JP4816436B2 - 半導体レーザ素子 - Google Patents
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Description
本発明は以上のような問題を解決し、半導体層に形成される保護膜が素子の特性を損なわないようにすることで優れた特性を有する半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
該半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
(1)前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、かつ前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、前記反射面側の突出部の端面に配置する前記保護膜は、前記光出射面側の突出部の端面に配置する保護膜よりも低反射率を有しており、
前記共振器面から出射される光が、前記突出部及び突出部に設けられる前記保護膜に遮られずに放射可能な最も大きな角度を放射臨界角とし、
該放射臨界角が共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角より大きいか、
(2)前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記光出射面側は、前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記反射面側は、前記共振器面に保護膜が設けられ、かつ突出部の端面が露出しており、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記光出射面側では、前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、
前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、
前記反射面側の突出部の端面は、前記保護膜が形成された光出射面側の突出部の端面よりも低反射率を有しており、
前記共振器面から出射される光が、前記突出部及び突出部に設けられる前記保護膜に遮られずに放射可能な最も大きな角度を放射臨界角とし、
該放射臨界角が共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角より大きいことを特徴とする。
これにより、レーザ光が突出部及び保護膜に遮られないので、良好なFFPを得ることができる。
前記半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
(3)前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記共振器面から前記突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、かつ前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、前記反射面側の突出部の端面に配置する前記保護膜は、前記光出射面側の突出部の端面に配置する保護膜よりも低反射率を有しており、
前記突出部の端面の保護膜の表面から前記共振器面までの距離をXとし、前記突出部上面の保護膜の最上面から前記共振器面の光出射部までの距離をYとしたときの関係式tanβ=Y/Xを満たす角度βが、前記共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角よりも大きいか、
(4)前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記光出射面側は、前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記反射面側は、前記共振器面に保護膜が設けられ、かつ突出部の端面が露出しており、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記光出射面側では、前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、
前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、
前記反射面側の突出部の端面は、前記保護膜が形成された光出射面側の突出部の端面よりも低反射率を有しており、
前記突出部の端面の保護膜の表面から前記共振器面までの距離をXとし、前記突出部上面の保護膜の最上面から前記共振器面の光出射部までの距離をYとしたときの関係式tanβ=Y/Xを満たす角度βが、前記共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角よりも大きいことを特徴とする。
これによって、保護膜はレーザ光の光放射分布の半値半角内の光が保護膜によって遮られることがないように設けられるので良好なFFPを得ることができる。
本発明の半導体レーザ素子の突出部は、活性層の下端から突出部上面までの距離が、共振器面から突出部までの距離よりも小さいことを特長とする。これにより、一部ビームが突出部で干渉する可能性があるが、レーザ光のスペクトルのすそ部分を使用しない用途であればプロセス上の許容マージンが大きくなる)ので、歩留まりの点で有利である。
本発明の半導体レーザ素子の保護膜は、共振器面から突出部まで連続して設けられている。またこの保護膜は誘電体ミラーを兼ねるようにすることも出来るためこれにより、共振器面に挟まれた導波路領域からしみ出した光が突出部の端面から外部に放出されるのを防ぐことができる。
本発明の半導体レーザ素子の保護膜は、基板表面に達するまで形成されている。これにより突出部の端面を全て覆うことができるので、突出部端面からの光の漏れを防ぐことができる。
本発明の半導体レーザ素子の保護膜は、突出部の上面と端面との間の縁部上は曲面である。これにより、臨界放射角を大きくすることができる。
本発明の半導体レーザ素子のモニター側の突出部の端面は、出射側の突出部よりも反射率が低いのが好ましい。これにより、導波路領域から漏れだした光をモニター側の突出部から放出させることができる。
本発明の半導体レーザ素子の保護膜は、多層膜である。これにより、素子を保護すると共に良好な反射膜とすることができる。
ここで、本発明の半導体レーザ素子は、上記突出部を設けることによって、共振器面から出射されるレーザ光(主ビーム)が乱されず、良好なFFPとすることができるものである。
上記のように規定されるX及びYと、光放射分布の放射半角とを特定の関係とすることで、良好なFFPを得ることができる。
レーザ光の垂直方向の光放射分布の放射角2θは、導波路構造や共振器面によって決まるものであるが、好ましくは25〜30°程度であるので、放射臨界角α及びXとYで定義される角度βをこの値より大きくしておくことでFFPが乱されないようにすることができる。
本発明の半導体レーザ素子は、エッチングにより形成された共振器面より突き出た突出部を有している。この突出部は、共振器面が形成される時のエッチング底面を突出部上面とするものである。このような突出部は、共振器面を劈開で形成させる場合には形成されにくいものである。エッチングによって共振器面を形成する場合であっても、突出部が形成されない場合もある。しかしながら、本発明では、エッチングによって形成される共振器面を有する半導体レーザ素子の、共振器面の均一性、及び、分割(チップ化)時の破損防止、更には、導波路領域から漏れ出た光(迷光)の主ビームへの混入を防ぐために、エッチングにより形成される突出部を設けるものである。そして、この突出部によって、共振器面からのレーザ光が遮られないようにするものである。
本発明において、レーザ光の垂直方向の光放射分布は、導波路の構成や、共振器面の状態によって決められる値である。導波路の構成としては、活性層及び光ガイド層を含む発光層と、その発光層内に光を閉じ込めるためのクラッド層との、屈折率差や膜厚、更には組成等を挙げることができる。また、共振器面の状態としては、鏡面に近い均一な単一平面である場合と、共振器面として機能はするものの、やや荒れた粗面である場合とが挙げられ、どのような方法で共振器面が形成されるかによって左右される。
共振器面に形成させる保護膜は、1対の共振器面のうち、少なくとも主としてレーザ光を出射させる方向である出射側に設けることで良好なFFPを得ることができる。図1Aでは、左側の共振器面は光反射側(モニター側で出射側より高い反射率のミラーが形成されている)であるので共振器面から出射される光は少なく、また、出射光が多少遮られても特に問題はない。したがって、放射臨界角と光放射分布との関係、及び、X及びYから規定される角度βについては、保護膜の形成される光出射側の共振器面で満たしていればよい。
保護膜の膜厚としては、発振波長をλ、保護膜の屈折率をnとすると、λ/4nとすることが望ましい。このように膜厚を制御することで、光の反射を制御しやすくなる。
また、保護膜は共振器面から突出部の端面まで連続して設けられるのが好ましい。図1Aの右側、すなわち光出射側に設けられる保護膜5及び図1B、Cの保護膜は共振器面から突出部まで連続して設けられている。このように連続して設けられていることで、膜質の均一な保護膜とすることができる。この場合、光学的に連続していることが重要である。保護膜が連続していない場合は、内部で反射されることがあり、そこから外部に放出されてしまうと、FFPに悪影響を与える。特に、図3に示すように保護膜6が出射面と同一方向に向けられた端面を有していると、そこから光が漏れてFFPを乱す原因となる。
光出射側の共振器面に形成される保護膜は、上記のように突出部端面にまで連続するように設けるのが好ましい。しかしながら、モニター側については、突出部端面にまで設けなくてもよい。すなわち、図1Aに示すように、光出射側共振器面には低反射率の保護膜を設け、モニター側共振器面には出射側よりも高反射率の保護膜を設けるのに対し、突出部については、光出射側は共振器面から連続する保護膜を設け、反射側には保護膜を設けないようにすることができる。このようにすることで、突出部の屈折率関係を、共振器面とは逆の関係にすることができる。すなわち、モニター側の突出部端面を露出させておくことで、光出射側の突出部の端面をモニター側の突出部の端面よりも高反射率とすることができる。図1Aでは、モニター側の突出部の端面には、保護膜は形成されていない。すなわち、半導体層が露出されたままである。そして、光出射側の突出部には、その上の共振器面から連続する保護膜が設けられている。このようにすることで、導波路領域から漏れだした光が素子内部を伝わって突出部を含むn型層に達した場合に、突出部の端面で共振するのを防ぐことができる。そして、より反射率の低いモニター側の突出部端面から外部に放出させることができる。
また、前述のように、高出力の場合は、共振器面に透過膜を設けるのが好ましいが、そのような透過膜を突出部端面にも設けることで、突出部によって漏れ光が増幅されるのを防ぐことができる。保護膜が設けられていなくて半導体層が露出していると、外部の空気層との屈折率差によって反射されて光は増幅されるので、このような光が主ビームに混じるとFFPが悪化する。このような露出された半導体層の突出部の端面による増幅光は、導波路領域のようなレーザ光を発振するまでには至らないような弱いものではあるが、主ビームのスペクトルのすそ部の弱い光に混ざると、目障りなものとなる。しかし、透過膜が突出部端面に設けられていると、半導体層端面での反射を抑制するので、光が反射されて増幅される前に外部に放出することができる。このような弱い光は主ビームに混ざっても問題となりにくく、特性に悪影響を及ぼしにくい。
或いは、導波路領域の両端面の反射率の関係と、同方向に同じ関係を有する反射率の保護膜を突出部端面に設ける、すなわち、出射側の突出部端面に透過膜を設け、モニター側に何も設けないようにすることで、突出部を相対的に高反射率となるようにすることができる。これにより、光を増幅させないで出射側から弱い光として放出させることができる。このように、出射側とモニター側との反射率差の関係が、共振器面と突出部とで同じ場合であっても、絶対的な関係が同じになっているのではなく、あくまでも相対的な関係が同じ方向に形成され、かつ、出射側の突出部端面を透過膜とすることで、良好なビーム特性を得ることができる。
本発明の半導体レーザ素子は、上記に述べたように、共振器端面と突出部端面とをともにエッチングにより形成するために、本発明では少なくとも2度の端面エッチング工程を行う。すなわち、共振器面を形成させる第1の端面エッチング工程と、突出部端面を形成させる第2の端面エッチング工程とを有する。工程内では、リッジの形成等、端面以外の加工にもエッチング工程が行われているので、端面エッチング工程と区別している。
本発明の製造方法において、窒化物半導体のエッチング手段としては、例えばRIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチングを用いる場合、第1の工程で多用するSi酸化物よりなる第1の保護膜をエッチングするために、CF4のようなフッ素化合物系のガスを用いることが望ましく、第2の工程では窒化物半導体をエッチングするために他のIII−V族化合物半導体で良く用いられている、Cl2、CCl4、SiCl4のような塩素系のガスを用いることが、Si酸化物との選択比が大きくできるので望ましい。
エッチングによって形成された共振器面と、共振器面から突き出た突出部は、そのまま端面となっているので、突出部よりさらに突き出た部分を分割面としてチップ化(分割)する。チップ化の方法としては、スクライブやダイシング等の手段を用いることができる。このような機械的に力を加えて分割する場合、分割面が基板のみである場合、つまり突出部を形成する時に基板が露出するまでエッチングして突出部とすることで、半導体層にクラックが生じるのを防ぐことができるので好ましい。
以下本発明に係る実施例について説明する。以下の実施例は、窒化物半導体を用いたレーザ素子であるが、本発明のレーザ素子は、これに限らず、本発明の技術的思想において、様々な半導体に実施できることは言うまでもない。
実施例として、図1Aに示すようなレーザ素子構造の窒化物半導体を用いたレーザ素子について説明する。ここで、本実施例1では、基板として窒化物半導体と異なる異種基板を用いている。異種基板としては、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgAl2O4のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、窒化物半導体を成長させることが可能で従来から知られており、窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。好ましい異種基板としては、サファイア、スピネルが挙げられる。また、異種基板は、オフアングルしていてもよく、この場合ステップ状にオフアングルしたものを用いると窒化ガリウムからなる下地層の成長が結晶性よく成長させるため好ましい。更に、異種基板を用いる場合には、異種基板上に素子構造形成前の下地層となる窒化物半導体を成長させた後、異種基板を研磨などの方法により除去して、窒化物半導体の単体基板として素子構造を形成してもよく、また、素子構造形成後に、異種基板を除去する方法でも良い。異種基板を用いる場合には、バッファ層、下地層を介して、素子構造を形成すると、窒化物半導体の成長が良好なものとなる。
2インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板101をMOVPE反応容器内にセットし、温度を500℃にして、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)を用い、GaNよりなるバッファ層を200Åの膜厚で成長させる。
バッファ層成長後、温度を1050℃にして、TMG、アンモニアを用い、アンドープGaNよりなる窒化物半導体層を4μmの膜厚で成長させる。この層は、素子構造を形成する各層の成長において下地層(成長基板)として作用する。下地層として、その他に、ELOG(Epitaxially Laterally Overgrowth)成長させた窒化物半導体を用いると結晶性が良好な成長基板が得られる。ELOG成長層の具体例としては、異種基板上に、窒化物半導体層を成長させ、その表面に窒化物半導体の成長が困難な保護膜を設けるなどして形成したマスク領域と、窒化物半導体を成長させる非マスク領域を、ストライプ状に設け、その非マスク領域から窒化物半導体を成長させることで、膜厚方向への成長に加えて、横方向への成長が成されることにより、マスク領域にも窒化物半導体が成長して成膜された層などがある。その他の形態では、異種基板上に成長させた窒化物半導体層に開口部を設け、その開口部側面から横方向への成長がなされて、成膜される層でもよい。
次に、窒化物半導体からなる下地層の上に、素子構造となる各層を積層する。
得られた窒化物半導体基板(下地層)上にTMG、アンモニア、不純物ガスとしてシランガスを用い、1050℃でSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなるn型コンタクト層を4.5μmの膜厚で成長させる。
次に、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層を0.15μmの膜厚で成長させる。なお、このクラック防止層は省略可能である。
温度を1050℃にして、原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAlGaNよりなるA層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000Åの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層を成長させる。この時、アンドープAlGaNのAl混晶比としては、0.05以上0.3以下の範囲であれば、十分にクラッド層として機能する屈折率差を設けることができる。
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型光ガイド層を0.1μmの膜厚で成長させる。また、n型不純物をドープしてもよい。
温度を800℃にして、原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.05Ga0.95Nよりなる障壁層を100Åの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのIn0.1Ga0.9Nよりなる井戸層を50Åの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後に障壁層を積層した総膜厚550Åの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。
同様の温度で原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAlGaNよりなるp型電子閉込層を100Åの膜厚で成長させる。この層は、特に設けられていなくても良いが、電子閉込めとして機能し、閾値の低下に寄与するものとなる。
温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型光ガイド層を750Åの膜厚で成長させる。このp型光ガイド層は、アンドープとして成長させるが、p型電子閉込層109からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp型を示す。またこの層は成長時に意図的にMgをドープしても良い。
続いて、1050℃でアンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、続いてTMAを止め、Cp2Mgを用いて、MgドープGaNよりなる層を25Åの膜厚で成長させ、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層を成長させる。p側クラッド層は少なくとも一方がAlを含む窒化物半導体層を含み、互いにバンドギャップエネルギーが異なる窒化物半導体層を積層した超格子で作製した場合、不純物はいずれか一方の層に多くドープして、いわゆる変調ドープを行うと結晶性が良くなる傾向にあるが、両方に同じようにドープしても良い。クラッド層は、Alを含む窒化物半導体層、好ましくはAlXGa1-XN(0<X<1)を含む超格子構造とすることが望ましく、さらに好ましくはGaNとAlGaNとを積層した超格子構造とする。p型クラッド層を超格子構造とすることによって、クラッド層全体のAl混晶比を上げることができるので、クラッド層自体の屈折率が小さくなり、さらにバンドギャップエネルギーが大きくなるので、閾値を低下させる上で非常に有効である。さらに、超格子としたことにより、クラッド層自体に発生するピットが超格子にしないものよりも少なくなるので、ショートの発生も低くなる。
最後に、1050℃で、p型クラッド層の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp型コンタクト層を150Åの膜厚で成長させる。p型コンタクト層はp型のInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaNとすれば、p電極と最も好ましいオーミック接触が得られる。コンタクト層は電極を形成する層であるので、1×1017/cm3以上の高キャリア濃度とすることが望ましい。1×1017/cm3よりも低いと電極と好ましいオーミックを得るのが難しくなる傾向にある。さらにコンタクト層の組成をGaNとすると、電極材料と好ましいオーミックが得られやすくなる。反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
以上のようにして成長された窒化物半導体を目的の形状に加工して電極、保護膜等を形成させるが、窒化物半導体の層の工程の状態については図4A〜図4Kを参照しながら説明する。
図4Aのように基板4上にn型層1、活性層3、p型層2の各層を積層した後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp型コンタクト層の表面に図4BのようにSiO2よりなるマスク7を形成して、RIE装置(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図4Cのように共振器面を形成する。このとき、n電極を形成すべきn型コンタクト層の表面8も同時に露出させる。このとき、エッチング距離(深さ)は、活性層下端から約2.5μm下方向であり、このエッチング底面が突出部上面となっている。
次にストライプ状のリッジを形成する。最上層のp型コンタクト層のほぼ全面に、CVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなるマスクを0.5μmの膜厚で形成した後、フォトリソグラフィー技術により、所定の形状にマスクを形成し、RIE(反応性イオンエッチング)装置により、CF4ガスを用い、活性層よりも上に、ストライプ状の凸部が設けられる。この時、凸部は、p側コンタクト層、およびp側クラッド層の一部をエッチングして、p型クラッド層の膜厚が0.01μmとなる深さでエッチングされて、形成されている。
更に、導波路領域を形成したウエハを、PVD装置に移送し、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる絶縁膜を、エッチングにより露出されたp型クラッド層上及びn型クラッド層断面(側面)に0.5μmの膜厚で連続して形成する。
絶縁膜形成後、ウエハを600℃で熱処理する。このようにSiO2以外の材料を埋め込み層として形成した場合、埋め込み層形成後に、300℃以上、好ましくは400℃以上、窒化物半導体の分解温度以下(1200℃)で熱処理することにより、埋め込み層がマスクの溶解材料に対して溶解しにくくなるため、この工程を加えることがさらに望ましい。
次いで、ウエハをフッ酸に浸漬してリッジ上のマスクを除去し、p型コンタクト層を露出させる。その露出したp側コンタクト層の表面にNi/Auよりなるp電極を形成する。但しp電極120は100μmのストライプ幅として形成する。次いで、既に露出させたn側コンタクト層の表面にはTi/Alよりなるn電極をストライプと平行な方向で形成する。これらを形成後、それぞれを酸素:窒素が80:20の割合で、600℃でアニーリングしてp電極とn電極を合金化して、良好なオーミック接触を有する電極とする。
次に、p電極とn電極の一部にレジストでパターンを形成し、SiO2及びTiO2の2ペアからなる絶縁膜(保護膜)を全面に形成し、リフトオフすることでp電極とn電極の一部を露出させる。このSiO2及びTiO2は、図4Dに示すように光反射側鏡面の反射膜6の一部として機能させる。このように、実施例1では反射側と出射側の保護膜を別工程で設けている。実施例1では、右側を光出射側、左側を光反射側としてそれぞれ共振器面を形成させる。
次に、p電極及びn電極上にNi−Ti−Au(1000Å−1000Å−8000Å)よりなるパット電極(取り出し電極)をそれぞれ設ける。
以上のようにして、パッド電極を形成した後、図4Eのようにレジスト膜6をn型コンタクト層の露出面を除いて形成させる。次いで、SiO2マスク10を図4のようにウエハ全面に形成する。
更にそのSiO2マスク10の上に図4Fのようにレジスト膜11を形成させる。このとき、光出射側の共振器面近くまでエッチングできるようにレジスト膜11を形成させる。光反射側は端面にまで達していてもよい。
次いで、レジスト膜9、SiO2膜10、レジスト膜11のマスク膜を除去することで、図4Hのように、光反射側の共振器面に保護膜が形成される。
図4Hのようにマスク膜を除去して光出射側の共振器面を露出させた後、図4Iのようにレジストマスク13を光出射側の端面以外を覆うように形成させる。ついで、光出射面側の共振器面に保護膜5を形成させる。保護膜5はSiO2とTiO2を1ペアとする誘電体多層膜であり、各膜厚は、端面方向については400Åと630Åであり、また、積層面方向については、端面方向の膜厚の約2倍程度の層が形成されている。先に反射側の保護膜6を形成させてあるので、この工程では光出射側にのみ設けるとよい。また、先に設けていない場合は、この工程で光出射側は上記の保護膜を1ペアで形成し、光反射側は2ペアで形成させるなどの方法で反射率差を設けるようにしてもよい。
次いで、マスク13を除去することで、図4Kのように、基板が露出したウエハが得られる。
図4Kのようなウエハのサファイア基板を研磨して170μmとし、ストライプ状の電極に垂直な方向(図中の破線部)で、基板側からバー状に分割して、更にバー状のウエハを分割してレーザ素子を得る。この時、共振器面の形成方法として、エッチングにより基板を露出した後、GaNの劈開面である(11−00)M面で、ウエハをバー状に分割して、共振器面を作製しても良い。
実施例2では、光出射側の保護膜を、共振器面の保護膜と突出部端面の保護膜とを、工程を分けて形成させる。このように同一方向に面する端面に設けられる保護膜であっても、工程を別にして形成させることで、共振器面の保護膜の機能と別の機能を有する突出部端面保護膜を形成させることができる。
このような保護膜を設けるには、実施例1では基板が露出するまでエッチングする第2のエッチング工程の後に光出射側の共振器面〜突出部端面にまで連続する保護膜を形成させているのに対し、実施例2では、第2の端面エッチング工程より前に、光出射側の共振器面保護膜を設ける。
実施例3では、光出射側の保護膜が基板まで達していないように形成されるものである。実施例1の第2のエッチング工程において、サファイア基板の上に形成されている下地層が露出する程度までで、エッチングを終了させる。その後の工程は実施例1と同様に行う。これにより、最後のチップ化工程において、サファイア基板と半導体層とを割ることで本発明の半導体レーザ素子とすることができる。得られる半導体レーザ素子は、室温においてしきい値20kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、またF.F.Pにおいて、良好なビームが得られ、特に、F.F.P.−Yの放射全角(19〜34°)において、良好なビームが得られ、そのアスペクト比は、1.5と、光ディスクシステムの光源として十分に満足するビーム特性である。また、5〜30mWでの光出力域において、横モードの移動がなく、光ディスクシステムの読込、書込光源となるレーザ素子である。特に、基板手前の半導体層でエッチングを終了させることにより基板の反りが大きくなりチップ化工程での歩留まりが低下しやすくなる場合がある。
Claims (10)
- 基板上に、n型層とp型層に挟まれた活性層を有する半導体層を備え、
該半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、かつ前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、前記反射面側の突出部の端面に配置する前記保護膜は、前記光出射面側の突出部の端面に配置する保護膜よりも低反射率を有しており、
前記共振器面から出射される光が、前記突出部及び突出部に設けられる前記保護膜に遮られずに放射可能な最も大きな角度を放射臨界角とし、
該放射臨界角が共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角より大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 基板上に、n型層とp型層に挟まれた活性層を有する半導体層を備え、
前記半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記共振器面から前記突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、かつ前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、前記反射面側の突出部の端面に配置する前記保護膜は、前記光出射面側の突出部の端面に配置する保護膜よりも低反射率を有しており、
前記突出部の端面の保護膜の表面から前記共振器面までの距離をXとし、前記突出部上面の保護膜の最上面から前記共振器面の光出射部までの距離をYとしたときの関係式tanβ=Y/Xを満たす角度βが、前記共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角よりも大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 基板上に、n型層とp型層に挟まれた活性層を有する半導体層を備え、
該半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記光出射面側は、前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記反射面側は、前記共振器面に保護膜が設けられ、かつ突出部の端面が露出しており、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記光出射面側では、前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、
前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、
前記反射面側の突出部の端面は、前記保護膜が形成された光出射面側の突出部の端面よりも低反射率を有しており、
前記共振器面から出射される光が、前記突出部及び突出部に設けられる前記保護膜に遮られずに放射可能な最も大きな角度を放射臨界角とし、
該放射臨界角が共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角より大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 基板上に、n型層とp型層に挟まれた活性層を有する半導体層を備え、
前記半導体層は、光出射面及び反射面からなる一対の共振器面と、該共振器面から共振方向に突き出た突出部を有する半導体レーザ素子であって、
前記共振器面及び突出部の端面はエッチングにより形成されており、
前記光出射面側は、前記共振器面から突出部の端面まで連続して保護膜が設けられ、
前記反射面側は、前記共振器面に保護膜が設けられ、かつ突出部の端面が露出しており、
前記基板表面の一部が露出されており、
前記光出射面側では、前記保護膜は、前記基板表面に達するように形成されており、
前記共振器面の反射面に配置する前記保護膜は、前記光出射面に配置する保護膜よりも高反射率を有し、
前記反射面側の突出部の端面は、前記保護膜が形成された光出射面側の突出部の端面よりも低反射率を有しており、
前記突出部の端面の保護膜の表面から前記共振器面までの距離をXとし、前記突出部上面の保護膜の最上面から前記共振器面の光出射部までの距離をYとしたときの関係式tanβ=Y/Xを満たす角度βが、前記共振器面から出射されるレーザ光の垂直方向の光放射分布の放射半角よりも大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。 - 前記突出部は、前記活性層の下端から突出部上面までの距離が、共振器面から突出部端面までの距離よりも大きい請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
- 前記保護膜が、露出した基板の全上面を被覆する請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
- 前記保護膜が、ZrO2、MgO、Al2O3、TiO2、Si3N4、SiO2、AlN及びMgF2からなる群から選択される1種以上である請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
- 前記放射半角θが、前記光放射分布の半値半角である請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
- 前記保護膜は、前記突出部の上面と端面との間の縁部上は曲面である請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
- 前記保護膜は、多層膜である請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
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