んで、回収ローラ45で回収される。このように、静電搬送でホッピングされたトナーで現像されるので、この現像方式を、Electrostatic Hopping 現像、略してEH現像と称する。
この現像の様子を図5ないし図8を参照して詳しく説明する。これらの各図は像担持体1と静電搬送ローラ42とが形成する空間におけるトナー60の位置の時間変化をシミュレーションした結果を模式的に示すものである。
OPC(像担持体1)上には、600dpiの1ドット(42μm)の負潜像が形成され、この負潜像によってその上方の空間に現像空間63が形成されている。なお、潜像がもっと大きければ、もっと上空まで現像空間は広がる。一方、静電搬送ローラ42には、電極102A〜102Lが配置されている。この静電搬送ローラ42で搬送されてホッピングするトナー60は粒径と帯電量に分布がある(ここでは大きさの異なる円で示している。)。
ここで、正帯電トナー60がこの空間63に到達すると、そこでは正帯電トナー60を像担持体1に向かわせる静電力が働くので、正帯電トナー60は像担持体1に向かいそこに着地して1ドット潜像を現像する。つまり、図5ないし図8の順に時間が経過すると、静電搬送ローラ42でホッピングされたトナーの一部が1ドット潜像(画像部)の現像空間63に到達し、これを現像しているのがわかる。これに対して、1ドット潜像以外の部分、すなわち、像担持体1の地肌部(非画像部)では、ホッピングされたトナー60が、途中から静電搬送ローラ42側へ引き返し始めているのが分かる。
この現象、即ちホッピングされたトナーが潜像部(画像部)に向かって引き込まれ、地肌部では反発される様子は、高速度カメラでも実際に確認されている。このため、EH現像では、地肌部にある、先行現像トナー像を乱すことなく、新しい潜像のみを、たとえそれが、微小な潜像でも確実に現像することができるのである。
次に、この画像形成装置における1感光体1回転色重ねによるフルカラー画像の形成プロセスを図9ないし図12を参照して説明する。なお、ここでは各行程におけるオリジナルカラーに対する表面電位は基本的には実測値を用いて説明しているが、一部実測できないところはシミュレーション値を用いて説明する。
先ず、図9(a)に示すように、像担持体(OPCベルト)1を100mm/secで定速走行させている状態で、スコロトロン帯電器2Yのグリッド22に対し、図示しない電源よって−300Vを印加すると、像担持体(ここでは「OPCベルト」という。)1は−300Vに均一に帯電する。
次に、図9(b)に示すように、書込み装置3Yによって相対光強度LI=0.12で画像露光を行ないイエロー潜像を形成する。このとき、イエロートナーで現像しない地肌部を選択的に露光する。
すべての色について説明するのは非常に煩雑になるので、ここでは代表的に、イエロー、マゼンタ、シアンと、赤、青、緑のカラー6色とそれに加えて白と2種類の黒の9色について説明する。なお、イエロー、マゼンタ、シアントナーを重ねて形成する黒を「3C」、黒トナーのみで形成する黒を「K」と区別して表記する。
イエロー画像露光では、イエロートナーで現像する、イエロー(以下「Y」)、赤(以下「R」)、緑(以下「G」)、3Cの4画素を露光せず、イエロートナーで現像しない、白(以下「W」)、マゼンタ(以下「M」)、シアン(以下「C」)、青(以下「B」)の4色画素とK画素を露光して、その電位を−300Vから−200Vに100V下げる(なお、ここでの説明においては、絶対値で、「上げる」、「下げる」、「低くなる」、「高くなる」という表記をしている。)。
次に、図9(c)に示すように、イエロー用の現像装置4Yの静電搬送ローラ42に、−230V±80Vの矩形波を印加して、前記イエロー潜像を、比電荷q/m=+20μC/gのイエロートナーytで正規現像する。このとき、従来の現像電極に相当する静電搬送ローラ42の電極102の時間的、場所的平均電位Vbは−230Vで、画像(非露光)電位は−300Vであるので、OPC(像担持1)と静電搬送ローラ42間にホッピングされた正帯電トナーは、この間に形成されている電界が、この正帯電トナーに作用する静電力で画像(非露光)画素に向かいここに付着する。
このとき、OPC(像担持体1)上に付着したトナーの電位Vtは、+60Vである。すなわち、現像された部分の電位は、現像前の−300Vより、現像後はそれにトナー電位+60Vを加えた−240Vに低くなっている。
次に、図10(a)に示すように、スコロトロン帯電器2Mのグリッドに−240Vを加えて、イエロー現像されたOPCベルト1を再度均一帯電する。
このとき、図13(a)に模式的に示すように、OPCベルト上でイエロートナーytが付着している部分の電位と、グリッド印加電圧はともに−240Vであるので、この間の空間には電界が形成されない。そのため、ワイヤー21の近傍で発生し、グリッド22に向かった負イオンは、イオン移動経路23で示すように、グリッド22を抜けて像担持体1に向かうことなく、すべてグリッド22に吸収される。
一方、図13(b)に模式的に示すように、イエロー現像で地肌部だった箇所の電位は−200Vであるので、負イオンはグリッド22を抜けてOPCベルト1の表面に到達し、この部分の電位をマイナス側に高くする。負イオンが連続的に到達し、その部分のOPC電位が−240Vになると、グリッド22との間に電位差がなくなり、後続の負イオンはグリッド22で止まるようになる。
このようにして、OPCベルト1表面は−240Vに均一に再帯電されるが、イエロートナーtyの存在する部分には負イオンが来ないので、現像されたイエロートナーの帯電量は変わらない。すなわち、比電荷q/mで+20μC/gのままである。なお、図10(a)中の破線は、再帯電前のその部分の電位を表示している。
つまり、像担持体の1回転中に帯電、露光及び異なる色の現像剤による正規現像を複数回繰り返して像担持体上にカラー画像を形成するとき、n(n≧2)回目の均一帯電電位を(n−1)回目の現像後の像担持体上の電位分布の絶対値で高い部分の電位と同じにするのである。ここでいえば、後行するマゼンタ画像を形成するための(n=2回目)の帯電電位を、先行する(n−1)回目のイエロー画像の現像後の像担持体上の電位分布の絶対値で高い部分、即ち−240Vの部分の電位と同じにするのである。
これによって、後行する色の画像を形成するときに、先行する色の画像の地肌部を選択的に帯電し、先行する色のトナーが付着している画像部を帯電しないことになるので、付着しているトナーの帯電極性が反転することを防止できる。
引き続いて、図10(b)に示すように、書込み装置3Mで画像露光してマゼンタ潜像を形成する。マゼンタトナーmtを構成要素とするオリジナル色は、前記9色中の、M、R、B、3Cの4色であるので、この画素を露光せず、他5色の画素を、相対光強度LI=0.15で露光して、その部分の電位を−240Vより−140Vに100V下げる。ただし、YとGの位置には正帯電のイエロートナーytが存在しているため、この影響で−136Vまで104V下がる。なお、より正確には、トナー電位のみならず、OPC電位やトナーの光透過率が関係する少し複雑な光減衰曲線近似式で計算するが、本発明との関係は少ないのでその説明は省略する。
そして、図10(c)に示すように、マゼンタ用現像装置4Mの静電搬送ローラ42に−170V±80Vを印加してマゼンタトナーmtで現像する。イエローと同様に、正規現像で、バイアス電位−170Vよりマイナス側に70V高い−240VになっているM、R、B、3Cに正帯電マゼンタトナーmtが付着する。そのトナー電位も+60Vで、その点の現像後の電位は−180Vになる。
なお、この場合、地肌電位は、−136V(オリジナル色K、W、C対応)と、−140V(オリジナル色Y、G対応)の2種類あるが、先に述べたように、EH現像では、ホッピングされたトナーが地肌に到達することはないので、地肌に電位差があってもそこにトナーが付いて地汚れになることはない。以下、三色目、四色目と現像が進むにつれて、地肌中の電位差は拡大するが同じ理由で地肌汚れは問題にならない。
次に、図11(a)に示すように、スコロトロン帯電器2Cのグリッドに−180Vを印加して、イエロー及びマゼンタ現像されたOPCベルト1を再度−180Vに均一帯電する。なお、同図中の破線は、前述したように、帯電前の電位である。このとき、マゼンタ現像された部分の電位は、−180Vのままで変わらず、そのとき地肌だった部分の電位が、−140Vより−180Vにマイナス側に上がるわけである。この場合、マゼンタ露光前の均一帯電と異なって、YとGに対応する位置にはイエロートナーytが存在する。そのため、このイエロートナーytは負イオンをかぶってその正電荷の一部を失うことになる。
このとき、イエロートナーytが失う静電荷の程度について試算する。
前述したように、トナーの比電荷q/mは+20μC/gで、その単位面積当たりの付着量、現像量m/Aは、0.5mg/cm2である。この値から、単位面積当たりのトナー電荷量q/Aを計算すると、1.0×10―4C/m2になる。一方、OPC層の厚さは20μmで、その比誘電率は3.0であるので、その電気容量は1.3μFである。その電位を、40V変化させるために必要な電荷量は、約0.5×10―4C/m2である。すなわち、トナーの有する正電荷の半分なので、負コロナイオンでトナーの帯電極性が反転することはない。
なお、これは、負イオンがすべてトナーに付いた場合であるが、実際には、ミクロに見れば、トナー層が密にOPCを覆っているわけではないので、かなりのイオンはトナー層を抜けてOPCに到達する。この割合は、トナーの付着量m/Aや、グリッド22−OPCベルト1間の電位差(電界)で変わるが、OPC電位とトナーq/mの実測値より計算するとほぼ半々である。すなわち、このシアン用均一帯電で、最初に現像されたイエロートナーytはその1/4の正電荷を失うが、3/4を残し、q/mは+15μC/gになる。
次に、図11(b)に示すように、シアン用書き込み装置4Cによって、シアン潜像の地肌になる部分、すなわち、W、Y、M、R、K対応部分を露光してその点の電位を図11(b)に示すように、−80V〜−52Vにする。露光されなかったC、G、B、3C対応部分の電位は−180Vのままである。
そして、図11(c)に示すように、シアン用現像装置4Cの静電搬送ローラ42に−110V±80Vを印加してシアントナーctで、このシアン潜像を、イエローやマゼンタ現像と同様に正規現像する。トナー電位は、やはり+60Vで、現像された部分の電位は、−120Vになる。
次に、図12(a)に示すように、ブラック用スコロトロン帯電器2Kのグリッド22に−120Vを印加してOPCベルト1表面を−120Vに均一帯電する。このとき、Y対応部のイエロートナーyt、M対応部のマゼンタトナーmt、R対応部のイエロー及びマゼンタトナーyt、mtはそれぞれ負イオンを浴びてその比電荷q/mを、+8μC/g、+13μC/g、+16μC/gに下げるが、前述したように、極性が反転することはない。
最後に、図12(b)に示すように、残されていた白地肌部(−120V)に、ブラック用書き込み装置3Kで黒潜像を、その地肌対応部を露光して、露光後電位を−20Vよりプラス側にして形成する。なお、白地肌部でなくとも、すでに、Y、M、C、R、G、B、3Cの色が形成されている部分にも同様に黒潜像を書きこみ、黒トナーを加えることが可能である。
そして、図12(c)に示すように、ブラック用現像装置4Kの静電搬送ローラ42に−50V±80Vを印加してブラックトナーktで正規現像して白地肌部に黒トナー像を形成する。
このように、4回のスコロトロン帯電、画像露光、EH現像による正規現像で、OPCベルト1に形成したフルカラートナー像を、転写ローラ5に転写電圧−500Vを印加して、普通紙(転写部材7)上に静電転写し、定着装置6で定着して色再現に優れたフルカラープリントを得る。
このようにして得られたフルカラープリントの画像濃度を、マクベス濃度計で測定したところ、各色とも、目標とする反射濃度1.4を越えて、1.6前後であった。地肌汚れはまったくなく、その反射濃度は、紙の反射濃度と同じく0.06であった。
本発明が可能になるには、従来の現像方式に対して、EH現像では、静電搬送でトナーをホッピングさせて像担持体の潜像に近づけさせて、その地点で、潜像がそこに形成している電界で画像に引き込まれるか、地肌から反発されるかで現像するために現像感度が高いことによる。
つまり、上述したように、先行する画像のトナーの極性反転は、一色目(先行色)を現像した後、二色目(後行色)の均一帯電を行なうとき、一色目の地肌部を選択的に帯電し、一色目のトナーが付着している画像部を帯電しないことで防止することができる。例えば、上記実施形態のように、スコロトロン帯電器を使用し、そのグリッド電圧を、一色目の現像済みの画像部の電位と同じにすることで、容易に実現することができる。
ただし、三色目、四色目の均一帯電のとき、一色目、二色目に現像されたトナーが地肌部になることがあるので、その帯電量は、トナーの有する電荷を中和しない範囲に限定する必要がある。
この場合、感光体の電位を高くすることができないので、低電位で十分に濃度が高くなる高感度な現像方式を使用しなければ十分な画像は得られない。この高感度現像は、トナーがキャリアに付着せず、自由空間にあって弱い電界でもトナーを移動させられる現像方式を採用することで実現できる。この高感度現像方式としては、トナーを静電搬送で、ホッピングさせながら現像する所謂EH(Electrostatic Hopping)現像方式を採用することで、より確実に、トナーの極性反転を生じることなく、1感光体1回転色重ね方式で画像を形成することができるようになる。
このEH現像が高感度現像方式であることについて従来の二成分現像方式との対比で説明する。
従来の現像方式の代表例である二成分現像(磁気ブラシ現像)の現像電位差に対するトナーの単位面積当たりの現像量m/Aは、例えば図14に示すようなものである(「ゼログラフィーの原理と最適化」、著者:Merlin Scharfe 訳者:富士ゼロックス総合研究所 コロナ社 p.65)。
通常のプリントに必要な画像濃度は1.4で、その画像濃度を得るために必要な単位面積当たりのトナー質量m/Aは0.5mg/cm2である。すなわち、従来の磁気ブラシ現像では、画像の電位と現像バイアスとの差、現像電位差は300V必要になる。これは、現像するために、すなわちキャリアよりトナーを剥離してOPC潜像の画像部に付着させるために必要な電位差で、実は、OPCの潜像の地肌部に何らかの理由で付着したトナーをOPCより剥離して磁気ブラシに戻すために同じだけの電位差が必要になる。合わせると、600Vの電位差が必要になる。
そこで、通常のプリンタや複写機などの画像形成装置にあっては、一般的に、像担持体を−700Vに帯電して、画像露光により画像部の電位を−100Vにして、現像バイアス−400Vを印加して現像しているのである。
そのため、従来の現像方式で、正規現像による1感光体1回転色重ね方式で画像を形成しようとしても、像担持体の帯電電位を、少なくとも−700Vにしなければならず、それに比例して、スコロトロン帯電器のコロナワイヤー近傍で発生し、グリッドを抜けて像担持体に到達する負イオンの量も増加するため、トナーの帯電極性は、ただ1回の帯電で反転してしまうことになり、正規現像による1感光体1回転色重ね方式で画像を形成することができない。
なお、非接触のジャンピング現像でも、実際には、磁気ブラシと同様にキャリアからトナーをはがし、また地肌に付いたトナー(非接触とはいえ、トナーはキャリアと像担持体間を激しく往復移動しているため地肌に付着するトナーも発生する)を逆に剥がすために、ほとんど同じ位の電位差が必要になる。
これに対して、EH現像方式においては、現像感度は、図15に示すように非常に高い。この図15より、必要とされる単位面積当たりのトナー質量m/A=0.5mg/cm2を得るために必要な現像電位差は、わずか、70Vであることが分かる。また、EH現像は、基本的に地肌にトナーを接触させないので、それを回収する強い電界は不要で、ただ、ホッピングしたトナーをゆるやかに戻す電界だけが必要である。このために、上記実施形態では、30Vの電位を割いているが、実際には10Vで十分で、0Vでも地汚れになることはない。
つまり、上記実施形態では、画像部と地肌部(非画像部)の電位差を100Vに取ったが、実際にはもっと小さな電位差でも可能であり、その分、トナーの正電荷が中和される割合が減る。これにより、より確実に、トナーの帯電極性の反転を防止することができて、正規現像による1感光体1回転色重ね方式で画像を形成することができるようになる。
次に、本発明の作用効果の理解を深めるために、比較例について説明する。
この比較例では、上記実施形態のEH現像方式の現像装置4に代えて、二成分ソフト接触現像装置を備えた。なお、マグブラシのソフト接触は、マグブラシを伸ばし、OPCベルト1への食い込み量を減らして実現した。なお、使用したトナーは上記実施形態と同じで、その帯電量も同じである。
まず、スコロトロン帯電器2Yで、OPCベルト1表面を、−880Vに帯電する。次に、イエロー潜像を書き込み装置3Yによって相対光強度1.01で、この帯電された表面に書き込む。このときの、地肌(露光)部電位は−280Vである。次に、現像バイアス−580Vで、イエロートナーを使い、ソフトタッチ二成分現像装置で正規現像を行なう。このとき、現像されたイエロートナー層の電位は、上記実施形態と同じく+60Vで、現像後の電位は−820Vとなる。
続いて、スコロトロン帯電器2Mのグリッドに−820Vを印加して、OPCベルト1表面を−820Vに均一に再帯電する。続いて、書き込み装置3Mによって相対光強度1.08で、マゼンタ潜像を書き込み、地肌部の電位を−220Vまで下げる。次に、現像バイアス−520Vで、イエロー現像と同様に、マゼンタトナーで、ソフトタッチ二成分現像装置で正規現像を行なう。現像部分の電位は−760Vになる。
続いて、スコロトロン帯電器2Cのグリッドに−760Vを印加して、OPCベルト1表面を−760Vに均一に再々帯電する。このときの、マゼンタ潜像の地肌部だった部分は、−208Vから552Vも電位が変わるため、その負コロナイオン密度は、−7.3×10―4C/m2と非常に大きい。そのため、その半分でも、そこに現像されたトナーの電荷密度1.0×10―4C/m2の約4倍もあり、トナーの帯電極性は大きくマイナス側に反転してしまう。
次に、書き込み装置3Cで、シアン潜像を書きこみ、現像バイアス−460Vで、同様に、シアントナーで、ソフトタッチ二成分現像装置によって正規現像を行ない、シアントナー像を重ねて形成した。現像された個所の電位はシアントナー電位+60Vを含んで−700Vになった。
最後に、スコロトロン帯電器2Kのグリッド22に−700Vを印加して、3度目の再帯電を行い、OPCベルト1を−700Vに均一帯電し、書き込み装置3Kによって地肌部を露光して黒潜像を書き込む。このとき、地肌に存在したイエロートナー、マゼンタトナーは、また多量の負イオンを受けて、その帯電極性をプラスからマイナスへ大きく変わった。
図示していないが、黒現像後転写前に、コロトロン帯電器を置き、プラスイオンを降らせて、マイナスに反転したイエロートナー及びマゼンタトナーの帯電極性をプラスに戻してから転写した。
その結果、フルカラープリントを得ることができたが、異色トナー間及び同色トナーでも単独で存在する部分と他色トナーと共存する部分でトナーq/mの違いによる転写率の差があり色再現に劣るものとなることが確認された。