JP4805492B2 - インクジェット記録要素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録要素に、より詳細には、コアシェル構造を有する、熱的コンプライアンスを有する複合粒子を含有しているインクジェット記録要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
典型的なインクジェット記録システムまたはインクジェット印刷システムにおいては、インク液滴が、記録要素または記録媒体に向かってノズルから高速で噴射され、媒体上に画像を生ずる。インク液滴(または記録液体)は、一般に、染料または顔料などの記録薬剤および大量の溶媒を含んでなる。溶媒(またはキャリア液体)は、概して、水、一価アルコール、多価アルコールまたはそれらの混合物などの有機材料から作られている。
【0003】
インクジェット記録要素は、概して、少なくとも一方の表面に、少なくとも1層のインク受容層を担持している支持体を含んでなる。このインク受容層は、概して、毛管作用によってインクを吸い込む多孔質層、または膨潤してインクを吸収するポリマー層のいずれかである。膨潤性親水性ポリマー層は乾燥するのに長時間を要するので望ましくないので、概して、より迅速に乾燥する多孔質層の方が優れているとみなされる。インクジェット記録要素は、支持体上に複数の層を含有することができる。典型的な2層構成は、インク保持下層と組み合わせられた最上部インク移送層、または下にあるインクベヒクル溜め層と組み合わせられた最上部インク画像捕獲層のいずれかを有する。
【0004】
多孔質層は、概して、容易に湿潤可能であるけれども不溶性である耐熱性 (refractory) 無機顔料並びにバインダーを含有している。概して、これらの耐熱性無機顔料粒子は、シリカまたはアルミナのいずれかを含んでなる。これらの容易に湿潤可能であるけれども耐熱性である粒子の高い装填量および無数のボイドの存在(層がインクを迅速に吸収するために必須である)は、このような層によって提供される多くの界面が光の散乱につながり、光沢が不十分なものとなるという点において問題を呈する。光の散乱を低減し、それにより光沢を改良するために、多孔質層がコロイド状(すなわち、 0.5μm 未満)の粒子を主に含んでなることが多い。しかしながら、これらの粒子は、塗布層の亀裂を伴わずに塗布するのが困難である。従って、 0.5μm よりも大きい耐熱性粒子を用いると高い光沢を達成するのが困難であり、逆に 0.5μm よりも小さい耐熱性粒子を用いると亀裂の無い層を塗布するのが困難である。
【0005】
米国特許第 5,576,088号は、少なくとも1層のインク受容層および合成ポリマーラテックスバインダーと少なくとも70質量%がコロイド状粒子である顔料とを含んでなる光沢提供層を有するインクジェット記録シートに関する。この光沢提供層をカレンダー加工したり、塗布の直後に熱鏡面ロールに加圧接触させたりして、光沢をさらに高めてもよい。しかしながら、この記録シートには、有機粒子の使用により、鏡面ロールからの光沢提供層の剥離性が低下するという点において、問題がある。さらに、像形成の前に上記層をカレンダー加工することにより、インク透過性が低下する。さらに、上記層は、コロイド状粒子の高い装填量を有するので、これらの層は高い乾燥応力のために亀裂を生じやすい。
【0006】
米国特許第 5,472,773号は、60°において少なくとも30%の鏡面光沢度を有する、コロイド状凝集体アルミナ結晶(または擬ベーマイト)およびバインダーからなる表面層を有する基材を含んでなるコート紙に関する。しかしながら、このコート紙には、この光沢レベルは高品質像形成基材に望ましいものよりも低く、このコート紙の調製には、コストが高く複雑な層転写技術が必要とされるという点において、問題がある。
【0007】
欧州特許出願公開明細書第0 813 978 A1号においては、層の脆さおよび亀裂を低減するための油滴と共に、親水性バインダー中に固体微細粒子を有する多孔質インクジェット記録シートが開示されている。しかしながら、この要素には、油滴がコーティングから滲出して、好ましくない油性表面の触感および低い光沢を与える場合があるという点において、問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、導入されている無機顔料粒子の耐熱性の性状にもかかわらず、熱および圧力によって処理して高い光沢とすることができる、インク画像を移送または保持することができる多孔質頂部層を有するインクジェット記録要素を提供することである。本発明のもう1つの目的は、亀裂を伴わずに塗布および乾燥することができ、そのうえ、良好なインク吸収性を維持することができる艶出し可能なインクジェット記録要素を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
これらの目的および他の目的は、
親水性材料または多孔質材料を含む少なくとも1層のベース層と、インク画像の保持または移送のいずれかが可能な多孔質頂部層とを、記載されている順序で担持している支持体を含んでなるインクジェット記録要素であって、上記多孔質頂部層が高分子バインダーと熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子とを含んでなり、上記粒子対バインダーの比が95:5〜50:50であり、そして上記熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子の各々が、
a)無機コロイド状粒子のシェル、および
b)熱可塑性ポリマーのコア
を有し、上記粒子が 0.5μm 〜10μm の粒径を有し、上記高分子コアが50℃を超える軟化点を有し、そして上記無機コロイド状粒子のシェルの上記熱可塑性コアに対する質量比が1:5〜1:99である、インクジェット記録要素
に関する本発明によって達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される、熱的コンプライアンスを有する複合コアシェル粒子は、米国特許第 4,833,060号明細書に記載されている蒸発限定凝集および米国特許第 5,354,799号明細書に記載されている限定凝集を含む多くの手順によって調製することができる。これらの調製の両方において、シェルは、粒子の調製時に、促進剤によって現場形成される。あるいは、Journal of the American Chemical Society, vol. 120, p. 8523 (1998)における "Electrostatic Self-Assembly of Silica Nanoparticle-Polyelectrolyte Multilayers of Polystyrene Latex Particles"に記載されているlayer-by-layer技法によって、予備形成された粒子上でシェルを集成させることもできる。
【0011】
本発明において用いられる熱可塑性コアポリマーは、50℃を超える、好ましくは50℃〜 120℃の軟化点を有する。ポリマーの軟化点は、ASTM E28に記載されている環球法によって測定することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様において、上記熱可塑性コアポリマーは、ポリエステル、アクリル系ポリマーまたはスチレン系ポリマーである。これらのポリマーの例には、非晶質ポリエステル Kao C(商標)(Kao Corp.) 、Carboset 526(商標)(BF Goodrich Specialty Chemicals) などのアクリル系ポリマー、または SAA 100(商標)(Lyondell Chemical Co.) などのスチレンアリルアルコールコポリマーが含まれる。
【0013】
本発明において用いられる複合粒子を限定凝集法を使用して調製する場合には、重合して上述の軟化点を有するコアポリマーを形成するように、モノマーおよび重合条件を選択すべきである。好適なモノマーには、スチレン、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチルなどのスチレン系モノマーおよびビニルモノマーが含まれる。スチレン、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルなどのモノマーの混合物を重合させて、所望のポリマー特性を得ることもできる。
【0014】
本発明におけるシェル材料として使用することができる好適なコロイド状無機粒子には、 Ludox(商標)としてDuPontから入手可能なコロイド状シリカおよび改質コロイド状シリカ、並びにDispal(商標)(Condea Corp.)などのコロイド状アルミナが含まれる。これらのコロイド状無機粒子の粒径は、5〜 100nmの範囲にわたっていてもよい。
【0015】
本発明において使用されるコアシェル粒子のシェルを、最初のコアシェル粒子の形成後にさらに改質して、粒子上の表面電荷などの多数の粒子特性を変更することができる。上記上部層がインク保持性であるべき場合には、粒子上の表面電荷が着色剤の電荷とは反対であるべきである。例えば、アニオン性または負の染料が着色剤である場合、この染料を層の中に媒染するには、粒子の電荷はカチオン性または正であるべきである。逆に、上記上部層がインク移送性であるべき場合には、粒子上の表面電荷は、中性であるか、または染料の電荷と同じであるかのいずれかにされるべきである。粒子上の表面電荷は、J. Colloid and Interface Science, 173, 406 (1995) に記載されている動電音響振幅(electrokinetic sonic amplitude)(ESA)技法によって測定することができる。
【0016】
上述の如く、上記無機コロイド状粒子のシェルの上記熱可塑性コアに対する質量比は1:5〜1:99、好ましくは1:15〜1:50である。シリカの割合(%)は、未接着のコロイド状シリカが無いように洗浄された試料において、"Activation Analysis with Neutron Generators", S. Nargolwalla and E. Przybylowicz eds., John Wiley & Sons, Inc. (1973), p. 528に記載されている、Si含有率を測定するための14 MeVの中性子放射化分析を使用して測定される。
【0017】
また、上述の如く、本発明において使用されるコアシェル粒子は、 0.5〜10μm 、好ましくは 0.9〜5μm の粒径を有する。このコアシェル粒子の粒径は、Horiba LA-920 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer (Horiba Instruments, Inc.) によって測定され、容積で重み付けをされた平均粒径である。
【0018】
負に帯電しているコロイド状シリカの接着性層のために負の表面電荷を有するコアシェル粒子は、Colloids and Surfaces, 28, (1987) 159-168 およびその中に含まれている参考文献に記載されているように、カチオン性界面活性剤の使用によって、中性またはカチオン性にさせることができる。Journal of the American Chemical Society中の上記に引用した記事に記載されているように、ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウムまたはカチオン性コロイド状ラテックス粒子などの水溶性カチオン性ポリマーを使用して、コアシェル粒子の表面電荷を変更することができる。カチオン性に帯電しているコロイド状シリカの接着性層のためにカチオン性の表面電荷を有するコアシェル粒子は、同様の手順によって、アニオン性にさせることができる。さらに、Chemtech, 7, 766-778 (1977) に記載されているように、種々のシランを用いる処理によって、シリカのシェルの表面電荷および湿潤特性を変更することができる。
【0019】
本発明の記録要素において有用な高分子バインダーは、特に限定されない。フィルム形成剤であり、上述の粒子を結合して、コーティング上に凝集層を形成するように機能するならば、いずれのポリマーまたはポリマーの混合物も有用である。このようなバインダーの例には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ (2-エチル -2-オキサゾリン) などの水溶性ポリマー、メチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、エマルションポリマーおよびエチレン−塩化ビニルなどのコポリマー、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、酢酸ビニル−塩化ビニル、およびポリウレタンおよびポリウレタンアロイなどの水性ポリマー分散液が含まれる。
【0020】
上述の如く、上記粒子対バインダーの比は95:5〜50:50、好ましくは90:10〜80:20である。粒子対バインダーの比が上述の範囲より高いと、層の結合力がまったく無くなるであろう。粒子対バインダーの比が上述の範囲より低いと、層の多孔性が、速い乾燥時間を提供するのに十分なものではなくなるであろう。
【0021】
上記ベース層(複数であってもよい)は、一般に、1μm 〜50μm の厚みを有し、上記頂部層は、通常は、2μm 〜50μm の厚みを有するであろう。
【0022】
上記最上部層がインク画像保持性である場合には、上記ベース層は、インク溶媒を吸収するための溜め層またはスポンジ層として作用するであろう。上記最上部層がインク移送性である場合には、上記ベース層は、インク画像を保持するのに、さらに役立つであろう。ベース層は、親水性および膨潤性または多孔質であってもよい。一般に、ベース層は、1g/m2〜50g/m2、好ましくは 5.0g/m2〜30g/m2の量で存在する。好適な親水性材料には、ゼラチン、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、酸化ゼラチン、キトサン、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、改質ポリビニルアルコール、スルホン化ポリエステル、部分的に加水分解されたポリ (酢酸ビニル/ビニルアルコール) 、ポリアクリル酸、ポリ1-ビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ (2-アクリルアミド -2-メタンスルホン酸) 、ポリアクリルアミドまたはそれらの混合物が含まれる。これらのポリマーと疎水性モノマーとのコポリマーを使用してもよい。ベース層のための好適な多孔質材料には、例えば、高分子バインダー(上述のものなどの親水性バインダーを含む)中のシリカまたはアルミナが含まれる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、上記ベース層はゼラチンを含んでなり、15%以下の別の親水性材料(例えばポリ1-ビニルピロリドン)を有していてもよい。もう1つの好ましい態様において、上記ベース層は、架橋ポリビニルアルコールバインダー中の多孔質ヒュームドアルミナである。
【0024】
本発明のインクジェット記録要素において使用される支持体は、不透明、半透明、または透明であってもよい。例えば、普通紙、樹脂コート紙、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリエステルジアセテート)、ポリカーボネート樹脂、弗素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)を含む種々のプラスチック、金属箔、種々のガラス材料などを使用してもよい。好ましい態様において、支持体は樹脂コート紙である。本発明において用いられる支持体の厚みは、12〜 500μm 、好ましくは75〜 300μm とすることができる。
【0025】
望まれる場合には、上記ベース層の支持体に対する接着性を改良するために、ベース層または溶媒吸収層を支持体に適用する前に、支持体の表面にコロナ放電処理を施してもよい。
【0026】
上記画像記録要素は、他の画像記録製品または画像記録装置の駆動機構もしくは移送機構と接触する場合があるので、例えば界面活性剤、滑剤、艶消し粒子などの添加剤を、それらが重要な性質を低下させない範囲で添加してもよい。さらに、本発明の頂部層が粘度調整剤または媒染剤などの他の添加剤を含有していてもよい。
【0027】
上記ベース層および上記頂部層を含む、上述の各層は、従来の塗布手段によって、この技術分野において一般的に使用されている支持体材料上に塗布することができる。塗布方法には、線巻きロッドコーティング、スロットコーティング、スライドホッパーコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティングなどが含まれるけれども、これらに限定されるものではない。これらの方法の中には、両方の層を同時に塗布することができるものもあり、このような方法は、製造の経済性の観点から好ましい。
【0028】
本発明の記録要素を像形成させるのに使用されるインクジェットインクは当該技術分野において周知である。インクジェット印刷において概して使用されるインク組成物は、溶媒またはキャリア液体、染料または顔料、湿潤剤、有機溶媒、洗浄剤、増粘剤、防腐剤などを含んでなる液体組成物である。この溶媒またはキャリア液体は単なる水であってもよく、または多価アルコールなどの他の水混和性溶媒と混合された水であってもよい。多価アルコールなどの有機材料が主たるキャリアまたは溶媒液体であるインクを使用してもよい。特に有用なものは、水と多価アルコールとの混合溶媒である。このような組成物において使用される染料は、概して、水溶性の直接染料または酸性タイプの染料である。このような液体組成物は、例えば、米国特許第 4,381,946号、同 4,239,543号、および同 4,781,758号の各明細書を含む従来技術に詳細に記載されている。
【0029】
以下の例により、本発明をさらに説明する。
【0030】
【実施例】
例1
本発明のコアシェル粒子の調製
1)上記蒸発限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリエステルのコアを有する3μ m の粒子
225gの酢酸エチルに、25gの Kao C(商標)ポリエステル樹脂を添加し、撹拌して溶液とした。別個に、 375gのpH4の緩衝液、21gのLudox TM50(商標)コロイド状シリカ(50質量%シリカ、DuPont Corp.)、および 4.5gの10%ポリ (アジピン酸-co-メチルアミノエタノール) の水溶液を調製した。この水性相を Silversonミキサーに入れ、このミキサーをつけたままで、上記有機相を添加し、そして 6,000回転/分で1分間乳化させた。次に、このエマルションを Microfluidizer(Microfluidics Manufacturing 110T 型)に通して、エマルションの液滴の粒径をさらに小さくした。酢酸エチルを蒸発させた後に、分布の狭い球状シリカ被覆ポリエステル粒子が得られた(μ= 3.0±0.36)。凍結破断試料の走査型電子顕微鏡法により、これらの粒子の表面が接着性コロイド状シリカのシェルによって完全に覆われていることが示された。未接着のコロイド状シリカが無いように洗浄された試料の中性子放射化分析により、接着されたシリカのシェルの質量分率が 3.9%であることが示された。ゆえに、このスラリーの固形分は、73%のコアシェル粒子および27%の未接着シリカを含んでなっていた。十分に水をデカンテーションして、固形分30%のスラリーを得た。
【0031】
2)上記限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリスチレンのコアを有する2μ m の粒子
333gのスチレンに、10gの 2,2'-アゾビス (2,4-ジメチルバレロニトリル) 、 Vazo 52(商標)(DuPont Corp.)を添加し、この Vazo 52(商標)が溶解するまで撹拌した。別個に、 10.43gのフタル酸水素カリウム、4gの 0.1モル/L( 0.1N)のHCl、 7.2gのポリ (アジピン酸-co-メチルアミノエタノール) および91.5gのLudox TM(商標)コロイド状シリカを1000gの蒸留水に添加することによって水性相を調製し、15分間撹拌した。この撹拌されている(プロペラ撹拌機)水性相に上記有機相を添加し、15分間撹拌した。得られた分散液を20.7 MPaにおいてGaulinホモジナイザーに2回通し、次に54℃において16時間加熱した。未接着のコロイド状シリカが無いように洗浄された試料の中性子放射化分析により、接着されたシリカのシェルの質量分率が 6.6%であることが示された。ゆえに、このスラリーの固形分は、94%のコアシェル粒子および6%の未接着シリカを含んでなっていた。固形分を調整して、固形分27%のスラリーとした。このようにして、分布の狭いシリカ被覆ポリスチレン粒子を得た(μ= 2.0±0.36μm )。
【0032】
3)上記蒸発限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリエステルのコアを有する6μ m の粒子
水性相が、 375gのpH4の緩衝液、 5.0gのLudox TM(商標)コロイド状シリカ、および 1.1gの10%ポリ (アジピン酸-co-メチルアミノエタノール) を有していたことを除き、上記1)と同じ手順を使用した。酢酸エチルを蒸発させた後に、分布の狭いシリカ被覆ポリエステル粒子が得られた(μ= 6.4±0.36)。未接着のコロイド状シリカが無いように洗浄された試料の中性子放射化分析により、接着されたシリカのシェルの質量分率が 2.1%であることが示された。ゆえに、このスラリーの固形分は、93%のコアシェル粒子および7%の未接着シリカを含んでなっていた。十分に水をデカンテーションして、固形分30%のスラリーを得た。
【0033】
4)上記限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリスチレンのコア並びにコロイド状カチオン性ラテックスで改質された表面電荷を有する2μ m の粒子
上記2)と同様に調製した固形分27%のスラリー15.1gに、固形分15%の、ジビニルベンゼン-co-塩化N-ビニルベンジル -N,N,N-トリメチルアンモニウムの 100nmのカチオン性コロイド状ラテックス分散液 1.7gを添加した。ESA滴定により、固形分1gあたりに 0.033gの15%ラテックスの当量点が示された。
【0034】
5)上記限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリスチレンのコア並びにカチオン性水溶性ポリマーで改質された表面電荷を有する2μ m の粒子
上記2)と同様に調製した固形分27%のスラリー15.1gに、ポリ (塩化ジアリルジメチルアンモニウム) (Aldrich Corp.) の 0.2%水溶液 1.7gを添加した。ESA滴定により、固形分1gあたりに0.05gの 0.2%ポリマーの当量点が示された。
【0035】
6)上記限定凝集法によって調製されるコロイド状シリカのシェルおよびポリスチレンのコア並びにシランで改質された表面を有する2μ m の粒子
上記2)と同様に調製した固形分27%のスラリー20gに、0.27gの N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン (United Chemical Technologies, Inc.) を添加し、この混合物を終夜撹拌した。
【0036】
対照標準コロイド状シリカ粒子C−1
市販のLudox TM50(商標)(22nmのシリカ粒子の50%分散液)を使用した。
【0037】
1μ m の対照標準シリカゲル粒子C−2
市販の SyloJet(商標)710A(1μm のシリカゲル粒子の固形分20%のスラリー)を使用した。
【0038】
6μ m の対照標準シリカゲル粒子C−3
市販の Gasil(商標)23(6μm のシリカ)(Crossfield Limited)を十分な水に添加して、固形分18%のスラリーとした。
【0039】
本発明の溶液1
9.0gの上記固形分30%のスラリー1に、9.63gの水および1.37gの Witcobond(商標)W125ポリウレタン (Witco Corp.)を添加して、3μm のコアシェル粒子80部対ポリウレタンバインダー20部の固形分比を有する、固形分16%のスラリーとした。
【0040】
本発明の溶液2
18.2gの上記固形分27%のスラリー2に、 0.1gの水および1.72gの Airflex(商標)4500エチレン−塩化ビニルエマルション (Air Products Corp.) エマルションを添加して、2μm のコアシェル粒子84部対バインダー16部の固形分比を有する、固形分30%のスラリーとした。
【0041】
本発明の溶液3
10.0gの上記固形分27%のスラリー2に、1.37gの Witcobond(商標)W320ポリウレタン (Witco Corp.)を添加して、2μm のコアシェル粒子84部対バインダー16部の固形分比を有する、固形分28%のスラリーとした。
【0042】
本発明の溶液4
17.4gの脱イオン水に、12gの上記固形分30%のスラリー3、20.2gの10%ポリビニルアルコール溶液 (Gohsenol(商標)Z200 Nippon Gohsei Corp.) 、 8.6gの10%ゼラチン溶液、1.55gのラテックスポリマー、 Rhoplex(商標)B-60A (Rohm and Haas Co.) および 0.3gの10%界面活性剤溶液 (Olin 10G(商標)) を添加して、6μm のコアシェル粒子48部対バインダー52部の固形分比を有する、固形分12%のスラリーとした。
【0043】
本発明の溶液5
本発明の表面電荷改質粒子4)の水性スラリーに、2.19gの Witcobond(商標)215 ポリウレタンを添加して、固形分27%のスラリーとした。
【0044】
本発明の溶液6
本発明の表面電荷改質粒子5)の水性スラリーに、2.19gの Witcobond(商標)215 ポリウレタンを添加して、固形分27%のスラリーとした。
【0045】
本発明の溶液7
本発明のシラン改質粒子6)の水性スラリー20.3gに、さらに 7.9gの脱イオン水を添加した。別個に、10gの脱イオン水を2.74gの Witcobond(商標)215 ポリウレタンに添加し、次に、この混合物を撹拌されている上記粒子に添加して、16%のスラリーとした。
【0046】
対照標準溶液C−1
9.81gの脱イオン水に、 2.5gの1%フタル酸水素カリウム、 0.8gの0.01モル/L(0.01N)のHCl、5.22gのC−1、Ludox TM50(商標)コロイド状シリカ、および 1.1gの10%ポリ (アジピン酸-co-メチルアミノエタノール) を添加した。次に、この撹拌されている懸濁液に1.37gのポリウレタン、 Witcobond(商標)215 を添加して、22nmのコロイド状シリカ粒子85部対ポリウレタンバインダー15部の固形分比を有する、固形分16%のスラリーとした。
【0047】
対照標準溶液C−2
9.41gの脱イオン水に、 2.5gの1%フタル酸水素カリウム、 0.8gの0.01モル/L(0.01N)のHCl、3.89gのC−1、Ludox TM50(商標)コロイド状シリカ、および0.83gの10%ポリ (アジピン酸-co-メチルアミノエタノール) を添加した。次に、この撹拌されている懸濁液に3.37gのポリウレタン、 Witcobond(商標)215 を添加して、22nmのコロイド状シリカ粒子63部対ポリウレタンバインダー37部の固形分比を有する、固形分16%のスラリーとした。
【0048】
対照標準溶液C−3
11.4gの脱イオン水に、18gの、対照標準粒子C−2の固形分20%のスラリー、1.55gのラテックスポリマー、 Rhoplex(商標)B-60A (Rohm and Haas Co.) 、20.2gの10%ポリビニルアルコール溶液、 Gohsenol Z200(商標)、 8.6gのゼラチン溶液および 0.3gの10%界面活性剤溶液 (Olin 10G(商標)) を添加して、1μm のシリカゲル粒子50部対バインダー50部の固形分比を有する、固形分12%のスラリーとした。
【0049】
対照標準溶液C−4
18.75gの脱イオン水に、40.0gの、対照標準粒子C−3の固形分18%のスラリー、40.4gの10%ポリビニルアルコール溶液、 Gohsenol Z200(商標)、17.2gのゼラチン溶液、3.10gのラテックスポリマー、 Rhoplex(商標)B-60A 、および 0.6gの10%界面活性剤溶液 (Olin 10G(商標)) を添加して、6μm のシリカゲル粒子50部対バインダー50部の固形分比を有する、固形分12%のスラリーとした。
【0050】
ベース層の調製
ポリエチレン樹脂コート紙支持体にコロナ放電処理を施した。次に、この支持体に、40℃において、以下のa)、b)、またはc)のいずれかのようにして、塗布した。
a) 6.7%のゼラチン、および 1.2%のポリビニルピロリドン、K90 (International Specialty Products Co.)を含んでなる水溶液を塗布して、 8.6g/m2のベース層を提供するか、
b) 3.0%のゼラチン、0.60%のポリビニルピロリドン、K90 (International Specialty Products Co.)および0.40%の、ジビニルベンゼン-co-塩化N-ビニルベンジル -N,N,N-トリメチルアンモニウムの 100nmのカチオン性コロイド状ラテックス分散液を含んでなる水溶液を塗布して、 4.3g/m2のベース層を提供するか、または
c)87%のヒュームドアルミナ、9%のポリビニルアルコール、および4%のジヒドロキシジオキサン架橋剤を含んでなる、38μm の第1下層を塗布し、この第1下層に、87%のヒュームドアルミナ、8%の、ジビニルベンゼン-co-塩化N-ビニルベンジル -N,N,N-トリメチルアンモニウムの 100nmのコロイド状ラテックス分散液、6%のポリビニルアルコール、および1%の Zonyl(商標)FSN 界面活性剤 (DuPont Corp.) を含んでなる、2μm の第2層を塗布する。
【0051】
上記溶液を、 120μm の湿潤レイダウンとなるように較正された線巻きロッドを使用して、上記下層の上に塗布し、風乾させて、本発明の要素1〜8および対照標準要素1〜3を形成させた。次に、マイクロ−TRI−光沢反射率計 (BYK Gardener Corp.) を使用して、60°光沢を測定した。
【0052】
融着
上記コーティングを、 150℃および 4.2kg/cm2において、以下のa)またはb)のいずれかに接触させて、熱ニップ中で融着させた。
a)45.7cm/分において、75μm のポリイミドフィルムシートKapton(商標)(DuPont)、または
b)63.5cm/分において、ゾル−ゲル塗布ポリイミドKapton(商標)(DuPont)ベルト。
【0053】
室温まで冷却した後に、上記融着複合材料を引き離し、60°光沢を再び測定した。以下の結果が得られた。
【0054】
【表1】
【0055】
上記結果は、本発明の要素が、対照標準要素と比較して、高い光沢を提供したことを示している。
【0056】
例2−層の亀裂およびインク受容性
上記要素に、Hewlett-Packard Photosmart(商標)プリンターを用いて、 100%のインク付着量の一次色(primary color) および二次色(secondary color) の各々についての9mm×8mmの長方形のテストパッチを印刷した。次に、これらの印刷された要素を、以下の評価基準に従って、インク吸収性について検査した。
A:上記長方形のパターンの変形が無く、上記パターンの鮮鋭な端部が維持されている。
B:上記長方形のパターンが僅かに丸くなり、端部が滑らかである。
C:上記長方形のパターンの拡がりおよび変形が大きく、端部が不揃いである。
D:表面のインクがパッドリング (puddling) を生じている。
良好なインク吸収性のためには、AまたはBの評価が必要である。
【0057】
以下の基準に従って、8倍のルーペを用いて層の表面を観察することによって、上記印刷要素の印刷領域および未印刷領域の両方において、層の結合性を評価した。
A:亀裂が観察されない。
B:若干の亀裂が観察されるけれども、画質に実用上の問題は無い。
C:亀裂が観察され、画質に問題が有るけれども、肉眼では亀裂は観察されない。
D:肉眼で亀裂が観察され、画質に重大な問題が有る。
良好な層の結合性のためには、AまたはBの評価が必要である。以下の結果が得られた。
【0058】
【表2】
【0059】
上記結果は、本発明の要素が、対照標準と比較して、良好な層の結合性およびインク吸収性を有していたことを示している。具体的には、酷い亀裂を生ずる対照標準要素C−1と同じ質量分率のバインダーを有する要素1および2において、亀裂が見出されなかった。より高い質量分率のバインダーを有する対照標準要素C−2は亀裂を生じなかったけれども、インク受容性が非常に乏しかった。
【0060】
本発明の他の好ましい態様を、請求項との関連において、次に記載する。
【0061】
[1] 親水性材料または多孔質材料を含む少なくとも1層のベース層と、インク画像の保持または移送のいずれかが可能な多孔質頂部層とを、記載されている順序で担持している支持体を含んでなるインクジェット記録要素であって、前記多孔質頂部層が高分子バインダーと熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子とを含んでなり、前記粒子対バインダーの比が95:5〜50:50であり、そして前記熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子の各々が、
a)無機コロイド状粒子のシェル、および
b)熱可塑性ポリマーのコア
を有し、前記粒子が 0.5μm 〜10μm の粒径を有し、前記高分子コアが50℃を超える軟化点を有し、そして前記無機コロイド状粒子のシェルの前記熱可塑性コアに対する質量比が1:5〜1:99である、インクジェット記録要素。
【0062】
[2] 前記ベース層が、ゼラチン、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、酸化ゼラチン、キトサン、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、改質ポリビニルアルコール、スルホン化ポリエステル、部分的に加水分解されたポリ (酢酸ビニル/ビニルアルコール) 、ポリアクリル酸、ポリ1-ビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ (2-アクリルアミド -2-メタンスルホン酸) 、ポリアクリルアミド、シリカ、アルミナ、またはそれらの混合物を含んでなる、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0063】
[3] 前記ベース層が、ゼラチンとポリビニルピロリドンとの混合物を含んでなる、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0064】
[4] 前記ベース層が、ヒュームドアルミナと架橋ポリビニルアルコールとの混合物を含んでなる、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0065】
[5] 前記ベース層が1μm 〜20μm の厚みを有し、前記頂部層が2μm 〜50μm の厚みを有する、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0066】
[6] 前記支持体が樹脂コート紙である、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0067】
[7] 前記高分子バインダーが、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ (2-エチル -2-オキサゾリン) 、メチルセルロース、エチレンと塩化ビニルとのコポリマー、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマーまたはポリウレタンである、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0068】
[8] 前記高分子バインダーがポリウレタンを含んでなる、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0069】
[9] 前記熱可塑性ポリマーが、ポリエステル、アクリル系ポリマーまたはスチレン系ポリマーである、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0070】
[10] 前記無機コロイド状粒子が、コロイド状シリカまたはコロイド状アルミナである、[1]に記載のインクジェット記録要素。
【0071】
【発明の効果】
本発明の使用により、高い光沢を有し、亀裂を生じず、かつ良好なインク吸収性を有するインクジェット記録要素が提供される。
Claims (2)
- 親水性材料または多孔質材料を含む少なくとも1層のベース層と、インク画像の保持または移送のいずれかが可能な多孔質頂部層とを、記載されている順序で担持している支持体を含んでなるインクジェット記録要素であって、前記多孔質頂部層が高分子バインダーと熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子とを含んでなり、前記粒子対バインダーの比が95:5〜50:50であり、そして前記熱的コンプライアンスを有するコアシェル粒子の各々が、
a)無機コロイド状粒子のシェル、および
b)熱可塑性ポリマーのコアを有し、前記粒子が 0.5μm 〜10μm の粒径を有し、前記高分子コアが50℃を超える軟化点を有し、そして前記無機コロイド状粒子のシェルの前記熱可塑性コアに対する質量比が1:5〜1:99であり、
前記無機コロイド状粒子が、コロイド状シリカ又はコロイド状アルミナを含む
、インクジェット記録要素。 - 前記無機コロイド状粒子が、コロイド状シリカを含む請求1に記載のインクジェット記録要素。
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