JP4811067B2 - 静電アクチュエータ及び液滴吐出ヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、静電駆動方式のインクジェットヘッド等に用いられる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載される静電駆動方式のインクジェットヘッドが知られている。静電駆動方式のインクジェットヘッドは、一般に、ガラス基板上に形成された個別電極(固定電極)と、この個別電極に所定のギャップを介して対向配置された振動板(可動電極)とから構成される静電アクチュエータ部を備えている。そして、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、上記静電アクチュエータ部に静電気力を発生させることにより吐出室に圧力を加えて、選択されたノズル孔よりインク滴を吐出するようになっている。
静電駆動方式のインクジェットヘッドは、近年、高解像度化に伴い高密度化、高速度駆動の要求が一段と高まり、それに伴い静電アクチュエータもますます微小化する傾向にある。そして、従来の静電アクチュエータは、一般に振動板の下面にシリコンの酸化膜からなる絶縁膜を形成し、この絶縁膜を介して電極ガラス基板と陽極接合する構造となっている。また、静電アクチュエータの振動板の表面にシリコン酸化膜を形成して絶縁膜とすることにより、表面を保護して振動板が対向電極に接触した際の短絡を防止し、信頼性を確保するものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
駆動電圧を高電圧化するには、従来使用されてきたシリコン酸化膜に変わり、より絶縁耐圧の高い材料、例えばアルミナ等の、いわゆるHigh−K材(高誘電率ゲート絶縁膜)を使用したアクチュエータが考えられる。ところが、High−K材は、従来絶縁膜として使用されてきたシリコン酸化膜と異なり、絶縁膜表面の親水化が困難であり、陽極接合等の直接接合によりアクチュエータを作製する場合、絶縁膜による接合強度の低下や接合不能となるなどの課題を有していた。
これを解決するための方法として、例えば特許文献2に記載されているように、接合面に絶縁膜が設けられていないアクチュエータがある。
特開平11−165413号公報 特開2003−80708号公報
しかしながら、薄いシリコン基板上に絶縁膜を形成後、レジスト塗布、パターニングを行い、エッチングで接合部の絶縁膜を形成する場合、振動板欠陥が多発してしまうという課題があった。さらに、絶縁膜の絶縁耐圧が大きく低下するという課題もあった。
本発明は、上記のような課題に鑑み、静電アクチュエータにおける絶縁膜をHigh−K材により構成する場合において、接合強度の低下を防ぎ、かつ絶縁耐圧の低下がなく、さらに駆動耐久性に優れた静電アクチュエータ及び液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る静電アクチュエータは、ガラス基板に設けられた固定電極と、シリコン基板に形成され、前記固定電極と所定の大きさのギャップを介して対向して配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段と、前記固定電極の前記可動電極と対向する面に設けられた第1の絶縁膜と、前記可動電極の前記固定電極と対向する面に設けられた第2の絶縁膜とを有し、前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の一方または両方は、シリコン酸化膜と、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電体膜とを含む積層構造であり、かつ、前記ガラス基板と前記シリコン基板とを陽極接合する該シリコン基板の接合部にのみ前記積層構造の絶縁膜のうち前記シリコン酸化膜が形成されているものである。
このように固定電極及び可動電極のそれぞれに形成される第1及び第2の絶縁膜の一方または両方を酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料により、つまりHigh−K材で構成することにより、電荷の蓄積を抑制することができるため、静電アクチュエータの絶縁膜を薄膜化することができ、かつ絶縁耐圧の低下がなく、駆動耐久性を向上させることができる。
そして、第1および第2の絶縁膜に使用する誘電体膜としては、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta25)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から少なくとも一つを選ぶものとする。これらの材料は酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料である。
前記誘電体膜は、前記シリコン酸化膜よりも厚さが厚いことが望ましい。
前記固定電極が形成されたガラス基板と、前記可動電極が形成されたシリコン基板とを陽極接合する接合部にはシリコン酸化膜が形成されているものとする。
第1及び第2の絶縁膜をHigh−K材で構成すると、親水化が困難であるため、陽極接合の接合強度を保持できなくなる。そのため、接合部にだけ親水化が容易なシリコン酸化膜を形成する。
また、前記ギャップの封止は窒素雰囲気下で行うことが望ましい。これによって、ギャップ内、つまり静電アクチュエータ内部の絶縁膜上に水分が存在することはないので、静電気力により可動電極が固定電極に吸着したままの状態となることを防止することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される振動板となる可動電極に所定のギャップを介して対向配置される個別電極となる固定電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、請求項1乃至のいずれかに記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする。
この構成により、絶縁耐圧及び駆動耐久性に優れた液滴吐出ヘッドを提供することができる。
以下、本発明を適用した静電アクチュエータを備える液滴吐出ヘッドの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッドについて図1から図4を参照して説明する。なお、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するエッジ吐出型の液滴吐出ヘッドにも同様に適用することができるものである。
実施形態1.
図1は実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を分解して示す分解斜視図であり、一部を断面で表してある。図2は図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図、図3は図2のA部の拡大断面図、図4は図2のa−a拡大断面図、図5は図2のインクジェットヘッドの上面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
本実施形態のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)10は、図1および図2に示すように、複数のノズル孔11が所定のピッチで設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2に設けられた振動板6に対峙して個別電極5が配設された電極基板3とを貼り合わせることにより構成されている。
インクジェットヘッド10のノズル孔11ごとに設けられる静電アクチュエータ部4は、図2から図4に示すように、固定電極として、ガラス製の電極基板3の凹部32内に形成された個別電極5と、可動電極として、シリコン製のキャビティ基板2の吐出室21の底壁で構成され、個別電極5に所定のギャップGを介して対向配置される振動板6とを備え、各々の個別電極5の対向面(振動板側対向面)に第1の絶縁膜7が形成され、振動板6の対向面(個別電極側対向面)、すなわちこの例では電極基板3に接合されるキャビティ基板2の接合面全面に第2の絶縁膜8が形成されている。
さらに、第1の絶縁膜7及び第2の絶縁膜8の少なくとも一方を酸化シリコン(SiO2)よりも比誘電率の高い誘電材料、例えば酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23、アルミナ)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2 5 )、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)、窒化アルミ(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム(Y23)、ジルコニウムシリケート(ZrSiO)、ハフニウムシリケート(HfSiO)、ジルコニウムアルミネート(ZrAlO)、窒素添加ハフニウムアルミネート(HfAlON)、これらの複合膜等のいわゆるHigh−K材と呼ばれる高誘電率材料で構成するものである。その中でも膜の低温製膜性、膜の均質性、プロセス適応性等を考慮した場合、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23、アルミナ)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2 5 )、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を使用することが望ましい。
本実施形態では、第2の絶縁膜8は通常の酸化シリコン(SiO2)で形成されているが、第1の絶縁膜7はアルミナ(Al23)で形成されている。また、第1の絶縁膜7の厚さを90nm、第2の絶縁膜8の厚さを30nmとし、ギャップGの距離を200nmとしている。なお、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5の厚さは100nmとしている。
そして、シリコン製のキャビティ基板2とガラス製の電極基板3とは、親水化が容易で陽極接合が容易なシリコン酸化膜からなる第2の絶縁膜8を介して陽極接合されている。また、電極基板3に形成された個別電極5の端子部5aと、キャビティ基板2の接合面と反対の上面に形成された共通電極26とに、駆動手段として、ドライバICなどの駆動制御回路9が図2、図3、図5に示すように配線接続される。
以下、各基板の構成についてさらに詳細に説明する。
ノズル基板1は、例えばシリコン基板から作製されている。インク滴を吐出するためのノズル孔11は、例えば径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち径の小さい噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから構成されている。噴射口部分11aおよび導入口部分11bは基板面に対して垂直にかつ同軸上に設けられており、噴射口部分11aは先端がノズル基板1の表面に開口し、導入口部分11bはノズル基板1の裏面(キャビティ基板2と接合される接合側の面)に開口している。
また、ノズル基板1には、キャビティ基板2の吐出室21とリザーバ23とを連通するオリフィス12が形成されている。
ノズル孔11を噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから2段に構成することにより、インク滴の吐出方向をノズル孔11の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、インク滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、またインク滴の飛び散りがなく、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。また、ノズル密度を高密度化することが可能である。
キャビティ基板2は、例えば面方位が(110)のシリコン基板から作製されている。キャビティ基板2には、インク流路に設けられる吐出室21となる凹部22、およびリザーバ23となる凹部24がエッチングにより形成されている。凹部22は前記ノズル孔11に対応する位置に独立に複数形成される。したがって、図2に示すようにノズル基板1とキャビティ基板2を接合した際、各凹部22は吐出室21を構成し、それぞれノズル孔11に連通しており、またインク供給口である前記オリフィス12ともそれぞれ連通している。そして、吐出室21(凹部22)の底部が上記振動板6となっている。また、この振動板6は、シリコン基板の表面からボロン(B)を拡散させてボロン拡散層を形成し、ウェットエッチングによりエッチングストップしてそのボロン拡散層の厚さで薄く仕上げられている。
凹部24は、インク等の液状材料を貯留するためのものであり、各吐出室21に共通のリザーバ(共通インク室)23を構成する。そして、リザーバ23(凹部24)はそれぞれオリフィス12を介して全ての吐出室21に連通している。また、リザーバ23の底部には後述する電極基板3を貫通する孔が設けられ、この孔のインク供給孔33を通じて図示しないインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
電極基板3は、例えばガラス基板から作製される。中でも、キャビティ基板2のシリコン基板と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが適している。これは、電極基板3とキャビティ基板2を陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。
電極基板3には、キャビティ基板2の各振動板6に対向する表面位置にそれぞれ凹部32が設けられている。凹部32は、エッチングにより深さ約0.4μmで形成されている。そして、各凹部32内には、一般に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5が、例えば100nmの厚さでスパッタにより形成される。したがって、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップ(空隙)Gは、この凹部32の深さ、個別電極5の厚さおよび個別電極5の表面に形成される第1の絶縁膜7の厚さにより決まることになる。このギャップGはインクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響するので、凹部32の深さ、個別電極5の厚さ、第1の絶縁膜7の厚さを高精度に加工する必要がある。
個別電極5は、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部5aを有する。端子部5aは、図2、図5に示すように、配線のためにキャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部34内に露出している。
また、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップGの開放端部はエポキシ等の樹脂による封止材35で封止される。これにより、湿気や塵埃等が電極間ギャップへ侵入するのを防止することができ、インクジェットヘッド10の信頼性を高く保持することができる。
上述したように、ノズル基板1、キャビティ基板2、および電極基板3は、図2に示すように貼り合わせることによりインクジェットヘッド10の本体部が作製される。すなわち、キャビティ基板2と電極基板3は陽極接合により接合され、そのキャビティ基板2の上面(図2において上面)にノズル基板1が接着等により接合される。
そして最後に、図2、図5に簡略化して示すように、ドライバIC等の駆動制御回路9が各個別電極5の端子部5aとキャビティ基板2上面の共通電極26とに上記フレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続される。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
次に、以上のように構成されるインクジェットヘッド10の動作を説明する。
駆動制御回路9により個別電極5とキャビティ基板2の共通電極26の間にパルス電圧を印加すると、振動板6は個別電極5側に引き寄せられて吸着し、吐出室21内に負圧を発生させて、リザーバ23内のインクを吸引し、インクの振動(メニスカス振動)を発生させる。このインクの振動が略最大となって時点で、電圧を解除すると、振動板6は離脱して、インクをノズル11から押出し、インク液滴を吐出する。
その際、振動板6は第1の絶縁膜7及び第2の絶縁膜8を介して個別電極5に吸着する。本実施形態では第2の絶縁膜8が酸化シリコンで形成され、第1の絶縁膜7が酸化シリコンより比誘電率の高いアルミナで形成されているため、第1の絶縁膜7をシリコン酸化膜換算で薄く形成することできるともに、電荷の蓄積を抑制できるため絶縁耐圧が向上し、振動板6が個別電極5に吸着したときの放電による静電アクチュエータ部4の破壊を防止することができる。
したがって、このインクジェットヘッド10は、上記のように構成された静電アクチュエータ部4を備えているので、静電アクチュエータ部4を微小化しても駆動耐久性に優れ、高速駆動および高密度化が可能となる。
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図7は図6のB部の拡大断面図、図8は図6のb−b拡大断面図である。
本実施形態における静電アクチュエータ部4Aは、振動板6の対向面に形成される第2の絶縁膜8を、シリコン酸化膜8aとアルミナの誘電体層8bとの積層構造とするものである。ここで、シリコン酸化膜8aはキャビティ基板2の接合面全面に形成されており、アルミナの誘電体層8bはそのシリコン酸化膜8a上に、かつ電極基板3との接合部以外の振動板6に対応する部分に形成されている。
個別電極5の対向面には、実施形態1と同様にアルミナの誘電体層からなる第1の絶縁膜7が形成されている。また、膜厚については、個別電極5は100nm、第1の絶縁膜(アルミナ誘電体層)7は60nm、第2の絶縁膜8のうちシリコン酸化膜8aは30nm、アルミナ誘電体層8bは20nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
以上のように、本実施形態によれば、振動板6の対向面に形成された第2の絶縁膜8がシリコン酸化膜8aとアルミナ誘電体層8bの多層構造で形成されているため、下地電極の振動板6の影響を受けず、絶縁耐圧が高い膜を形成することができる。また、個別電極5の表面には実施形態1と同様にアルミナ誘電体層からなる第1の絶縁膜7が形成されているので、同様に絶縁耐圧を向上させることができる。また、キャビティ基板2と電極基板3は親水化が容易なシリコン酸化膜8aを介して陽極接合されるため、十分に高い接合強度を確保することができる。
なお、本実施形態では、振動板6の対向面を複数の絶縁膜(誘電体層を含む)による積層構造としたが、個別電極5の対向面を複数の絶縁膜(誘電体層を含む)による積層構造としてもよいし、振動板6及び個別電極5の両方とも同様の積層構造としてもよい。
実施形態3.
図9は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図10は図9のC部の拡大断面図、図11は図9のc−c拡大断面図である。
本実施形態における静電アクチュエータ部4Bは、第1及び第2の絶縁膜7、8ともに、酸化シリコンよりも比誘電率の高い同種の誘電体層で形成するものである。ここでは、振動板6の対向面に形成される第2の絶縁膜8をアルミナ誘電体層8bとし、個別電極5の対向面に形成される第1の絶縁膜7を同じくアルミナ誘電体層7aとしたものである。ただし、振動板6の絶縁膜としてアルミナ誘電体層8bで形成した場合には、陽極接合が困難となるため、接合部にのみシリコン酸化膜25を形成している。また、膜厚については、個別電極5は100nm、第1の絶縁膜(アルミナ誘電体層)7は60nm、第2の絶縁膜8のアルミナ誘電体層8bは20nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
以上のように、本実施形態によれば、個別電極5側及び振動板6側ともに、酸化シリコンよりも比誘電率の高い同種の誘電体層により第1及び第2の絶縁膜7、8が形成されているため、絶縁耐圧を低下させることなく、第1の絶縁膜8を実施形態1及び2よりも薄膜に形成することが可能となる。
次に、このインクジェットヘッド10の製造方法について図12から図14を参照して概要を説明する。図12はインクジェットヘッド10の製造工程の概略の流れを示すフローチャート、図13は電極基板3の製造工程の概要を示す断面図、図14はインクジェットヘッド10の製造工程の概要を示す断面図である。
図12において、ステップS1からS4は電極基板3の製造工程を示すものであり、ステップS5はキャビティ基板2の元になるシリコン基板の製造工程を示すものである。
ここでは、一例として実施形態3に示したインクジェットヘッド10の製造方法について説明する。
電極基板3は以下のようにして製造される。
まず、硼珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板300に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングすることにより所望の深さの凹部32を形成する。なお、この凹部32は個別電極31の形状より少し大きめの溝状のものであり、個別電極5ごとに複数形成される。
そして、凹部32の内部に、例えばスパッタによりITO(Indium Tin Oxide)からなる個別電極5を形成する。
その後、ブラスト加工等によってインク供給孔34となる孔部34aを形成する(図12のS1、図13(a))。
次に、第1の絶縁膜7として、例えばアルミナからなる誘電体層をECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタにより例えば80nmの厚さでガラス基板300の表面全体に形成する(図12のS2)。次に、このアルミナ誘電体層にフォトリソグラフィーによりレジストを形成しパターニングする(図12のS3)。そして、アルミナ誘電体層をドライエッチングして、各個別電極5上にアルミナ誘電体層を形成する。その後上記レジストを剥離する(図12のS4)。
あるいは、図13(b)に示すように、シリコンマスク301を使用して、ECRスパッタにより上記アルミナ誘電体層7aを80nmの厚さで各個別電極5上に形成する。その後、シリコンマスク301を除去する(図13(c))。
以上により、電極基板3が作製される。
キャビティ基板2は上記により作製された電極基板3にシリコン基板200を陽極接合してから作製される。
まず、例えば厚さが280μmのシリコン基板200の片面全面に、ECRスパッタにより例えばアルミナからなる誘電体層8bを厚さ30nmで形成する(図12のS5、図14(a))。なお、シリコン基板200は片面にボロンを所要の厚さで拡散したボロン拡散層(図示せず)を有するものが望ましく、その場合、ボロン拡散層の表面に第2の絶縁膜としてアルミナ誘電体層8bを形成する。
次に、シリコンマスク201を介して、振動板6に対応する部分以外の接合部のみにTEOS−CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン酸化膜25を例えば厚さ30nmで形成する(図14(b))。そして、シリコンマスク201を除去する(図14(c))。その後、このシリコン基板200を上記電極基板3上にアライメントして陽極接合する(図12のS6、図14(d))。
次に、この接合済みシリコン基板200の表面全面を研磨加工して、厚さを例えば50μm程度に薄くし(図12のS7、図14(e))、さらにこのシリコン基板200の表面全面をウエットエッチングによりライトエッチングして加工痕を除去する(図12のS8)。
次に、薄板に加工された接合済みシリコン基板200の表面にフォトリソグラフィーによってレジストパターニングを行い(図12のS9)、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってインク流路溝を形成する(図12のS10)。これによって、吐出室21となる凹部22、リザーバ23となる凹部24および電極取り出し部34となる凹部27が形成される(図14(f))。その際、ボロン拡散層の表面でエッチングストップがかかるので、振動板6の厚さを高精度に形成することができるとともに、表面荒れを防ぐことができる。
次に、マイクロブラスト加工等により、凹部27の底部を除去して電極取り出し部34を開口した後、静電アクチュエータの内部に付着している水分を除去する(図12のS11)。水分除去はこのシリコン基板を例えば真空チャンバ内に入れ、窒素雰囲気にして行う。そして、所要時間経過後、窒素雰囲気下でギャップ開放端部にエポキシ樹脂等の封止材35を塗布して気密に封止する(図12のS12、図14(g))。このように静電アクチュエータ内部(ギャップ内)の付着水分を除去した後、気密封止することによって、静電アクチュエータの駆動耐久性を向上させることができる。
また、マイクロブラスト加工等により凹部24の底部を貫通させてインク供給孔33を形成する。さらに、インク流路溝の腐食を防止するため、このシリコン基板の表面にプラズマCVDによりTEOS膜からなるインク保護膜(図示せず)を形成する。また、シリコン基板上に金属からなる共通電極26を形成する。
以上の工程を経て電極基板3に接合されたシリコン基板200からキャビティ基板2が作製される。
その後、このキャビティ基板2の表面上に、予めノズル孔11等が形成されたノズル基板1を接着により接合する(図12のS13、図14(h))。そして最後に、ダイシングにより個々のヘッドチップに切断すれば、上述したインクジェットヘッド10の本体部が完成する(図12のS14)。
本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法によれば、キャビティ基板2と電極基板3との接合部はシリコン酸化膜25を介して陽極接合されているため、接合強度を高い信頼性で保持することができるとともに、第1及び第2の絶縁膜7、8がいわゆるHigh−K材により形成されているため、シリコン酸化膜と同じ厚みの絶縁膜を形成した場合、シリコン酸化膜に対し絶縁耐圧が高くなり、更にシリコン酸化膜に対しアクチュエータ駆動力も大きくすることができる。したがって吐出能力を損ねることなく、静電アクチュエータの駆動耐久性を向上させることができる。
また、キャビティ基板2を、予め作製された電極基板3に接合した状態のシリコン基板200から作製するものであるので、その電極基板3によりキャビティ基板2を支持した状態となるため、キャビティ基板2を薄板化しても、割れたり欠けたりすることがなく、ハンドリングが容易となる。したがって、キャビティ基板2を単独で製造する場合よりも歩留まりが向上する。
上記の実施形態では、静電アクチュエータおよびインクジェットヘッド、ならびにこれらの製造方法について述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の思想の範囲内で種々変更することができる。例えば、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、インクジェットプリンタのほか、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
例えば、図15は本発明のインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの概要を示すものである。
このインクジェットプリンタ500は、記録紙501を副走査方向Yに向けて搬送するプラテン502と、このプラテン502にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を主走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ503と、インクジェットヘッド10の各インクノズルにインクを供給するインクタンク504とを有している。
本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図。 図2のA部の拡大断面。 図2のa−a拡大断面図。 図2のインクジェットヘッドの上面図。 本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの概略断面図。 図6のB部の拡大断面図。 図6のb−b拡大断面図。 本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッドの概略断面図。 図9のC部の拡大断面図。 図9のc−c拡大断面図。 インクジェットヘッドの製造工程の概略の流れを示すフローチャート。 電極基板の製造工程の概要を示す断面図。 インクジェットヘッドの製造工程の概要を示す断面図。 インクジェットプリンタの概略斜視図。
符号の説明
1 ノズル基板、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 静電アクチュエータ部、5 個別電極(固定電極)、6 振動板(可動電極)、7 第1の絶縁膜、7a アルミナ誘電体層、8 第2の絶縁膜、8a シリコン酸化膜、8b アルミナ誘電体層、9 駆動制御回路(駆動手段)、10 インクジェットヘッド、11 ノズル孔、12 オリフィス、21 吐出室、23 リザーバ、25 シリコン酸化膜、26 共通電極、32 凹部、33 インク供給孔、34 電極取り出し部、35 封止材、200 シリコン基板、300 ガラス基板、500 インクジェットプリンタ。

Claims (4)

  1. ガラス基板に設けられた固定電極と、
    シリコン基板に形成され、前記固定電極と所定の大きさのギャップを介して対向して配置された可動電極と、
    前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段と、
    前記固定電極の前記可動電極と対向する面に設けられた第1の絶縁膜と、
    前記可動電極の前記固定電極と対向する面に設けられた第2の絶縁膜とを有し、
    前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の一方または両方は、シリコン酸化膜と、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電体膜とを含む積層構造であり、かつ、前記ガラス基板と前記シリコン基板とを陽極接合する該シリコン基板の接合部にのみ前記積層構造の絶縁膜のうち前記シリコン酸化膜が形成されていることを特徴とする静電アクチュエータ。
  2. 前記誘電体膜は、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta25)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から少なくとも一つが選ばれることを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
  3. 前記誘電体膜は、前記シリコン酸化膜よりも厚さが厚いことを特徴とする請求項1または2記載の静電アクチュエータ。
  4. 液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される振動板となる可動電極に所定のギャップを介して対向配置される個別電極となる固定電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    請求項1乃至のいずれかに記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
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