JP4816850B2 - 高分子光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子光導波路等の高分子光学フィルムの製造方法および高分子光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子材料を光学用途に用いることが増えてきている。例えば高分子光ファイバ(POF)、高分子光学フィルム(例えば、光導波路)、高分子光学フィルタ等が用いられている。これらは、従来の無機光学材料に比べて安価に製造できるメリットがある。
【0003】
上記高分子光学フィルムは、通常、高分子光学フィルムの原料、例えば、モノマー又は前駆体を無機材料等からなる基板上に塗布、加熱処理して製造する。ところが、上記製造方法による高分子光学フィルムは、基板との熱膨張係数の違いによって応力及び歪が残留し、偏波依存性の原因になる。そこで、応力及び歪を緩和するために、基板から剥離し、熱処理することが行われている(特開平7−239422公報参照)。なお、前記公報の実施例によれば、熱処理条件は350℃、1時間である。
【0004】
しかしながら、350℃という温度は、フッ素化ポリイミドをはじめ、多くの高分子光学材料のガラス転移温度を越えている。このように、基板から剥離後にガラス転移温度以上の温度で熱処理すると、軟化・流動によって不均一な異常変形が起こりやすいという問題点が発生していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、係る従来技術の状況に鑑みてなされたもので、高分子光学フィルムが異常変形を起こさずに残留応力を緩和させることを課題とする。また、異常変形がなく残留応力の小さい高分子光学フィルムを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、まず請求項1の発明は、高分子光学フィルムの原料となるフッ素化ポリイミドを基板上に塗布する工程と、次に、前記フッ素化ポリイミドが塗布された基板に加熱処理を行ないフッ素化ポリイミドからなる高分子光学フィルムを得る工程と、次に、該高分子光学フィルムを基板から剥離する工程と、次に、該高分子光学フィルムを250℃で熱処理して収縮させる工程と、を少なくとも含むことを特徴とする高分子光学フィルムの製造方法としたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下詳細に説明する。請求項1は剥離後の熱処理温度を特定した製造方法、請求項2はさらに物質を限定した製造方法、請求項3は該製造方法で作製した高分子光学フィルムである。
【0008】
我々は、高分子光学フィルムについて鋭意研究した結果、以下の機構を解明するに至った。
【0009】
加熱処理によって作製した高分子光学フィルムは、基板との熱膨張係数差に起因する応力及び歪を持つ。高分子は一般に基板よりも大きな熱膨張係数を有するため、ガラス転移温度(熱処理温度がガラス転移温度より低い場合には熱処理温度)において無歪だった高分子光学フィルムは、室温に戻るに従って大きな引張応力及び歪を内在する。
【0010】
この高分子光学フィルムを基板から剥離すると、一定の収縮が起こって残留応力が緩和されるが、歪は完全には緩和されない。また、ガラス転移温度以上の温度で熱処理すると、歪は緩和されるものの異常変形を起こし易い。
【0011】
しかしながら、熱処理によって無機基板上に作製した高分子光学フィルムを基板から剥離し、該高分子光学フィルムを該高分子フィルムのガラス転移温度以下、かつ、熱機械測定による傾き増加点以上の温度で熱処理を行うことによって、残留歪をほぼ完全に緩和できる。
【0012】
上記「熱機械測定による傾き増加点以上の温度」は、剥離後のフィルムを熱機械測定(TMA)により求めることができる。高分子物質の本来のTMAは、温度に対してなだらかに変化し、ガラス転移温度(Tg)で急激に上昇する(図2)。それに対し、基板上に作製し剥離したフィルムのTMAは、ガラス転移温度までの温度で図1のようなS字特性を示す。S字の傾き減少点(図1のTa)から傾き増加点(図1のTb)にかけて、残留歪の緩和が起こり、傾き増加点以上にすれば、残留歪はほぼ完全に緩和できる。従って、「熱機械測定による傾き増加点以上の温度」とは、TMAでの傾き増加点Tbである。つまり、図1のTb以上、Tg以下の温度で熱処理すればよい。
【0013】
なお、熱処理時間は、高分子光学フィルムの材料、フィルムの厚さ、熱処理の方法によって異なるが、通常、0.1〜5時間程度である。
【0014】
具体的な数値例で言えば、フッ素化ポリイミドの場合、Ta、Tb、Tgはそれぞれ約140℃、約220℃、約330℃であり、熱処理時間は、1時間である。
【0015】
【実施例】
[高分子光学フィルムの製造例]
本発明の実施例について、図3を用いて説明する。まず、基板1(酸化膜付きシリコン基板)を用意し、フッ素化ポリアミック酸溶液を塗布・加熱処理を行なうことにより、第1クラッド層11としてフッ素化ポリイミド層を形成した。次に、同様の方法により、コア層10としてフッ素化ポリイミド層を形成した(図3(a))。ここでコア層10の屈折率は、クラッド層11よりも若干大きなものである。コア層10の厚さは、6μmであった。次に、フッ酸処理によって、膜を剥離し、仮着剤によって仮基板2(ガラス基板)に固定した(図3(b))。
【0016】
次に、通常のフォトリソグラフィによって、コア形状のシリコン含有レジストパターン12を形成した(図3(c))。そして、反応性イオンエッチングにより、光配線パターン10Aに加工する(図3(d))。そして、シリコン含有レジストパターン12を除去した(図3(e))。
【0017】
続いて、第2クラッド13を形成し(図3(f))、高分子光学フィルム20を仮基板2から剥離した(図3(g))。この時、剥離後の高分子光学フィルム20は、剥離前に比べて均一に収縮した。収縮率は約1%であった。
【0018】
次に、高分子フィルム20に250℃、1時間の熱処理を行った(図3(h))。この温度は、この物質のガラス転移温度以下、かつ、TMAでの傾き増加点以上である。その結果、高分子光学フィルム20は均一に収縮し、トータルの収縮率は約1.5%になった。熱処理後のフィルム20のTMAはS字特性を示さず、歪を緩和できている。
【0019】
[比較例]
上記実施例と同様に作製(図4(a)〜(g))した高分子フィルム20に対し、350℃、1時間の熱処理を行った(図4(h))。この温度は、この物質のガラス転移温度以上である。高分子光学フィルム20は不均一に収縮し、うねりが発生した。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、高分子光学フィルムを剥離後、ガラス転移温度以下、かつ、TMAでの傾き増加点以上の温度で熱処理することにより、歪緩和および均一な収縮を可能とする。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】剥離後の高分子光学フィルムの熱機械測定データを示すグラフ図。
【図2】通常の物質の熱機械測定データを示すグラフ図。
【図3】本発明の光配線層の製造方法の一例を示す断面図。
【図4】従来の光配線層の製造方法の一例を示す断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 仮基板
10 コア層
10Aコアパターン
11 第1クラッド層
12 レジストパターン
13 第2クラッド
20 高分子光学フィルム

Claims (1)

  1. 高分子光学フィルムの原料となるフッ素化ポリイミドを基板上に塗布する工程と、
    次に、前記フッ素化ポリイミドが塗布された基板に加熱処理を行ないフッ素化ポリイミドからなる高分子光学フィルムを得る工程と、
    次に、該高分子光学フィルムを基板から剥離する工程と、
    次に、該高分子光学フィルムを250℃で熱処理して収縮させる工程と、
    を少なくとも含むことを特徴とする高分子光学フィルムの製造方法。
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