JP4818498B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極、非水電解質、および負極からなる非水電解質二次電池に関し、特に、負極の材料として、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を用いる非水電解質二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化に伴い高容量の二次電池が必要になってきている。その負極材料として金属材料や炭素材料などが検討されている。しかし、金属材料を使用した場合、充放電を繰り返すと溶媒中の金属イオンがデンドライト状に析出し、最終的には両極を短絡させてしまうという問題がある。一方、炭素材料を使用した場合は、炭素材料の層間への金属イオンの電気化学的挿入・脱離反応となるため短絡の問題が無い。炭素材料は黒鉛から無定形炭素までの幅広い横造ないし形態を有するとともに、それらの物性値あるいは炭素の六角網面が形成する微細組織が電極の性能を大きく左右するため、物性値あるいは微細組織を規定した種々の炭素材料が提案されている。
【0003】
非水電解質二次電池、特にリチウム二次電池の負極に使用されている炭素材料は、1000℃前後で焼成された炭素系材料と2800℃前後で焼成された黒鉛系材料とに大別される。
【0004】
1000℃前後で焼成された炭素系材料を用いた場合、電解液との反応が少なく、電解液の分解が起きにくいという利点を有するが、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が大きいという欠点がある。
【0005】
一方、2800℃前後で焼成された黒鉛系材料を用いた場合、リチウムイオンの放出に伴う電位の変化が小さいという利点を有するが、電解液と反応して電解液の分解が生じ、さらには黒鉛材料が破壊されるという欠点があることが知られている(J.Electrochem.Soc.,117,222(1970))。その結果、2800℃前後で焼成された黒鉛系材料では、充放電効率の低下、サイクル特性の低下、電池の安全性低下などの問題が生じる可能性がある。特定の電解液を用いる場合には、そのような問題を生じさせることなく黒鉛系材料が使用可能であることが知られているが(J.Electrochem.Soc.,137,2009(1990))、電解液が限定されるため、電池の温度特性、サイクル特性などの改善が電解液の種類によりかなり制限されるという問題点がある。
【0006】
したがって、電解液の分解や黒鉛系材料の破壊を起こさない電解液と炭素電極との組み合わせを開発することが本電池系の重要な課題といえる。
【0007】
これらの問題を解決すべく、特開平4−368778号公報、特開平4−370662号公報、特開平5−94838号公報、特開平5−121066号公報などでは高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を提案している。この表面改質炭素材料は電解液の分解を抑えるので、電池容量の増加、サイクル特性の改善などに対して有効である。
【0008】
一方、非水電解質二次電池の電極設計には、より多くの活物質が電極の単位体積に充填されることが重要である。電極を作製する場合、活物質粉末と結着剤を混合し、分散溶媒を加えたペースト状の電極合剤を作製し、これを集電体である金属箔に塗布する。その後、分散溶媒を乾燥する方法が一般的に用いられている。この際、電極合剤の集電体への圧着と電極厚みの均一化、電極容量の向上を目的として、さらに圧縮成形を行なう圧縮成形工程を設けるのが一般的である。この圧縮成形工程により、電極のかさ密度は高くなり、電池の単位体積当たりのエネルギー密度が高くなる。
【0009】
黒鉛系材料は炭素系材料に比べて結晶性、真密度が高い。したがって、黒鉛系材料を用いて電極を構成すれば、比較的、充填性の高い電極が得られ、電池の単位体積あたりのエネルギー密度を高めることができる。さらに、活物質にはかさ密度を高めても電極特性が低下しないことが要求される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を用いる二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度は、まだ満足しうる程に大きなものではなかった。
【0011】
これはプレスもしくは圧縮成形の工程により表面非晶質黒鉛を含む電極のかさ密度(みかけ密度もしくは充填密度)が上がりにくいことが一因していると考えられる。なぜなら、表面非晶質黒鉛は、高結晶性の黒鉛材料の表面に低結晶性の炭素が被覆されており、この低結晶性の炭素の真密度は、高結晶性の黒鉛材料の真密度よりも低いことが原因の一つが考えられる。
【0012】
負極のかさ密度を上げるためにはプレス圧力を高くすることが必要である。しかしながら、プレス圧力を高くすると黒鉛材料の表面に覆われている低結晶性の炭素に亀裂、さらには割れを生じる場合があり、被覆の効果が薄れるという問題が発生する可能性がある。また、プレス圧力を高くする場合にあっては、プレス中に負極が集電体である金属箔などから剥がれやすくなり、プレス側に付着したりする可能性がある。さらに、均一にプレスされないことにより、充放電中に負極が集電体から剥離・脱落し、そのためサイクル特性を損なう場合もあった。
【0013】
本発明は、活物質である高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が被覆した黒鉛材料、すなわち、表面非晶質黒鉛の充填性が高く、良好な電極特性を示す炭素負極を有する非水電解質二次電池を得ることを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
正極と、非水電解質と、負極とを有し、前記負極の材料である負極材料に、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を有するとともに、前記負極材料に、前記表面非晶質黒鉛の充填性を向上させる充填助剤を含有することにより問題点が解決することが判明した。
【0015】
具体的には、プレスもしくは圧縮成形の工程において、充填助剤を含有することにより、高結晶性黒鉛の表面に覆われている低結晶性の炭素材料の亀裂、割れなどを防止し易くするとともに、かさ密度、あるいは活物質密度の高い負極を作製し易くすることを特徴としている。従来、活物質密度1.4g/cm3程度では、充填助剤を使用せずに作製することができたが、さらなる高エネルギー密度化を目指して活物質密度1.4g/cm3以上、特に、1.5g/cm3以上の電極を作製するにしても、プレス回数を減らすことが可能である点で効果的である。
【0016】
本発明に係る非水電解質二次電池の負極材料に含有される充填助剤とは、高結晶性黒鉛の表面に覆われている低結晶性の炭素材料の亀裂、割れなどを生じさせることなく、電極内により多くの活物質を充填させて、活物質密度を高くするために含有させる材料を意味する。
【0017】
本来であれば、活物質以外の材料を含有させた場合、電極中に活物質以外の材料が入るため、活物質密度が上がりにくくなると考えるのが一般的である。しかし、本発明者は、充填性・流動性が低い材料に対して充填助剤を加えることにより、活物質以外の材料が含有しているにもかかわらず、逆に電極の活物質密度が高くなる新知見を見い出し、かかる事実に基づいて本発明を完成させるに至ったものである。
【0018】
かさ密度(みかけ密度もしくは充填密度)とは、活物質および活物質以外の含有物である結着剤などの全質量を、その電極合剤の占める体積で除したものである。すなわち、かさ密度=電極合剤の全質量/電極合剤の占める体積の式により、表すことができる。粉体粒子の充填構造は粒子の大きさと形状、粒子間相互作用などに左右されるが、充填構造を定量的に議論する指標の一つとしてはかさ密度や充填率が使用されている。
【0019】
一方、活物質密度とは電極の単位体積中に占める活物質の重量である。活物質密度は活物質の真密度以上にはならず、真密度との差は活物質以外のバインダーなどの含有物、電極中の空隙などの体積変化によるものである。
【0020】
充填助剤の含有量は、負極材料の0.1〜30重量部であることが好ましい。充填助剤の含有量が0.1重量部より少ないと、充填助剤の含有している効果が現れにくい。また、充填助剤の含有量が30重量部より多いと活物質密度が高くなり難く、実質的な充放電容量が小さくなるので実用的ではない。あるいは、充填助剤そのものが電気化学的にLiイオンの挿入・脱離するものでは電極特性に反映してしまい表面非晶質黒鉛の電極特性が活かせないなどの欠点が生じてくる。ここでの重量比率は表面非晶質黒鉛に対する割合を示し、電極材料としては他に結着剤を含むことが可能である。
【0021】
結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、合成ゴム類などを用いることができるがこれに限定されるものではない。結着剤は1重量部より少ないと結着能力がなくなってしまい、30重量部より多い(添加する結着剤により重量部は多少異なる)と電極内に含まれる活物質の割合が減り、電極の抵抗しいては分極などが大きくなり充放電容量が小さくなるため実用的ではない。なお、負極作製において結着性を上げるために各々の結着剤の融点(Tm)前後の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0022】
本発明における表面非晶質黒鉛とは、高結晶性の黒鉛材料を芯材として、表面に気相法、液相法、固相法などの手法により、該黒鉛材料の表面に結晶性の低い炭素を付着させることによって得ることができる。芯材に用いる高結晶性黒鉛は、粒子状(鱗片状ないし塊状、繊維状、ウイスカー状、球状、破砕状など)の天然黒鉛、人造黒鉛、あるいは、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末などの黒鉛化品の1種または2種以上を使用することができる。
【0023】
ここで、芯材となる黒鉛材料として、好ましくはX線広角回折法による(002)面の平均面間隔(d002)が0.335〜0.340nmで、(002)面方向の結晶子厚み(Lc)が10nm以上(より好ましくは40nm以上)で、(110)面方向の結晶子厚み(La)が10nm以上(より好ましくは50nm以上)であることが好ましい。平均面間隔が0.340nmより大きい場合、あるいは、Lc、Laが10nmより小さい場合には、炭素材料の結晶性が充分ではなく、被覆炭素材料を作製した際に、リチウムの溶解析出に近い低電位部分(Liの電位基準で0〜300mV)の容量が十分ではなくなるので好ましくない。
【0024】
なお、X線広角回折法による結晶子の大きさ(Lc、La)を判定する方法としては、公知の方法、例えば“炭素材料実験技術 1 p55〜63 炭素材料学会編(科学技術社)” に記載されている方法を適用することが可能である。また、下記に示す方法でX線広角回折法による結晶子の大きさ(Lc、La)を測定することも可能である。すなわち、試料が粉末の場合はそのままで、微小片状の場合にはメノウ乳鉢で粉末化し、試料に対して約15重量%のX線標準用高純度シリコン粉末を内部標準物質として加え混合し、試料をセルにつめ、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法によって広角X線回析曲線を測定する。曲線の補正には、いわゆるローレンツ、偏向因子、吸収因子、原子散乱因子などに関する補正は行なわず次の簡便法を用いる。すなわち、(002)回折に相当する曲線のベースラインを引き、ベースラインからの強度をし直して(002)の面の補正回析曲線を得る。そして、補正回析曲線において、ピーク高さの半分の位置におけるいわゆる半価幅βを用いてC軸方向の結晶子大きさLcをLc=(K・λ)/(β・cosθ)で求める。ここで、λは1.5416オングストロームであり、θは回折角である。同様にLaも測定することが可能である。
【0025】
芯材となる黒鉛材料としては、アルゴンレーザーラマンによる1580cm-1付近のピーク強度比に対する1360cm-1付近のピーク強度比(以後R値と記す)が、0.5以下(より好ましくは0.4以下)であることが好ましい。R値が0.5を超える場合には、炭素材料の結晶性が充分ではなく、被覆炭素材料を作製した際にリチウムの溶解析出に近い低電位部分(Liの電位基準で0〜300mV)の容量が十分ではなくなるので好ましくない。
【0026】
芯材となる黒鉛材料の粒径分布は、0.1〜150μm程度であることが好ましい。表面非晶質黒鉛の粒径は、実質的に芯材である黒鉛材料の粒径に依存するため、芯材の粒径により最終生成物の粒径もほぼ規定されることになる。芯材の粒径が0.1μmよりも小さい場合には電池のセパレーターの空孔を通して内部短絡を引き起こす危険性が高くなる可能性がある。また、芯材の粒径が150μmよりも大きくなる場合には、電極の均一性、活物質の充填密度の高い電極を作製する工程上でのハンドリング性などが低下するのでいずれも好ましくない。
【0027】
高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料を形成する手法には気相法、液相法、固相法を適用することが可能である。
【0028】
気相法とは、気体状の原料、あるいは液体状の原料を噴霧、あるいはバブリングなどの手法により反応系内に輸送し、原料の熱分解によって高結晶性黒鉛材料の表面に気相から炭素を形成させる方法である。熱分解温度としては原料によって異なるが、450〜1500℃程度の温度範囲で行うことができる。原料としてはメタン、エタン、プロパンなどの脂肪族飽和炭化水素、プロピレンなどの脂肪族不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ペリレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。さらに、これらの芳香族炭化水素から誘導されるカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド化体なども用いることができる。原料の供給速度は材料によって適宜設定可能であるが、原料濃度2×1021〜2.6×2023分子/L、供給速度0.05〜20モル/時間、流速0.5〜70cm/分の範囲内で設定することが好ましい。また、適宜アルゴン、窒素などの不活性ガスをキャリアガスとして用いることも可能であり、また水素を添加して、気相中でのすすの発生を抑えるなどの方法も考えられる。
【0029】
液相法とは、炭素前駆体が液相を経由して炭素化される原料を黒鉛の表面に付着させ、それらを焼成する事により表面に炭素を形成する方法である。原料としてはナフタレン、フェナントレン、アセナフチレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレンなどの芳香族炭化水素、これらを加熱加圧下で重縮合して得られるタールあるいはピッチ類、あるいはこれらの芳香族炭化水素の混合物を主成分とするタール、ピッチ、アスファルト、油類などがあげられ、これらの出発原料として石油系および石炭系を問わない。本発明においては、上記の芯材となる炭素材料と重質油などとを混合し攪拌処理する。攪拌方法としては、特に限定されず、たとえば、リボンミキサー、スクリュー型ニーダー、万能ミキサーなどを使用する機械的攪拌方法などが挙げられる。攪拌処理条件(温度および時間)は原料(芯材と被覆用重質油)の成分、混合物の粘度などに応じて適宜選択される。攪拌時の雰囲気としては、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれであってもよく、減圧下で攪拌する場合は、芯材と重質油とのなじみが向上するので好適である。本発明においては、芯材と被覆層とのなじみを改善する、被覆層の厚さを均一とする、被覆層の厚さを大きくするなどのために、必要ならば上記の混合攪拌工程を複数回繰り返すことも可能である。また、引き続く洗浄工程に先立って、被覆された芯材を一旦分離した後、洗浄工程に供することも可能である。
【0030】
固相法とは、炭素前駆体が固相を経由して炭素化される原料を黒鉛の表面に付着させ、それらを焼成する事によって表面に炭素を形成する方法である。樹脂の中には明らかな溶融状態を経ずに熱分解が進み炭素化が進むが、そのような樹脂を高結晶性黒鉛の表面に付着させるには、溶剤に溶解する融点以上の温度に加熱するなどの手法により固溶状態にし、上述した液相法の説明に記載した手法により混合し、表面に付着させる方法が挙げられる。また樹脂と黒鉛材料とを混合し、焼成時に樹脂の融点付近で保持することによって混合する事も可能である。具体的な原料としては、ポリイミド樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)などの共役系樹脂、フェノール樹脂;フルフリルアルコール樹脂;セルロース;ポリアクリロニトリル、ポリ(α−ハロゲン化アクリロニトリル)、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂もしくはメタクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル樹脂およびこれらの共重合体樹脂などを使用することが可能である。また、焼成条件としては上述した液相法に記載の焼成方法、焼成雰囲気が適用可能である。
【0031】
なお、低結晶性炭素材料の結晶性については特に限定はされないが、基本的には芯材に比べて結晶性の低いもの、つまりd002、R値などが大きいものを採用することにより、表面非晶質黒鉛としての効果が得られる。X線回折では、その材料のバルクの性質が規定されるため、表面層が薄い場合には大きな差となって表れないこともあるが、たとえば、この場合、表面の物性を測定できるラマン測定によって測定されるR値を有効に用いることができる。より好ましくは低結晶性の炭素材料はd002が0.34nmより大きく、R値は0.5より大きい(より好ましくは0.4より大きい)ものであり、これらは表面に付着させる炭素材料のCVD条件や種々原料の焼成条件を同じにして擬似的に表面の炭素材料のみを作成し、その物性を測定することによって間接的に規定することができる。
【0032】
このようにして得られた炭素材料を600〜2500℃程度の温度において焼成することにより、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性炭素が付着した表面非晶質黒鉛を得ることができる。表面の炭素材料の結晶性はその焼成温度にて制御可能である。また、焼成時の雰囲気としては、還元雰囲気中、不活性ガス気流中、不活性ガスの密閉状態、真空状態などの非酸化性雰囲気が挙げられる。焼成温度にかかわらず、昇温速度は1〜300℃/時間程度の範囲から適宜選択される。また、焼成に先立ち、炭素前駆体が被覆された高結晶性黒鉛を洗浄工程に供してもよい。洗浄工程を加えることにより、炭素前駆体の低分子成分を取り除くことができ、炭素前駆体からの炭化率を向上させることができるとともに、粒子同士が焼成の際に融着、あるいは凝集を抑えるといった効果が得られる。ここで、洗浄に用いられる有機溶媒としては、トルエン、キノリン、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、メチルナフタレン、アルコール類、石炭系油、石油系油などが挙げられる。これらの中では、トルエン、キノリン、アセトン、ベンゼン、キシレン、メタノール、石炭系軽油・中油、石油系軽油・中油などがより好ましい。
【0033】
洗浄工程においては、溶媒の種類、洗浄時間、洗浄温度などを選択することにより、被覆層の厚み、残存する重質油成分などを調整することが可能である。次いで、被覆炭素材料と有機溶媒との分離工程は、遠心分離、圧搾濾過、重力沈降などの手法により行われる。分離された被覆炭素材料の乾燥は、通常100〜400℃の範囲で行われる。このようにして得られた乾燥被覆炭素材料は、炭化処理、さらには黒鉛化処理を行っても、芯材粒子周囲のピッチ成分は維持され、粒子同士が融着ないし凝集することがほとんど生じない。
【0034】
本発明の正極としては、たとえばリチウムを含有した酸化物を正極活物質として用いることができる。これら活物質としてLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiFeO2やこの系列のLiMl-XNXO2(ここでMはFe、Co、Ni、Mnのいずれかであり、Nは遷移金属、4B族、あるいは5B族の金属を表す。0≦X≦1)、LiMn2O4、およびLiMn2-XNXO4(ここでNは遷移金属、4B族、あるいは5B族の金属を表す。0≦X≦2)、LiVO2などが挙げられ、これに導電剤、結着剤および場合によっては、固体電解質などを混合して形成される。この混合比は活物質100重量部に対して、導電剤を1〜50重量部、結着剤を1〜30重量部とすることが好ましい。
【0035】
導電剤としてはカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチエンブラック、サーマルブラック、もしくはチャンネルブラックなど)などの炭素類や、グラファイト粉末、金属粉末などを用いることができるが、これに限定されるものではない。結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、合成ゴム類などを用いることができるがこれに限定されるものではない。導電剤が1重量部より少ないと、電極の抵抗しいては分極などが大きくなり充放電容量が小さくなるため実用的ではない。導電剤が50重量部より多い(混合する導電剤の種類により重量部は変わる)と電極内に含まれる活物質の割合が減るため正極としての放電容量が小さくなる。結着剤が1重量部より小さいと結着能力がなくなってしまい、結着剤が30重量部より多いと導電剤の場合と同様に、電極内に含まれる活物質量が減り、電極の抵抗あるいは分極などが大きくなり放電容量が小さくなるため実用的ではない。正極作製において結着性を上げるために各々の結着剤の融点(Tm)前後の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0036】
本発明の非水電解質(イオン導電体)としては、有機溶媒系電解液を好適に用いることができる。有機溶媒系電解液の溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどを使用することが可能であり、これらの2種以上の混合溶媒を使用することも可能である。また、支持電解質塩として、過塩素酸リチウム、4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、6フッ化ひ素リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、塩化アルミン酸リチウムなどのリチウム塩が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を混合して使用される。前記で選ばれた有機溶媒に支持電解質塩を溶解することによって有機溶媒系電解液を調製する。なお、有機溶媒系電解液を調製する際に使用する有機溶媒、支持電解質塩は上記に掲げたものに限定されない。
【0037】
さらに、イオン導電体の代表的形態としては固体電解質が挙げられる。有機溶媒を含む固体電解質の形成方法としては、上記有機溶媒にモノマーなどを混合し、架橋反応を含む重合反応をさせて固体化することができる。モノマーとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらモノマーは1種または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。モノマーの溶媒に対する量は、少なすぎると固体化が難しく、多すぎるとリチウムイオン伝導性が阻害されるので、体積分率で1から50%が好ましい。また架橋反応あるいは重合反応を促進させるための開始剤を添加してもよい。重合開始剤としてはアゾイソブチロニトリルやベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。これら開始剤は1種または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。あるいはポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニルなどのポリマーを1種または2種類以上混合し、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に溶解させてキャストし乾燥などにより溶剤を除去したものに、前記の溶媒を含浸させることによっても作製できる。あるいは、前記有機溶媒にビニルモノマーとして、アクリロニトリル、メチルアクリレート、あるいはビニルアセテートなどを混合し加熱させることによって重合させて固体化してもよい。正極側と負極側との間に配する第3の電解質層は必要に応じて多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、あるいは不織布などの支持体にしみこませたものを使用してもよい。この場合、液体状態の電解質をこれらの支持体に含浸させてから電解質中のビニルモノマーを光あるいは熱で重合させる、あるいは溶剤を除去することによって作製できる。その他のイオン導電体としては無機固体電解質、たとえば、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などを使用することが可能であり、より具体的には、Li3N、LiI、LiSiO4−LiI−LiOH、Li3PO4−Li4SiO4などがある。また、溶融塩なども有機溶媒系電解液の代わりに適用することが可能である。
【0038】
電解液を保持するためのセパレーターとしては、電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維などの不織布あるいは織布、アルミナなどの粉末の成形体などを使用することが可能である。特に、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの不織布が品質の安定性などの点から好適である。これら合成樹脂の不織布では電池が異常発熱した場合に、セパレーターが熱により溶解し、正負極間を遮断する機能を付加したものもあり、安全性の観点からこれらも好適に使用することが可能である。セパレーターの厚みは特に限定はないが、必要量の電解液を保持することが可能で、かつ正極と負極との短絡を防ぐ厚さがあればよく、0.01〜1mm程度のものを用いることができ、好ましくは0.02〜0.05mm程度のものを使用することができる。
【0039】
前記充填助剤は粉体であることが好適である。充填助剤としては、電極特性に悪影響を及ぼさないものであることが必要である。たとえば、公知の潤滑剤などを使用することが可能である。具体的には、石油、動植物油などの潤滑油、二塩基酸エステルやシリコーンなどの合成潤滑油、流動パラフィンなどの液体の潤滑剤、半固体のグリースなどを使用することが可能である。ただし、液体、半固体の材料を充填助剤として用いると、黒鉛材料粒子をコーティングすることになり、電極成形後に洗浄などして除去しなくてはならない。加えて、充填助剤が液体、半固体の場合、黒鉛材料粒子の細孔内まで入りこんでしまう可能性が高い。それを除去することは困難であり、仮に充填助剤が細孔内に残存していると電池構成時に電解液が染込みにくくなり、電池特性に悪影響を及ぼしやすくなる。ゆえに、粉体の材料で充填助剤として作用するものが電極の製造工程、電極特性の点で特に好ましい。
【0040】
なお、粉体の充填助剤の電子伝導度は電極内での電子の動きやすさを考慮すると、負極活物質である表面非晶質黒鉛の電子伝導度より高いことが好ましい。
【0041】
前記充填助剤は、一次粒子が集合した二次粒子であることが好適である。つまり、充填助剤の一次粒子が集合して二次粒子を形成していることが望ましい。分散しやすい二次粒子を選択すると、比較的弱いプレス力により黒鉛材料粒子の充填を助けながら、分散して空隙に入りこんでいくので黒鉛粒子間に残存しにくくなる。ゆえに、充填助剤が活物質の粒子間に存在しにくくなるので、活物質密度が高くなり易くなる。一方、人造黒鉛、二硫化モリブデンなども固体潤滑剤として知られている。このような層状の物質は荷重には強く、せん断には弱いので滑りやすい。そのため充填する際にはせん断に弱いことを利用することになる。しかし、二次粒子が分散して黒鉛材料粒子間の空隙に入り込んでいくことと比較して、分散することにも限界があり、黒鉛材料粒子間に残りやすく、活物質密度が上がりにくい。さらには、人造黒鉛を活物質として用いる場合、その粒子径が小さくなる程、初期充放電効率が低下する傾向を有する。ゆえに、せん断により細かくなった人造黒鉛が電極内に存在することは好ましくない。
【0042】
本発明における二次粒子の構造とは、結晶的に単一と考えられる一次粒子(単位粒子)の数個が集合して二次粒子(複合粒子)を形成する構造を意味する。さらに、本発明における“集合”とは、粒子の力は化学的結合力による場合と物理的なVan der Waals力や磁気的引力による場合に大別される。前者は凝結粒子または凝集体、後者は集団粒子または集合体と呼ばれる。前者は分かれることが困難で、後者は比較的容易に一次粒子に分散するが、本発明に用いるものは後者の方が好ましいが限定はしない。また、焼結や固相反応により生成した二次粒子を用いることも可能である。
【0043】
前記充填助剤として、カーボンブラックを使用することが可能である。カーボンブラックを形成するカーボンブラック粒子は、ストラクチャーと呼ばれる凝集体を形成している。カーボンブラック粒子のストラクチャーとは、永続的に融着した一次凝集体とVan der Waals力の相互作用により凝集した二次凝集体とから成るものを意味する。本発明で使用するカーボンブラックは特に製造履歴や生成機構に制約を受けることはないが、電子伝導度はできるだけ高いものが好ましい。
【0044】
また、粒子径が小さいほど活物質表面での存在量は多くなるが電子導電性は低くなるので、一次粒子径は5〜75nmが好ましく、10〜40nmがより好ましい。したがって、アセチレンブラックが好適であるが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャネルブラックなども使用することが可能である。また、表面が黒鉛化されたケッチェンブラックなども使用可能である。表面非晶質黒鉛とカーボンブラックの混合比率は0.1〜30重量部であるが、この範囲外でも電極として使用できる。カーボンブラック粒子含有量が30重量部より多いと活物質密度が高くなり難く、充放電容量が小さくなるので実用的ではない。あるいはカーボンブラック粒子そのものが電気化学的にLiイオンの挿入・脱離するものでは電極特性に反映してしまい、表面非晶質黒鉛の電極特性が活かせないなどの欠点が生じてくる。また、カーボンブラック粒子の含有量が0.1重量部より少ないと含有している効果が現れにくい。
【0045】
前記充填助剤として酸化亜鉛を使用することが可能である。酸化亜鉛を形成する酸化亜鉛粒子は特に製造履歴や生成機構に制約を受けることはない。表面非晶質黒鉛と酸化亜鉛の混合比率は0.1〜30重量部であるが、この範囲外でも電極として使用できる。酸化亜鉛含有量が30重量部より多いと電極内の抵抗が大きくなり、電極特性に反映してしまい表面非晶質黒鉛の電極特性が活かせないなどの欠点が生じてくる。また、酸化亜鉛粒子の含有量が0.1重量部より少ないと含有している効果が現れにくい。また、焼結や固相反応により生成した二次粒子を用いることも可能である。
【0046】
負極材料を形成する負極材料粒子の平均一次粒子径をRとしたときに、充填助剤を形成する充填助剤粒子の粒度分布における平均二次粒子径が(√2−1)Rより大きく、かつ、前記充填助剤粒子の平均一次粒子径が(√2−1)R以下であることが好適である。黒鉛粒子間に活物質以外の材料が存在していると電極の活物質密度が高くなりにくい。ゆえに、圧縮成形後、電極の活物質密度が高くなるためには、充填助剤が活物質粒子の空隙に入り込んでいることが望ましい。たとえば、電子伝導度の低い充填助剤が黒鉛材料の粒子間に存在していると、電子伝導のネットワークが部分的に切断され、そのネットワークが切断された粒子は電気的に孤立し、もはや反応に関与しなくなる。その結果、負極の活物質利用率が低下し、容量が低下する。ゆえに、電極の圧縮成形または充填後に電極内の充填助剤が分散され、黒鉛材料粒子の空隙に入り込み、黒鉛材料粒子同士のつながりによる電子伝導のネットワークが形成されることが望ましい。
【0047】
以上の点から、表面非晶質黒鉛と充填助剤との粒子径比の関係について見出したものである。すなわち、充填助剤の粒度分布における平均二次粒子径が(√2−1)Rより小さいと、電極の圧縮成形または充填前に表面非晶質黒鉛粒子間の空隙に入り込み易くなり、充填時に充填助剤としての機能が低下する。また、充填助剤の平均一次粒子径が(√2−1)Rより大きいと充填しても表面非晶質黒鉛粒子間の空隙に入り込みにくく、粒子間に残存し易くなるので活物質密度が高くなり難くなるので好ましくない。
【0048】
負極材料である表面非晶質黒鉛の平均一次粒子径Rは0.1〜150μmの範囲であることが好ましい。Rが0.1μmよりも小さい場合には電池のセパレーターの空孔を通して内部短絡を引き起こす危険性が高くなるのに対し、150μmよりも大きくなる場合には電極の均一性、活物質の充填密度の高い電極を作製する工程上でのハンドリング性などが低下するのでいずれも好ましくない。
【0049】
なお、平均粒径とは一次粒子においては電子顕微鏡写真より目視で観察した値の平均値であり、一次粒子が集合した二次粒子においてはレーザー回折式の粒度分布測定装置により測定された最頻度点を示すモード径のことである。
【0050】
【発明の実施の形態】
リチウム二次電池用負極は、リチウムイオンが電解液を介して負極中に挿入される充電反応と、負極中のリチウムイオンが電解液中に脱離される放電反応との電気化学反応を利用したものである。
【0051】
負極の作製方法を以下に記載する。結着剤を乳鉢中で溶剤に溶かして、負極活物質と充填助剤とを分散させる。分散処理には、混練機あるいはボールミル、ペイントシェイカー、ダイナミルなどが用いられ、負極活物質、結着剤、充填助剤が均一に分散する状態にペーストを調節する。このペーストを集電体の金属箔に塗布し、これを40〜100℃で仮乾燥し、圧縮成形する。圧縮成形にはローラープレス機が通常用いられ、これらプレス機を適用する場合のプレス面の材質、回転方法、温度、雰囲気などは特に限定しない。その後、余分な充填助剤を有機溶媒中にて洗浄する。有機溶媒にはアセトン、酢酸エチルなどを好適に使用することが可能である。さらに電極の無塗工部にリードを溶接する。その後、水分除去のために150℃程度で真空乾燥したものを試験用負極として用いる。
【0052】
正極の作製方法を以下に記載する。結着剤を乳鉢中で溶剤に溶かして、正極活物質と導電剤を分散させた。分散処理には、混練機あるいはボールミル、ペイントシェイカー、ダイナミルなどが用いられ、正極活物質、導電剤、結着剤が均一に分散する状態にペーストを調節する。このペーストを集電体の金属箔に塗布し、これを40〜100℃で仮乾燥し、150℃で熱処理をし、圧縮成形する。圧縮成形にはローラープレス機が通常用いられ、これらプレス機を適用する場合のプレス面の材質、回転方法、温度、雰囲気などは特に限定しない。電極の無塗工部にリードを溶接する。さらに、水分除去のために150℃程度で減圧乾燥したものを正極とする。また、該集電体は上記に限定されず、正極・負極活物質、および電解液に対して化学的、電気化学的に安定性のある導体を使用することができる。
【0053】
負極の電気化学的特性の評価は3電極式セルを適用し、負極を試験極に、対極および参照極に金属リチウムを用いる。セルの構成としては対極の表面積を試験極のそれに対して十分に大きくして、試験極の電位にて規制されるように設定する。電解液にはエチレンカーボネート(以下、ECと略する。)を主体とした混合溶媒を用いることができるが、特に限定はしない。この混合溶媒に0.5〜3.0mol/dm3のリチウム塩を溶解したものを用いる。充放電作動試験は定電流充放電にて行い、充電終止電位を0〜0.01V vs.Li/Li+、放電終止電位を2.0〜3.0V vs.Li/Li+とする。
【0054】
本発明の負極を用いた非水二次電池の特性評価には円筒形、角形、コイン形、ボタン形、シート形、ペーパー形、カード形など、種々の形状に適用できる。たとえば、円筒形や角形電池では、主にシート電極を缶に挿入し、缶とシート電極を電気的に接続する。電解液を注入し、絶縁パッキンを介して封口板を封口、あるいはハーメチックシールにより封口板と缶を絶縁して封口し電池を作製する。このとき、安全素子を備え付けた安全弁を封口板として用いることができる。安全素子には、たとえば、過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC素子などがある。また、安全弁の他に電池缶の内圧上昇の対策として、ガスケットに亀裂を入れる方法。封口板に亀裂を入れる方法、電池缶に切れ込みを入れる方法などを用いる。また、過充電や過放電対策を組み込んだ外部回路を用いても良い。また、コイン形やボタン形電池の場合は、正極や負極はペレット状に形成し、これを缶中に入れ、絶縁パッキンを介して蓋をかしめる方法が一般的である。電解液にはECを主体とした混合溶媒を用いられるが、特に限定はしない。この混合溶媒に0.5〜3.0mol/dm3のリチウム塩を溶解したものを用いる。セパレーターには合成樹脂系の不織布を用いた。充放電作動試験は定電流で行い、充電終止電圧を2.7〜2.9V、放電終止電圧を4.1〜4.3Vとする。次いで、作製した電池についてサイクル特性を調べる。
【0055】
なお、電極および電池評価は全て不活性ガス雰囲気下のグローブボックス中にて行われた。不活性ガスとしては通常アルゴン、窒素などが好適に用いられる。
【0056】
【実施例】
本発明を以下の実施例に基づき、より詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
充填助剤を含有させた負極の充填性向上による高容量化を調べるために、プレス回数を規定して負極を作製した。負極特性の評価には3電極式セルを適用して、初期放電容量を比較することにより評価を行った。
【0058】
粉体の充填助剤としてはカーボンブラック(商品名:トーカブラック#5500;東海カーボン製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)、人造黒鉛(商品名:KS−6;ロンザ社製)、二硫化モリブデン(キシダ化学製)、液体の充填助剤として流動パラフィン(キシダ化学製)、潤滑油(商品名:モリオイルスプレーFl00;住鉱潤滑材製)を用いた。
【0059】
負極活物質には表面非晶質黒鉛(粒径12μm、d002=0.336nm、R値=0.35)を用い、結着剤PVdFを乳鉢中で溶剤N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略する。)に溶かして、上記負極活物質と充填助剤を分散させた。分散処理には2軸遊星方式の混合混練機を使用し、負極活物質、結着剤、充填助剤が均一に分散する状態にペーストを調節した。負極の組成は表面非晶質黒鉛100重量部、PVdF10重量部、充填助剤0.1〜11重量部として、活物質の重量は10mg/cm2(集電体の単位面積当りの活物質重量)程度とした。このペーストを20μmの銅箔に塗布し、これを50〜70℃で仮乾燥して、圧縮成形した。圧縮成形には同面積に切断した試験片を大気中にてローラープレス機を用いて、5回プレスした。電極サイズを3.5×3.0cm(塗工部3.0×3.0cm)とした。また、液体の充填助剤を適用したものにはアセトン中にて洗浄した。その後、無塗工部にニッケル箔(50μm)のリードを溶接し、水分除去のために150℃にて12時間真空乾燥したものを負極として用いた。
【0060】
X線広角回折法で結晶子の大きさ(Lc、La)を判定した。結晶子の大きさを求める形状因子K(=Lc・β・cosθ/λ;β:半価幅,θ:d002の角度、λ:X線の波長)は0.9を用いた。また、粒径はレーザー回折式粒度分布計(島津SALDll00)を用いて測定を行い、粒度分布においてピークをもつ粒径として求めた。
【0061】
負極の電気化学的特性の評価は3電極式セルを適用し、負極を試験極に、対極および参照極に金属リチウムを用いた。セルの構成としては対極の表面積を試験極のそれに対して十分に大きくして、試験極の電位にて規制されるように設定した。電解液にはECとジエチルカーボネート(以下、DECと略する。)との体積比1:1の混合溶媒に、1.0mol/dm3の過塩素酸リチウムLiClO4を溶解したものを用いた。
【0062】
充放電作動試験は30mA・g-1の定電流充放電、充電終止電位0V vs.Li/Li+、放電終止電位2.5V vs.Li/Li+、アルゴン雰囲気下グローブボックス、20℃にて行った。
【0063】
図1に各充填助剤を含有させた負極の初期放電容量の測定結果を示す。本実施例における放電容量の単位mAh/ccのccは電極合剤の全体の体積を示す。充填性・流動性を高くするための充填助剤を含有させると、高容量化に効果が表れることが明らかになった。充填助剤が無添加の場合、活物質密度は1.44g/cm3であった。充填助剤を含有した電極の活物質密度は1.47〜1.57g/cm3、大部分の電極が1.5g/cm3以上であった。すなわち、活物質以外の材料が含有しているにも関わらず、逆に電極の活物質密度が高くなったため、放電容量が増加することに反映したと考えられる。
【0064】
(実施例2)
充填助剤を含有させた負極の充填性向上を調べるために、負極作製時における歩留まりを調べた。本実施例における歩留まりとは負極100個をプレスして、プレス中に負極が集電体である鋼箔から剥がれたり、プレス側に付着したものは不合格とした。負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。粉体の充填助剤としてカーボンブラック(商品名:トーカブラック#5500;東海カーボン製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)、人造黒鉛(商品名:KS−6;ロンザ社製)、二硫化モリブデン(キシダ化学製)、液体の充填助剤として流動パラフィン(キシダ化学製)、潤滑油(商品名:モリオイルスプレーFl00;住鉱潤滑材製)を用いた。圧縮成形にはローラープレス機を用いて、所定の活物質密度1.4〜1.7g/cm3になるまで圧縮成形を繰り返し行った。また、液体の充填助剤の場合は洗浄工程を設け、有機溶剤としてはアセトンを用いた。表1に充填助剤を含有した負極の合格数を示す。ここで、充填助剤は0.1重量部含有されている。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例3)
充填助剤を5重量部含有する以外は、上述した実施例2と同様にして、負極作製時における歩留まりを調べた。表2に充填助剤を含有した負極の合格数を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例4)
充填助剤を15重量部含有する以外は、上述した実施例2と同様にして、負極作製時における歩留まりを調べた。表3に充填助剤を含有した負極の合格数を示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表1〜3に記載の充填助剤を使用することにより、活物質密度1.5g/cm3以上において、特に歩留まりが向上することが明らかになった。このことは充填性・流動性を高くするために充填助剤を加えることにより、表面非晶質黒鉛粒子が無理なく充填されやすくなり、充填助剤無添加の場合に見られた電極合剤の集電体からの剥がれが解決したことから、歩留まりが向上したと考えられる。
【0071】
(実施例5)
充填助剤を含有させた負極のサイクル特性を調べるために、3電極式セルを適用して負極特性の評価を行った。充填助剤としてカーボンブラック(商品名:#3050;三菱化学製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)、人造黒鉛(商品名:KS−6;ロンザ社製)を用いた。負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量、電気化学的特性の評価などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。また、充填助剤の含有量は1重量部、活物質密度は充填助剤無添加のものも含めて1.5g/cm3程度とした。
【0072】
図2に各充填助剤を含有させた負極のサイクル特性を示す。本実施例における放電容量維持率とは、(各サイクルにおける放電容量/1サイクル目の放電容量)×100=放電容量維持率(%)とした。充填助剤無添加の電極と比べて、充填助剤を含む負極ではいずれもサイクル特性は良好になった。充填助剤無添加の場合は60サイクル付近で急激に放電容量が低下した。サイクル試験終了後、充填助剤無添加の電極を観察すると電極合剤が集電体からほとんど剥離して、かろうじて付着している状態であった。
【0073】
ゆえに、負極に充填助剤を含有させることにより、無理なく均一に圧縮成形できることから、充填助剤無添加の場合のように表面非晶質黒鉛の表面の非晶質炭素が割れたり、表面非晶質黒鉛が集電体から剥がれないため、サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0074】
(実施例6)
充填助剤として好適に使用できる材料を検討するために、負極特性の評価には3電極式セルを適用して、初期充放電効率を比較することにより評価した。粉体の充填助剤としては、人造黒鉛(商品名:KS−6;ロンザ社製)、カーボンブラック(商品名:旭HS−500;旭カーボン製)、液体の充填助剤として流動パラフィン(キシダ化学製)、潤滑油(商品名:ウルトラロードスプレー;住鉱潤滑材製)を用いた。負極活物質には表面非晶質黒鉛(粒径18μm、d002=0.336nm、R値=0.5)を用い、負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量、電気化学的特性の評価などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。また、充填助剤の含有量は0.7〜1.0重量部、活物質密度は1.6g/cm3程度として、液体の充填助剤の場合は洗浄工程を設け、有機溶剤としてはアセトンを用いた。
【0075】
図3に各充填助剤を含有させた負極の初期充放電効率を示す。本実施例における初期充放電効率とは初期放電容量/初期充電容量を意味する。液体の充填助剤では初期充放電効率が無添加の場合とほぼ変わらないが、粉体の充填助剤では増加することが明らかになった。これは、洗浄工程を設けたものの、黒鉛材料の細孔部および結着剤に付着していて、液体の充填助剤が洗浄しきれないことが影響していると考えられる。そのため、充電時に電解液と反応し易くなり、還元分解にカソード電気量が使用されたため見かけの充電容量が大きくなり、充放電効率が大きくならなかったと考えられる。また、充填助剤が無添加の場合、活物質密度1.6g/cm3という高密度では、圧縮成形の際に表面非晶質黒鉛の表面を剥がしてしまい、高結晶性の黒鉛材料粒子がむき出しになることから、初期充放電効率が高くなり難いと考えられる。
【0076】
以上のことから、電池を設計するという観点から負極の初期充放電効率80%以上を確保すること、洗浄工程と言う煩雑な工程を省略できることから、粉体の充填助剤を含有させることが好ましいことが分かった。
【0077】
(実施例7)
粉体の充填助剤として好適に使用できる条件、特に粒子状態を検討するために、プレス回数に対する活物質密度の評価を行った。粉体の充填助剤としてはカーボンブラック(商品名:旭HS−500;旭カーボン製)、アセチレンブラック(商品名:デンカブラック;電気化学工業製)、ケッチエンブラック(商品名:ケッチエンブラックEC;ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)、人造黒鉛(商品名:KS−10;ロンザ社製)、二硫化モリブデン(キシダ化学製)を用いた。充填助剤の含有量を5重量部とし、表面非晶質黒鉛(粒径25μm、d002=0.336nm、R値=0.25)を用い、負極の製造方法、組成、活物質重量などは実施例1に適用したものと同じとした。
【0078】
図4にプレス回数に対する各充填助剤を含有させた負極の活物質密度を示す。二次粒子を形成しない人造黒鉛、二硫化モリブデンはプレス回数を重ねても活物質密度1.5g/cm3以上に高くなりにくいという傾向が見られた。一方、粉体の充填助剤が二次粒子を形成している材料、すなわち、SEM観察の結果、一次粒子が集合して二次粒子を形成したカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチエンブラック、酸化亜鉛の場合、活物質密度1.5g/cm3以上でも高くなり易いことが分かった。このことは人造黒鉛粒子や二硫化モリブデン粒子はプレスを重ねるにつれて、せん断されるだけで表面非晶質黒鉛粒子の空隙に入り込むほど小さくならず、黒鉛粒子間に残存するため密度が上がりにくくなるものと考えられる。一方、カーボンブラック粒子、酸化亜鉛粒子は、充填初期は空隙に入り込むことなく粒子間にて充填助剤として機能する。プレス回数が進むにつれて黒鉛粒子の充填性が高くなり、弱い物理的な結合力で形成されている二次粒子が分散しながら、空隙に入り込んでいくと考えられる。以上のことから、粉体の充填助剤としては二次粒子を形成している材料が好ましいことが分かった。
【0079】
そこで、粉体の充填助剤としてカーボンブラック、酸化亜鉛、人造黒鉛、二硫化モリブデンを各々5重量部含有した電極を作製して、3電極式セルによる負極特性の評価を行なった。活物質密度を1.6g/cm3程度とし、負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量、電気化学的特性の評価などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。
【0080】
図5に各充填助剤を含有させた負極の放電容量維持率を示す。本実施例における放電容量維持率とは、(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100=放電容量維持率(%)とした。二次粒子を形成するカーボンブラック、酸化亜鉛を含有した負極は、放電容量維持率を比較的高く維持しているが、人造黒鉛、二硫化モリブデンは放電容量維持率が比較的低下した。上述したように、人造黒鉛粒子や二硫化モリブデン粒子はプレスを重ねると、粒子自身がせん断されて微細化し、充放電時に電解液との反応性を増していく。さらに、分散力が弱いため表面非晶質黒鉛の表面を剥がしてしまい、高結晶性の黒鉛粒子がむき出しになったことから、容量維持率を低下させてしまったと考えられる。一方、カーボンブラック粒子、酸化亜鉛粒子は、弱い物理的な結合力で形成されている二次粒子が分散しながら、空隙に入り込んでいくのでプレス時に表面非晶質黒鉛の表面を傷つける可能性も低く、容量維持率に悪影響を及ぼさなかったと考えられる。
【0081】
以上のことから、粉体の充填助剤としては、単に潤滑性に富んでいるだけでは本発明に適しておらず、二次粒子が形成している材料、特にカーボンブラック粒子、酸化亜鉛粒子が好適に使用されることが分かった。
【0082】
(実施例8)
粉体の表面非晶質黒鉛と充填助剤の粒子径比を検討するために、3電極式セルを適用して負極特性の評価を行った。粉体の充填助剤としてはカーボンブラック(商品名:トーカブラック#3800;東海カーボン製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)を用いた。充填助剤の含有量を5重量部とし、表面非晶質黒鉛(粒径12μm、d002=0.336nm、R値=0.35)を用い、活物質密度を1.6g/cm3程度とし、負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量、プレス回数、電気化学的特性の評価などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。表4に各粉体の充填助剤を含有させた負極の初期放電容量を示す。
【0083】
【表4】
【0084】
カーボンブラック粒子は70nmの一次粒子が凝集して、7μm程度の二次粒子体を形成していた。酸化亜鉛粒子は0.5μm程度の一次粒子が凝集して、3μm,5μm,12μm程度の二次粒子を形成していた。
【0085】
表4に示すように、充填助剤の平均二次拉子径が(√2−1)R、本実施例では4.97μmより小さいと含有しても効果が十分に得られない傾向にあることが理解される。表面非晶質黒鉛と充填助剤との粒子径比について、充填助剤の粒度分布における平均二次粒子径が4.97μmより小さいと、圧縮成形または充填前に表面非晶質黒鉛粒子間の空隙に入り込み、充填時に充填助剤としての機能が現われにくいと考えられる。
【0086】
以上のことから、負極材料を形成する負極材料粒子の平均一次粒子径をRとしたとき、充填助剤を形成する充填助剤粒子の粒度分布における平均二次粒子径が(√2−1)Rより大きい関係であると好適に使用されることが分かった。
【0087】
(実施例9)
充填助剤の平均一次粒子径を検討するために、3電極式セルを適用して負極特性の評価を行った。粉体の充填助剤としてはカーボンブラック(商品名:トーカブラック#3800;東海カーボン製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)を用いた。充填助剤の含有量を5重量部とし、表面非晶質黒鉛(粒径12μm、d002=0.336nm、R値=0.35)を用い、負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量、プレス回数、電気化学的特性の評価などは上述した実施例1に適用したものと同じとした。表5に各粉体の充填助剤を含有させた負極の初期放電容量を示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5に示すように、充填助剤の平均一次粒子径が(√2−1)R、本実施例では4.97μmより大きいと含有しても効果が得られなかった。これは充填しても表面非晶質黒鉛粒子間の空隙に入り込みにくく、粒子間に残存し易くなるので、充填性が高くならないことと電子伝導のネットワークが部分的に切断されることによる電極内での抵抗しいては分極が大きくなることから容量低下に影響を及ぼしたものと考えられる。
【0090】
以上のことから、負極材料の平均一次粒子径をRとしたとき、充填助剤を形成する充填助剤粒子の平均一次粒子径が(√2−1)R以下の関係であると好適に使用されることが分かった。
【0091】
(実施例10)
これまで効果が得られた充填助剤を用いて、製造方法が異なる表面非晶質黒鉛を用いて電池を作製して評価を行った。粉体の充填助剤としてはカーボンブラック(商品名:旭HS−500;旭カーボン製)、酸化亜鉛(キシダ化学製)を用いた。充填助剤の含有量を5重量部、活物質密度を1.5g/cm3程度とし、負極の製造方法、PVdF添加量、活物質重量などは実施例1に適用したものと同じとした。なお、電極サイズは3.5×3.5cm(塗工部3.0×3.0cm)とした。
【0092】
まず、気相法の場合、核材料には人造黒鉛(商品名:KS−25;ロンザ社製)を用いて、黒鉛表面に低結晶性炭素を付着させた。原料ガスとしてプロパン、キャリアガスにアルゴンを用い、ガス流量2L/minとした。その際の原料ガス濃度は体積比で20%とした。熱分解温度は800℃とし、処理時間は5時間とした。得られた表面非晶質黒鉛の低結晶性炭素の被覆量は黒鉛材料9に対して低結晶性炭素が1の割合だった。
【0093】
液相法の場合、核材料は同じくKS−25を用いて、黒鉛表面に低結晶性炭素を付着させた。低結晶性炭素の原料としてコールタールピッチを用いた。芯材となる炭素材料とコールタールピッチとを混合し攪拌処理した。攪拌処理条件は100℃、大気圧下とした。このようにして得られた炭素材料をいったんトルエンで洗浄し、ろ過後60℃で乾燥した。そのように得られたものを1000℃で焼成することにより、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を得た。焼成時の雰囲気としては、真空状態とした。昇温速度は100℃/時間にして、焼成時間は12時間とした。得られた表面非晶質黒鉛の低結晶性炭素の被覆量は黒鉛材料8に対して低結晶性炭素が2の割合だった。
【0094】
固相法の場合、低結晶性炭素の原料としてはセルロースを使用した。本実施例においては、セルロースを一度溶媒に溶かし、芯材となるKS−25とを混合し攪拌処理した。攪拌処理条件は室温、大気圧下とした。このようにして得られたものを一旦乾燥し、軽く粉砕した後に、1000℃にて焼成することにより、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性炭素材料が付着した炭素材料を得ることができた。焼成時の雰囲気としては、N2雰囲気とした。昇温速度は100℃/時間にして、焼成時間は12時間とした。得られた表面非晶質黒鉛の低結晶性炭素の被覆量は黒鉛材料7に対して低結晶性炭素が3の割合だった。
【0095】
正極活物質にはコバルト酸リチウムLiCoO2を使用した。結着剤ポリフッ化ビニリデンPVdFを乳鉢中で溶剤NMPに溶かし、上記正極活物質と導電剤アセチレンブラックを分散させた。分散処理には2軸遊星方式の混合混練機を使用し、正極活物質、導電剤、結着剤が均一分散する状態にペーストを調節した。正極の組成はLiCoO2100重量部、アセチレンブラック5重量部、PVdFl0重量部として、活物質の重量は20mg/cm2(集電体の単位面積当りの活物質重量)程度とした。このペーストを厚さ50μmのアルミニウム箔上に塗布し、これを50〜70℃で仮乾燥、150℃で熱処理後、圧縮成形した。圧縮成形には大気中でローラープレス機を用いて、活物質密度2.89〜2.91g/cm3になるまで圧縮成形した。さらに、水分除去のために150℃程度で減圧乾燥したものを正極とした。なお、電極サイズは3.5×3.5cm(塗工部3.0×3.0cm)とした。
【0096】
電池は上記のごとく作製した負極と正極とを各々セパレータ(ポリエチレン製多孔体、厚み25μm)を介して対抗させ、アルミニウム箔の入ったラミネートフィルムにて覆い、三方を熱により封止した後、ECとDECとの体積比1:1の混合溶液に1mol/dm3のLiClO4を溶解したものを注入し、残った一方を熱により封止して作製した。
【0097】
充放電作動試験は充電電流を1.0mAの定電流とし、充電終止電圧4.2Vに達した後4.2Vの定電圧充電を行ない、充電時間を24時間とした。放電終止電圧を2.75Vとして、放電電流を0.2mAとした。電池評価は全てアルゴン雰囲気下のグローブボックス中、20℃にて行なった。表6に各粉体の充填助剤を含有させた電池の初期放電容量を示す。
【0098】
【表6】
【0099】
表6に示すように、製造方法の異なる表面非晶質黒鉛に充填助剤を使用しても効果が得られることが分かった。
【0100】
なお、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0101】
【発明の効果】
本発明の非水電解質二次電池は、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性の炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を有する負極に充填助剤を含有する。そのため、低結晶性炭素材料に亀裂、割れなどによる被覆効果を損なうことなく、活物質である表面非晶質黒鉛の充填性が高く、良好な電極特性を示す。したがって、高エネルギー密度の二次電池を作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 負極の初期放電容量の測定結果を説明する図である。
【図2】 負極のサイクル特性の測定結果を説明する図である。
【図3】 負極の初期充放電効率の測定結果を説明する図である。
【図4】 負極の活物質密度の測定結果を説明する図である。
【図5】 負極の放電容量維持率の測定結果を説明する図である。
Claims (1)
- 正極と、非水電解質と、負極とを有する非水電解質二次電池であって、
前記負極は、負極材料として、高結晶性黒鉛の表面に低結晶性炭素材料が付着した表面非晶質黒鉛を有するとともに、前記負極材料に、前記表面非晶質黒鉛の充填性を向上させる充填助剤を有し、
前記充填助剤は、一次粒子が集合した二次粒子であるカーボンブラックまたは酸化亜鉛であり、
前記負極材料を形成する負極材料粒子の平均一次粒子径をRとしたときに、前記充填助剤を形成する充填助剤粒子の粒度分布における平均二次粒子径が(√2−1)Rより大きく、かつ、前記充填助剤粒子の平均一次粒子径が(√2−1)R以下である、非水電解質二次電池。
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