JP4802795B2 - 磁性粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一般に粒子が微細になるほど表面積が増えるために、高温多湿の環境下での保存安定性が劣ることとなる。したがって、飽和磁化等の磁気特性が経時的に劣化し、テープ出力が低下するといった問題がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、緻密でかつ厚さの均一性に優れた化合物層を表面に備えた磁性粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
また本発明において、Al及びZnから選ばれる1種以上の元素及び希土類元素の合計量が、磁性体コアに含まれるFeに対して5〜25at%あることが好ましい。
すなわち、十分な保存安定性を確保するためには、この量を5at%以上とすべきである。一方で、これら元素の量が増えると飽和磁化が低下する傾向にあるため、これら元素の量を25at%以下とする。
図1は本発明による磁性粒子1の構造を模式的に示す断面図である。図1に示すように、磁性粒子1は、磁性体コア2と、磁性体コア2の表面に形成された第1の酸化物層3と、第1の酸化物層3の表面に形成された第2の酸化物層4を備えている。磁性粒子1は、長軸が100nm以下の長さを有している。長軸の長さは、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下である。なお。ここでは紡錘状の磁性粒子1を例にしているが、針状、粒状等の他の形状の磁性粒子に適用することができることはいうまでもない。その場合の粒径も100nm以下とする。高密度磁気記録に対応するためである。
また、第2の酸化物層4は、希土類元素から選ばれる1種以上の元素(以下、第2の元素と総称することがある)の酸化物から構成される。ここで、本発明における希土類元素はY(イットリウム)を含む概念を有している。つまり、本発明における希土類元素とは、Y、Ce、Nd、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuをいう。そして、希土類元素としては、コストの観点からYを用いることが好ましい。
第1の酸化物層3及び第2の酸化物層4の膜厚の合計は0.8〜4.0nmの範囲とすることが好ましい。0.8nmより薄いと十分な保存安定性を得ることが困難になる。また、膜厚が4.0nmを超えると、磁性粒子1中に占める第1の酸化物層3及び第2の酸化物層4の割合が多くなり、磁性に寄与する磁性体コア2の体積が少なくなり、磁気特性が低下する。
この製造方法は、前駆体(ゲーサイト)製造工程、前駆体への第2の元素の被着工程、前駆体の還元処理工程、窒化処理工程及び表面酸化処理工程を主たる工程とする。以下、工程順に説明する。なお、以下の説明は、針状の磁性粒子を製造する例についてのものである。
(1)前駆体製造工程
前駆体製造工程は、第一鉄塩を含む鉄原料水溶液とアルカリ水溶液とを中和反応させて反応溶液中に水酸化第一鉄を生成させる中和反応工程と、生成された水酸化第一鉄を酸化処理してオキシ水酸化鉄粒子を得る酸化処理工程とを備えている。
中和反応は、鉄原料水溶液と中和剤を用意して行われる。
<鉄原料水溶液>
原料として硫酸第1鉄(FeSO4)、塩化第1鉄(FeCl42)などの2価鉄を有する第1鉄塩を水に溶かして鉄原料水溶液を用意する。
鉄原料水溶液中の第1鉄の濃度は、0.01〜1.0(mol/l)、好ましくは、0.052〜0.5(mol/l)とされる。
本発明では、上記鉄原料水溶液との中和反応用のアルカリ水溶液が用意される。アルカリ水溶液を作製するには、水酸化ナトリウム(NaOH)が好適に用いられるが、水酸化アンモニウム(NH4OH)、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(K2CO3)等を用いてもよい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、中和において、鉄とアルカリの等量に対して過剰のアルカリを投入することが好ましく、等量付近では粒状のマグネタイトが生成しやすく、等量より少ないアルカリ量では投入したFe量より少ない収量となる上、廃液にFeイオンが残留することから、その廃液処理が必要になるため好ましくない。
上記の要領で生成された水酸化第一鉄は、すぐさま液中で酸化処理することによりオキシ水酸化鉄(ゲーサイト)粒子を生成する。酸化処理は、液中に酸化性ガスとして酸素または酸素を含む気体を吹込むことにより行なわれる。一般には、酸化性ガスとして空気が用いられるが、酸化速度を調整するために酸素と窒素等の不活性ガスとの混合ガスを用いることもできる。
酸化処理は1〜50℃の温度範囲で行うことができるが、オキシ水酸化鉄粒子の粒径を微細にするためには、酸化処理温度を好ましくは35℃以下、より好ましくし30℃以下とする。また、酸化処理の時間は120分以下、さらには80分以下とすることができる。
以上のような一連の工程によって、いわゆる磁性粒子の前駆体であるオキシ水酸化鉄粒子(ゲーサイト)が形成される。形成されるオキシ水酸化鉄粒子は、長軸長100nm以下、特に80nm以下とすることが好ましい。
上述の要領で得られた前駆体としてのオキシ水酸化鉄粒子の表面に、以下のようにして第2の元素を含むR粒子を被着させる。
オキシ水酸化鉄粒子を中性の水溶液中に分散させ、これに第2の元素の塩を溶解させる。そして、この分散液に中和剤を添加して中和反応により、前駆体であるオキシ水酸化鉄粒子の表面に第2の元素の水酸化物又は水和物(R粒子)を被着させることができる。第2の元素の塩としては、塩化イットリウム(YCl3)、塩化サマリウム(SmCl3)、塩化ネオジウム(NdCl3)、塩化ランタン(LaCl3)等を用いることができる。
上述の要領で表面にR粒子が被着されたオキシ水酸化鉄粒子を製造することができる。この前駆体は、ろ過・洗浄・乾燥を経た後に大気雰囲気中で200〜400℃、1〜24時間の条件で仮焼される。続いて還元処理される。この還元処理は、水素ガス等の還元ガス気流中、220〜550℃、0.25〜72時間の条件で行えばよい。220℃未満では還元処理が十分進まず、逆に550℃を超えると粒子同士の焼結が懸念される。還元処理により、オキシ水酸化鉄粒子は、Fe粒子となる。このFe粒子の表面には、第2の元素が水酸化物又は酸化物からなるR粒子として被着している。
次いで、Fe16N2相を生成させるために、窒化処理を行う。窒化処理は、窒素を含むガス気流中、100〜250℃、0.25〜72時間の条件で行えばよい。窒素を含むガスとしては、アンモニアを含むガス、窒素ガスを用いることができる。水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどをキャリアガスとすることもできる。窒化処理の温度は、100℃未満では窒化が十分進まず、保磁力増加の効果が少ない。250℃を超えると窒化が過剰に促進されて、磁気特性の劣るFe4N相、Fe3N相などの生成が無視できなくなる。
微量の酸素を含むガス等の雰囲気下に窒化処理された磁性粒子1を晒すことにより酸化物層を形成する。この酸化物層は、主に磁性粒子1の表面近傍に濃縮された第1の元素及びその周囲に被着された第2の元素が酸素と反応することにより形成される。酸化が過剰に進むことを回避するため、処理雰囲気の温度は50〜150℃程度とすることが好ましく、さらに好ましくは60〜120℃とする。また、この表面酸化の時間は、0.25〜24時間とすることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜8時間とする。また、雰囲気中の酸素濃度は0.01〜0.5%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.2%とする。酸化温度、酸化時間及び雰囲気の酸素濃度は相互に調整することができることはいうまでもなく、得たい酸化物層の厚さに対応して適宜条件を設定すればよい。
鉄原料として2価の硫酸鉄(FeSO4)を用い、1mol/lの水溶液を作製した。また、中和剤として水酸化ナトリウム(NaOH)と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を用い、1mol/l程度の水溶液を作製した。中和剤は鉄原料に対して2倍当量となる量を準備した。
反応溶液全体(硫酸鉄水溶液+炭酸水素ナトリウム水溶液+イオン交換水)で鉄濃度が0.1mol/lとなる量のイオン交換水に炭酸水素ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウムを添加し、さらに硫酸鉄水溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウムが添加されたアルカリ性水溶液に添加して中和を行った。中和は反応溶液が10℃となるように温度をコントロールした。
酸化処理終了後、反応生成物を濾過、水洗後に、イオン交換水に分散させた。この分散液に反応溶液中のFeに対してY(イットリウム)が10at%になるように塩化イットリウム(YCl3)を加え、溶解させた。
次に、0.5mol/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を準備し、上記分散液にゆっくりと滴下した。この際、液温を20℃に保った。
この粒子を大気雰囲気中で300℃×1時間の仮焼を行った後、水素気流中、400℃で8時間保持することにより還元処理を行った。その後170℃まで降温し、雰囲気をアンモニアガスに切り替えることによって窒化処理を行った。雰囲気の温度を170℃で24時間保持した後に60℃まで降温した。60℃に降温後、雰囲気を窒素とエアとの混合ガス(N2:エア=200:1)に切り替え、表面酸化処理を行った。
また、この磁性粒子を60℃、90%RHの環境下で1週間保存したのち、上記と同様に飽和磁化を測定し、保存前の飽和磁化に対する保存後の飽和磁化の低下率(Δσs)を求めたところ、5%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記反応溶液中のFeに対してAlが5at%になるようにアルミン酸ナトリウムを添加した以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は116emu/g(116Am2/kg)であり、保磁力は2587Oe(205.9kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は9%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記分散液中のFeに対してYが5at%になるように水酸化イットリウムを添加した以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は111emu/g(111Am2/kg)であり、保磁力は2419Oe(192.5kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は7%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記反応溶液中のFeに対してAlが5at%、Yが5at%になるようにアルミン酸ナトリウムを添加した以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は123emu/g(123Am2/kg)であり、保磁力は2327Oe(185.2kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は9%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記反応溶液中のFeに対してAlが3at%になるようにアルミン酸ナトリウムを添加し、前記分散液に対してYが3at%になるように塩化イットリウムを添加した以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。その結果を表1に示す。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は128emu/g(128Am2/kg)であり、保磁力は2002Oe(159.3kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は18%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記反応溶液中のFeに対してAlが20at%になるようにアルミン酸ナトリウムを添加し、前記分散液に対してYが10at%になるように塩化イットリウムを添加した以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。その結果を表1に示す。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は79emu/g(79Am2/kg)であり、保磁力は2008Oe(159.8kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は7%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、塩化イットリウムを用いる代わりに塩化ランタン(LaCl3)を用い、分散液中のFeに対してLaが10at%になるようにした以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は101emu/g(101Am2/kg)であり、保磁力は2494Oe(198.5kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は7%であった。
以上の結果を表1に示す。
上記実施例1において、窒化処理後の表面酸化処理の加熱温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。その結果を表1に示す。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は84emu/g(84Am2/kg)であり、保磁力は2233Oe(177.7kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は4%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、窒化処理後の表面酸化処理の加熱温度を280℃とし、保持時間を3時間とした以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は70emu/g(70Am2/kg)であり、保磁力は2005Oe(159.6kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は4%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、窒化処理後の表面酸化処理を行わない磁性粒子を得た。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は31%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記分散液に対して酸化イットリウムの添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は114emu/g(114Am2/kg)であり、保磁力は2036Oe(162.0kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は18%であった。
以上の結果を表1に示す。
実施例1において、前記反応溶液中にアルミン酸ナトリウムの添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして磁性粒子を作製した。
得られた磁性粒子について、実施例1と同様に酸化物層の厚さ、飽和磁化(σs)、保磁力(Hc)及び飽和磁化の低下率(Δσs)を求めた。その結果を表1に示す。
この磁性粒子の飽和磁化(σs)は129emu/g(129Am2/kg)であり、保磁力は2203Oe(175.3kA/m)であった。
また、飽和磁化の低下率(Δσs)は28%であった。
以上の結果を表1に示す。
一方、アルミニウム及びイットリウムの量が多くなると(実施例6)と、飽和磁化の低下率(Δσs)は良好であるが、飽和磁化(σs)が低くなる傾向にある。
Claims (2)
- 水酸化第一鉄を反応溶液中で酸化処理してオキシ水酸化鉄粒子を生成させるとともに、前記オキシ水酸化鉄粒子にAl及びZnから選ばれる1種以上の元素を固溶させる酸化処理工程と、
前記酸化処理工程で生成された前記オキシ水酸化鉄粒子の表面に希土類元素を含むR粒子を被着させる希土類元素被着工程と、
前記オキシ水酸化鉄粒子を還元して鉄粒子を生成させる還元処理工程と、
前記鉄粒子を窒化してFe16N2相を生成させる窒化処理工程と、
Fe16N2相を含む窒化鉄粒子を酸化して表面に酸化物層を生成させる表面酸化処理工程と、を備え、
前記Al及びZnから選ばれる1種以上の元素が前記酸化処理工程の途中で前記反応溶液に添加されることを特徴とする磁性粒子の製造方法。 - 前記反応溶液が、第一鉄塩を含む鉄原料水溶液とアルカリ水溶液とを中和反応させて得られることを特徴とする請求項1に記載の磁性粒子の製造方法。
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