JP2007313731A - 静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁膜の形成が基板材料に依存することなくガラス基板にも適用でき、低コストのもとで静電アクチュエータの駆動の安定性および駆動耐久性の向上を図る。
【解決手段】基板上に形成された個別電極5と、この個別電極5に所定のギャップを介して対向配置された振動板6と、前記個別電極5と前記振動板6との間に静電気力を発生させて該振動板6に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、前記個別電極5の対向面に、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜からなる絶縁膜7を設ける。
【選択図】図2
【解決手段】基板上に形成された個別電極5と、この個別電極5に所定のギャップを介して対向配置された振動板6と、前記個別電極5と前記振動板6との間に静電気力を発生させて該振動板6に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、前記個別電極5の対向面に、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜からなる絶縁膜7を設ける。
【選択図】図2
Description
本発明は、静電駆動方式のインクジェットヘッド等に用いられる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載される静電駆動方式のインクジェットヘッドが知られている。静電駆動方式のインクジェットヘッドは、一般に、ガラス基板上に形成された個別電極(固定電極)と、この個別電極に所定のギャップを介して対向配置されたシリコン製の振動板(可動電極)とから構成される静電アクチュエータ部を備えている。そして、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、上記静電アクチュエータ部に静電気力を発生させることにより吐出室に圧力を加えて、選択されたノズル孔よりインク滴を吐出するようになっている。
従来の静電アクチュエータにおいては、アクチュエータの絶縁膜の絶縁破壊や短絡を防止して駆動の安定性と駆動耐久性を確保するため、振動板や個別電極の対向面に絶縁膜が形成されている。絶縁膜には、一般にシリコンの熱酸化膜が使用されている。その理由としては製造プロセスの簡便さや、絶縁膜特性がシリコン熱酸化膜は優れているという理由からである。また、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を原料ガスとするシリコン酸化膜により絶縁膜を振動板の対向面に形成することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、振動板側の片方だけに絶縁膜を形成するのでは誘電体の絶縁膜内に残留電荷が生じてアクチュエータの駆動の安定性や駆動耐久性が低下することから、振動板側と個別電極側の両方に絶縁膜を形成する静電アクチュエータも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
上記の従来技術において、静電アクチュエータの電極の絶縁膜として、シリコン熱酸化膜を用いる場合は、適用がシリコン基板に限られるという適用上の問題がある。したがって、可動電極である振動板側にしかシリコン熱酸化膜を形成することができない。一方、特許文献1に示すようにTEOS膜を用いる場合は、CVD法という膜の製法上、膜中に多くのカーボン系不純物が混入してしまい、駆動耐久性試験の結果、膜の安定性に課題がある場合が多いということがわかった。
特許文献2では、振動板側に熱酸化膜を、個別電極側にスパッタ法によりシリコン酸化膜(ここではスパッタ膜と記す)を形成するものであるが、スパッタ膜では絶縁耐圧が低くなるため、静電アクチュエータの絶縁破壊を防止するためには、膜厚を厚くするか、振動板側に熱酸化膜のような絶縁耐圧に優れた膜を別に形成する必要があった。
また、特許文献3では、振動板および個別電極の両電極が共にシリコン基板で構成され、振動板側だけでなく、個別電極側にも熱酸化膜からなる絶縁膜を構成し、さらにシリコン基板の接合面には絶縁膜が設けられていない構成とするものである。しかし、シリコン基板はガラス基板よりも高価であり、コスト高になる問題がある。
一方、静電アクチュエータを備える静電駆動方式のインクジェットヘッドにあっては、近年、高解像度化に伴い高密度化、高速度駆動の要求が一段と高まり、それに伴い静電アクチュエータもますます微小化する傾向にある。このような要求に応えるためには、絶縁膜の形成が基板材料に依存することなくガラス基板にも適用でき、低コストのもとで静電アクチュエータの駆動の安定性および駆動耐久性の更なる向上を図ることが重要な課題となる。
本発明は、上記のような課題を解決する静電アクチュエータを提供することを目的とし、さらには高解像度化に伴う高密度化、高速駆動に対応し得る液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置を提供することを目的としている。
前記課題を解決するため、本発明に係る静電アクチュエータは、基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、前記固定電極の対向面に、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜からなる絶縁膜を設けたものである。
本発明では、静電アクチュエータの絶縁膜として、CVD法で形成可能な、SiO2膜中に存在するカーボン系不純物がTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)に比べて少ないトリメトキシシラン(Trimethoxysilane:「TMS」と略記する)を原料ガスとして用いてシリコン酸化膜を固定電極上に形成するものである。ここで、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を、他の絶縁膜と区別するために便宜上、TMS−SiO2膜と略記するものとする。
TMSの化学式はSi(OCH3)3Hであり、TEOSの化学式はSi(OC2H5)4であることから、TMSは炭素(C)の数がTEOSよりも少ないため、SiO2膜中に存在するカーボン系不純物の発生量がTMSの方が少なくなる。したがって、絶縁膜としてTMS−SiO2膜を形成することにより、残留電荷を抑制でき、かつ絶縁性能に優れた絶縁膜を構成することができる。その結果、静電アクチュエータの駆動の安定性及び駆動耐久性が向上する。
TMSの化学式はSi(OCH3)3Hであり、TEOSの化学式はSi(OC2H5)4であることから、TMSは炭素(C)の数がTEOSよりも少ないため、SiO2膜中に存在するカーボン系不純物の発生量がTMSの方が少なくなる。したがって、絶縁膜としてTMS−SiO2膜を形成することにより、残留電荷を抑制でき、かつ絶縁性能に優れた絶縁膜を構成することができる。その結果、静電アクチュエータの駆動の安定性及び駆動耐久性が向上する。
TMS−SiO2膜は可動電極側に形成してもよいものである。したがって、本発明ではTMS−SiO2膜の絶縁膜を可動電極の対向面に設けた静電アクチュエータとするものである。
TMS−SiO2膜は、上記のように優れた絶縁性能を有するので、固定電極または可動電極のいずれか一方の対向面に形成すればよい。したがって、静電アクチュエータのコスト低減が可能となる。
TMS−SiO2膜は、上記のように優れた絶縁性能を有するので、固定電極または可動電極のいずれか一方の対向面に形成すればよい。したがって、静電アクチュエータのコスト低減が可能となる。
また、TMS−SiO2膜を固定電極の対向面に設けた場合、可動電極の対向面に第2の絶縁膜を設けてもよい。この場合、第2の絶縁膜は、シリコン熱酸化膜とすることができる。これによって、さらに絶縁性能が向上するので、静電アクチュエータの駆動の安定性及び駆動耐久性をより一層向上させることができる。
また、絶縁性能を向上させるためには、TMS−SiO2膜の絶縁膜または第2の絶縁膜を多層構造としてもよい。
TMS−SiO2膜の絶縁膜または第2の絶縁膜が多層構造の場合は、表層部はTMS−SiO2膜とし、下層部を酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層、すなわちアルミナ等の、いわゆるHigh−K(高誘電率ゲート絶縁膜)材と呼ばれる誘電体層とするものである。
High−K材からなる誘電体層は、酸化シリコンよりも高い比誘電率を有するため、静電アクチュエータの絶縁性及び動作特性を向上させることができる反面、親水化が困難で、そのため陽極接合が難しく接合強度の確保が難しいため、表層部をTMS−SiO2膜として、静電アクチュエータの駆動の安定性及び駆動耐久性の向上と接合強度の確保の両立を図るものである。
High−K材からなる誘電体層は、酸化シリコンよりも高い比誘電率を有するため、静電アクチュエータの絶縁性及び動作特性を向上させることができる反面、親水化が困難で、そのため陽極接合が難しく接合強度の確保が難しいため、表層部をTMS−SiO2膜として、静電アクチュエータの駆動の安定性及び駆動耐久性の向上と接合強度の確保の両立を図るものである。
以上により、本発明の静電アクチュエータにおいては、固定電極が形成された基板は、陽極接合が可能な安価なガラス基板であることが好ましい。
本発明に係る静電アクチュエータの第1の製造方法は、基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、前記固定電極が形成された前記ガラス基板の片面全面に、CVD法によりトリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程と、シリコン基板と前記ガラス基板とを前記シリコン酸化膜を介して陽極接合する工程と、前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、を有することを特徴とする。
この第1の製造方法により、駆動の安定性及び駆動耐久性に優れた静電アクチュエータを安価に得ることができる。
本発明の静電アクチュエータの第2の製造方法は、可動電極側にTMS−SiO2膜を形成するものである。すなわち、ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、シリコン基板の片面全面に、CVD法によりトリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程と、前記シリコン基板と前記ガラス基板とを前記シリコン酸化膜を介して陽極接合する工程と、前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、を有するものである。
第2の製造方法によっても同様の効果がある。
第2の製造方法によっても同様の効果がある。
また、本発明の静電アクチュエータの第1の製造方法では、前記シリコン基板を前記ガラス基板と陽極接合する前において、該シリコン基板にシリコン熱酸化膜を形成する工程を有するものとすることができる。
さらにまた、本発明の静電アクチュエータの第1の製造方法では、シリコン基板をガラス基板と陽極接合する前において、シリコン基板の接合側表面全面に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層を形成し、更にその上にテトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成することもできる。
ここで、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を、TEOS−SiO2膜と略記するものとする。
前述のように、可動電極側の絶縁膜を多層構造とする場合は、接合強度を確保するためにシリコン基板の接合側表面全面に、High−K材の誘電体層を形成し、その上にTEOS−SiO2膜を形成する。
ここで、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を、TEOS−SiO2膜と略記するものとする。
前述のように、可動電極側の絶縁膜を多層構造とする場合は、接合強度を確保するためにシリコン基板の接合側表面全面に、High−K材の誘電体層を形成し、その上にTEOS−SiO2膜を形成する。
また、固定電極側の絶縁膜を多層構造とする場合は、シリコン基板をガラス基板と陽極接合する前において、ガラス基板上の固定電極上に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層を形成し、更にその上にTMS−SiO2膜を形成する。
さらに、前記ギャップの封止は窒素雰囲気下で行うことが望ましい。これによって、ギャップ内、つまり静電アクチュエータ内部の絶縁膜上に水分が存在することはないので、静電気力により可動電極が固定電極に吸着したままの状態となることを防止することができる。
さらに、前記ギャップの封止は窒素雰囲気下で行うことが望ましい。これによって、ギャップ内、つまり静電アクチュエータ内部の絶縁膜上に水分が存在することはないので、静電気力により可動電極が固定電極に吸着したままの状態となることを防止することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、上記のいずれかの静電アクチュエータを備えたものである。
本発明の液滴吐出ヘッドは、上述のように優れた駆動の安定性及び駆動耐久性を有する静電アクチュエータを備えているので、信頼性の高い、液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、上記のいずれかの静電アクチュエータの製造方法を有するものである。
これにより、信頼性の高い、液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドを安価に製造することができる。
これにより、信頼性の高い、液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドを安価に製造することができる。
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを備えたものであるので、高解像度、高密度、高速度のインクジェットプリンタ等を実現できる。
以下、本発明を適用した静電アクチュエータを備える液滴吐出ヘッドの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッドについて図1から図5を参照して説明する。なお、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するエッジ吐出型の液滴吐出ヘッドにも同様に適用することができるものである。
実施形態1.
図1は実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を分解して示す分解斜視図であり、一部を断面で表してある。図2は図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図、図3は図2のA部の拡大断面図、図4は図2のa−a拡大断面図、図5は図2のインクジェットヘッドの上面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
図1は実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を分解して示す分解斜視図であり、一部を断面で表してある。図2は図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図、図3は図2のA部の拡大断面図、図4は図2のa−a拡大断面図、図5は図2のインクジェットヘッドの上面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
本実施形態のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)10は、図1および図2に示すように、複数のノズル孔11が所定のピッチで設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2に設けられた振動板6に対峙して個別電極5が配設された電極基板3とを貼り合わせることにより構成されている。
インクジェットヘッド10のノズル孔11ごとに設けられる静電アクチュエータ部4は、図2から図4に示すように、固定電極として、ガラス製の電極基板3の凹部32内に形成された個別電極5と、可動電極として、シリコン製のキャビティ基板2の吐出室21の底壁で構成され、個別電極5に所定のギャップGを介して対向配置される振動板6とを備え、各々の個別電極5の対向面(表面)には、トリメトキシシラン(Trimethoxysilane:以下、「TMS」と略記する)を原料ガスとして用いたシリコン酸化膜(以下、便宜上「TMS−SiO2膜」と略記する)7が形成されている。TMS−SiO2膜7はいうまでもなく絶縁膜である。
また、シリコン製のキャビティ基板2とガラス製の電極基板3とは、TMS−SiO2膜7を介して、あるいは図示は省略するがTMS−SiO2膜7を介さず直接に、陽極接合されている。そして、電極基板3に形成された個別電極5の端子部5aと、キャビティ基板2の接合面と反対の上面に形成された共通電極26とに、駆動手段として、ドライバICなどの駆動制御回路9が図2、図3、図5に示すように配線接続される。
以上により、インクジェットヘッド10の静電アクチュエータ部4が構成される。
以上により、インクジェットヘッド10の静電アクチュエータ部4が構成される。
以下、各基板の構成についてさらに詳細に説明する。
ノズル基板1は、例えばシリコン基板から作製されている。インク滴を吐出するためのノズル孔11は、例えば径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち径の小さい噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから構成されている。噴射口部分11aおよび導入口部分11bは基板面に対して垂直にかつ同軸上に設けられており、噴射口部分11aは先端がノズル基板1の表面に開口し、導入口部分11bはノズル基板1の裏面(キャビティ基板2と接合される接合側の面)に開口している。
また、ノズル基板1には、キャビティ基板2の吐出室21とリザーバ23とを連通するオリフィス12とリザーバ23部の圧力変動を補償するためのダイヤフラム部13が形成されている。
ノズル基板1は、例えばシリコン基板から作製されている。インク滴を吐出するためのノズル孔11は、例えば径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち径の小さい噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから構成されている。噴射口部分11aおよび導入口部分11bは基板面に対して垂直にかつ同軸上に設けられており、噴射口部分11aは先端がノズル基板1の表面に開口し、導入口部分11bはノズル基板1の裏面(キャビティ基板2と接合される接合側の面)に開口している。
また、ノズル基板1には、キャビティ基板2の吐出室21とリザーバ23とを連通するオリフィス12とリザーバ23部の圧力変動を補償するためのダイヤフラム部13が形成されている。
ノズル孔11を噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから2段に構成することにより、インク滴の吐出方向をノズル孔11の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、インク滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、またインク滴の飛び散りがなく、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。また、ノズル密度を高密度化することが可能である。
キャビティ基板2は、例えば面方位が(110)のシリコン基板から作製されている。キャビティ基板2には、インク流路に設けられる吐出室21となる凹部22、およびリザーバ23となる凹部24がエッチングにより形成されている。凹部22は前記ノズル孔11に対応する位置に独立に複数形成される。したがって、図2に示すようにノズル基板1とキャビティ基板2を接合した際、各凹部22は吐出室21を構成し、それぞれノズル孔11に連通しており、またインク供給口である前記オリフィス12ともそれぞれ連通している。そして、吐出室21(凹部22)の底部が上記振動板6となっている。また、この振動板6は、シリコン基板の表面からボロン(B)を拡散させてボロン拡散層を形成し、ウェットエッチングによりエッチングストップしてそのボロン拡散層の厚さで薄く仕上げられている。
凹部24は、インク等の液状材料を貯留するためのものであり、各吐出室21に共通のリザーバ(共通インク室)23を構成する。そして、リザーバ23(凹部24)はそれぞれオリフィス12を介して全ての吐出室21に連通している。また、リザーバ23の底部には後述する電極基板3を貫通する孔が設けられ、この孔のインク供給孔33を通じて図示しないインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
電極基板3は、例えばガラス基板から作製される。中でも、キャビティ基板2のシリコン基板と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが適している。これは、電極基板3とキャビティ基板2を陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。
電極基板3には、キャビティ基板2の各振動板6に対向する表面位置にそれぞれ凹部32が設けられている。凹部32は、エッチングにより所要の深さで形成されている。そして、各凹部32内には、一般に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5が、例えば100nmの厚さでスパッタにより形成される。したがって、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップ(空隙)Gは、この凹部32の深さ、個別電極5の厚さおよび個別電極5の表面に形成される前記のTMS−SiO2膜7の厚さにより決まることになる。このギャップGはインクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響するので、凹部32の深さ、個別電極5の厚さ、TMS−SiO2膜7の厚さを高精度に加工する必要がある。
本実施形態では、TMS−SiO2膜7の厚さを150nmとし、ギャップGの距離を200nmとしている。また、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5の厚さは100nmとしている。したがって、凹部32は450nmの深さでエッチングされることになる。
本実施形態では、TMS−SiO2膜7の厚さを150nmとし、ギャップGの距離を200nmとしている。また、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5の厚さは100nmとしている。したがって、凹部32は450nmの深さでエッチングされることになる。
個別電極5は、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部5aを有する。端子部5aは、図2、図5に示すように、配線のためにキャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部34内に露出している。
また、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップGの開放端部はエポキシ等の樹脂による封止材35で封止される。これにより、湿気や塵埃等が電極間ギャップへ侵入するのを防止することができ、インクジェットヘッド10の信頼性を高く保持することができる。
また、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップGの開放端部はエポキシ等の樹脂による封止材35で封止される。これにより、湿気や塵埃等が電極間ギャップへ侵入するのを防止することができ、インクジェットヘッド10の信頼性を高く保持することができる。
上述したように、ノズル基板1、キャビティ基板2、および電極基板3は、図2に示すように貼り合わせることによりインクジェットヘッド10の本体部が作製される。すなわち、キャビティ基板2と電極基板3はTMS−SiO2膜7を介して陽極接合により接合され、そのキャビティ基板2の上面(図2において上面)にノズル基板1が接着等により接合される。
そして最後に、図2、図5に簡略化して示すように、ドライバIC等の駆動制御回路9が各個別電極5の端子部5aとキャビティ基板2上面の共通電極26とに上記フレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続される。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
次に、以上のように構成されるインクジェットヘッド10の動作を説明する。
駆動制御回路9により個別電極5とキャビティ基板2の共通電極26の間にパルス電圧を印加すると、振動板6は個別電極5側に引き寄せられて吸着し、吐出室21内に負圧を発生させて、リザーバ23内のインクを吸引し、インクの振動(メニスカス振動)を発生させる。このインクの振動が略最大となって時点で、電圧を解除すると、振動板6は離脱して、インクをノズル11から押出し、インク液滴を吐出する。
駆動制御回路9により個別電極5とキャビティ基板2の共通電極26の間にパルス電圧を印加すると、振動板6は個別電極5側に引き寄せられて吸着し、吐出室21内に負圧を発生させて、リザーバ23内のインクを吸引し、インクの振動(メニスカス振動)を発生させる。このインクの振動が略最大となって時点で、電圧を解除すると、振動板6は離脱して、インクをノズル11から押出し、インク液滴を吐出する。
その際、振動板6はTMS−SiO2膜7を介して個別電極5に吸着する。本実施形態ではCVD法で形成可能なシリコン酸化膜として、不純物が少ない膜を形成できる、TMSを原料として用いたシリコン酸化膜、すなわちTMS−SiO2膜7をITOからなる個別電極5上に形成する構成であるので、振動板6側に絶縁膜を形成しなくても、電荷の蓄積を抑制でき絶縁耐圧が向上する。そのため、振動板6が個別電極5に吸着したときの放電による静電アクチュエータ部4の絶縁破壊を防止できるとともに、常に一定の振動板変位量を長期間安定して保持することができる。
したがって、このインクジェットヘッド10は、上記のように構成された静電アクチュエータ部4を備えているので、静電アクチュエータ部4を微小化しても駆動耐久性および駆動の安定性に優れ、高速駆動および高密度化が可能となる。
したがって、このインクジェットヘッド10は、上記のように構成された静電アクチュエータ部4を備えているので、静電アクチュエータ部4を微小化しても駆動耐久性および駆動の安定性に優れ、高速駆動および高密度化が可能となる。
ここで、参考のために主なSiO2膜の特性等についての比較を表1に示す。表1において、「スパッタ膜」とは、スパッタ法により形成されるSiO2膜(絶縁膜)を指し、「TEOS−SiO2膜」とは、上記のようにTEOSを原料ガスとしてCVD法により形成されるSiO2膜(絶縁膜)を指す。なお、CVD法はプラズマCVD法が適しているが、熱CVD法その他のCVD法を使用してもよい。
熱酸化膜は、先に述べたように絶縁耐圧等の膜特性は優れているが、ガラス基板に適用できないことが問題である。スパッタ膜は、基板材料に関係なく比較的に低温で成膜できるものの、他の3つのSiO2膜に比べて膜特性が劣る。一方、TEOS−SiO2膜とTMS−SiO2膜は、ほぼ同様の膜特性、基板適用性、成膜条件を有する。ただし、両シリコン酸化膜共に副生成物が生じる。この副生成物が不純物として膜中に存在することにより残留電荷の発生原因となる。この副生成物の発生量は、以下に示す化学構造式および反応式から明らかなように炭素(C)の数に依存している。
TMSとTEOSの化学構造式を以下に示す。
反応式は次のとおりである。プラズマCVD法におけるアシストガスとして亜酸化窒素(N2O)または酸素(O2)ガスを用いる。
(TMSの場合)
Si(OCH3)3H+10N2O→SiO2+3CO2+5H2O+10N2 (式1)
Si(OCH3)3H+5O2→SiO2+3CO2+5H2O (式2)
(TEOSの場合)
Si(OC2H4)4+24N2O→SiO2+8CO2+10H2O+24N2 (式3)
Si(OC2H4)4+10O2→SiO2+8CO2+10H2O (式4)
(TMSの場合)
Si(OCH3)3H+10N2O→SiO2+3CO2+5H2O+10N2 (式1)
Si(OCH3)3H+5O2→SiO2+3CO2+5H2O (式2)
(TEOSの場合)
Si(OC2H4)4+24N2O→SiO2+8CO2+10H2O+24N2 (式3)
Si(OC2H4)4+10O2→SiO2+8CO2+10H2O (式4)
また、駆動耐久性の実験によると、インク重量が10%低下するまでのショット数は、TEOSの場合2億ショットであるのに対して、TMSの場合8億ショットと大幅に向上する。
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図7は図6のB部の拡大断面図、図8は図6のb−b拡大断面図である。
本実施形態における静電アクチュエータ部4は、実施形態1の場合とは反対に、振動板6側の対向面、すなわちキャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面に前記のTMS−SiO2膜7を形成する構成である。電極基板3上の個別電極5側にはTMS−SiO2膜を形成しなくてもよい。
このように、TEOS−SiO2膜7は振動板6または個別電極5のいずれか一方の対向面に形成されていればよい。ただし、TMS−SiO2膜7はシリコン熱酸化膜に比べて膜特性が若干劣るので、膜厚は若干厚く150nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態でも実施形態1と同様の効果がある。
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図7は図6のB部の拡大断面図、図8は図6のb−b拡大断面図である。
本実施形態における静電アクチュエータ部4は、実施形態1の場合とは反対に、振動板6側の対向面、すなわちキャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面に前記のTMS−SiO2膜7を形成する構成である。電極基板3上の個別電極5側にはTMS−SiO2膜を形成しなくてもよい。
このように、TEOS−SiO2膜7は振動板6または個別電極5のいずれか一方の対向面に形成されていればよい。ただし、TMS−SiO2膜7はシリコン熱酸化膜に比べて膜特性が若干劣るので、膜厚は若干厚く150nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態でも実施形態1と同様の効果がある。
実施形態3.
図9は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図10は図9のC部の拡大断面図、図11は図9のc−c拡大断面図である。
図9は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図10は図9のC部の拡大断面図、図11は図9のc−c拡大断面図である。
本実施形態における静電アクチュエータ部4は、キャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面にシリコン熱酸化膜(熱酸化SiO2)からなる絶縁膜(第2の絶縁膜)8を形成し、個別電極5側の対向面には実施形態1と同様にTMS−SiO2膜7を形成する構成である。すなわち、絶縁膜の構成を、振動板6側はシリコン熱酸化膜とし、個別電極5側はTMS−SiO2膜とする組み合わせである。膜厚については、TMS−SiO2膜7を30nm、シリコン熱酸化膜の絶縁膜8を80nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態でも実施形態1と同様の効果がある。また、振動板6側に膜の特性が優れたシリコン熱酸化膜が設けられているので、TMS−SiO2膜7を薄くしてもよいというメリットがある。なお、図示は省略するが、電極基板3の接合面にはTMS−SiO2膜7を設けない構成としてもよい。すなわち、シリコン熱酸化膜を介してキャビティ基板2と電極基板3を陽極接合してもよい。
実施形態4.
図12は本発明の実施形態4に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図13は図12のC部の拡大断面図である。
本実施形態では、絶縁膜の構成を、多層構造の絶縁膜とTMS−SiO2膜の組み合わせとする構成である。多層構造の絶縁膜としては、例えば、アルミナに代表される、いわゆるHigh−K材と呼ばれる酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電材料をシリコン基板側の絶縁膜として用いる場合である。しかしこの場合、アルミナ等のHigh−K材は、シリコン酸化膜と異なり、絶縁膜表面の親水化が困難であり、陽極接合の接合強度が低下するなどの問題がある。
そこで、本実施形態における静電アクチュエータ部4は、キャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面にHigh−K材からなる絶縁膜としてアルミナ誘電体層8bを形成し、更にその上に親水化が容易で陽極接合が容易なTEOS−SiO2膜8aを形成する構成である。すなわち、絶縁膜8の多層構造を下層部はHigh−K材の高誘電体層とし、表層部はシリコン酸化膜を設ける構成とするものである。個別電極5側の対向面には実施形態1と同様にTMS−SiO2膜7が形成されている。膜厚については、アルミナ誘電体層8bを60nm、TEOS−SiO2膜8aを30nm、TMS−SiO2膜7を30nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
図12は本発明の実施形態4に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図13は図12のC部の拡大断面図である。
本実施形態では、絶縁膜の構成を、多層構造の絶縁膜とTMS−SiO2膜の組み合わせとする構成である。多層構造の絶縁膜としては、例えば、アルミナに代表される、いわゆるHigh−K材と呼ばれる酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電材料をシリコン基板側の絶縁膜として用いる場合である。しかしこの場合、アルミナ等のHigh−K材は、シリコン酸化膜と異なり、絶縁膜表面の親水化が困難であり、陽極接合の接合強度が低下するなどの問題がある。
そこで、本実施形態における静電アクチュエータ部4は、キャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面にHigh−K材からなる絶縁膜としてアルミナ誘電体層8bを形成し、更にその上に親水化が容易で陽極接合が容易なTEOS−SiO2膜8aを形成する構成である。すなわち、絶縁膜8の多層構造を下層部はHigh−K材の高誘電体層とし、表層部はシリコン酸化膜を設ける構成とするものである。個別電極5側の対向面には実施形態1と同様にTMS−SiO2膜7が形成されている。膜厚については、アルミナ誘電体層8bを60nm、TEOS−SiO2膜8aを30nm、TMS−SiO2膜7を30nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。
High−K材としては、上記のアルミナ(Al2O3)のほかに、例えば酸窒化シリコン(SiON)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O3)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)、窒化アルミ(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、ジルコニウムシリケート(ZrSiO)、ハフニウムシリケート(HfSiO)、ジルコニウムアルミネート(ZrAlO)、窒素添加ハフニウムアルミネート(HfAlON)等を挙げることができ、その中でも膜の低温成膜性、膜の均質性、プロセス適応性等を考慮した場合、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta2O3)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を使用することが望ましい。
このように、本実施形態では、振動板6側の絶縁膜8がアルミナに代表されるHigh−K材とシリコン酸化膜の多層構造となっているので、静電アクチュエータの駆動特性の向上、駆動耐久性の向上、およびキャビティ基板2と電極基板3の接合強度の確保が可能となる。したがって、高速駆動、小型高密度化に十分に対応し得るインクジェットヘッドを得ることができる。
なお、個別電極5側についても絶縁膜を多層構造にすることができる。この場合は、個別電極5上にアルミナに代表されるHigh−K材の高誘電体層を形成し、その上にTMS−SiO2膜を形成する。また、上述の絶縁膜の多層構造は、振動板6または個別電極5のいずれか一方の対向面に設ければ十分である。
次に、このインクジェットヘッド10の製造方法について図14から図16を参照して概要を説明する。図14はインクジェットヘッド10の製造工程の概略の流れを示すフローチャート、図15は電極基板3の製造工程の概要を示す断面図、図16はインクジェットヘッド10の製造工程の概要を示す断面図である。
図14において、ステップS1とS2は電極基板3の製造工程を示すものであり、ステップS3はキャビティ基板2の元になるシリコン基板の製造工程を示すものである。
ここでは、主に実施形態1に示したインクジェットヘッド10の製造方法について説明するが、必要に応じて他の実施形態2〜4についても言及する。
ここでは、主に実施形態1に示したインクジェットヘッド10の製造方法について説明するが、必要に応じて他の実施形態2〜4についても言及する。
電極基板3は以下のようにして製造される。
まず、硼珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板300に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングすることにより所望の深さの凹部32を形成する。なお、この凹部32は個別電極31の形状より少し大きめの溝状のものであり、個別電極5ごとに複数形成される。
そして、例えば、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を100nmの厚さで形成し、このITO膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして個別電極5となる部分以外をエッチング除去して、凹部32の内部に個別電極5を形成する(図14のS1、図15(a))。
まず、硼珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板300に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングすることにより所望の深さの凹部32を形成する。なお、この凹部32は個別電極31の形状より少し大きめの溝状のものであり、個別電極5ごとに複数形成される。
そして、例えば、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を100nmの厚さで形成し、このITO膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして個別電極5となる部分以外をエッチング除去して、凹部32の内部に個別電極5を形成する(図14のS1、図15(a))。
次に、個別電極5の絶縁膜として、TMSを原料ガスとして用いたTMS−SiO2膜7をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により例えば150nmの厚さでガラス基板300の表面全体に形成する(図14のS2、図15(b))。TMS−SiO2膜7の成膜条件は、TMS:30sccm、N2O:500sccm、RF:300W、温度:300℃、圧力80Paとした。TMS−SiO2膜7は個別電極5が形成された凹部32内だけでなくガラス基板300表面のシリコン基板との接合面にも形成される。
その後、ブラスト加工等によってインク供給孔33となる孔部33aを形成する。
以上により、電極基板3が作製される。
その後、ブラスト加工等によってインク供給孔33となる孔部33aを形成する。
以上により、電極基板3が作製される。
キャビティ基板2は上記により作製された電極基板3にシリコン基板200を陽極接合してから作製される。
まず、例えば厚さが280μmのシリコン基板200の片面全面に、例えば厚さが0.8μmのボロン拡散層201を形成したシリコン基板200を作製する(図14のS3、図15(a))。
なお、実施形態2の場合は、シリコン基板200の電極基板3と接合する側の表面全面に上記TMS−SiO2膜7を形成する。
実施形態3の場合は、シリコン基板200を熱酸化して基板全体に所望の厚さの熱酸化膜を形成する。
実施形態4の場合は、シリコン基板200の電極基板3と接合する側の表面全面に、アルミナ誘電体層8bをスパッタ法により所望の厚さで形成後、その上にTEOS−SiO2膜8aをプラズマCVD法により所望の厚さで形成する。
次に、以上により作製されたシリコン基板200を上記電極基板3上にアライメントして陽極接合する(図14のS4、図15(b))。
なお、実施形態2の場合は、シリコン基板200の電極基板3と接合する側の表面全面に上記TMS−SiO2膜7を形成する。
実施形態3の場合は、シリコン基板200を熱酸化して基板全体に所望の厚さの熱酸化膜を形成する。
実施形態4の場合は、シリコン基板200の電極基板3と接合する側の表面全面に、アルミナ誘電体層8bをスパッタ法により所望の厚さで形成後、その上にTEOS−SiO2膜8aをプラズマCVD法により所望の厚さで形成する。
次に、以上により作製されたシリコン基板200を上記電極基板3上にアライメントして陽極接合する(図14のS4、図15(b))。
次に、この接合済みシリコン基板200の表面全面を研磨加工して、厚さを例えば50μm程度に薄くし(図14のS5、図15(c))、さらにこのシリコン基板200の表面全面をウエットエッチングによりライトエッチングして加工痕を除去する(図14のS6)。
次に、薄板に加工された接合済みシリコン基板200の表面にフォトリソグラフィーによってレジストパターニングを行い(図14のS7)、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってインク流路溝を形成する(図14のS8)。これによって、吐出室21となる凹部22、リザーバ23となる凹部24および電極取り出し部34となる凹部27が形成される(図15(d))。その際、ボロン拡散層201の表面でエッチングストップがかかるので、振動板6の厚さを高精度に形成することができるとともに、表面荒れを防ぐことができる。
次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングにより、凹部27の底部を除去して電極取り出し部34を開口し、さらに個別電極5の端子部5a上のTMS−SiO2膜7をICPドライエッチングにより除去して端子部5aを露出させた後(図15(e))、静電アクチュエータの内部に付着している水分を除去する(図14のS9)。水分除去はこのシリコン基板を例えば真空チャンバ内に入れ、窒素雰囲気にして行う。そして、所要時間経過後、窒素雰囲気下でギャップ開放端部にエポキシ樹脂等の封止材35を塗布して気密に封止する(図14のS10、図15(f))。このように静電アクチュエータ内部(ギャップ内)の付着水分を除去した後、気密封止することによって、静電アクチュエータの駆動耐久性を向上させることができる。
また、マイクロブラスト加工等により凹部24の底部を貫通させてインク供給孔33を形成する。さらに、インク流路溝の腐食を防止するため、このシリコン基板の表面にプラズマCVDによりTEOS膜からなるインク保護膜(図示せず)を形成する。また、シリコン基板上に金属からなる共通電極26を形成する。
また、マイクロブラスト加工等により凹部24の底部を貫通させてインク供給孔33を形成する。さらに、インク流路溝の腐食を防止するため、このシリコン基板の表面にプラズマCVDによりTEOS膜からなるインク保護膜(図示せず)を形成する。また、シリコン基板上に金属からなる共通電極26を形成する。
以上の工程を経て電極基板3に接合されたシリコン基板200からキャビティ基板2が作製される。
その後、このキャビティ基板2の表面上に、予めノズル孔11等が形成されたノズル基板1を接着により接合する(図14のS11、図15(g))。そして最後に、ダイシングにより個々のヘッドチップに切断すれば、上述したインクジェットヘッド10の本体部が完成する(図14のS12)。
その後、このキャビティ基板2の表面上に、予めノズル孔11等が形成されたノズル基板1を接着により接合する(図14のS11、図15(g))。そして最後に、ダイシングにより個々のヘッドチップに切断すれば、上述したインクジェットヘッド10の本体部が完成する(図14のS12)。
本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法によれば、キャビティ基板2と電極基板3との接合部はシリコン酸化膜であるTMS−SiO2膜7を介して陽極接合されているため、接合強度を高い信頼性で保持することができるとともに、静電アクチュエータ部4は振動板6に対向する個別電極5上にTMS−SiO2膜7が形成されているため、駆動耐久性および吐出性能に優れたインクジェットヘッドを安価に製造することができる。
また、キャビティ基板2を、予め作製された電極基板3に接合した状態のシリコン基板200から作製するものであるので、その電極基板3によりキャビティ基板2を支持した状態となるため、キャビティ基板2を薄板化しても、割れたり欠けたりすることがなく、ハンドリングが容易となる。したがって、キャビティ基板2を単独で製造する場合よりも歩留まりが向上する。
また、キャビティ基板2を、予め作製された電極基板3に接合した状態のシリコン基板200から作製するものであるので、その電極基板3によりキャビティ基板2を支持した状態となるため、キャビティ基板2を薄板化しても、割れたり欠けたりすることがなく、ハンドリングが容易となる。したがって、キャビティ基板2を単独で製造する場合よりも歩留まりが向上する。
上記の実施形態では、静電アクチュエータおよびインクジェットヘッド、ならびにこれらの製造方法について述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の思想の範囲内で種々変更することができる。例えば、本発明の静電アクチュエータは、光スイッチやミラーデバイス、マイクロポンプ、レーザプリンタのレーザ操作ミラーの駆動部などにも利用することができる。また、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、インクジェットプリンタのほか、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
例えば、図17は本発明のインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの概要を示すものである。
このインクジェットプリンタ500は、記録紙501を副走査方向Yに向けて搬送するプラテン502と、このプラテン502にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を主走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ503と、インクジェットヘッド10の各インクノズルにインクを供給するインクタンク504とを有している。
したがって、高解像度、高速駆動のインクジェットプリンタを実現できる。
このインクジェットプリンタ500は、記録紙501を副走査方向Yに向けて搬送するプラテン502と、このプラテン502にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を主走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ503と、インクジェットヘッド10の各インクノズルにインクを供給するインクタンク504とを有している。
したがって、高解像度、高速駆動のインクジェットプリンタを実現できる。
1 ノズル基板、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 静電アクチュエータ部、5 個別電極(固定電極)、6 振動板(可動電極)、7 TMS−SiO2膜(絶縁膜)、8 絶縁膜(第2の絶縁膜)、8a TEOS−SiO2膜、8b アルミナ誘電体層、9 駆動制御回路(駆動手段)、10 インクジェットヘッド、11 ノズル孔、12 オリフィス、13 ダイヤフラム部、21 吐出室、23 リザーバ、26 共通電極、32 凹部、33 インク供給孔、34 電極取り出し部、35 封止材、200 シリコン基板、300 ガラス基板、500 インクジェットプリンタ。
Claims (16)
- 基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、
前記固定電極の対向面に、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜からなる絶縁膜を設けたことを特徴とする静電アクチュエータ。 - 基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、
前記可動電極の対向面に、トリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜からなる絶縁膜を設けたことを特徴とする静電アクチュエータ。 - 前記可動電極の対向面に第2の絶縁膜を設けたことを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
- 前記第2の絶縁膜は、シリコン熱酸化膜であることを特徴とする請求項3記載の静電アクチュエータ。
- 前記絶縁膜または前記第2の絶縁膜が、多層構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電アクチュエータ。
- 前記絶縁膜または前記第2の絶縁膜が多層構造の場合は、表層部は前記トリメトキシシランまたはテトラエトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜であり、下層部は酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層であることを特徴とする請求項5記載の静電アクチュエータ。
- 前記固定電極が形成された基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電アクチュエータ。
- 基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、
ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、
前記固定電極が形成された前記ガラス基板の片面全面に、CVD法によりトリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程と、
シリコン基板と前記ガラス基板とを前記シリコン酸化膜を介して陽極接合する工程と、
前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、
前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、
前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、
前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。 - 基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、
ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、
シリコン基板の片面全面に、CVD法によりトリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン基板と前記ガラス基板とを前記シリコン酸化膜を介して陽極接合する工程と、
前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、
前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、
前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。 - 前記シリコン基板を前記ガラス基板と陽極接合する前において、該シリコン基板にシリコン熱酸化膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項8記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 前記シリコン基板を前記ガラス基板と陽極接合する前において、該シリコン基板の接合側表面全面に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層を形成し、更にその上にCVD法によりテトラエトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項8記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 前記シリコン基板を前記ガラス基板と陽極接合する前において、該ガラス基板上の前記固定電極上に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電体層を形成し、更にその上にCVD法によりトリメトキシシランを原料ガスとして用いたシリコン酸化膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項9または10記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 前記ギャップの封止は窒素雰囲気下で行うことを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
- 液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
請求項1乃至7のいずれかに記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、
請求項8乃至13のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。 - 請求項14記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006144912A JP2007313731A (ja) | 2006-05-25 | 2006-05-25 | 静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置 |
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JP2006144912A JP2007313731A (ja) | 2006-05-25 | 2006-05-25 | 静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置 |
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2006
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