JP4811007B2 - リチウム二次電池用正極活物質とリチウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム二次電池用正極活物質とその製造方法と、そのような正極活物質を正極に有するリチウム二次電池に関する。詳しくは、本発明は、リチウム化合物とある種の金属化合物との混合物を焼成し、得られたリチウム複合酸化物粒子をアセトンで洗浄して、その粒子の表面の炭酸リチウムを除去することによって、IV(電流電圧)特性にすぐれるリチウム二次電池を与える正極活物質の製造方法と、そのような方法によって得られるリチウム二次電池用正極活物質と、そのような正極活物質を正極に有するリチウム二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等は、高性能化と小型化によって急激に普及しており、そのような小型移動機器の電源として、エネルギー密度が高いところから、リチウム二次電池が広く用いられるに至っている。更に、最近においては、電気自動車(EV)や内燃機関と電池の両方を動力源とするハイブリッド電気自動車(HEV)における電源としての利用の実用化のために、一層、高容量で、しかも、安全性と出力特性にすぐれるリチウム二次電池を開発すべく、種々の研究が推進されている。
そのような研究の一つの方向として、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn24)、層状構造を有する六方晶系のニッケル酸リチウム(LiNiO2)やコバルト酸リチウム(LiCoO2)からなるリチウム二次電池用正極活物質の性能の向上を目指す研究が種々、行われている。
従来、知られているような一般的な方法によって得られたリチウム複合酸化物の表面に炭酸イオンが存在することは、既に、光電子分光分析法(XPS)等の表面解析手段を用いて確認されており、この炭酸イオンは殆どが炭酸リチウムの形で存在しているとされている(特許文献1参照)。
リチウム複合酸化物の製造において、マンガン、ニッケル又はコバルトに対してリチウムを化学量論的に用いても、リチウム複合酸化物からなる正極活物質の粒子の表面に被膜として炭酸リチウムが生成するが、特に、リチウム複合酸化物の製造においては、通常、リチウムを過剰に用いるので、そのために、得られるリチウム複合酸化物にリチウムが過剰に存在することによる影響が大きいものとみられる(特許文献2参照)。
例えば、ニッケル酸リチウムを例として説明すれば、ニッケル酸リチウムにおいて、Li/Niの化学量論比は1であるが、ニッケル酸リチウムの製造においては、リチウムが焼成途中で揮散したり、また、原料中の微量不純物等と結合し、例えば、硫酸リチウム等を形成して、リチウムが消費されるので、従来、ニッケル酸リチウムの製造においては、焼成の前段階では、通常、リチウムが化学量論比よりも幾分過剰に用いられている。また、ニッケル酸リチウムの製造において、3bサイトのリチウムイオン占有率の高いニッケル酸リチウムを得ることができることも、リチウムを化学量論比よりも幾分過剰に用いる理由の一つである。
このように、リチウム複合酸化物の粒子の表面に被膜として存在している炭酸リチウムは、このリチウム複合酸化物を正極活物質とするリチウム二次電池の充放電に際して、リチウムが結晶表面と電解液の間で移動するのを妨げるので、リチウム二次電池の容量と出力を低下させ、かくして、リチウム二次電池の性能に重大な影響を与える。従って、リチウム複合酸化物の粒子の表面の炭酸リチウムを除去することによって、高性能のリチウム二次電池用正極活物質を得ることができるとされている。
そこで、リチウム二次電池用正極活物質の性能の向上を目指す研究の一つの方向として、このような活物質の粒子表面に形成された被膜をボールミル等の手段を用いて粉砕して、物理的に除去することが電池特性の改善に有効であることが既に提案されている(特許文献1参照)。
しかし、このような方法によっては、活物質の粒子表面に形成された炭酸リチウムからなる被膜を除去することができても、活物質が微細粒子化するので、このような活物質を用いることによって、得られる電池の性能が却って低下するおそれもある。
そこで、例えば、炭酸リチウムや水酸化リチウムと酸化コバルトの混合粉末を焼成、粉砕して、コバルト酸リチウムを得た後、これを水洗して、コバルト酸リチウム粒子の表面を被覆している炭酸リチウムを除去し、かくして、高容量のリチウム二次電池を与える活物質を得ることが提案されている(特許文献3参照)。スピネル構造を有するマンガン酸リチウムについても、同様に、二酸化マンガンと炭酸リチウムとの混合粉末を焼成し、得られたマンガン酸リチウム粒子を水洗し、粒子の表面から炭酸リチウムを除去して、出力特性の改善された電池を与える正極活物質を得ることが提案されている(特許文献4参照)。
また、別の方法として、活物質の製造時の雰囲気中の炭素量を抑制して、炭素分の混入を防止しながら焼成物を得るようにした活物質の製造方法も提案されている。即ち、水酸化ニッケルと水酸化コバルトと水酸化リチウムとを炭酸ガス量を微量に抑えた酸素雰囲気とした炉内で焼成し、更に、得られた焼成物を窒素雰囲気下で粉砕し、篩別した後、乾燥して、粒子の表面の炭酸リチウム被覆の形成を抑えた活物質の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開平10−27614号公報 特開2004−327246号公報 特開2002−279986号公報 特開2004−164988号公報
しかし、これまで、知られている上述したような方法によって得られた活物質は、リチウム二次電池の性能の向上の観点から、尚、改善の余地がある。例えば、水酸化リチウムと金属酸化物との混合物を焼成し、得られるリチウム複合酸化物の粒子を水で洗浄することによって、その粒子の表面の炭酸リチウムを除去することができるが、同時に、粒子内のリチウムを溶出させ、得られる活物質におけるリチウム量を低減させるのみならず、このように、リチウム複合酸化物を水で洗浄し、乾燥したとき、得られる活物質の粒子の表面にリチウムが酸化物や水酸化物等として付着、残存する。そこで、このような活物質を用いれば、得られる電池が十分な性能をもたず、更に、このような活物質を導電材とバインダー樹脂と共に溶剤に加えてペーストとするとき、上記活物質の粒子の表面のリチウムの酸化物や水酸化物は、バインダー樹脂のゲル化を招き、かくして、得られるペーストは高い粘度を有し、従って、ペーストの調製や、電極の作製に支障を来すことがあり、延いては、この点からも、得られる電池の性能に有害に作用することがある。
そこで、本発明者らは、水酸化リチウムとある種の金属酸化物との混合物を焼成し、得られるリチウム複合酸化物の粒子を特にアセトンで洗浄することによって、その粒子内のリチウムを溶出させることなく、粒子の表面を覆っている炭酸リチウムを除去することができ、そこで、このようなリチウム複合酸化物を正極活物質として用いることによって、IV特性にすぐれるリチウム二次電池を得ることができ、また、電極の調製に際して、これを導電材とバインダー樹脂と共に有機溶剤に加えてペーストとするとき、粘度が高くなることなしに、ペーストを得ることができ、かくして、このような活物質のペーストを用いることによって、電極の作製に支障を生じることなく、リチウム二次電池を得ることができることを見出して、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、IV特性にすぐれるリチウム二次電池を与えることができるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法と、そのような方法によって得られるリチウム二次電池用正極活物質と、そのような正極活物質を正極に有するリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明によれば、一般式(I)
LiaNibCocMnde2
(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンと元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物とを混合し、
又は一般式(II)
LifMng4
(式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、
かくして得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成し、得られた焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥することによって、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比が0.4以下であるリチウム複合酸化物粒子からなるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、上記方法によって得られるリチウム二次電池用正極活物質と、そのような正極活物質を正極に有するリチウム二次電池が提供される。
本発明の方法によれば、活物質の粒子内のリチウムを溶出させることなく、粒子の表面を被覆している炭酸リチウムを除去することができ、このようにして得られる活物質を用いることによって、IV特性にすぐれるリチウム二次電池を与える。
本発明は、一般式(I)
LiaNibCocMnde2
(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンとから選ばれる少なくとも1種の元素と元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物とを混合し、
又は一般式(II)
LifMng4
(式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、
かくして得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成し、得られた焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥することによって、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比が0.4以下であるリチウム複合酸化物粒子からなるリチウム二次電池用正極活物質を製造する方法である。
本発明の方法によれば、先ず、上記一般式(I)で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンとから選ばれる少なくとも1種の元素と元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物との混合物を調製し、又は上記一般式(II)で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、かくして、得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成する。
上記ニッケルとコバルトとマンガンとから選ばれる少なくとも1種の元素と元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物との混合物は、特に限定されるものではないが、通常、乾式法又は湿式法によって調製することができる。
乾式法による場合には、ニッケル、コバルト、マンガン及び元素Mのそれぞれの化合物として、特に、限定されるものではないが、例えば、それぞれ、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩基性炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用い、また、リチウム化合物も、特に限定されるものではないが、普通、水酸化物や炭酸塩等を用い、これらを混合することによって、目的とする混合物を得ることができる。
湿式法による場合には、元素Mがマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムのようなアルカリ土類元素であるときは、ニッケル、コバルト、マンガン又は元素Mのそれぞれの化合物として、特に限定されるものではないが、例えば、それぞれ炭酸塩、塩基性炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の水溶性塩を用い、これらを混合し、アルカリで中和して、水酸化物の混合物を得、これを水酸化リチウムと混合すれば、すべてが水酸化物である混合物を調製することができる。
元素Mがアルミニウムであるときは、上述したように、ニッケル、コバルト又はマンガンの化合物として、それぞれの水溶性塩を用い、それらの混合水溶液にアルカリを加えて、上記元素の水酸化物の混合物を得、次いで、この水酸化物の混合物の水性スラリーにアルミン酸ナトリウムを加えた後、これに酸を加え、中和すれば、ニッケル、コバルト又はマンガンのそれぞれの水酸化物と水酸化アルミニウムとの混合物を得ることができる。これを水酸化リチウムと混合すれば、すべてが水酸化物である混合物を調製することができる。
マンガン化合物とリチウム化合物との混合物も、上記ニッケルとコバルトとマンガンとから選ばれる少なくとも1種の元素と元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物との混合物と同様にして調製することができる。
次いで、本発明によれば、上述したような混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度、好ましくは、700〜900℃の範囲の温度で焼成する。上記酸化性雰囲気は、例えば、空気でもよく、また、酸素ガスでもよい。このようにして得られた焼成物は、通常、平均粒径5〜15μmを有するように、例えば、篩等を用いて、適宜に分級することが好ましい。
次いで、本発明によれば、このような焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥し、必要に応じて、平均粒径5〜15μmを有するように、例えば、篩等を用いて、再度、適宜に分級する。本発明によれば、焼成物をアセトンで洗浄する際に、洗浄し、乾燥した後に、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比(以下、単に、強度比という。)が0.4以下であるように洗浄することが必要である。例えば、通常、室温で焼成物50gをアセトン200mL中で30分間、攪拌することによって、乾燥した後の強度比が0.4以下である焼成物を得ることができる。このように焼成物をアセトンにて洗浄する際の温度は、通常、室温でよいが、しかし、洗浄、乾燥後の焼成物が上記強度比を有する限りは、必要に応じて、適宜の温度に冷却して、又は加熱して、洗浄してもよい。
本発明において、このようにして得られる焼成物は、用いた前記混合物に対応して、一般式(I)
LiaNibCocMnde2
(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
で表される組成を有するか、又は一般式(II)
LifMng4
(式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
で表される組成を有する。
このように、本発明の方法によれば、用いる混合物に対応して、上記一般式(I)又は一般式(II)で表される組成を有するリチウム複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。
本発明によれば、上記一般式(I)で表される組成を有するリチウム複合酸化物において、ニッケル、コバルト及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の元素の割合は、上記条件を満たす限りは、特に、制約はないが、上記元素Mは、これをリチウム複合酸化物中に拡散させることによって、その結晶構造を安定化させ、かくして、そのようなリチウム複合酸化物を活物質として用いることによって、サイクル特性にすぐれるリチウム二次電池を得ることができる。従って、元素Mの添加量が余りに少ないときは、上述したリチウム複合酸化物の結晶構造の安定化の効果が殆どなく、他方、元素Mの添加量が余りに多いときは、ニッケルやコバルトやマンガンの量が相対的に減少するので、得られる電池の容量が低下することとなる。かくして、本発明によれば、eは0.3以下の範囲とされる。
また、上記一般式(II)で表される組成を有するリチウム複合酸化物においても、上記組成から外れるときは、これを活物質として用いても、性能にすぐれるリチウム二次電池を得ることができない。
更に、本発明の方法によって得られるリチウム二次電池用正極活物質は、前述したように、リチウム複合酸化物の粒子の表面に存在する炭素量の光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、前記強度比が0.4以下であることが必要である。
本発明においては、このように、リチウム複合酸化物の粒子の表面に存在する炭酸リチウム量をXPSによる炭素1sスペクトルの測定において観測される二つのピークの強度比にて規定する。即ち、リチウム複合酸化物の二次粒子のXPSによる炭素1sスペクトルの測定においては、炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合に起因するピークが290eV付近に観測され、C−C結合とC−H結合に起因するピークが285eV付近に観測される。このC−C結合とC−H結合に起因するピークは、粒子表面の炭酸リチウムの量にかかわらずに観測されるピークである。即ち、大気中に微量に存在する有機成分に由来するものであって、大気と接触したリチウム複合酸化物には必ず観測されるピークである。このC−C結合とC−H結合のピーク強度は、焼成条件等の影響を受けない。C−C結合とC−Hのピーク強度は、XPSの測定条件、例えば、測定中の真空度によって試料によって異なるが、同じ試料の炭酸リチウムのピーク強度とC−C結合とC−H結合のピーク強度の比はXPSの測定条件によらず、一定である。
従来、一般的な方法によって得られるリチウム複合酸化物は、その表面に比較的多量の炭酸リチウムを有しており、従って、前記強度比は、通常、0.7以上であり、多くの場合、0.8以上である。そこで、本発明によれば、リチウム化合物とある種の金属化合物の混合物を焼成して得られる焼成物をアセトンで洗浄して、活物質の粒子内のリチウムを溶出させることなく、粒子の表面の炭酸リチウムのみを選択的に除去して、XPSによる炭素1sスペクトルの測定において、前記強度比を0.4以下としたものをリチウム二次電池における活物質として用いることによって、IV特性にすぐれる電池を得ることができ、また、電極の調製に際しては、活物質のペーストを低粘度とすることができる。
このようにして得られるリチウム二次電池用正極活物質は、平均粒径5〜15μmのリチウム複合酸化物の粒子からなることが好ましい。平均粒径が5μmよりも小さいときは、活物質の比表面積が大きく、電池において、充放電時の反応が急激に起こるおそれがある。また、正極材料のタップ密度が小さくなって、単位重量あたりの放電容量の低下を招く。しかし、平均粒径が15μmよりも大きいときは、活物質の粒子が大きすぎて、充放電に際して、リチウムが粒子内部をうまく拡散できず、利用率が下がるおそれがある。
また、本発明の方法によって得られるリチウム二次電池用正極活物質は、従来の一般的な方法によって得られる活物質と相違して、水に分散させて得られるスラリーのpHが低く、また、このような活物質を導電材とバインダー樹脂と共に有に加えてペーストとしたとき、従来の一般的な方法によって得られる活物質と相違して、粘度の低いペーストを与える。
一例として、本発明の方法によって得られた活物質1gを水30mLに分散させた水性スラリーは、温度25℃において、pHが7〜8の範囲にある。また、一例として、活物質1g、アセチレンブラック0.06g及びポリフッ化ビニリデン樹脂溶液(ポリフッ化ビニリデン樹脂/N−メチル−2−ピロリドン重量比1/1である溶液)1.16gからなるペーストは、温度25℃においてE型粘度計で測定した粘度が95〜110センチポイズの範囲にある。
他方、例えば、水酸化リチウムと金属酸化物との混合物を焼成し、得られるリチウム複合酸化物の粒子を水で洗浄して得られる活物質は、厳密には、洗浄時間にもよるが、本発明に従って、アセトンで洗浄した場合とほぼ同様に、前記強度比は低い値を有するものの、これを水性スラリーとすれば、そのスラリーは、通常、およそ10程度の高いpHを有する。即ち、焼成して得られた活物質を水で洗浄すれば、活物質の粒子の表面の炭酸リチウムのみならず、粒子内のリチウムも水中に溶出し、前述したように、このような活物質を乾燥したとき、その粒子の表面に上記リチウムが酸化物や水酸化物等として付着、残存するので、このような活物質を水性スラリーとすれば、上記リチウムの酸化物や水酸化物が水中に溶出し、その結果、スラリーが高いpHを有するものとみられる。これに対して、焼成して得られた活物質をアセトンで洗浄すれば、活物質の粒子内のリチウムの溶出なしに、活物質の粒子の表面の炭酸リチウムのみが除去され、水中に溶出するので、その結果として、スラリーのpHが高くならないとみられる。
本発明によるリチウム二次電池は、上述した正極活物質を有する正極を備えてなるものである。例えば、上述した正極活物質を導電剤、結着剤、充填剤等と混合し、混練して、合剤とし、これを用いて正極を形成して、電池を製作する。より詳細には、例えば、上述した正極活物質を合剤とし、これを、例えば、ステンレスメッシュからなる正極集電体に塗布、圧着し、減圧下に加熱乾燥して、正極とする。しかし、必要に応じて、上記合剤を円板状等、適宜の形状に加圧成形し、必要に応じて、真空下に熱処理して、正極としてもよい。このようにして形成した正極をその他の電池要素と組合わせて、リチウム二次電池を構成する。
非水電解質(有機電解質)を用いるリチウム二次電池の一例を図1に示す。正極1と負極2は、非水電解液を含浸させたセパレータ3を介して対向して電池容器4内に収容されており、上記正極1は正極集電体5を介して正極用リード線6に接続されており、また、負極2は負極集電体7を介して負極用リード線8に接続されて、電池内部で生じた化学エネルギーを上記リード線6及び8から電気エネルギーとして外部へ取り出し得るように構成されている。
上記導電剤は、リチウム二次電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば、特に限定されない。従って、導電剤として、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉、金属繊維、ポリフェニレン等の導電性高分子物質等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。導電剤の配合量は、特に限定されないが、通常、上記合剤において、1〜50重量%の範囲であり、好ましくは、2〜30重量%の範囲である。
上記結着剤も、特に限定されず、例えば、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキサイド等を挙げることができる。これらも単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。結着剤の配合量も、特に限定されないが、通常、上記合剤において、1〜50重量%の範囲が好ましく、特に、2〜30重量%の範囲が好ましい。
上記充填剤は、必要に応じて、合剤に配合される。充填剤としては、リチウム二次電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば、特に限定されず、従来より知られているものが適宜に用いられる。従って、このような充填剤として、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維等を挙げることができる。充填剤の配合量も、特に、限定されるものではないが、通常、上記合剤において、0〜30重量%の範囲である。
本発明によるリチウム二次電池において、負極材料としては、従来、リチウム二次電池に用いられているものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、金属リチウムやリチウム合金のほか、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素材料も用いられる。
正極及び負極は、通常、集電体上に形成される。この集電体としては、特に、限定されるものではないが、通常、ステンレス鋼やそのメッシュ等が用いられる。
また、非水電解液も、従来より知られているものであれば、いずれでもよいが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート等のようなカーボネート類、スルホラン類、ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等のようなエーテル類等の有機溶媒中に過塩素酸リチウム(LiClO4)やヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)等の解離性リチウム塩類を溶解させたものを挙げることができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のようなポリオレフィン樹脂からなる多孔性フィルム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明によるこのようなリチウム二次電池は、例えば、ノート型パソコン、携帯電話、ビデオムービー等の携帯電子機器類に好適に用いることができるほか、移動体搭載用バッテリー、家庭用補助電源等の大型電池としての応用も可能である。
以下に比較例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
比較例1
硝酸ニッケル水溶液に水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液を少量ずつ滴下しながら、pH9〜12、温度30〜50℃の範囲で反応させることによって、水酸化ニッケル粒子(平均粒径7μm)を得た。この水酸化ニッケル粒子と水酸化リチウムをLi/Niモル比が1.05となるように混合し、得られた水酸化ニッケル粒子/水酸化リチウム混合物を酸素雰囲気中、600℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.8μm、組成Li1.05NiO2 のニッケル酸リチウムからなる焼成物を得た。
この焼成物の光電子分光分析法(XPS、(株)島津製作所製ESCA−850、ターゲットMg、8kV、30mA、以下同じ。)による炭素1sスペクトルを図2に示すように、炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合に起因するピークが290eV付近に観測され、C−C結合とC−H結合に起因するピークが285eV付近に観測され(ピーク位置は以下の実施例及び比較例においても同じ。)、前記強度比は0.85であった。
また、この焼成物を正極活物質として用いて、以下のような方法にてモデルセルを作製して、電池特性を測定した。即ち、この焼成物1gとアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック粒状品)0.06gとポリフッ化ビニリデン溶液(呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#1120と関東化学(株)製とNメチル−2−ピロリドン鹿特級の重量比1/1溶液)1.16gを混合し、乳鉢で2分間混練してぺーストとし、このぺーストをロールコータを用いて20μm厚のアルミニウム箔上に乾燥後の活物質重量が0.01g/cm2 になるように塗布し、120℃で真空乾燥した後、直径1.5cmの円板状に打ち抜いて正極とした。
負極としてリチウム金属を用い、電解液として1M濃度のヘキサフルオロリン酸リチウムを支持塩とするエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等量混合溶液を用いた。露点が−80℃に管理されたアルゴン雰囲気のグローブボックス中でモデルセルを作製した。充放電測定は、正極に対する電流密度0.5mA/cm2、カットオフ電圧4.3〜3.0Vとした。
室温IV(電位/電流)抵抗は、前述した方法で製作したモデルセルを室温で3.7VまでCCCV(定電流定電圧)充電し、電流密度を変えながら、10秒放電、10分休止、10秒放電、10分休止を繰り返した。電位が3.0Vまで下がったときの電流値から室温IV抵抗を求めた。低温IV抵抗は、前記した方法で製作したモデルセルを室温で3.7VまでCCCV充電し、−30℃の恒温槽に入れ、電流密度を変えながら、10秒放電、10分休止、10秒放電、10分休止を繰り返した。電位が3.0Vまで下がったときの電流値から低温IV抵抗を求めた。このようにして得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。
前記ペーストについて、その粘度を温度25℃にてE型粘度計を用いて測定した。以下、この粘度をペースト粘度という。結果を表1に示す。
また、水を煮沸し、二酸化炭素を除いて、pHを6.0〜6.5の範囲とした。この水30mLと前記焼成物1gを容量50mLのガラス容器に採取し、容器に栓をして、20秒間激しく振盪し、次いで、5分間静置した後、栓を取り外して、得られたスラリーのpHを測定した。以下、この方法によるpH値を焼成物のスラリーpHという。結果を表1に示す。
実施例1
比較例1と同様にして調製したLi/Niモル比が1.05の水酸化ニッケル粒子/水酸化リチウム混合物を酸素雰囲気中、600℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.9μm、組成Li1.05NiO2 のニッケル酸リチウムからなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.36であった。
上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
比較例2
酸化コバルトと炭酸リチウムをLi/Coモル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.9μm、組成Li1.05CoO2 のコバルト酸リチウムからなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.87であった。
上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
実施例2
比較例2と同様にして、酸化コバルトと炭酸リチウムをLi/Coモル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分間攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥した。このようにして、平均粒子径は7.2μm、組成Li1.05CoO2 のコバルト酸リチウムからなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.34であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
比較例3
塩基性炭酸マンガンと水酸化リチウムをLi/Mnモル比が1.05/2となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径は6.8μm、組成Li1.05Mn24 のマンガン酸リチウムからなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.82であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
実施例3
比較例3で得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分間攪拌した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径7.0μmの焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.32であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
比較例4
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンをNi/Co/Mnモル比が0.33/0.33/0.33となるように混合した混合物の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液を少量ずつ滴下しながら、pH9〜12、温度30〜50℃の範囲で反応させ、生成物を共沈させて、Ni0.33Co0.33Mn0.33 (OH)2 なる組成を有する平均粒径7μmの水酸化物粒子を得た。この水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mn)モル比が1.05となるように混合した。この混合物を酸素雰囲気中、1000℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.8μm、組成Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.332 の複合リチウム酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.86であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
実施例4
比較例4で得られたNi0.33Co0.33Mn0.33 (OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mn)モル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、1000℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分間攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.9μm、組成Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.332 の複合リチウム酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.36であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表1に示す。
比較例5
硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸マグネシウムをNi/Co/Mgモル比が0.80/0.10/0.10となるように混合した混合物の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液を少量ずつ滴下しながら、pH9〜12、温度30〜50℃の範囲で反応させ、生成物を共沈させて、Ni0.80Co0.10Mg0.10(OH)2 なる組成を有する平均粒径7μmの水酸化物粒子を得た。
この水酸化物粒子を水に加え、攪拌して、スラリーとし、このスラリーにアルミン酸ナトリウム(NaAlO2) をAl/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が0.05となるように加えた後、硝酸を加えて、スラリーが6〜7のpHを有するように中和し、濾取して、(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子を得た。
この水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、700℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.7μm、組成Li1.05(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.85であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
実施例5
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、700℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分間攪拌した後、120℃で24時間真空乾燥した。このようにして、平均粒子径6.7μm、組成Li1.05(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.35であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
比較例6
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、700℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で5分間攪拌した後、120℃で24時間真空乾燥した。このようにして、平均粒子径7.0μm、組成Li1.05(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.70であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
比較例7
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が1.05となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、700℃で焼成した。得られた焼成物50gに水200mLを加え、室温で5分間攪拌した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径7.0μm、組成Li1.05(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.38であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
比較例8
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が0.95となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した後、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径7.0μm、組成Li0.95(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.71であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
実施例6
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が0.95となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した。得られた焼成物50gにアセトン200mLを加え、室温で30分間攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径7.0μm、組成Li0.95(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.30であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表1に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
比較例9
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が0.95となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した。得られた焼成物50gに水200mLを加え、室温で5分間攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径6.9μm、組成Li0.95(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.28であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
比較例10
比較例5で得られた(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.05(OH)2 なる組成を有する水酸化物粒子と水酸化リチウムをLi/(Ni+Co+Mg+Al)モル比が0.95となるように混合し、この混合物を酸素雰囲気中、800℃で焼成した。得られた焼成物50gに水200mLを加え、室温で2分間攪拌した後、濾取し、120℃で24時間真空乾燥して、平均粒子径は6.9μm、組成Li0.95(Ni0.80Co0.10Mg0.100.95Al0.052 のリチウム複合酸化物からなる焼成物を得た。この焼成物の炭素1sスペクトルにおいて、前記強度比は0.55であった。
更に、上記焼成物を正極活物質として用いて、比較例1と同様にして、モデルセルを作製し、電池特性を測定した。得られた電池の初期容量、室温IV抵抗及び低温IV抵抗を表2に示す。また、ペースト粘度と上記焼成物のスラリーpHを表2に示す。
Figure 0004811007
Figure 0004811007
非水電解質(有機電解質)を用いるリチウム二次電池の一例の断面図である。 実施例及び比較例において得られたリチウム複合酸化物の二次粒子からなる活物質の光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルを示す。破線はアセトンで洗浄した活物質の炭素1sスペクトルを示し、実線は洗浄していない未処理の活物質の炭素1sスペクトルを示す。
符号の説明
1…正極
2…負極
3…セパレータ
4…電池容器
5…正極集電体
6…正極用リード線
7…負極用集電体
8…負極用リード線


Claims (3)

  1. 一般式(I)
    LiaNibCocMnde2
    (式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
    で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンと元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物とを混合し、
    又は一般式(II)
    LifMng4
    (式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
    で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、
    かくして得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成し、得られた焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥することによって、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比が0.4以下であるリチウム複合酸化物粒子からなるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 一般式(I)
    LiaNibCocMnde2
    (式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
    で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンと元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物とを混合し、
    又は一般式(II)
    LifMng4
    (式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
    で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、
    かくして得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成し、得られた焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥することによって得られる、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比が0.4以下であるリチウム複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極活物質。
  3. 一般式(I)
    LiaNibCocMnde2
    (式中、a、b、c、d及びeはそれぞれ、0.95≦a≦1.10、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦0.3(但し、b、c及びdが同時に0であることはない。)、及びb+c+d+e=1を満足する数であり、MはMg、Ca、Sr、Ba及びAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
    で表される組成を有するように、ニッケルとコバルトとマンガンと元素Mのそれぞれの化合物とリチウム化合物とを混合し、
    又は一般式(II)
    LifMng4
    (式中、f及びgはそれぞれ、0.95≦f≦1.10、1.95≦g≦2.05を満足する数である。)
    で表される組成を有するように、マンガン化合物とリチウム化合物とを混合し、
    かくして得られた混合物を酸化性雰囲気中、600〜1000℃の範囲の温度で焼成し、得られた焼成物をアセトンで洗浄し、乾燥することによって得られる、光電子分光分析法(XPS)による炭素1sスペクトルの測定において、(炭酸リチウムのC−O結合とC=O結合のピーク強度)/(C−C結合とC−H結合のピーク強度)の比が0.4以下であるリチウム複合酸化物からなる正極活物質を正極に有するリチウム二次電池。
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