JP4817843B2 - 移動体の案内装置 - Google Patents

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Description

本発明は、工作機械の送り軸などに用いられる移動体の案内装置に関し、特に、移動体の摺動面に供給する潤滑油の消費量を少なくした移動体の案内装置に関する。
工作機械の送り軸などに用いられる案内装置は、支持体の案内面に移動体の摺動面を案内させて、駆動装置により移動体を移動させるものである。一般に、案内装置には、動圧すべり案内方式、静圧案内方式、一部荷重補償すべり案内方式などがある。本発明は、動圧すべり案内方式による移動体の案内装置に関するものである。
動圧すべり案内方式の案内装置は、特許文献1に開示されている。移動体の摺動面に潤滑油供給孔を開口し、それに連通した油溝を設け、更に、潤滑油を保持するオイルポケットを設けて、潤滑状態を改善したものである。移動体の摺動面に多数の凹部を機械加工によって形成した摺動案内構造は、特許文献2に開示されている。一般に、摺動面はキサゲ加工によって多数の凹部を形成しているが、これは機械加工によって多数の凹部を規則正しく配列して形成することが開示されている。
特開2005−313272号公報 特開2003−211333号公報
前述の特許文献1に開示されている案内装置は、摺動面にオイルポケットを設けて、摺動面に供給された余分の潤滑油を保持し、潤滑油の供給間隔が長くても良好な潤滑状態が得られるようにしたものである。従来の案内装置に比べて潤滑状態は大幅に改善されているが、近年、工作機械の送り速度が高速化されたため、摺動面に供給された潤滑油が摺動面の側方や前後から外部に流出する量が多くなるという問題点があった。工作機械においては、摺動面から外部に流出した潤滑油は回収困難であるので、潤滑油の消費量を極力少なくして、ランニングコストの低下を図ることが要求されている。
本発明は、従来技術の問題点を解決することを課題としており、本発明の目的は、移動体の摺動面に供給する潤滑油が摺動面の全面に行き亘るようにすると共に、供給した潤滑油が摺動面から外部へ流出する量を少なくして、ランニングコストの低い移動体の案内装置を提供することである。
前述の目的を達成するために、本発明によれば、支持体の案内面と移動体の摺動面との間に潤滑油を供給して移動体を案内支持する移動体の案内装置において、前記移動体を案内支持する案内面を有した支持体と、前記支持体の案内面に案内される摺動面を有した移動体と、前記移動体の摺動面に複数個設けられ、前記案内面に接触するすべり面および多数の凹部を有する潤滑油ポケットと、前記潤滑油ポケットを囲んで設けられ、前記案内面に接触するすべり面を有するランド部と、前記潤滑油ポケットの中に開口され、前記移動体の移動に伴って、移動方向の後部に溜った潤滑油が移動方向の前部へ流れるように前記潤滑油ポケットの中の前部と後部を連通した潤滑油帰還管路と、前記潤滑油ポケットの中に開口され、前記移動体の摺動面に潤滑油を供給する潤滑油供給管路と、を具備した移動体の案内装置が提供される。
前記移動体の摺動面に設けた潤滑油ポケットの中は、潤滑油の油溜りになる多数の凹部、案内面と直接接触するすべり面が形成されている。そして、移動体の移動に伴って、潤滑油ポケット内の後方に溜った潤滑油が潤滑油帰還管路を通って潤滑油ポケット内の前方に流れるので、潤滑油ポケット内の圧力が上らず、潤滑油が摺動面から外部に流出する量が少なくなる。
また、本発明によれば、前記ランド部は、前記潤滑油ポケットのすべり面と同一高さに形成され、かつ、その表面に、前記潤滑油ポケットから潤滑油が流出しない程度にキサゲ加工が施されている。
また、本発明によれば、前記潤滑油ポケットの中で前記潤滑油帰還管路の開口に連通して設けられ、前記移動体の移動方向に対して垂直な方向に延びる油溜り溝を設けてなる移動体の案内装置が提供される。前記潤滑油ポケットの中に、移動体の移動方向の前部と後部に、移動方向と垂直な方向に延びる油溜り溝を設け、その油溜り溝と潤滑油帰還管路を連通したので、移動体の移動に伴って、潤滑油が前部に容易に帰還する。循環ポンプなどの装置を必要としない。
また、本発明によれば、前記潤滑油ポケットの中の摺動面は、前記潤滑油供給管路に連通して油溝が形成され、多数の凹部がキサゲ加工によって形成されてなる移動体の案内装置が提供される。前記潤滑油ポケットの中のすべり面は、多数の凹部がキサゲ加工によって形成され、適宜油溝が形成されているので、潤滑油が摺動面の全面に行き亘る。
また、本発明によれば、前記潤滑油ポケットの中の摺動面は、多数の凹部が機械加工によって規則正しく配列して形成され、潤滑油が凹部間を流れるように隣り合う凹部の一部を重ね合わせて凹部間を連通して形成されてなる移動体の案内装置が提供される。前記潤滑油ポケットの中のすべり面は、多数の凹部が機械加工によって形成され、隣り合う凹部間が連通して形成されているので、潤滑油が摺動面の全面に容易に行き亘る。また、移動体の摺動面、フッ素樹脂摺動材を貼付すれば、フッ素樹脂摺動材は摩擦抵抗が小さく、ロストモーション量が小さくなるので、移動体の送り精度が良くなる。
本発明によれば、移動体の摺動面に潤滑油ポケットを設け、移動体の移動方向の前部と後部を潤滑油帰還管路で連通したので、移動体の移動に伴って、潤滑油ポケットの後部に溜った潤滑油が前部に帰還する。そのため、潤滑油が摺動面から外部に流出する量が少なくなり、ランニングコストの低い移動体の案内装置が得られた。また、潤滑油ポケットの中の摺動面をキサゲ加工や機械加工によって多数の凹部を形成したので、潤滑油が摺動面の全面に行き亘り、潤滑油の油切れがなくなった。また、潤滑油ポケットの中に油溜り溝を設けたので、潤滑油ポケット内における潤滑油の回収及び供給が良くなった。また、移動体の摺動面にフッ素樹脂摺動材を貼付したので、摺動面の加工が容易になるばかりでなく、移動体のロストモーション量が小さくなり、移動体の送り精度が良くなった。
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1は、移動体の案内装置の実施の形態を示す横断面図である。図1を参照して、工作機械の送り軸などに用いられる移動体の案内装置の支持体1に一対の案内面3が紙面に垂直な方向に延びて設けられている。移動体5の下面に案内面3と接触して案内される摺動面7が設けられている。実際の工作機械では、移動体5にかかる上下左右の力を受けるために案内面9及び11が設けられ、それらに対応する摺動面13及び15が設けられているが、本願においては、案内面3を支持体1の案内面として説明する。また、摺動面13及び15にもフッ素樹脂摺動材が貼付されているが図1においては省略する。移動体5には摺動面7に開口する潤滑油供給管路17及び潤滑油帰還管路19が設けられている。移動体5の下面に取付けられたナット21に送りねじ23が螺合され、移動体5は図示せず駆動モータの駆動によって案内面3上を移動する。
図2は、移動体の摺動面の構造を示す図面であり、(a)は摺動面の平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は摺動面の部分拡大図である。図2を参照して、図2(a)は移動体5の摺動面7を下面から見た平面図である。移動体5の摺動面7は、支持体1の2本の案内面3に対応して設けられている。図2(a)は片方の摺動面7を示したものである。摺動面7にはランド部27で囲った潤滑油ポケット29が2個設けられている。潤滑油ポケット29の中の摺動面は案内面3に直接接触するすべり面であり、キサゲ加工などにより多数の凹部31が形成されている。多数の凹部31は潤滑油の油溜りとなり接触面の潤滑を良好にしている。ランド部27は、潤滑油ポケット29を囲って案内面3と直接接触するすべり面であり、潤滑油ポケット29の中の摺動面7と同一の高さに形成されている。ランド部27の表面は、摺動面7と同一の平面度で加工され、平面度を出すために細かいキサゲ加工が施されている。そのキサゲ加工は、潤滑油が摺動面7から流出しない程度の細かさであることが望ましい。
潤滑油ポケット29の中に潤滑油を供給するために潤滑油供給管路17が開口されている。潤滑油供給管路17は図示せず潤滑油供給源に接続され、適宜潤滑油が潤滑油ポケット29の中に供給される。移動体5は矢印Xの方向に往復移動する。潤滑油ポケット29の中で、移動体5の移動方向の前部と後部に潤滑油帰還管路19が開口されている。その潤滑油帰還管路19の開口に連通して油溜り溝33が設けられている。油溜り溝33は、潤滑油ポケットの中における潤滑油の回収を良くするために移動体5の移動方向に対して垂直な方向に延びて設けられている。
図2(b)は(a)におけるA−A断面図であり、潤滑油供給管路17及び潤滑油帰還管路19が示されている。摺動面7にはフッ素樹脂摺動材35が貼付されている。フッ素樹脂摺動材35は、商品名ターカイト又はベアリーなどが用いられる。移動体5が鋳物等で造られている場合はフッ素樹脂摺動材35が貼付されていなくてもよい。摺動面7の中央部は逃げ部37となっている。逃げ部37は平面度が出し易く、しかも、偏摩擦しないように適宜設けるものであり、大型の移動体においては潤滑油ポケット29を3箇所設け、逃げ部37を2箇所設ける構造にしてもよい。
図2(c)は摺動面の部分拡大図であり、油溜り溝33を示している。油溜り溝33は潤滑油ポケット29の中で、紙面に垂直な方向に延びて設けられている。潤滑油帰還管路19は油溜り溝33に連通して設けられ、移動体5の移動に伴って、移動体5の移動方向の後部の油溜り溝33に溜った潤滑油が潤滑油帰還管路19を通って移動方向の前方の油溜り溝33に流れる。前方に流れた潤滑油は潤滑油ポケット29内の摺動面7に供給される。潤滑油ポケット29はランド部27で囲われているので、移動体5の移動に伴って、移動方向の後部に溜った潤滑油は移動方向の前方に帰還する。そのため、潤滑油が摺動面29から外部に流出する量が少なく、潤滑油の消費量が少なくなる。
図3は、潤滑油ポケットの中の摺動面に多数の凹部を機械加工によって形成した場合の凹部を示す拡大図であり、(a)は平面図、(b)は長軸に沿う断面図、(c)は短軸に沿う断面図である。図3(a)は摺動面7と凹部41との稜線43を表す閉曲線である。閉曲線は楕円弧状、長円弧状等の細長形状に形成される。図3(b)は凹部41の長軸Alに沿う断面で半径Rlを有する。図3(c)は凹部41の短軸Asに沿う断面で半径Rsを有する。本実施の形態では、半径Rlは50mmで、半径Rsは10mmで、凹部41の深さは0.12mmである。凹部41の加工は、切刃先半径10mmで回転半径50mmの工具をNC工作機械に装着して行われる。また、工具を回転させずにヘール加工によって凹部を加工してもよい。
図4は、摺動面に多数の凹部を規則正しく配列した1例を示す部分平面図である。図4には図3で示した凹部41が多数連続して形成されている。凹部41の長軸Alが45度の傾きをもって交互にクロスして配列されている。凹部41はX、Y軸方向にピッチPx、Pyを有して形成される。凹部41の長軸方向端部の円弧部は部分的に互いに重なるように形成されている。凹部41が重なり合っている部分45は凹部41に溜った潤滑油が隣の凹部41に流れるための通路となる。摺動面7に凹部41を加工した残りの部分47が案内面3との接触部分となる。凹部41の長軸Alの傾き角度を変えたり、凹部刻設のピッチPx、Pyを変えて形成してもよい。凹部41の長軸Alが傾き角度をもって形成されているので、摺動面7に供給された潤滑油はその傾き角度に沿って流れ、摺動面29の全面に行き亘るように供給される。
実際の工作機械においては、案内面9及び11に摺動する摺動面13及び15は接触面積が小さいので、従来から行われている方法で、図示しない潤滑油供給管路を開口し、油溝を設け、キサゲ加工が施されていればよい。もちろん、接触面積が大きい摺動面であれば前述の摺動面7と同様に機械加工によって凹部を形成しても良い。
本発明による移動体の案内装置の実施の形態を示す横断面図である。 本発明による移動体の案内装置における移動体の摺動面の構造を示す図面であり、(a)は摺動面の平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は摺動面の部分拡大図である。 摺動面に多数の凹部を機械加工によって形成した場合の凹部を示す拡大図であり、(a)は平面図、(b)は長軸に沿う断面図、(c)は短軸に沿う断面図である。 摺動面に多数の凹部を規則正しく配列した1例を示す部分断面図である。
符号の説明
1 支持体
3 案内面
5 移動体
7 摺動面
17 潤滑油供給管路
19 潤滑油帰還管路
27 ランド部
29 潤滑油ポケット
33 油溜り溝
35 フッ素樹脂摺動材
41 凹部
45 凹部が重なり合う部分

Claims (5)

  1. 支持体の案内面と移動体の摺動面との間に潤滑油を供給して移動体を案内支持する移動体の案内装置において、
    前記移動体を案内支持する案内面を有した支持体と、
    前記支持体の案内面に案内される摺動面を有した移動体と、
    前記移動体の摺動面に複数個設けられ、前記案内面に接触するすべり面および多数の凹部を有する潤滑油ポケットと、
    前記潤滑油ポケットを囲んで設けられ、前記案内面に接触するすべり面を有するランド部と、
    前記潤滑油ポケットの中に開口され、前記移動体の移動に伴って、移動方向の後部に溜った潤滑油が移動方向の前部へ流れるように前記潤滑油ポケットの中の前部と後部を連通した潤滑油帰還管路と、
    前記潤滑油ポケットの中に開口され、前記移動体の摺動面に潤滑油を供給する潤滑油供給管路と、
    を具備することを特徴とした移動体の案内装置。
  2. 前記ランド部は、前記潤滑油ポケットのすべり面と同一高さに形成され、かつ、その表面に、前記潤滑油ポケットから潤滑油が流出しない程度にキサゲ加工が施されている請求項1に記載の移動体の案内装置。
  3. 前記潤滑油ポケットの中で前記潤滑油帰還管路の開口に連通して設けられ、前記移動体の移動方向に対して垂直な方向に延びる油溜り溝を設けてなる請求項1又は2に記載の移動体の案内装置。
  4. 前記潤滑油ポケットの中の摺動面は、前記潤滑油供給管路に連通して油溝が形成され、前記多数の凹部がキサゲ加工によって形成されてなる請求項1から3のいずれか1項に記載の移動体の案内装置。
  5. 前記潤滑油ポケットの中の摺動面は、前記多数の凹部が機械加工によって規則正しく配列して形成され、潤滑油が凹部間を流れるように隣り合う凹部の一部を重ね合わせて凹部間を連通して形成されてなる請求項1から3のいずれか1項に記載の移動体の案内装置。
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