JP4817102B2 - ダイヤモンド状炭素薄膜、それを表面に成膜したプラスチックフィルム及びガスバリア性プラスチックボトル - Google Patents

ダイヤモンド状炭素薄膜、それを表面に成膜したプラスチックフィルム及びガスバリア性プラスチックボトル Download PDF

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Description

本発明は、共有性結合を有し、ネットワーク構造の中に中空構造を形成する材料の中に、イオン性結合材料を取り込ませた、原子密度が高い材料からなる薄膜に関する。特に、共有性結合を有する材料をダイヤモンド状炭素として、イオン性結合材料を取り込んだダイヤモンド状炭素薄膜に関する。さらに、このダイヤモンド状炭素薄膜を表面に成膜したプラスチックフィルム及びプラスチックボトルに関する。このダイヤモンド状炭素薄膜は、プラスチックフィルム、プラスチックボトル等のプラスチック成形体にガスバリア性を付与する。
プラスチック容器は、臭いが収着しやすく、またガスバリア性が壜や缶と比較して劣るため、ビールや発泡酒等の炭酸飲料には用いることが難しかった。そこで、プラスチック容器における収着性やガスバリア性の問題点を解決すべく、硬質炭素膜(ダイヤモンド状炭素(DLC)等)をコーティングした容器が開示されている(例えば特許文献1を参照。)。
特開平8−53116号公報
本発明者らは、ガスバリア性を有する薄膜について種々検討したところ、ガスバリア性を有する薄膜は、原子レベルで稠密であるほどガス拡散阻止能が高いことを見出した。
ガスバリア性を有する薄膜として実績のあるダイヤモンド状炭素薄膜は、共有性結合を有し、ネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造は中空構造を作り、その内部には、オングストローム乃至ナノメーターオーダーサイズの空間が存在すると考えられる。
そこで、本発明の目的は、ダイヤモンド状炭素薄膜を原子レベルで稠密な構造とすることで、そのガスバリア性能を高めることである。また、ダイヤモンド状炭素薄膜の可視光における着色を抑制することである。さらに、稠密なダイヤモンド状炭素薄膜をプラスチックフィルム、プラスチックボトル等のプラスチック成形体の表面に成膜することで、プラスチック成形体に高いガスバリア性を付与することを目的とする。
本発明者らは、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素に、最密充てん構造をとるイオン性結合材料を含有させることで、ダイヤモンド状炭素の原子密度を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた組成を有し、且つ、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相を主相として有し、前記イオン性結合材料が、酸化ハフニウムであり、数2で求められる酸化ハフニウムの含有量が47原子%以上90原子%未満であることを特徴とするダイヤモンド状炭素薄膜。
(数2)酸化ハフニウムの含有量(原子%)=(ハフニウム原子の数)/(炭素原子の数+ハフニウム原子の数)×100
この化合物は最密充てん構造をとり、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造に入りやすい。また、これらの化合物は化学的に安定であり、ダイヤモンド状炭素薄膜の化学的安定性を低下させにくい。
本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜では、前記ダイヤモンド状炭素を包接格子とし、該ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料が包接されてなり、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相が包接化合物相であることが好ましい。ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にイオン性結合材料を包接させることで、原子密度を高め、高いガスバリア性を付与することができる。また、薄膜をプラスチック基体上に形成する際には、イオン性結合材料を物理化学的に安定して薄膜中に取り込むことができる。
また、本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた組成を有し、且つ、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相を主相として有し、前記イオン性結合材料は酸化アルミニウムであり、数3で求められる酸化アルミニウムの含有量が50原子%以上90原子%未満であることを特徴とする。この化合物は最密充てん構造をとり、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造に入りやすい。また、これらの化合物は化学的に安定であり、ダイヤモンド状炭素薄膜の化学的安定性を低下させにくい。また、着色が少なく、密着性に富み、ガスバリア性が高い。
(数3)酸化アルミニウムの含有量(原子%)=(アルニウム原子の数)/(炭素原子の数+アルニウム原子の数)×100
本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜では、前記ダイヤモンド状炭素のネットワークを構成する寄与する元素が炭素であり、ケイ素原子を含まないことが好ましい。
本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜では、前記イオン性結合材料が酸化ハフニウムであり、数2で求められる酸化ハフニウムの含有量が47原子%以上90原子%未満であることが好ましい。着色が少なく、密着性に富み、ガスバリア性が高い。
(数2)酸化ハフニウムの含有量(原子%)=(ハフニウム原子の数)/(炭素原子の数+ハフニウム原子の数)×100
本発明に係るガスバリア性プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの表面に、本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜が形成されていることを特徴とする。ガスバリア性の高いプラスチックフィルムとなる。
本発明に係るガスバリア性プラスチックボトルは、プラスチックボトルの内表面、外表面又はその両方に、本発明に係るダイヤモンド状炭素薄膜が形成されていることを特徴とする。ガスバリア性の高いプラスチックボトルとなる。
本発明により、従来のダイヤモンド状炭素薄膜よりもガスバリア性能が高いダイヤモンド状炭素薄膜を提供することができる。また、ダイヤモンド状炭素薄膜の可視光における着色を抑制することができる。さらに、このダイヤモンド状炭素薄膜をプラスチックフィルム、プラスチックボトル等のプラスチック成形体の表面に成膜することで、プラスチック成形体に高いガスバリア性を付与することができる。
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、基体上に形成された薄膜で、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた組成を有し、且つ、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相を主相として有する。図1は、本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜の格子構造の概念を説明するための模式図である。イオン性結合材料を含有する本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、例えば、図1に示す格子構造300を有する。格子構造300は、ダイヤモンド状炭素の炭素原子1のネットワーク構造100の格子が形成する空間2の中に、イオン性結合材料200を取り込んだ構造である。イオン性結合材料200は、空間2の中に取り込まれることで、格子構造300を高密度化させる材料としての役割をなす。
ダイヤモンド状炭素は共有性結合材料であり、図1に示すように炭素原子1のネットワーク構造100を形成する。共有性結合材料のネットワーク構造100は、結晶構造或いは非晶質構造の三次元構造をとるが、ダイヤモンド状炭素の場合は非晶質構造の三次元構造をとる。そして、炭素などの共有結合を持つ材料は、強い結合を持つ反面、結合手が互いに反発して内部に中空構造を作り、空間2が形成される。本発明でいうダイヤモンド状炭素(DLC)とは、iカーボン又は水素化アモルファスカーボン(a−C:H) と呼ばれる膜のことであり、硬質炭素も含まれる。またDLCはアモルファス状の炭素であり、SP結合も有する。ここで、ネットワーク構造100中には、ネットワーク構造の形成に寄与しない水素原子(不図示)も存在する。水素原子含有量は、例えば水素原子と炭素原子の総数に対して、5〜60原子%である。
イオン性結合材料200であるか否かは、イオン半径、電気陰性度の差等の構成原子の性質により、イオン性結合を有するか否かで決まるが、例えば、イオン性結合を有する化合物としては金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物がある。イオン性結合材料200は、イオン性結晶であれば、イオン半径で材料内が満たされた稠密な構造、例えば最密充てん構造をとり、高い原子密度を有する。例えば、気相法によりイオン性結合材料を原子レベル若しくは分子レベルに微細化して供給しながら同時にダイヤモンド状炭素薄膜を合成すれば、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造100の中空構造の空間2に容易に微細なイオン性結合材料を入れ込むことができ、且つ、合成終了後にはイオン性結合材料を閉じ込めることができる。イオン性結合材料200を閉じ込めたダイヤモンド状炭素300は、高い原子密度を有し、気体に対して透過阻止能力が高くなる。本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜において、光学的な透明度を確保するためにイオン性結合材料200は、光学的なバンドギャップが3.2eV以上であることが好ましい。
金属酸化物としては、例えば、酸化ハフニウム又は酸化アルミニウムが好ましい。
ダイヤモンド状炭素とイオン性結合材料とにより形成される相は、相分離することなく非晶質の単相となる。本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、ダイヤモンド状炭素とイオン性結合材料とにより形成される相を第一相、すなわち主相として有する。本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、第二相として、空間2に取り込まれきれなかったイオン性結合材料の相が少ないほど好ましく、ダイヤモンド状炭素とイオン性結合材料とにより形成される相のみからなることがより好ましい。また、本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜では、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲で、イオン性結合材料以外の材料を含有させても良い。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜の格子構造300は、より理想的には、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造100を包接格子とし、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料200が包接されてなる構造をとる。ここで、ダイヤモンド状炭素とイオン性結合材料とにより形成される相が包接化合物相である。図1では説明の容易化のため、この包接型の格子構造を図示した。ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にイオン性結合材料を包接させることで、原子密度が高まると考えられる。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜の成膜を施す対象となる基体は、特に制限がなく、例えば、プラスチック成形体をはじめ、金属、合金、セラミックス又はガラスである。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、包接型の格子構造300をとるため、例えば図1に示すネットワーク構造100にイオン性結合材料を含有しない従来のダイヤモンド状炭素薄膜と比較して原子密度が高いと考えられ、硬度が高いと認められる。このことから、工具や基板の表面に成膜すればそれらの硬質化に寄与する。
また、本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜は、包接型の格子構造300をとるため、原子密度が高いと考えられ、ガスバリア性が高い。また、イオン性結合材料を含有しないダイヤモンド状炭素薄膜と同様に、基体の伸縮に対する伸縮追随性を保持している。このことから、柔軟でガスバリア性が要求されるプラスチック成形体、例えば、プラスチックフィルムやプラスチック容器、特にプラスチックボトル、の表面に成膜すればそれらのガスバリア性能の向上に寄与する。
本実施形態に係るガスバリア性プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの表面に、本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜が形成されている。ここでプラスチックシートの厚みは、特に制限はないが、例えば10〜300μmである。また、本実施形態に係るガスバリア性プラスチックボトルは、プラスチックボトルの内表面、外表面又はその両方に、本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜が形成されている。どの表面に成膜するかは適宜選ばれる。そして、イオン性結合材料を含有する本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜はガスバリア性が高いため、それを表面に成膜した本実施形態に係るガスバリア性プラスチックフィルム及び本実施形態に係るガスバリア性プラスチックボトルを用いれば、中身の長期保存が可能となる。本実施形態に係るガスバリア性プラスチックフィルムの酸素ガス透過度は、例えば、1.43cc/(m・日)であり、本実施形態に係るガスバリア性プラスチックボトルの酸素ガス透過度は、例えば、0.0010cc/(pkg・日)である。pkgは例えば容量500ml容器1本当たりという意味である。
ここでボトルとは、蓋若しくは栓若しくはシールして使用するボトル、またはそれらを使用せず開口状態で使用するボトルのいずれも含む。開口部の大きさは内容物に応じて決める。また、剛性を適度に有する所定の肉厚を有するボトルと剛性を有さないシート材により形成されたボトルのいずれも含む。本発明に係るプラスチックボトルの充填物は、例えば、炭酸飲料若しくは果汁飲料若しくは清涼飲料等の飲料、並びに医薬品、農薬品、又は吸湿を嫌う乾燥食品である。
ここで、本実施形態に係るガスバリア性プラスチックボトル及びプラスチックボトルに成膜されるダイヤモンド状炭素薄膜の膜厚は、例えば0.003〜5μmとし、5〜50nmとすることが好ましい。
本実施形態に係るガスバリア性プラスチックボトル及びプラスチックボトルに使用される樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系コポリエステル樹脂(ポリエステルのアルコール成分にエチレングリコールの代わりに、シクロヘキサンディメタノールを使用したコポリマーをPETGと呼んでいる、イーストマンケミカル製)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂である。この中で、PETが特に好ましい。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜の製造方法は、各種成膜法を適用することができるが、炭素をグラファイトではなく、ダイヤモンド型の構造とするために、例えば、特許文献1で開示されているプラズマCVD法又はパルスレーザー堆積法を適用する。基板温度は、プラスチック基板とする場合には熱劣化しない程度の温度、例えば80℃以下の低温か、短時間の成膜とする。
プラズマCVD法によれば、例えば、炭素源とするアセチレン等の炭化水素ガスと、酸化、窒化又は炭化することで前述の金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物となる金属源を含む揮発性ガス原料とを同時に供給した状態で、成膜プロセスを行なうことで、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた薄膜が成膜される。
一方、パルスレーザー堆積法は、炭素を含むターゲットと酸化、窒化又は炭化することで前述の金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物となる金属源を含むターゲットとを準備し、これらのターゲットにKrFレーザー等のレーザー光を交互に照射して揮発させ、基板にダイヤモンド状炭素層とイオン性結合材料層とを交互に積層させる。このとき、各層の厚さは、例えば0.1〜5nmとし、1nm以下が好ましい。成膜時に積層膜内で原子の拡散が生じ、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた薄膜が最終的に形成される。或いは、炭素と前記金属源の両方を含むターゲットを準備して、レーザー光を照射して、基板にダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた薄膜を成膜しても良い。
薄膜を成膜することで、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート(PETシート)のガスバリア性がどの程度向上するかを確かめることを目的として下記の実験を行なった。ただし、本実施例により本発明が限定して解釈されることはない。
(構造・酸素ガスバリア性について)
(実施例1)
PETシート(厚さ200μm)を100×100mmに切り出して、基板とした。パルスレーザー堆積法により、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた薄膜をPETシートの片面に成膜した。ここで、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットとグラファイトターゲットについて、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)を一方のターゲットに10パルス照射した後、他方のターゲットに10パルス照射し、これを1セットとして全部で10セット繰り返した。グラファイトターゲットを10パルス照射することは1nmのダイヤモンド状炭素層を形成し、また、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットを10パルス照射することは1nmの酸化ハフニウム層を形成する条件であったが、厚さ1nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ1nm相当の酸化ハフニウム層を交互に全部で20層積層した。厚さでは20nmであった。これを実施例1とした。
実施例1のサンプルについて、ダイヤモンド状炭素に酸化ハフニウムを含有させた薄膜をX線回折で観察したところ、Hf−Cの結合は検出限界以下であり、アモルファス構造が示された。このことから、酸化ハフニウムとダイヤモンド状炭素とは相分離せずに、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にナノオーダーサイズの酸化ハフニウムが取り込まれた状態となっていると考えられる。すなわち、厚さ1nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ1nm相当の酸化ハフニウム層を交互に全部で20層積層したが、成膜時に各層をまたがって拡散が生じ、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料である酸化ハフニウムを含有させた薄膜が最終的に形成されたと考えられる。なお、当該薄膜において、ダイヤモンド炭素薄膜中における酸化ハフニウムの含有量は50原子%であると見積もることができる。ここで、本稿において、含有量とは、数1で求められる含有量であり、例えば、包接格子を構成する炭素原子と、包接されるイオン性結合材料を構成する金属原子との比を原子%で表したものである。例えば、実施例1においては、数2が適用され、また、炭素原子とハフニウム原子との原子数比が1:1であると見積もることができる。
さらに、実施例1について、酸素ガス透過度を測定した。酸素ガス透過度は、 Modern Control社製Oxtran2/21を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定した。測定開始後、3日経過の安定状態となったところで酸素ガス透過度の値を読み取った。結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)をグラファイトターゲットに3パルス照射した後、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットに17パルス照射し、これを1セットとして全部で10セット繰り返した以外は同様にして、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料として酸化ハフニウム(HfO)を含有させた薄膜をPETシートの片面に成膜した。グラファイトターゲットを3パルス照射することは0.3nmのダイヤモンド状炭素層を形成し、また、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットを17パルス照射することは1.7nmの酸化ハフニウム層を形成する条件であったが、厚さ0.3nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ1.7nm相当の酸化ハフニウム層を交互に全部で20層積層した。厚さでは20nmであった。これを実施例2とした。
実施例2のサンプルについて、ダイヤモンド状炭素に酸化ハフニウムを含有させた薄膜をX線回折で観察したところ、Hf−Cの結合は検出限界以下であり、アモルファス構造が示された。このことから、酸化ハフニウムとダイヤモンド状炭素とは相分離せずに、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にナノオーダーサイズの酸化ハフニウムが取り込まれた状態となっていると考えられる。すなわち、厚さ0.3nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ1.7nm相当の酸化ハフニウム層を交互に全部で20層積層したが、成膜時に各層をまたがって拡散が生じ、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料である酸化ハフニウムを含有させた薄膜が最終的に形成されたと考えられる。なお、当該薄膜において、ダイヤモンド炭素薄膜中における酸化ハフニウムの含有量は85原子%であると見積もることができる。
さらに、実施例2について、実施例1と同様に酸素ガス透過度を測定した。結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1で使用したPETシートと同じPETシートについて、成膜を行なわずに酸素ガス透過度の測定を実施例1と同様に行なった。結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1で使用したPETシートの片面に、パルスレーザー堆積法により、ダイヤモンド状炭素薄膜を成膜した。ここで、グラファイトターゲットのみについて、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)を200パルス照射した。この結果、酸化ハフニウムを含有しないダイヤモンド状炭素薄膜が20nmの厚さで成膜された。これを比較例2とした。実施例1と同様にして、酸素ガス透過度を測定した。結果を表1に示した。
(比較例3)
実施例1で使用したPETシートの片面に、パルスレーザー堆積法により、酸化ハフニウム薄膜を成膜した。ここで、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットのみについて、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)を200パルス照射した。この結果、酸化ハフニウム薄膜が20nmの厚さで成膜された。これを比較例3とした。実施例1と同様にして、酸素ガス透過度を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0004817102
表1の結果を基にして、PETシート上のHfO−DLC薄膜の組成(括弧内は酸化ハフニウムの含有量(原子%)と酸素ガス透過度との関係を図2に示した。
実施例1及び2、比較例1〜3をそれぞれ比較すると、薄膜を成膜した実施例1、実施例2、比較例2及び比較例3は、薄膜を成膜しなかった比較例1と比べて、大幅に酸素ガス透過度が低下した。すなわち、ガスバリア性が向上していた。次に、薄膜を成膜した実施例2、比較例2及び比較例3を比較すると、単組成の薄膜を成膜した比較例2(DLC薄膜)及び比較例3(HfO薄膜)よりも、実施例2(HfO−DLC(85)薄膜)のほうが、酸素ガス透過度が低かった。すなわち、実施例2はガスバリア性が高い。この実施例2の酸素ガス透過度が、比較例2と比較例3の酸素ガス透過度の平均値とならず、比較例2と比較例3よりも低くなった理由は、実施例2のHfO−DLC薄膜が単なるHfOとDLCの混合膜ではなかったことを示唆するものである。すなわち、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素を包接格子とし、その包接格子中にイオン性結合材料である酸化ハフニウム(HfO)が包接されていて、ダイヤモンド状炭素と酸化ハフニウムとにより形成される相が包接化合物相であると考えられる。このような構造をとることにより、原子密度が高くなり、結果として、ガスバリア性が単組成膜と比較して高くなったと考えられる。また、実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1のガスバリア性が良いが、この理由は、ダイヤモンド状炭素が形成するネットワーク構造の一部に酸化ハフニウム(HfO)が包接されているからと考えられる。実施例1と実施例2とを比較すると実施例2がより多くの酸化ハフニウム(HfO)が包接されていることで、ガスバリア性がより向上したと考えられる。
実施例2について、ラマン解析を行なった。図3は、ラマン分光スペクトルであり、(a)はPETシート(未コート)のスペクトル、(b)は実施例2のスペクトルである。図3の(a)と(b)とを比較すると、DLCに由来するピーク(波長1500nm付近)と酸化ハフニウムに由来するピーク(波長500nm付近)が観察された。CとHfとOとが反応して結合していれば、このようなピークが観察されないが、DLCに由来するピークと酸化ハフニウムに由来するピークの両方が観察されたことから図1に示すような、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にナノオーダーサイズの酸化ハフニウムが取り込まれた状態となっていることが確認できた。
(実施例3)
実施例1において、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)をグラファイトターゲットに2パルス照射した後、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットに18パルス照射し、これを1セットとして全部で10セット繰り返した以外は同様にして、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料として酸化ハフニウム(HfO)を含有させた薄膜をPETシートの片面に成膜した。グラファイトターゲットを2パルス照射することは0.2nmのダイヤモンド状炭素層を形成し、また、酸化ハフニウム(HfO)ターゲットを18パルス照射することは1.8nmの酸化ハフニウム層を形成する条件であったが、厚さ0.2nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ1.8nm相当の酸化ハフニウム層を交互に全部で20層積層した。厚さでは20nmであった。これを実施例3とした。実施例3のサンプルは、ダイヤモンド炭素薄膜中における酸化ハフニウムの含有量が90原子%と見積もることができる。このサンプルについて、実施例2と同様にラマン解析を行なった。図4は、ラマン分光スペクトルであり、(a)はPETシート(未コート)のスペクトル、(b)は実施例3のスペクトルである。図4の(a)と(b)とを比較すると、図4(b)には、PETシートに由来するピークを除外すれば、DLCに由来するピーク(波長1500nm付近)が観察されず、酸化ハフニウムに由来するピーク(波長500nm付近)のみが観察された。実施例2と実施例3の組成を考慮して、図3(b)と図4(b)とを比較すれば、次のことがわかる。すなわち、DLCの量が10原子%と少ないため、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造が形成されていない状態で、酸化ハフニウムが分散していると考えられる。したがって、酸化ハフニウム‐DLC薄膜の場合、ダイヤモンド炭素薄膜中における酸化ハフニウムの含有量が0原子%超〜90原子%未満の範囲において、図1に示すような、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にナノオーダーサイズの酸化ハフニウムが取り込まれた状態となっていることが確認できた。
同様のラマン解析を各実施例に行った結果を表2に掲載した。いずれのイオン性結合材料を用いた場合もHfO−DLCと同様に、DLCに由来するピークとイオン性結合材料に由来するピークの両方が、イオン性結合材料の含有量が0原子%超〜90原子%未満の場合に限って観察された。この理由として、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造中に包接された各イオン性結合材料は、イオン半径の大小に顕著な差異がなく、当該ネットワーク構造中への包接可能量に顕著な差異が生じない結果、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造が包接格子として機能できるイオン性結合材料の最大含有量が同程度となるためと推測される。

Figure 0004817102
表2において「有」:DLCに由来するピークとイオン性結合材料に由来するピークの両方あり。
表2において「無」:DLCに由来するピークなし。
参考例4
PETシート(厚さ200μm)を100×100mmに切り出して、基板とした。パルスレーザー堆積法により、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた薄膜をPETシートの片面に成膜した。ここで、酸化亜鉛(ZnO)ターゲットとグラファイトターゲットについて、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)を酸化亜鉛(ZnO)ターゲットに5パルス照射した後、グラファイトターゲットに15パルス照射し、これを1セットとして全部で10セット繰り返した。グラファイトターゲットを15パルス照射することは1.5nmのダイヤモンド状炭素層を形成し、また、酸化亜鉛(ZnO)ターゲットを5パルス照射することは0.5nmの酸化亜鉛層を形成する条件であったが、厚さ1.5nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ0.5nm相当の酸化亜鉛層を交互に全部で20層積層した。厚さでは20nmであった。これを参考例4とした。
参考例4のサンプルについて、ダイヤモンド状炭素に酸化亜鉛を含有させた薄膜をX線回折で観察したところ、Zn−Cの結合は検出限界以下であり、アモルファス構造が示された。このことから、酸化亜鉛とダイヤモンド状炭素とは相分離せずに、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造の中にナノオーダーサイズの酸化亜鉛が取り込まれた状態となっていると考えられる。すなわち、厚さ1.5nm相当のダイヤモンド状炭素層と厚さ0.5nm相当の酸化亜鉛層を交互に全部で20層積層したが、成膜時に各層をまたがって拡散が生じ、ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料である酸化亜鉛を含有させた薄膜が最終的に形成されたと考えられる。なお、当該薄膜において、ダイヤモンド炭素薄膜中における酸化亜鉛の含有量は25原子%であると見積もることができる。
さらに、参考例4について、実施例1と同様にして、酸素ガス透過度を測定した。結果を表3に示した。
(比較例4)
実施例1で使用したPETシートの片面に、パルスレーザー堆積法により、酸化亜鉛薄膜を成膜した。ここで、酸化亜鉛(ZnO)ターゲットのみについて、KrFレーザーのパルス光(2Hz、5W)を200パルス照射した。この結果、酸化亜鉛(ZnO)薄膜が20nmの厚さで成膜された。これを比較例4とした。実施例1と同様にして、酸素ガス透過度を測定した。結果を表3に示した。なお、比較のため、比較例1と2の結果を合わせて表3に掲載した。
Figure 0004817102
表3の結果を基にして、PETシート上のZnO−DLC薄膜の組成(酸化亜鉛含有量(原子%)と酸素ガス透過度との関係を図5に示した。
参考例4、比較例1、2及び4をそれぞれ比較すると、薄膜を成膜した参考例4、比較例2及び比較例4は、薄膜を成膜しなかった比較例1と比べて、大幅に酸素ガス透過度が低下した。すなわち、ガスバリア性が向上していた。次に、薄膜を成膜した参考例4、比較例2及び比較例4を比較すると、単組成の薄膜を成膜した比較例2(DLC薄膜)及び比較例4(ZnO薄膜)よりも、参考例4(ZnO−DLC(25)薄膜)のほうが、酸素ガス透過度が低かった。すなわち、参考例4はガスバリア性が高い。この参考例4の酸素ガス透過度が、比較例2と比較例4の酸素ガス透過度の平均値とならず、比較例2と比較例4よりも低くなった理由は、図2での結果と同様に、参考例4のZnO−DLC薄膜が単なるZnOとDLCの混合膜ではなかったことを示唆するものである。すなわち、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素を包接格子とし、その包接格子中にイオン性結合材料である酸化亜鉛(ZnO)が包接されていて、ダイヤモンド状炭素と酸化亜鉛とにより形成される相が包接化合物相であると考えられる。このような構造をとることにより、原子密度が高くなり、結果として、ガスバリア性が単組成膜と比較して高くなったと考えられる。
実施例1の薄膜は、比較例2の薄膜よりも無色透明に近かった。したがって、ダイヤモンド状炭素が茶系色に着色されやすいところ、イオン性結合材料を含有するダイヤモンド状薄膜とすることで、着色が抑制されることがわかった。
(着色について)
着色についてより詳細な検討を行なうために着色度について測定を行なった。
色の評価は着色度b*値を指標とした。b*値は、JISK 7105−1981の色差であり、三刺激値X,Y,Zから式(数5)で求まる。
Figure 0004817102
日立製U-3500形自記分光光度計に同社製60Φ積分球付属装置(赤外可視近赤外用)を取り付けたものを用いた。検知器としては、超高感度光電子増倍管(R928:紫外可視用)と冷却型PbS(近赤外域用)を用いている。測定波長は、240nmから840nmの範囲で透過率を測定した。PETシートの透過率を測定することにより、DLC膜のみの透過率測定を算出することができるが、本実施例のb*値は、PETシートの吸収率も含めた形で算出したものをそのまま示している。なお、本発明におけるb*と目視による相関はおおよそ表4に示す通りである。未処理のPETシートのb*値は0.6〜1.0の範囲内にある。また、b*値が2以下のDLC膜は無色透明であると言え、b*値が4以下のDLC膜は肉眼では色が判別できる程度の極めて薄い着色となる。
Figure 0004817102
HfO−DLC薄膜において酸化ハフニウムの含有量が異なる試料を、実施例1及び2と同様の成膜方法を行なって作製した。各試料について、b*値を測定し、図6にその結果を示した。図6に示すとおり、酸化ハフニウムの割合が増加するにつれてb*値が低下し、酸化ハフニウムの割合が47原子%以上の組成であるとき、b*値が2以下となって無色となることがわかる。
Al−DLC薄膜において酸化アルミニウムの含有量が異なる試料を、酸化ハフニウムターゲットの代わりに酸化アルミニウム(Al)ターゲットを用いた以外は実施例1及び2と同様のパルスレーザー堆積法を行なって作製した。各試料について、b*値を測定し、図7にその結果を示した。図7に示すとおり、酸化アルミニウムの割合が増加するにつれてb*値が低下し、酸化アルミニウムの割合が50原子%以上の組成であるとき、b*値が2以下となって無色となることがわかる。
TiN−DLC薄膜において窒化チタンの含有量が異なる試料を、酸化ハフニウムターゲットの代わりに金属チタン(Ti)ターゲットを用い、成膜時にチャンバー内の内部ガスとしてアセチレン等の炭素源ガスを混入させておいた以外は実施例1及び2と同様のパルスレーザー堆積法を行なって作製した。各試料について、b*値を測定し、図8にその結果を示した。図8に示すとおり、窒化チタンの割合が増加するにつれてb*値が低下し、窒化チタン割合が25原子%以上の組成であるとき、b*値が2以下となって無色となることがわかる。
(密着性について)
実施例1、実施例2及び比較例3に各サンプルについて密着試験を行なった。密着試験の方法は次のとおりである。薄膜が、条件1のJISK5400の碁盤目テープ法によって剥離が生じるか否かの試験を行なった。切り傷によって100分割し、テープにより剥がれなかった個数の割合として評価した。剥がれなかった個数の割合が高いほど密着性が良好である。
(条件1)切り傷の隙間は1mm、ます目の数は100。
この結果、実施例1及び実施例2については、剥がれがなく(剥がれなかった個数が100個)、一方、比較例3については、剥がれがあった(剥がれなかった個数が6〜20個)。実施例1及び実施例2については、ダイヤモンド状炭素のネットワーク構造によって、柔軟性があるため、基板の変形に対して追随性があるからと考えられる。一方、比較例3については、柔軟性に乏しく、基板の変形に対して追随性がため、密着性に劣ると考えられる。
なお、同様の傾向は、実施例1、実施例2及び比較例3の各サンプルを95℃の湯に浸漬処理後の膜密着状態の観察においても同様であった。処理後の各サンプルを光学顕微鏡で観察すると、実施例1および実施例2については剥がれがなく、一方比較例3においては、剥がれや基体から浮いた状態となった箇所が散見された。
以上の実施例のデータから、本実施例に係るダイヤモンド状炭素薄膜では、数1で求められるイオン性結合材料の含有量が0原子%超90原子%以下であることが好ましい。ここで、含有量の下限値は、b*値が2以下となる含有量であることがより好ましい。含有量の上限は、85原子%であることがより好ましい。
イオン性結合材料に酸化ハフニウムを用いた場合には、HfO−DLC薄膜において、着色が少なく、かつ、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素を包接格子とし、その包接格子中にイオン性結合材料である酸化ハフニウムが包接されていて、密着性に富んだ性質を有し、かつ、高ガスバリア性を有する組成範囲は、好ましくは、数2で求められる酸化ハフニウムの含有量が47原子%以上90原子%未満であることがわかった。好ましくは、60原子%以上85原子%以下、より好ましくは、70原子%以上80原子%以下である。
同様に、イオン性結合材料に酸化アルミニウムを用いた場合には、着色が少なく、かつ、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素を包接格子とし、その包接格子中にイオン性結合材料である酸化アルミニウムが包接されていて、密着性に富んだ性質を有し、かつ、高ガスバリア性を有する組成範囲は、好ましくは、数3で求められる酸化アルミニウムの含有量が50原子%以上90原子%未満であることがわかった。好ましくは、60原子%以上85原子%以下、より好ましくは、70原子%以上80原子%以下である。
また、イオン性結合材料に窒化チタンを用いた場合には、着色が少なく、かつ、ネットワーク構造を形成するダイヤモンド状炭素を包接格子とし、その包接格子中にイオン性結合材料である窒化チタンが包接されていて、密着性に富んだ性質を有し、かつ、高ガスバリア性を有する組成範囲は、好ましくは、数4で求められる窒化チタンの含有量が25原子%以上で90原子%未満であることがわかった。好ましくは、60原子%以上85原子%以下、より好ましくは、70原子%以上80原子%以下である。
実施例では、イオン性結合材料として、主として酸化ハフニウムを取り上げたが、ターゲットとして酸化ハフニウムの代わりに、酸化アルミニウムを用いることで、酸化アルミニウム−DLC薄膜を成膜することができる。
また、実施例では、イオン性結合材料として金属酸化物である酸化ハフニウムを主として取り上げたが、成膜時にチャンバー内の内部ガスに、窒素ガス、一酸化窒素ガス、硝酸、アンモニアガス等の窒素源を混入させておくことで、イオン性結合材料として金属窒化物を含有したダイヤモンド状炭素膜を成膜できる。
また、実施例では、イオン性結合材料として金属酸化物である酸化ハフニウムを主として取り上げたが、ターゲットとして金属チタンや金属タングステンを使用し、成膜時にチャンバー内の内部ガスとしてアセチレン等の炭素源ガスを混入させておくことで、イオン性結合材料として金属炭化物を含有したダイヤモンド状炭素膜を成膜できる。
本実施形態に係るダイヤモンド状炭素薄膜の格子構造の概念を説明するための模式図である。 PETシート上のHfO−DLC薄膜の組成(比率)と酸素ガス透過度との関係を示すグラフである。 ラマン分光スペクトルであり、(a)はPETシート(未コート)のスペクトル、(b)は実施例2のスペクトルである。 ラマン分光スペクトルであり、(a)はPETシート(未コート)のスペクトル、(b)は実施例3のスペクトルである。 PETシート上のZnO−DLC薄膜の組成(比率)と酸素ガス透過度との関係を示すグラフである。 HfO−DLC薄膜においてHfOの含有量が異なる試料について、HfOの割合とb*との関係を示すグラフである。 Al−DLC薄膜においてAlの含有量が異なる試料について、Alの割合とb*との関係を示すグラフである。 TiN−DLC薄膜においてTiNの含有量が異なる試料について、TiNの割合とb*との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 ダイヤモンド状炭素の炭素原子
2 空間
3 酸素原子(或いは窒素原子若しくは炭素原子)
4 金属原子
100 ネットワーク構造
200 イオン性結合材料
300 格子構造

Claims (6)

  1. ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた組成を有し、且つ、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相を主相として有し、前記イオン性結合材料が、酸化ハフニウムであり、数2で求められる酸化ハフニウムの含有量が47原子%以上90原子%未満であることを特徴とするダイヤモンド状炭素薄膜。
    (数2)酸化ハフニウムの含有量(原子%)=(ハフニウム原子の数)/(炭素原子の数+ハフニウム原子の数)×100
  2. ダイヤモンド状炭素にイオン性結合材料を含有させた組成を有し、且つ、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相を主相として有し、前記イオン性結合材料は酸化アルミニウムであり、数3で求められる酸化アルミニウムの含有量が50原子%以上90原子%未満であることを特徴とするダイヤモンド状炭素薄膜。
    (数3)酸化アルミニウムの含有量(原子%)=(アルニウム原子の数)/(炭素原子の数+アルニウム原子の数)×100
  3. 前記ダイヤモンド状炭素を包接格子とし、該ダイヤモンド状炭素に前記イオン性結合材料が包接されてなり、前記ダイヤモンド状炭素と前記イオン性結合材料とにより形成される相が包接化合物相であることを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤモンド状炭素薄膜。
  4. 前記ダイヤモンド状炭素のネットワークを構成する寄与する元素が炭素であり、ケイ素原子を含まないことを特徴とする請求項1、2又は3記載のダイヤモンド状炭素薄膜。
  5. プラスチックフィルムの表面に、請求項1、2、3又は4に記載のダイヤモンド状炭素薄膜が形成されていることを特徴とするガスバリア性プラスチックフィルム。
  6. プラスチックボトルの内表面、外表面又はその両方に、請求項1、2、3又は4に記載のダイヤモンド状炭素薄膜が形成されていることを特徴とするガスバリア性プラスチックボトル。
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