JP4818825B2 - インク供給系充填液 - Google Patents

Description

本発明は、溶剤インクを用いるインクジェット装置またはインクジェットヘッドを保管・輸送する際に、インク供給系に充填される充填液であって、インクジェットヘッドノズルの目詰まりを回避し、最終的に置換する溶剤インクとの間で生ずるインクの吐出不良を防止するインク供給系充填液の技術分野に関する。

溶剤インクの吐出調整をプリンタの設置場所で行うには大きな手間がかかるため、プリンタ出荷時に事前に吐出調整を行うことが好ましい。そこで、溶剤インクをヘッドに充填したまま輸送すると溶剤インクの固化に伴うノズル目詰まりを起こしやすかった。それを避けるために、溶剤インクを抜いて洗浄液で洗浄する方法があるが、完全には洗浄しきれず残留したインクの固化が問題であった。
なお、インクジェットヘッド用充填液として、種々の充填液が知られており、例えば、無色の不揮発性有機溶剤、特に水溶性有機溶剤からなる充填液や、水および１，２−ヘキサンジオールを含有する充填液が提案されているが、実質的に水性インクを用いるための充填液である（特許文献１、２）。油性インクを対象とした沸点が１５０〜３５０℃であるアルコール系溶剤を含む非水溶剤からなるインクジェットヘッド用充填液が提案されているが、長期保管におけるインク中の顔料凝集を防止したり、ノズルヘッド付着物を防止することが困難である（特許文献３）。ＵＶインクから光硬化開始剤を除いたインクをヘッド内に充填するインクジェット記録装置が提案されているがＵＶインクのための充填液であり溶剤インクを用いるインクジェット記録装置には不適である（特許文献４）。
特開平９−３２７９３４号公報 特開２００４−２４３５４３号公報 特開２００５−２８８７２８号公報 特開２００５−１３０２号公報

上記問題に対する最も有用な対処方法として、溶剤インクの溶剤成分類似の高沸点有機溶剤をベースにした充填液をインク供給系に充填して保管・輸送する方法があるが、インクに交換する際にインク粒子の飛翔方向不安定やノズル周辺の付着物によるインクの不吐出（ノズル目詰まりの１種）が生じるという欠点を有していた。

本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、溶剤インクを用いるインクジェット装置またはインクジェットヘッドを保管・輸送する際に、インク供給系に充填される充填液であって、インクジェットヘッドノズルの目詰まりを回避し、かつ、最終的に置換する溶剤インクとの間で生ずるインクの吐出不良を防止するインク供給系充填液を提供することを目的とする。

本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
すなわち、本発明は、少なくとも１種類の有機溶剤成分が、化学構造中にグリコールエーテル基を有する溶剤インクを用いたインクジェット装置またはインクジェットヘッドにおいて、インクに代わってインク供給系に充填される充填液であって、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとフッ素系界面活性剤を含有するインク供給系充填液を提供する。
上記本発明において、前記インク供給系充填液の有機溶剤成分の一部が有機アミンであるインク供給系充填液を提供する。
上記本発明において、前記フッ素系界面活性剤が、ノニオン型またはアニオン型であるインク供給系充填液を提供する。
上記本発明において、前記インク供給系充填液のフッ素系界面活性剤の含有量が、１０〜１００００ｐｐｍであるインク供給系充填液を提供する。

本発明により、溶剤インクを用いるインクジェット装置またはインクジェットヘッドを保管・輸送する際に、インクジエットヘッドノズルの目詰まりを回避し、かつ、最終的に置換する溶剤インクとの間で生ずるインクの吐出不良を防止するインク供給系充填液を提供することができた。

本発明を更に詳しく説明する。本発明の溶剤インクを用いるインクジエット装置またはインクジェットヘッドにおいて、溶剤インクに代わってインク供給系に充填される充填液（インク供給系用充填液）は一般的に高沸点で溶剤インクとの相溶性の良好な有機溶剤が選ばれることが知られており、少なくとも沸点が２００℃以上の有機溶剤が好ましい。しかしながら、インク供給系充填液を溶剤インクに置換した後に、インク粒子の飛翔方向が不安定で、ひどい場合にはノズルの内部や周辺に異物付着が生じることがたびたびあった。特に、インク供給系に一度溶剤インクを充填し、インクヘッドの吐出調整を実施し、その後インク供給系の洗浄を十分に行った後、インク供給系にインク供給系充填液を入れる場合でも、インク供給系の洗浄が完全には行われず、長期の保管・輸送後に溶剤インクに置換して再度インクの吐出を行う場合には顕著であった。
本発明者らは、その原因が、（１）従来使用されていたインク供給系充填液と溶剤インクが接触する際にインク成分が不安定になり、インクジエットヘッドノズル内部に付着し、その結果として、インク成分の付着部分が核となったキャビテーション発生や、ノズル周辺の付着物によってインク粒子の飛翔方向が変化やインクの不吐出が生じると推定した。（２）また、溶剤インクと相溶性の高い有機溶剤（後述する本発明に係る充填液用有機溶剤を含む）を主成分とする洗浄液を用いてインク供給系、特にノズルを洗浄する場合、いわゆるソルベントショックによってインク成分の顔料又は樹脂がノズル内あるいはノズル端面に付着し、上記（１）と同様な現象を発生し易い。これらの現象は広義の意味でのノズルの目詰まりと言える。
この広義の意味でのノズルの目詰まりは、インクが顔料インクの場合に顕著に発生する。
そこで、インク供給系充填液や洗浄液と、溶剤インク特に顔料分散型溶剤インクとが接触する際にインク成分が不安定になることを最小限に止め、ノズル内部へのインク成分付着を防止し、インク成分がノズルに付着してもその程度を最小限に止めるインク供給系充填液の組成を検討した。具体的には、溶剤インクの溶剤成分類似の高沸点有機溶剤をベースとし、これに各種添加剤（例えば、顔料分散剤、酸化防止剤、アミン系安定剤など）や一般の界面活性剤を添加したインク供給系充填液の適用を試みたが、顕著な改善効果は得られなかった。そのような状況下、少なくとも沸点が１５０℃以上、好ましくは沸点が２００℃以上の１種類以上の有機溶剤とフッ素系界面活性剤を含有するインク供給系充填液が優れた効果を有することを見出した。その効果は、一般の界面活性剤とは異なり、フッ素系界面活性剤の特に優れた濡れ効果と顔料分散性・洗浄性により、インク供給系内に残留しているインクや、インク供給系内をインク供給系充填液から溶剤インクに置換する際のインク中の顔料、の凝集防止とノズル内への付着防止を付与し、かつ高沸点有機溶剤の併用により、長期の保管でもノズル内が常に湿潤状態にあるためと考えられる。

本発明の溶剤インク中の有機溶剤成分とインク供給系充填液の有機溶剤成分は相溶性があることが好ましく、特に溶剤インク中の有機溶剤成分とインク供給系充填液の有機溶剤成分とが各々類似の化学構造を有する有機溶剤成分であることがより好ましい。
溶剤インク中の有機溶剤成分が、グリコールエーテル、グリコールエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル等の、化学構造中にグリコールエーテル基を有する有機溶剤である場合、インク供給系充填液の有機溶剤成分も化学構造中にグリコールエーテル基を有する有機溶剤を含有することがより好ましい。

本発明のインク供給系充填液を構成する少なくとも沸点が１５０℃以上、好ましくは沸点が２００℃以上の１種類以上の有機溶剤としては、n−ヘキシルアルコール（沸点１５３℃）、イソヘプチルアルコール（沸点１６８℃）、２−エチルヘキシルアルコール（沸点１８４℃）、ｎ−オクチルアルコール（沸点１９４℃）、３−メチル−３−メトキシブタノール（沸点１７４℃）、３−メトキシブタノール（沸点１６０℃）等のアルコール類、テレピン油（沸点１５５℃）、リモネン（沸点１７８℃）、工業用揮発油（沸点１５０℃以上）、テトラヒドロナフタレン（沸点２０７℃）、デカヒドロナフタレン（沸点１９０℃）等の炭化水素類、エチレングリコール（沸点１９７℃）、ジエチレングリコール（沸点２４４℃）、チオジエチレングリコール（沸点１６８℃）、トリエチレングリコール（沸点２８７℃）、プロピレングリコール（沸点１８７℃）、ジプロピレングリコール（沸点２３２℃）、トリプロピレングリコール（沸点２６５℃）等のグリコール類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート（沸点１５６℃）、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート（沸点１９１℃）、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート（沸点２１９℃）、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート（沸点２３８−２４８℃）、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート（沸点２００℃）、トリエチレングリコールモノメチルエーテルのホウ酸エステル（沸点２７５℃）等のグリコールエーテルエステル類、エチレングリコールモノヘキシルエーテル（沸点２０８℃）、エチレングリコール２−エチルヘキシル（沸点２２５℃）、エチレングリコールフェニルエーテル（沸点２４５℃）、プロピレングリコールモノエチルエーテル（沸点１５８℃）、プロピレングリコールプロピルエーテル（沸点１５０℃）、プロピレングリコールモノブチルエーテル（沸点１７０℃）、ジエチレングリコールモノメチルエーテル（沸点１９４℃）、ジエチレングリコールジメチルエーテル（沸点１６２℃）、ジエチレングリコールモノエチルエーテル（沸点２０３℃）、ジエチレングリコールジエチルエーテル（沸点１８９℃）、ジエチレングリコールモノブチルエーテル（沸点２３０℃）、ジエチレングリコールヘキシルエーテル（沸点２６０℃）、ジエチレングリコール２−エチルヘキシルエーテル（沸点２７０℃）、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル（沸点１８８℃）、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル（沸点１９８℃）、ジプロピレングリコールモノブチルエ−テル（沸点２１５℃）、ジプロピレングリコールプロピルエーテル（沸点２１０℃）、トリエチレングリコールモノメチルエーテル（沸点２４９℃）、トリエチレングリコールモノエチルエーテル（沸点２５６℃）、トリエチレングリコールモノブチルエーテル（沸点２７１℃）、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル（沸点２４３℃）、トリエチレングリコールジメチルエーテル（沸点２１６℃）、テトラエチレングリコールジメチルエーテル（沸点２７５℃）等のグリコールエーテル類、２，２，４−トリメチル−１，３−ペンタンジオールモノイソブチレート（沸点２５３℃）、トリエチレングリコールジ（２−エチルブチレート）（沸点１８１℃）、プロピレンカーボネート（沸点２４２℃）、乳酸エチル（沸点１５５℃)、乳酸ブチル（沸点１８７℃）、アセト酢酸メチル（沸点１７２℃）、アセト酢酸エチル（沸点１８１℃）、二塩基酸エステルＤＢＥ（沸点２０５℃）、３−メチル−３−メトキシブチルアセテート（沸点１８８℃）等のエステル類、２−ヘプタノン（沸点１５１℃）、ジイソブチルケトン（沸点１７０℃）、イソホロン（沸点２１５℃）、ジアセトンアルコール（沸点１６８℃）、アセトフェノン（沸点２０２℃）、シクロヘキサノン（沸点１５５℃）、γ−ブチルラクトン（沸点２０４℃）、２−（１−シクロヘキセニル）シクロヘキサノン（沸点１６８℃）等のケトン類、トリエタノールアミン（沸点３３５℃）、Ｎ−メチルジエタノールアミン（沸点２４７℃）、Ｎ，Ｎ−ジエチルエタノールアミン（沸点１６３℃）、Ｎ，Ｎ−ジブチルエタノールアミン（沸点２３０℃）等のアルコールアミン類、トリｎ−ブチルアミン（沸点２１７℃）等の有機アミン類、Ｎ−メチルー２−ピロリドン（沸点２０４℃）等のピロリドン類、などがあるがこれらに限られたものではない。また、これらの有機溶剤は溶剤インクと相溶性がよければ、溶剤インク組成に限定されるものではない。また、高沸点の有機溶剤は一般的に高粘度であり、希釈剤として低粘度（低沸点）の有機溶剤を組み合わせてもよい。
溶剤インクの有機溶剤が化学構造中にグリコールエーテル基を有するグリコールエーテル系の場合であって、インク供給系充填液の有機溶剤も化学構造中にグリコールエーテル基を有するグリコールエーテル系である場合、その優れた相溶性ゆえに、本発明のインク供給系充填液と組み合わせた場合に、インク供給系充填液として優れた性能を示し、長期の保管・輸送後に溶剤インクに置換しても上述した広義のノズル目詰まりに基づくインク粒子の飛翔方向の変化やインクの不吐出を生じることがない。
上記有機溶剤のうち有機アミンは、グリコールエーテル系有機溶剤の酸化に伴って発生する微量酸成分や微量混入している塩素イオンによってインクジェットヘッド材料が腐食を受けやすい場合は、少量の添加によって腐食防止効果も併せ持つという利点も有する。

本発明のインク供給系充填液の必須成分であるフッ素系界面活性剤は、アニオン型、ノニオン型、カチオン型のいずれでもよく、化合物としては例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基と親水性基を化学構造中に含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油性基を化学構造中に含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水性基と親油性基を化学構造中に含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油性基を化学構造中に含有するウレタン、パーフルオロアルキル燐酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルアミン化合物、パーフルオロアルキル第四級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン、非解離性パーフルオロアルキル化合物、フッ素シリコーンオイルなどフッ素原子含有の低分子化合物が挙げられる。
また一般の市販のフッ素系界面活性剤としては、大日本インキ化学工業（株）製メガファックＦ−１１０、同Ｆ−１１４、同Ｆ−１２０、同Ｆ−１４２Ｄ、同Ｆ−１４４Ｄ、同Ｆ−１７２Ｄ、同Ｆ一１７３、同Ｆ−１７７、同Ｆ−１８３、同Ｆ−１９１、同Ｆ−４４５、同Ｆ−４７０、同Ｆ−４７１、同Ｆ−４７９、同Ｆ−４９３、同Ｆ−４９４（以上、大日本インキ化学工業（株）製）、住友スリーエム（株）製フロラードＦＣ−９３、同ＦＣ−９５、同ＦＣ−１２９、同ＦＣ−１７０Ｃ、同ＦＣ−１７１、同ＦＣ−４３０、同ＦＣ−４３１、ＥＦ３０１、同３０３、同３５２（以上、住友スリーエム（株）製）、新秋田化成（株）製エフトップＥＦ−１２２Ｂ、同ＥＦ８０２、旭硝子（株）製アサヒガードＡＧ７１０、サーフロンＳ−３８２、同ＳＣ−１０１、同ＳＣ−１０２、同ＳＣ−１０３、同ＳＣ−１０４、同ＳＣ−１０５、同ＳＣ−１０６（以上、旭硝子（株）製）、裕商（株）製ＢＭ−１０００、ＢＭ−１１００（裕商（株）製）、（株）ネオス製ＮＢＸ−１５、などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を挙げることができるが、これらに限られたものではなく、複数使用しても良い。これらの中でも、上記メガファックＦ−１１４（アニオン性）、同Ｆ−４４５（ノニオン性）、同Ｆ−４７０（ノニオン性）、同Ｆ−４７１（ノニオン性）、同Ｆ−４７９（ノニオン性）、同Ｆ−４９３（アニオン性）、同Ｆ−４９４（アニオン性）は洗浄力や顔料分散性に優れていることから好ましい。これらの中でも特にノニオン性のフッ素系界面活性剤は、単独で液状であり、万が一充填液の有機溶剤成分が揮発してもノズル内の乾固を防止する機能を有する。
本発明のインク供給系充填液のフッ素系界面活性剤の含有量は、特に制限はないが、少ないとインク供給系充填液によって発揮される上記効果が少なく、多すぎるとインク供給系充填液の粘度の上昇や、インク供給系充填液の有機溶剤成分の揮発に伴う粘度上昇が生じることから、好ましくは１０〜１００００ｐｐｍ、より好ましくは１０〜５０００ｐｐｍである。
上記フッ素系界面活性剤の添加により調整されたインク供給系充填液の表面張力は１５〜２６ｍＮ／ｍの範囲が特に好ましい。
本発明のインク供給系充填液において、その他必要に応じて沸点１５０℃未満の有機溶剤を併用（混合）することが可能であり、インクが顔料分散型溶剤インクの場合は、顔料分散剤、その他酸化防止剤、各種安定剤、界面活性剤等を併用（添加）することも可能である。

本発明のインク供給系充填液は、溶剤インクの組成に係わらず溶剤インクとインク供給系充填液が相溶する限り、インク供給系充填液として優れた性能を有することから、様々な溶剤系インクを用いたインクジェットシステムに適用可能である。
また、本発明のインク供給系充填液をインク供給系に充填する前に、低粘度でインクとの相溶性に優れた溶剤からなる洗浄液で事前にインク供給系を洗浄することも可能である。

以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
（実施例１）
（準備）
まず、本発明に係るインク供給系充填液として、化学構造中にグリコールエーテル基を有する有機溶剤（テトラエチレングリコールジメチルエーテル（沸点２７５℃））を５０ｗｔ％以上含み、かつ、フッ素系界面活性剤として、パーフルオロアルキル基と親水性基と親油性基とを化学構造中に含有するオリゴマー（ノニオン型）（大日本インキ化学工業（株）製メガファックＦ−４７９）を、それぞれ１０ｐｐｍ、１０００ｐｐｍ、１０００ｐｐｍ、１００００ｐｐｍ添加してなるインク供給系充填液をそれぞれ調製した。
また、溶剤インクとしては、溶剤インク中の有機溶剤成分がジエチレングリコールメチルエチルエーテルを７５ｗｔ％含有する顔料分散型溶剤インクを使用した。このとき、上記で調製した本発明に係るインク供給系充填液と、実施例１で使用する溶剤インクとを、１：１で混合したとき相溶可能であり、したがって非常に優れた相溶性を有することを確認した。
（実機テスト）
溶剤インクを用いるインクジェット装置（溶剤型インクジェット装置）に新品ヘッドを装着し、洗浄液（ジエチレングリコールジメチルエーテル）でインク供給系（インク供給管及びインクジェットヘッド（ノズル））を洗浄後、インク供給系に溶剤インクを充填し、インクジェットヘッドの吐出調整を実施した。その後、溶剤インクを抜いて溶剤インクの洗浄液でインク供給系の洗浄を十分に行った。その後、インク供給系に、上記で調製した本発明に係るインク供給系充填液を充填し、６０℃で７日間、−２０℃で７日間放置し、長期の保管・輸送と同様と考えられる状況を経過させた。
その後、インク供給系から、インク供給系充填液を排出し、常温で３０分放置した。
その後、インク供給系に溶剤インクを再度充填し、テスト作図・印字を行った。
（評価）
（１）テスト作図に、抜け（インクの不吐出）が実質的になく、曲がりがないことを確認した。
（２）更に、ベタ印字によって、インク粒子の飛翔方向不安定（ドットの飛行曲がり）に起因して生じるスジの発生（目視でスジがあるように見受けられる現象）がないことを確認した。
（３）更に、インクジェットヘッドのノズル面（吐出口）を顕微鏡によって確認したところ、ノズル面に付着物がない（ノズル目詰まりの１種がない）か、あるいはノズル面に付着物が実質的にないことを確認した。

（比較例１）
実施例１において、フッ素系界面活性剤を未添加としたこと以外は実施例１と同じインク供給系充填液を用い、その他は実施例１と同様とした。
その結果、インクの不吐出が多く顕著であること、スジの発生が顕著であることを確認した。また、ノズル面（吐出口の内周面及び吐出口の周辺）に付着物がありヘッドの交換が必要であった。
尚、実施例１及び比較例１で用いたインク供給系充填液について、粘度、表面張力の測定（常温２５℃）を行った。その結果を図１（物性値変化）に示す。図１から、フッ素系界面活性剤が未添加である比較例１の表面張力約３３．５ｍＮ／ｍに比べ、フッ素系界面活性剤を添加した実施例１では表面張力が低くなっており、特にフッ素系界面活性剤を１０００ｐｐｍ前後添加した場合においては表面張力が約２６ｍＮ／ｍ以下と更に低くなっており、濡れ効果に優れることが判った。また、粘度の上昇を抑える観点からは、フッ素系界面活性剤の添加量は約１００００ｐｐｍ以下が好ましいことが判った。

（実施例２）
インク供給系充填液における有機溶剤として、実施例１で使用した有機溶剤にトリｎ−ブチルアミン（沸点２１７℃）を０．１ｗｔ％添加した有機溶剤を用いたこと以外は実施例１と同様とした。
その結果は、実施例１と同様であった。

（実施例３）
インク供給系充填液におけるフッ素系界面活性剤として、実施例１とは異なるフッ素系界面活性剤（パーフルオロブチルスルホン酸塩含有フッ素系界面活性剤：メガファックＦ−４１１（アニオン型）：大日本インキ化学工業（株）製）を用いたこと以外は実施例１と同様とした。
その結果は、実施例１と同様であった。

（実施例４）
実施例１におけるインク供給系充填液におけるフッ素系界面活性剤として、メガファックＦ−４７９（１０００ｐｐｍ）単独に替えて、メガファックＦ−４７９（１０００ｐｐｍ）とメガファックＦ−４４５（１０００ｐｐｍ）（以上いずれも大日本インキ化学工業（株）製）を含有する充填液（粘度４．００ｍＰａ・ｓ、表面張力２５．９ｍＮ／ｍ）を用いたこと以外は実施例１と同様とした。
その結果は、実施例１と同様であった。
特に、６０℃で７日間の高温保管後、ノズル吐出異常は全く認められなかった。

（実施例５）
インク供給系充填液における有機溶剤として、実施例１とは異なる有機溶剤（プロピレンカーボネート（沸点２４２℃）を用いたこと以外は実施例１と同様とした。
その結果は、実施例１と同様であった。

（実施例６）
実施例１で使用した溶剤インクとは異なる顔料分散型溶剤インク（有機溶剤はシクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの混合物）を用いたこと以外は実施例１と同様とした。
その結果は、実施例１と同様であった。

上述したように、本発明に係るインク供給系充填液は、インク供給系に一度溶剤インクを充填し、例えばインクヘッドの吐出調整を実施し、その後溶剤インクを抜いてインク供給系の洗浄を十分に行った後、インク供給系にインク供給系充填液を充填し、その状態で保管又は輸送等を行い、その後インク供給系からインク供給系充填液を排出し、その後インク供給系に溶剤インクを再度充填する際における、溶剤型インクジェット装置や溶剤型インクジェットヘッドを保管・輸送する用途又は保管・輸送方法として有用である。
上記において、溶剤インクを抜いてインク供給系の洗浄を行う際に、低粘度であって溶剤インクと相溶性の高い有機溶剤（上述した本発明に係る充填液用有機溶剤を含む）を主成分とする洗浄液を用いてインク供給系、特にノズルを洗浄することは、いわゆるソルベントショックによって溶剤インク成分の顔料又は樹脂がノズル内あるいはノズル端面に付着するなどの現象の発生を回避する手段として有用であり、上記保管・輸送する用途において又は上記保管・輸送方法として、その効果をより高めることができるので、有用である。
尚、本発明に係るインク供給系充填液は、溶剤型インクジェット装置や溶剤型インクジェットヘッドにおけるインク供給系に溶剤インクを初めて充填する前に、溶剤型インクジェット装置や溶剤型インクジェットヘッドにおけるインク供給系に本発明に係るインク供給系充填液を充填した状態で、溶剤型インクジェット装置や溶剤型インクジェットヘッドを保管・輸送する用途にも利用できる。

インク供給系充填液におけるフッ素系界面活性剤の添加量と粘度、表面張力との関係を示す図である。

Claims (4)

1. 少なくとも１種類の有機溶剤成分が、化学構造中にグリコールエーテル基を有する溶剤インクを用いたインクジェット装置またはインクジェットヘッドにおいて、インクに代わってインク供給系に充填される充填液であって、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とするインク供給系充填液。
2. 前記インク供給系充填液の有機溶剤成分の一部が有機アミンである請求項１記載のインク供給系充填液。
3. 前記フッ素系界面活性剤が、ノニオン型またはアニオン型である請求項１〜２記載のインク供給系充填液。
4. 前記インク供給系充填液のフッ素系界面活性剤の含有量が、１０〜１００００ｐｐｍである請求項１〜３記載のインク供給系充填液。

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