JP4817156B2 - 既製杭 - Google Patents

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Description

この発明は、杭穴拡底部の信頼性を向上させ、拡底部を強化した既製杭に関する。
従来、杭穴拡底部にコンクリート既製杭を埋設する場合、外径が一定のストレート杭16では底面17(外径D)で支持地盤(地盤底面)11に支持していた(図15(a))。また、既製杭で、下端部が大径となった、いわゆるST杭24でも、底面25(外径D)で下方に支圧して支持地盤11に支持していた(図15(b))。
また、通常杭穴の掘削中又は掘削後の既製杭の埋設前に、杭穴下層部にセメントミルクを注入して、一定固化強度のセメントミルクが充填され、杭周辺部に土泥を固着させながら杭を下降沈設させる埋設工法が行われ、シルト等を含む地質の良くない地盤では、施工時の品質低下が懸念されていた。
また、杭の外周にリブを設けたいわゆる節杭の従来の基礎構造は、ストレート杭穴のみであり、積載荷重および引抜力に関し、その拡底部の形状・寸法、および特に拡底部を設ける埋設施工などで、そのリブなどへのせん断応力の配慮は不充分であった。
また、一般に、杭穴内にセメントミルクを注入して、セメントミルクと掘削泥土とを撹拌混合してソイルセメント層を形成する工法の場合、杭穴の上層部(口部)では、掘削泥土が残されていた。杭穴上層部の充填物は、杭穴内への既製杭の下降に伴い地上に溢れでて廃棄されるものであり、杭構造の品質には影響しないと考えられていたためである。
特許第2651893号 特公平1−25848号公報 実開昭63−23335号 特開平6−280261号公報 特開昭62−86223号公報 特開平2−232416号公報 特開平5−9933号公報 特開平11−93162号公報
従来の既製杭では、支持力の発現は主として既製杭の底面17、25に限られると考えられており、支持力は既製杭の底面積に因っていた。又、引き抜き抵抗力は、主として杭の表面摩擦力によるために、その表面積に依存していた。従って、従来の杭穴26の拡底部28の外径DD1 は軸部27の外径DD0 の1.2〜1.5程度に限られていた。また、埋設時既製杭の側面16a、24aおよび杭下端部端面17、25等と、杭穴26内で固化したセメントミルクまたは掘削土と混合したソイルセメントなどとの付着力は、特別に配慮はされていなかった(図15)。
また、節杭は、側面での摩擦力により地中に保持される機能を有する杭であり、通常、杭の長さ(杭穴の深さ)は10〜30m程度であり、ストレート杭16などとは全く異なる規格分野で利用されており、根固め用の拡底部は形成されていなかった。従って、下端部での支持力および引き抜き抵抗力は、特に配慮されず杭の節部の強度を充分生かした基礎構造となっていないのが実体であった。
即ち、節杭を埋設する杭穴がストレートで、杭穴径が節部径とほぼ同径で、杭部と杭穴内壁との隙間が僅少であり、さらにその根固め部の施工に関しても該杭の下端部端面及び、下端部各節部より伝搬される上下の応力によるせん断力を考慮し、杭性能を十分生かした杭穴の形状・寸法での掘削および杭の埋設施工が行われていなかった。
また、杭穴上層部に残存する掘削泥土層を通過して既製杭を下降させた場合には、既製杭の外面に泥土膜が形成された状態で、杭穴内に埋設されるため、既製杭に初期沈下が生じると共に、杭穴内で、セメントミルクなどと既製杭との一体化が十分には図れない問題点があった。
従って、杭の支持力発現時の初期沈下時の品質の安定性も改善が必要であると共に、シルト等を含む支持力の良くない地質に関しても個別に配慮した工法は行われておらず、埋設する地質に対する品質安定性の改善が必要で、地層に対応して、各既製杭の強度が有効に活用されていない等の問題点があった。
また、基礎杭において、各杭の性能を充分発揮させるために、通常数本の連結杭を採用するが、従来の突起付き杭の代表である節杭を用いた異種連結杭においては、鉛直支持力を主として突起(節部)による摩擦力を利用した下杭と、水平支持力として所定の耐曲げ応力等を有する円筒杭を上杭として構成して継ぎ杭とし、両杭の軸径は、通常、同一寸法として構成されている(例えば、特許第2651893号公報等)。即ち、突起付き下杭を有する異種杭連結は、水平支持力の上杭(円筒杭)と摩擦力の下杭(節杭)の構成とし、両杭の軸径を略同一寸法とし杭穴軸部で両者の連結をする方法であった。また、両杭の軸径が異なる寸法として上杭の水平力を強化した構造も各種提案され、杭径寸法の変更部分を杭本体または杭連結部に設けられているが、いずれもその変更部分が杭穴軸部に位置しておりその変更部分を杭周ソイルセメントなどで補強が充分できず、その変更部分の強度及び応力集中などへの技術面及び、経済性の両面から対応が困難であった。従って、従来の連結技術では、例えば下杭の支持力が大きい等の場合に、上杭の水平支持力が最適値となる杭形状・外径寸法を採用することができず、結果として連結杭全体として最適な連結構成の設計ができなかった。即ち基礎杭全体としても最適な支持力等を実現するのが困難であった。
然るにこの発明は、拡底した杭穴内に、外周に突起を有する既製杭を埋設した新基礎構造および新工法を採用することにより、前記問題点を解決した。
即ちこの発明は、杭穴の軸部の下端部に拡底部を形成した杭穴に埋設する既製杭であって、以下のように構成したことを特徴とする既製杭である。
(1) 前記既製杭は、埋設予定の杭穴の拡底部に位置する部分に突起を有する構造とし
(2) 前記既製杭は、前記杭穴の拡底部に位置し、かつ前記突起を有する下部軸部を有し、
(3) 前記下部軸部の上に、前記下部軸部より大径の上部軸部を形成し
(4) 「前記下部軸部と前記上部軸部の境界に、下方に向けた面を有する段部を形成し」あるいは「下方に向けた面を有する突起であって、前記下部軸部の最上部に位置する突起の上面に連続して上部軸部を形成し」
(5) 「前記段部」又は「前記下部軸部の最上部に位置する突起」を前記杭穴の拡底部内に位置する高さに形成した。
埋設予定の杭穴の拡底部に位置する下杭の上に、上杭を連結した既製杭であって、以下のように構成したことを特徴とする既製杭である。
(1) 前記下杭は、埋設予定の杭穴の拡底部に位置する部分に突起を有する構造とし
(2) 前記下杭は、前記杭穴の拡底部に位置し、かつ前記突起を有する下部軸部を有し、
(3) 前記下部軸部の上に、前記下部軸部より大径の上部軸部を形成し
(4) 「前記下部軸部と前記上部軸部の境界に、上方に向けて徐々に大径となり、下方に向けた面を有する段部を形成し」あるいは「下方に向けた面を有する突起であって、前記下部軸部の最上部に位置する突起の上面に連続して上部軸部を形成し」
(5) 「前記段部」又は「前記下部軸部の最上部に位置する突起」を前記杭穴の拡底部内に位置する高さに形成した。
(6) 前記上部軸部の上端部を上杭との連結部とした。
(7) 前記下杭と前記上杭との連結部の形状・寸法を一致させて構成した。
尚、以下において、√3は、「平方根3(約1.732・・)」を表す。
拡底掘削した杭穴内に、下端部に突起を有する既製杭を埋設し、その既製杭とソイルセメントとの一体化の品質が良い杭構造を構成するので、突起の上面および下面周縁からのせん断力が支持地盤に伝搬し、所定角度の円錐状の底面で支持地盤に支持面を形成でき拡底部径全体で支持するために、1本の杭が負担すべき垂直荷重および引抜力を従来より大幅に(2倍以上)に増加させることができる。
また、杭穴口までソイルセメントを形成して既製杭を沈設し、既製杭の節部等の表面に土泥の固着層を形成させないため、既製杭とソイルセメントとの密着状態が良く、ソイルセメント固化時の初期沈下が防止できる。
また、埋設地盤にシルト等が含まれ支持地盤として良くない場合には、掘削土とセメントミルクを置換するので、ソイルセメント品質が地質に左右されず安定した強度および品質が得られる。
また、突起を設けると共に上部軸部径を下部軸径より大径とし、上方に向けて徐々に大径となる傾斜段部を設けて既製杭を構成し、当該突起のみならず、傾斜段部をも杭穴の拡底部内に位置させて、既製杭を杭穴内に埋設したので、突起からの支圧に加え、傾斜段部からの支圧も付加することにより、より高垂直荷重に耐えることができる。
また、また、突起付きの既製杭の肉厚及び圧縮強度等を可変させて、突起付きの下杭と上杭とのバランスを考慮して、下杭と上杭とをほぼ同一軸力強度となるように設定することによって、既製杭全体の軸力強度がほぼ一定となり、過大な荷重がかかった際の杭材の破壊を効率よく防止できる。
図1は、この発明の実施例の概略した縦断面図で、(a)は杭穴を掘削した状態、(b)は杭穴内に既製杭を埋設し杭を構築した状態、(c)は杭の支持力を説明する図、(d)は引抜力を説明する図である。 図2(a)はこの発明の既製杭の正面図、(b)は(a)のA−A線における断面図、(c)は(a)のB−B線における断面図である。 図3(a)はこの発明の実施例で構築した杭構造の正面図、(b)は荷重を付加した場合の破壊状態の正面図、(c)は引抜力を付加した場合の破壊状態を表す。 図4は、同じく比較例の杭構造で、荷重を付加した場合の破壊状態の正面図を表す。 図5(a)は既製杭の他の実施例の正面図、(b)は(a)のC−C線における断面図、(c)は(a)のD−D線における断面図、(d)は(a)のE−E線における断面図である。 図6は、同じく既製杭の他の実施例で、(a)は正面図、(b)は底面図である。 図7は、この発明の実施例3の埋設方法を説明する概略した縦断面図で、(a)は杭穴を掘削した状態、(b)(c)は杭穴内に既製杭を埋設している途中の状態、(d)は杭を構築した状態である。 図8(a)乃至(d)は、実施例3に使用する既製杭の正面図である。 図9は、同じく実施例3に使用する既製杭で(a)は拡大横断面図、(b)は配筋を説明する概略した正面図である。 図10は、同じく実施例3に使用する他の既製杭で(a)は拡大横断面図、(b)は配筋を説明する概略した正面図である。 図11は、同じく実施例3に使用する他の既製杭で(a)は拡大横断面図、(b)は配筋を説明する概略した正面図である。 図12は、この発明の実施例4の埋設方法を説明する概略した縦断面図で、(a)は杭穴を掘削した状態、(b)(c)は杭穴内に既製杭を埋設している途中の状態、(d)は杭を構築した状態である。 図13(a)乃至(d)は、実施例4に使用する既製杭の正面図である。 図14は、同じく実施例4に使用する既製杭で(a)は拡大横断面図、(b)は一部正面図、(c)は配筋を説明する概略した正面図である。 図15(a)(b)は、従来例の基礎杭構造の概略した縦断面図である。
(1) 掘削ロッドを正転して、通常の杭穴と同等の杭穴1の軸部(穴径D00)2を掘削する。
(2) 掘削ロッドを逆転して(あるいは他の拡大掘削用の掘削ヘッドを使用して)、杭穴1に拡底部3を掘削し(図1(a))、穴径D11とする。拡底部3内にセメントミルク(支持地盤の強度に対応した固化強度100〜300kg/cm2 程度)を注入し、掘削土と撹拌・混合しソイルセメント化する。次に、杭穴軸部に杭周固定液としてのセメントミルクを注入し、掘削土と攪拌し、ほぼ杭穴口までソイルセメント化する。
(3) 次に杭穴1内に、下端部に環状リブ(外径D1 )5、6、7を形成したコンクリート製の既製杭(軸径D0 )4を下降させる(図1(b))。前記環状リブは下から順に5、6、7とする。
(4) 杭穴1の拡底部3内であって、拡底部3の地盤底面11から所定高さDH1(ソイルセメントの所要強度分の厚さ。通常は杭の軸径以上) に、最下端面が位置するように既製杭4を埋設して杭構造10を構築する。ここで、環状リブ5、6が杭穴1の拡底部3に配置される。
(5) ここで、既製杭4に垂直荷重が作用する場合は、既製杭4の軸部8の下端面8a、のみならず、既製杭4の側面の環状リブ5、6の下面5a、6aの周縁で、せん断力が伝搬して、夫々角θ1 (30°程度)の角度で円錐状の底面に相当する部分で支圧力が生じ、支持地盤面(地盤底面)11では、順にD8a 、D5a 、D6a に作用するが、拡底部13内での環状リブ5、6とソイルセメントとの一体性が高いため、垂直荷重は拡底部3の径全体(D11)で発現する。
従って、従来のストレート杭(ほぼD0相当)に比して、1本の杭10の支持力を大幅に増加できる。すなわち、杭強度および建物などに基づく必要な支持力は、拡底部径を寸法D8a以上から寸法D6a以下の広い範囲で選択することにより所望の支持力に設定できる(図1(c))。
(6) 次に、既製杭4に引抜応力が作用した場合は、側面の環状リブ5、6の上側の5b、6bの周縁でせん断力が伝播し夫々角θ2 (30°程度)の角度で上方へ円錐状に作用するが、拡底部3内の最上位の環状リブ6と拡底部3の最上端(杭穴軸部2の最下端)の水平面Xとの間隙DH2(ソイルセメントの所要強度分の厚さ。通常は杭の軸径以上)を設け(即ちDH2間は、環状リブが形成されていない)、拡底部3内での環状リブ部とソイルセメント部の一体性が高いため、引き抜き抵抗は拡底部径全体で発現できる。従って、垂直荷重の作用時と同様に、ストレート杭に比して、1本の杭の引抜力を大幅に増加できる。すなわち、杭基礎および建造物において必要な引抜力は、拡底部径を寸法D5b以上から寸法D6b以下の範囲で選択することにより所望の引抜力に設定できる(図1(d))。
ここで、突起部の支持力及び、引抜力を更に増加したい場合は、拡底部内の既製杭の突起の数を増加すること、または、突起の外径を大きくすることにより(突起が破壊されない限度において)でも可能である。
また、本例では、一個の突起のせん断力の負担範囲が隣の突起のせん断力の負担範囲と重ならないで互いに十分作用するように、せん断力の伝搬角度θ(θ1、θ2 ) より各突起の高さを勘案し、環状リブ等の間隔も充分余裕が取ってある。
従って、突起の段数(上下方向の数)を増加させる場合は、突起の支持力を充分に発揮させるために、上記のように各突起のせん断力の伝搬角度θ(θ1、θ2)を考慮した間隔を設定する必要がある(図1(b)(c))。
従って、杭穴1の拡底部3の径を大きくして底面の面積をできるだけ大きくすれば支持力および引抜力は増加するが、既製杭の強度、既製杭の埋設間隔及び掘削装置の掘削効率等を考慮した拡底部の最適掘削径は、杭穴の軸径の外径の1.2〜2.5倍程度で、杭穴を構成し、この杭穴の中には所定の突起部を設けた杭を使用することが望ましい。
また、前記埋設方法は、先端地盤強度がN値50未満の地質においても有効であるが、特に地質が良くない、シルト等を多く含み強度に影響を与える場合には、拡底部の掘削土を注入するセメントミルクと置換し、シルトなどの混入を極力低減し、少なくとも拡底部3のセメントミルクの品質を向上させ、固化後の強度を安定・向上させることもできる。
また、前記埋設方法では、拡底部3内にソイルセメント層を形成した後に、既製杭4を下降・沈設したが、基礎杭構造の所要品質により、従来からあるように、ソイルセメントを形成しながら既製杭4を埋設し、あるいは既製杭4を下降させた後にソイルセメントを形成することも任意である。
また、セメントミルクの注入時期も、基礎杭構造の所要品質により、拡底部3の掘削の前後、既製杭の下降の前後、いずれでも任意である。要は、拡底部3内に、固化後に所定の強度・品質のソイルセメント層が形成されればよい。
また、ここでは、既製杭として既製コンクリート杭で説明しているが、杭下端部に所定の突起を形成した既製杭であれば、コンクリート以外の他の杭材においても適用でき同様の効果が得られる。
即ち、上記の発明に基づき、既製杭の突起部(いわゆる節など)を杭穴の拡底根固め部に配置して埋設・定着させるに際して、「既製杭の形状及び構造」「杭穴拡底部の形状・寸法」「杭穴拡底部内の充填物の構成」「杭穴拡底部内での既製杭の埋設位置」等を考慮して基礎杭を築造することにより、その突起により作用する下向きのせん断力を利用した先端支持力による高鉛直支持力杭を実現し、更に同様にその突起による上向きのせん断力を利用した高引抜力杭を実現できる。
また、上記の発明による突起付きの高鉛直支持力及び高引抜力を有する既製杭において、他の杭特性とのバランスを取り、より高性能の基礎杭を構成するためには、拡底根固め部内において突起により先端支持力を発揮させた突起を有する下杭に、所望の上杭を連結した基礎杭を形成する新たな技術を導入ことにより、該高鉛直支持力及び高引抜力などに適合した所定形状寸法の上杭による所望性能すなわち水平支持力などを適合させたバランスの良い基礎杭を容易に実現できる。
また、上記発明は、高鉛直支持力及び高引抜力のいずれも強化した下杭としたが、求める基礎杭の性能により、高鉛直支持力又は高引抜力のいずれか一方のみを強化した下杭に、上杭を連結して基礎杭(既製杭)とすることもできる。この場合にも、高鉛直支持力又は高引抜力の一方のみを強化ができる構成で杭穴(拡底部)内に埋設される下杭に、同様の構成で上杭を連結する。この場合にも、従来に無い更にバランスの取れた高性能な基礎杭が得られることは言うまでもない。
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
この実施例に使用するコンクリート製の既製杭4は、全長に亘り、環状リブを形成してある。前記環状リブは、杭穴1の拡底部3内に埋設される環状リブ5、6、杭穴1の軸部2内に埋設される環状リブ12、12とを形成してある。また、前記既製杭4は、軸部8の外径D0 =60cm、各環状リブの外径D1 =75cm、環状リブのピッチP=100cmで形成されている(図2)。
次に、軸部2の径D00(80cm)、拡底部3の径D11(150cm)の杭穴1を掘削する(図3(a))。ここで、杭穴1の拡底部3内には所定固化強度(300kg/cm2 )のセメントミルクが注入され、掘削土と撹拌・混合したソイルセメントが充填されている。また、杭穴1の軸部2には、固化強度(200kg/cm2 )のセメントミルクが注入され、掘削土と撹拌・混合して生成されたソイルセメント(30Kg/cm2程度)がほぼ杭穴口まで充填される。
続いて、杭穴1内に既製杭4を下降させ、杭穴1の拡底部3内に既製杭4の下端部9を保持する。ここで、既製杭4の底面(最下端部面)8aは、拡底部3の地盤底面11より高さDH1(60cm。既製杭4の底面8aと地盤底面11と間のソイルセメント層の厚さ)に位置し、拡底部3内に位置する最上位の環状リブ6と拡底部3内の最上部の水平面Xとに間隙DH2(60cm)を設ける。
ソイルセメントの固化により、杭穴1内に既製杭4が埋設された杭構造10を構築する(図3(a))。
前記において、杭穴1内に既製杭4を回転させながら下降することもできる。このようにして、既製杭4の表面に土泥を固着させないようにすることもできる。
また、本実施例の埋設地盤の下層は砂質土であるが、埋設地盤が、シルト等を含み地質が良くない場合は、セメントミルクを拡底部の最下端に注入し、強度上良くないシルト等を杭穴の上層部に押し上げて置換することにより、拡底部内は好ましくないシルトなどを極力少なくした所要の強度および品質のセメントミルク層が形成される。
次に、上記杭構造10に垂直荷重W1を加え、支持地盤の強度を75kg/cm2 程度とした時に、最終的に(W1 =1000kg/cm2 程度)、杭構造10はクラック13aを生じて破壊される(図3(b))。
クラック13aは、杭穴1の拡底部3内で、上方に位置する環状リブ6の下面6aの周縁から生じ、鉛直となす角θ1 (約30°程度)で下方に底面14aの円錐状14prに形成される。
即ち、既製杭4の支圧力は、拡底部3内では、底面8aのみではなく、環状リブ5、6の下方に向けた面5a、6aの周縁から円錐状に生じることが確認できる(図1(c))。
また、上記同様で杭長14mの杭構造10において、引抜応力W2(W2 =10t/m2 程度)を加えたところ、最終的に引き抜きが生ぜず杭構造10は健全であった。
更に、引抜力を加えたところ、杭構造10は、クラック13bを生じて破壊される。クラック13bは杭穴1の拡底部3内で、下方に位置する環状リブ5の上面5bの周縁から生じ、鉛直と成す角θ2 (約30°程度)で上方に底面14bの円錐状14puに形成される(図3(c))。
即ち、既製杭4の引抜応力は、拡底部3内では環状リブ5、6の上方に向けた面5b、6bの周縁から円錐状に生じることが確認できる(図1(d)、図3(c))。
また、杭構造10はソイルセメントと既製杭4との一体性が良いため、垂直荷重がかった際には、地盤底面11から下方の地盤へもDA のように、応力が伝搬する(図1(c))。
また、上記と同様に、杭構造10に引抜応力がかかった際にも、拡底部3の最上部の水平面Xから上方の地盤へも、DB のように、応力が伝搬し、アンカー的な役割を果たす(図1(d))。
[実験例]
環状リブ5、6、・・・を形成していない同一の軸径D0 のストレート杭16を杭穴1内の同程度のセメントミルク内に埋設して基礎杭構造18を構成する(図4)。
同様の試験をすると、垂直荷重W3 (=500kg/cm2 程度)で、杭構造18のストレート杭16の底面17からやはり円錐状のクラック13cが生じて破壊する。
従って、W1 は、W3 の2倍程度であり、従来、垂直荷重には作用しないと思われていた環状リブおよびソイルセメントの一体性の品質向上の付加により、支圧力の大幅な増加が得られることが確認できた。
また同様に、引き抜き試験をすると、図4の基礎杭構造18の場合、通常の計算値では、5t/m2 程度の引抜力が認められるが、前述のように、本発明の杭構造10では、これの2倍以上の10t/m2 程度の引抜力W2 が確認でき大幅な増加が得られた。
即ち、上記実験では、ソイルセメントが充填された所定径の杭穴拡底部3内に既製杭の環状リブ5、6を埋設したこと、垂直荷重及び引抜力が確実に伝達するように既製杭4の底面8aと拡底部3の地盤底面11とに間隙DH1を、また、拡底部3内に位置する最上位の環状リブ6と拡底部3の最上部の水平面Xとに間隙DH2を設けたこと、かつ既製杭4とソイルセメントの一体性が良いこと、その他(セメントミルクの強度等)の条件により得られた結果であることが確認された。
次に図5、6に基づき他の実施例を説明する。
前記実施例1において、環状リブ5、6、・・・は、既製杭4の全長に亘って設けたが、少なくとも杭穴1の拡底部3内に位置する部分に環状リブを形成すればよい。
また、前記実施例1において、環状リブ5、6、・・・を設けたが、断続した突起(平面十字状)21、22、23を上下に交互に設けることができる(図5(a)。突起21は突起片21a、21aから(図5(d))、突起22は突起片22a、22aから(図5(c))、突起23は突起片23a、23aから(図5(a))、夫々形成される。
また、前記実施例1において、環状リブ5、6、7を同径としたが、下方から順にに大径となるようにD2 、D3 、D4 と異なる外径(D2 <D3 <D4 )とすることもでき(図6(a)(b))、あるいは逆に小径となるような外径(D2 >D3 >D4 )とすることもできる(図示していない)。
図7〜図11に基づきこの発明の他の実施例を説明する。実施例1の杭構造10では、杭穴1の拡底部3内は大幅な垂直荷重や引抜力に対する強化がなされるが、本実施例では、更に杭穴軸部も強化して、杭構造全体として軸部と拡底部でバランス良い強化を実現できる為の既製杭とし、合わせて施工効率も高めるものである。
前記実施例1、2では、基礎杭全体として垂直支持力(耐鉛直荷重)及び引抜力が2倍以上強化されるが、拡底部3内の既製杭は軸部に突起を形成して全体として所定の強度を確保するものである。この場合、拡底部3内の既製杭の軸部径は、その強度の割には小径となっているので、拡底部3内の既製杭の軸部径をその径のままで既製杭の上部(拡底部3の上方で、杭穴軸部に配置される既製杭の部分)に適用したならば、既製杭の上部で、一般に杭材の強度が不足しやすくなり、施工範囲が限られることにもなる。
よって、深さ方向での求める性能の違いに対応する観点から、上杭と下杭とを連結して基礎杭を構成し、上杭及び下杭を夫々求める性能に応じた構成とすることが有効となる。即ち、杭穴軸部での大きい曲げモーメントや圧縮力等が要求される施工現場では、その深さで要求される強度等の所定の仕様を満たした上杭を使用することとなる。そして、杭穴の拡底部内に埋設される下杭(所定の支持力、引抜力を有する)に、この上杭を連結して、既製杭を構成すると共に、所定の性能を満たした杭穴内(拡底部、軸部)に埋設すれば、施工範囲が限られず、基礎杭全体として要求される性能仕様へ対応が容易となる。このように、上杭と下杭を連結して基礎杭を構成すれば、汎用性、コスト面からも望ましい構成の基礎杭とすることができる。また、上杭下杭の連結による場合と同様に、1本の既製杭を使用する場合であっても、1本の既製杭の上部と下部とを求める性能に応じて、軸部径や突起部等を異なる仕様として構成することも同様に有効である。
即ち、本発明による拡底根固め部内において、先端支持力を発揮させる突起を有する下杭に、所望の上杭を連結して基礎杭を形成する新たな技術を利用し、更に根固め部内の下杭において、下杭の形状寸法を上杭の軸部若しくは外側の形状・寸法へ調整する部分を設けることによって、下杭と上杭との連結部の形状・寸法を一致させたりあるいは連結を容易にさせる寸法・形状とさせることができる。従って、上杭の形状寸法の選択範囲が広がり、水平支持力等の選択範囲も広がり、上杭と下杭の応力マッチングが容易となり基礎杭全体としての総合的性能を向上させることができる。
また、この突起による上方せん断力を発揮させた高引抜き力を有する下抗に対しても、同様に所望の上杭をバランス良く適合させることができることは勿論である。更に、下杭と上杭との連結おいては、両者の連結部を同一外径の円筒形状となるように下抗の調整部で整合させることが望ましい。これにより、上下両杭の応力バランスが取り易く、また連結作業においても確実で安定しており、本基礎杭が高性能であり従来にない施工管理が必要であるので、品質維持・管理上も有利となると共に経済性の面からも有利となる。
この実施例の既製杭4は、杭穴1の軸部2に位置する部分に使用する1本又は複数本の上杭30と杭穴1の拡底部3に位置する部分に使用する下杭32とから構成される中空コンクリート杭である。前記上杭30は、外形D9 (=700mm)、肉厚110mm、コンクリート圧縮強度850kg/cm2 に形成されている(図8(a))。
また、前記下杭32は、軸部33外径D0 (=600mm)、軸部肉厚90mmで、下端部及び中間部に環状リブ(外径D1 =750mm)5、6が2つ形成され、上端部は膨出され上杭30との連結部(外径D9 =700mm)34とし、当該連結部内厚165mm、コンクリート圧縮強度1000kg/cm2 に形成されている。ここで上杭として使用する杭は、通常はプレストレス量の大きいものを使用するため、上下杭の肉厚、コンクリート圧縮強度等を可変させて、軸力強度をほぼ同一強度にしている。前記膨出した連結部34と軸部33との境界は徐々に外径が変化する段部35が形成されている(図8(a))。下杭32の環状リブ5、6と段部35の間隔は、下杭32の底面8aから500mmの位置に環状リブ5を、1500mmの位置に環状リブ6を、2000mmの位置に段部35を夫々形成する。
本実施例では、基礎杭における各杭材の耐力をバランス良く構成し、かつ高強度を実現する構造としてある。即ち、根固め部において、下杭32はその軸部33を含めて段部35まで根固め部内に埋設している。
ここで、例えば、段部35まで根固め部外に出し、軸部33も上部が根固め部の外部に形成された場合には、軸部33の根固め部の外部に位置する部分の支持強度は、外径D0 (600mm)の通常の杭と同様となってしまう。よって、この部分の強度は、該高強度の根固め部支持強度の約2分の1、また段部35については上部に連結する上杭(700mm)の約70%程度しか支持強度を発揮することができない。
従って、根固め部及び杭材の強度を生かすには、下杭32の軸部33及び段部35を根固め部に埋設することが最適である。
また、下杭32は軸部33の円に沿って等間隔に配置されたPC鋼棒37、37の周りに螺旋鉄筋38が周設された配筋となっている(図9(a)(b))。
尚、前記下杭32の製造にあたり、専用の凹凸形状の型枠を使用しても良いが、従来の円筒杭(ストレート杭)の型枠の内面にテーパーを取り付けて突起部を形成することもできる(図示していない)。
次に、軸部2の径D00(=780mm)、拡底部3の径D11(=1500mm)の杭穴1を掘削し、実施例1と同様に、杭穴1の拡底部3内には所定固化強度(300kg/cm2 )のセメントミルクを注入し、掘削土と撹拌・混合したソイルセメントを充填し、杭穴1の軸部2には固化強度(200kg/cm2 )のセメントミルクを注入し掘削土と撹拌・混合して、ソイルセメント(30Kg/cm2程度)をほぼ杭穴口まで充填する(図7(a))。
続いて、下杭32を、杭表面に土泥を固着させないように、必要ならば回転を加えて、下降させ(図7(b))、上杭30を下杭32の連結部34に連結して、下降させる(図7(c))。杭穴1の拡底部3内に既製杭4の下杭32を保持する。ここで、既製杭4の下杭32の底面(最下端部面)8aは、拡底部3の地盤底面11より高さDH1(60cm程度)に位置している。また、下杭32の連結部34の段部35は、杭穴1の拡底部3内の上側に位置し、最上位の環状リブ6から拡底部の最上部の水平面Xまでの間隙DH2(80cm程度)を設け、接続面34a(上杭の下縁31、下杭の上縁)は杭穴1の軸部2に内に位置している。ソイルセメントの固化により、杭穴1内に既製杭4が埋設された杭構造10を構築する(図7(d))。
このように構築された杭構造10は、実施例1と同様に、垂直荷重に対して、底面8a、環状リブ5、6の下方に向けた面5a、6a、更に、段部35の下方に向けた面が作用して、実施例1以上に、負担する垂直荷重の大幅な増加が図れる(図1(c)、図3(b))。また、引抜力に対しても、実施例1と同様に、環状リブ5、6の上方に向けた面5b、6bが作用して、実施例1と同等以上の高引抜耐力を得ることができる(図1(d)、図3(c))。
前記において、上杭30の外径を下杭32の軸部33の外径より適宜大径にでき、既製杭4の軸部(上杭30)の曲げモーメントの増加を図り、杭穴1拡底部3での杭構造10としての強化を維持したまま、杭穴1軸部2での杭構造10の水平荷重、垂直荷重に対する耐力を強化できる。また、上杭30の外径を下杭32の軸部33の外径より大径とすることにより、杭穴1軸部2で、既製杭4(上杭30)の外面と杭穴1内面との間隙を小さくでき、杭穴1軸部2での杭周固定液の使用量を軽減できる。また、水平荷重、垂直荷重等に対する耐力を強化したまま、上杭30の外径を、下杭32の軸部外径より大きく、環状リブ5、6の外径よりも小さくすれば、杭表面積が小さくなり、杭の挿入がし易くなる。
前記実施例において、既製杭4の下杭32は、軸部33のみに配筋したが、上部の膨出した連結部34にも異形鋼棒39、39などの補強鉄筋を配置して、リング筋40、40で補強することもできる(図10(a)(b))。
このように、PC鋼棒37、37の外周に異形鋼棒39、39を配置することにより、地上構造物等から作用する鉛直荷重、水平力に対して、杭頭部の破壊を防止することができ、また、異形鋼棒39を配置することによって、過大な水平力に耐えることができる。異形鋼棒39の効果は、実施例4で詳細に述べる内容と同様であり、本実施例では記載を省略する。尚、実施例4と同様に、異形鉄筋39の長さの異なるものを複数(例えば2種類)用意し、隣合う異形鉄筋同志を異なる長さのものとすることもできる(図14(c))。
更に、下杭32はPC鋼棒37、37の間隙に、異形鋼棒など41、41を中空部36を経由して斜に配筋(いわゆる「X配筋」)して補強することもできる(図11(a)(b))。
また、前記実施例において、上杭30及び下杭32は、圧縮強度800〜1000kg/cm2の範囲で、強度を設定することが望ましいが、他の強度とすることもできる。
また、前記実施例において、既製杭4の下杭32の段部35の傾斜角度は、軸力の伝搬角度θ(θ1、θ2 。約30°)で形成することもでき、垂直荷重作用時に段部がより有効に作用するので望ましいが(図8(c))が、段部の角度は任意に設定できる。また、下杭32は、下端部にも上端部同様に膨出した連結部42を形成することもでき(図8(d))、この場合、更に支持力、引抜力を向上させることができる。
また、前記実施例において、既製杭4の下杭32は連結部34を上方に延長して長さLに形成することもできる(図8(b))。長さLは上部に連結する上杭30や杭構造10の上部に構築される構造物の荷重等を考慮して適宜選択して設定する。また、連結部34の長さLを必要な上杭30の長さとすれば、単杭として一体の既製杭とすることもでき、上杭30を不要とし、施工において接合作業を省くことができる。
また、前記実施例において、上杭30、下杭32はコンクリート杭としたが、コンクリート杭の外周に鋼管を巻いて構成し、あるいは同様の構造の鋼管杭とすることもできる(図示していない)。
(1) 図12〜図14に基づきこの発明の他の実施例を説明する。実施例3では、実施例1の杭構造10における垂直荷重や引抜力に対する強化に加え、杭穴軸部も強化して、杭構造全体としてに軸部と拡底部でバランス良い強化を実現できる為の既製杭とし、合わせて施工効率も高めた。本実施例では、更に、根固め部の高い鉛直支持力強度能力を最大限生かし、かつ生産効率をも高めるものである。
(2)既製杭の構成
この実施例の既製杭4は、杭穴1の軸部2に位置する部分に使用する1本又は複数本の上杭30と杭穴1の拡底部3に位置する部分に使用する下杭32とから構成される中空コンクリート杭である。前記上杭30は、外形D9 (=700mm)、肉厚110mm、コンクリート圧縮強度850kg/cm2 に形成されている(図13(a))。
また、前記下杭32は、軸部(下部軸部)33外径D0 (=600mm)、軸部肉厚90mmで、下端部及び中間部に環状リブ(外径D1 =750mm)5、6が2つ形成され、上端部は外径D9のストレート杭状の上部軸部43を形成し、該上部軸部43の上端部が上杭30との連結部(外径D9 =700mm)34が形成され、当該連結部内厚140mm、コンクリート圧縮強度1000kg/cm2 に形成されている。
前記上部軸部43は、上側(最上部に位置する)の環状リブ6の上面に連続して一体に形成されるので、実施例3のように、該部に軸部33は現れない。また、外径D9の上部軸部が、環状リブ6の外径D1(D1>D9)に連続して形成されるので、環状リブ6の外周部上面6cに斜め上向きの環状面が形成される(図13(a))。
ここで上杭30として使用する杭は、前記実施例3と同様に、通常はプレストレス量の大きいものを使用するため、上下杭の肉厚、コンクリート圧縮強度等を可変させて、軸力強度をほぼ同一強度にしている。下杭32の環状リブ5、6の間隔は、下杭32の底面8aから500mmの位置に環状リブ5を、1500mmの位置に環状リブ6を、夫々形成する。また、下杭32は軸部33の円に沿って等間隔に配置されたPC鋼棒37、37の周りに螺旋鉄筋38が周設された配筋となっている。また、上部軸部43の上端部には、継手端板45に固着された異形鉄筋44、44が環状に配置されている(図14(a)(b))。
このように、PC鋼棒37、37の外周に異形鋼棒44、44を配置することにより、地上構造物等から作用する鉛直荷重、水平力に対して、杭頭部の破壊を防止することができる。また、連結杭とした場合、上杭30から下杭32へ伝搬する鉛直荷重に対して、略均一に根固め部3までこれを伝達させることができる。このとき、上杭30のPC鋼棒37配筋位置と異形鋼棒44配筋位置とを一致させることが望ましい。また、異形鋼棒44の周囲に螺旋鉄筋を配置することもできる(図示していない)。
また、異形鋼棒44を配置することによって、過大な水平力に耐えることができる。また、異形鉄筋の長さの異なるものを複数(例えば2種類)用意し、隣合う異形鉄筋同志を異なる長さのものとすることによって(図14(b))、破壊荷重付近の荷重が作用した場合、一度に既製杭が破砕されてしまうことを防止できる。
尚、以上の異形鋼棒44の作用効果は、実施例3の異形鋼棒39においても同様に発揮できる。
尚、前記下杭32の製造にあたり、専用の凹凸形状の型枠を使用しても良いが、従来の円筒杭(ストレート杭)の型枠の内面にテーパーを取り付けて突起部を形成することもできる(図示していない)。
また、本発明の下杭32(リブ付きの高支持力杭の製造に関しては、上部軸部43の外径D9)寸法が、環状リブ5、6の外径D1寸法より大径であるために、簡単な製造型枠交換程度で、容易に従来の環状リブ付きの杭を製造する設備を利用でき、新たな製造ラインを構築せず量的にフレキシブルに生産できる利点がある。
(3)基礎杭の埋設方法・基礎杭構造
次に、実施例3と同様に、軸部2の径D00(=780mm)、拡底部3の径D11(=1100mm)の杭穴1を掘削し、実施例1と同様に、杭穴1の拡底部3内には所定固化強度(200kg/cm2 )のセメントミルクを注入し、掘削土と撹拌・混合したソイルセメントを充填し、杭穴1の軸部2には固化強度(200kg/cm2 )のセメントミルクを注入し掘削土と撹拌・混合して、ソイルセメント(30kg/cm2程度)をほぼ杭穴口まで充填する(図12(a))。
続いて、下杭32を、杭表面に土泥を固着させないように、必要ならば回転を加えて、下降させ(図12(b))、上杭30を下杭32の連結部34に連結して、下降させる(図12(c))。杭穴1の拡底部3内に既製杭4の下杭32の下端部を設置する。ここで、既製杭4の下杭32の底面(最下端部面)8aは、拡底部3の地盤底面11より高さDH1(50cm程度)に位置している。また、下杭32の最上位の環状リブ6から拡底部の最上部の水平面Xまでの間隙DH2(50cm程度)を設け、接続面34a(上杭の下縁31、下杭の上縁)は杭穴1の軸部2に内に位置している。ソイルセメントの固化により、杭穴1内に既製杭4が埋設された杭構造10を構築する(図12(d))。
このように構築された杭構造10は、実施例1と同様に、垂直荷重に対して、底面8a、環状リブ5、6の下方に向けた面5a、6a、の下方に向けた面が作用して、実施例1以上に、負担する垂直荷重の大幅な増加が図れる(図1(c)、図3(b))。この場合、実施例3より傾斜段部35が形成されていない分だけ、作用する下方に向けた面が少ないが、充分な効果が得られる。
また、引抜力に対しても、環状リブ5の上方に向けた面5b、環状リブ6の上向き外周部上面6cが作用して、実施例1と同等以上の高引抜耐力を得ることができる(図1(d)、図3(c))。
(4)作用
(a)下杭32の上部軸部43の外径をリブ外径D1より大きくしない(D9≦D1)ことによる作用効果:
杭基礎の設計に際しては、先ず築造する建造物を支持する所要鉛直支持力が設定されるので、その支持力の大部分を負担する根固め部(杭穴1の拡底部3)の構造およびその施工方法を前提として他の水平力等の条件が調整されるのが通例である。
本実施例では、杭基礎の施工における掘削作業は、前述のように、先ず、地上より、杭穴1の軸部2を掘削し、同時に掘削泥土を杭穴壁に練りつけながら通常10mから50m程度の深度まで杭穴1軸部2を形成する。次に、根固め部を形成する所定の深度に到達したならば、深度数メートルの範囲で掘削径を拡大して所定寸法形状の根固め部とし、所要固化強度のセメントミルクを所定の方法で充填し構築し、根固め部の支持力が効率的に発現できるよう施工されている。
そこで、注入されたセメントミルクと杭32、30の付着品質を確保するために、杭穴1の軸部2の掘削径は、根固め部に埋設する環状リブ5、6付の下杭32が、杭穴1軸部2を沈設中に掘削泥土が環状リブ5、6に固着しないで滑らかに埋設させるために必要な寸法であり、すなわち、根固め部にて支持力を発現する「下杭32の環状リブの外径(D1)+30mm程度」としてある。
従って、同様趣旨で、この杭穴1軸部2に埋設できる「下杭32の上部軸部43(上杭30)」の外径寸法D9は、根固め部に埋設される環状リブ5、6の外径D1より大きくない外径(D9≦D1)寸法とし、杭穴1軸部2の掘削径をそのまま利用する方が2重掘削にならず効率的である。
例えば、さらに大きい径の「上部軸部43(上杭30)」を使用する場合は、拡底部3の10倍以上の深度に亘る大径の杭穴1軸部2の掘削が必要となるが、軸部2の掘削径をさらに大きくする割には支持力の増加は少なく、経済性的に非効率である。
従って、杭穴掘削深度が大きく、既製杭4を複数連結して構成する場合には、杭穴1軸部2に埋設する上杭30の軸径と、根固め部に位置する下杭32の上部軸部43の軸径とは同一寸法で形成され互いに連結するので、この場合も根固め部の上部軸部43の軸径は環状リブ5、6外径Dより大きくしない方が有利である。
即ち、既製杭4を単抗とした場合は、根固め部の上端部内に位置する杭の上部軸部43が杭穴1軸部にも位置し一体であり(図13(b))、連結杭の場合は根固め部に位置する下杭の上部軸部43と杭穴1軸部2に位置する上杭30の外径は同一寸法Dで連結されている(図13(a))。
(b)上部軸部43の径D9を下部軸部33の軸径D0より大きくした作用効果:
根固め部に環状リブを有する高支持力を発揮する基礎杭4は、支持力発現は従来の杭の先瑞部支持力に加えて環状リブの支圧力を利用するために環状リブの上下および周辺部をも所定固化強度のセメントミルク層で覆い、杭穴内で既製抗とセメントミルクとを一体化した強固な根固め部を形成している。即ち、環状リブの支圧力を充分発現するために、環状リブが接触するセメントミルク固化面をできる限り広くかつ層を厚くする必要があり、その径差(D1−D0)を大きくするために、結果として環状リブ外径D1に対し下杭32の下部軸部33の軸径D0を総合的に支持力として許容できる範囲で出来る限り小さくしている。
また、上杭30(単杭の場合は、上部軸部43)の耐水平力を大きくする為の手段として、杭外径を大きくする方が、杭の素材強度を高め又はより高強度の杭種とするよりも、経済的で、杭材、杭穴径共に選択肢が広くなり、有利である。
従って、上部軸部43の径D9を下部軸部33の径D0に比べ大きくする方が根固め部の性能を充分に生かすためにも必要であり、またD9寸法を適宜選択することにより求められている建造物の必要な支持力と適合させることも容易で、経済的である。
(c)下杭32の上部軸部43を、最上に位置する環状リブ6の直上に形成した作用効果:
根固め部内に環状リブを位置させる高支持力を発揮する基礎杭は、支持力発現は杭の先端部支持力に加えて環状リブの支圧力を利用するために、環状リブの上下および周辺部にも所定固化強度のセメントミルク層で厚く覆い該杭とセメントミルクとを一体化した強固な根固め部を形成している。結果として、基礎杭の構造において、同一外径D0の円筒杭(ストレート状)に比べて、約2倍の鉛直支持力が得られることが実験により確認されている。
従って、杭穴根固め部の上端部から杭穴軸部に位置させる杭を、根固め部の下部軸部33(径D0)と同一寸法の同一杭材としたならば、根固め部の支持力に比して杭材強度が小さく、高支持力を発現する根固め部の能力をフルに生かすことが困難である。よって、根固め部の高鉛直支持力強度能力をフルに生かすためには、上部軸部43(上杭30)の杭材として根固め部の杭材より高い強度の高品質(一般に高価)の杭材を使用することも考えられるが、大径の杭との連結が必要になり技術的にも問題が多く、その施工が制約されることになる。
この解決策として、実施例3の図8(d)の構造の下杭32としても解決できるが、この方法は、根固め部の深さを多く取らなければならず、部材費および施工費ともに大きくなる。特に、段付根固め杭が長いことによるその杭の段付部の製造、運搬時の取扱いおよび根固め部の品質および信頼性に関して施工上固有の管理が必要となる。
この根本的解決のために、本実施例4では、最上部に位置する環状リブ6の直上に上部軸部43(大径軸部D9)を一体に形成する構造とした。
上記構造とすることにより、環状リブ6に前記寸法範囲で円筒杭を接続するのは製造設備上、型枠交換などで容易であるので、その建造物に対する所要支持力に合わせた杭穴の軸部抗径の選択が容易となる。
環状リブ6の上に小径の軸部33(軸径D0)および段差部がないために杭全長を短くでき、応力の弱い杭部分が全く無くなり製造、施工等品質管理上容易となる。簡便なコンパクトな根固め構造杭が得られた。
また、基礎杭においては、一般に所要引抜き力は鉛直支持力に比べて小さいため、鉛直支持力には2本の環状リブ5、6の下面5a、6aを利用し、引抜き力には1本の環状リブ5の上面5bを利用すれば実務的に充分可能である。
従って、上部軸部43(軸経D9)を最上部の環状リブ6の上側から直上に形成させれば、基礎抗としての鉛直支持力は環状リブ2本分の所望支持力が得られると共に環状リブ6での鉛直支圧力は上部の上部軸部43(大径)でさらに強度補強され信頼性が向上する。
また、引抜き力は、ほとんど環状リブ5の支圧力で負担させており、上部の環状リブ6は殆ど寄与していないので、実用上は問題なく、逆に効率的な構造となっている。即ち、鉛直支持力、引抜き力ともに実用上バランスが取れており、大きい水平支持力及び鉛直支持力の発現を可能とし、従来にない実用的な高支持力を有する杭基礎構造が得られた。
(5)既製杭32の配筋
前記既製杭32は、例えば、下部軸部径D0 =600mm、突起部径D1 =750mm、上部軸径D9 =700mmの既製杭4の場合、PC鋼棒37を軸部径D0(600mm)の肉厚90mmのほぼ中央部に位置するように複数本均等に(環状等間隔に)配置し、その外周を螺旋鉄筋38で巻回し、鉄筋かごが形成されている(図14(c))。このとき、巻回する螺旋鉄筋38のピッチは杭全長に亘って同ピッチとすることが望ましい。
次に、鉄筋かごの両端に、上下杭端板を取付ける。このとき、上部軸部43側の杭端板45には、異形鋼棒44、44が取り付けられており、PC鋼棒37、37の外側でかつPC鋼棒37とPC鋼棒37の間に配置される(図14(a))。
また、異形鋼棒44、44の長さは2種類用意し(例えば、500mmと700mm)、異なる長さの異形鋼棒44が夫々交互に位置するように配置する(図14(b))。尚、異形鋼棒44は上部軸部43の全長に亘って設けることもできる(図示していない)。
その後、従来の既製杭の製造法と同様に、PC鋼棒37、37を引張して、プレストレスを導入し、遠心成形を行い、所定の養生をして、本発明の既製杭32、4が完了する(図14(c))。
上記の様に配筋して形成した、既製杭32(下部軸部径D0 =600mm、突起部径D1 =750mm、上部軸径D9 =700mm)の上端に外径700mmの円筒杭を連結して、同一外形で異形鉄筋44の有無による2種類の試験体で曲げ試験を行った。
異形鋼棒44を設けた既製杭の方が、異形鋼棒44を設けなかった既製杭と比較して、約1.5倍の強度値を得ることができた。
このことから、異形鋼棒44を設けた既製杭を用いることが望ましいが、地上構造物等からの応力を考慮して、適宜選択してもよい。
(6)他の実施例
前記において、上杭30の外径を下杭32の軸部33の外径より適宜大径にでき、既製杭4の軸部(上杭30)の曲げモーメントの増加を図り、杭穴1拡底部3での杭構造10としての強化を維持したまま、杭穴1軸部2での杭構造10の水平荷重、垂直荷重に対する耐力を強化できる。また、上杭30の外径を下杭32の軸部33の外径より大径とすることにより、杭穴1軸部2で、既製杭4(上杭30)の外面と杭穴1内面との間隙を小さくでき、杭穴1軸部2での杭周固定液の使用量を軽減できる。また、上杭30の外径を、水平荷重、垂直荷重等に対する耐力を強化したまま、下杭32の軸部外径より大きく、環状リブ5、6の外径よりも小さくすれば、杭表面積が小さくなり、杭の挿入がし易くなる。
前記実施例において、実施例3と同様に、既製杭4の下杭32は、軸部33のみに配筋したが、上部の膨出した連結部34にも異形鋼棒39、39などの補強鉄筋を配置して、リング筋40、40で補強することもできる(図10(a)(b))。
更に、下杭32はPC鋼棒37、37の間隙に、異形鋼棒など41、41を中空部36を経由して斜に配筋(いわゆる「X配筋」)して補強することもできる(図11(a)(b))。
また、前記実施例3と同様に、前記実施例において、上杭30及び下杭32は、圧縮強度800〜1000kg/cm2の範囲で、強度を設定することが望ましいが、他の強度とすることもできる。
また、前記実施例において、下杭32は、下端部にも上端部同様に膨出した連結部42を形成することもでき(図13(d))、この場合、更に支持力、引抜力を向上させることができる。
また、前記実施例において、上部軸部43の中間部に更に、環状リブ7を形成することもできる(図13(c))。上部軸部43に環状リブ7を設けることによって、杭穴1の軸部2に該環状リブ7が位置する。これによって、杭の表面積が増大し、杭穴軸部2において周面支持力を増強することができ、杭穴の根固め部3での支持力と合わせて、更に基礎杭構造全体としての強度が向上する。また、上部軸部43に環状リブ7を設け、かつ上部軸部43の環状リブ7の外径をD1で略同一とすることにより、掘削された杭穴1に既製杭32、30を挿入する際に既製杭32、30が傾斜してしまう、いわゆる偏心を防止することができる。
また、前記実施例において、前記実施例3と同様に、既製杭4の下杭32は連結部34を上方に延長して長さLに形成することもできる(図13(b))。長さLは上部に連結する上杭30や杭構造10の上部に構築される構造物の荷重等を考慮して適宜選択して設定する。また、連結部34の長さLを必要な上杭30の長さとすれば、単杭として一体の既製杭とすることもでき、上杭30を不要とし、施工において接合作業を省くことができる。
また、前記実施例において、実施例3と同様に、上杭30、下杭32はコンクリート杭としたが、コンクリート杭の外周に鋼管を巻いて構成し、あるいは同様の構造の鋼管杭とすることもできる(図示していない)。
1 杭穴
2 杭穴の軸部
3 杭穴の拡底部
4 既製杭
5、6、7、12 環状リブ(既製杭)
8 軸部(既製杭)
8a 既製杭の底面(最下端面)
10 杭構造
11 支持地盤面(地盤底面)
16 ストレート杭(従来例)
18 杭構造(従来例)
21、22、23 突起
24 ST杭(従来例)
26 杭穴(従来例)
27 杭穴の軸部(従来例)
28 杭穴の拡底部(従来例)
30 上杭
32 下杭
33 下杭の軸部
34 下杭の連結部
35 下杭の段部
37 PC鋼棒
39 異形鋼棒
43 下杭の上部軸部
44 異形鋼棒

Claims (2)

  1. 杭穴の軸部の下端部に拡底部を形成した杭穴に埋設する既製杭であって、以下のように構成したことを特徴とする既製杭。
    (1) 前記既製杭は、埋設予定の杭穴の拡底部に位置する部分に突起を有する構造とし
    (2) 前記既製杭は、前記杭穴の拡底部に位置し、かつ前記突起を有する下部軸部を有し、
    (3) 前記下部軸部の上に、前記下部軸部より大径の上部軸部を形成し
    (4) 「前記下部軸部と前記上部軸部の境界に、下方に向けた面を有する段部を形成し」あるいは「下方に向けた面を有する突起であって、前記下部軸部の最上部に位置する突起の上面に連続して上部軸部を形成し」
    (5) 「前記段部」又は「前記下部軸部の最上部に位置する突起」を前記杭穴の拡底部内に位置する高さに形成した。
  2. 埋設予定の杭穴の拡底部に位置する下杭の上に、上杭を連結した既製杭であって、以下のように構成したことを特徴とする既製杭。
    (1) 前記下杭は、埋設予定の杭穴の拡底部に位置する部分に突起を有する構造とし
    (2) 前記下杭は、前記杭穴の拡底部に位置し、かつ前記突起を有する下部軸部を有し、
    (3) 前記下部軸部の上に、前記下部軸部より大径の上部軸部を形成し
    (4) 「前記下部軸部と前記上部軸部の境界に、上方に向けて徐々に大径となり、下方に向けた面を有する段部を形成し」あるいは「下方に向けた面を有する突起であって、前記下部軸部の最上部に位置する突起の上面に連続して上部軸部を形成し」
    (5) 「前記段部」又は「前記下部軸部の最上部に位置する突起」を前記杭穴の拡底部内に位置する高さに形成した。
    (6) 前記上部軸部の上端部を上杭との連結部とした。
    (7) 前記下杭と前記上杭との連結部の形状・寸法を一致させて構成した。
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