JP4813678B2 - 白水のスライムコントロール方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抄造に使用する白水のスライムコントロール方法に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は白水中の全ハロゲン量若しくは活性ハロゲン量を連続的に測定し、その測定結果に基づいてスライムコントロール剤の添加量を増減することにより、適正な条件下で白水のスライムコントロールを行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、白水を抄造し、製紙するには、図1に示すように、ヘッドボックス1及び白水ピット2からポンプ3によりクリーナ4を経てインレット5に供給される白水を抄紙ネット6上に送り、パルプのみをその上に保持させ、水溶液をセーブオール7で捕集し、これを白水ピット2に集め、循環再使用することによって行われている。
さらに、セーブオール7の余剰白水は、余剰白水ピット8に集められ、ポンプ9によりクリーナ10を経てシャワー11により抄紙ネット6上に吹き出される。
そして、白水中でのスライム発生を抑制するために、通常はポンプ3とインレット5を連続する管路又はセーブオール7と白水ピット2との間の管路又は余剰白水ピット8の任意の個所でスライムコントロール剤、例えば次亜塩素酸ナトリウムを添加している。
【0003】
そして、その際、スライム発生を完全に抑制するためには、白水中のハロゲン濃度を所定値以上に保つ必要があるが、このハロゲン濃度があまり高くなると、強烈な臭気や粘膜への刺激などを生じ、作業環境を著しく悪化させるため、有効範囲内で、できるだけ少なくなるようにコントロールしなければならない。
【0004】
それには、白水中の活性ハロゲン濃度を測定する必要があるが、従来は適宜人手によって試料を採取し、試薬を用いて定量分析する方法がとられていた。
しかしながら、このような方法では、人体に悪影響を及ぼすだけでなく、採取や分析を頻繁に行わなければならないため、非常に煩雑であった。
【0005】
このような人手による煩雑さを改善したものとして、白水中の粘度を経時的に測定することにより、スライムの成長をモニターする方法(特開平9−75065号公報)や、白水などの工程水を連続的に金属表面に接触させ、金属表面の腐食電流の大小でスライム付着状況を検知する方法(特開平11−28474号公報)が提案されているが、前者では粘度変化したときには既にスライムが成長しており、この時点でスライムコントロール剤を増減しても時期を逸することになるし、また後者ではスライムが発生した状態を検知するだけで、工程水中の菌数増加を予め検知するものではないので、それに基づいてスライムコントロールすることはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、白水中へ添加するスライムコントロール剤の量を増減し、常時、白水中の活性ハロゲン濃度を適性範囲に保つことにより、白水中の全ハロゲン量の過剰又は不足によるトラブル発生を防止することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の製紙方法におけるスライムコントロール方法の欠点を克服し、簡単な手段で白水中へのスライムコントロール剤の添加量を適正に制御しうる方法について鋭意研究を重ねた結果、抄造工程に供給する前又は供給後における白水中の全ハロゲン量若しくは活性ハロゲン量を連続的に測定し、その結果に基づいてスライムコントロール剤の添加量を増減すれば、白水中の活性ハロゲン濃度を常時適性範囲内に維持しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤を用いてスライムコントロールされた白水にて抄造する製紙方法において、抄紙工程に供給する前又は供給した後の白水中の活性ハロゲン量若しくは全ハロゲン量を連続的に測定し、その測定結果に基づいて該活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤の添加量を増減することにより、白水中の活性ハロゲン濃度を常時0.03〜1.5ppmの範囲に維持することを特徴とするスライムコントロール方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明方法における製紙工程としては、従来の方法、例えば図1に示される工程をそのまま用いることができる。
本発明方法においては、白水中の活性ハロゲン濃度を0.03〜3.0ppmの範囲に維持することが必要である。活性ハロゲン濃度を前記範囲に維持するには、添加する活性ハロゲン量と消費される活性ハロゲン量とから、前記活性ハロゲン濃度の範囲となるように活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤の添加量を増減させるか、あるいは活性ハロゲン濃度を1回、複数回又は連続的に測定し、測定結果に基づき、前記殺菌剤の添加量を増減させるか、あるいは白水中の全ハロゲン濃度を連続的又は非連続的に測定して前記殺菌剤の量を増減する。好ましい活性ハロゲン濃度範囲の維持方法は、連続的に活性ハロゲン濃度若しくは全ハロゲン濃度を測定して、コントロールする方法である。
そして、本発明方法における白水中の活性ハロゲン濃度の測定は、白水をインレットに供給する前又は後の段階で行われ、その場で必要なスライムコントロール剤の追添等を行うのが好ましい。
【0010】
本発明方法において、白水中の活性ハロゲン濃度を連続的に測定するのは、例えば図2に示すような構造のポーラロ式残留ハロゲン濃度センサを用いて行うことができる。
このものは、装置本体12の内部に構成した濃度検出室13に白水導入用ノズル14を配設するとともに、白水を電気分解するための電源に接続した正負電極15,16が配設された構造を有し、上記濃度検出室の底部は、すり鉢状に形成され、この底部に多数の小球17,…、例えばガラスビーズが収容されている。処理ボックス18は、濃度検出室13で得られたポーラロ電流を演算手段によりハロゲン濃度として表示したり、ハロゲン濃度データを外部処理装置に使用できるよう出力する機能を有する。
【0011】
このような残留ハロゲン濃度センサにより白水中の活性ハロゲン濃度を検出する場合、同じ活性ハロゲン濃度であっても流量が変化すると、前記残留ハロゲン濃度センサによって検出される値が変動するので、正確な検出値を得るためには、白水の流量を一定にする必要がある。それには、白水をインレットからいったん系外に抜き出して、調整室に導入し、オーバーフローさせながらセンサに供給するようにするのがよい。
【0012】
さらに別の形式の残留ハロゲン濃度測定装置としては、電気化学式測定法を応用したものがある。
このものは、貴金属で構成された作用極、対比極及び比較極の3個の電極を含むセンサ部分を有し、作用極に電圧を印可して有効ハロゲンの還元反応を起こさせ、作用極部分で濃度分極を生じた一定の拡散層を形成させる。この際、拡散層を拡散して電極表面に達する物質移動の速度が律速となり、拡散電流が得られるので、この電流の大きさを測定することにより、有効ハロゲン濃度を検出することができる。
この種の残留ハロゲン濃度測定装置は、市販品[例えば、笠原理化工業(株)、商品名「RC−7000Z」]として入手することができる。
そのほか、ガラスビーズなしで、作用極と対極との間にメッシュ状のカバー(隔膜)を設けた隔膜式のものも知られている。
【0013】
本発明方法においては、このようにして測定した活性ハロゲン濃度に基づいて、白水中に導入される活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤の添加量を調節することにより、活性ハロゲン濃度を0.03〜3.0ppmの範囲内に制御する。
この濃度が0.03ppmよりも低いと、殺菌効果が低下して白水中の菌数が104〜105レベル以上になり、スライムが発生するし、またこの濃度が3.0ppmよりも高くなると、臭気が強くなり、目やのどなどの粘膜への刺激が大きくなるというトラブルをもたらす。さらに、全ハロゲン中の遊離ハロゲンの量が多くなると、製紙装置に錆が発生する。好ましい活性ハロゲン濃度の範囲は0.05〜1.5ppmであり、さらに好ましくは0.05〜1.0ppmである。
【0014】
また、本発明方法においては、前記残留ハロゲン濃度装置で全ハロゲン濃度を測定し、全ハロゲン濃度を0.3〜30ppmの範囲内に制御することが好ましい。全ハロゲン濃度を制御することにより、活性ハロゲン濃度を前記範囲内に制御でき、しかも排水系でのハロゲン量問題、例えば河川へ排出された際、魚介類に影響を及ぼすなどの問題の発生を抑制できる。スライムコントロール性、人体、装置及び排水系への悪影響防止の面から、好ましい全ハロゲン濃度は0.3〜10ppmの範囲であり、より好ましくは0.3〜3.0ppmの範囲である。
【0015】
本発明方法において白水中に導入される活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤の活性ハロゲンとしては、活性塩素、活性臭素、活性ヨウ素などが挙げられる。したがって、殺菌剤としては、例えば塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、二酸化塩素等の無機塩素化合物、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸二ナトリウム等のイソシアヌル酸類、1,3‐ジクロロ‐5,5‐ジメチルヒダントイン、1,3‐ジクロロ‐5‐エチル‐5‐メチルヒダントイン、1,3‐ジブロモ‐5,5‐ジメチルヒダントイン、1‐ブロモ‐3‐クロロ‐5,5‐ジメチルヒダントイン、1‐ブロモ‐3‐クロロ‐5,5‐ジエチルヒダントイン、1‐ブロモ‐3‐クロロ‐ヒダントイン等のハロヒダントイン類、p‐トルエンスルホニルクロリド、p‐トルエンスルホニルクロロアミンナトリウム塩(クロラミンT)等のp‐トルエンスルホニルクロリド類、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸等のハロ酢酸類、N‐クロロコハク酸イミド、N‐クロロマレイン酸イミド、N‐ブロムコハク酸イミド、N‐ブロムマレイン酸イミド等のN‐ハロイミド類、2,2‐ジブロモ‐3‐ニトリロプロピオンアミド等のハロシアノアセトアミド、2,2‐ジブロモ‐2‐ニトロエタノール、2‐ブロモ‐2‐ニトロ‐1,3‐プロパンジオール、2‐ブロモ‐2‐ニトロ‐1,3‐ブタンジオール、2‐ブロモ‐2‐ニトロ‐1,3‐ペンタンジオール等のブロモニトロアルコール類、β‐ブロモスチレン、ブロモ‐β‐ニトロスチレン、ビス(トリブロモメチル)スルホン、α‐クロロシンナムアルデヒド、ジメチルスルファモイルクロリド、ビス(トリクロロメチル)スルホン、ジクロログリオキシム、ポリビニルピロリドンヨードなどを挙げることができる。
【0016】
これらの殺菌剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも活性ハロゲンが活性塩素又は活性臭素であるものが、白水中のスライムコントロールの容易さの点から好ましい。特に次亜塩素酸ナトリウムとこれ以外の殺菌剤との組合せ、例えば主に次亜塩素酸ナトリウムのみを使用し、必要に応じ他の殺菌剤を添加する方法や次亜塩素酸ナトリウムと他の殺菌剤を同時に使用する方法が、効率よく白水のスライムコントロールを行うことができ、しかも塩素濃度の上昇による人体への悪影響を与えることがないので有利である。
【0017】
【発明の効果】
本発明方法によると、分析試薬を用いることなく、白水中の活性ハロゲン濃度を連続的に自動測定することができ、その測定結果に基づいて、最適のスライムコントロール剤の添加量を設定しうるので、何ら人体や装置に悪影響を与えることなく長期間にわたり、効率よく白水のスライムコントロールを行うことができる。
【0018】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
実施例1
有効塩素濃度12質量%、塩化ナトリウム含有量3.0質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、抄紙用白水140m3を含む循環系内に1日3回15分間ずつ添加した。
抄紙マシンのインレットに抜き出し口を設け、毎分5〜7リットルの白水を抜き出し、残留ハロゲン濃度測定装置[笠原理化工業(株)、商品名「RC−7000Z」]を用いて残留塩素を測定したところ、0.6ppm(全ハロゲン濃度)であり、このときの活性ハロゲン濃度は0.06ppmであった。
2日間操業したのち、白水中の残留塩素濃度は0.3ppm(全ハロゲン濃度)に低下した。このときの活性ハロゲン濃度は0.03ppmであった。
次に、上記の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を追添し、残留塩素濃度0.7ppm(全ハロゲン濃度)以上に調整した。このときの活性ハロゲン濃度は0.07ppmであった。
このような操作を繰り返しながら、残留塩素濃度を0.5〜1.5ppm(全ハロゲン濃度)の範囲内に維持しながら、10日間抄紙マシンを稼働させた。このときの活性ハロゲン濃度は0.05〜0.15ppmであった。
この間、循環された白水は無臭であり、粘膜の刺激も認められなかった。
また、白水中の細菌数は2.1×102〜3.5×102N/mlの範囲内に保たれ、かつ装置における錆の発生は認められなかった。
【0020】
実施例2
有効臭素濃度12質量%、臭化ナトリウム含有量3.0質量%の次亜臭素酸ナトリウム水溶液を、抄紙用白水140m3を含む循環系内に1日3回15分間ずつ添加した。
抄紙マシンのインレットに抜き出し口を設け、毎分5〜7リットルの白水を抜き出し、残留ハロゲン濃度測定装置[笠原理化工業(株)、商品名「RC−7000Z」]を用いて残留臭素を測定したところ、0.6ppm(全ハロゲン濃度)であった。このときの活性ハロゲン濃度は0.06ppmであった。
2日間操業したのち、白水中の残留臭素濃度は0.3ppm(全ハロゲン濃度)に低下した。このときの活性ハロゲン濃度は0.03ppmであった。
次に、上記の次亜臭素酸ナトリウム水溶液を追添し、残留臭素濃度0.8ppm(全ハロゲン濃度)以上に調整した。このときの活性ハロゲン濃度は0.08ppmであった。
このような操作を繰り返しながら、残留臭素濃度を0.5〜1.5ppm(全ハロゲン濃度)の範囲内に維持しながら、10日間抄紙マシンを稼働させた。このときの活性ハロゲン濃度は0.05〜0.15ppmの範囲であった。
この間、循環された白水は無臭であり、粘膜の刺激も認められなかった。
また、白水中の細菌数は2.1×102〜3.5×102N/mlの範囲内に保たれ、かつ装置における錆の発生は認められなかった。
【0021】
比較例
実施例と同様にして白水中の残留塩素濃度を測定しながら抄紙を行ったが、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の追添量を減らし、残留塩素濃度を0.1ppm以下にしたところ、白水中の細菌数は2.7×106N/ml〜5.5×107N/mlに増加した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の製紙装置の工程図。
【図2】 ポーラロ式残留塩素濃度センサの断面説明図。
【符号の説明】
1 ヘッドボックス
2 白水ピット
3,9 ポンプ
4,10 クリーナ
5 インレット
6 抄紙ネット
7 セーブオール
8 余剰白水ピット
11 シャワー
12 装置本体
13 濃度検出室
14 白水導入用ノズル
15 正電極
16 負電極
17 小球
18 処理ボックス

Claims (3)

  1. 活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤を用いてスライムコントロールされた白水にて抄造する製紙方法において、抄紙工程に供給する前又は供給した後の白水中の活性ハロゲン量若しくは全ハロゲン量を連続的に測定し、その測定結果に基づいて該活性ハロゲンを放出するハロゲン系殺菌剤の添加量を増減することにより、白水中の活性ハロゲン濃度を常時0.03〜1.5ppmの範囲に維持することを特徴とするスライムコントロール方法。
  2. 活性ハロゲンが、活性臭素、活性塩素又は活性ヨウ素である請求項記載のスライムコントロール方法。
  3. 残留ハロゲン測定装置を用いて白水中の全ハロゲン量若しくは活性ハロゲン量を連続的に測定する請求項1または2記載のスライムコントロール方法。
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