以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両システムの概略構成図である。
同図に示すように、車両システムは、エンジン1と、このエンジン1に接続された変速機2と、エンジン1から変速機2を介して伝達される動力により駆動される駆動輪3と、エンジン1から駆動輪3への動力の伝達、遮断を行う後記クラッチ204(図4参照)からなる動力伝達遮断機構と、始動時にエンジン1を駆動するためのスタータモータ4aを有するスタータユニット(電動駆動装置)4とを備えている。上記変速機2は、クラッチ204を介してエンジン1から伝えられる動力を上記駆動輪に伝達可能で、かつ、中立段と走行段とに切換可能となっており、その具体的構造は後に詳述する。
さらに車両システムは、上記エンジン1およびスタータユニット4等を制御する制御器としてのパワートレイン制御モジュール(PCM:Powertrain Control Module)100と、ステアリングユニット(EHPAS:Electro-Hydraulic Power-Assisted Steering Unit)111を制御するステアリング制御モジュール110と、車体に装備される各種のコンビニエンススイッチ121〜124および空調ユニット125等の電装品を制御する車体制御モジュール(BCM:Body Control Module)120とを備えている。なお、各モジュール100,110,120は、論理的な構成であり、現実には一つのシステムで複数のモジュールを構築してもよく、或いは、一つのモジュールを複数のシステムで構築してもよい。
これら各モジュールのうち、少なくともパワートレイン制御モジュール100は、全体として、所定の自動停止条件が成立したときにエンジン1を自動停止させ、停止後、所定の再始動条件が成立したときに、エンジン1を自動的に再始動させる制御を行う。
また、車体制御モジュール120は、車体のボンネットの開閉に関する信号を出力するボンネットスイッチ121、ライトの点滅に関する信号を出力するライトスイッチ122、ドアの開閉状態に関する信号を出力するドアスイッチ123、ワイパーの動作に関する信号を出力するワイパスイッチ124等からの信号を受け、パワートレイン制御モジュール100と協働して車両を制御できるようになっている。
車両の車室に設けられるインストゥルメントパネルには、表示ユニット130が装備されている。表示ユニット130には、システムに不具合が発生した際、当該システムの不具合を表示するワーニング報知部131が設けられている。図では省略されているが、ワーニング報知部131は、例えば、GUI(Graphical User Interface)を表示する液晶パネルや、音声等を出力するスピーカ等で構成されており、各モジュール100,110,120の制御に基づき、オイル切れ等、各種のワーニング(警告)を運転者に報知することができるようになっている。
車室のダッシュロアパネル5には、運転者が車両を操舵するステアリングホイール6、クラッチを操作するクラッチペダルユニット7のクラッチペダル7a、ブレーキユニット8のブレーキペダル8a、アクセル操作のためのアクセルペダル(図示省略)等が設けられている。
また、この車両システムにおける電力供給システムは、車室から操作されるイグニションキースイッチ140と、複数のリレー145〜147を組み込んで形成される給電ライン141と、この給電ラインを介して種々の電気負荷に電力を供給するメインバッテリ142と、電気負荷のうち、特にスタータユニット4のスタータモータ4aを駆動するための電力を供給する始動用バッテリ143とを含んでいる。
イグニションキースイッチ140は、入力接点、OFF接点、出力接点、およびスタータ始動接点を有しており、このイグニションキースイッチ140の入力接点がメインバッテリ142の出力端子と接続されている。
イグニションキースイッチ140にはa接点(ノーマルオープン)のメインリレー145が接続されている。このメインリレー145は、パワートレイン制御モジュール100の制御によってON/OFFされる構成になっており、このメインリレー145によって、システム全体のフェイルセーフ機能が確保されている。
また、始動用バッテリ143は、メインバッテリ142よりも小容量で、スタータユニット4を専用に駆動するバッテリである。この始動用バッテリ143は、a接点のスタータリレー146を介してスタータユニット4に接続され、電力供給が可能となっている。さらに始動用バッテリ143は、a接点のチャージリレー147を介してオルタネータ23とも接続されている。これにより、チャージリレー147がONのとき、オルタネータ23で発電された電気が始動用バッテリ143にも充電される。
このような2バッテリシステムにすると、スタータユニット4を除く電気負荷には、比較的容量の高いメインバッテリ142から安定した電圧で電力を供給し、スタータユニット4には専用の始動用バッテリ143から電力を供給することにより、再始動時にスタータユニット4を駆動して始動用バッテリ143の電圧が一時的に低下しても、その影響が、スタータユニット4を除く電気負荷に可及的に及ばないようにすることができる。
上記スタータリレー146やチャージリレー147は、図略のドライバを介してパワートレイン制御モジュール100の制御により開閉されるようになっている。
図2および図3は、本発明の実施形態に係る車両システムのうちのエンジンおよびこれに付属する装置の構造を示すものであり、図2はエンジンの断面を主に示す概略構成図、図3はエンジンの平面を主に示す概略構成図である。
これらの図に示すエンジン1は4サイクル火花点火式エンジンであって、動力を出力するクランクシャフト11と、クランクシャフト11を収容するシリンダブロック12と、シリンダブロック12の上部に載置されて、シリンダブロック12とともにエンジン1の筐体を構成するシリンダヘッド13と、シリンダブロック12とシリンダヘッド13とに形成される4つの気筒15A〜15D(図3参照)とを備えている。
各気筒15A〜15Dの内部には、図略のコネクティングロッドによってクランクシャフト11に連結されたピストン16が嵌挿されることにより、当該ピストン16の上方に燃焼室18が形成されている。各気筒15A〜15Dに設けられたピストン16は、所定の位相差をもってクランクシャフト11の回転に伴い上下運動を行うように構成されている。
シリンダヘッド13には、気筒15A〜15Dの燃焼室18毎に点火プラグ19が設けられている。この点火プラグ19には、パワートレイン制御モジュール100からの制御信号を受けて点火プラグ19を作動する点火装置20が接続されている。
さらにシリンダヘッド13には、当該燃焼室18の側方に配置され、燃焼室18内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁21が設けられている。この燃料噴射弁21にも、パワートレイン制御モジュール100から制御信号が出力されている。
エンジン1には、図1および図2に示すように、タイミングベルト等によりクランクシャフト11に連結されたオルタネータ23が付設されている。このオルタネータ23は、エンジンにより駆動され、パワートレイン制御モジュール100からの制御信号に基づき、車両の電気負荷およびバッテリ142、143(図1参照)の電圧値等に応じて発電量が制御されるようになっている。
エンジン1に対し、クランクシャフト11に駆動力を付与してエンジン1を始動させるスタータユニット4が設けられている。このスタータユニット4は、スタータモータ4a(電気モータ)とピニオンギア4bとを有している。ピニオンギア4bの回転軸は、スタータモータ4aの出力軸と同軸で、その回転軸に沿って往復移動する。またクランクシャフト11には、図略のフライホイールと、このフライホイールに固定されたリングギア26が、回転中心に対して同心に設けられている。そして、このスタータユニット4を用いてエンジンを始動する場合には、ピニオンギア4bが所定の噛合位置に移動して、リングギア26に噛合することにより、クランクシャフト11が回転駆動されるようになっている。
また、各気筒15A〜15Dの上部には、燃焼室18に向かって開口する吸気ポート30および排気ポート31が設けられている。そして、これらのポート30、31と燃焼室18との連結部分には、吸気バルブ32および排気バルブ33がそれぞれ装備されている。吸気ポート30には吸気通路35が、排気ポート31には排気通路40が、それぞれ接続されている。吸気通路35は、下流側の気筒別の分岐吸気通路35aと、この各分岐吸気通路35aの上流端が連通するサージタンク35bと、このサージタンク35bよりも上流側の共通吸気通路35cとを有している。この共通吸気通路35cには、各気筒15A〜15Dに流入する空気量を調整可能なスロットル弁36が設けられている。このスロットル弁36は、パワートレイン制御モジュールからの制御信号を受けるアクチュエータ37により、電気的に駆動されるようになっている。
他方、排気通路40には、排気を浄化する触媒コンバータ41が設けられている。
さらにエンジンには、パワートレイン制御モジュール100による制御に必要な各種センサが設けられている。例えばクランクシャフト11の回転角(クランク角度CA)を検出するクランク角センサ51、図略の吸気側カムシャフトの位相を検出するカム位相センサ52、冷却水温度を検出する水温センサ53、スロットル弁36の開度を検出するスロットル開度センサ54、スロットル弁36の上流側に設けられ、吸気流量を検出するエアフローセンサ55、スロットル弁36の下流側に設けられ、吸気圧力を検出する吸気圧センサ56等が設けられている。また、車両には、当該車両の走行速度を検出する車速センサ61、加速度を検出する加速度センサ62、アクセルペダルの踏み込み量に基づくアクセル開度を検出するアクセル開度センサ63と、ブレーキユニット8に設けられたマスタバック負圧センサ64(図1参照)等が設けられている。これらセンサの出力信号は、パワートレイン制御モジュール100に入力されるように構成されている。
次に、変速機2およびクラッチ等の構造を、図4を参照しつつ説明する。
この変速機2は、手動変速機であって、エンジン1に連結されるギアボックス201内にギア列205を備えている。このギア列205とクランクシャフト11との間にクラッチ204が組み込まれている。
クラッチ204は、エンジン1のクランクシャフト11とギア列205の入力軸202とを断続するもので、クラッチオンでクランクシャフト11から入力軸202への動力伝達がなされる状態(動力伝達状態)、クラッチオフで動力伝達が遮断される状態(動力遮断状態)となる。
変速機2のギア列205は、中立段(ニュートラル)と走行段(ニュートラルを除く変速段)とに切替可能であり、走行段はさらに複数の変速段(例えば前進6段、後退1段)
を選択できるようになっている。そして、入力軸202からの動力を、複数の変速段から択一選択されるギアの組合せによって減速または増速させたり逆回転させたりして出力軸206に出力する。ニュートラルが選択されると、何れの変速段も有効とならず、クラッチ204がオンであっても入力軸202からの動力が出力軸206に伝達されない。
ギア列205はリンク機構207を介してシフトレバー208と連動している。そして、クラッチ204がオフのとき、運転者がシフトレバー208を手動操作することにより、リンク機構207によってギア列205の変速位置の切換えが行われるように構成されている。
リンク機構207の近傍にはニュートラルスイッチ209が設けられている。ニュートラルスイッチ209は、変速位置がニュートラル位置(中立段)にあることを検知する。
クラッチペダルユニット7は、運転者の足による操作によってクラッチ204を断続する機構であり、操作部であるクラッチペダル7aと、ダッシュロアパネル5に固定されたブラケット212にクラッチペダル7aの上端部を片持ち状に軸支する支軸213と、クラッチペダル7aによって駆動されるマスターシリンダ214とを有している。
クラッチペダル7aの中央部には、ペダルブラケット212との間に介装されたばね機構216が設けられており、このばね機構216によって、クラッチペダル7aは、図において反時計回りに付勢されている。さらに、クラッチペダル7aには、ピン217を介してマスターシリンダ214のロッド218が連結されている。これにより、運転者の足によって操作されたクラッチペダル7aの回動が往復運動に変換されてマスターシリンダ214に伝達され、その踏み込み量に応じた油圧によってクラッチ204が断続される。
また、クラッチペダル7aの操作位置を検出する複数の検出器が設けられ、当実施形態ではクラッチストロークセンサ221、クラッチスイッチ222およびクラッチカットスイッチ223の3つの検出器が設けられている。そして、これらの検出器により、操作位置検出手段が構成されている。
これらの検出器を具体的に説明すると、クラッチストロークセンサ221は、マスターシリンダ214に付設され、マスターシリンダ214のロッド218の変位量を検出することにより、クラッチペダル7aの踏み込み量を検出するようになっている。また、ペダルブラケット212にはクラッチペダル7aのクラッチストロークを規制するストッパ219、220が設けられ、これらのストッパ219にクラッチスイッチ222およびクラッチカットスイッチ223が設けられている。クラッチスイッチ222は、クラッチペダル7aがストッパ219から離れたときにオンとなり、クラッチカットスイッチ223は、クラッチペダル7aがストッパ220に当接したときにオンとなる。各スイッチ222、223は、クラッチペダル7aが回動するクラッチストロークの始端と終端に対応する位置にそれぞれ設けられている。
次に、図2を参照して、パワートレイン制御モジュール100の構成を具体的に説明する。
パワートレイン制御モジュール100は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェースおよびこれらを接続するバスを有するマイクロプロセッサで構成されている。
パワートレイン制御モジュール100には、入力要素としての各種センサ並びに各種スイッチが直接または間接的に接続されている。またパワートレイン制御モジュール100には、出力要素としての制御対象(点火装置20、燃料噴射弁21、スロットル弁36、オルタネータ23を含む各種電気負荷、スタータユニット4等)に対して制御信号を出力する。
パワートレイン制御モジュール100は、運転状態判定部101、停止/再始動条件判定部102、燃焼制御部103、自動停止/再始動制御部104、スタータ制御部105、クラッチセンサ類診断部106および異常時制御部107を論理的に構成している。
運転状態判定部101は、各種センサ、スイッチ等の検出値に基づき、車両や車両に搭載されたエンジン1の運転状態を判定するものである。
停止/再始動条件判定部102は、機能的には、運転状態判定部101と同様に(或いは協働して)各種センサ、スイッチ等の検出値に基づき、エンジンが作動しているときに所定の自動停止条件が成立したかどうかを判定するとともに、自動停止後、所定の再始動条件が成立したかどうかを判定するものである。この停止/再始動条件判定部102では、例えば、変速機2がニュートラル位置(中立段)、クラッチ204がオン(クラッチペダルが踏み込まれていない状態)になるとともに、車速が所定値以下であること、ブレーキが操作されていること、水温が所定温度(例えば80°C)以上であること、空調ユニット125が作動していないこと等の条件が全て成立したときに自動停止条件が成立したと判定する。
自動停止が行われた後の再始動条件には、クラッチ204が動力遮断状態であることが検出されること、および変速機2が中立段から走行段へ移行したことが含まれる。すなわち、クラッチ204が動力遮断状態で、かつ、変速機2が中立段から走行段へ移行したときは、運転者が発進の準備をしており、エンジン始動の要求があるので、このような条件を含む再始動条件が成立したときに再始動が行われることとする。また、空調ユニット125が作動等によってエンジン1の動力が必要となった場合にも再始動が行われる。
なお、クラッチ204のオン、オフは、クラッチストロークセンサ221、クラッチスイッチ222、クラッチカットスイッチ223の出力信号に基づいて判定し、例えば、クラッチストロークセンサが所定の自動停止条件判定用閾値より小さいこと、およびクラッチスイッチがオフであることによりクラッチのオンを判定し、またクラッチストロークセンサが所定の再始動条件判定用閾値より大きいこと、およびクラッチカットスイッチがオンであることによりクラッチのオフを判定する。
燃焼制御部103は、クランク角センサ51、カム位相センサ52、水温センサ53、エアフローセンサ55、吸気圧センサ56およびアクセル開度センサ63からの信号等に基づき、エンジン1の適正なスロットル開度(吸気量)、燃料噴射量および噴射タイミング、並びに適正点火タイミングを設定し、その制御信号を燃料噴射弁21、スロットル弁36のアクチュエータ37、点火装置20に出力する。
自動停止/再始動制御部104は、運転状態判定部101、停止/再始動条件判定部102および燃焼制御部103等と協働して、所定の自動停止条件が成立したときに、オルタネータ23、スロットル弁36のアクチュエータ37、燃料噴射弁21、点火装置20等を制御し、運転中のエンジン1を自動停止させる自動停止工程を行うとともに、所定の再始動条件が成立したときに、始動用バッテリ143からスタータユニット4に給電してエンジン1を自動的に再始動させる再始動工程を行う。こうして自動停止/再始動制御部104が、自動停止制御手段および再始動制御手段を構成している。
スタータ制御部105は、イグニションキースイッチ140のキー操作によるキー始動時、およびエンジン自動停止後の再始動時に、スタータリレー146に駆動信号を送ることによりスタータユニット4を駆動させる。
クラッチセンサ類診断部106は、操作位置検出手段の異常を判別する異常判別手段を構成するものであり、操作位置検出手段を構成するクラッチストロークセンサ221、クラッチスイッチ222およびクラッチカットスイッチ223(以下、これらを総称するときはクラッチセンサ類という)の各出力信号を読み込み、それらが所定の相関関係をもっているかどうかを調べることにより正常か異常(故障)かの判別を行う。このクラッチセンサ類の出力信号の関係を、図5を参照しつつ具体的に説明する。
図5は、クラッチセンサ類が正常な場合の、クラッチペダル7aの実ストローク量(実際の踏込み量)とクラッチストロークセンサ221、クラッチスイッチ222、およびクラッチカットスイッチ223の各出力との関係を示している。この図のようにクラッチストロークセンサ221は、クラッチペダル7aがペダル離し状態からキック状態(完全踏み込み状態)まで踏み込まれていくにつれ、0.5V(0%、地絡)から4.5V(100%、天絡)までリニアに変化する。
また、クラッチスイッチ222およびクラッチカットスイッチ223の出力はオン(ON)、オフ(OFF)のいずれかである。クラッチスイッチ222は、ペダル離し状態ではオフであり、実ストローク量が0%近傍の所定範囲(A〜Bの範囲)内でオフからオンに切り替わり、実ストローク量がこの範囲より大きい踏込途中状態およびキック状態ではオンとなる。また、クラッチカットスイッチは、ペダル離し状態から踏込途中状態までの範囲ではオフであり、実ストローク量が100%近傍の所定範囲(C〜Dの範囲)内でオフからオンに切り替わり、キック状態ではオンとなる。なお、A〜Bの範囲およびC〜Dの範囲は、製造誤差等でクラッチスイッチ222のオフ、オンの切り替わり点、およびクラッチカットスイッチ223のオフ、オンの切り替わり点がずれる可能性がある範囲である。
クラッチストロークセンサ221の出力をCP、クラッチスイッチ222の出力をSWCL、クラッチスイッチ222の出力をSWCUとし、クラッチペダル7aの実ストローク量A,B,C,Dに対応するクラッチストロークセンサ221の出力をCPA,CPB,CPC,CPDとすると、クラッチセンサ類が正常な場合に、それらの出力は、クラッチペダルのペダル離し状態、踏込途中状態、キック状態においてそれぞれ次のようになる。なお、CPA<CPB<CPC<CPDである。
[ペダル離し状態(実ストローク量<A)]
CP<CPA、--SWCL=OFF、SWCU=OFF
[踏込途中状態(B<実ストローク量<C)]
CPB<CP<CPC、SWCL=ON、SWCU=OFF
[キック状態(D<実ストローク量)]
CPD<CP、SWCL=ON、SWCU=ON
従って、クラッチセンサ類の出力がこのような相関関係にならない場合に、クラッチセンサ類のいずれかが故障していることを意味する。さらに、後述のように、クラッチペダル7aの上記各状態でのクラッチセンサ類の出力の関係を総合的に診断すると、クラッチセンサ類のどれが故障しているかといった故障の状況も判別できる場合がある。
このような故障の有無および故障の状況についての診断が、クラッチセンサ類診断部106によって行われる。
異常時制御部107は、クラッチセンサ類診断部106によってクラッチセンサ類のいずれかに故障が生じたことが判別された場合に、フェイルセーフ機能を満足するようにエンジンを制御するものである。具体的には、エンジン作動中に自動停止条件が成立したときであっても、故障の発生が判別されている場合には、自動停止を行わず、エンジンの作動を継続するように制御する。また、当実施形態では、エンジンの自動停止後に故障が認められたときには、後に詳述するような故障の状況に応じた始動処理を行なうようにしている。
次にパワートレイン制御モジュール100によって行われる制御を、図6〜図10のフローチャートによって説明する。
なお、これらフローチャートを説明するにあたり、フローチャート中の主な符号の意味を列記しておく。
CP:クラッチストロークセンサの出力(クラッチストローク量の検出値)
SWCL:クラッチスイッチの出力信号
SWCU:クラッチカットスイッチの出力信号
CPA〜CPD:CPの第1〜第4閾値
CPC1,CPC2:緊急始動処理時のスタータの制御のためのCPの設定値
(なお、CPA<CPB<CPC2<CPC1<CPC<CPD)
FDIAG_1:クラッチストロークセンサの出力がCP<CPAとなる第1の範囲で、少なくとも1回、診断(故障判定)を行った場合に立つ診断実行フラグ
FDIAG_2:クラッチストロークセンサの出力がCPB<CP<CPCとなる第2の範囲で、少なくとも1回、診断を行った場合に立つ診断実行フラグ
FDIAG_3:クラッチストロークセンサの出力がCPD<CPとなる第3の範囲で、少なくとも1回、診断を行った場合に立つ診断実行フラグ
FDIAG_C:上記第1〜第3の範囲の全てにおいて診断を行った場合(FDIAG_1〜FDIAG_3が全て立った場合)に立つ診断実行フラグ
FFAlL_1:クラッチスイッチ又はクラッチストロークセンサが故障の場合に立つフラグ(第1フェイルフラグ)
FFAlL_2:クラッチカットスイッチ又はクラッチストロークセンサが故障の場合に立つフラグ(第2フェイルフラグ)
FFAlL_3:クラッチスイッチとクラッチカットスイッチの両方が故障の場合に立つフラグ(第3フェイルフラグ)
FIS:自動停止によってエンジンが停止していることを示すフラグ
なお、フローチャート中の符号で上に列記したもの以外は、フローチャートの中で意味を説明する。
図6は、パワートレイン制御モジュール100のクラッチセンサ類診断部106によって行われるクラッチセンサ類の出力信号に基づいた診断(故障判定)の処理を示すフローチャートである。この処理は、エンジンの作動中や自動停止によるエンジン停止中に繰り返し行われるものである。
このフローチャートに示す処理がスタートすると、先ずクラッチセンサ類からの各種信号が読み込まれる(ステップS1)。続いて、クラッチストロークセンサ221の出力CPが第1閾値CPAより大きいか否かが判定される(ステップS2)。
この判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが第1閾値CPAより小さい第1の範囲(ペダル離し状態に対応する範囲)にある場合には、この第1の範囲についての診断実行フラグFDIAG_1が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS3,S4)。それから、クラッチスイッチ222の出力信号SWCLが調べられて、クラッチスイッチ222がオフ(SWCL=OFF)か否かが判定される(ステップS5)。
ここで、ステップS5の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第1の範囲にあるにも拘わらずクラッチスイッチ222がオンとなる場合は、クラッチスイッチ222またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチスイッチ222がオフ(SWCU=OFF)か否かが判定される(ステップS6)。そして、ステップS6の判定がYESの場合、第1フェイルフラグFFAlL_1が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS7,8)。一方、ステップS6の判定がNOの場合、第3フェイルフラグFFAlL_3が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS9,10)。
また、ステップS5の判定がYESの場合は、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチカットスイッチ223がオフ(SWCU=OFF)か否かが判定される(ステップS11)。ここで、ステップS11の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第1の範囲にあるにも拘わらずクラッチカットスイッチ223がオンとなる場合は、クラッチカットスイッチ223またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、第2フェイルフラグFFAlL_2が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS12,S13)。
このように、クラッチセンサ類の故障が認められたときは、フェイルフラグFFAlL_1〜FFAlL_3のいずれかが立てられる。次いで、クラッチストロークセンサ221の出力CPの第1範囲〜第3範囲について診断実行フラグFDIAG_1〜FDIAG_3が調べられて、これらが全て「1」になれば全範囲の診断実行フラグFDIAG_Cを立てるようにする処理(ステップS14〜S18)が行われてから、リターンする。
また、上記ステップS11の判定がYESであれば、クラッチセンサ類は正常であり、この場合は、フェイルフラグが立てられずに、ステップS14〜S18の処理のみが行なわれてから、リターンする。
上記ステップS2の判定がYESの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが第1閾値CPAより大きい場合は、ステップS19に移ってクラッチストロークセンサ221の出力CPが第2閾値CPBより大きいか否かが判定され(ステップS19)、この判定がYESであれば、さらに、クラッチストロークセンサ221の出力CPが第3閾値CPCより大きいか否かが判定される(ステップS20)。
ステップS19の判定がYES、ステップS20の判定がNOとなれば、クラッチストロークセンサ221の出力CPが第2閾値CPBと第3閾値CPCとの間の第2の範囲(踏込途中状態に対応する範囲)にあり、この場合には、第2の範囲についての診断実行フラグFDIAG_2が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS21,S22)。それから、クラッチスイッチ222の出力信号SWCLが調べられて、クラッチスイッチ222がオン(SWCL=ON)か否かが判定される(ステップS23)。
ここで、ステップS23の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第2の範囲にあるにも拘わらずクラッチスイッチ222がオフとなる場合は、クラッチスイッチ222またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチカットスイッチ223がオフ(SWCU=OFF)か否かが判定される(ステップS24)。そして、ステップS24の判定がYESの場合、前述のステップS7,S8に移って、第1フェイルフラグFFAlL_1が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。一方、ステップS24の判定がNOの場合、前述のステップS9,S10に移って、第3フェイルフラグFFAlL_3が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。
また、ステップS23の判定がYESの場合は、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチカットスイッチ223がオフ(SWCU=OFF)か否かが判定される(ステップS25)。ここで、ステップS25の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第2の範囲にあるにも拘わらずクラッチカットスイッチ223がオンとなる場合は、クラッチカットスイッチ223またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、前述のステップS12,S13に移って、第2フェイルフラグFFAlL_2が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。
また、上記ステップS25の判定がYESであれば、クラッチセンサ類は正常であり、この場合は、ステップS14〜S18を経てリターンする。
上記ステップS19の判定がYESの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが第3閾値CPCより大きい場合は、クラッチストロークセンサ221の出力CPが第4閾値CPDより大きいか否かが判定される(ステップS26)。
ステップS26の判定がYESになれば、クラッチストロークセンサ221の出力CPが第4閾値CPDより大きい第3の範囲(キック状態に対応する範囲)にあり、この場合には、第3の範囲についての診断実行フラグFDIAG_3が、既に「1」となっていればそのまま、そうでなければいなければ「1」とされる(ステップS27,S28)。それから、クラッチスイッチ222の出力信号SWCLが調べられて、クラッチスイッチ222がオン(SWCL=ON)か否かが判定される(ステップS29)。
ここで、ステップS29の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第3の範囲にあるにも拘わらずクラッチスイッチ222がオフとなる場合は、クラッチスイッチ222またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチカットスイッチ223がオン(SWCU=ON)か否かが判定される(ステップS30)。そして、ステップS30の判定がYESの場合、前述のステップS7,S8に移って、第1フェイルフラグFFAlL_1が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。一方、ステップS30の判定がNOの場合、前述のステップS9,S10に移って、第3フェイルフラグFFAlL_3が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。
また、ステップS29の判定がYESの場合は、さらにクラッチカットスイッチ223の出力信号SWCUが調べられて、クラッチカットスイッチ223がオン(SWCU=OFF)か否かが判定される(ステップS31)。ここで、ステップS31の判定がNOの場合、つまりクラッチストロークセンサ221の出力CPが上記第3の範囲にあるにも拘わらずクラッチカットスイッチ223がオフとなる場合は、クラッチカットスイッチ223またはクラッチストロークセンサ221が故障であることを意味する。この場合、前述のステップS12,S13に移って、第2フェイルフラグFFAlL_2が立てられてから、ステップS14〜S18を経てリターンする。
また、上記ステップS31の判定がYESであれば、クラッチセンサ類は正常であり、この場合は、ステップS14〜S18を経てリターンする。
図7は、エンジンの自動停止、再始動の制御およびクラッチセンサ類に異常があったときの制御を示すフローチャートである。
このフローチャートは、エンジン1が作動しているときおよび自動停止によりエンジン1が停止しているときに行われるものである。このフローチャートの処理がスタートすると、先ず前述の各種センサ、スイッチからの信号が読み込まれる(ステップS101)。続いて、アイドルストップ状態(自動停止によりエンジンが停止している状態)にあることを示すためのアイドルストップフラグFISが「1」か否かが判定される(ステップS102)。
この判定がNOの場合、つまりアイドルストップフラグFISが「0」の場合は、エンジン1が作動していることを意味する。この場合、所定の自動停止条件の成立の有無を調べる処理として、ニュートラルスイッチ209がオン(SWN=ON)か否か、つまり変速機がニュートラルか否かが判定され(ステップS103)、この判定がYESであれば、クラッチストロークセンサ221およびクラッチスイッチ222からの信号に基づいてクラッチオンか否かが判定される(ステップS104)。この判定もYESであれば、他のエンジン停止条件(例えば車速が所定値以下であること、ブレーキが操作されていること等)が成立したか否かが判定される(ステップS105)。
これらステップS103〜S105の判定のいずれかがNOであれば、そのままリターンし、エンジンの作動が継続される。
ステップS103〜S105の判定のいずれもがYESとなった場合は、さらに、クラッチセンサ類の故障を示すフェイルフラグFFAIL(FFAIL_1〜FFAIL_3)のいずれかが「1」か否かが判定される(ステップS106)。この判定がNOのとき(故障が生じていないとき)には、エンジンの作動が停止される(ステップS107)。そして、アイドルストップフラグFISが「1」とされ(ステップS108)、それからリターンされる。
一方、ステップS106の判定がYESのとき、つまりエンジン停止条件は成立しているがクラッチセンサ類に故障が生じているときには、そのままリターンし、エンジンの作動が継続される。
また、上記ステップS102の判定がYESであれば、エンジンが自動停止による停止状態にあり、この場合にも、フェイルフラグFFAIL(FFAIL_1〜FFAIL_3)のいずれかが「1」か否かが判定されることにより、クラッチセンサ類に故障が生じたか否が判定される(ステップS109)。
ステップS109の判定がNOの場合、つまりクラッチセンサ類に故障が生じていない場合には、再始動条件(例えばブレーキ操作が解除されたこと、空調ユニット125が作動されたこと等)が成立したか否かが判定される(ステップS110)。
再始動条件が成立すると、ニュートラルスイッチ209がオン(SWN=ON)か否かが判定され(ステップS111)、この判定がNOであれば、クラッチストロークセンサ221およびクラッチカットスイッチ223からの信号に基づいてクラッチオフか否かが判定される(ステップS112)。
そして、ニュートラルスイッチ209がオフ(変速機2が走行段)であって、かつ、クラッチオフ(動力遮断状態)となった場合、スタータリレー146がオンとされることでスタータモータ4aが駆動され、再始動が開始される(ステップS113)。なお、空調ユニット125が作動される等の特定の再始動条件が成立するとともにニュートラルスイッチ209がオン(変速機2が中立段)となった場合も、再始動が開始される。
再始動開始後は、エンジン回転数Neが再始動完了判定用の所定の基準値NeSTARTを超えたか否かが調べられて(ステップS114)、基準値NeSTARTを超えるまではスタータ駆動状態が維持され、基準値NeSTARTを超えると、始動が完了したものとして、アイドルストップフラグFISが「0」にクリアされる(ステップS115)とともにスタータリレー146がオフとされることでスタータモータ4aが停止される(ステップS116)。
ステップS109でYESの場合、つまりエンジン停止中にクラッチセンサ類に故障が生じていることが判明した場合には、警告灯が点灯される(ステップS117)とともに、診断実行フラグFDIAG_CおよびフェイルフラグFFAIL_1〜FFAIL_3によって故障の状況が調べられ、それに応じた再始動処理が行なわれる。
この場合、3つのクラッチセンサ類(クラッチストロークセンサ221、クラッチスイッチ222、クラッチカットスイッチ223)のうちの1つだけが故障していて、その故障しているクラッチセンサ類を特定できる場合には、故障しているものを除いたクラッチセンサ類の出力を利用して後述のような緊急始動処理を行なうが、それ以外の場合は、変速機2が中立段にあることを条件として再始動を行うようにしている。
すなわち、先ず診断実行フラグFDIAG_Cが「1」か否かが判定され(ステップS118)、その判定がYESであれば、第3フェイルフラグFFAIL_3が「1」か否かが判定される(ステップS119)。
ステップS118の判定がNOの場合は、クラッチストロークセンサ221の出力の第1〜第3の範囲の全てでの診断が達成されていないので、故障しているクラッチセンサ類を特定できない。また、ステップS119の判定がNOの場合は、2つ以上のクラッチセンサ類が故障している可能性がある。これらの場合は、ニュートラルスイッチ209がオン(SWN=ON)か否かが判定され(ステップS120)、その判定がYESのときに、ステップS113に移ってそれ以下の処理により再始動が行なわれる。
一方、ステップS118の判定がYESで、かつ、ステップS119の判定がNOの場合は、さらに第1フェイルフラグFFAIL_1が「1」か否かが判定され(ステップS121)、その判定がYESであれば、さらに第2フェイルフラグFFAIL_2が「1」か否かが判定される(ステップS122)。これらの判定に基づき、クラッチセンサ類のうちで故障しているものが判別される。
具体的に説明すると、前述のように第1フェイルフラグFFAIL_1が「1」であれば、クラッチスイッチ222またはクラッチストロークセンサ221が故障であり、また、第2フェイルフラグが「1」であれば、クラッチカットスイッチ223またはクラッチストロークセンサ221が故障である。ただし、クラッチストロークセンサ221が故障の場合(例えばクラッチペダル7aの実ストローク量とクラッチストロークセンサ221の出力値の対応関係が正常時と対してずれている場合)は、クラッチストロークセンサ221の出力の範囲によって第1フェイルフラグFFAIL_1が「1」となったり第2フェイルフラグFFAIL_2が「1」となったりする。従って、第1フェイルフラグFFAIL_1が「1」、それ以外のフェイルフラグが「0」となった場合(ステップS121がYES、ステップS122がNOの場合)、クラッチスイッチ222の故障(クラッチストロークセンサ221およびクラッチカットスイッチ223は正常)であり、第2フェイルフラグFFAIL_2が「1」、それ以外のフェイルフラグが「0」となった場合(ステップS121がNOの場合)、クラッチカットスイッチ223の故障(クラッチストロークセンサ221およびクラッチスイッチ222は正常)であり、第1フェイルフラグFFAIL_1および第2フェイルフラグFFAIL_2が「1」となった場合(ステップS121,S122がYESの場合)、クラッチストロークセンサ221の故障(クラッチスイッチ222およびクラッチカットスイッチ223は正常)である。
そこで、これらの場合にそれぞれ、緊急始動処理1(ステップS123)、緊急始動処理2(ステップS124)、緊急始動処理3(ステップS125)が実行される。そして、アイドルストップフラグFISが「0」にクリア(ステップS126)されてから、リターンする。
図8は、上記ステップS123で行われる緊急始動処理1を示す。この処理は、クラッチスイッチ222が故障の場合に行われるものである。この処理がスタートすると、始動失敗の回数を調べるためのカウンタCSTOPが「0」か否かが判定される(ステップS201)。緊急始動処理の初期にはこのカウンタCSTOPが「0」であり、この場合はクラッチカットスイッチ223がオン(SWCU=ON)か否かが判定される(ステップS202)。
ステップS202の判定がYESであれば、さらにクラッチストロークセンサ221の出力が設定値CPC1(第3閾値CPCより少し小さい値)より大きいか否かが判定される(ステップS203)。そして、この判定がYESであればスタータリレー146がオンとされることによりスタータモータ4aが駆動される(ステップS204)。
つまり、緊急始動処理1では、クラッチペダル7aが踏み込まれたことがクラッチカットスイッチ223およびクラッチストロークセンサ221の出力により確認されたとき、スタータモータ4aが駆動される。
続いて、クラッチストロークセンサ221の出力CPが、設定値CP2(設定値CPC1より少し小さい値)より大きいか否かが判定される(ステップS205)。この判定がYESのときに、エンジン回転数Neが始動判定回転数NeSTARTより高くなったか否かが判定され(ステップS206)、その判定がNOであれば、ステップS204に戻る。そして、ステップS205がNOになるか、ステップS206がYESになるまで、スタータ駆動状態が維持される。
これらステップS204〜S206の処理により、スタータモータ4aの駆動開始後にクラッチペダル7aが踏み込み状態から戻されて踏込み量が小さくなるまでに、始動が達成されたどうかが調べられる。
始動が達成されたときは、スタータリレー146がオフとされることによりスタータモータ4aが停止される(ステップS207)とともに、アイドルストップフラグFISが「0」にクリア(ステップS208)されてから、緊急始動処理1が終了する。
また、上記ステップS205での判定がNOになったときは、スタータモータ4aの駆動開始後に、エンジン回転数Neが始動判定回転数NeSTART達するまでに、クラッチペダル7aが踏み込み状態から踏込み量が小さい状態(ないしはペダル離し状態)に戻されたことを意味し、この場合は、始動が達成されなかった場合の処理として、いったんスタータリレー146がオフとされる(ステップS209)とともに、カウンタCSTOPがカウントアップされる(ステップS210)。そして、カウンタCSTOPが設定値CSTOP1(数回程度)より大きくなったか否かが判定され(ステップS211)、その判定がNOであればリターンする。
リターン後に改めてクラッチペダル7aが踏み込まれると再始動がリトライされ、そのときにも始動が達成されなければ、ステップS205でのNOの判定に続くステップS209〜S211の処理が繰り返されるが、このような処理の繰り返し回数が設定値CSTOP1よりも大きくなり、かつ、エンジン回転数Neが始動判定回転数NeSTARTを超えたか否かの判定(ステップS212)がNOであれば、エンスト処理(ステップS213)が行なわれてから、緊急始動処理1が終了する。上記エンスト処理は、例えば、警報を発するとともに、運転者による始動操作を促すような表示を行う等の処理である。
図9は、上記ステップS124で行われる緊急始動処理2を示す。この処理は、クラッチカットスイッチ223が故障の場合に行われるものである。この処理がスタートすると、始動失敗の回数を調べるためのカウンタCSTOPが「0」か否かが判定され(ステップS301)、このカウンタCSTOPが「0」である緊急始動処理の初期には、クラッチスイッチ222がオン(SWCL=ON)か否かが判定される(ステップS302)。
ステップS302の判定がYESであれば、さらにクラッチストロークセンサ221の出力が設定値CPC1より大きいか否かが判定され(ステップS303)、この判定がYESであればスタータリレー146がオンとされることによりスタータモータ4aが駆動される(ステップS304)。
つまり、緊急始動処理2では、クラッチペダル7aが踏み込まれたことがクラッチスイッチ222およびクラッチストロークセンサ221の出力により確認されたとき、スタータモータ4aが駆動される。それ以降の処理(ステップS305〜ステップS313)は、緊急始動処理1におけるステップS204〜ステップS213と同じである。
図10は、上記ステップS125で行われる緊急始動処理3を示す。この処理は、クラッチストロークセンサ221が故障の場合に行われるものである。この処理がスタートすると、先ずクラッチカットスイッチ223がオン(SWCU=ON)か否かが判定される(ステップS401)。そして、この判定がYESであれば、スタータリレー146がオンとされることによりスタータモータ4aが駆動される(ステップS402)。
つまり、緊急始動処理3では、クラッチペダル7aが踏み込まれたことがクラッチカットスイッチ223の出力により確認されたとき、スタータモータ4aが駆動される。
スタータモータ4aの駆動後に、さらにクラッチカットスイッチ223がオン(SWCU=ON)か否かが判定される(ステップS403)。この判定がYESのときに、エンジン回転数Neが始動判定回転数NeSTARTより高くなったか否かが判定され(ステップS404)、その判定がNOであれば、ステップS402に戻る。そして、ステップS403がNOになるか、ステップS404がYESになるまで、スタータ駆動状態が維持される。これらステップS402〜S404の処理により、スタータモータ4aの駆動開始後にクラッチカットスイッチ223がオフになるまでに、始動が達成されたどうかが調べられる。
始動が達成された場合のステップS405,S406の処理は、緊急始動処理1におけるステップS207,S208と同じである。また、始動が達成されなかった場合(ステップS403でNOとなった場合)のステップS407〜S411の処理は、緊急始動処理1におけるステップS209〜S213と同じである。
以上のような当実施形態の車両システムおよびその制御方法によると、クラッチセンサ類が正常である場合には、クラッチセンサ類を含む各種センサ、スイッチからの信号に基づいて停止/再始動条件判定部102により所定の自動停止条件および再始動条件が判定される。そして、自動停止条件が成立したときに自動的にエンジン1の作動が停止されることにより、燃費の削減が図られ、自動停止後に再始動条件が成立したときに自動的にエンジン1が再始動される。
一方、クラッチセンサ類に異常(故障)が生じたときには、クラッチセンサ類診断部106による図6のフローチャートに示す処理に基づいて故障の状況が調べられ、フェイルフラグFFAIL_1〜FFAIL_3が立てられる。
そして、図7のフローチャートに示す処理においては、エンジンの作動中に自動停止条件が成立したとき(ステップS105の判定がYESのとき)にも、クラッチセンサ類が故障している場合(ステップS106の判定がYESの場合)には、エンジンの作動が継続される。このため、クラッチセンサ類の故障時にも、車両の走行を支障なく行い得る状態が確保される。
また、エンジンの自動停止後にクラッチセンサ類に異常(故障)が発見されたときには、故障の状況に応じて始動処理が行なわれる。
すなわち、図6のフローチャートに示す診断処理では、クラッチストロークセンサ221の出力CPの第1〜第3の範囲においてそれぞれ故障の有無が調べられ、故障があればその状況に応じてフェイルフラグFFAIL_1〜FFAIL_3が立てられ、また上記第1〜第3の範囲の全てにおいて故障の診断が行われれば診断実行フラグFDIAG_Cが立てられる。そして、図7のフローチャートに示す処理においては、診断実行フラグFDIAG_CおよびフェイルフラグFFAIL_1〜FFAIL_3の判別に基づき、クラッチセンサ類のうちの一つが故障していてその故障しているセンサ類と正常なセンサ類とを特定できる場合には、緊急始動処理1〜3のいずれかにより、正常なセンサ類を利用してクラッチペダル7aが踏み込まれたことが判別されたときに、再始動が行われる。
また、複数のクラッチセンサ類が故障している場合や故障しているクラッチセンサ類を特定できない場合は、クラッチペダル7aが踏み込まれたことを判別することが困難になるため、ニュートラルスイッチ209の出力信号が調べられ(ステップS120)、これがオンのとき、つまり変速機2がニュートラル状態(中立段)のときに再始動処理が行なわれる。
このようにして、クラッチ204もしくは変速機2が動力遮断状態にあるときに再始動が行われる。従って、クラッチセンサ類の故障時にも、動力伝達状態で再始動が行われることが確実に防止され、再始動の容易性および安全性が確保される。