JP4807916B2 - 抗菌防かび防藻組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌防かび防藻組成物、詳しくは、抗菌性、防かび性および/または防藻性を発現する抗菌防かび防藻組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、屋内塗料や屋外塗料その他の各種の塗料には、有害な微生物の増殖を防止すべく、抗菌性、防かび性および防藻性を有する各種の抗菌剤、防かび剤および防藻剤が配合されている。
【0003】
このような抗菌剤、防かび剤または防藻剤としては、例えば、有機ヨウ素系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカーバメート系化合物、ニトリル系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、オキサチアジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、ハロアセチレン系化合物などの各種の化合物が有効成分として用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら現在使用されている有効成分のほとんどは、窒素、硫黄あるいはハロゲンを含む有機化合物であり、毒性のあるものも少なくない。また、これらの有機化合物では、耐熱性の低いものや、水によって容易に溶脱してしまうものも多い。
【0005】
一方、抗菌作用を有する金属としては、銀が知られている。しかし、銀は、防かび効果や防藻効果はなく、実用上有用ではない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、優れた安全性および耐熱性を有し、水により溶脱しにくく、良好な抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現しうる抗菌防かび防藻組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、毒性が少なく、耐熱性が良好で、水による溶脱も少ない無機化合物から構成される抗菌防かび防藻組成物につき、鋭意検討した結果、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有する抗菌防かび防藻組成物が、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現する知見を見い出し、また、これらに、光触媒を含有させることにより、光照射下において優れた相乗効果を発現する知見を見い出し、また、これらに、スルファミン酸または/およびその塩を含有させることにより、より一層優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現する知見を見い出し、さらに、このようにして得られた抗菌防かび防藻組成物を塗料組成物に含有させることにより、その塗料組成物により形成された塗膜が、長期にわたり、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現する知見を見い出し、これらの知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物と、スルファミン酸または/およびその塩とを含有することを特徴とする、抗菌防かび防藻組成物、
(2) 四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物と、光触媒と、スルファミン酸または/およびその塩とを含有することを特徴とする、抗菌防かび防藻組成物、
(3) 四価金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよび錫からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の抗菌防かび防藻組成物、
(4) 二価金属が、銅、亜鉛、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗菌防かび防藻組成物、
(5) 光触媒が、酸化チタンであることを特徴とする、前記(2)〜(4)のいずれかに記載の抗菌防かび防藻組成物、
(6) 四価金属がチタンであり、二価金属が亜鉛であることを特徴とする、前記(1)に記載の抗菌防かび防藻組成物、
(7) 四価金属がチタンであり、二価金属が亜鉛であり、光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、前記(2)に記載の抗菌防かび防藻組成物に関する。
【0009】
なお、本発明において、「抗菌防かび防藻組成物」とは、抗菌効果、防かび効果および防藻効果の少なくともいずれかの効果を発現し得る組成物である。また、「塗料組成物」とは、透明なクリア塗料を含み、所定の基材上に塗布してコーティングする「コーティング組成物」を含む。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌防かび防藻組成物(以下、単に組成物と省略する場合がある。)は、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有し、さらに必要により、光触媒を含有しており、また、これらにさらにスルファミン酸または/およびその塩を含有している。
【0011】
本発明に用いられるリン酸塩を形成する四価金属は、四価の金属である限り、周期表における族は特に制限されない。四価金属には、周期表4族元素、例えば、4A族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウムなど)、4B族元素(ゲルマニウム、スズ、鉛など)が含まれる。これらの金属のうち、周期表4A族元素に属する金属、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムや、4B族元素、例えば、スズが好ましい。特に、チタンおよびジルコニウムが好ましく、スズも好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、周期表の族番号は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)無機化学命名法委員会命名規則1970版による。
【0013】
リン酸塩を構成するリン酸には、種々のリン酸、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸などが含まれる。リン酸は、オルトリン酸、メタリン酸またはピロリン酸である場合が多い。また、リン酸塩には、オルトリン酸水素塩などのリン酸水素塩も含まれる。なお、本明細書において、特に言及しない場合、「リン酸」はオルトリン酸を意味する。
【0014】
これらの四価金属のリン酸塩は、通常、水不溶性または難溶性である。さらに、前記リン酸塩は、結晶質塩であってもよいが、好ましくは非晶質塩である。これらの四価金属リン酸塩は、単独または2種以上組合わせて使用できる。
【0015】
本発明に用いられる水酸化物を形成する二価金属は、周期表の族の如何を問わず、二価の金属であればよい。二価金属には、例えば、銅などの周期表1B族元素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2A族元素、亜鉛、カドミウムなどの周期表2B族元素、クロム、モリブデンなどの周期表6A族元素、マンガンなどの周期表7A族元素、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどの周期表8族元素などが含まれる。これらの二価金属の水酸化物は、単独または2種以上組合わせて使用できる。
【0016】
好ましい二価金属には、遷移金属、例えば、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素、マンガンなどの周期表7A族元素、鉄、コバルト、ニッケルなどの周期表8族元素が含まれる。特に好ましい二価金属には、銅、亜鉛などが含まれ、鉄、コバルト、ニッケルも好ましい。
【0017】
これら二価金属の水酸化物は、通常、弱酸性ないし弱アルカリ性領域(pH4〜10)で水不溶性または難溶性である。また、前記水酸化物は、結晶質であってもよいが、好ましくは、非晶質である。
【0018】
四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との割合は、抗菌効果、防かび効果、および/または防藻効果を損なわない範囲で選択でき、例えば、金属原子比換算で、金属原子比(二価金属/四価金属)=0.1〜10、好ましくは、0.2〜7、さらに好ましくは、0.2〜5程度である。なお、複数のリン酸塩および/または水酸化物を組み合わせて用いる場合、それぞれの金属の総和量に基づく金属原子比が上記範囲内であればよい。
【0019】
また、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物の組成物は、後述するように、混合ゲルなどのように、共沈などにより複合化されていてもよく、共沈で生成する非晶質な共沈組成物であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いられる光触媒は、紫外線などの光線の照射により活性酸素を生成させる光酸化触媒として作用するものが好ましく、そのため、光触媒は、酸化性光触媒に属する場合が多い。本発明に用いられる光触媒としては、有機または無機を問わず、種々の光半導体を使用できるが、無機光半導体である場合が多い。光触媒としては、例えば、硫化物半導体(CdS,ZnS,In2S3,PbS,Cu2S,MoS3,WS2,Sb3S3,Bi3S3,ZnCdS2など)、金属カルコゲナイト(CdSe,In2Se3,WSe3,HgSe,PbSe,CdTeなど)、酸化物半導体(TiO2,ZnO,WO3,CdO,In2O3,Ag2O,MnO2,Cu2O,Fe2O3,V2O5,SnO2など)などが挙げられ、硫化物と酸化物以外の半導体として、GaAs,Si,Se,Cd2P3,Zn2P3なども含まれる。これらの光触媒は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
これらの光触媒のうち、CdS,ZnSなどの硫化物半導体、TiO2,ZnO,SnO2,WO3などの酸化物半導体が好ましく、特に酸化物半導体、例えばTiO2などが好ましい。前記光触媒を構成する光半導体の結晶構造は特に制限されない。例えば、TiO2は、アナターゼ型、プルカイト型、ルチル型、アモルファス型などのいずれであってもよい。好ましいTiO2には、アナターゼ型酸化チタンが含まれる。
【0022】
光触媒は、ゾルやゲル状で使用できると共に粉粒状で使用してもよい。光触媒を粉粒状で使用する場合、光触媒の平均粒子径は、光活性を損なわない範囲で選択でき、例えば、0.01〜25μm、好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μm程度である。
【0023】
光触媒の使用量は、抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を損なわない範囲で選択でき、例えば、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との総量100重量部に対して1〜1000重量部、好ましくは10〜750重量部、さらに好ましくは20〜500重量部程度である。
【0024】
また、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒の組成物は、後述するように、混合ゲルなどのように、共沈などにより複合化されていてもよい。
【0025】
さらに、本発明の組成物には、スルファミン酸または/およびスルファミン酸塩を含有させてもよい。スルファミン酸または/およびその塩を含有させるには、後で詳述するように、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および必要により含有される光触媒の組成物に含有させればよい。
【0026】
スルファミン酸の塩を構成する元素または基としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、ニッケル、銅、コバルトなどの遷移金属、アンモニウム基、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、グアニジンなどの脂肪族アミン、エタノールアミンなどのアミノアルコール、アニリン、フェニレンジアミンなどの芳香族アミン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、モルホリン、メチルピリジンなどの複素環アミンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものは、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、ニッケル、銅などの遷移金属、グアニジンなどの脂肪族アミンである。
【0027】
組成物に担持させるスルファミン酸またはその塩の担持量は、組成物(四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との総量、または、光触媒や後述する二酸化ケイ素がこれらと複合化される場合には、その総量)100重量部に対して、通常、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部である。
【0028】
本発明の組成物は、慣用の種々の方法により得ることができる。例えば、四価金属リン酸塩、二価金属水酸化物および必要により光触媒を混合することにより、簡便に得ることができる。前記混合に際しては、粉砕などにより得られたそれぞれの粉粒状成分を混合してもよい。
【0029】
また、本発明の組成物は、四価金属イオン、二価金属イオン、光触媒に対応する成分を含む溶液や、これらの金属イオンのうち2種以上の金属イオンを含む水溶液を使用して、それらの水不溶性物質の混合沈殿物を生成させる方法によっても得ることができる。この方法で得られた混合沈殿物は、通常、ゲル状であり、乾燥により非晶質構造の混合物となる。なお、この方法において、光触媒に対応する成分は、予め適切な結晶構造に調整して水溶液に添加するのが好ましい。
【0030】
四価金属イオンおよび二価金属イオンを含む水溶液の調製には、各種の水溶性金属化合物が用いられる。このような二価金属および四価金属の水溶性金属化合物としては、各種の金属塩、金属アルコキシドなどが挙げられる。金属塩としては、通常の金属塩(正塩)のほか、酸性塩、オキシ塩、さらに他の複塩、錯塩の形態の金属塩を用いてもよい。また、金属塩は、水溶液のpHが中性付近で不溶性の化合物であっても、酸性溶液中で溶解する化合物であればよい。具体的には、次のような化合物が挙げられる。
【0031】
(1)金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物:
CoCl2,NiCl2,CuCl2,ZnCl2,FeF2,FeCl2,FeBr2,FeI2,Na2(SnF6),K2(SnF6),K2(SnCl6),CaCl2,CrCl2,BaCl2,MgCl2,MnCl2,TiCl4,SnCl4,ZrCl4,ThCl4,PbCl4,GeCl4など。
【0032】
(2)硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、その他の硫酸塩(無機酸塩):
FeSO4,CoSO4,(NH4)2Fe(SO4)2,ZnSO4,CdSO4,CrSO4,CuSO4,NiSO4,MgSO4,MnSO4,K2Co(SO4)2,(NH4)2Mn(SO4)2,Zr(SO4)2,Sn(SO4)2,Th(SO4)2,Pb(SO4)2,Ti(SO4)2など。
【0033】
(3)硝酸塩(無機酸塩):
Zn(NO3)2,Co(NO3)2,Cd(NO3)2,Ca(NO3)2,Fe(NO3)2,Cu(NO3)2,Ni(NO3)2,Ba(NO3)2,Mn(NO2)2,Zr(NO3)4,Ti(NO3)4,Sn(NO3)4,Th(NO3)4など。
【0034】
(4)塩素酸塩、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、ジアミン銀硫酸塩、ジアミン銀硝酸塩、クロム酸塩などのその他の各種無機酸塩:
Zn(ClO3)2,Ca(ClO3)2,Ba(ClO3)2,Ca(ClO4)2,Fe(ClO4)2,Ni(ClO4)2,Ba(ClO4)2,Mg(ClO4)2,Co(ClO4)2,Zn(SCN)2,Ca(SCN)2,CaCrO4など。
【0035】
(5)酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩:
(CH3CO2)2Zn,(CH3CO2)4Zr,C2O4Co,(CH3CO2)2Co,(CH3CO2)2Fe,(CH3CO2)Cu,(CH3CO2)2Ni,(CH3CO2)2Ba,(CH3CO2)2Mg,(C2O4)2Thなど。
【0036】
(6)オキシ金属塩(ハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩の形態のオキシ金属塩):
ZrOCl2,ZrOSO4,ThOCl2,TiOSO4,ZrO(NO3)2,ZrOCO3,(NH4)2ZrO(CO3)2,ZrO(CH3CO2)2など。
【0037】
(7)金属アルコキシド類:
Zr(OCH3)4,Ti(OCH3)4,Zr(OC2H5)4,Ti(OC2H5)4などのC1−6アルコキシドなど。
【0038】
これらの金属化合物のうち、無機酸塩、特に硫酸塩や硝酸塩などの強酸塩を用いる場合が多い。より具体的には、FeSO4,Ti(SO4)2,ZnSO4,CuSO4,Cu(NO3)2などを用いる場合が多い。なお、四価金属化合物のうちチタン化合物やジルコニウム化合物としては、オキシ金属塩を用いる場合が多く、このような化合物には、例えば、ZrOCl2,ZrOSO4,TiOSO4などが含まれる。
【0039】
光触媒も慣用の方法、例えば、光触媒に対応する金属イオンを含有する水溶液から調製する方法、金属アルコキシドから調製する方法、高温で酸化させる気相法などに従って調製することができる。
【0040】
光触媒の調製に際しては、その光触媒に対応する成分を含む化合物を用いることができる。酸化チタンを例にとって説明すると、このような成分としては、例えば、TiCl4,TiF4,TiBr4などのハロゲン化チタン、Ti(SO4)2,TiOSO4などの硫酸塩、(CH3O)4Ti,(C2H5O)4Ti,[CH3(CH2)2O]4Ti,[(CH3)2CHO]4Ti,[CH3(CH2)3O]4Ti,[(CH3)2CHCH2O]4TiなどのC1− 6アルコキシチタンなどが使用できる。また、予め調製された酸化チタンゾルなどを用いてもよい。
【0041】
四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成するには、四価金属のリン酸塩と二価金属イオンとの共存下に、二価金属の水酸化物を生成させればよい。例えば、(i)四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液中で四価金属のリン酸塩を生成し、次いで、二価金属の水酸化物を生成してもよく、また、(ii)二価金属イオンを含有しない水溶液中で予め四価金属のリン酸塩を生成した後、二価金属イオンを含む水溶液を加え、二価金属の水酸化物を生成させてもよい。
【0042】
前記(i)の方法において、四価金属イオンおよび二価金属イオンが共存する水溶液を用いて組成物を生成させる場合、四価金属化合物および二価金属化合物を含む水溶液を撹拌しながら二価金属の不溶性水酸化物の生成を抑制しつつ、リン酸またはリン酸塩を添加して四価金属のリン酸塩の沈殿物を生成させればよい。
【0043】
この方法において、前記四価金属化合物および二価金属化合物を含む水溶液のpHは、通常、酸性域、例えば、pH0.1〜6、好ましくは0.3〜4程度であり、必要であれば二価金属水酸化物の生成を抑制するため、酸を添加して酸性域、例えば、pH4以下に調整し、リン酸またはリン酸塩を添加してもよい。
【0044】
前記水溶液のpHを調整する場合、適当なアルカリや酸を使用できる。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなど)やアンモニアなどの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基が使用できる。酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸などの有機酸が用いられる。
【0045】
不溶性リン酸塩の生成に用いられるリン酸またはリン酸塩としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、およびそれらのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)やアンモニウム塩などが挙げられる。より具体的には、リン酸塩には、例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム(以下、これらを単にリン酸ナトリウム(第1,第2および第3)として示す)、リン酸カリウム(第1,第2および第3)、リン酸アンモニウム(第1,第2および第3)、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどが含まれる。
【0046】
前記(i)の方法において、通常、生成した四価金属のリン酸塩を熟成などにより十分に析出させる場合が多い。熟成法には、慣用の方法、例えば、室温で長時間放置する方法、100℃以下に加温した状態で長時間放置する方法、加熱還流する方法などが用いられる。
【0047】
熟成終了後、アルカリの添加によりpHを中性域、例えば、pH4〜12に調整すると、二価金属の水酸化物を生成させることができる。なお、前記水酸化物の生成は、アルカリと、熟成終了後の四価金属のリン酸塩と二価金属イオンを含む液とを中性域、例えば、pH4〜12の範囲で、並行して液中へ添加することにより行なってもよい。前記のようなpH域では、二価金属の水酸化物からなる沈殿物が生成し、生成した水酸化物の沈殿物と四価金属の不溶性リン酸塩の沈殿物とが沈澱または析出混合物または共沈混合物として生成する。二価金属の水酸化物の生成において、常温での反応が遅い場合には反応系を加温してもよい。また、必要に応じて加圧下に100℃以上200℃以下の温度で反応させてもよい。また、撹拌は空気を用いたバブリングにより行なってもよい。
【0048】
前記(ii)の方法において、四価金属のリン酸塩の沈殿物と二価金属の水酸化物とは、前記(i)の方法に準じて生成させることができる。すなわち、前記四価金属イオンを含み二価金属イオンを含まない水溶液にリン酸またはリン酸塩を添加して予めリン酸塩を生成させる。生成したリン酸塩を必要により熟成した後、必要によりpHを酸性域、例えばpH4以下に調整し、二価金属イオンを含む水溶液(例えば、金属塩を含有する水溶液)を添加して混合し、前記と同様にpHを中性域、例えばpH4以上に調整することにより混合沈殿物を生成させてもよい。この方法では、四価金属のリン酸塩の熟成は比較的短時間であってもよい。
【0049】
光触媒を含む組成物を調製する場合には、光触媒を、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を生成させる反応系に、例えば、粉粒状で添加していてもよく、前記四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物を生成させた後、反応系または生成した沈殿物に添加してもよい。さらに、光触媒は、四価金属のリン酸塩および/または二価金属の水酸化物の生成とともに同時に生成させてもよい。光触媒の生成には、前記(i)および(ii)の方法が用いられる。例えば、酸化チタンを生成させる場合、塩化チタンなどのハロゲン化チタン、無機酸塩(例えば、硫酸チタンなどの硫酸塩)やアルコキシドを必要に応じて前記反応系に添加し、反応系のpHを中性またはアルカリ性、例えば、pH6〜12程度に調整することにより生成させることができる。
【0050】
スルファミン酸または/およびその塩の組成物への含有は、例えば、前記(i)、(ii)の沈殿物生成反応のいずれかの工程で、または沈殿物生成後、スルファミン酸または/およびその塩の溶液、特に水溶液を加えることにより行うことができる。
【0051】
このようにして得られた沈殿物は、必要に応じて慣用の方法により精製してもよい。例えば、前記混合沈殿物などの沈殿物を含む反応液を濾過し、温水または水などの洗浄溶媒を用いて洗浄し、金属塩のアニオン種などの不純物を除去し、乾燥することにより、精製した組成物を得ることができる。
【0052】
前記濾過は、濾紙や濾布などを用い、常温常圧下、減圧下または加圧下で行なうことができ、遠心分離法、真空濾過法などを用いてもよい。また、洗浄に際しては、傾斜洗浄法などを用いてもよい。
【0053】
前記乾燥操作は、慣用の方法、例えば、風乾で行なってもよく、組成物の分解温度未満の温度、例えば、約400℃以下、好ましくは200℃以下の温度に加熱した加温下で行なってもよい。
【0054】
また、本発明の組成物は、さらに二酸化ケイ素を含んでいてもよい。二酸化ケイ素は、組成物の比表面積を増加させ、接触面積を高める上で有用である。二酸化ケイ素の含有量は、抗菌効果、防かび効果、および/または防藻効果を損なわない範囲で選択でき、例えば、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との総量に対して、金属原子比換算で、ケイ素/(二価金属+四価金属)=0.2〜10、好ましくは0.5〜8、さらに好ましくは1〜7程度である。
【0055】
また、本発明の組成物は、二酸化ケイ素とともに、または二酸化ケイ素を含むことなくさらに抗菌性金属(例えば、銀、銅、亜鉛など)、特に銀成分を含んでいてもよい。銀成分の含有量は、組成物全体に対して金属銀換算で0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜7重量%程度である。
【0056】
そして、このようにして得られる本発明の組成物は、四価金属のリン酸塩および二価金属の水酸化物を含有する組成物として得ることができる。本発明の組成物は、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現するとともに、無機化合物から構成されるので、現在使用されている有機化合物の有効成分に比べて、毒性が低く、また、耐熱性が高く、水による溶脱も少ない。そのため、本発明の抗菌防かび防藻組成物は、抗菌剤、防かび剤および/または防藻剤として、各種の産業製品に適用することができ、とりわけ、塗料に適用した場合には、その塗料によって形成される塗膜を、有害微生物から過酷な環境下においても長期にわたって有効に保護することができる。
【0057】
また、本発明の組成物は、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物および光触媒を含有する組成物として得ることもできる。この組成物においては、さらに光触媒が含有されているので、太陽光や蛍光灯などの光照射下においては、光触媒作用による相乗効果を発現させることができる。
【0058】
さらに、本発明の組成物は、スルファミン酸または/およびその塩を含有させることで、より一層優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現させることができる。
【0059】
なお、このようにして得られる本発明の組成物は、通常、10〜1000m2/g、好ましくは30〜1000m2/g、さらに好ましくは50〜1000m2/g程度のBET比表面積を有している。また、本発明の組成物は、上記した、抗菌、防かびおよび/または防藻の作用を有するとともに、高い吸着性を有する吸着性組成物として作用する。そのため、本発明の組成物は、抗菌剤、防かび剤および/または防藻剤としての効果を発現するとともに、臭気成分を含めて種々の化合物(有機化合物、無機化合物)を分解除去するための脱臭性組成物または消臭性組成物としての効果をも発現することができる。
【0060】
そして、本発明の塗料組成物は、このようにして得られる抗菌防かび防藻組成物が含有されている。抗菌防かび防藻組成物の塗料組成物中の配合割合は、0.1〜95重量%、好ましくは、0.5〜50重量%である。また、本発明の塗料組成物には、塗料として必要な組成、例えば、樹脂や、必要により、体質顔料および着色顔料、その他の添加剤などが含有されている。
【0061】
樹脂としては、何ら制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。これらの中では、アクリル樹脂が好ましく用いられる。樹脂の塗料組成物中の配合割合は、5〜99重量%、好ましくは、10〜80重量%である。また、これら樹脂は、後述するように、エマルション樹脂であることが好ましく、エマルション樹脂としては、アクリルエマルション樹脂が好ましく用いられる。
【0062】
また、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウムなどが用いられる。この体質顔料は、特に配合しなくてもよいが、配合する場合には、体質顔料の塗料組成物中の配合割合は、0.1〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%である。
【0063】
また、着色顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、酸化クロム、黄鉛、酸化亜鉛などの無機顔料、ハンザイエロー、レーキレッド、フタロシアニンブルー、シンカシャレッドなどの有機顔料が用いられる。この着色顔料は、特に配合しなくてもよいが、配合する場合には、着色顔料の塗料組成物中の配合割合は、0.01〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%である。
【0064】
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤などの各種の添加剤が用いられ、塗料組成物の目的および用途などに応じて、適宜配合される。また、本発明の抗菌防かび防藻組成物以外の抗菌剤、防かび剤または防藻剤を適宜配合してもよい。
【0065】
また、本発明の塗料組成物には、スルファミン酸または/およびその塩をさらに含有させてもよい。スルファミン酸または/およびその塩を含有させることにより、より一層、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現させることができる。
【0066】
スルファミン酸または/およびその塩としては、上記したスルファミン酸または/およびその塩と同様のものが用いられる。スルファミン酸または/およびその塩を配合する場合には、スルファミン酸または/およびその塩の塗料組成物中の配合割合は、0.1〜50重量%、好ましくは、0.1〜10重量%である。
【0067】
なお、スルファミン酸または/およびその塩は、本発明の抗菌防かび防藻組成物および塗料組成物のいずれにも配合しなくてもよく、また、本発明の抗菌防かび防藻組成物に配合して、塗料組成物には配合しなくてもよく、また、本発明の抗菌防かび防藻組成物には配合せず、塗料組成物に配合してもよく、さらには、本発明の抗菌防かび防藻組成物および塗料組成物の両方に配合してもよい。
【0068】
また、本発明の塗料組成物に含有されるスルファミン酸または/およびその塩は、上記のいずれの態様にかかわらず、その合計全量として、塗料組成物中に、0.1〜70重量%、さらには、0.1〜30重量%含有されることが好ましい。
【0069】
そして、本発明の塗料組成物は、その形態は特に限定されず、有機溶媒系の塗料組成物としても、また、水系の塗料組成物としても用いることができる。有機溶媒系の塗料組成物として用いる場合には、抗菌防かび防藻組成物を含む各成分を、適宜の割合において、有機溶媒に分散することによって調製すればよく、また、水系の塗料組成物として用いる場合には、抗菌防かび防藻組成物を含む各成分を、適宜の割合において、水に懸濁または乳化により分散させることによって調製すればよい。これらのうち、本発明の塗料組成物は、水系の塗料組成物として調製することが好ましい。
【0070】
本発明の塗料組成物を、水系の塗料組成物、例えば、エマルション塗料として調製するには、例えば、体質顔料、着色顔料および抗菌防かび防藻組成物を含むミルベースを調製した後、このミルベースに、レットダウンとしての各成分を順次配合する。ミルベースの調製は、例えば、体質顔料、着色顔料および抗菌防かび防藻組成物を水に配合して、必要により、スルファミン酸または/およびその塩、凍結防止剤(エチレングリコールなど)、分散剤、湿潤剤、消泡剤などの公知の添加剤を添加した後、混合撹拌する。
【0071】
そして、このようにして調製されたミルベースに、レットダウンとしての、エマルション樹脂や、必要により、界面活性剤、造膜助剤(高沸点溶剤など)、消泡剤、pH調整剤、増粘剤などの公知の添加剤を添加した後、撹拌混合すればよい。なお、本発明の塗料組成物を、このようなエマルション塗料として調製する場合には、VOCの低減化を図るべく、凍結防止剤(エチレングリコールなど)および造膜助剤(高沸点溶剤など)を用いない処方によって調製することが好ましい。
【0072】
そして、本発明の塗料組成物は、抗菌防かび防藻組成物が配合されているので、本発明の塗料組成物により形成された塗膜は、高温高湿環境下においても、長期にわたり、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現する。
【0073】
そのため、本発明の塗料組成物を、例えば、屋内の浴室や屋外の外壁などを塗装するための塗料として用いれば、環境、あるいは、湿気や雨水によっても溶脱することなく、長期にわたり、抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を維持することができる。なお、本発明の塗料組成物を、台所に適用すれば、優れた抗菌効果を発現させて、台所の良好な衛生環境を確保することができ、また、上記したように、浴室に適用すれば、優れた防かび効果を発現させて、浴室の良好な衛生環境を確保することができる。さらに、本発明の塗料組成物は、人体に対する安全性が高く、より一層、環境にやさしい塗料として用いることができる。
【0074】
なお、本発明の塗料組成物は、上記の用途に何ら限定されるものではなく、例えば、着色顔料や体質顔料を配合せずに、クリア塗料として調製してもよい。
【0075】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されるものではない。
【0076】
実施例1(組成物(Zn(II)−Ti(IV))の調製)
硫酸チタン溶液(約30g重量%濃度、和光純薬製試薬)43.7gを水25.8gに添加した。この水溶液は、0.055モルのTi(IV)イオンを含んでいた。この水溶液に室温下、撹拌しながら15重量%のリン酸水溶液約53.6gを滴下したところ、白色沈殿物が生成した。白色沈殿物が生成した混合液をそのまま2時間撹拌した。
【0077】
白色沈殿物を含む混合液に硫酸亜鉛の結晶(ZnSO4・7H2O,和光純薬製試薬特級)6.75gを添加して溶解した。この混合液は、0.023モルのZn(II)イオンを含んでいた。得られた混合液に、15%水酸化ナトリウム溶液をpHが7.0となるまで滴下した。なお、水酸化ナトリウムの滴下に際し、pHが低下した場合には、さらに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約7.0に保持した。pHの低下が認められなくなるまで撹拌を続けると、Zn(II)−Ti(IV)を含む白色沈殿物が生成した。
【0078】
生成した白色沈殿物を吸引濾別し、温脱イオン水で十分洗浄した後、40℃で乾燥し、乾燥物を乳鉢で120μm以下に粉砕することにより、白色粉末の抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)−Ti(IV))を得た。
【0079】
実施例2(組成物(Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)の調製)
実施例1で得られた抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)−Ti(IV))70重量部に対して酸化チタン粉末(石原産業(株)製,MC−90)30重量部を混合し、得られた混合物をジェットミル粉砕機に供給し、粉砕することによりさらに微粉末とし、抗菌防かび防藻組成物(Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)を得た。なお、得られた抗菌防かび防藻組成物の微粉末の平均粒径は5μmであった。
【0080】
実施例3(組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)の調製)
硫酸チタン溶液(約30重量%濃度、和光純薬製試薬)43.7重量部を水25.8重量部に添加した。この水溶液は、0.055モルのTi(IV)イオンを含んでいた。この水溶液に室温下、撹拌しながら15重量%のリン酸水溶液53.6重量部を滴下したところ、白色沈殿物が生成した。白色沈殿物が生成した混合液をそのまま2時間撹拌した。
【0081】
白色沈殿物を含む混合液に硫酸亜鉛の結晶(ZnSO4・7H2O,和光純薬製試薬特級)6.75重量部を添加して溶解した。この混合液は、0.023モルのZn(II)イオンを含んでいた。
【0082】
得られた混合液に、15%水酸化ナトリウム溶液をpHが7.0となるまで滴下した。なお、水酸化ナトリウムの滴下に際し、pHが低下した場合には、さらに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約7.0に保持した。pHの低下が認められなくなるまで撹拌を続けると、Zn(II)−Ti(IV)を含む白色沈殿物が生成した。
【0083】
生成した白色沈殿物を吸引濾別し、温脱イオン水で十分洗浄した後、40℃で乾燥し、乾燥物を乳鉢で120μm以下に粉砕することにより、Zn(II)−Ti(IV)を含む白色粉末を得た。
【0084】
得られた白色粉末70重量部に酸化チタン(MC−90、石原産業(株)製)30重量部を混合し、混合物をジェットミル粉砕機にかけて、Zn(II)−Ti(IV)−TiO2を含む平均粒子径5μmの微粉末を得た。
【0085】
100重量部の50重量%スルファミン酸アンモニウム水溶液に、50重量部の前記微粉末を撹拌しながら徐々に加え、室温でさらに10分間撹拌した。室温で30分間静置後、濾過および水洗を2回行ない、濾過残渣を120℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した。室温まで放冷後、乳鉢で粉砕して、抗菌防かび防藻組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)を得た。
【0086】
実施例4〜5および比較例1〜3(塗料組成物の調製)
表1に示す割合(重量%)において、まず、チタン白、体質顔料および抗菌防かび防藻組成物(実施例4:実施例3の組成物(スルファミン酸アンモニウム担持Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)、実施例5:実施例2の組成物(Zn(II)−Ti(IV)−TiO2)、比較例1:添加なし、比較例2:実施例1の組成物(Zn(II)−Ti(IV))、比較例3:実施例2の組成物(Zn(II)−Ti(IV)−TiO 2 )、)を水に加え、さらに、エチレングリコール、分散剤、湿潤剤、消泡剤、50重量%スルファミン酸アンモニウム水溶液(実施例5のみ)を添加した後、撹拌混合することにより、ミルベースを調製した。次いで、これに、レットダウンとして、エマルション樹脂、界面活性剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、水、pH調整剤(実施例4〜実施例5および比較例2〜比較例3のみ)を順次添加した後、撹拌混合することにより、実施例4〜5および比較例1〜3の塗料組成物を得た。なお、各成分の詳細を以下に示す。
【0087】
(ミルベース)
チタン白:ルチル型酸化チタン(商品名:TITANIX JR−900、テイカ(株)社製)
体質顔料:炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB、白石カルシウム(株)社製)
分散剤:ポリカルボン酸ナトリウム塩(商品名:オロタン850、ローム・アンド・ハース社製)
湿潤剤:アルキルエーテルサルフェート(商品名:トライトンCF−10、ユニオン・カーバイド社製)
消泡剤:鉱物油とポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤の混合物(商品名:ノプコ8043−L、サンノプコ(株)社製)
(レットダウン)
エマルション樹脂:アクリル・スチレン系エマルション(商品名:ウルトラゾールC−62、ガンツ化成(株)社製)
界面活性剤:ポリオキシエチレン誘導体(商品名:エマルゲンA−500、花王(株)社製)の50重量%溶液
造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS−12、チッソ(株)社製)
消泡剤:鉱物油とポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤の混合物(商品面:ノプコ8034−L、サンノプコ社製)
防腐剤:ハロゲン化窒素硫黄化合物(商品名:スラオフCA、武田薬品工業(株)社製)
増粘剤:ヒドキエチルセルロース(商品名:SP−600、ダイセル(株)社製)の2重量%水溶液
pH調整剤:アンモニア水(28%)
【0088】
【表1】
【0089】
試験例1(抗菌試験)
1)試験菌
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)IFO3061、エスケリシア・コリー(Escherichia coli)IFO−3044を用いた。
【0090】
2)菌液の調製
普通ブイヨン液体培地で28℃、18時間培養した上記の試験菌株の菌体を、O.D.660nm 0.2に調製後、1/500濃度のNutrient Broth培地に分散したものを接種用菌液とした。
【0091】
3)試験片の調製
実施例4〜実施例5および比較例1〜比較例3の塗料組成物を、ガラス板上に、均一に塗布し、これを乾燥することによって試験片を調製した。
【0092】
4)試験手順
試験片を24時間水に浸漬した後、試験片(5×5cm)に菌液を0.5mL滴下し、その上に、ポリエチレンフィルムを被せ試験片と菌液を密着させた。その後、恒温恒湿33℃、24時間培養および光照射下(7600Lx)24時間培養後に、10mLの滅菌水で洗い出し、その溶液中の生菌数を、ブイヨン寒天培地を用いて測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中、初期菌数は、試験試料に使用した接種用菌液の菌数を測定したものである。
【0093】
【表2】
表2から明らかなように、実施例4〜実施例5の塗料組成物は、優れた抗菌効果を発現していることがわかる。
【0094】
試験例2(防かび試験)
1)供試かび液
供試かび液として、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)IFO6341、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO6352、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)IFO6348の混合液を用いた。
【0095】
2)試験片の調製
実施例4〜実施例5および比較例1の塗料組成物を、ガラス板上に、均一に塗布し、これを乾燥することによって試験片を調製した。
【0096】
3)試験手順
(1)塗装試料を30×30mmに切断し、これを試験片とした。
【0097】
(2)試験片を、40℃、200mLの水に1日間浸漬した後、24時間自然乾燥した。
【0098】
(3)オートクレーブで滅菌したグルコース寒天培地を、直径9cmのペトリ皿中に注いで、凝固させた寒天平板の中央に、試験片を貼付した。
【0099】
(4)供試かび液を、試験片に噴霧した後、28℃、4週間培養した。
【0100】
(5)(3)、(4)を繰り返した。
【0101】
(6)培養後、光照射(7600Lx)したものと、しないもののそれぞれについて、7日目の試験片上におけるかびの生育程度を判定した。その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
表3から明らかなように、実施例4〜実施例5の塗料組成物は、優れた防かび効果を発現していることがわかる。
【0103】
試験例3(防藻試験)
1)供試藻液
供試藻液として、クラミドモナス・レインハルドティイ(Chlamydomonas reinhardtii)C−238、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgalis)NIES−227、オスシラトリア・テヌイス(Oscillatoria tenuis)MES−33の混合液を用いた。
【0104】
2)試験片の調製
実施例4〜実施例5および比較例1〜比較例3の塗料組成物を、ガラス板上に、均一に塗布し、これを乾燥することによって試験片を調製した。
【0105】
3)試験手順
(1)塗装試料を30×30mmに切断し、これを試験片とした。
【0106】
(2)オートクレーブで滅菌後、固化したAllen’s培地上に試験片を貼付した。
【0107】
(3)供試藻液を、試験片に噴霧した後、光照射下で培養した。
【0108】
(4)2週間目および4週間目における試験片上の藻の生育程度を判定した。その結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
表4から明らかなように、実施例4〜実施例5の塗料組成物は、優れた防藻効果を発現していることがわかる。
【0110】
【発明の効果】
本発明の抗菌防かび防藻組成物は、優れた抗菌効果、防かび効果および/または防藻効果を発現するとともに、無機化合物から構成されるので、現在使用されている有機化合物の有効成分に比べて、毒性が低く、また、耐熱性が高く、水による溶脱も少ない。
Claims (7)
- 四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物と、スルファミン酸または/およびその塩とを含有することを特徴とする、抗菌防かび防藻組成物。
- 四価金属のリン酸塩と、二価金属の水酸化物と、光触媒と、スルファミン酸または/およびその塩とを含有することを特徴とする、抗菌防かび防藻組成物。
- 四価金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよび錫からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗菌防かび防藻組成物。
- 二価金属が、銅、亜鉛、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌防かび防藻組成物。
- 光触媒が、酸化チタンであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の抗菌防かび防藻組成物。
- 四価金属がチタンであり、二価金属が亜鉛であることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌防かび防藻組成物。
- 四価金属がチタンであり、二価金属が亜鉛であり、光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、請求項2に記載の抗菌防かび防藻組成物。
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