JP2006124778A - 薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

薄膜形成装置及び薄膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 回転軸を中心に回転する基体ホルダを有する薄膜形成装置において、膜厚にばらつきが生じにくい薄膜形成装置および薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る薄膜形成装置は、回転ドラム13の外周面に複数の基板を保持しているとともに、回転ドラム13の回転軸にロータリーエンコーダ100が設けられている。ロータリーエンコーダ100は回転ドラム13の回転位置情報を薄膜形成処理制御手段110に出力する。薄膜形成処理制御手段110は、薄膜形成処理開始時の回転ドラム13の回転位置と一致する回転位置で薄膜形成処理の停止を行う。すべての基板に対して同じ回数の薄膜形成処理を行うことができるため、基板間で膜厚のばらつきが生じにくい。
【選択図】 図1

Description

本発明は薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に回転軸を中心に回転する基体ホルダを有する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
スパッタリング等の物理蒸着により、基板表面に光学薄膜を形成させて干渉フィルター、例えば反射防止フィルター、ハーフミラー、各種バンドパスフィルター、ダイクロイックフィルターなどの光学製品を製造したり、各種装飾品の表面に色付けコートを行って特定の光学特性を有する装飾品を製造することが一般的に行われている。
従来から一般に用いられているスパッタ装置としては、例えば円筒状又は多角形柱状の回転ドラムが回転するカルーセル式のスパッタ装置がある。この装置では、回転ドラムの外周面上に複数の基板が配設されており、回転ドラムの側面に設けられたターゲットから飛翔する物質が基板表面に付着することで基板の表面に薄膜が形成される。例えば、特許文献1には、カルーセル式の反応性スパッタ装置が開示されている。
特開平08−176821号公報
このようなスパッタ装置では、回転ドラムが1回転するたびに基板表面に1層分の薄膜が堆積してゆく。例えば回転ドラムがN回転した場合には、N回分の薄膜が堆積することになる。しかしながら、従来のスパッタ装置では、薄膜形成処理を停止する際の回転ドラムの回転位置を厳密に制御せずに薄膜形成処理を停止していたため、薄膜形成処理を停止する位置によっては1回転分回転数の少ない基板、すなわちN−1回分の薄膜しか堆積していない基板が生じていた。この1回転分による膜厚の違いは、例えば薄膜形成レートが0.5nm/sで回転速度が60rpmの場合では、約0.5nmである。
上述のように、回転ドラムの回転数に1回転分の差が生じると、この差は膜厚の差となる。特に近年のように膜の厚さが非常に薄く緻密になっている場合には、この1回転分の膜厚の差による製品間のばらつきの影響は特に大きい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、基板上に形成される薄膜の厚さにばらつきが生じにくい薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することにある。
上記課題は、請求項1の薄膜形成装置によれば、回転軸を有する基体ホルダに保持された少なくとも1つ以上の基体に対して薄膜形成処理を行って前記基体に薄膜を形成させる薄膜形成装置であって、前記基体ホルダの回転位置を取得する回転位置取得手段と、前記回転位置に基づいて薄膜形成処理の停止を行う薄膜形成処理制御手段と、
を備えることにより解決される。
このように、請求項1の薄膜形成装置によれば、基体ホルダの回転位置情報を回転位置取得手段で取得して、この回転位置情報に基づいて薄膜形成処理の停止を行っている。すなわち、請求項1の薄膜形成装置によれば、薄膜形成処理の開始時における回転位置と停止時における回転位置とを一致させることが可能となる。このため、基体ホルダ上に配置されたすべての基体について同じ回数の薄膜形成処理を行うことが可能となる。従って、基体間で膜厚のばらつきを減少させることが可能となる。
また、請求項2の薄膜形成装置のように、請求項1の要件に加えて、前記薄膜形成処理制御手段は、薄膜形成処理の開始時における前記基体ホルダの回転位置を処理開始位置として記憶する記憶手段と、前記回転位置取得手段から入力される前記基体ホルダの回転位置と前記処理開始位置とを比較し、前記回転位置が前記処理開始位置と実質的に一致する回転位置で薄膜形成処理の停止指令を出力する演算手段と、を備えてもよい。
更にまた、請求項3の薄膜形成装置のように、請求項2の要件に加えて、前記薄膜形成処理制御手段は、前記薄膜形成処理の開始前に前記処理開始位置を予め規定値として保持してもよい。
また、請求項4の薄膜形成装置のように、請求項2の要件に加えて、前記薄膜形成処理制御手段は、薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置を前記回転位置取得手段から取得することにより前記処理開始位置を特定してもよい。
このように、請求項2乃至4の薄膜形成装置によれば、薄膜形成処理の開始時における前記基体ホルダの回転位置と、基体ホルダの現在の回転位置を比較して、両者が一致した位置で薄膜形成処理を停止している。このため、薄膜形成処理の開始時における回転位置と停止時における回転位置とを一致させることが可能となる。従って、基体ホルダ上に配置されたすべての基体について同じ回数の薄膜形成処理を行うことができるため、基体間で膜厚のばらつきを減少させることが可能となる。
また、請求項5の薄膜形成装置のように、請求項1乃至4の要件に加えて、前記回転位置取得手段は、ロータリーエンコーダであってもよい。
更に、請求項6の薄膜形成装置のように、請求項5の要件に加えて、前記ロータリーエンコーダはアブソリュート型であることが好適である。
更にまた、請求項7の薄膜形成装置のように、請求項5または6の要件に加えて、前記ロータリーエンコーダは、基体ホルダの回転軸に接続されていてもよい。
このように、請求項5乃至7の薄膜形成装置によれば、回転位置取得手段としてロータリーエンコーダを用いているため、基体ホルダの回転位置を正確に取得することができる。このため、薄膜形成処理を停止する際の基体ホルダの回転位置を正確に取得して薄膜形成処理を停止することが可能となる。従って、基体ホルダ上に配置されたすべての基体について同じ回数の薄膜形成処理を行うことができるため、基体間に膜厚のばらつきが生じにくくなる。
上記課題は、請求項8の薄膜形成方法によれば、回転軸を有する基体ホルダに保持された少なくとも1つ以上の基体に対して薄膜形成処理を行って前記基体に薄膜を形成させる薄膜形成方法であって、薄膜形成処理の開始を行う薄膜形成処理開始工程と、前記基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われた場合に薄膜形成処理を停止する薄膜形成処理停止工程と、を備えることにより解決される。
このように、請求項8の薄膜形成方法によれば、複数の基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われた場合に薄膜形成処理を停止している。このため、すべての基体に対して同じ回数だけ薄膜を積層させることができる。従って、基体間で薄膜の厚さにばらつきが生じにくくなる。
また、請求項9の薄膜形成装置のように、請求項8の要件に加えて、前記薄膜形成処理停止工程は、前記薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置と実質的に一致する回転位置で薄膜形成処理を停止すると好適である。
このように、請求項9の薄膜形成方法によれば、薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置と実質的に一致する位置で薄膜形成処理を停止しているため、複数の基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われることになる。このため、すべての基体に対して同じ回数だけ薄膜を積層させることができる。従って、基体間で薄膜の厚さにばらつきが生じにくくなる。
また、請求項10の薄膜形成装置のように、請求項8の要件に加えて、前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置を処理開始位置として取得する工程と、前記処理開始位置を記憶する工程と、を含み、前記薄膜形成処理停止工程は、前記基体ホルダの回転位置を取得する工程と、基体ホルダの回転位置と前記処理開始位置とを比較する工程と、前記回転位置と前記処理開始位置とが実質的に一致する回転位置で、前記薄膜形成処理を停止する停止指令を出力する工程と、を含んでもよい。
更に、請求項11の薄膜形成装置のように、請求項10の要件に加えて、前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始前に前記処理開始位置を処理開始位置として予め取得する工程を含むとより好適である。
更にまた、請求項12の薄膜形成装置のように、請求項10の要件に加えて、前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始時を検出する工程と、前記開始時する致する場合を記憶する記憶処理開始位置における基体ホルダの回転位置を処理開始位置として取得する工程を含んでもよい。
このように、請求項10乃至12の薄膜形成方法によれば、薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置を処理開始位置として取得して、これを処理開始位置として記憶する。薄膜形成処理の停止はこの処理開始位置と実質的に一致する回転位置で行う。このため、複数の基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われる。よって、すべての基体に対して同じ回数だけ薄膜を積層させることができる。従って、基体間で薄膜の厚さにばらつきが生じにくくなる。
本発明の薄膜形成装置によれば、基体ホルダの回転位置を取得して、これに基づいて薄膜形成処理を停止している。すなわち、薄膜形成処理の開始時における回転位置と停止時における回転位置とを一致させることが可能となる。このため、基体ホルダ上に配置されたすべての基体について同じ回数の薄膜形成処理を行うことが可能となる。従って、基体間で膜厚のばらつきを減少させることが可能となる。
また、本発明の薄膜形成方法によれば、複数の基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われた場合に薄膜形成処理を停止している。このため、すべての基体に対して同じ回数だけ薄膜を積層させることができる。従って、基体間で薄膜の厚さにばらつきが生じにくくなる。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1および図2はスパッタ装置1についての説明図であり、図1はスパッタ装置1上面の部分断面図、図2は図1の矢視Aからみたスパッタ装置1側面の部分断面図、図3は本実施形態に係る膜物性値測定装置のブロック図、図4は本発明におけるロータリーエンコーダの斜視部分断面図である。
本実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行うスパッタ装置1を用いているが、これに限定されるものでなく、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行うスパッタ装置を用いることもできる。
本実施形態のスパッタ装置1は、目的の膜厚よりも薄い薄膜をスパッタで作成し、プラズマ処理を行うことを繰り返すことで目的の膜厚の薄膜を基板上に形成するものである。本実施形態では、スパッタとプラズマ処理によって平均0.01〜1.5nmの膜厚の薄膜を基板表面に形成する薄膜形成処理を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことで、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚の薄膜を形成する。
本実施形態のスパッタ装置1は、図1および図2に示すように、真空容器11と、基体ホルダとしての回転ドラム13と、モータ17と、仕切壁12,14と、マグネトロンスパッタ電極21a,21bと、交流電源23と、プラズマ発生手段60と、を主要な構成要素として備えている。
真空容器11は、公知のスパッタ装置で通常用いられるものであり、ステンレススチール製で、略直方体形状をした中空体とされている。真空容器11の内部は、本発明の開閉扉としての扉11bによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11bを収容する扉収納容器(不図示)が接続されている。扉11bは、真空容器11の内部と扉収納室との間でスライドし、真空容器11を薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに仕切る位置と、薄膜形成室11Aとロードロック室11Bを連通させる位置との間を移動する。
更に、真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切る扉11cが設けられている。扉11cは、スライドまたは回動により開閉する。真空容器11の内部の薄膜形成室11Aには、排気用の配管15aが接続され、この配管には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15が接続されている。また、真空容器11の内部のロードロック室11Bには、排気用の配管15a'が接続され、この配管には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15'が接続されている。
回転ドラム13は、真空容器11内に配設されており、筒状の表面に複数の基板Sを保持している。回転ドラム13は、複数の基板保持具13a,フレーム13b、締結具13cを主要な構成要素としている。基板保持具13aはステンレススチール製の平板状部材からなり、基板Sを保持するための複数の基板保持孔を板面の長手方向に一列に備えている。基板Sは基板保持具13aの基板保持孔に収納され、脱落しないようにネジ部材を用いて基板保持具13aに固定されている。また、図2に示すように、基板保持具13aの長手方向における両端付近の板面にはそれぞれネジ穴が一箇所ずつ設けられている。
フレーム13bはステンレススチール製部材で、上下に配置された2つの環状部材から構成されている。フレーム13bには、基板保持具13aのネジ穴と対向する位置にネジ穴が設けられている。基板保持具13aは、ボルトおよびナットからなる締結具13cを用いてフレーム13bに固定される。なお、本実施形態における回転ドラム13は、平板状の基板保持具13aを複数配置しているため横断面形状が多角形となっているが、回転ドラムとしてはこのような横断面形状が多角形のもの限定されず、例えば中空の円筒状や円錐状のものであってもよい。
回転ドラム13は、薄膜形成室11Aとロードロック室11Bの間を移動できるように構成されている。本実施形態では、真空容器11の底面にレール(不図示)が設置されていて、回転ドラム13は、このレールに沿って移動する。基板保持具13aをフレーム13bに取り付ける際やフレーム13bから取り外す際には、回転ドラム13はロードロック室11Bの位置において、回転可能な状態でロックされる。薄膜形成中には、回転ドラム13aは薄膜形成室11Aの位置において、回転可能な状態でロックされる。回転ドラム13は、円筒の筒方向の中心軸線Z(図2参照)が真空容器11の上下方向になるように真空容器11内に配設される。
回転ドラム13の下面はモータ17の回転軸17aと係合する構造となっている。回転ドラム13は、真空容器11内の真空状態を維持した状態で、真空容器11の下部に設けられたモータ17を駆動させることによって中心軸線Zを中心に回転する。各基板Sは、回転ドラム13上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで、中心軸線Zを公転軸として公転する。回転軸17aの回転ドラム13と係合する面18aは、絶縁部材で構成されている。これにより、基板における異常放電を防止することが可能となる。
回転ドラム13の上面には、ドラム回転軸17bが設けられており、回転ドラム13の回転に伴ってドラム回転軸17bも回転するように構成されている。真空容器11の上面には孔部が設けられており、ドラム回転軸17bはこの孔部を貫通して真空容器11の外部に通じている。孔部の内面には軸受が設けられており、回転ドラム13の回転をスムーズに行えるようにしている。また、真空容器11とドラム回転軸17bとの間は、Oリングで気密が保たれている。
基板Sは、本発明の基体に相当するものである。本実施形態では、基板Sはガラス製の円板状部材で、その表面には薄膜形成処理により薄膜が形成される。基体としては本実施形態のような円板状のもの限定されず、レンズ状のものや管状のものなどを用いることもできる。また、基板Sの材質も本実施形態のようなガラス製に限定されず、プラスチックや金属等であってもよい。
次に、基板Sの表面に薄膜を形成する薄膜形成プロセスゾーン20と、反応プロセスゾーン50について説明する。薄膜形成プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン50は、それぞれ仕切壁12,14により囲繞される空間に形成されている。仕切壁12,14は、真空容器11の内壁面から回転ドラム13へ向けて立設している。本実施形態における仕切壁12,14は、真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12,14は、真空容器11の内壁面から回転ドラム13へ向けて、四方を囲んだ状態で設けられている。真空容器11の内壁面,仕切壁12,回転ドラム13の外周面に囲繞された空間には、薄膜形成プロセスゾーン20が形成されている。薄膜形成プロセスゾーン20ではスパッタが行われる。
真空容器11の内壁面,後述のプラズマ発生手段60,仕切壁14,回転ドラム13の外周面に囲繞された空間には、反応プロセスゾーン50が形成されている。反応プロセスゾーン50では、基板S上の薄膜に対してプラズマ処理が行われる。
反応プロセスゾーン50は、薄膜形成プロセスゾーン20が形成された位置から、基板ホルダの回転軸を中心に円周上に約90度回転した位置に形成されている。モータ17によって回転ドラム13が回転させられると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、薄膜形成プロセスゾーン20に面する位置と、反応プロセスゾーン50に面する位置との間を繰り返し移動することになる。そして、このように基板Sが公転することで、ターゲット29a,29bに対して相対的に移動することになる。
薄膜形成プロセスゾーン20には、マスフローコントローラ25,27が、配管を介して連結されている。マスフローコントローラ25は、不活性ガスとしてのアルゴンガスを貯留するスパッタガスボンベ26に接続されている。マスフローコントローラ27は、反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ28に接続されている。不活性ガスや反応性ガスは、マスフローコントローラ25,27で流量を制御されて、配管を通して薄膜形成プロセスゾーン20に導入される。反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等が考えられる。
薄膜形成プロセスゾーン20には、回転ドラム13の外周面に対向するように、真空容器11の壁面にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが配置されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、不図示の絶縁部材を介して接地電位にある真空容器11に固定されている。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス24を介して、交流電源23に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット29a,29bが保持される。ターゲット29a,29bの形状は平板状であり、ターゲット29a,29bの回転ドラム13の外周面と対向する面が、回転ドラム13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように保持される。
反応プロセスゾーン50に対応する真空容器11の壁面には、プラズマ発生手段60を設置するための開口11aが形成されている。また、反応プロセスゾーン50には、マスフローコントローラ52を介して不活性ガスボンベ53内の不活性ガスを導入するための配管や、マスフローコントローラ54を介して反応性ガスボンベ55内の反応性ガスを導入するための配管が接続されている。
仕切壁14の反応プロセスゾーン50に面する壁面には、熱分解窒化硼素(Pyrolytic Boron Nitride)からなる保護層Pが被覆されている。さらに、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン50に面する部分にも熱分解窒化硼素からなる保護層Pが被覆されている。熱分解窒化硼素は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。
プラズマ発生手段60は、反応プロセスゾーン50に面して設けられている。本実施形態のプラズマ発生手段60は、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、導線部64と、マッチングボックス65と、高周波電源66と、真空ポンプ15とを有して構成されている。
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11に接続されている。本実施形態では、ケース体61はステンレスで形成されている。
誘電体板62は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板62は石英で形成されているが、誘電体板の材質としてはこれに限定されず、例えばAl等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成されている。
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部(反応プロセスゾーン50)に臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。本実施形態では、このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中に、アンテナ63が設置されている。なお、アンテナ収容室61Aと真空容器11内部、アンテナ収容室61Aと真空容器11外部との間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
本実施形態では、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にするために、アンテナ収容室61Aに排気用の配管15aが接続されている。配管15aには、真空ポンプ15が接続されている。また、本実施形態において、配管15aは真空容器11の内部へも連通している。
配管15aには、真空ポンプ15から真空容器11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管15aには、真空ポンプ15からアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV1、V3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
本実施形態では、スパッタ装置1に真空制御装置(不図示)を備えている。この真空制御装置には、真空計の出力が入力される。真空制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15による排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。本実施形態では、真空制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
アンテナ63は、高周波電源66から電力の供給を受けて、真空容器11の内部(反応プロセスゾーン50)に誘導電界を発生させ、プラズマを発生させるためのものである。本実施形態のアンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備えている。アンテナ63のインピーダンスを低下するためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ63を形成するのが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。このように構成することで、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流して、プラズマを発生させる効率を高めている。
アンテナ63は、高周波電源66に接続されている。アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス65を介して高周波電源89に接続されている。マッチングボックス65内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。
アンテナ63は、導線部64を介してマッチングボックス65に接続されている。導線部64は、アンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部64を挿通するための挿通孔が形成されている。アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス65,高周波電源66とは、挿通孔に挿通される導線部64を介して接続される。導線部64と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
交流電源23および高周波電源66はそれぞれスパッタ制御装置40に電気的に接続されている。スパッタ制御装置40は、交流電源23および高周波電源66のそれぞれに対して、電源のオン/オフや出力の制御を行う。スパッタ制御装置40はまた、薄膜形成処理制御手段110に電気的に接続されており、薄膜形成処理制御手段110からの指示を受けて交流電源23や高周波電源66の制御を行う。
次に、回転ドラム13の回転位置情報を取得する手段について説明する。図4は、本発明で使用するロータリーエンコーダ100の説明図である。ロータリーエンコーダ100は、ハウジング101(図4では不図示)と、ロータリーエンコーダ回転軸102と、回転スリット板103と、固定スリット104板と、発光素子105と、受光素子106とにより構成される。なお、本実施形態におけるロータリーエンコーダ100は、本発明における回転位置取得手段に該当する。
ロータリーエンコーダ100は回転ドラム13の回転角度(アナログ量)をパルス信号(デジタル量)に変換する装置である。本実施形態では、ロータリーエンコーダ100としてアブソリュート型のロータリーエンコーダが用いられている。アブソリュート型のロータリーエンコーダは、回転の有無にかかわらず現在の回転位置を絶対位置情報として出力する。このため、回転ドラム13が停止している場合であっても回転ドラム13の絶対位置情報を取得することが可能となる。
ハウジング101は、ロータリーエンコーダ回転軸102,回転スリット板103,固定スリット板104,発光素子105,受光素子106を収納するケースである。図2に示すように、ハウジング101は、コネクタ101aを用いて真空容器11の上面に固定されている。
ロータリーエンコーダ回転軸102は、カップリング107を介してドラム回転軸17bに接続されている。ロータリーエンコーダ回転軸102の端面と、ドラム回転軸17bの端面を接合して、接合面周囲をカップリングで固定することで、両回転軸を固定している。回転ドラム13の底面にはモータ17が接続されており、モータ17の駆動により回転ドラム13が回転する。その回転はドラム回転軸17b,カップリング107を介してロータリーエンコーダ回転軸102へ伝達され、ロータリーエンコーダ回転軸102は回転する。
ロータリーエンコーダ回転軸102の端面には、回転スリット板103が、回転スリット板103の中心軸とロータリーエンコーダ回転軸102が同軸となるように取り付けられている。回転スリット板103は、ドラム回転軸17bの回転に伴って、ロータリーエンコーダ回転軸102を回転軸として回転する。
回転スリット板103は、エポキシ樹脂などから構成された円板状部材であり、板面には複数のスリット103aが設けられている。円板状部材の板面には、複数のスリットから構成されるトラックが複数設けられている。各トラックは円板状部材の中心から同心円状に配置されている。同じトラックに配置されるスリット103aは同一の形状をしており、互いに等間隔に配置されている。また、異なるトラックに配置されるスリット103aは、互いに異なる形状をしている。
固定スリット板104は、複数の格子状スリット104aが設けられた平板状部材である。固定スリット板104は、回転スリット板103に対して一定間隔を空けて平行に設けられている。固定スリット板104はハウジング101に固定されている。このため、ロータリーエンコーダ回転軸102が回転しても固定スリット板104は回転しない。
ハウジング101内には、複数の発光素子105および複数の受光素子106が設けられている。発光素子105および受光素子106は、回転スリット板103と固定スリット板104を挟んで互いに対向して配置されている。発光素子105としては、発光ダイオードなど公知の素子が用いられる。受光素子106としては、フォトトランジスタなど公知の素子が用いられる。発光素子105および受光素子106は、回転スリット板103のトラック数と同じ数だけそれぞれ設けられている。
発光素子105から照射される光は、回転スリット板103のスリット103aおよび固定スリット板104のスリット104aの両スリットを透過した場合に受光素子106で検出される。ロータリーエンコーダ回転軸102が回転することにより回転スリット板103が回転して、回転スリット板103のスリットとスリットの間で光路が遮られた場合には、受光素子106では光は検出されない。
複数の受光素子106は、それぞれ異なるトラックにおいてスリット103aを通過する光を検知する。スリット103aの形状や配置はトラック毎にそれぞれ異なっているため、回転スリット板103の回転位置によって光を受光している受光素子106の組み合わせは異なる。逆にいえば、光を受光している受光素子106の組み合わせに基づいて、回転ドラム13の回転位置を決定することができる。
ロータリーエンコーダ100の受光素子106は、図3に示すように、絶対位置信号生成装置111と電気的に接続されている。絶対位置信号生成装置111は、回転ドラム13の回転位置を絶対値として出力する。絶対位置信号生成装置111は、A−D変換部111aおよび絶対位置信号生成部111bを備えている。
A−D変換部111aはロータリーエンコーダ100の受光素子106に電気的に接続され、受光素子106から出力された電気信号をデジタル信号に変換して出力する。すなわち、受光素子106で検出した明暗情報を波形整形して矩形波のパルス信号として出力する。これにより、アナログ量である回転ドラム13の回転位置をデジタル信号に変換することができる。
絶対位置信号生成部111bは、A−D変換部111aから出力されるデジタル信号を基に、回転ドラム13の絶対位置情報を演算する。絶対位置信号生成部111bでは、発光素子105からの光を受光している受光素子106の組み合わせから、回転ドラム13の絶対位置を一義的に決定する。回転ドラム13の回転位置情報は二進数のデータとして薄膜形成工程制御手段110へ出力される。
薄膜形成処理制御手段110は薄膜形成処理を制御する装置である。図3に示すように、本実施形態では、ディスプレイとキーボードが外部に接続されたコンピュータにより構成されている。コンピュータには演算手段であるCPU111aと記憶手段であるメモリ111bが設けられており、メモリ111bはオペレータがキーボードを用いて入力した各種設定値、例えば薄膜形成処理開始位置などを記憶している。
CPU111aはオペレータが入力した設定値を基に各種演算を行う。また、コンピュータには外部機器と接続可能なI/Oポートが複数設けられており、スパッタ制御装置40や絶対位置信号生成手段111に接続されている。スパッタ制御装置40や絶対位置信号生成手段111、キーボードやディスプレイとの信号のやりとりは、コンピュータのI/Oインターフェースを介して行われる。I/Oインターフェースを介しての外部機器との通信や、CPU111aによるメモリ111bへの読み書き等はオペレーティングシステムを介して行われる。
薄膜形成処理制御手段110へ入力された回転ドラム13の回転位置情報は、図3に示すように、I/Oインターフェースを介して薄膜形成処理制御手段110のCPU111a工程せいこうていの処理を行うことが可能となる。従って で演算処理され、実数値化される。本実施形態で使用されるロータリーエンコーダ100の分解能は16ビットであるため、回転ドラム13の回転位置は「1」から「65536」までの数値情報に変換される。以下、回転ドラム13の回転位置を「番地」と呼ぶ。番地情報は薄膜形成処理制御手段110のメモリ111bに保持される。
本実施形態で使用されるロータリーエンコーダ100は16ビットの分解能を有している。すなわち、(360/65536)°の回転角の変化を検出することができる。ただし、本発明で用いられるロータリーエンコーダの分解能はこれに限定されず、16ビットよりも分解能が低いものであっても、回転ドラム13の回転位置を十分に取得できるものであれば使用できる。なお、16ビットよりも分解能が高いものも当然使用することができる。
本実施形態で使用されているロータリーエンコーダ100は光学素子を用いる光学式であるが、回転円板の外周面に一定間隔ごとに磁性体を配置し、円板の回転による磁気の変化を検知する磁気式であってもよい。また、本実施形態で使用するロータリーエンコーダ100はアブソリュート式であるが、回転軸が回転している場合にのみ回転位置情報を出力するインクリメンタル式であってもよい。
以下に、上述のスパッタ装置1を用いて薄膜を製造するスパッタ処理について、図1乃至図5を用いて説明する。図5は本発明における成膜処理の流れを示すフロー図である。ここでは、酸化ケイ素(SiO)を積層させた薄膜を製造する例を挙げて説明する。薄膜の形成は、成膜処理の準備を行う成膜準備工程、酸化ケイ素の薄膜を形成する薄膜形成処理開始工程、薄膜形成を停止する薄膜形成処理停止工程、成膜処理を終了する成膜終了工程の順に行われる。
図5のステップ1(S1)は、薄膜形成処理を開始する回転位置を設定するステップである。オペレータは、薄膜形成処理制御装置110に接続されたキーボードを用いて所望の回転位置を薄膜形成処理の処理開始位置として入力する。本実施形態では、回転位置がn番地(nは0〜65535の整数)にある場合に薄膜形成処理を開始するように設定している。この回転開始位置は、図3に示す薄膜形成処理制御装置110に設けられたメモリ111bに格納される。このとき、薄膜形成処理停止位置がCPU111aにより自動的に決定される。決定された薄膜形成処理停止位置はメモリ111bに格納される。
本実施形態ではn番地目で薄膜形成処理を停止する。具体的には、例えば200番地目で薄膜形成処理を開始するように設定した場合、薄膜形成処理の停止位置は200番地目となる。ただし、薄膜形成処理の停止位置は開始位置と厳密に一致させる必要は無く、多少のずれがあっても実質的に開始位置と停止位置が同じであり、かつ回転ドラム13上のすべての基板について同じ回数ずつ薄膜形成処理が行われる位置であれば多少の誤差があってもよい。
また、オペレータはキーボードを用いて所望のスパッタ終了膜厚をセットする。薄膜形成処理制御装置110は、入力された終了膜厚に基いて所望の膜厚となるよう回転ドラム回転数やガス流量などの条件を算出する。本実施形態ではオペレータが所望の薄膜形成処理開始位置を入力すると、この入力された回転位置が既定値として薄膜形成処理制御装置110で記憶される。
ステップ2(S2)は、薄膜形成準備処理を開始するステップである。まず、ターゲット29a,29bをマグネトロンスパッタ電極21a,21bに保持させる。ターゲット29a,29bの材料としてケイ素(Si)を用いる。次いで、扉11bを閉じて、真空ポンプ15を作動させて排気を行い、薄膜形成室11Aを10−2Pa〜10Pa程度の真空状態にする。このとき、バルブV1,V2,V3が開放され、アンテナ収容室61Aも同時に排気される。
その後、回転ドラム13をロードロック室11Bの位置でロックした状態で、基板Sを保持した基板保持具13aを回転ドラム13に取り付ける。続いて、扉11cを閉じた状態で、真空ポンプ15'を作動させてロードロック室11Bを排気して、10−2Pa〜10Pa程度の真空状態にする。更に、扉11bを開いて、回転ドラム13を薄膜形成室11Aへ移動させる。回転ドラム13を薄膜形成室11Aへ移動させた後に、扉11bを再び閉じる。そして、真空容器11の内部,アンテナ収容室61Aの内部を上述の所定の圧力に減圧する。その後、真空容器11の内部,アンテナ収容室61Aの内部の圧力が安定した後に、薄膜形成プロセスゾーン20の圧力を、1.0×10−1Pa〜1.3Paに調整する。
ステップ3(S3)は、回転ドラム13の回転を開始するステップである。回転ドラム13の回転は、オペレータがスパッタ装置1の操作パネルに設けられたドラム回転スイッチを押すことにより開始される。ドラム回転スイッチを押すと、モータ17が作動して回転ドラム13が回転する。薄膜形成処理制御装置110は、ロータリーエンコーダ100から回転ドラム13の回転位置情報(番地情報)を取得する。また、薄膜形成処理制御装置110は番地情報と内部クロックに基づいて回転ドラム13の回転速度を演算する。回転ドラム13の回転速度が一定になると、次のステップへ移行する。
ステップ4(S4)は、回転ドラム13の回転位置をチェックして、n番地目であるか否かを判断するステップである。具体的には、薄膜形成処理制御手段110は、ロータリーエンコーダ100から入力される回転ドラム13の回転位置と、メモリ111bに格納されている番地であるn番地とをCPU111aで比較して、一致した場合に薄膜形成処理を開始する開始信号をスパッタ制御装置40に出力する(ステップ5)。回転位置がn番地でない場合は、n番地になるまで薄膜形成処理を開始せずに待機する。
ステップ5(S5)は、薄膜形成処理を開始するステップである。薄膜形成処理は、薄膜形成プロセスゾーン20における中間薄膜形成処理および反応プロセスゾーン50における酸化処理を順次繰り返すことで行われる。薄膜形成プロセスゾーン20では、ターゲット29a,29bに対してスパッタを行い、基板S表面に金属原子や不完全酸化物からなる中間薄膜が形成される。続く反応プロセスゾーン50では、薄膜形成プロセスゾーン20で形成された中間薄膜に対して酸化処理を行うことにより、金属酸化物が生成される。この処理を所定の膜厚になるまで繰り返すことで最終薄膜が形成される。
薄膜形成処理は、薄膜形成処理制御装置110からスパッタ制御装置40へスパッタ開始を指示する開始信号が送られることにより開始される。スパッタ開始指示を受けたスパッタ制御装置40は、交流電源23および高周波電源66に対して、それぞれトランス24およびマッチングボックス65に交流電圧を印加するよう指示を出す。このスパッタ開始指示により、スパッタ装置1においてスパッタが開始される。
スパッタ開始指示によりターゲット29a,29bに交番電界が掛かるようになると、ターゲット29a,29bが交互にアノードとカソードになり、薄膜形成プロセスゾーン20でプラズマが形成される。このプラズマによってカソード上のターゲットに対してスパッタが行われる。
続いて基板Sは、回転ドラム13の回転にともなって、薄膜形成プロセスゾーン20に面する位置から反応プロセスゾーン50に面する位置に搬送される。反応プロセスゾーン50には、反応性ガスボンベ55から反応性ガスとして酸素ガスを導入するとともに、不活性ガスボンベ53から不活性ガスとしてアルゴンガスを導入する。酸素ガスおよびアルゴンガスの流量は、ステップ1で設定された終了膜厚に基づいて決定される。
次に、アンテナ63に13.56MHzの高周波電圧を印加して、プラズマ発生手段60によって反応プロセスゾーン50にプラズマを発生させる。反応プロセスゾーン50の圧力は0.7×10−1〜1.0Paに維持する。また、少なくとも反応プロセスゾーン50にプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室61Aの内部圧力を10−3Pa以下に保持する。
そして、回転ドラム13が回転して、ケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx(x<2))からなる中間薄膜が形成された基板Sが反応プロセスゾーン50に面する位置に搬送されてくると、反応プロセスゾーン50では、中間薄膜を構成するケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx(x<2))をプラズマ処理によって酸化反応させる工程を行う。すなわち、プラズマ発生手段60によって反応プロセスゾーン50に発生させた酸素ガスのプラズマでケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx(x<2))を酸化反応させて、所望の組成の不完全酸化ケイ素(SiOx(x<x<2))或いは酸化ケイ素(SiOx)に変換させる。
本実施形態では、反応プロセスゾーン50で、中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物を酸化反応させて所望の組成の不完全酸化ケイ素(SiOx(x<x<2))或いは酸化ケイ素に変換させることで、最終薄膜を形成する。これにより、膜組成変換工程を行う。
この反応プロセスゾーン50における膜組成変換工程では、最終薄膜の膜厚が中間薄膜の膜厚よりも厚くなるように、最終薄膜を形成する。すなわち、中間薄膜を構成するケイ素或いはケイ素不完全酸化物SiOx(x<2)を所望の組成の不完全酸化ケイ素(SiOx(x<x<2))或いは酸化ケイ素(SiO)に変換することにより中間薄膜を膨張させ、最終薄膜の膜厚を中間薄膜の膜厚よりも厚くする。以下、薄膜形成プロセスゾーン20でのスパッタ処理と、反応プロセスゾーン50での酸化処理を繰り返すことで、基板表面に薄膜が形成される。薄膜はドラムが回転する毎に積層されてゆく。
ステップ6(S6)は、現在の膜厚がS1で設定した終了膜厚か否かを判断するステップである。最終膜厚に達したかどうかは回転ドラム13が所定回数回転したかどうかに基づいて判断する。また、膜厚測定装置を設けて膜厚を測定し、この測定した膜厚に基づいて判断してもよい。現在の膜厚が設定した終了予定膜厚となった場合は、薄膜形成処理の停止位置か否かを判断するステップ7(S7)へ移行する。
ステップ7(S7)では回転ドラム13の現在の番地をチェックして、回転位置がn番地目である場合は薄膜形成処理を停止する(S13)。具体的には、薄膜形成処理制御手段110は、ロータリーエンコーダ100から入力される回転ドラム13の回転位置と、メモリ111bに格納されている処理開始位置であるn番地とをCPU111aで比較して、一致した場合に薄膜形成処理を停止するための停止信号をスパッタ制御装置40へ出力する。回転ドラム13の回転位置がn番地でない場合は、n番地になるまで薄膜形成処理を継続し、n番地になったときに薄膜形成処理を停止するための信号を出力する。
ステップ8(S8)は、薄膜形成処理の停止を行うステップである。本ステップは、本発明における薄膜形成停止工程に該当する。薄膜形成処理制御手段110から薄膜形成処理の停止信号を受けたスパッタ制御装置40は、交流電源23からトランス24への電力の供給を停止する。また、高周波電源66から、マッチングボックス65への電力の供給を停止する。これにより、薄膜形成プロセスゾーン20での薄膜形成処理と、反応プロセスゾーン50での酸化処理の両方の処理が停止し、薄膜形成処理が停止する。
上述のように本実施形態では、薄膜形成処理を開始したときの回転ドラム13の回転位置と停止するときの回転位置を厳密に制御している。すなわち、ステップ4においてn番地で薄膜形成処理を開始し、ステップ7において薄膜形成処理の開始位置であるn番地目で薄膜形成処理を停止している。このため、薄膜形成処理を開始した回転位置を基準として、基板ホルダに保持されているすべての基板が同じ回数回転したことになる。従って、すべての基板について同じ回数だけ薄膜形成処理が行われたことになる。仮に回転ドラム13の停止位置を厳密に制御せずに薄膜形成処理を停止した場合は、ドラム上の回転位置によっては一回転分回転数の少ない基板が生じることになる。1回転分回転数が少ないと、1回転分薄膜形成処理が行われなかったことになる。この1回転分による膜厚の違いは、例えば薄膜形成レートが0.5nm/sで回転速度が60rpmの場合では、約0.5nmである。
このように本実施形態では、薄膜形成処理を開始した回転位置と略一致する回転位置で薄膜形成処理を停止するため、すべての基板に対して同じ回数だけ薄膜形成処理が行われたことになる。従って、回転数の違いにより基板間で膜厚に違いが生じるという不都合が少なく、基板間で膜厚にばらつきが少ない基板を得ることが可能となる。
ステップ9(S9)は、回転ドラム13の回転を停止するステップである。ドラム回転の停止はオペレータがスパッタ装置1の操作パネルに設けられたドラム停止スイッチを押すことにより行ってもよいし、薄膜形成処理制御装置110が自動的に停止制御を行ってもよい。手動で停止作業を行う場合、ドラム停止スイッチを押すと、モータ17の駆動が停止し、回転ドラム13を回転が停止する。薄膜形成処理制御装置110に表示されるドラム回転速度が0rpmになると、次のステップに進む。
ステップ10(S10)は、薄膜形成停止処理を行うステップである。回転ドラム13の回転が停止すると、回転ドラム13とモータ17との係合を解除する。続いて回転ドラム13を真空容器11下面に設けられたレール上に載置し、薄膜形成室11Aからロードロック室11Bへ搬送する。
続いて、ロードロック室11Bに備えられた真空ポンプ15'の駆動を停止し、ロードロック室11B内を徐々に大気圧へ開放する。ロードロック室内に備えられた真空計を確認して、大気圧になった時点で扉11bを開き、基板保持具13aをフレーム13bから取り外す。基板保持具13aから基板Sを回収して、一連の薄膜形成処理を終了する。
本実施形態では、薄膜形成処理を開始する処理開始位置を予めオペレータが設定して、その後の処理は自動的に進行するような構成としているが、本発明における処理開始位置はこのように予め設定される場合に限定されない。例えばステップ5の薄膜形成処理を開始する工程をオペレータが手動で行うような実施態様の場合では、スパッタ制御装置40に薄膜形成処理の開始を指示するスイッチを設け、オペレータがスイッチを押下した場合に薄膜形成処理を行うようなスパッタ装置が考えられる。
この場合、スイッチの押下がなされた際の回転ドラム13の回転位置を処理開始位置として取得する。取得された処理開始位置はメモリ111bに記憶され、ステップ7において現在の回転位置と比較がCPU111aにより行われる。現在の回転位置がメモリに記憶された処理開始位置と一致する場合に薄膜形成処理制御手段110はスパッタ制御装置40に薄膜形成処理の停止指示を出力するようにする。
また、本実施形態では、交流電源23からトランス24への電力供給を開始することによりスパッタ処理の開始を行っているが、例えば図6に示すように、ターゲット29a,29bと回転ドラム13の間にターゲットの全面を覆うシャッター114を設けてもよい。この場合、薄膜形成処理開始前においてはターゲット29a,29bから飛来する物質が基板に届かない位置に配置し、薄膜形成処理開始時にはシャッター114がターゲット29a,29bから飛来する物質が基板に届く位置になるように、モータ(図示せず)を用いてシャッター114を移動するようにするとよい。
更にまた、本実施形態では、交流電源23からトランス24への電力供給を停止することにより薄膜形成処理の停止を行っているが、この場合にも上記シャッター114を用いて、薄膜形成処理停止前においてはターゲット29a,29bから飛来する物質が基板に届くシャッター114を位置に配置し、薄膜形成処理開始時にはターゲット29a,29bから飛来する物質が基板に届かない位置にシャッター114を移動するようにしてもよい。
更に、回転位置取得手段としてはロータリーエンコーダに限定されず、他の回転位置取得手段を用いてもよい。例えば図6に示すように、投光素子および受光素子を備えた反射型位置センサ112を真空容器11の側壁に設置し、回転ドラム13の側面の一箇所に反射鏡113を設け、投光素子から投光され反射鏡に反射して戻ってくる光を検知することで回転ドラム13の回転位置を検出するようにしてもよい。また、回転ドラム13の外周面にバーコードなどを貼着して、真空容器11の側面にバーコード検出器を設置し、バーコードを検出することで回転ドラム13の回転位置を取得してもよい(図示せず)。
なお、本発明の実施形態として回転ドラム13を備えた反応性スパッタリング装置を挙げたが、本発明の基体ホルダとしてはこのような回転ドラムに限定されず、例えば中心に回転軸を有する円板状の基体ホルダや、ドーム型の基板ホルダを用いるものであってもよい。また、本発明の薄膜形成処理としては、実施形態で挙げた反応性スパッタリングに限定されない。例えばプラズマCVD装置を用いて薄膜形成処理を行う場合等に本発明の薄膜形成装置や薄膜形成方法を応用することも可能である。
本発明におけるスパッタ装置を上面から見た部分断面図である。 図1のスパッタ装置を矢視A方向から見た部分断面図である。 本発明におけるスパッタ装置のブロック図である。 本発明におけるロータリーエンコーダの斜視部分断面図である。 本発明における成膜処理の流れを示すフロー図である。 本発明の他の実施形態におけるスパッタ装置の部分断面図である。
符号の説明
1 スパッタ装置(薄膜形成装置)
11 真空容器
11A 薄膜形成室
11B ロードロック室
11a 開口
11b 扉
11c 扉
13 回転ドラム(基体ホルダ)
13a 基板保持具
13b フレーム
13c 締結具
14 仕切壁
15 真空ポンプ
15a 配管
17 モータ
17a モータ回転軸
17b ドラム回転軸
20 薄膜形成プロセスゾーン
21a マグネトロンスパッタ電極
21b マグネトロンスパッタ電極
23 交流電源
24 トランス
25 マスフローコントローラ
26 スパッタガスボンベ
27 マスフローコントローラ
28 反応性ガスボンベ
29a ターゲット
29b ターゲット
40 スパッタ制御装置
50 反応プロセスゾーン
52 マスフローコントローラ
53 不活性ガスボンベ
54 マスフローコントローラ
55 反応性ガスボンベ
60 プラズマ発生手段
61 ケース体
61A アンテナ収容室
62 誘電体板
63 アンテナ
64 導線部
65 マッチングボックス
66 高周波電源
100 ロータリーエンコーダ(回転位置取得手段)
101 ハウジング
101a コネクタ
102 ロータリーエンコーダ回転軸
103 回転スリット板
103a スリット
104 固定スリット板
104a 格子状スリット
105 発光素子
106 受光素子
107 カップリング
110 薄膜形成処理制御手段
111a CPU(演算手段)
111b メモリ(記憶手段)
111 絶対位置信号生成装置
111a A−D変換部
111b 絶対位置信号生成部
112 反射型位置センサ
113 反射鏡
114 シャッター
S 基板(基体)
V1 バルブ
V2 バルブ
V3 バルブ

Claims (12)

  1. 回転軸を有する基体ホルダに保持された少なくとも1つ以上の基体に対して薄膜形成処理を行って前記基体に薄膜を形成させる薄膜形成装置であって、
    前記基体ホルダの回転位置を取得する回転位置取得手段と、
    前記回転位置に基づいて薄膜形成処理の停止を行う薄膜形成処理制御手段と、
    を備えることを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 前記薄膜形成処理制御手段は、
    薄膜形成処理の開始時における前記基体ホルダの回転位置を処理開始位置として記憶する記憶手段と、
    前記回転位置取得手段から入力される前記基体ホルダの回転位置と前記処理開始位置とを比較し、前記回転位置が前記処理開始位置と実質的に一致する回転位置で薄膜形成処理の停止指令を出力する演算手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  3. 前記薄膜形成処理制御手段は、前記薄膜形成処理の開始前に前記処理開始位置を予め規定値として保持していることを特徴とする請求項2記載の薄膜形成装置。
  4. 前記薄膜形成処理制御手段は、薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置を前記回転位置取得手段から取得することにより前記処理開始位置を特定することを特徴とする請求項2記載の薄膜形成装置。
  5. 前記回転位置取得手段は、ロータリーエンコーダであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の薄膜形成装置。
  6. 前記ロータリーエンコーダは、アブソリュート型であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成装置。
  7. 前記ロータリーエンコーダは、基体ホルダの回転軸に接続されていることを特徴とする請求項5または6記載の薄膜形成装置。
  8. 回転軸を有する基体ホルダに保持された少なくとも1つ以上の基体に対して薄膜形成処理を行って前記基体に薄膜を形成させる薄膜形成方法であって、
    薄膜形成処理の開始を行う薄膜形成処理開始工程と、
    前記基体のすべてに対して同じ回数の薄膜形成処理が行われた場合に薄膜形成処理を停止する薄膜形成処理停止工程と、
    を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
  9. 前記薄膜形成処理停止工程は、前記薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置と実質的に一致する回転位置で薄膜形成処理を停止することを特徴とする請求項8記載の薄膜形成方法。
  10. 前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始時における基体ホルダの回転位置を処理開始位置として取得する工程と、
    前記処理開始位置を記憶する工程と、を含み、
    前記薄膜形成処理停止工程は、前記基体ホルダの回転位置を取得する工程と、
    基体ホルダの回転位置と前記処理開始位置とを比較する工程と、
    前記回転位置と前記処理開始位置とが実質的に一致する回転位置で、前記薄膜形成処理を停止する停止指令を出力する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項8記載の薄膜形成方法。
  11. 前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始前に前記処理開始位置を処理開始位置として予め取得する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法。
  12. 前記薄膜形成処理開始工程は、前記薄膜形成処理の開始時を検出する工程と、
    前記開始時する致する場合を記憶する記憶処理開始位置における基体ホルダの回転位置を処理開始位置として取得する工程と、を含むことを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法。
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