以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1乃至図6は本発明の第一の実施形態に係る薄膜形成装置の説明図であり、図1は第一の実施形態に係る薄膜形成装置を上面から見た部分断面図、図2は第一の実施形態に係る薄膜形成装置を側面から見た部分断面図、図3は図1の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した拡大断面図、図4は図3の矢視A方向から見たターゲットの正面図、図5は図1の反応プロセス領域周辺を拡大して示した拡大断面図、図6は第一及び第二の実施形態に係る薄膜形成装置の機能ブロック図である。
本実施形態では、薄膜形成装置としてスパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う薄膜形成装置を用いているが、本発明の薄膜形成装置としては、このようなマグネトロンスパッタに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等の他の公知のスパッタを行う薄膜形成装置を用いることもできる。
本実施形態の薄膜形成装置では、目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板表面に付着するスパッタ処理工程と、この薄膜に対して酸化等の処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理工程とにより基板表面に中間薄膜を形成し、このスパッタ処理とプラズマ処理を複数回繰り返すことで、目的の膜厚を有する最終薄膜を基板表面に形成している。
具体的には、スパッタ処理とプラズマ処理によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜を基板表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成している。
図1に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、スパッタ手段20と、プラズマ発生手段60と、を主要な構成要素としている。
真空容器11は、公知の薄膜形成装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、略直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、図1に示すように、本発明の開閉扉としての扉11Cによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する扉収納容器(不図示)が接続されており、扉11Cは、真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切る扉11Dが設けられている。扉11Dは、スライドまたは回動することで開閉する。真空容器11の内部の薄膜形成室11Aには、排気用の配管16a−1が接続され、この配管16a−1には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15aが接続されている。配管16a−1には開口が設けられており、この開口は真空容器11内の成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aとの間に配設されている。これにより、成膜プロセス領域20Aで飛散した膜原料物質を真空ポンプ15aで吸引することが可能となり、成膜プロセス領域20Aから飛散した膜原料物質が反応プロセス領域60Aに侵入して基板表面やプラズマ発生手段を汚染することを防止している。
また、真空容器11の内部のロードロック室11Bには、排気用の配管16bが接続され、この配管16bには真空容器11内を排気するための真空ポンプ15bが接続されている。
本実施形態の薄膜形成装置は、このようなロードロック室11Bを備えているため、薄膜形成室11A内の真空状態を保持した状態で基板の搬入出を行うことが可能となる。従って、基板を搬出する毎に真空容器内を脱気して真空状態にする手間を省くことが可能となり、高い作業効率で成膜処理を行うことができる。
なお、本実施形態の真空容器11は、ロードロック室11Bを備えるロードロック方式を採用しているが、ロードロック室を設けないシングルチャンバ方式を採用することも可能である。また、複数の真空室を備え、それぞれの真空室で独立に薄膜形成を行うことが可能なマルチチャンバ方式を採用することも可能である。
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11内で保持するための部材であり、本発明の基体保持手段に該当する。図2に示すように、回転ドラム13は、複数の基板保持板13aと、フレーム13bと、基板保持板13a及びフレーム13bを締結する締結具13cを主要な構成要素としている。
基板保持板13aはステンレススチール製の平板状部材で、基板Sを保持するための複数の基板保持孔を、基板保持板13aの長手方向に沿って板面中央部に一列に備えている。基板Sは基板保持板13aの基板保持孔に収納され、脱落しないようにネジ部材等を用いて基板保持板13aに固定されている。また、基板保持板13aの長手方向における両端付近の板面には、後述する締結具13cを挿通可能なネジ穴が設けられている。
フレーム13bはステンレススチール製からなり、上下に配設された2つの環状部材で構成されている。フレーム13bのそれぞれの環状部材には、基板保持板13aのネジ穴と対向する位置に複数のネジ穴が設けられている。基板保持板13aとフレーム13bはボルトおよびナットからなる締結具13cを用いて固定される。具体的には、ボルトを基板保持板13a及びフレーム13bのネジ穴に挿通してナットで固定することにより固定される。なお、本実施形態における回転ドラム13は、平板状の基板保持板13aを複数配置しているため横断面が多角形をした多角柱状をしているが、回転ドラム13の形状はこのような多角柱状のものに限定されず、中空の円筒状や円錐状のものであってもよい。
基板Sは本発明の基体に該当するものである。本実施形態では、基板Sはガラス製の円板状部材であり、薄膜形成処理により表面に薄膜が形成されるが、本発明の基体としては本実施形態のような円板状のものに限定されず、レンズ状のものや管状のもの等を用いることもできる。また、基板Sの材質も本実施形態のようなガラス製に限定されず、プラスチックや金属等であってもよい。
真空容器11内部に設置された回転ドラム13は、図1に示す薄膜形成室11Aとロードロック室11Bの間を移動できるように構成されている。本実施形態では、真空容器11の底面にレール(不図示)が設置されており、回転ドラム13はこのレールに沿って移動する。回転ドラム13は、円筒の筒方向の回転軸線Z(図2参照)が真空容器11の上下方向になるように真空容器11内に配設される。基板保持板13aをフレーム13bに取り付ける際やフレーム13bから取り外す際には、回転ドラム13はロードロック室11Bに搬送されて、ロードロック室11B内で回転可能な状態にロックされている。一方、成膜中にあっては、回転ドラム13は薄膜形成室11Aに搬送されて、薄膜形成室11A内で回転可能な状態にロックされている。
図2に示すように、回転ドラム13の下面中心部は、モータ回転軸18aの上面と係合する形状になっている。回転ドラム13とモータ回転軸18aは、モータ回転軸18aの中心軸線と回転ドラム13の中心軸線と一致するよう位置決めされ、両者が係合することにより連結されている。回転ドラム13下面のモータ回転軸18aと係合する面は絶縁部材で構成されている。これにより、基板における異常放電を防止することが可能となる。また、真空容器11とモータ回転軸18aとの間は、Oリングで気密が保たれている。
真空容器11内の真空状態を維持した状態で、真空容器11の下部に設けられたモータ17を駆動させることによってモータ回転軸18aが回転する。この回転に伴って、モータ回転軸18aに連結された回転ドラム13は回転軸線Zを中心に回転する。各基板Sは回転ドラム13上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで回転軸線Zを公転軸として公転する。
回転ドラム13の上面にはドラム回転軸18bが設けられており、回転ドラム13の回転に伴ってドラム回転軸18bも回転するように構成されている。真空容器11の上面には孔部が設けられており、ドラム回転軸18bはこの孔部を貫通して真空容器11の外部に通じている。孔部の内面には軸受が設けられており、回転ドラム13の回転をスムーズに行えるようにしている。また、真空容器11とドラム回転軸18bとの間は、Oリングで気密が保たれている。
次に、基板Sの表面に薄膜を形成する成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aについて説明する。図1に示すように、真空容器11の内壁には回転ドラム13へ向かって仕切壁12,14が立設している。本実施形態における仕切壁12,14は真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12,14は、真空容器11の内壁面から回転ドラム13へ向けて四方を囲んだ状態で設けられている。
真空容器11の側壁は外方に突出した横断面凸状をしており、突出した側面にはスパッタ手段20が設けられている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁12,回転ドラム13の外周面及びスパッタ手段20に囲繞された領域に形成されている。成膜プロセス領域20Aでは基板Sの表面に薄膜を形成するスパッタ処理が行われる。
一方、成膜プロセス領域20Aから回転ドラム13の回転軸を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した側面にはプラズマ発生手段60が設けられている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁14,回転ドラム13の外周面及びプラズマ発生手段60に囲繞された領域に形成されている。反応プロセス領域60Aでは、基板S上の薄膜に対してプラズマ処理が行われる。
図2に示すモータ17によって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、図1に示す成膜プロセス領域20Aに面する位置と反応プロセス領域60Aに面する位置との間を繰り返し移動することになる。そして、このように基板Sが公転することで、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と、反応プロセス領域60Aでのプラズマ処理とが順次繰り返し行われて、基板Sの表面に薄膜が形成される。
(成膜プロセス領域20A)
以下に、本発明の成膜プロセス領域20Aについて説明する。図3に示すように、本発明の成膜プロセス領域20Aにはスパッタ手段20が設置されている。なお、図中ではスパッタ手段20を点線で囲んで示してある。
スパッタ手段20は、ターゲット22a,22bを保持する一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、電力制御手段としてのトランス23により構成される。真空容器11の壁面は外方に突出しており、この突出部の内壁にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが側壁を貫通した状態で配設されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。そしてマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に接続され、両電極に1k〜100kHzの交番電界が印加可能に構成されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット22a,22bがそれぞれ保持されている。図3に示すように、本実施形態のターゲット22a,22bの形状は平板状であり、ターゲット22a,22bの表面が回転ドラム13の回転軸線Zと垂直となるように保持される。
本例のターゲット22a,22bは、基板に対向して所定の面積を有するように膜原料物質を平板状に形成したものであり、回転ドラム13の側面に対向するようにマグネトロンスパッタ電極21a,21bにそれぞれ保持される。ターゲットの材質としては、製造する光学製品の目的にあった任意のもの、例えば、ケイ素,ニオブ,チタン,アルミニウム,ゲルマニウム等を採用することが可能である。
図1乃至図3に示すように、成膜プロセス領域20Aの周辺にはスパッタガス供給手段と反応性ガス供給手段の2種類のガス供給手段30が設けられている。なお、図中ではガス供給手段30を一点差線で囲んで示してある。
スパッタガス供給手段は、スパッタガス貯蔵手段としてのスパッタガスボンベ32と、ガス供給路としての配管35a,35cと、スパッタガスの流量を調整する流量調整手段としてのマスフローコントローラ31と、を主要な構成要素として具備している。
また、反応性ガス供給手段は、反応性ガス貯蔵手段としての反応性ガスボンベ34と、ガス供給路としての配管35a,35dと、反応性ガスの流量を調整する流量調整手段としてのマスフローコントローラ33と、を主要な構成要素として具備している。
ガス供給手段30を構成するスパッタガスボンベ32、反応性ガスボンベ34、マスフローコントローラ31,33はいずれも真空容器11の外部に設けられている。マスフローコントローラ31は、スパッタガスとしてのアルゴンガスを貯蔵する単一のスパッタガスボンベ32に配管35cを介してそれぞれ接続されている。また、マスフローコントローラ33は、反応性ガスとしての酸素ガスを貯蔵する単一の反応性ガスボンベ34に配管35dを介してそれぞれ接続されている。
マスフローコントローラ31とマスフローコントローラ33はY字型の配管35aで接続されており、配管35aの一端は真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20Aのターゲット22bの側部に延びている(図3及び図4参照)。配管35aの先端部には導入口35bが形成されている。
導入口35bは、ターゲット22bの側部下方の所定の位置に配置されている。配管35a,35c,35dを通じて供給されるガスは、配管35aに設けられた導入口35bからターゲット22a,22bの前面に導入される。
また、本実施形態では、スパッタガスをターゲットへ導入する配管と反応性ガスをターゲットへ導入する配管を共通にして、両ガスの混合ガスとしてターゲットへ導入する構成としている。しかしながら、ガス供給路としてはこのようなスパッタガス供給路と反応性ガスの供給路を共通としたものに限定されず、スパッタガス導入用の配管と反応性ガス導入用の配管をそれぞれ別々に設けて、それぞれのガスを別々の配管を通じてターゲット前面へ導入する構成としてもよい。
マスフローコントローラ31,33はガスの流量を調節する装置であり、ガスボンベからのガスが流入する流入口と、ガスを真空容器11側へ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを主要な構成要素として備えている(いずれも不図示)。電子回路には外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
本実施形態では、マスフローコントローラ31,33は、いずれも後述するスパッタ制御装置50に電気的に接続されており、スパッタ制御装置50から流量設定の指示を受けてガス流量の調整を行っている。
流入口よりマスフローコントローラ31,33内に送入されたガスの質量流量は、センサにより検出される。センサの下流にはコントロールバルブが設けられており、コントロールバルブは、センサで検出した流量と、設定された基準値とを比較し、ガスの流量が基準値に近づくようにコントロールバルブの開閉を行うことで、流量の制御を行う。
スパッタガスボンベ32からの不活性ガスは、マスフローコントローラ31により流量を調節されて配管35a内に導入される。一方、スパッタガスボンベ32からの反応性ガスは、マスフローコントローラ33により流量を調節されて配管35a内に導入される。配管35aに流入した不活性ガス及び反応性ガスは混合ガスとなり、配管35aの導入口35bより成膜プロセス領域20Aに配置されたターゲット22a,22bの前面に導入される。
スパッタガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。また、反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等が挙げられる。
成膜プロセス領域20Aにスパッタガスが供給されて、ターゲット22a,22bの周辺が不活性ガス雰囲気になった状態で、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交番電極が印加されると、ターゲット22a,22b周辺のスパッタガスの一部は電子を放出してイオン化する。マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマに向けてスパッタガスのイオンが加速され、ターゲット22a,22bに衝突することでターゲット表面の金属原子が叩き出される。この金属原子の一部はプラズマ中で反応性ガスと反応して、不完全反応物や、完全反応物に変換される。これらの金属原子,金属原子の不完全反応物,金属原子の完全反応物は、本発明の膜原料物質に相当し、基板Sの表面に付着して薄膜を形成する原料となる。
図3及び図4に示すように、成膜プロセス領域20Aの両側には、膜厚を補正する膜厚補正手段40が設けられている。なお、図中には、膜厚補正手段40を二点差線で囲んで示してある。
膜厚補正手段40は、補正部材としての膜厚補正板41a,41bと、膜厚補正板41a,41bを進退可能に駆動する補正板駆動モータ42a,42bとを主要な構成要素として備えている。本発明の薄膜形成装置は、このようにターゲットの前面に可動式の膜厚補正板41a,41bを備えており、この膜厚補正板41a,41bをターゲット22a,22bの中心方向に進退させることで、基板表面に付着する膜原料物質の量を調整し、均一な膜厚を有する基板を製造している。
なお、本実施形態では、ターゲット22a,22bの中央に面する位置に、固定された膜厚補正板41cが配設されている。
膜厚補正板41a,41bは、ターゲット22a,22bから所定の間隔を隔てて、ターゲット22a,22bの前面にそれぞれ配置されている。図3に示すように、膜厚補正板41aは、ターゲット22aの幅方向と平行となる方向に配置され、主としてターゲット22aから飛翔する膜原料物質が基板Sに付着するのを遮蔽する板部材を有している。板部材の端部には板面と垂直方向に屈曲した屈曲部が形成されており、この屈曲部には板面と平行方向に螺旋状のネジ溝が形成されている。このネジ溝には、後述する螺旋棒44aのネジ溝が螺合している。同様に、膜厚補正板41bにも屈曲部及びネジ溝が形成されており、後述する螺旋棒44bのネジ溝が螺合している。
膜厚補正板41a,41bは、補正部材移動手段としての補正板駆動モータ42a,42bによって、ターゲット22a,22bの中心方向にそれぞれ駆動可能となっている。補正板駆動モータ42a,42bは、傘歯車を備えた原動軸43a,43bに接続されており、原動軸43a,43bは更に、同じく傘歯車を備えた螺旋棒44a,44bに接続されている。補正板駆動モータ42a,42bの出力軸は、原動軸43a,43bと同軸に接続されており、補正板駆動モータ42a,42bが回動することで、原動軸43a,43bも回動する。
原動軸43a,43bの先端には傘歯車が固定されており、この傘歯車には、螺旋棒44a,44bの傘歯車が噛合している。螺旋棒44a,44bは真空容器11の壁面を貫通している。螺旋棒44a,44bにはネジ溝が形成されており、このネジ溝は前述したように、それぞれ膜厚補正板41a,41bのネジ溝とそれぞれ螺合している。
補正板駆動モータ42a,42bの回転軸が回転すると、その回転は原動軸43a,43bを介して螺旋棒44a,44bに伝達される。そして螺旋棒44a,44bが回転すると、この回転により膜厚補正板41a,41bがターゲットの中心方向に摺動する。膜厚補正板41a,41bがターゲットの中心方向へ移動してターゲットの前面を遮蔽する面積が大きくなると、基板Sへ到達する膜原料物質の量が減少し、成膜レートが減少する。反対に、膜厚補正板41a,41bがターゲットの中心方向と反対方向に移動してターゲット22a,22bの前面を遮蔽する面積が小さくなると、基板Sへ到達する膜原料物質の量が増加し、成膜レートが増加する。
補正板駆動モータ42a,42bは、スパッタ制御装置50と電気的に接続されており、いずれもスパッタ制御装置50により制御される。すなわち、スパッタ制御装置50により、膜厚補正板41a,41bをターゲットの中心方向に移動させるよう指示があると、補正板駆動モータ42a,42bは一方向に回転して、膜厚補正板41a,41bをそれぞれターゲットの中心方向に移動させる。反対に、スパッタ制御装置50により、膜厚補正板41a,41bをターゲットの中心方向と反対へ移動させるよう指示があると、補正板駆動モータ42a,42bは先ほどとは反対方向に回転して、膜厚補正板41a,41bをそれぞれターゲットの中心方向から離間するように移動させる。
真空容器11の内壁にはストッパー45a,45bがそれぞれ設けられている。ストッパー45a,45bは、いずれも平板状部材で構成され、端部が垂直方向に屈曲した形状をしている。ストッパー45a,45bの板状領域の端面は、真空容器11の内壁に対して略垂直となるように壁面に固定されている。ストッパー45a,45bの板面上には、膜厚補正板41a,41bの屈曲部のそれぞれの端面が当接しており、螺旋棒44a,44bの回動に伴って、膜厚補正板41a,41bはストッパー45a,45bの板面上を摺動する。ストッパー45a,45bには屈曲部が設けられているため、膜厚補正板41a,41bがターゲット中心方向へ移動しても、膜厚補正板41a,41bの屈曲部とストッパー45a,45bの屈曲部とが衝突するため、膜厚補正板41a,41bが脱落しないようになっている。
本実施形態の薄膜形成装置は、膜厚調整方法として、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力の量を調整する方法、マスフローコントローラ31,33により成膜プロセス領域20Aに供給されるガスの流量を調整する方法、及び、補正板駆動モータ42a,42bの回転方向を制御することにより膜厚補正板41a,41bを移動する方法の、3通りの膜厚調整方法を同時に用いて膜厚の調整を行っているが、いずれか1又は2の膜厚調整方法を用いて膜厚の調整を行ってもよい。
また、本発明の薄膜形成装置としては、これら3種類の膜厚調整方法のすべてにより膜厚を調整する必要は無く、いずれか1又は2の方法のみにより膜厚の調整を行ってもよい。
(反応プロセス領域60A)
続いて、反応プロセス領域60Aについて説明する。前述したように、反応プロセス領域60Aでは、成膜プロセス領域20Aで基板表面に形成された膜原料物質を酸化して、完全酸化物からなる薄膜の形成を行っている。
図5に示すように、反応プロセス領域60Aに対応する真空容器11の壁面には、プラズマ発生手段60を設置するための開口が形成されている。また、反応プロセス領域60Aには、マスフローコントローラ66を介して反応性ガスボンベ67内の反応性ガスを導入するための配管68が接続されている。
仕切壁14の反応プロセス領域60Aに面する壁面には、熱分解窒化硼素(Pyrolytic Boron Nitride)からなる保護層が被覆されている。更に、真空容器11の内壁面の反応プロセス領域60Aに面する部分にも熱分解窒化硼素からなる保護層が被覆されている。熱分解窒化硼素は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。
プラズマ発生手段60は、反応プロセス領域60Aに面して設けられている。本実施形態のプラズマ発生手段60は、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65と、を有して構成されている。なお、図中ではプラズマ発生手段60を点線で囲んで示してある。
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。本実施形態において、ケース体61はステンレスで形成されている。
誘電体板62は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板62は石英で形成されているが、誘電体板62の材質としてはこのような石英だけではなく、Al2O3等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成されている。
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に臨んで設けられている。このときアンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。本実施形態では、このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中にアンテナ63が設置されている。なお、アンテナ収容室61Aと真空容器11内部、及びアンテナ収容室61Aと真空容器11外部との間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
本実施形態では、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にするために、アンテナ収容室61Aに排気用の配管16a−2が接続されている。配管16a−2には、真空ポンプ15aが接続されている。また、本実施形態において、配管16a−2は真空容器11の内部へも連通している。
配管16a−1には、真空ポンプ15aから真空容器11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管16a−2には、真空ポンプ15aからアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV1、V3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
本実施形態では、薄膜形成装置1に制御装置(不図示)を備えている。この制御装置には、真空計の出力が入力される。制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15aによる排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。本実施形態では、制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて、真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に誘導電界を発生させ、反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させるためのものである。本実施形態のアンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備えている。アンテナ63のインピーダンスを低下するためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ63を形成するのが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。このように構成することで、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流すことによりプラズマを発生させる効率を高めている。
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。
アンテナ63は、導線部を介してマッチングボックス64に接続されている。導線部はアンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部を挿通するための挿通孔が形成されており、アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス64,高周波電源65とは、挿通孔に挿通される導線部を介して接続される。導線部と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
また、反応プロセス領域60Aの周辺には反応性ガス供給手段が設けられている。反応性ガス供給手段は、反応性ガスボンベ67と、反応性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ66と、反応性ガスを反応プロセス領域60Aに導入する配管68を主要な構成要素として具備している。反応プロセス領域60Aの反応性ガスボンベ67,マスフローコントローラ66は、成膜プロセス領域20Aの反応性ガスボンベ34、マスフローコントローラ33と同様の装置を採用することが可能である。また、反応性ガスとしても、成膜プロセス領域20Aと同様に、酸素ガスなど公知のガスを採用することができる。
反応性ガスボンベ67から配管68を通じて反応性ガスが反応プロセス領域60Aに導入された状態で、アンテナ63に高周波電源65から電力が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。このプラズマからは電子が放出され、この電子により基板Sの表面に形成された薄膜中の金属原子やこの金属原子の不完全酸化物は酸化され、金属原子の完全酸化物となる。
次に、本発明に係る光学測定手段について述べる。図1及び図2に示すように、本発明の光学測定手段80は、投光用センサヘッド81と、光ファイバ82と、光源83と、集光レンズ85と、受光用センサヘッド91と、光ファイバ92と、光学検出装置93と、を主要な構成要素として備えている。なお、投光用センサヘッド81,光ファイバ82,光源83,集光レンズ85は光学測定手段80の投光部を構成する。また、受光用センサヘッド91,光ファイバ92,集光レンズ85、光学検出装置93は光学測定手段80の受光部を構成する。
光源83は、電源84から供給される電力によって白色光を発する装置である。本実施形態ではハロゲンランプを使用している。ハロゲンランプは、石英ガラスの管体に希ガスと共にヨウ素等のハロゲン物質を封入したもので、電圧を印加することで白色光を発光する。ただし、光源としてはハロゲンランプに限定されず、例えば、半導体レーザ等も使用することが可能である。半導体レーザは、ガリウム・ヒ素などの単結晶基板の上に薄膜の単結晶膜を結晶成長させた素子を有し、この素子に電流を流すことでレーザ光を発振する装置である。また、例えばキセノンランプの光を偏光フィルターで偏光させて単色光を発光する装置なども使用することができる。
光源83には、光ファイバ82の一端が接続されている。光ファイバ82の他端には投光用センサヘッド81が設けられている。投光用センサヘッド81は、円筒状部材の内部に光ファイバ82の端部が収納された構造をしており、回転ドラム13の側面に対して略垂直となるように、真空容器11の側壁を貫通した状態で真空容器11の側壁に取り付けられている。光源83で発光した光は、光ファイバ82の一端から入射し、光ファイバ内部を伝送して他端に設けられた投光用センサヘッド81から回転ドラム13方向へ出射する。投光用センサヘッド81から出射した測定光は、集光レンズ85で集光され、基板S表面に照射される。投光用センサヘッド81から照射される光は広角に広がるため、これを収束するために集光レンズ85が設けられている。集光レンズ85を通過した測定光は、基板Sに向けて投光される。
基板Sに投光された測定光は、基板Sの表面と堆積された薄膜との間の界面で一部が透過して一部が反射する。すなわち、基板Sと薄膜とは材質が異なるため、光に対する屈折率が異なる。また、基板Sと大気でも屈折率が異なる。このため、基板Sと薄膜との間の界面、及び基板Sの表面では測定光の一部が反射する。反射光から膜厚を測定する具体的な方法については後述する。
基板Sから反射される反射光は、集光レンズ85で収束され、受光用センサヘッド91に入射する。受光用センサヘッド91には光ファイバ92の一端が接続されている。受光用センサヘッド91は、投光用センサヘッド81と同様に、円筒状部材の内部に光ファイバ92の先端部が収納された構造をしており、回転ドラム13の側面に向かって垂直方向に位置するように、真空容器11の側壁を貫通した状態で真空容器11の側壁に投光用センサヘッド81と隣接して取り付けられている。光ファイバ92の他端は光学検出装置93に接続している。受光用センサヘッド91に入射した反射光は、光ファイバ92の内部を伝送して光学検出装置93に入射する。
光学検出装置93は光ファイバ92から伝送された光の強度を測定する装置である。光学検出装置93は、コリメータ93aと、分光素子としてのグレイティング93bと、受光素子としてのフォトダイオード93cと、A−D変換部93dと、演算手段としてのCPU(不図示)と、記憶手段としてのメモリ及びハードディスク(いずれも不図示)と、を主要な構成要素として具備している。
光学検出装置93に入射した反射光はコリメータ93aを通過する。コリメータは細いスリットが複数設けた平板状部材で、光ファイバから伝送された反射光を平行な光線の束に偏向する。コリメータ93aを通過した反射光はグレイティング93bに照射される。
グレイティング93bは回折格子を備え、コリメータ93aから入射した光のうち所定の波長の光のみを出射する機能を有している。グレイティング93bは回転軸を有しており、グレイティング93bに入射する光とグレイティング93bとの相対角度を変更することにより、出射する光の波長を変更することが可能となっている。グレイティング93bから出射した光はフォトダイオード93cに照射される。
フォトダイオード93cは、基板Sから反射した光を検知する受光素子である。本実施形態では受光素子としてフォトダイオードが用いられている。フォトダイオードはp型およびn型の半導体を結合したもので、その接合面に光が当たるとその光の強度に応じた電流を発生する。その電流はA−D変換部93dへ出力される。
A−D変換部93dは、フォトダイオード93cから出力される電気信号をデジタル信号に変換して出力する機能を有する。すなわち、A−D変換部93dでは、フォトダイオード93cで受光した光の強度をデジタル信号化して出力している。A−D変換部93dから出力されたデジタル信号は、膜物性値としてCPUで処理される。
CPUではA−D変換部93dから伝送される膜物性値に基づいて膜厚の演算を行う。ここで、光学検出装置93で膜厚を演算する原理を説明する。集光レンズ85で収束された測定光は、薄膜が形成されている基板S上に常時照射されている。基板S上に照射された測定光は膜の表面で反射する光と、薄膜と基板との境界で反射する光が干渉を起こして、全体としてのエネルギー反射率が膜厚により変化する。
薄膜がこのような屈折率nsの透明基板に形成された場合、基板から反射または基板を透過する測定光の光量、薄膜の幾何学的膜厚dの増加とともに周期的に極値を表すことが知られている。すなわち、図9に示すように、薄膜の屈折率をn,測定光の波長をλとすると、形成された薄膜の光学膜厚ndがλ/4の整数倍となるたびに、光量に周期的な極値が現れる。この極値を基に光学膜厚ndの値を算出することで、幾何学的膜厚dを測定することができる。
より詳細に説明すると、まず基板から反射した光の強度をもとに所定の時間における光の強度を積算することで光量を算出する。次に、スパッタ開始後に測定された測定光の極値近傍における光量の平均値とスパッタ開始前における光量との差をA、極値を過ぎた任意点での光量と極値近傍での光量の平均値との差をBとして、B/Aを算出する。一方、所定の膜厚を有する基板のB/Aの値を異なる膜厚を有する複数の基板に対して事前に測定しておき、B/A値と膜厚との相関関係を関数として光学検出装置93のメモリに格納しておく。そして、成膜処理工程において所定のタイミングで光量をサンプリングしてB/Aの実測値を演算する。この演算された結果と事前に記憶されたB/A値の関数に基づいて、基板に形成された薄膜の膜厚を膜厚演算部であるCPUで演算する。演算された膜厚値は、光学検出装置93の膜厚記憶部であるメモリやハードディスクに格納される。
光学検出装置93では、基板Sから反射する反射光のうち、測定制御コンピュータ96から指示されるタイミングで測定光のサンプリングを行い、このサンプリングした測定光に基づいて膜厚を演算している。測定制御コンピュータ96からの指示は、後述するようにロータリーエンコーダ100で検出された回転位置に基づいている。
測定された膜厚の値は、測定制御コンピュータ96に出力され、ディスプレイに表示することが可能となっている。オペレータは、このディスプレイにリアルタイムに表示される膜厚の値を確認することで、成膜工程の進行具合を確認することができる。
光学検出装置93は、上述したように単一の基板Sについて膜厚を演算する構成としているが、回転ドラム13の回転方向に沿った複数の基板に対して膜厚を測定して、その平均値を演算する平均値演算部を備える構成としてもよい。図6には、平均値演算部を備えた光学検出装置93が示されている。平均値演算部は、平均値算出ソフトウェアを光学検出装置93の記憶手段に予め記憶させておき、この平均値算出ソフトウェアに基づいてCPUで算出された膜厚を順次平均化することで平均値演算処理を行わせることが可能となっている。このように平均値演算部を備えることで、複数の基板で膜厚の測定を行ってその平均値を演算して取得することが可能となるため、ノイズが少なく正確な膜厚を測定することが可能となる。この平均値による膜厚測定や膜厚制御については、後述する第二の実施形態において詳細に説明する。
図6に示すように、測定制御コンピュータ96は、演算手段としてのCPUと、記憶手段としてのハードディスク及び半導体メモリと、複数の入力端子と、複数の出力端子と、を主要な構成要素として備えている。入力端子には入力手段としてのキーボード及びマウスが接続されており、出力端子には出力手段としてのディスプレイが接続されている。光学検出装置93の別の入力端子には測定制御コンピュータ96が電気的に接続されている。測定制御コンピュータ96の更に別の入力端子には、後に述べるロータリーエンコーダ100と接続された絶対位置信号生成装置111が電気的に接続されている。
一方、測定制御コンピュータ96の別の出力端子には、スパッタ制御装置50が電気的に接続されている。スパッタ制御装置50は、スパッタの開始や停止、成膜レートの調整などの薄膜形成装置1の制御全般を行う装置である。
次に、回転ドラム13の回転位置を検出する回転位置検出手段について説明する。図7は、本発明の回転位置検出手段の一例としてのロータリーエンコーダ100の斜視部分断面図である。ロータリーエンコーダ100は、ハウジング101(図7では不図示)と、ロータリーエンコーダ回転軸102と、回転スリット板103と、固定スリット板104と、発光素子105と、受光素子106とにより構成される。
ロータリーエンコーダ100は回転ドラム13の回転角度(アナログ量)をパルス信号(デジタル量)に変換する機能を有する。本実施形態では、ロータリーエンコーダ100としてアブソリュート型のロータリーエンコーダが用いられている。アブソリュート型のロータリーエンコーダは、回転の有無にかかわらず現在の回転位置を絶対位置情報として出力する。このため、回転ドラム13が停止している場合であっても回転ドラム13の絶対位置情報を常時取得することが可能となる。
本発明のロータリーエンコーダ100は、回転ドラム13の回転位置を検出する。また、回転ドラム13の外周面には基板Sが保持されている。従って、本発明の薄膜形成装置は、回転ドラム13の回転位置をロータリーエンコーダ100で検出することにより、基板Sの回転位置を間接的に検出することが可能となっている。
図7では示していないが、ハウジング101は、ロータリーエンコーダ回転軸102,回転スリット板103,固定スリット板104,発光素子105,受光素子106を収納するケースである。図2に示すとおり、ハウジング101は、固定部材101aを用いて真空容器11の上面に固定されている。
ロータリーエンコーダ回転軸102は、カップリング110を介してドラム回転軸18bに接続されている。ロータリーエンコーダ回転軸102の端面と、ドラム回転軸18bの端面を接合して、接合面周囲をカップリングで固定することで、両回転軸を固定している。回転ドラム13の底面にはモータ17が接続されており、モータ17の駆動により回転ドラム13が回転する。その回転はドラム回転軸18b,カップリング110を介してロータリーエンコーダ回転軸102へ伝達され、ロータリーエンコーダ回転軸102は回転する。
図7に戻って、ロータリーエンコーダ回転軸102の端面には、回転スリット板103が、回転スリット板103の中心軸とロータリーエンコーダ回転軸102が同軸となるように取り付けられている。回転スリット板103は、ドラム回転軸18bの回転に伴って、ロータリーエンコーダ回転軸102を回転軸として回転する。
回転スリット板103は、エポキシ樹脂などから構成された円板状部材であり、板面には複数のスリット103aが設けられている。円板状部材の板面には、複数のスリットから構成されるトラックが複数設けられている。各トラックは円板状部材の中心から同心円状に配置されている。同じトラックに配置されるスリット103aは同一の形状をしており、互いに等間隔に配置されている。また、異なるトラックに配置されるスリット103aは、互いに異なる形状をしている。
固定スリット板104は、複数の格子状スリット104aが設けられた平板状部材である。固定スリット板104は、回転スリット板103に対して一定間隔を空けて平行に設けられている。固定スリット板104はハウジング101に固定されている。このため、ロータリーエンコーダ回転軸102が回転しても固定スリット板104は回転しない。
ハウジング101内には、複数の発光素子105および複数の受光素子106が設けられている。発光素子105および受光素子106は、回転スリット板103と固定スリット板104を挟んで互いに対向して配置されている。発光素子105としては、発光ダイオードなど公知の素子が用いられる。受光素子106としては、フォトトランジスタなど公知の素子が用いられる。発光素子105および受光素子106は、回転スリット板103のトラック数と同じ数だけそれぞれ設けられている。
発光素子105から照射される光は、回転スリット板103のスリット103aおよび固定スリット板104の格子状スリット104aの両スリットを透過した場合に受光素子106で検出される。ロータリーエンコーダ回転軸102が回転することにより回転スリット板103が回転して、回転スリット板103のスリットとスリットの間で光路が遮られた場合には、受光素子106では光は検出されない。
複数の受光素子106は、それぞれ異なるトラックにおいてスリット103aを通過する光を検知する。スリット103aの形状や配置はトラック毎にそれぞれ異なっているため、回転スリット板103の回転位置によって光を受光している受光素子106の組み合わせは異なる。逆にいえば、光を受光している受光素子106の組み合わせに基づいて、回転ドラム13の回転位置を決定することができる。
ロータリーエンコーダ100の受光素子106は、図6に示すように、絶対位置信号生成装置111と電気的に接続されている。絶対位置信号生成装置111は、回転ドラム13の回転位置を絶対値として出力する。絶対位置信号生成装置111は、A−D変換部111aおよび絶対位置信号生成部111bを備える。
A−D変換部111aはロータリーエンコーダ100の受光素子106に電気的に接続され、受光素子106から出力された電気信号をデジタル信号に変換して出力する。すなわち、受光素子106で検出した明暗情報を波形整形して矩形波のパルス信号として出力する。これにより、アナログ量である回転ドラム13の回転位置をデジタル信号に変換することができる。
絶対位置信号生成部111bは、A−D変換部111aから出力されるデジタル信号を基に、回転ドラム13の絶対位置情報を演算する。絶対位置信号生成部111bでは、発光素子105からの光を受光している受光素子106の組み合わせから、回転ドラム13の回転位置を一義的に決定する。回転ドラム13の回転位置は二進数のデータとして測定制御コンピュータ96へ出力される。
測定制御コンピュータ96へ入力された回転位置は、測定制御コンピュータ96のCPUで演算処理されて実数値化される。本実施形態で使用されるロータリーエンコーダ100の分解能は16ビットであるため、回転ドラム13の回転位置は「1」から「65536」までの数値情報に変換される。以下、回転ドラム13の回転位置を「番地」と呼ぶ。番地情報は測定制御コンピュータ96の記憶手段に保持される。
本実施形態で使用されるロータリーエンコーダ100は16ビットの分解能を有している。すなわち、(360/65536)°の回転角の変化を検出することができる。ただし、本発明で用いられるロータリーエンコーダの分解能はこれに限定されず、16ビットよりも分解能が低いものであっても、回転ドラム13の回転位置を十分に検出できるものであれば使用できる。なお、16ビットよりも分解能が高いロータリーエンコーダも当然使用することができる。
本実施形態で使用されているロータリーエンコーダ100は光学素子を用いる光学式であるが、回転円板の外周面に一定間隔ごとに磁性体を配置し、円板の回転による磁気の変化を検知する磁気式であってもよい。また、本実施形態で使用するロータリーエンコーダ100はアブソリュート式を採用しているが、回転軸が回転している場合にのみ回転位置を出力するインクリメンタル式であってもよい。
ただし、ロータリーエンコーダ100としては、回転の有無にかかわらず常時回転位置を検出することが可能なアブソリュート式であるほうが好適である。
測定制御コンピュータ96は、ロータリーエンコーダ100で検出された回転位置を番地情報に変換する番地情報生成部と、ロータリーエンコーダ100で検出された回転位置に基づいて光学検出装置93の測定タイミングを制御するタイミング決定部を備えている。番地情報生成部では、ロータリーエンコーダ100で検出された回転位置に基づいて、測定制御コンピュータ96のCPUが回転位置を番地情報に変換する。タイミング決定部では、番地情報生成部で生成された番地情報に基づいて、光学検出装置93において反射光のサンプリングを行うタイミングが決定される。具体的には、所定の番地(例えば、199番地)になるとサンプリング開始信号が生成され、このサンプリング開始信号が光学検出装置93に送信される。また、所定の番地(例えば、201番地)になるとサンプリング停止信号が生成されて光学検出装置93に送信される。
なお、測定制御コンピュータ96は本発明の測定制御手段に相当する。
光学検出装置93は受信したサンプリング開始信号に応答して反射光のサンプリングを開始する。サンプリングが開始されると、光学検出装置93のフォトダイオードで受光される反射光の光量データがメモリに記憶される。サンプリングは光学検出装置93の内部クロックに同期して行われ、測定制御コンピュータ96からのサンプリング停止信号を受信するまで継続される。サンプリング停止信号を受信した場合には、光学検出装置93は光量データのサンプリングを停止する。そして、サンプリング開始信号を受信した後からサンプリング停止信号を受信するまでの間に受光した光量の積算値に基づいてCPUによりB/A値の算出が行われる。更に、CPUではこのB/A値の実測値に基づいて膜厚が算出される。
このように、本実施形態の薄膜形成装置1によれば、ロータリーエンコーダ100で検出した回転位置に基づいて光学検出装置93で膜厚を測定するタイミングを決定しているため、一回転ごとに所定の回転位置にある基板Sに対して膜厚の測定を行うことができる。すなわち、回転ドラム13の回転により基板Sの位置が変動しても、常に同じ基板の同じ位置に対して同じ入射角で照射された測定光に基づいて膜厚を測定することができる。従って、膜厚を正確に測定することが可能となる。
更に、図1及び図6に示すように、測定制御コンピュータ96は、スパッタ制御装置50に電気的に接続されている。スパッタ制御装置50は膜厚制御信号生成部を備えており、測定制御コンピュータ96から入力される膜厚データに基づいて成膜レートを調整して、膜厚を制御する膜厚制御信号を生成する。
スパッタ制御装置50は更に、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給するトランス23に電気的に接続されており、膜厚制御信号をトランス23に送信することが可能となっている。膜厚制御信号を受信したトランス23は、膜厚制御信号に応答してマグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力量を調整することが可能となっている。このように、本実施形態の薄膜形成装置では、トランス23を制御することで成膜レート、すなわち基板Sに供給される膜原料物質の量を調整して、基板Sに形成される薄膜の膜厚を調整することが可能となっている。
具体的には、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力の量を大きくすると、ターゲット22a,22bがスパッタされる量が多くなり、基板Sに付着する膜原料物質の量が多くなる。逆に、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力の量を小さくすると、ターゲット22a,22bがスパッタされる量が少なくなり、基板Sに付着する膜原料物質の量が少なくなる。
また、スパッタ制御装置50は、マスフローコントローラ31,33に電気的に接続されており、膜厚制御信号をマスフローコントローラ31,33に送信することが可能となっている。膜厚制御信号を受信したマスフローコントローラ31,33は、膜厚制御信号に応答して、マスフローコントローラ31,33を通過するガスの流量を制御することが可能となっている。
具体的には、スパッタ制御装置50は、マスフローコントローラ31,33を通過するガスの流量を流量設定値として送信して、マスフローコントローラ31,33内の電子回路に流量の設定値として格納する。マスフローコントローラ31,33は、通過するガスの流量がこの設定値に近づくようにコントロールバルブの開閉を行って、流量を調整する。ガスの流量が増加すると、ターゲット22a,22bに供給されるスパッタガスの量が多くなる。従って、スパッタされる量が増加するため、成膜レートが上昇して膜厚が増加する。逆に、ガスの流量が減少すると、ターゲット22a,22bに供給されるスパッタガスの量が少なくなる。従って、スパッタされる量が減少するため、成膜レート下降する。
更にまた、スパッタ制御装置50は、補正板駆動モータ42a,42bに電気的に接続されており、膜厚制御信号を補正板駆動モータ42a,42bに送信することが可能となっている。膜厚制御信号を受信した補正板駆動モータ42a,42bは、膜厚制御信号に応答して、膜厚補正板41a,41bの移動量を調整することが可能となっている。
具体的には、スパッタ制御装置50は、膜厚補正板41a,41bがターゲット22a,22bの中心方向へ向かうように補正板駆動モータ42a,42bを駆動すると、ターゲット22a,22bの前面を覆う膜厚補正板41a,41bの面積が増加して、基板Sに付着する膜原料物質の量が減少する。逆に、膜厚補正板41a,41bがターゲット22a,22bの中心方向から離れるように補正板駆動モータ42a,42bを駆動すると、ターゲット22a,22bの前面を覆う膜厚補正板41a,41bの面積が減少して、基板Sに付着する膜原料物質の量が増加する。このような制御を行うことにより、基板Sに形成される膜厚を調整して、所望の膜厚とすることが可能となる。
本実施形態の薄膜形成装置1は、上述のようにスパッタ制御装置50によりターゲット22a,22bに供給される電力量の調整、ターゲットに供給されるガスの流量の調整、及び、膜厚補正板の移動量の調整の3つの調整を行うことができるように構成されているが、これらのうちいずれか1のみ、あるいはいずれか2つを調整できるものとしてもよい。
本実施形態の薄膜形成装置1では、ロータリーエンコーダ100で検出した回転位置に基づいて光学検出装置93で膜厚を測定するタイミングを決定しているため、上述したように膜厚を正確に測定することが可能となる。このような正確な膜厚情報に基づいてスパッタ制御装置50により成膜レートの調整が行われるため、膜厚の調整を厳密に行うことが可能となり、所望の膜厚を有する光学製品を得ることができる。
次に、本実施形態の薄膜形成装置1を用いて薄膜を製造する方法について、酸化ケイ素(SiO2)を積層させた薄膜を製造する二つの実施形態を挙げて説明する。薄膜の形成は、薄膜形成の準備を行う工程、酸化ケイ素の薄膜を形成する工程、薄膜形成を終了する工程の順に行われる。
本実施形態の薄膜形成装置1では、ターゲット22a,22bとしてケイ素を、成膜プロセス領域20Aに導入されるスパッタガスとしてアルゴンガスを、成膜プロセス領域20Aに導入される反応性ガスとして酸素ガスを、反応プロセス領域60Aに導入される反応性ガスとして酸素ガスを使用している。
(第一の実施形態)
本発明における第一の実施形態に係る薄膜形成処理工程の流れを示す。図8は第一の実施形態に係る薄膜形成処理工程を示すフロー図である。本実施形態では、回転ドラム13の回転位置が200番地にある基板Sに対して、膜厚測定を一回転ごとに行っている。実際の測定では、199番地から201番地までの間に光学検出装置93で受光した光の全光量を取得して、膜厚の演算に用いている。
ステップ1(SA1)は、膜厚を測定する番地とスパッタを終了する膜厚を設定するステップである。測定制御コンピュータ96のキーボードからオペレータが所望の条件を入力する。本実施形態では、回転位置が200番地にある基板Sに対して膜厚測定を行うように設定する。この200番地では、測定する予定の基板から反射する光が受光用センサヘッド91に対して平行に入射することが事前に確認されている。また、オペレータはキーボードから所望のスパッタ終了膜厚をセットする。入力された終了膜厚は、測定制御コンピュータ96内でB/A値に変換される。
ステップ2(SA2)は、薄膜形成準備処理を開始するステップである。まず、ターゲット22a,22bをマグネトロンスパッタ電極21a,21bに保持させる。本実施形態では、ターゲット22a,22bの材料としてケイ素(Si)を用いる。扉11Cを閉じた状態で真空ポンプ15aを作動させて排気を行い、薄膜形成室11Aを10−2Pa〜10Pa程度の真空状態にする。このとき、バルブV1,V2,V3が開放され、アンテナ収容室61Aも同時に排気される。
その後、回転ドラム13をロードロック室11Bの位置でロックした状態で、回転ドラム13に基板Sを保持した基板保持板13aを取り付ける。続いて、扉11Dを閉じた状態で真空ポンプ15bを作動させてロードロック室11Bを排気し、10−2Pa〜10Pa程度の真空状態にする。更に、扉11Cを開いて回転ドラム13を薄膜形成室11Aへ移動させる。回転ドラム13を薄膜形成室11Aへ移動させた後に扉11Cを再び閉じる。真空容器11の内部,アンテナ収容室61Aの内部を上述の所定の圧力に減圧する。その後、真空容器11の内部,アンテナ収容室61Aの内部の圧力が安定した後に、成膜プロセス領域20Aの圧力を1.0×10−1Pa〜1.3Paに調整する。
ステップ3(SA3)は、回転ドラム13の回転を開始するステップである。回転ドラム13の回転は、オペレータが薄膜形成装置1の図示しない操作パネルに設けられたドラム回転スイッチを押すことにより開始される。ドラム回転スイッチを押すと、モータ17が作動して回転ドラム13が回転する。また、測定制御コンピュータ96には、ロータリーエンコーダ100から回転ドラム13の回転位置(番地情報)が出力される。測定制御コンピュータ96はまた、検出される番地情報と測定制御コンピュータ96の内部クロックに基づいて回転ドラム13の回転速度を演算する。回転ドラム13の回転速度がほぼ一定になると次のステップへ移行する。
本実施形態における薄膜形成装置では、成膜プロセス領域20Aにおいて基板Sの表面に薄膜を形成し、続く反応プロセス領域60Aにおいてこの薄膜の酸化処理を行うことで基板表面に中間薄膜を形成している。このため、回転ドラム13の回転が遅いと、成膜プロセス領域20Aにおいて形成される薄膜が厚くなり、反応プロセス領域60Aでこれを完全には酸化することが困難となり、不純物の混じった不均一な薄膜が形成されるという不都合がある。
また、反応プロセス領域60Aにおいて行われる酸化工程では、薄膜の酸化反応により薄膜の膨張現象が起こる。このような体積の増加は薄膜内部に圧縮応力を生じる。成膜プロセス領域20Aで形成される薄膜の膜厚が厚い場合、生成される薄膜は薄膜間の隙間構造が少なく、酸化ケイ素が密に凝集した薄膜構造となっている。このような薄膜では、反応プロセス領域60Aでの酸化反応による体積膨張の影響が大きい。一方、成膜プロセス領域20Aで形成される薄膜の膜厚が薄い場合、生成される薄膜は薄膜間に生じる隙間構造を多く有している。このような薄膜において体積が膨張した場合、増加した体積は隙間構造に吸収されるため、薄膜内部に圧縮応力が生じにくい。
更に、回転ドラム13が低速回転している場合は、回転のぶれが大きく、正確な膜厚測定や薄膜形成処理の制御が困難となる。一方、回転ドラム13の回転速度が大きい場合、回転軸の回転部分に発生する遠心力が大きく、ぶれの少ない安定した回転が得られる。
上述のように、回転ドラム13の回転速度が小さい場合には様々な問題が生じる。このような問題を回避するため、薄膜形成処理においては回転ドラム13の回転速度は早いほうが好ましく、特に20rpm以上であることが好適である。
本発明の薄膜形成装置は、ロータリーエンコーダ100を用いて基板の回転位置を検出して、この回転位置に基づいて薄膜測定を行っているため、回転ドラム13をこのような高速で回転した状態のまま膜厚の測定をリアルタイムに行うことが可能となっている。
ステップ4(SA4)は、投光を開始するステップである。本実施形態では連続光を照射するので、光源83の図示しないスイッチをオペレータがオンにすることで投光が開始される。なお、投光の開始をオペレータが手動で行うのでは無く、例えば光源83を測定制御コンピュータ96と電気的に接続して、所定の条件になると測定制御コンピュータ96からの指示により自動的に投光を行うようにしてもよい。
光源のスイッチがオンになると、電源84から供給される電力により光源83は白色光を発光する。光源83からの光は光ファイバ82内を伝送して、投光用センサヘッド81端部より基板Sの表面に照射される。なお、本実施形態において、ドラム回転ステップ(S3)の後に投光工程が開始されているが、ドラム回転ステップ(S3)や薄膜形成準備ステップ(S2)の間に開始されてもよい。
ステップ5(SA5)は、回転ドラム13の回転位置をチェックして、1番地か否かを判断するステップである。現在の番地が1番地である場合は薄膜形成処理を開始する(ステップ6)。1番地でない場合は、1番地になるまで薄膜形成処理を開始せずに待機する。
ステップ6(SA6)は、薄膜形成処理を開始するステップである。薄膜形成処理は、成膜プロセス領域20Aおよび反応プロセス領域60Aで行われる。成膜プロセス領域20Aでは、ターゲット22a,22bに対してスパッタが行われて、基板Sの表面にケイ素やケイ素の不完全反応物からなる薄膜が形成される。続く反応プロセス領域60Aでは、成膜プロセス領域20Aで形成された薄膜に対して酸化処理を行うことにより、ケイ素の完全反応物を主とした中間薄膜が形成される。
測定制御コンピュータ96からスパッタ制御装置50へスパッタ開始指示が与えられて、薄膜形成処理が開始される。スパッタ開始指示を受けたスパッタ制御装置50は、交流電源24および高周波電源65に対して、それぞれトランス23およびマッチングボックス64に交流電圧を印加するよう指示を出す。このスパッタ開始指示により、薄膜形成装置1においてスパッタが開始される。
なお、ターゲット22a,22bと基板Sの間に配置され、ターゲット22a,22bの前面を遮蔽する遮蔽部材を設けておき、スパッタ開始指示が与えられた場合にこの遮蔽部材をターゲット22a,22bの前面から移動してターゲット22a,22bから膜原料物質が基板Sに到達可能となるように構成してもよい。
スパッタ開始指示によりターゲット22a,22bに交番電界が掛かるようになると、ターゲット22a,22bが交互にアノードとカソードになり、成膜プロセス領域20Aでプラズマが形成される。このプラズマによってカソード上のターゲット22a,22bに対してスパッタが行われる。
続いて基板Sは、回転ドラム13の回転にともなって、成膜プロセス領域20Aに面する位置から反応プロセス領域60Aに面する位置に搬送される。反応プロセス領域60Aには、反応性ガスボンベ67から反応性ガスとして酸素ガスを導入されている。
反応プロセス領域60Aでは、アンテナ63に13.56MHzの高周波電圧を印加されて、プラズマ発生手段60によって反応プロセス領域60Aにプラズマが発生している。反応プロセス領域60Aの圧力は、好ましくは0.7×10−1〜1.0Paに維持される。また、少なくとも反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は10−3Pa以下を保持する。
そして、回転ドラム13が回転して、ケイ素や不完全酸化ケイ素(SiOx2(0<x2<1))、ケイ素の完全酸化物(SiO2)からなる薄膜が形成された基板Sが、反応プロセス領域60Aに面する位置に搬送される。反応プロセス領域60Aでは、薄膜を構成する膜原料物質のうちケイ素や不完全酸化ケイ素をプラズマ処理によって酸化反応させる工程が行われる。すなわち、プラズマ発生手段60によって反応プロセス領域60Aに発生させた酸素ガスのプラズマにより、ケイ素や不完全酸化ケイ素を酸化反応させてケイ素の完全酸化物やケイ素の不完全酸化物に変換させる。
本実施形態では、成膜プロセス領域20Aで形成された薄膜のうちケイ素やケイ素の不完全酸化物を反応プロセス領域60Aで酸化反応させることで、ケイ素の完全酸化物のみからなる中間薄膜や、所望の割合でケイ素(Si)やケイ素の不完全酸化物を有する中間薄膜を形成する。
この反応プロセス領域60Aにおける膜組成変換工程では、反応プロセス領域60Aで膜組成変換されて得られる中間薄膜の膜厚よりも、成膜プロセス領域20Aで形成される薄膜の膜厚のほうが厚くなる。すなわち、成膜プロセス領域20Aで形成される薄膜を構成する膜原料物質のうち、ケイ素やケイ素の不完全酸化物をケイ素の不完全酸化物やケイ素の完全酸化物に変換することにより薄膜の膨張が起こり、膜厚が厚くする。
以下、回転ドラム13の回転毎に、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と反応プロセス領域60Aでの酸化処理が繰り返される。これにより、基板の表面に複数回中間薄膜が積層されて所望の膜厚を有する最終薄膜が形成される。
ステップ7(SA7)は、ロータリーエンコーダ100で検出した現在の番地をチェックし、199番地であるか否かを判断するステップである(本発明の回転位置検出工程に相当する)。現在の番地が199番地である場合は、測定制御コンピュータ96から光学検出装置93に光量Rtのサンプリング開始信号が送信されて、光量Rtのサンプリングを開始するステップ(S8)に移行する(本発明のタイミング決定工程に相当する)。現在の番地が199番地でない場合は、199番地になるまで光量Rtのサンプリングせずに待機する。
ステップ8(SA8)は、光学検出装置93で受光した反射光の光量データをサンプリングするステップである。本実施形態では、測定光は常に基板Sの表面に照射されており、測定光が基板Sで反射された場合には、光学検出装置93でも常に反射光を受光している。光学検出装置93のフォトダイオード93cで検出される光量Rtは光学検出装置93のメモリに順次記憶される。
ステップ9(SA9)は、ロータリーエンコーダ100で検出した現在の番地をチェックして、201番地であるか否かを判断するステップである。現在の番地が201番地である場合は、光量データのサンプリングを終了して、続く膜厚演算ステップに移行する(ステップS10)。201番地でない場合は、光量データのサンプリングを継続する。測定制御コンピュータ96では、199番地から201番地までの間に受光した光の強度を積算して光量Rtを算出する。
このように、本実施形態の薄膜形成方法によれば、一回転ごとに常に同じ番地の測定光に基づいて膜厚の演算が行われるため、膜厚を正確に取得することが可能となっている。
ステップ10(SA10)は、光学検出装置93で受光した測定光の光量Rtに基づいて膜厚演算を行うステップである(本発明の光学測定工程に相当する)。本ステップでは、ステップ7からステップ9までの工程で得られた光量Rtに基づいて膜厚を演算している。膜厚を算出する方法については、光学検出装置93の説明において既に述べたとおりである。
ステップ11(SA11)は、膜厚の調整を行うステップである。本ステップでは、ステップ10で取得した膜厚の情報に基づいて、スパッタ手段20のトランス23、ガス供給手段のマスフローコントローラ31,33、及び、膜厚補正板41a,41bを駆動する補正板駆動モータ42a,42bのいずれか少なくとも1つを制御することにより、膜厚の調整を行っている。
すなわち、測定制御コンピュータ96は、光学検出装置93で測定された膜厚を取得して、この膜厚に基づいてスパッタ制御装置50に膜厚調整を行うように指示を出す。具体的には、光学検出装置93で測定された膜厚が目標とする膜厚よりも薄い場合には、測定制御コンピュータ96はスパッタ制御装置50に対して、成膜レートを増加する方向に薄膜形成装置1を制御するよう指示を出す。成膜レートを増加するよう指示を受けたスパッタ制御装置50は、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力を増加するか、マスフローコントローラ31,33を制御して成膜プロセス領域20Aに供給されるガスの量を増加させるか、あるいは補正板駆動モータ42a,42bを駆動して膜厚補正板41a,41bをターゲットの中心方向から離間するように移動させるか、のいずれか少なくとも1つを行うことにより、成膜レートを増加させる。
反対に、測定制御コンピュータ96で取得した膜厚が目標とする膜厚よりも厚い場合には、測定制御コンピュータ96はスパッタ制御装置50に対して、成膜レートを減少するよう方向に薄膜形成装置1を制御するよう指示を出す。成膜レートを減少するよう指示を受けたスパッタ制御装置50は、マグネトロンスパッタ電極21a、21bに供給される電力を減少するか、マスフローコントローラ31,33を制御して成膜プロセス領域20Aに供給されるガスの量を減少させるか、あるいは補正板駆動モータ42a,42bを駆動して膜厚補正板41a,41bをターゲットの中心方向に向かって移動させるか、のいずれか少なくとも1つを行うことにより、成膜レートを減少させる。
このように、本発明の薄膜形成装置によれば、回転ドラム13を回転した状態のまま、リアルタイムに膜厚を測定して、この膜厚に基づいて成膜レートを調整するため、所望の薄膜を有する光学製品を製造することが可能となっている。
ステップ12(SA12)は、現在の膜厚がS1で設定した終了膜厚か否かを判断するステップである。終了膜厚かどうかは、光学検出装置93で測定された膜厚と、予め設定しておいた終了膜厚を比較することで行われる。膜厚の実測値が終了膜厚以上である場合は、薄膜形成処理の停止位置か否かを判断するステップ13(S13)へ移行する。
ステップ13(SA13)では回転ドラム13の現在の番地をチェックして、回転位置が1番地である場合は薄膜形成処理を停止する(S14)。1番地でない場合は、1番地になるまで薄膜形成処理を継続し、1番地になったときに薄膜形成処理を停止する。これにより、オペレータが設定した終了膜厚とほぼ等しい膜厚で薄膜形成処理を停止することが可能となり、所望の膜厚を有する基板を得ることができる。
また、本実施形態では、回転ドラム13の回転位置に基づいて薄膜形成処理の開始と停止を行っている。すなわち、ステップ4において回転ドラム13の回転位置が1番地の時に薄膜形成処理の開始を行い、ステップ13において開始位置である1番地と同じ1番地で薄膜形成処理を停止している。このため、回転ドラム13に保持されているすべての基板について同じ回数回転したことになり、すべての基板について同じ回数薄膜形成処理が行われたことになる。仮にドラム停止位置を厳密に制御せずに薄膜形成処理を停止した場合は、ドラム上の回転位置によっては一回転分回転数の少ない基板が生じることになる。一回転分回転数が少ないと、一回転分薄膜形成処理が行われなかったことになる。この一回転分による膜厚の違いは、例えば薄膜形成レートが0.5nm/sで回転速度が60rpmの場合では、約0.5nmである。
このように、本実施形態の薄膜形成装置によれば、薄膜形成処理を開始した位置と同じ位置で薄膜形成処理を終了するため、回転数の違いにより基板間で膜厚に違いが生じることがなく、すべての基板について均質な膜厚を有する基板を得ることが可能である。
ステップ14(SA14)は、スパッタ処理の停止を行うステップである。前述したように、スパッタ処理を停止する位置を厳密に設定しているため、回転数の違いにより基板間で膜厚に違いが生じることがない。スパッタ処理を停止するには、測定制御コンピュータ96からスパッタ制御装置50へスパッタ停止指示を送る。
スパッタ停止指示を受けたスパッタ制御装置50は、交流電源24からトランス23への電力の供給を停止する。また、高周波電源65から、マッチングボックス64への電力の供給を停止する。これにより、成膜プロセス領域20Aでの薄膜形成処理と、反応プロセス領域60Aでの酸化処理の両方の処理が停止し、スパッタ処理が終了する。
ステップ15(SA15)は、投光を停止するステップである。このステップでは光源を停止して、測定光の投光を終了する。光源83の停止は、オペレータが光源83のスイッチをオフにすることで行われる。なお、本ステップは、次のドラム停止ステップが終了してから行ってもよい。また、投光を停止する操作は、オペレータが手動で行うのでは無く、膜厚測定装置等により自動的に行う構成としてもよい。
ステップ16(SA16)は、回転ドラム13の回転を停止するステップである。回転ドラム13の停止は、薄膜形成装置1の操作パネルに設けられたドラム停止スイッチをオペレータが押すことにより行われる。ドラム停止スイッチを押すと、モータ17の駆動が停止し、回転ドラム13を回転が停止する。測定制御コンピュータ96に表示されるドラム回転速度が0rpmになって回転ドラム13が完全に停止すると、次の薄膜形成終了処理を行う。
ステップ17(SA17)は、薄膜形成終了処理を行うステップである。回転ドラム13の回転が停止すると、回転ドラム13とモータ17との係合を解除する。続いて回転ドラム13を真空容器11下面に設けられたレール上に載置し、薄膜形成室11Aからロードロック室11Bへ搬送する。その後、扉11Cを閉じて薄膜形成室11Aを真空状態に保ったままにして、次回の成膜処理に備える。
続いて、ロードロック室11Bに備えられた真空ポンプ15bの駆動を停止し、ロードロック室11B内を徐々に大気圧へ開放する。ロードロック室11B内に備えられた図示しない真空計を確認して、大気圧になった時点で扉11Dを開き、基板保持板13aをフレーム13bから取り外す。基板保持板13aから基板Sを回収して、一連の薄膜形成工程が終了する。
以上、本実施形態に係る薄膜形成処理について詳細に説明を行った。本発明では、基板Sの回転位置を正確に検出して膜厚を測定している。このため、20rpm以上の回転速度で回転ドラム13を回転させた状態でもリアルタイムに且つ正確に膜厚を測定することが可能である。
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態に係る膜厚測定処理の流れを示す。図10は第2実施形態に係る薄膜形成処理工程の流れを示すフロー図である。本実施形態では、32枚の基板保持板13aを備えたドラムにおいて膜厚を計測する例について説明する。
図6に示すように、本実施形態の光学検出装置93には平均値演算部が設けられており、平均値の算出が行われる。
本実施形態と第一の実施形態との相違点は、本実施形態では回転ドラム13の回転方向に沿って保持された複数の基板に対して光量のデータを取得し、光学検出装置93の平均値演算部で光量の平均値を算出して、これを膜厚演算に用いている点にある。すなわち、本実施形態では、まず回転ドラム13の回転方向に沿って32枚の基板保持板13aに保持されている基板についてそれぞれ光量Rt(n)を測定し、1回転で合計32枚の基板について光量を測定する。次に、この32枚の基板について平均値演算部で光量の平均値を求める。この平均光量Raveを基にして平均膜厚を演算する。このように、本実施形態では複数の基板で得られたデータを基に膜厚を演算するため、S/N(シグナル/ノイズ)比が大きく、正確な膜厚情報を得ることができる。
ステップ1(SB1)は、膜厚を測定する番地と、スパッタを終了する膜厚を設定するステップである。測定制御コンピュータ96のキーボードからオペレータが所望の条件を入力する。ここでは、(2048×n)番地(nは整数)にある基板Sに対して膜厚測定を行うように設定している。最初の2048番地では、測定しようとする基板から反射する光が受光用センサヘッド91に対して平行に入射することが事前に確認されている。
回転ドラム13は、回転軸線Zを中心として32枚の基板保持板13aが放射状に取り付けられており、その横断面形状は正三十二角形である。このため、2048番地の基板から反射する光が受光用センサヘッド91に対して平行に入射すると、(2048×2)番地においても同様に、基板から反射する光が受光用センサヘッド91に対して平行に入射する。すなわち、(2048×n)番地において、基板から反射する光が受光用センサヘッド91に対して平行に入射する。このように、本実施形態における薄膜形成工程では、ドラムが一回転すると、円周上に設けられた32枚の基板について膜厚の測定をおこなうことになる。
また、オペレータはキーボードから所望のスパッタ終了膜厚をセットする。入力された終了膜厚は、測定制御コンピュータ96内でB/A値に変換される。
ステップ2(SB2)からステップ6(SB6)は、第一の実施形態におけるステップ2(SA2)からステップ6(SA6)とそれぞれ同じ処理であるため、ここでは説明を省略する。ステップ6(SB6)において、スパッタ処理を開始する直前にカウンタnを初期化する。
ステップ7(S7)は、ロータリーエンコーダ100で検出した現在の番地をチェックし、(2048×n)−1番地(nは整数)であるか否かを判断するステップである。現在の番地が(2048×n)−1番地である場合は、測定制御コンピュータ96から光学検出装置93に光量Rt(n)のサンプリング開始信号を送信して、ステップ8の光量Rt(n)のサンプリングを開始するステップ8に移行する。現在の番地が(2048×n)−1番地でない場合は、(2048×n)−1番地になるまで光量Rt(n)のサンプリングせずに待機する。
ステップ8(SB8)は、光学検出装置93で受光した反射光の光量データをサンプリングするステップである。本実施形態の光学検出装置93では、測定光は常に基板に対して照射されており、受光装置側でも入射する反射光は常にフォトダイオード93cで受光されている。この受光している反射光のうち所定のタイミングのもののみをサンプリングして、膜厚演算に用いている。サンプリングされて光学検出装置93のフォトダイオード93cで検出される反射光の光量Rt(n)は、光学検出装置93のメモリに順次記憶される。サンプリングは、測定制御コンピュータ96から後述するサンプリング終了信号が送信されるまで継続される。
ステップ9(SB9)は、ロータリーエンコーダ100で検出した現在の番地をチェックして、(2048×n)+1番地であるか否かを判断するステップである。現在の番地が(2048×n)+1番地である場合は、測定制御コンピュータ96から光学検出装置93へ光量データのサンプリングを終了する指示が送信されて、次の膜厚演算ステップに移行する(ステップS10)。(2048×n)+1番地でない場合は、光量Rt(n)の取り込みを継続する。このようにして、(2048×n)−1番地から(2048×n)+1番地までの3番地の間に受光した光量Rt(n)の積算値を光学検出装置93で算出する。得られたRt(n)の値は光学検出装置93の膜厚記憶部であるメモリ又はハードディスクに格納される。なお、ステップ7からステップ9までの各ステップは、本発明において、回転位置が所定の位置かどうかを判断する工程に該当する。
ステップ10(SB10)は、カウンタnをインクリメントするステップである。本実施形態では2048番地毎にカウンタの数値が加算されてゆく。すなわち、基板一枚を測定する毎にカウンタの数値がアップしてゆく。
ステップ11(SB11)は、カウンタnの値が32かどうかを判断するステップである。n=32である場合は、回転ドラム13上の保持された一周分の基板すべてについて光量Rt(n)のデータの取り込みが済んだことになる。この場合は、次の平均光量算出ステップに進む。カウンタnが32でない場合は、nが32になるまでステップ7からステップ10の工程を続け、光量Rt(n)値を測定制御コンピュータ96のメモリに格納してゆく。
ステップ12(SB12)は、回転ドラム13が一回転する間に測定を行った32枚の基板について、その光量Rt(n)の平均値を算出するステップである。平均光量Raveを算出するための式は、以下の通りである。
このステップは、本発明において、光の特性値の平均値を算出する工程に該当する。また、このステップでは、カウンタnを再び初期化する。
ステップ13(SA13)は、膜厚の演算を行うステップである。本ステップでは、ステップ12で得られた光量Rtの平均値を用いて光学検出装置93で膜厚を演算している。膜厚を算出する方法については、光学検出装置93の説明において既に述べたとおりである。
ステップ14(SB14)からステップ20(SB20)については、第一の実施形態におけるステップ11(SA11)からステップ17(SA17)とそれぞれ同じ処理が行われている。よってここでは説明を省略する。
このように、本発明の第二の実施形態に係る薄膜形成装置では、複数の基板で得られた光量の値を平均して、この平均値を元に膜厚の演算を行っている。従って、一つの基板で得られた光量から膜厚を演算する場合と比較して、ノイズの影響を受けにくく、安定した膜厚を取得することが可能となる。
(第三の実施形態)
続いて、本発明の第三の実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。本実施形態の薄膜形成装置は、成膜プロセス領域で局所的に成膜レートに局所的な変動が生じて、その結果として基板に形成される薄膜の膜厚に差が生じた場合であっても、その差の情報を膜厚分布としてリアルタイムに取得することが可能であり、更にこの膜厚分布に基づいて成膜レートを局所的に調節することにより均一な膜厚を有する基板を提供することが可能となっている。
成膜プロセス領域でのこのような局所的な成膜レートの変動は、ターゲット表面近傍に発生するプラズマの密度分布が均一でないことによりターゲットのエロージョン領域に局所的な違いが生じることや、スパッタガスの導入口近傍と遠方とで生じるスパッタガスの密度の違い、あるいは真空装置内の回転ドラム駆動機構などに膜原料物質が付着して回転速度が径時変化すること等の要因により発生する。
以下に、本実施形態の薄膜形成装置について説明する。図11は第三の実施形態に係る薄膜形成装置の側面図、図12は本実施形態の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した拡大断面図、図13は図12の矢視B方向から見たターゲットの正面図、図14は図12の矢視C方向から見たターゲットの正面図である。本実施形態の薄膜形成装置は、複数の基板に対して同時に膜厚の測定を行うことが可能な光学測定手段を備えている。光学測定手段は、基板の回転方向と垂直方向に配設された複数の投光部と、各投光部から投光され、基板表面で反射する光を受光する複数の受光部とを備えたことを特徴とする。そして、これら複数の受光部で受光した反射光に基づいて、成膜プロセス領域20A内で局所的に成膜レートを調整して基板表面に形成される薄膜の膜厚を調整する。
なお、本実施形態における成膜プロセス領域20A,反応プロセス領域60Aや、光学測定手段180の配置は図1に示す実施形態と同様である。
図11に示すように、本発明の光学測定手段180は、投光用センサヘッド181−1〜181−5と、光ファイバ182と、光源183と、電源184と、集光レンズ185−1〜185−5と、受光用センサヘッド191−1〜191−5と、光ファイバ192と、光学検出装置193と、測定制御コンピュータ196を主要な構成要素として備えている。なお、投光用センサヘッド181−1〜181−5,光ファイバ182,光源183,電源184,集光レンズ185−1〜185−5は投光部を構成している。また、集光レンズ185−1〜185−5,受光用センサヘッド191−1〜191−5,光ファイバ192,及び光学検出装置193は受光部を構成している。
本実施形態と上述した第一及び第二の実施形態との相違点は、本実施形態では回転ドラム13の回転軸線方向(図11のZで示す軸方向)に沿って複数の投光部及び受光部を備えている点にある。
光源183は、前述した第一の実施形態における光源83と同じ装置を使用することができる。光源183には、光ファイバ182が接続されており、光ファイバ182は複数に分岐して、分岐したそれぞれの先端部には投光用センサヘッド181−1〜181−5が接続されている。投光用センサヘッド181−1〜181−5は、円筒状部材の内部に分岐した光ファイバ182のそれぞれの先端部が収納された構造をしており、回転ドラム13の側面に対して略垂直となるように、真空容器11の側壁を貫通した状態で真空容器11の側壁に取り付けられている。また、投光用センサヘッド181−1〜181−5は、それぞれ基板S1〜S5に面するように配置されている。
光源183で発光した光は、光ファイバ182の一端から入射し、光ファイバ内部を伝送して他端に設けられた投光用センサヘッド181−1〜181−5から回転ドラム13方向へ出射する。投光用センサヘッド181−1〜181−5から出射した測定光は、集光レンズ185で集光され、基板S1〜S5の表面にそれぞれ照射される。投光用センサヘッド181−1〜181−5から照射される光は広角に広がるため、これを収束するために集光レンズ185−1〜185−5が設けられている。
基板S1〜S5から反射する反射光は、集光レンズ185−1〜185−5でそれぞれ収束され、受光用センサヘッド191−1〜191−5にそれぞれ入射する。受光用センサヘッド191−1〜191−5には複数の光ファイバ192の端部が接続されている。受光用センサヘッド191−1〜191−5は、投光用センサヘッド181−1〜181−5と同様に、円筒状部材の内部に光ファイバ192の端部が収納された構造をしており、回転ドラム13の側面に向かって垂直方向に位置するように、真空容器11の側壁を貫通した状態で真空容器11の側壁に投光用センサヘッド181−1〜181−5とそれぞれ隣接して取り付けられている。光ファイバ192の他端は光学検出装置193に接続している。受光用センサヘッド191−1〜191−5に入射した反射光は、それぞれ光ファイバ192の内部を伝送して光学検出装置193に入射する。
光学検出装置93は、複数の受光用センサヘッド191−1〜191−5で受光した光のそれぞれの強度を測定する装置である。本実施形態の光学検出装置193は、同時に光の強度を測定できる複数のフォトダイオードを備えている。光学検出装置193が複数の受光用センサヘッド191−1〜191−5で受光した光の強度に基づいて膜厚を測定する原理は、上述した第一の実施形態における光学検出装置93と同じであるため、ここでは詳細は省略する。
光学検出装置193は、回転ドラム13の回転軸線方向に沿った複数の基板S1〜S5の膜厚を測定することができるため、これら複数の基板の膜厚に基づいて、回転軸線方向に沿った基板間で生じる膜厚の差を膜厚分布に関する情報として取得することが可能となっている。
光学検出装置193で取得された膜厚分布に関する情報は、測定制御コンピュータ196へ伝送される。測定制御コンピュータ196は、第一の実施形態における測定制御コンピュータ96と同じ装置を使用することができる。測定制御コンピュータ196は、光学検出装置193で取得された膜厚分布に基づいて、スパッタ制御装置150を介して膜厚分布を調整することが可能となっている。
すなわち、本実施形態の薄膜形成装置は、光学検出装置193で取得された膜厚分布に基づいて、局所的に成膜レートを調整することにより、複数の基板間で均一な膜厚を有する薄膜を形成したり、膜厚分布に所望のばらつきや傾斜を持たせたりすることが可能となっている。以下に、成膜レートを調整する手段について説明する。
図12に示すように、本発明の成膜プロセス領域20Aには、第一の実施形態と同様に、一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、トランス23を介して接続された交流電源24と、ターゲット22a,22bと、ガス供給手段130が配設されている。なお、マグネトロンスパッタ電極21a,21b,トランス23,交流電源24,ターゲット22a,22bについては、第一の実施形態と同じ装置を使用することができるため、説明を省略する。
本実施形態の薄膜形成装置の成膜プロセス領域20A周辺には、スパッタガス供給手段と反応性ガス供給手段の2種類のガス供給手段130が設けられている。図12に示すように、ターゲット22b側の真空容器11側壁には、配管135a,135c,135dと、マスフローコントローラ131−1〜131−5,133−1〜133−5と、スパッタガスボンベ132と、反応性ガスボンベ134とから構成されるガス供給手段130が設けられている。ガス供給手段130は、スパッタガスを供給するためのスパッタガス供給手段と、反応性ガスを供給するための反応性ガス供給手段とから構成される。
なお、この図には、複数のマスフローコントローラ131−1〜131−5をマスフローコントローラ131、複数のマスフローコントローラ133−1〜133−5をマスフローコントローラ133、複数の配管135a−1〜135a−5を配管135aとして記してある。
図13に示すように、スパッタガス供給手段は、単一のスパッタガスボンベ132と、複数の配管135a−1〜135a−5,135cと、配管135a−1〜135a−5と配管135cとの間にそれぞれ設けられスパッタガスの流量を調整する複数のマスフローコントローラ131−1〜131−5と、を主要な構成要素として具備している。
また、反応性ガス供給手段は、単一の反応性ガスボンベ134と、複数の配管135a−1〜135a−5,135dと、配管135a−1〜135a−5と配管135dとの間に設けられ反応性ガスの流量を調整する複数のマスフローコントローラ133−1〜133−5と、を主要な構成要素として具備している。
なお、配管135a−1〜135a−5,135c,135dは、本発明における供給路に該当する。
スパッタガスボンベ132,反応性ガスボンベ134,複数のマスフローコントローラ131−1〜131−5,133−1〜133−5はいずれも真空容器11外部に設けられている。本実施形態では、マスフローコントローラ131−1〜131−5と、133−1〜133−5の計10つのマスフローコントローラが設けられている。
マスフローコントローラ131−1〜131−5は、不活性ガスとしてのアルゴンガスを貯留する単一のスパッタガスボンベ132に配管135cを介してそれぞれ接続されている。また、マスフローコントローラ133−1〜133−5は、反応性ガスを貯留する単一の反応性ガスボンベ134に配管135dを介してそれぞれ接続されている。
なお、複数のマスフローコントローラ131−1〜131−5はスパッタガス流量調整手段として機能し、複数のマスフローコントローラ133−1〜133−5は反応性ガス流量調整手段として機能する。
マスフローコントローラ131−1とマスフローコントローラ133−1はY字型の配管135a−1で接続されており、配管135a−1のY字の一端は真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20Aのターゲット22bの側部に位置して導入口135b−1を形成している。同様に、マスフローコントローラ131−2〜131−5とマスフローコントローラ133−2〜133−5はY字型の配管135a−2〜135a−5でそれぞれ接続されている。配管135a−2〜135a−5はそれぞれ真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20Aのターゲット22b側部に位置して、それぞれ単一の導入口135b−2〜135b−5を形成している。
導入口135b−1〜135b−5は、ターゲット22a,22bを挟んで受光用センサヘッド191−1〜191−5に対向する成膜プロセス領域20Aの位置にそれぞれ形成されている。すなわち、導入口135b−1〜135b−5は、受光部である受光用センサヘッド191−1〜191−5に対応する成膜プロセス領域20Aの位置にそれぞれ形成されている。
配管135a−1を通じて供給されるガスは配管135a−1に設けられた導入口135b−1からターゲット22a,22bの前面に導入される。同様に、他の配管135a−2〜135a−5を通じて供給されるガスは、それぞれの配管に形成された導入口135b−2〜135b−5からターゲット22a,22bの前面に供給される。
なお、本実施形態では、配管135a−1〜135a−5やマスフローコントローラ131,133はそれぞれ5つずつ設けられているが、これらの部材の数としては5つに限定されず、任意の数を設定することが可能である。
また、本実施形態では、スパッタガスをターゲットへ導入する配管と反応性ガスをターゲットへ導入する配管を配管135aとして共通にして、両ガスを配管135a内で混合して混合ガスとしてターゲットへ導入しているが、本発明の供給路としてはこのような共通としたものに限定されず、スパッタガス導入用の配管と反応性ガス導入用の配管をそれぞれ別々に設けて、それぞれのガスを別々にターゲットへ導入する構成としてもよい。
マスフローコントローラ131−1〜131−5,133−1〜133−5はガスの流量を調節する装置であり、ガスボンベからのガスが流入する流入口と、ガスを真空容器11側へ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを主要な構成要素として備えている(いずれも不図示)。電子回路には外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
流入口よりマスフローコントローラ131−1〜131−5,133−1〜133−5内に送入されたガスの質量流量はセンサにより検出される。センサの下流にはコントロールバルブが設けられており、コントロールバルブは、センサで検出した流量と設定された基準値とを比較し、ガスの流量が基準値に近づくようにコントロールバルブの開閉を行うことで、流量の制御を行う。
スパッタガスボンベ132からの不活性ガスは、マスフローコントローラ131−1により流量を調節され、配管135a−1内に流入する。一方、スパッタガスボンベ132からの反応性ガスは、マスフローコントローラ133−1により流量を調節され、配管135a−1内に流入する。配管135a−1に流入した不活性ガス及び反応性ガスの混合ガスは、配管135a−1の導入口135b−1より成膜プロセス領域20Aに配置されたターゲット22bの前面に導入される。
同様に、マスフローコントローラ131−2〜131−5で流量を調整された不活性ガスと、マスフローコントローラ133−2〜131−5で流量を調整された反応性ガスの混合ガスは、配管135a−2〜135a−5の導入口135b−2〜135b−5より成膜プロセス領域20Aにそれぞれ導入される。
不活性ガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等が挙げられる。また、反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等が挙げられる。
次に、本実施形態の特徴の一つである膜厚補正手段140について説明する。図12に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は更に、複数の補正小片を有する膜厚補正手段140を備えている。
図14に示すように、ターゲット22aの右側面前面には、平板状の補正小片141a−1〜141a−5がターゲット22aの長手方向に沿って一列に配設されている。また、ターゲット22bの左側面前面には、補正小片141b−1〜141b−5がターゲット22bの長手方向に沿って一列に配設されている。各補正小片は、図12に示すように、ターゲット22a,22bと回転ドラム13との間であって、且つ、ガスを導入する導入口135b−1〜135b−5(図12では導入口135bとして示す)よりも回転ドラム13側に配置されている。
なお、本実施形態では、ターゲット22a,22bの中央に面する位置に、固定された膜厚補正板141cが配設されている。
補正小片141a−1〜141a−5は、ターゲット22aから所定の間隔を隔てて、ターゲット22aの前面に位置するように配設されている。補正小片141a−1〜141a−5は、ターゲット22aの幅方向と平行となる方向に配置され、ターゲットから飛翔する膜原料物質が基板Sに付着するのを遮蔽する板部材を有している。同様に、補正小片141b−1〜141b−5もターゲット22bから所定の間隔を隔てて、ターゲット22bの前面に位置するように配設されている。
板部材の端部には板面と垂直方向に屈曲した屈曲部が形成されており、この屈曲部には板面と平行方向に螺旋状のネジ溝が形成されている。このネジ溝には、後述する螺旋棒144a−1〜144a−5のネジ溝がそれぞれ螺合している。同様に、補正小片141b−1〜141b−5にも屈曲部及びネジ溝が形成されており、後述する螺旋棒144b−1〜144b−5のネジ溝がそれぞれ螺合している。
補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5は、真空容器11に取り付けられた補正小片駆動手段によって、それぞれがターゲット22a,22bの中心方向に駆動可能に設置されている。本実施形態の補正小片駆動手段は、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5をそれぞれ駆動する補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5と、傘歯車を備えた原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5と、傘歯車を備えた螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5によって構成されている。補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5の出力軸は、原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5と軸線方向が一致するように接続されており、補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5が回動することで、原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5もそれぞれ回動する。
原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5の先端には傘歯車が固定されており、原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5の回転にともなってそれぞれの傘歯車が回転する。傘歯車には、螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5の傘歯車が噛み合わされている。螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5は真空容器11の壁面を貫通している。螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5にはネジ溝が形成されており、このネジ溝は、前述したように、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5のネジ溝とそれぞれ螺合している。
補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5の回転軸が回転すると、その回転は原動軸143a−1〜143a−5,143b−1〜143b−5を介して螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5に伝達される。螺旋棒144a−1〜144a−5,144b−1〜144b−5が回転すると、この回転により補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5がターゲットの中心方向へ進退する。補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5がターゲットの中心方向へ移動して、ターゲットの前面を遮蔽する面積が大きくなると、基板Sへ到達する膜原料物質の量が減少し、成膜レートが減少する。逆に、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5がターゲットの中心方向と反対方向に移動して、ターゲットの前面を遮蔽する面積が小さくなると、基板Sへ到達する膜原料物質の量が増加し、成膜レートが増加する。
補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5は、それぞれスパッタ制御装置150と電気的に接続されており、スパッタ制御装置150により制御される。すなわち、スパッタ制御装置150により、補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5をターゲットの中心方向に移動させるよう指示があると、補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5は一方向に回転して、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5をそれぞれターゲットの中心方向に移動させる。反対に、スパッタ制御装置150により、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5をターゲットの中心方向と反対へ移動させるよう指示があると、補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5は先ほどと反対方向に回転して、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5をそれぞれターゲットの中心方向から離間するように移動させる。
本実施形態では、補正小片141a−1〜141a−5,141b−1〜141b−5の移動手段としてモータを用いているが、本発明の補正小片駆動手段としてはこのようなモータを用いるものに限定されず、例えば真空容器11外部に複数の油圧シリンダを設けて、油圧によりそれぞれの補正小片をターゲットの中心方向へ進退させる構成としてもよい。
本実施形態に係る薄膜形成装置は、上述のように複数の導入口を供えたガス供給手段と、複数の補正小片を備えた膜厚補正手段を備えており、光学測定手段で取得した膜厚分布に基づいて、所定の導入口から導入されるガスの流量を調整したり、所定の補正小片を進退したりすることにより、局所的に成膜レートを調整することで、複数の基板間で均一な膜厚を有する薄膜を形成することが可能となっている。以下に、光学測定手段180で取得した膜厚分布に基づいて、成膜レートを調整する方法について詳細に説明する。
図11に示すように、測定制御コンピュータ196はスパッタ制御装置150に電気的に接続されている。スパッタ制御装置150は、マスフローコントローラ131−1〜131−5及び133−1〜133−5,及び補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5と電気的に接続されている。スパッタ制御装置150は、光学検出装置193で取得した膜厚分布に基づいて、マスフローコントローラ131−1〜131−5を制御して、所定の導入口135b−1〜135b−5から導入されるスパッタガスの流量を調整することにより、局所的に成膜レートを調整する。
具体的には、例えば基板S1の膜厚が他の基板よりも薄い場合には、基板S1に対応する位置に設けられた導入口135b−1からターゲット前面に供給されるスパッタガスの流量を増加させるように、測定制御コンピュータ196からスパッタ制御装置150に制御信号を送信する。スパッタ制御装置150はこの信号を受けて、マスフローコントローラ131−1を制御して配管135a−1を通過してターゲット22a,22bに供給されるガスの流量を増加させる。これにより、ターゲット22a,22bに衝突するスパッタ原子の数が増加して、ターゲットから叩き出される膜原料物質の量が増加する。ターゲットから叩き出された膜原料物質は、基板S1に多く付着する。従って、基板S1の成膜レートが他の基板の成膜レートよりも上昇する。
逆に、基板S1の膜厚が他の基板よりも厚い場合には、基板S1に対応する位置に設けられた導入口135b−1からターゲット前面に供給されるスパッタガスの流量を減少させるように、マスフローコントローラ131−1を制御する。これにより、ターゲット22a,22bに衝突するスパッタ原子の数が減少して、ターゲットから叩き出される膜原料物質の量が減少する。ターゲットから叩き出された膜原料物質は、基板S1に多く付着する。従って、基板S1の成膜レートが他の基板の成膜レートよりも下降する。
同様にして、光学検出装置193で取得した膜厚分布に基づいて、他のマスフローコントローラ131−2〜131−5を制御することにより、成膜レートを局所的に調整する。これにより、複数の基板S1〜S5で均一な膜厚を有する薄膜を形成することが可能となる。
なお、マスフローコントローラ133−1〜133−5を制御して成膜プロセス領域20Aに供給される反応性ガスの流量を調整することによって膜厚を調整することも可能である。すなわち、反応性ガスの供給量を多くすることによって膜原料物質の反応物を多く生成させることで膜厚を増加させ、逆に反応性ガスの供給量を少なくすることによって膜原料物質の反応物をあまり生成させずに膜厚をあまり増加させないようにする。
本実施形態では、マスフローコントローラ131−1〜131−5のみならず、マスフローコントローラ133−1〜133−5を制御することにより、複合的に膜厚を調整することが可能となっている。
また、光学検出装置193で取得した膜厚分布に基づいて、補正小片駆動モータ142a−1〜142a−5,142b−1〜142b−5を駆動することにより、局所的に成膜レートを調整するようにしてもよい。具体的には、例えば基板S1の膜厚が他の基板よりも薄い場合には、補正小片駆動モータ142a−1,142b−1を駆動して、基板S1に対応する位置に設けられた補正小片141a−1,141b−1をターゲット中心方向から逆の方向へ移動させることで、ターゲットの前面を遮蔽する面積を減少させるようにする。これにより、ターゲットから基板S1に付着する膜原料物質の量が増加する。従って、基板S1の成膜レートが他の基板の成膜レートよりも上昇する。
逆に、基板S1の膜厚が他の基板よりも厚い場合には、補正小片駆動モータ142a−1,142b−1を駆動して、基板S1に対応する位置に設けられた補正小片141a−1,141b−1をターゲット中心方向へ移動させることで、ターゲットの前面を遮蔽する面積を増加させるようにする。これにより、ターゲットから基板S1に付着する膜原料物質の量が減少する。従って、基板S1の成膜レートが他の基板の成膜レートよりも下降する。
同様にして、光学検出装置193で取得した膜厚分布に基づいて、他の補正小片駆動モータ142a−2〜142a−5,142b−2〜142b−5を制御することにより、成膜レートを局所的に調整する。これにより、複数の基板S1〜S5で均一な膜厚を有する薄膜を形成することが可能となる。
本実施形態の薄膜形成装置では、光学検出装置193で取得した膜厚分布に基づいて、マスフローコントローラ131−1〜131−5と補正小片駆動モータ142a−2〜142a−5,142b−1〜142b−5の両方を制御して成膜レートを調整しているが、どちらか一方を調整することによっても成膜レートを調整することが可能である。
また、本実施形態の薄膜形成装置では、成膜レート調整手段として、マスフローコントローラ131−1〜131−5と、補正小片駆動モータ142a−2〜142a−5,141b−2〜141b−5の2種類の調整手段を備えているが、どちらか一方のみを備えて、これを調整することにより構成としてもよい。
このように、本実施形態の薄膜形成装置によれば、複数の基板に対して同時に膜厚測定を行うことができるため、ターゲットのエロージョンや回転ドラム駆動機構の汚染等の要因により成膜プロセス領域20Aで局所的に成膜レートが変動し、その結果、基板に形成される薄膜の膜厚に差が生じた場合であっても、膜厚分布を観測することが可能となっている。
更に、本実施形態の薄膜形成装置によれば、測定された膜厚分布に基づいて成膜レートを局所的に調整することが可能となっている。例えば、他の基板よりも成膜レートが低い基板については、その基板に対応する位置に形成された導入口から導入されるガスの流量や、その基板に対応する位置に配置された補正小片を駆動させることで、その基板に供給される膜原料物質の量を他の基板に供給される膜原料物質の量よりも増加させることができる。この結果、複数の基板で均一な膜厚を有する薄膜を有する光学製品を製造することが可能となる。逆に、各基板に対して膜厚に所望のばらつきをもたせることも可能である。
以上、膜物性値として膜厚を測定する例について複数の実施形態を挙げて説明したが、本発明の趣旨に基づいて測定できる膜物性値は膜厚に限定されず、屈折率,消衰係数等の他の膜物性値についても同様の方法でリアルタイムに測定することが可能である。そして、これらの膜物性値に基づいて膜厚分布を測定したり、成膜レートを調整することにより所望の膜厚を有する基板を取得したりすることも可能である。
また、上記各実施形態では、受光した光の強度から光量を算出し、この光量に基づいて膜厚を算出して、この膜厚に基づいて成膜レートの調整を行っているが、本発明の膜物性値としては、このような膜厚に限定されず、受光した光の強度や光量に基づいて、成膜レートの調整を行うことも可能である。
すなわち、光の強度や光量、屈折率や消衰係数等、膜厚以外の他のパラメータであっても、膜厚を反映するパラメータであればどのようなものであっても、本発明の膜物性値に該当する。
更に本発明の各実施形態では、光学検出装置で測定した光量データをサンプリングするタイミングを、回転ドラム13の回転位置に基づいて決定しているが、本発明の趣旨はこれに限定されず、膜厚を測定するタイミングを回転位置に基づいて決定するものであればどのようなものであってもよい。例えば、光源に光ファイバへの光を遮断するシャッターを設けたり、あるいは投光用の投光用センサヘッドと基板との間に測定光を遮るシャッターを設けたりすることにより、目的の番地以外では測定光を照射しないようにしておき、目的の番地になった場合に基板Sに対して測定光を照射して、その番地での反射光の光量を光学検出装置で検知するという構成であってもよい。
また、本発明に実施形態では、薄膜形成工程を制御する実施形態として所定の膜厚となった場合にスパッタ処理を停止しているが、薄膜形成工程を制御する例としてはこのようなスパッタ処理を停止する場合に限定されない。例えば、基板表面に形成される薄膜が所定の膜厚や透過率となった場合に、プラズマ発生手段の動作を停止して酸化反応を行わないようにして、ケイ素または不完全酸化ケイ素を多く含む薄膜を意図的に形成することも可能である。
以上のように、本発明の薄膜形成装置では、回転ドラム13の回転速度が速い場合であっても正確に膜厚を測定できる。薄膜形成工程により中間薄膜を形成し、その後に酸化処理をして最終薄膜を形成する薄膜形成装置では、回転ドラム13の回転速度を早くする必要があるが、本発明の薄膜形成装置は回転ドラムの回転速度を早くすることができるため、このような装置に特に有効である。
なお、本発明の薄膜形成装置は、上記のように回転ドラム13を回転した状態でリアルタイムに基板に形成される薄膜の膜厚を測定することが可能であるが、膜厚測定の毎に回転ドラム13の回転を停止して膜厚測定を行うことも可能である。この場合、ロータリーエンコーダで基板の回転位置を検出することが可能であるため、回転ドラム13を真空容器11から搬出せずに真空容器11の内部に設置した状態のままで、基板の表面に形成される薄膜の膜厚を測定することが可能となる。
更に、回転位置情報取得手段としてはロータリーエンコーダに限定されず、他の回転位置取得手段を用いてもよい。例えば図15に示すように、投光素子および受光素子を備えた反射型位置センサ201を真空容器11の側壁に設置し、回転ドラム13の側面の一箇所に反射鏡202を設け、投光素子から投光され反射鏡に反射して戻ってくる光を検知することで回転ドラム13の回転位置を検出するようにしてもよい。この場合、各基板を保持している基板保持板ごとに反射鏡を設けるように構成すると、円周方向に配置された複数の基板のそれぞれの回転位置を検出することが可能となる。
また、回転ドラム13の外周面にバーコードなどを貼着して、真空容器11の側面にバーコード検出器を設置し、バーコードを検出することで回転ドラム13の回転位置を取得してもよい(図示せず)。