JP3259930B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定粒子特性のカーボ
ンブラックに負極活物質を担持させて負極体とした高度
のエネルギー密度を備えるリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、小型電子機器の電源あるいは電力
貯蔵用の電池として、高エネルギー密度のリチウム二次
電池が注目されている。しかし、金属リチウムが負極と
して用いられているため、充電時のデンドライド生成等
によりサイクル寿命が短いという欠点がある。また、金
属リチウムの使用は安全性の面でも問題がある。
【0003】このような問題の解消を図る電池組成とし
て、負極活物質であるリチウムをある種の炭素材に担持
させて負極とする試みが盛んにおこなわれており、担持
炭素材の性状を対象とした提案も数多くなされている
(特開昭62-90863号公報、特開昭63-193463 号公報、特
開昭63-236259 号公報、特開昭64-2258 号公報、特開平
1-274360号公報、特開平2-44644 号公報、特開平2-6685
6 号公報、特開平2-230660号公報、特開平3-93162 号公
報等)。ところが、炭素系ドープ基材を用いたこの種の
二次電池は、概して金属リチウムを負極としたものに比
べてエネルギー密度が低く、自己放電特性も悪化する。
このため、リチウムのドープ量を多くし、可逆的なドー
プ/アンドープのサイクル化を円滑にし、同時に安定な
ドープ体を得ることが当該タイプの電池開発における不
可欠の課題になっており、前記した先行技術の多くはこ
れらの課題解決を図るために金属リチウムをドープさせ
る炭素質担持体の黒鉛結晶面間距離を主要な規制対象と
するものによって占められている。
【0004】しかし、電池の充放電機構は複雑であって
未解明の部分が多い。本発明者らはドープ基材となる炭
素材の種類や特性が電池性能に及ぼす相関性について多
角的、系統的な研究を重ねてきたが、その過程で電池性
能を左右する因子は必ずしも黒鉛結晶面の層間距離に限
られず炭素材を構成する粒子の性状や結晶子の構造にも
大きな影響を受け、各種炭素材のうち特に同心円状の特
異な配向構造を備えるカーボンブラック粒子がドープ/
アンドープに対して有効に機能することを解明した。こ
の知見を基にして、算術平均一次粒子径が70nm以下、
c軸方向の結晶子の大きさLc(002)が1.0nm以上の性
状を備えるカーボンブラックにリチウムを担持させて負
極体としたリチウム二次電池(特願平3−323805号)、
DBP吸油量が100ml/100g 以上で、算術平均一次粒
子径が49nm以上の粒子特性を有するカーボンブラック
に、負極活物質となるリチウムを担持させて負極体とし
たリチウム二次電池(特願平4−245525号)等を既に開
発した。
【0005】一方、最近、エチレンカーボネートを含む
電解液を使用したときに限り、例えば天然黒鉛のような
十分に黒鉛化が進行した炭素材料により円滑なLiの挿
入脱離反応が進行することが報告され、リチウム二次電
池としての利用が期待されている。この系では、6C+
Li+ +e- →LiC6 式によりLiC6 が合成された
とした場合に理論容量372mA/gに相当する充放電容量
が得られ、かつ優れた電位の平坦性を示す特徴がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、天然黒
鉛を負極担持体とし、エチレンカーボネートを含む有機
溶媒を電解液とする系のリチウム二次電池では、理論値
以上の容量を望むことは難しく、また、電位の平坦性が
優れているために安定した電池電圧を供給し得る反面、
一般に電圧変化で検出する電池容量の残量表示装置の機
構が複雑化するといった問題がある。そのうえ、天然黒
鉛は品質の安定性が低くて精密工業製品の原料としての
適格性に乏しく、これと同一性状の人造黒鉛製品を製造
しようとすると高価なものになる。
【0007】本発明は、特定された粒子性状のカーボン
ブラックを負極担持体とした場合に一定量以上のエチレ
ンカーボネートを含む有機溶媒を電解液とすると、理論
値を凌ぐ充放電容量を供給することができ、しかも残量
が少なくなってくると電圧が緩やかに低下する事実を解
明して開発に至ったものである。
【0008】したがって、本発明の目的は、カーボンブ
ラック負極担持体とエチレンカーボネート含有電解液と
の組合せにより高度のエネルギー密度を有する高性能の
リチウム二次電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるリチウム二次電池は、DBP吸油量1
00〜160ml/100g 、算術平均一次粒子径40〜68
nmの粒子性状を有するカーボンブラックに負極活物質と
なるリチウムを担持させて負極体とし、エチレンカーボ
ネートもしくはこれを20容量%以上含有する有機溶媒
を電解液とすることを構成上の特徴とする。
【0010】本発明で規制したカーボンブラックの粒子
特性のうち、DBP吸油量はカーボンブラックのストラ
クチャーの発達度合、すなわち粒子凝集体(Aggregate)
の大きさを示す指標となるもので、JIS K−622
1「ゴム用カーボンブラックの試験方法」6.1.1項
に規定されている吸油量A法(機械法)により測定され
たカーボンブラック100g 当たりのジブチルフタレー
ト吸収量の値を指す。また、算術平均一次粒子径は前記
粒子凝集体を構成する個々のカーボンブラック基本粒子
径であり、電子顕微鏡観察により基本粒子の直径を計測
して算術平均した値で示されるものである。
【0011】本発明においてリチウム担持体となるカー
ボンブラックは、製造履歴や生成機構に制約を受けるこ
となく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サ
ーマルブラック、アセチレンブラックなど各種のものを
用いることができるが、好ましくはファーネスブラック
が用いられ、粒子特性としてDBP吸油量が100〜1
60ml/100g で、かつ算術平均一次粒子径が40〜68
nmのものを選択使用することが重要な要件となる。DB
P吸油量100ml/100g 未満であり、算術平均一次粒子
径が40nmを下回る性状のカーボンブラックではリチウ
ムの担持容量が小さくなり、また優れたサイクル特性を
保持させることができなくなる。
【0012】負極体は、上記の粒子特性を有するカーボ
ンブラックを例えばテトラフルオロエチレン、ポリフッ
化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンのような
樹脂バインダーと混合し、加圧成形して作製する。
【0013】本発明のリチウム二次電池を構成する電解
液としては、エチレンカーボネート単独もしくはエチレ
ンカーボネートを含有する有機溶媒が選択使用される。
この場合、低温での電池特性を向上させたり、電解液の
粘度を調整させるためエチレンカーボネートを有機溶媒
に含有させた組成として使用することが好ましい。但
し、電解液組成はエチレンカーボネートが有機溶媒中に
20容量%以上含有させることが要件となる。有機溶媒
中に占めるエチレンカーボネートの含有量が20容量%
未満であると、カーボンブラック担持体へのリチウムの
挿入脱離反応が円滑に進行しなくなって本発明の効果が
十分に達成されなくなる。併用する有機溶媒の成分は特
に限定されるものではないが、一般に電池用電解液とし
て使用されている例えばプロピレンカーボネート、1,2
−ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、テトラヒ
ドロフラン等が有効に用いられる。
【0014】電解液には、適量の電解質を添加する。添
加する電解質は、電池用として通常使用されているLi
ClO4 、LiBF4 、LiPF6 等のリチウム塩が用
いられる。
【0015】本発明のリチウム二次電池は、上記した負
極体と電解液のほか、正極体およびセパレーターにより
構成され、ペーパー型、ボタン型、円筒型等の構造に形
成される。正極体には、遷移金属のカルコゲン化合物を
成形化したものが好ましく適用され、遷移金属としては
モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケ
ル、マンガン等が、またカルコゲン化合物としては酸化
物、硫化物、セレン化物等が用いられる。セパレーター
には特に材質的な限定はなく、合成樹脂で形成された通
常の多孔質膜を用いることができる。
【0016】
【作用】炭素材の一種であるカーボンブラックは一次粒
子が凝集したアグリゲート構造をもつ微細な粉末である
が、その一次粒子の内部構造は黒鉛六角網平面が一単位
となって、粒子の表面近くでは表面に対して平行に重な
り合った同心円状に配向し、内部に至るに従って平行性
が乏しくなるようなマクロ構造を呈している。かかる配
向構造は、カーボンブラックが微粒子であるうえ一般に
難黒鉛化炭素であるため、黒鉛結晶子の成長が阻害され
ることに起因して構成されるものと考えられる。このた
め、ある種のカーボンブラックはリチウムのドープ化に
好適な難黒鉛化性炭素に基づく大きな層間距離と適度の
配向性を兼備することになる。
【0017】本発明で負極担持体に選定したDBP吸油
量が100〜160ml/100g で、算術平均一次粒子径が
40〜68nmの粒子特性を有するカーボンブラックは、
リチウムのドープ/アンドープに好適な性状を備えてお
り、とくに発達したストラクチャー性状がリチウムの担
持に有利な構造を形成して吸収量の増大化に寄与する。
他方、電解液に一定量以上含まれるエチレンカーボネー
トは、溶解するリチウムイオンをカーボンブラック一次
粒子表面の隙間から浸入させ、粒子の黒鉛六角網目間へ
と拡散してリチウムの挿入脱離反応の円滑な進行を助長
するために機能する。
【0018】このような特定されたカーボンブラック担
持負極体と電解液の組合せによる独特な機構を介してリ
チウム二次電池を構成した場合に、従来技術では得られ
なかった大きな電池容量と残容量低下時における緩やか
なで電圧変化を付与することが可能となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。
【0020】実施例1〜6、比較例1〜5 表1に示す粒子特性のファーネスカーボンブラックおよ
び天然黒鉛(中国産)を負極担持物質とし、各負極担持
物質90重量部に市販のテトラフルオロエチレン粉末1
0重量部を配合して十分に混練し、ロール成形により厚
さ0.1mmのシートに成形して負極体を作製した。ま
た、電解液には表1に示した組成のものを用い、各電解
液に1mol/l のLiPF6 を電解質として添加溶解し
た。
【0021】正極体として、V2 5 粉末70重量部、
テトラフルオロエチレン粉末10重量部、導電性カーボ
ンブラック〔東海カーボン(株)製、TB#5500 〕20重
量部を混練したのちロール成形したシート(厚さ1mm)
を用い、セパーレーターには厚さ0.1mmのポリプロピ
レン不織布を用いた。
【0022】
【表1】 〔表注〕CB;ファーネスカーボンブラック、EC;エ
チレンカーボネート、DME;1,2-ジメトキシエタン、
DEC;ジエチルカーボネート、PC;プロピレンカー
ボネート
【0023】上記のようにして形成した各負極体を試料
極とした単セルを組み、対極および参照極を共に金属リ
チウムとした電解液中での定電流充放電試験法により各
試料極に対するリチウムの電気化学的ドープ挙動を測定
した。測定は、充放電終止電位を0Vvs. Li/Li+
(充電時)、1.5Vvs. Li/Li+ (放電時)と
し、電流密度を30mA/gに設定した。各例における充放
電曲線を図1〜図11に、測定された10サイクル目の
放電電気量を表2に示した。これらの結果を考察して明
らかなように、各実施例ではLiC6 層間化合物が形成
されたときの理論値372mAh/g を凌ぐ大きな容量が得
られると共に、放電が終了に近づき残容量が減少したと
ころで緩やかに電位が変化していく様子が認められ、本
発明の要件を外れる比較例に比べて電気化学的性能が有
意に向上していることが判明した。
【0024】次に、上記の電池部材を用いて直径20mm
のボタン型電池を作製し、電流密度1mA/cm2で4.5V
になるまで充電したのち同一の電流密度で1Vまで放電
するサイクルを繰り返す条件で電池性能を評価した。そ
の結果を50サイクル目の放電容量として表2に併載し
たが、本発明に従う実施例の電池は比較例品に比べて放
電容量が極めて高く、サイクル経過後においても大きな
放電容量を備えるリチウム二次電池が得られることが認
められた。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば特定粒子
特性のカーボンブラックをリチウム負極担持体とし、こ
れに一定量以上のエチレンカーボネートを含む電解液を
組み合わせて電池を構成することにより、極めて高度の
エネルギー密度と備え、残容量低下時に緩やかな電圧変
化を示す高性能のリチウム二次電池を供給することが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図2】実施例2による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図3】実施例2による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図4】実施例4による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図5】実施例5による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図6】実施例6による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図7】比較例1による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図8】比較例2による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図9】比較例3による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図10】比較例4による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
【図11】比較例5による単セルの充放電曲線を示したグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−187989(JP,A) 特開 平4−14769(JP,A) 特開 平4−206270(JP,A) 特開 平5−36440(JP,A) 特開 昭63−285872(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/02 H01M 4/58 H01M 10/40

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 DBP吸油量100〜160ml/100g 、
    算術平均一次粒子径40〜68nmの粒子性状を有するカ
    ーボンブラックに負極活物質となるリチウムを担持させ
    て負極体とし、エチレンカーボネートもしくはこれを2
    0容量%以上含有する有機溶媒を電解液とすることを特
    徴とするリチウム二次電池。
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