JP4811127B2 - 画像形成用トナーおよび画像形成装置 - Google Patents
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Description
エレクトロフォトグラフィでは光導電性絶縁体(感光体ドラムなど)上に一様な静電荷を与え、様々な手段により該光導電性絶縁体上に光像を照射することによって潜像を形成し、次いで、該潜像をトナーと呼ばれる微粉末を用いて現像し、紙等の記録媒体にトナー粉像を転写した後に定着させ、印刷物を得ている。
一方、イオノグラフィでは静電体皮膜を有する支持体ドラムを静電荷像担持用誘電体部材として用い、イオン(荷電粒子)発生手段によってイオンを発生させ、そのイオンによって該誘電体部材表面に静電荷像を形成し、形成された静電荷像をトナーによって現像し、エレクトロフォトグラフィと同様に、転写定着の工程を経て印刷物を得ている。
ここで、トナー粉像に強力な光を照射しトナーを溶融させる光定着方式は以下の理由により注目を集めている。
(1)非接触定着であるため、定着過程で画像のニジミ、チリなどが発生せず、解像度を劣化させない。
(2)装置電源投入後の待ち時間がなく、クイックスタートが可能である。
(3)システムダウンにより定着器内に記録紙がつまっても黒くならない。
(4)糊付き紙、プレプリント紙、厚さの異なる紙等、記録紙の材質や厚さに関係なく定着が可能である。
前記フラッシュ定着法においてトナーが記録紙に定着する過程は次の通りある。トナー画像が感光体ドラム等から記録用紙上に転写される。この時点ではトナーは粉像のまま記録紙に付着して画像を形成しており、例えば指で擦れば画像は崩れる状態である。
上記トナー粉像に、キセノンフラッシュ等の閃光を照射する。すると、トナーは閃光の光エネルギを吸収、昇温して軟化し、記録紙に密着する。閃光照射後に温度が下がると、トナー像は固化し、定着像が完成する。ここで重要なのは、用紙の折り曲げや、擦り等により、定着像が用紙から剥離し、画質の劣化を招くいわゆる定着不良を防止することである。このため、トナーは、
(1)トナー自身の光吸収能力を高め充分な熱量を吸収すること
(2)吸熱により速やかに溶融し用紙などの記録媒体に浸透すること
(3)冷却後は強固に記録媒体に固着すること
などの諸特性を同時に満足するよう設計する必要がある。
特に近年カラー印刷物の需要が高まっているが、カラートナーに用いられる着色剤は可視光領域の一部の光を吸収するものの、近赤外光領域での光吸収効率は低く、照射光からトナーの溶融に充分な熱エネルギを吸収し難い特性を有していた。
この問題を解決し、光定着方式で良好な定着性が得られるカラートナーの実用化が求められている。
付加データ埋め込み技術をデジタル著作物に利用する場合、著作権IDやユーザーID等の付加データを、視覚的に目立たないように埋め込んだ画像データを流通させる。近年では有価証券等の偽造を防止するために、様々な対策がカラー画像形成装置に盛り込まれている。その手法の一つとして、コピーやプリントアウトに使用した画像形成装置を特定するために、画像上に目視では認識しづらい画像形成装置固有の記号を一定の変調量で画像情報に重畳させる技術がある。
この技術を用いた場合は、仮に、その画像形成装置を用いて有価証券の偽造が行われても、この偽造物の画像を、特定の波長域が抽出可能な読み取り装置により読み取って上記画像形成装置固有の記号を判読することができる。従って、この記号の判読により偽造に使われた画像形成装置を特定できるため、偽造者を追跡するための有効な手がかりが得られる。
即ち、当該不可視トナーとは、特定な波長領域の光を用いて解読するためのトナーで、紙などの記録媒体上にトナー画像として定着した場合、該不可視トナー単独で画像形成に供せられる場合は目視での画像認識が困難となる。該不可視トナーは、特定の波長領域の光を用いて解読することにより、目視で画像認識した際の画像情報とは異なる新たな画像情報を得る画像パターンを形成することのできるトナーを指す。
また有彩色の媒体に対しての描画に用いられる場合や、同色調の可視トナーと共に画像形成に供せられる場合においては、同系統の色相の着色剤を含む事により不可視性が付与されるので、意図的に着色剤を添加する場合もある。
このような不可視画像の形成に用いられるトナーに添加される赤外光吸収剤としては、汎用のシアニン、ナフタロシアニン、イモニウム、アミニウムや、これら以外の化合物(例えば、特許文献20参照)も用いられている。しかし、不可視画像として形成された赤外光吸収パターンの読み取り性には更なる向上が望まれており、解像度の高い不可視画像が得られる赤外光吸収効率の高いトナーが望まれていた。
また、良好な光定着性を有する光定着方式の画像形成装置、並びに赤外光照射によるシグナル検出が良好であると共に、良好な色調(不可視性)を有する不可視画像が形成できる不可視画像形成用の画像形成装置を提供することにある。
即ち、本発明の画像形成用トナーは、
<1> 下記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を含有する画像形成用トナーである。
<3> 前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物として、2種以上の異なる化合物を含有する前記<1>または<2>に記載の画像形成用トナーである。
<4> 光定着方式の画像形成に供される前記<1>〜<3>の何れか1項に記載の画像形成用トナーである。
<5> 不可視画像の形成に供される前記<1>または<2>に記載の画像形成用トナーである。
<6> 像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体表面に形成された潜像を、トナーを含有する現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記トナーとして、前記<4>に記載の画像形成用トナーを用いる光定着方式の画像形成装置である。
<7> 像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体表面に形成された潜像を、トナーを含有する現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に定着し不可視画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記トナーとして、前記<5>に記載の画像形成用トナーを用いる不可視画像形成用の画像形成装置である。
また、良好な光定着性を有する光定着方式の画像形成装置、並びに赤外光照射によるシグナル検出が良好であると共に、良好な色調(不可視性)を有する不可視画像が形成できる不可視画像形成用の画像形成装置を提供することができる。
(画像形成用トナー)
本発明の画像形成用トナーは、下記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を含有することを特徴とする。
またフラッシュ定着用のエネルギー供給源として常用されているキセノンフラッシュ光源を用いた場合においては、光源の発光エネルギーの周波数パターンと赤外光の光吸収能の周波数パターンが発光領域900〜1050nmの光を高効率補足していないという観点で、必ずしもベストマッチしているとはいえず、エネルギー利用効率を改善するという観点から発光スペクトルと吸光スペクトルのマッチング向上が求められていた。
即ち、赤外領域の光(より具体的には、800〜1050nmの領域のスペクトル)を効率よく吸収することができる画像形成用トナーが望まれていた。
従って、本発明の画像形成用トナー(以下、単に「本発明のトナー」ということがある)に上記化合物を含有することにより、赤外光を効率的に吸収可能なトナーとすることができる。
また、優れた赤外光吸収能力を有することから、上記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の添加量(即ち、赤外光吸収剤の添加量)を抑えることができる。これにより、トナー色調に影響を及ぼしていた600nm〜780nmの光吸収量(赤外光吸収剤の色調が青みを帯びる要因となっていた吸収)が減少し、鮮やかな色調を有する赤外光吸収剤含有トナーとすることができる。また、従来から赤外光吸収剤を含むトナーは、その赤外光吸収剤が高価であったため、結果的にトナーの作製コストを押し上げていたが、上記の通り添加量を抑えることができるため、トナーの製造コストを低くすることができる。
なお、本発明のトナーは、特に上記不可視画像の形成に用いる場合などには、ヒートロール方式、オーブン方式、光定着方式、赤外光照射定着方式等、公知の定着方式により定着を行なうことができる。また、このようにして形成される不可視画像は、目で確認可能な画像であっても構わない。
[IR法によるトナーの光吸収特性測定法]
まず披検物質を所望の粒度に揃え、トルエン/メチルエチルケトン50:50混合溶液に溶解させたアクリル樹脂(デルペット80N:旭化成製)を分散媒とし、濃度1質量%溶液の均質な懸濁液を調製する。この懸濁液をスピンコータ(SPINNER 1H−3−A、協栄セミコンダクター製)を用い石英ガラス基板上に塗布し、乾燥後、フーリエ変換赤外分光光度計JIR SPX60(日本電子製)を用い、波長毎の吸光度を測定する。
本発明のトナーは、上述したような化合物を少なくとも含むことを特徴とするが、これ以外の成分として、公知のトナーと同様に、バインダ樹脂、着色剤、WAX組成物、その他の添加剤、また、上記化合物以外の赤外光吸収剤が含まれていてもよい。なお、以下の説明において、「画像」とは、特に説明の無い限り「可視画像」および/または「不可視画像」を意味するものとする。
本発明のトナーは、前述の通り、赤外光吸収剤として機能する前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を含有することを特徴とする。なお、本発明においては、赤外光吸収剤とは800nm〜1200nmの近赤外領域に最大吸収を持つ物質と定義する。
まず、前記一般式(1)で表される化学構造について説明する。
前記一般式(1)においてXa〜Xdは、前記(b)〜(d)より選ばれる環状構造物であり、少なくともXa〜Xdの1つが(c)または(d)に示す環状構造物であり、且つXa,Xb,XcおよびXdに下記(b)〜(d)より選ばれる環状構造が異なる少なくとも2種の環状構造物を有する。Xa〜Xdの半数以上が(c)または(d)に示す環状構造物であることが特に好ましい。前述の通りXa〜Xdの少なくとも何れか一つに前記(c)または(d)の環状構造物を有することから、赤外領域の発光スペクトルパターンに対する吸収バンドのスペクトルのマッチングが得られ、高い赤外光吸収能力が得られる。
これに対し、本発明者らの検討によると、一般式(1)において、Xa〜Xdの内少なくとも1つ以上が(c)または(d)に示す環状構造物であることにより、該赤外光吸収剤の赤外光領域および可視光領域の吸収が、従来の赤外光吸収剤に比べ全体に長波長側にシフトし、結果としてトナー色調に影響を及ぼしていた600nm〜780nmの光吸収量(赤外光吸収剤の色調が青みを帯びる要因となっていた吸収)が減少し、鮮やかな色調を有する赤外光吸収剤含有トナーを得られることが分かった。
・従来の赤外光吸収剤と比べ、吸収波長領域が長波長側にシフトしており、可視領域の吸収が少なく、単位質量あたりの隠蔽力が小さいため、トナーの着色を目的として添加される顔料の色調に対する影響度が小さい。
・優れた光吸収能力を示すため添加量を抑えられる。
などの特性を有しており、従来において赤外光吸収剤を構成成分とすることで生じていたトナー色調の濁りを、効果的に抑えることができ、特にホワイトやレモンイエローなど色調の濁りが生じやすい色相のトナーにおいても鮮やかな色調を示すトナーを提供することができる。
また、上記トナーを用いて、不可視画像を形成する場合には、不可視画像としても良好な色相(即ち不可視性)を得ることができると共に、赤外光吸収剤の可視領域の吸収が減じていることにより、不可視信号のSN比を高めることができ、バーコード読み取り装置のような不可視画像認識装置によるシグナル検出性をも向上させることができる。
これらの効果により、赤外光吸収剤として、一般式(1)で表される化学構造を有し、Xa〜Xdに異なる2種以上の環状構造物を有する化合物を構成成分とすることで、更に効率的な赤外光吸収性をトナーに付与することができ、フラッシュ定着方式のトナーにおいては、より良好な定着性をトナーに付与することができる。
次いで、前記(a)〜(d)で示される環状構造物に付加する置換基Rxn1〜Rxn4について説明する。
Rxn1〜Rxn4で表される置換基は、その引出し線が通過している環に付加する置換基であり、具体的に説明すると、(a)の環状構造物であれば、Rxn1およびRxn2は、「*」位置以外の4つの炭素のうちの何れか2つに付加する置換基である。また、(b)の環状構造物では、Rxn1およびRxn2は、環が縮合している箇所以外の炭素であって「*」位置以外の6つの炭素のうちの何れか2つに、(c)の環状構造物では、Rxn1およびRxn2は、環が縮合している箇所以外の炭素であって「*」位置以外の8つの炭素のうちの何れか2つに付加する置換基である。また、(d)の環状構造物では、Rxn1およびRxn2は、環が縮合している箇所以外の4つの炭素のうちの何れか2つに付加する置換基であり、同様に、Rxn3およびRxn4も、環が縮合している箇所以外の4つの炭素のうちの何れか2つに付加する置換基である。
前記炭素数1〜18の飽和または不飽和炭化水素としては、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基およびアルキル基等を挙げることができ、前記炭素数1〜13の酸素および/または窒素含有炭化水素基としては、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基等を挙げることができ、何れも更にアルキル基、ハロゲン基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、水酸基等の置換基によって置換されていてもよい。
前記一般式(1)において、該中心金属Mとしては、水素2原子、2価の金属、3〜4価の金属誘導体(例えば金属酸化物、金属塩化物)が用いられる。具体的には、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Sb、Pt、Pb、Mg、Ca、Ba、Be、Cd、Hg及びこれらのハロゲン化物、カルボン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。これらの中でも、赤外光吸収剤の光吸収域がより長波長側にシフトする効果、或いは光吸収域のλmaxが高くなる効果が得られることにより、本発明のトナーによる前述の効果がより顕著に得られるとの観点から、バナジウム、アルミニウム、アンチモンまたはスズの酸化物および/または塩化物を用いることが好ましい。
また、金属のハロゲン化物またはカルボン酸塩も好ましく用いられ、これらの例としては塩化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、アセチルアセトンマンガン、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。尚、本発明における中心金属Mは、V(バナジウム)を表す。
以下、前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の好ましい例を示す。尚、本発明における当該化合物は、当然これらに限定されるものではない。尚、以下に示す化合物のうち、化合物1〜化合物7は本発明における参考例として示すものである。
前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物は、従来用いられてきた赤外光吸収剤と同様に、一般的合成方法により調製することができる。
上記化合物は、上記Xa〜Xdを構成する環状構造物(b)〜(d)において「*」で示す部位がシアノ化したジシアノ化合物を、金属または金属誘導体と共に、塩基性下、適当な溶媒中(好ましくは沸点130℃以上の有機溶媒中)にて、100〜300℃(より好ましくは130〜220℃)で反応させることにより製造することができる。
溶媒の使用量は、アントラシアニン化合物を例に述べると、2,3−ジシアノアントラセン誘導体に対して1〜100倍(質量比)が好ましくは、更には5〜20倍(質量比)がより好ましい。
・混在
前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を本発明のトナーに添加する際には、多種類の化合物を混在させて用いること、即ち一般式(1)において、Xa〜Xdの環状構造物や、Rxn1〜Rxn4の置換基が異なる化合物を2種以上用いることがより好ましい。多種類の化合物を混在させることにより、光熱変換効率が高まる傾向が見られる。これは、骨格構造の差異により光吸収波長域も微妙にシフトし、これらの混在物が単一化合物に比べてワイドな光吸収波長域を示し、これにより照射された光のより広い波長範囲を効率的に熱変換できることによるものと解釈している。
また、本発明者らの検討によると、赤外光吸収剤のトナーに添加された状態における、照射された光エネルギを熱エネルギに変換する機能を充分に発揮させるためには、該赤外光吸収剤のBET法により測定された比表面積を40.0平方m/g以上、更に望ましくは40.0〜120.0平方m/gとすることが有用である。なお、この条件を満たす手法としては、トナーへ内添前に該赤外光吸収剤を微粒化する手法、トナーに該赤外光吸収剤を内添する過程で強混練することでトナー中の該赤外光吸収剤を微粒化する手法などがあるが、いずれの手法を用いてもよい。なお、この様な傾向が見られるメカニズムとしては、特開2001−392759号公報にも記されている様に、本発明者らは、該赤外光吸収剤を微細化することによってその受光面積が増大するとともに、該赤外光吸収剤とバインダ樹脂などの分散媒との接触面積も増えることで、該赤外光吸収剤と分散媒との間の熱伝導もスムーズに行われることによるものと解釈している。なお、本発明者らの経験によると、粉砕法により製造するトナーに処方する場合、比表面積を更に増大させ120.0平方m/g以上とした場合、光熱変換効率の向上は見られず、むしろ低減の傾向が生じることを経験上見いだしている。また、粒子を微細化することは粉砕コストの向上も招く。よって、比表面積を無制限に増大させることは好ましくなく、トナー中における該赤外光吸収剤の好適な粒径は、比表面積換算で、BET法により測定された値として40.0〜120.0平方m/gとすることが有用である。
前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物のトナーに対する添加量は、0.05〜10.0質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましく、0.20〜0.75質量%が特に好ましい。これは添加量が0.05質量%未満となると、該赤外光吸収剤の光熱変換のエネルギー量が充分ではなくトナーの溶融が不充分になることがあるためであり、また10.0質量%を超えると、トナー原材料価格の上昇を招き、トナー製造価格面から好ましくなくなるからである。
本発明のトナーは、前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を必須構成成分とするが、この他、公知な赤外光吸収剤を併用することもできる。併用可能な公知の赤外光吸収剤としては、アミニウム塩、ジイモニウム塩、酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、メロシアニン色素、ポリメチン色素、特定のアミド化合物、ランタノイド化合物、チオールニッケル錯体などが挙げられる。尚、上記併用可能な公知の赤外光吸収剤の含有量としては、前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物に対して、20〜200質量%であることが好ましい。
バインダ樹脂としては特に限定されず、各種の天然または合成高分子物質よりなる熱可塑性樹脂を用いることができるが、代表的には重量平均分子量5000〜10万程度、フローテスタ法による融点90〜140℃程度のエポキシ樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂などを好適に用いることができる。また、これらバインダ樹脂は、単独または混合して用いることができる。
また着色剤としては、特に限定されず、染料・顔料等のいずれを用いてもよい。例えばカラートナーでは、キナクリドン(赤色)、フタロシアニン(青色等)、アンスラキノン(赤色)、ジスアゾ(赤色または黄色)、モノアゾ(赤色)、アニライド系化合物(黄色)、ベンジジン(黄色)、ベンズイミダゾロン(黄色)、ハロゲン化フタロシアニン(緑色)などが用いられる。黒色トナーでは、カーボンブラック、ニグロシン染料、フェライト、マグネタイトなどの黒色染顔料を広く用いることができる。
トナーの帯電性能を制御するための帯電制御剤としては、トナーに帯電を付与させる能力があれば特に制限されないが、カラートナーにおいてはトナーの色相に与える影響が小さいことを考慮すると、無色、淡色のものが好ましい。好適には、4級アンモニウム塩(無色)、ニグロシン染料(黒色)、トリフェニルメタン誘導体(青色)などが正極性帯電制御剤として、ナフトヤ酸亜鉛錯体(無色)、サリチル酸亜鉛錯体(無色)、ホウ素化合物、カリックスアレン化合物などが負極性帯電制御剤として用いることができる。
トナーの光定着性をより高める等の目的で、WAX組成物を添加することができる。WAX組成物としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、脂肪酸エステル類、パラフィンワックス、カルナバワックス、アミド系ワックス、酸変成ポリエチレンワックスなど、通常のWAXを単体または混合物として広く用いることができる。中でも、軟化温度が150℃以下のものが好ましく、特にトナーバインダ樹脂の溶融軟化温度より低い軟化温度を示すものが好ましい。
トナーに外添する添加剤としては、通常用いられている材料が広く適応できる。シリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛などの無機微粒子やポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子などが適用できる。
トナーの製造は、通常のトナー製造法と同様の方法で行うことが可能である。
粉砕法で製造する場合、バインダ樹脂、赤外光吸収剤(前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物)、WAX組成物、着色剤、帯電制御剤などのトナー構成物を混合した後、ニーダー、押し出し機などを用いて上記材料を溶融混練する。この後、溶融混錬物を粗粉砕した後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により目的とする粒径のトナー粒子を得る。更に、外添剤を添加し、最終的なトナーを完成させる。
懸濁重合法で製造する場合、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤、着色剤、帯電制御剤、赤外光吸収剤(前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物)、WAX組成物、重合開始剤などを混合してモノマ組成物を製造する。その後、リン酸三カルシウム、ポリビニルアルコール等の懸濁安定剤、界面活性剤が入った水相中に、前記モノマ組成物を投入し、ローターステータ式乳化機、高圧式乳化機、超音波式乳化機などを用いてエマルションを調製した後、加熱によりモノマの重合を行う。重合終了後、粒子の洗浄、乾燥を行い外添剤を添加して最終的なトナー粒子を得る。
本発明の画像形成用現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、本発明のトナーからなる一成分現像剤、あるいは、キャリアと本発明のトナーとからなる二成分現像剤のいずれであってもよい。以下、本発明の現像剤が二成分現像剤である場合について詳細に説明する。
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、本発明のトナーを用いたものであれば特に限定されないが、具体的に、前記本発明のトナーは以下のような光定着方式の画像形成装置に好適に用いられる。
即ち、上記本発明の光定着方式の画像形成装置は、潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し画像を形成する定着手段と、を有し、この際前記トナーとして、前述の一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を含有する画像形成用トナーが少なくとも用いられる。
即ち、上記本発明の不可視画像形成用の画像形成装置は、潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に定着し不可視画像を形成する定着手段と、を有し、この際前記トナーとして、一般式(1)において、Xa〜Xdの内少なくとも1つ以上が(c)または(d)に示す環状構造物である本発明のトナーが少なくとも用いられる。
なお、上記光定着方式としては、フラッシュ定着方式、赤外光照射定着方式等の公知の光定着方式を利用することができる。また、上記不可視画像形成用の画像形成装置における定着手段は光定着方式に限定されるものではなく、ヒートロール方式、オーブン方式等の公知の熱定着方式等も必要に応じて利用することができる。
フラッシュエネルギーが、単色光定着において1J/cm2未満、4色一括光定着において2J/cm2未満の場合には良好に定着できない場合がある。一方、単色光定着において3J/cm2を超える場合や、4色一括光定着において7J/cm2を超える場合には、トナーボイドや、記録媒体の焦げ等が発生する場合がある。
なお、本発明に用いられる一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の近赤外域における光吸収効率をより効果的に高めることができる点で、光源としてはキセノンランプを用いることが好ましい。
例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラートナーを用いて、光定着によりカラー画像(可視画像)を形成する場合には、4色のカラートナーとして着色剤を含む本発明のトナーを用いることができる。また、バーコードのような赤外光吸収パターン等の不可視画像を形成する場合には、着色剤等の着色成分を含まない本発明のトナーを少なくとも1種用いるか、着色剤等の成分を含み、本発明の赤外光吸収剤の成分を含まないトナーと着色剤の成分および本発明の赤外光吸収剤の成分を含むトナーを併用して用いることができる。あるいは、可視画像と、不可視画像とを、記録媒体表面に同時に形成する場合には、例えば、可視画像の形成に4色のカラートナーを用い、不可視画像の形成に本発明の赤外光吸収剤の成分を含む本発明のトナーを少なくとも1種用いることができる。
−赤外光吸収材の製造/バナジルアントラシアニン−
原材料として、2,3−ジシアノアントラセン4.0部、酸化バナジル0.3部、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)1.2部、n−アミルアルコール20部を用い、これを混合した後、加熱還流下6時間攪拌した。冷却後、メタノール100mLに排出、析出物を濾別し、カラムクロマトグラフィーにて精製を行いバナジルアントラシアニン2.1部を得た。
該バナジルアントラシアニンを気流衝突型粉砕機およびアトライター粉砕機を用い、所望の比表面積になるまで微粉化処理を行った。
まず、ポリオキシプロピレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.0mol、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.5mol、1,3−ブタンジオール2.46mol、エピコート1001(ジャパンエポキシレジン社製)0.12mol、テレフタル酸3.6mol、イソフタル酸1.8mol、無水トリメリト酸0.1mol、および酸化−n−ブチル錫2.3gをガラス製3リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、攪拌棒、流下式コンデンサー、および窒素導入管を取りつけ、電熱マントル中で、窒素気流下、220℃にて攪拌しつつ反応させ、軟化点114℃に達した時点で、縮重合反応を終了させ酸価30mg/KOH、軟化温度114℃の淡黄色透明の固体状ポリエステル樹脂を得た。
このトナー母体100部に対し、外添剤として疎水性シリカ(H−2000、クラリアント製)0.35部をヘンシェルミキサーを用いて添加し、トナー(A)を得た。
−黄色トナー(B)の製造−
赤外光吸収剤の原料として、2,3−ジシアノアントラセンを、9,10−ジシアノフェナントロレンに変更した以外、実施例1と同様にしてバナジルフェナントラシアニンを含有する黄色トナー(B)を得た。
−黄色トナー(C)の製造−
赤外光吸収剤の原料として、2,3−ジシアノアントラセンを、1,4−ジメトキシ−2,3−ジシアノアントラセンおよび2,3−ジシアノアントラセン混合物に変更した以外、実施例1と同様にして環状構造の一部の環にメトキシ基を導入したアントラシアニン誘導体を含有する黄色トナー(C)を得た。
−黄色トナー(D)の製造−
赤外光吸収剤の原料として、2,3−ジシアノアントラセンを、2,3−ジシアノアントラセンおよび1,4−ジエトキシ−2,3−ジシアノナフタレン混合物に変更した以外、実施例1と同様にして環状構造にアントラセン環とエトキシ基を導入したナフタレン環を含有する黄色トナー(D)を得た。
−黄色トナー(E)の製造−
用いる赤外光吸収剤をバナジルフタロシアニンに変更した以外、実施例1と同様にしてフタロシアニンを含有する黄色トナー(E)を得た。
−黄色トナー(F)の製造−
用いる赤外光吸収剤をバナジルナフタロシアニンに変更した以外、実施例1と同様にしてナフタロシアニンを含有する黄色トナー(F)を得た。
−不可視トナー(G)の製造−
ベンズイミダゾロン顔料を使用しないこと以外は、実施例1と同様にしてバナジルアントラシアニンを含有する不可視トナー(G)を得た。
−不可視トナー(H)の製造−
用いる赤外光吸収剤をバナジルナフタロシアニンに変更した以外、実施例5と同様にしてナフタロシアニンを含有する不可視トナー(H)を得た。
−不可視トナー(I)の製造−
用いる赤外光吸収剤をバナジルナフタロシアニンに変更し、その添加量を0.3%にした以外、実施例5と同様にしてナフタロシアニンを含有する不可視トナー(I)を得た。
−不可視トナー(J)の製造−
用いる赤外光吸収剤をバナジルナフタロシアニンに変更し、その添加量を0.1%にした以外、実施例5と同様にしてナフタロシアニンを含有する不可視トナー(J)を得た。
〔トナー評価方法〕
・トナーの光吸収特性の評価
製造したトナー(トナーA〜F)の最大吸収波長λmax、および波長700nmでの吸光度を下記のIR法により計測した。
まず披検物質を所望の粒度に揃え、トルエン/メチルエチルケトン50:50混合溶液に溶解させたアクリル樹脂(デルペット80N:旭化成製)を分散媒とし、濃度1%溶液の均質な懸濁液を調製する。この懸濁液をスピンコータ(SPINNER 1H−3−A、協栄セミコンダクター製)を用い石英ガラス基板上に塗布し、乾燥後、フーリエ変換赤外分光光度計JIR SPX60(日本電子製)を用い、波長毎の吸光度を測定した。
得られたトナー(トナーA〜F)を粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤化し、商品番号PS2160のプリンタ(富士通製)の改造機(フラッシュ定着の照射エネルギー量を1〜4ジュール/平方センチメートルの範囲で可変できる様にしたもの)に搭載し、キセノンフラッシュ光(照射エネルギ2.2ジュール/平方センチメートル)を照射して普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙)に定着させ印刷画像を得た。
次に、以下のように定着性の調査を行った。
まず、1inch四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、該印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を測定し、下式より定着率を算出した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
以上のトナー評価の結果を下記表に記す。
まず、本発明における一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の構造に着目すると、ポルフィラジン環に結合する環状構造がベンゼン(フタロシアニン)、ナフタレン(ナフタロシアニン)、アントラセン(アントラシアニン)と大きな環状構造をとるに従って、700nm近辺の可視領域の吸収も小さくなっている。これは、環状構造が大きくなるに従ってトナーのλmaxが長波長側にシフトしているためと思われる。
この結果として、当然の事ながら印刷画像色調も、大きな環状構造をとる構造体がポルフィラジン環に結合している物質を赤外光吸収剤としてトナーに添加したものが、優れた評価が得られている。
更に、実施例1のトナー(A)と、実施例3のトナー(C)との比較によると、トナー(C)の方が優れた定着性を示している。これは、トナー(A)に使用された赤外光吸収剤に比べ、トナー(C)に使用された赤外光吸収剤の光吸収スペクトルが、λmax近傍でワイドな台形状の吸収を持っているため、定着工程で照射される光エネルギーの吸収効率が高くなることによるものと本発明者らは考察している。
〔不可視トナー評価方法〕
・トナーの描画特性(印刷画像色調)および不可視画像復元性の評価
得られたトナーを平均粒径40μmのスチレン/ブチルメタアクリレートMn−Mgフェライトキャリアとトナー濃度5.5%で混合して現像剤化し、タンデム型カラープリンタである商品番号DocuColor1250(富士ゼロックス製)の改造機(ブラック用現像器を取り除き、替わりに不可視トナー用現像剤を入れた構成を有するもの)に搭載し、画像形成を行った。
なお、画像テストにおいては、品質を評価するためのリファレンスとして、上記の不可視画像及び可視画像が、記録媒体表面に形成された記録画像(以下、「記録画像A」と略す)の他に、記録画像Aにおける可視画像のみが記録媒体表面に形成された記録画像(以下、「記録画像B」と略す)、記録画像Aにおける不可視画像のみが記録媒体表面に形成された記録画像(以下、「記録画像C」と略す)を同時に画像形成した。
(1)トナー色調
(2)不可視画像の不可視情報復元率
(3)可視画像品質
(4)不可視トナーの可視光領域における吸収率
(5)不可視トナーと可視トナーとの近赤外光吸収率差
まず、赤外光吸収剤を添加しない以外は実施例5で製造したトナー(G)と同様にしてリファレンストナーを製造した。
次いで、記録媒体上に同等量のトナー(G)〜(J)およびリファレンストナーを用い、トナー未定着画像(インチ角ベタ)を現像により作製し、該記録媒体を130℃オーブン中に10分間静置することでトナー定着画像とした。その後、得られたトナー定着画像の色調を分光光度計(X−rite938、X−rite製)を用い、光源D50、2°(バッキング白)の条件下で測定を行った。
尚、色調の評価基準としては、リファレンストナーの色との色差ΔEが3未満を優良(◎)、3以上5未満を良好(○)、5以上10未満を限界域(△)、10以上を不可(×)と判定した。
記録画像Aに対して、トナー像が定着させられた記録媒体上の画像面のほぼ真上10cmのところに、近赤外波長域の光を照射するリング状LED光源(京都電気製、LEB−3012CE)を設置し、該画像面を照射した。この状態で、画像面のほぼ真上15cmのところに、800nm以下の波長成分をカットするフィルタをレンズ部に装着した800nm〜900nmの波長域に受光感度を有するCCDカメラ(KEYENCE製、CCD TL−C2)を設置し、前記画像面を読み取り、一定のコントラスト(閾値)を境界として2値化処理することにより不可視画像を抽出し、これをソフトウエアで復号化処理し、著作権情報が正確に復元できるかどうかを評価した。尚、この評価は500回実施した際に、情報が正確に復元できた回数を、不可視情報復元率(%)とした。不可視情報復元率(%)が85%以上であれば良好(○)、80%以上85%未満を限界域(△)、80%未満を不可(×)と判定した。
記録画像Aにおける可視画像と、記録画像Bにおける可視画像とを目視にて比較し、以下の判定基準により評価した。
○:記録画像A及び記録画像Bの可視画像の画質には差異が無く、実用上問題が無いレベル。
△:記録画像Bの可視画像と比較すると、記録画像Aの可視画像には若干の画質ノイズが確認され、実用上に供する限界域レベル。
×:記録画像Bの可視画像と比較すると、記録画像Aの可視画像には明確な画質ノイズが確認され、実用上問題となるレベル。
まず、記録媒体上に同等量の不可視トナー(G)〜(J)を用い、トナー未定着画像(インチ角ベタ)を現像により作製し、該記録媒体を130℃オーブン中に10分間静置することでトナー定着画像とした。このトナー定着画像が形成された領域と、何らの画像が形成されていない記録媒体の表面と、を分光反射率測定機(日本分光社製、V−570)により測定し、可視光波長域における最大の分光反射率を下式により求めた。
不可視トナーの可視光吸収率=IT(v)−M(v)
式中、IT(v)は不可視トナーにより形成された画像の可視光域の分光反射率を、M(v)は記録媒体の可視光域の分光反射率を示す。
尚、不可視トナーの可視光域における最大の分光反射率については、10%未満を優良(◎)、10%以上15%未満を良好(○)、15%以上18%未満を限界域(△)、18%以上を不可(×)と判定した。
記録画像Bにおける可視画像の分光反射率と、記録画像Cにおける不可視画像の分光反射率とを、分光反射率測定機(日本分光社製、V−570)を用いて波長860nmにて測定し、下式により求めた。
近赤外光吸収率差=IP(i)−VP(i)
式中、IP(i)は不可視画像の分光反射率、VP(i)は可視画像の分光反射率を示す。
尚、近赤外光吸収率差が30%以上を優良(◎)、20%以上30%未満を良好(○)、15%以上20%未満を限界域(△)、15%未満を不可(×)と判定した。
まず、本発明の事例であるバナジルアントラシアニンにおいては、添加量0.5%において充分な赤外光吸収能を示すことから、不可視情報復元率、近赤外光吸収率差について優れた結果を示すとともに、本発明の骨子の一つである吸収バンドが長波長シフトしていることで、赤外光吸収剤起因のトナーの可視領域での吸収が減じ、トナー色調、可視画像品質、可視光領域の吸収率の面でも総じて高い評価結果を示し、トータルとして不可視トナーとして優れた性能を持っていることが判る。
一方、既存の赤外光吸収剤であるバナジルナフタロシアニンを0.5%処方したトナーにおいては、不可視情報復元率、近赤外光吸収率差の面からは実用充分な特性を示すものの、赤外光吸収剤起因のトナーの可視領域での吸収による『色濁り』の点で、トナー色調、可視画像品質、可視光領域の吸収率の面について良好な結果が得られていない。トナー色調、可視画像品質、可視光領域の吸収率の面の特性を改善するため、バナジルナフタロシアニンの処方量を減じると、トナー色調、可視画像品質、可視光の吸収率面での性能が改善し実用領域に到達するより以前に、良好であった不可視情報復元率、近赤外光吸収率差といった項目の性能低下が生じ、実用限界を下回ることから、添加量調整のみの手段によっての適性領域が存在しないことが判る。
12K、12Y、12M、12C 画像形成ユニット
14K、14Y、14M、14C 感光体
16K、16Y、16M、16C 帯電器
18K、18Y、18M、18C 露光手段
20K、20Y、20M、20C 現像器
22K、22Y、22M、22C クリーナ
24K、24Y、24M、24C 転写器
26 フラッシュ定着方式の定着器
28 紙送りローラ
P 記録媒体
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成用トナー。
〔一般式(1)中、Xa,Xb,XcおよびXdは、それぞれ独立に、下記(b)〜(d)より選ばれる環状構造物を表し、Mは、V(バナジウム)を表す。但し、Xa,Xb,XcおよびXdの一つ以上が、前記(c)および(d)より選ばれる環状構造物であり、且つXa,Xb,XcおよびXdに下記(b)〜(d)より選ばれる環状構造が異なる少なくとも2種の環状構造物を有する。〕
〔前記(b)〜(d)で示される環状構造物は、*位置で前記一般式(1)の含窒素5員環(ポルフィラジン環)に結合する。また、Rxn1〜Rxn4は、その引出し線が通過している環に付加する置換基であり、それぞれ独立に、水素原子、メトキシ基および/またはエトキシ基を表す。〕 - 前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物として、2種以上の異なる化合物を含有する請求項1に記載の画像形成用トナー。
- 像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体表面に形成された潜像を、トナーを含有する現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に光定着し画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置であって、
前記トナーとして、請求項1または請求項2に記載の画像形成用トナーを用いることを特徴とする光定着方式の画像形成装置。 - 像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体表面に形成された潜像を、トナーを含有する現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像担持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を記録媒体表面に定着し不可視画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置であって、
前記トナーとして、請求項1または請求項2に記載の画像形成用トナーを用いることを特徴とする不可視画像形成用の画像形成装置。
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