JP2007260929A - 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】静電駆動方式の液滴吐出ヘッドにおいて、高密度化に伴う高速駆動に対応できるように応答性の速い液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴を吐出するノズル孔41に連通する吐出室21と、この吐出室21の底部で形成される振動板22と、この振動板22に一定のギャップを介して対向配置された個別電極11と、前記振動板22と前記個別電極11の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドにおいて、前記個別電極11の配線部11bを前記振動板22と対向する部分のアクチュエータ電極部11aよりも厚くする。
【選択図】図3

Description

本発明は、静電駆動方式のインクジェットヘッド等に用いられる液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びにその液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、駆動部により吐出室に圧力を加えることによりインク滴を選択されたノズル孔より吐出するように構成されている。駆動手段としては、静電気力を利用する方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用する方式等がある。
ところで、静電駆動方式のインクジェットヘッドにおいては、一般に、吐出室の底部を振動板とし、この振動板に所定のギャップ(空隙)を介して対向する個別電極をガラス基板上に形成する構成となっている。すなわち、振動板と個別電極の平行平板電極で構成された静電アクチュエータ部を備えている。
そして、インク滴を吐出する際には、振動板と個別電極間に駆動電圧を印加し、この時に生じる静電引力により振動板を変位させ、駆動電圧をOFFした時の振動板の復元力によって、吐出室内のインクの一部をインク滴としてノズル孔より吐出させる。
このような静電駆動方式のインクジェットヘッドにあっては、近年、高解像度化に伴い高密度化、高速度駆動の要求が一段と高まってきている。インクジェットヘッドを高速で駆動させるためにはヘッドの応答性を速くする必要がある。静電アクチュエータにおいて、ヘッドの応答性は時定数に依存する。時定数は電気抵抗値に比例する。
個別電極と配線基板との接続方法については、高密度化に対応する配線技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−96468号公報
上記特許文献1では、共通電極用の信号線の抵抗を低減する技術が開示されている。これによって高密度化に伴う高速駆動を可能にしている。しかし、個別電極は専らITO(Indium Tin Oxide)の電極材料により単一層で形成されているため、高密度化に伴う高速駆動に対応できていない。
そこで本発明は、静電駆動方式の液滴吐出ヘッドにおいて、高密度化に伴う高速駆動に対応できるように応答性の速い液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドにおいて、前記個別電極の配線部を前記振動板と対向する部分のアクチュエータ電極部よりも厚くしたものである。
本発明では、個別電極のアクチュエータ電極部(あるいはセグメント電極部とも呼ばれる。振動板に対向配置される部分の電極部を指す。)は従来通り電極材料の単一層で形成されるが、アクチュエータ電極部以外の配線部はアクチュエータ電極部よりも厚くすることで、個別電極の電気抵抗を減少させ、応答性を速くしている。
具体的には、前記個別電極の配線部を、電極材料を複数段積層して形成された段差構造とするものである。
これによって配線部の厚さはアクチュエータ電極部よりも厚くなり、個別電極の電気抵抗を減少させることができる。
また、前記ギャップを封止するための封止部は、前記配線部に設けるものである。ギャップは気密に封止する必要があり、これによって外部の水分や異物の侵入を防ぐことができるため液滴吐出ヘッドの信頼性を高めることが可能となる。そこで、封止部を一段高くなった配線部に設けることによって少量の封止材で確実に封止を行うことにする。また、コスト低減ができる。
また、前記封止部における間隙を、封止材の平均自由工程よりも小さくすることが好ましい。
ここで、「平均自由工程」とは、気体中の原子・分子などの粒子が他の粒子と衝突するまでの平均距離である。特に、封止材として酸化膜やTEOS等の無機封止材を使用する場合は、封止部における間隙を封止材の平均自由工程よりも小さくすることにより、封止材を構成する原子・分子などの粒子の自由な運動が制限されるため、封止材がギャップ内に入り込むのを抑制することができる。また、高価な無機封止材が少量ですむのでコスト低減が可能になる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドにおいて、前記ギャップの間隔距離を変えずに、前記個別電極の全体を厚く形成するものである。
この構成によっても、同様に個別電極の電気抵抗を減少させることができ、応答性を速くすることができる。
また、この液滴吐出ヘッドでも、前記個別電極の配線部を、電極材料を複数段積層して形成された段差構造とすることができる。個別電極の更なる電気抵抗の減少が可能となり、応答性をさらに速くすることが可能である。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドの製造方法において、ガラス基板に所望の深さの凹部をエッチングにより形成し、その凹部内に電極材料の第1層を形成する工程と、前記個別電極の配線部に対応する部分にマスクを使用して前記電極材料を複数段積層する工程とを有するものである。
この製造方法によって、配線部のみを厚くした個別電極をもつ電極基板をつくることができ、この電極基板を利用して応答性の速い液滴吐出ヘッドを製造することができる。
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記のいずれかの液滴吐出ヘッドを備えたものである。
これにより、高密度化に対応した応答性の速い液滴吐出装置を提供することができる。
以下、本発明を適用した液滴吐出ヘッドの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッドについて図1から図4を参照して説明する。なお、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたノズル孔から液滴を吐出するエッジ吐出型の液滴吐出ヘッドにも同様に適用することができるものである。また、ここでは4枚の基板を積層した4層構造のインクジェットヘッドを示すが、3枚の基板を積層した3層構造のものでも同様に本発明を適用することができる。
実施の形態1.
図1は本実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は図1の電極基板の概略構成を示す平面図で、点線で示す部分は、ノズル孔41、吐出室21、リザーバ32、供給口34等を示している。また、図3は図2のA−A矢視断面図、図4はこのインクジェットヘッドの静電アクチュエータ部(図3のB部)を示す拡大断面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
本実施形態1に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)10は、図1、図3に示すように、電極基板1、キャビティ基板2、リザーバ基板3、ノズル基板4の4つの基板を貼り合わせた4層構造で構成されている。電極基板1の上面には絶縁膜28を介してキャビティ基板2が接合され、キャビティ基板2の上面にはリザーバ基板3が接合され、さらにリザーバ基板3の上面にはノズル基板4が接合されている。
また、後述する個別電極11に駆動信号を供給するためのドライバIC5が、電極基板1とノズル基板4の間に設けられた空間部に収容されている。
以下、各基板の構成についてさらに詳しく説明する。
電極基板1は、例えば厚さ約1mmのガラス基板から作製されている。中でも、キャビティ基板2のシリコン基板と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが適している。これは、電極基板1とキャビティ基板2を陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板1とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板1とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。
電極基板1の表面には複数の凹部12がエッチングにより形成されており、各凹部12内には一般にITO(Indium Tin Oxide)からなる個別電極11が形成されている。個別電極11は、キャビティ基板2の振動板22に対向して配置されるアクチュエータ電極部11aと、リード部を含む配線部11bとを有する。そしてさらに、図4に示すように、個別電極11の配線部11bはITO膜を複数段積層して段差部をもつ構造として形成され、アクチュエータ電極部11aよりも厚くなっている。この段差構造の厚肉の配線部11bは後述する封止部24をカバーするような長さをもつように設けるのがよい。また、電極基板1にはこのインクジェットヘッド10に図示しないインクカートリッジからインクを供給するためのインク供給孔13が設けられている。
キャビティ基板2は、例えば厚さ約30μmの結晶面方位が(110)のシリコン基板から作製されている。キャビティ基板2の下面の電極基板1と接合する接合面には例えばTEOS(Tetraethylorthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)膜からなる絶縁膜28が例えば0.1μmの厚さでプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等により形成されている。この絶縁膜28は、インクジェットヘッド10の駆動時における絶縁破壊や短絡を防止するために設けられている。なお、絶縁膜28はTEOSに限ったものではなく、SiON、Al23、Ta25やHfO2などでもよい。
このキャビティ基板2には吐出室21となる凹部23が形成されている。そして、吐出室21(凹部23)の底壁が振動板22として機能するように構成されている。また、振動板22は、シリコンに高濃度のボロンを拡散することにより形成されるボロンドープ拡散層により構成することができる。ボロンドープ拡散層とすることにより、エッチングストップを十分に働かせることができるので振動板22の面荒れや厚さを精度よく調整することができる。
さらに、キャビティ基板2には、振動板22と個別電極11間のギャップGを一括して気密に封止するための封止部24を構成する細溝状の貫通穴25と、金属膜からなる共通電極26と、前記インク供給孔13に連通する連通孔27が形成されている。封止用の貫通穴25はすべての個別電極11に跨るように単一の矩形状の長穴に形成されており、短辺方向の幅は10〜300μmとなっている。封止材としては、エポキシ系樹脂等の接着剤や、TEOSもしくは酸化膜等の無機封止材が用いられる。これらの封止材を貫通穴25を通じて流し込んだり、あるいは無機封止材の場合はプラズマCVD等により成膜することにより封止部24が形成される。
個別電極11の封止部24に当たる部分は、上述のように厚肉の配線部11bによって高く形成されているため、キャビティ基板2との間隙29は振動板22と個別電極11間のギャップGの間隔距離よりも小さくなっている。したがって、少量の封止材で封止することができる。また、間隙29を無機封止材の平均自由工程よりも小さくすることにより、無機封止材がギャップG内に入り込むのを抑制することができる。ここに、「平均自由工程」とは、気体中の原子・分子などの粒子が他の粒子と衝突するまでの平均距離である。したがって、封止部24に当たる部分の隙間29が無機封止材の平均自由工程よりも小さくなっていれば、無機封止材を構成する原子・分子などの粒子の自由な運動が制限されるため、個別電極11の配線部11bにおける封止部24の位置から段差部までの長さを短くしてもギャップG内へ無機封止材が入り込むのを抑制できることになる。なお、これらの隙間は、例えば、ギャップGが100nmであり、隙間29は20〜50nmである。
リザーバ基板3は、例えば厚さ約180μmのシリコン基板から作製されている。このリザーバ基板3には、リザーバ基板3を垂直に貫通し各々の吐出室21とノズル孔41を連通させるノズル連通孔31と、インクを貯留するための共通のリザーバ32となる凹部33と、このリザーバ32から各吐出室21へインクを供給する供給口34と、さらにリザーバ32の底部を貫通しインク供給孔13に連通する連通孔35とが設けられている。
ノズル基板4は、例えば厚さ約50μmのシリコン基板から作製されている。ノズル基板4には多数のノズル孔41が所定のピッチで設けられている。各ノズル孔41は、基板面に対し垂直にかつ同軸上に小さい穴の噴射口部分41aと噴射口部分41aよりも径の大きい導入口部分41bとから構成されている。また、上記のノズル連通孔31は、ノズル孔41の導入口部分41bの径と同等もしくはそれよりも大きい径で形成されている。
リザーバ基板3を貫通するノズル連通孔31は、ノズル基板4のノズル孔41と同軸上に設けられているので、インク滴の吐出の直進性が得られ、そのため吐出特性が格段に向上するものとなる。特に、微小のインク滴を狙い通りに着弾させることができるため、色ずれ等を生じることなく階調変化を忠実に再現することができ、より鮮明で高品位の画質を実現することができる。
ドライバIC5は、キャビティ基板2およびリザーバ基板3の端部が開口された電極取り出し部14に装着されている。そして、このドライバIC5の出力端子は、各個別電極11の配線部11bに導電性接着剤等を用いて接続されている。また、キャビティ基板2上に設けられた共通電極26には図示しないフレキシブル配線基板のCOM配線が導電性接着剤等を用いて接続されている。
ここで、上記のように構成されたインクジェットヘッド10の動作について概要を説明する。
インクジェットヘッド10の制御部(図示せず)からドライバIC5に駆動信号(パルス電圧)が供給されると、個別電極11にはドライバIC5からパルス電圧が印加され、個別電極41をプラスに帯電させ、一方これに対応する振動板22はマイナスに帯電する。このとき、個別電極11と振動板22間に静電気力(クーロン力)が発生するため、この静電気力により振動板22は個別電極11側に引き寄せられて撓む。これによって吐出室21に負圧が生じリザーバ32内のインクを供給口34を通じて吸引する。次に、パルス電圧をオフにすると、上記静電気力がなくなり振動板22はその弾性力により元に戻り、その際、吐出室21の容積が急激に減少するため、そのときの圧力により、吐出室21内のインクの一部がノズル連通孔31を通過しインク滴となってノズル孔41から吐出される。
ここで、上記のように構成される静電アクチュエータの応答性について説明する。
静電アクチュエータの応答性は、時定数τによって決定される。τは(式1)であらわされる。
τ=C・R (式1)
ここに、Cはコンデンサ(すなわち個別電極11と振動板22とからなる平行電極部)の静電容量、Rは個別電極11を構成する電極材料の電気抵抗である。
電気抵抗Rは一般的に(式2)のようにあらわされる。
R=ρ・L/S (式2)
ここに、ρ:電気抵抗率、L:長さ、S:断面積
アクチュエータ電極部11aと配線部11bの抵抗をそれぞれRa、Rbとすると、ITOの電気抵抗率ρ=4.47×10-6[Ωm]であるから、従来のITO膜の単一層からなる個別電極の場合、
R=Ra+Rb
≒1.3+3.8
≒5.0[kΩ]
となる。
一方、本実施形態1のように配線部11bの厚さをアクチュエータ電極部11aよりも厚くした場合、例えば配線部11bの厚さを2倍にした場合には、
R=Ra+Rb
≒1.3+3.8/2
≒3.2[kΩ]
となる。そのため、応答性は56%アップすることになる。
したがって、本実施形態1のインクジェットヘッド10によれば、個別電極11の配線部11bがアクチュエータ電極部11aよりも厚くなっているので、電気抵抗値が下がるため応答性を速くすることできる。
また、配線部11bを厚くすることにより、間隙29がギャップGよりも小さくなるため、少量の封止材でギャップGを封止することができる。このため、特にTEOSのような高価な無機材を使用する封止の場合、コストの低減が可能となる。
また、本実施形態1のように、電極基板1、キャビティ基板2、リザーバ基板3およびノズル基板4を貼り合わせた4層構造とすることにより、内部に複数のドライバIC5を実装することができ、小型で多ノズル化された高性能のインクジェットヘッドを構成することができる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2を図5に示す。図5は本実施形態2に係るインクジェットヘッド10の概略断面図である。
本実施形態2は、振動板22と個別電極11間のギャップGの間隔距離を変えずに、個別電極11の全体の厚さを厚くしたものである。このため、電極基板1の凹部12の深さを個別電極11の厚さを増した分だけ深くしている。なお、この個別電極11はITOにより単一層で形成されているが、複数層を積層する構造でもよい。その他の構成は同一であるので、同一の構成要素には同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態2によれば、個別電極11の厚さを例えば、従来の厚の2倍とすれば、電気抵抗Rは、R=Ra+Rb≒1.3/2+3.8/3≒2.0[kΩ]となる。
したがって、このインクジェットヘッド10の応答性はさらに速くなる。
また、本実施形態2では、封止部24における間隙29はギャップGと等しく、実施形態1よりも大きくなるが、従来と同じ間隔であるので同様に封止することができ、何ら問題は生じない。また、実施形態1と同様に配線部11bを段差構造にして厚くしてもよい。
次に、前述の実施形態におけるインクジェットヘッド10の製造方法について図6から図8を参照して説明する。なお、これらの図では図1に示したインクジェットヘッド10が左右対称であるので、便宜上、右側の半分の断面を示すが、実際には左側の部分も同時に形成される。また、以下において示す基板の厚さやエッチング深さ等はあくまでも一例を示すものであり、本発明はこれらの値に制限されるものではない。
(1)電極基板の製造
まず、硼珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板100に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸水溶液でエッチングすることにより深さ200nmの凹部12を形成する(図6(a))。エッチングマスクを除去後、ガラス基板100の表面全面に電極材料としてITO膜101をスパッタにより100nmの厚さで成膜する(図6(b))。次に、フォトリソグラフィーによりITO膜101をパターニングし、個別電極11となる部分以外のITO膜101をエッチングにより除去して、第1層のITO膜101を凹部12の底面上に形成する(図6(c))。次に、配線部11bに対応する部分が開口したシリコンマスク103を使用して、配線部11bに対応する部分の全面に第2層のITO膜102を80nmの厚さで形成する(図6(d))。そして、シリコンマスク103を除去後、フォトリソグラフィーによりITO膜102をパターニングし、配線部11bを凹部12内に形成する(図6(e))。その後、マイクロブラスト加工等によりガラス基板100にインク供給孔13を穿孔する(図6(f))。
以上により、個別電極11がアクチュエータ電極部11aよりも厚い配線部11bを有する電極基板1が作製される。
(2)キャビティ基板およびインクジェットヘッドの製造
キャビティ基板2は、上記のように作製された電極基板2にシリコン基板200を接合してから製造される。その製造工程を図7により説明する。
まず、例えば厚さ約220μmに表面加工および表面の加工変質層の除去処理(前処理)がなされたシリコン基板200を用意し、このシリコン基板200の片面に例えばTEOSを原料としたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によって厚さ0.1μmのSiO2膜からなる絶縁膜28を成膜する(図7(a))。
次に、このシリコン基板200と、上記のように個別電極11が作製された電極基板1とを、絶縁膜28を介して陽極接合する(図7(b))。陽極接合は、シリコン基板200と電極基板1を360℃に加熱した後、電極基板1に負極、シリコン基板200に正極を接続して、800Vの電圧を印加して陽極接合する。
次に、陽極接合された上記シリコン基板200の表面を、例えばバックグラインダーや、ポリッシャーによって研削加工し、さらに例えば水酸化カリウム水溶液で表面を10〜20μmエッチングして加工変質層を除去し、厚さが例えば30μmになるまで薄くする(図7(c))。
次に、この薄板化されたシリコン基板200の表面に、エッチングマスクとなるTEOS酸化膜201を、例えばプラズマCVDによって厚さ約1.0μmで成膜する。そして、そのTEOS酸化膜201の表面上にレジストをコーティングし、フォトリソグラフイーによってレジストをパターニングし、TEOS酸化膜201をエッチングすることにより、吐出室21、連通孔27、封止用の貫通穴25、および電極取り出し部14に対応する部分21a、27a、25a、14aを開口する(図7(d))。そして、開口後にレジストを剥離する。
次に、この陽極接合済みの基板を水酸化カリウム水溶液でエッチングすることにより、薄板化されたシリコン基板200に、吐出室21、連通孔27、封止用の貫通穴25、および電極取り出し部14のそれぞれに対応する凹部23、27b、25b、14bを形成する(図7(e))。このとき、TEOSエッチングマスク201の厚さも薄くなる。なおこのエッチング工程では、最初は、濃度35wt%の水酸化カリウム水溶液を用いて、シリコン基板200の残りの厚さが例えば5μmになるまでエッチングを行い、ついで濃度3wt%の水酸化カリウム水溶液に切り替えてエッチングを行う。これにより、エッチングストップが十分に働くため、振動板22の面荒れを防ぎ、かつ高精度の厚さに形成することができる。エッチング後、レジストを剥離する。
シリコン基板200のエッチングが終了した後、フッ酸水溶液でエッチングすることによりシリコン基板200の上面に形成されているTEOS酸化膜201を除去する。ついで、シリコン基板200の表面に、プラズマCVDによりTEOS膜からなるインク保護膜(図示せず)を例えば厚さ0.1μmで形成する。その後、RIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングによって封止用貫通穴25、電極取り出し部14および連通孔27を開口する(図7(f))。
次に、シリコンマスクを使用して封止用貫通穴25にTEOS酸化膜をプラズマCVD等により成膜して封止部24を形成する。また、Pt(白金)等の金属電極からなる共通電極26をスパッタによりシリコン基板200の表面の端部に形成する。その後、ドライバIC5を個別電極11の配線部11bに導電性接着剤を使用して接続し、また共通電極26にはフレキシブル配線基板のCOM配線を導電性接着剤を使用して接続する(図8(g))。
そして、このように作製されたキャビティ基板2上に、別途作製済みのリザーバ基板3を接着剤により接合し(図8(h))、さらにそのリザーバ基板3上に別途作製済みのノズル基板4接着剤により接合する。そして最後に、ダイシングにより個々のヘッドに切断することにより実施形態1のインクジェットヘッド10の本体部が完成する(図8(i))。
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッドの製造方法によれば、薄肉のキャビティ基板2を電極基板1に接合したシリコン基板から作製するため、基板の大口径化が可能で、かつ基板の割れ等が減少し、取り扱い性が容易になり生産性が向上する。したがって、高密度化されたノズル列を有し、かつ応答性の速い高性能のインクジェットヘッドを製造することができる。
上記の実施形態では、4層構造のインクジェットヘッドおよびその製造方法について述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の思想の範囲内で種々変更することができる。例えば、従来の一般的な3層構造のインクジェットヘッドについても本発明を適用することができる。また、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、インクジェットプリンタのほか、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
例えば、図9は本発明のインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタ500の概要を示すものである。
このインクジェットプリンタ500は、記録紙501を副走査方向Yに向けて搬送するプラテン502と、このプラテン502にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を主走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ503と、インクジェットヘッド10の各インクノズルにインクを供給するインクタンク504とを有している。
本発明を適用することにより、高速、高解像度のプリントが可能になる。
本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 図1の電極基板の概略構成を示す平面図。 図2のA−A矢視断面。 図3のB部の拡大断面図。 本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの概略断面図。 本発明のインクジェットヘッドにおける電極基板の製造工程の断面図。 本発明のインクジェットヘッドの製造工程の断面図。 図7に続く製造工程の断面図。 インクジェットプリンタの概略構成図。
符号の説明
1 電極基板、2 キャビティ基板、3 リザーバ基板、4 ノズル基板、5 ドライバIC、10 インクジェットヘッド、11 個別電極、11a アクチュエータ電極部、11b 配線部、12 凹部、ノズル孔、13 インク供給孔、14 電極取り出し部、21 吐出室、22 振動板、23 凹部、24 封止部、25 貫通穴、26 共通電極、27 連通孔、28 絶縁膜、29 間隙、31 ノズル連通孔、32 リザーバ、33 凹部、34 供給口、35 連通孔、41 ノズル孔、41a 噴射口部分、41b 導入口部分、100 ガラス基板、101 第1層のITO膜、102 第2層のITO膜、103 シリコンマスク、200 シリコン基板。

Claims (9)

  1. 液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記個別電極の配線部が前記振動板と対向する部分のアクチュエータ電極部よりも厚くなっていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記個別電極の配線部が、電極材料を複数段積層して形成された段差構造となっていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記ギャップを封止するための封止部が、前記配線部に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記封止部における間隙が、封止材の平均自由工程よりも小さくなっていることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記封止部に無機封止材が用いられることを特徴とする請求項3または4記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記ギャップの間隔距離を変えずに、前記個別電極の全体が厚く形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 前記個別電極の配線部が、電極材料を複数段積層して形成された段差構造となっていることを特徴とする請求項6記載のことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 液滴を吐出するノズル孔に連通する吐出室と、この吐出室の底部で形成される振動板と、この振動板に一定のギャップを介して対向配置された個別電極と、前記振動板と前記個別電極の間に電圧を印加して静電気力を発生させる駆動手段とを備える液滴吐出ヘッドの製造方法において、
    ガラス基板に所望の深さの凹部をエッチングにより形成し、その凹部内に電極材料の第1層を形成する工程と、
    前記個別電極の配線部に対応する部分にマスクを使用して前記電極材料を複数段積層する工程と、
    を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. 請求項1乃至7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018199316A (ja) * 2017-05-30 2018-12-20 セイコーエプソン株式会社 液体噴射装置、及び、液体噴射装置の制御方法

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