JP4798817B2 - 共有結合で付着されたポリマーをもつ変性巨大分子発色団を含むインクジェット用インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性のために付着された官能基及び共有結合で付着されたビニルポリマー鎖の両者を有する変性された顔料粒子(巨大分子発色団)を含むインクジェット用インク組成物に関する。これらの着色インクは、媒体に適用された時、高い耐汚れ性、高い印刷品質、改善されたにじみ制御、及び改善された耐水性を示す。さらに、これらのインクは、良好な粘度と表面張力を有する。これらのインクは、サーマルインクジェット印刷、圧電式インクジェット印刷、及び連続インクジェット印刷を含む、インクジェット印刷に有用である。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
インクジェット式プリンタは、コンピュータと併用される他方式のプリンタに比べ、低コスト、高品質、及び比較的ノイズの無い選択を提供するものである。該プリンタは、プレナムから入るインクの出道を備えたチャンバーに抵抗素子を採用している。プレナムは、インク貯蔵用容器に接続されている。複数の該抵抗素子は、印字ヘッドにおいて、プリミティブと呼ばれる、特定パターンを形成する。各抵抗素子は、ノズル板のノズルと組み合わされていて、それを通してインクが印刷媒体の方へ射出されるのである。印字ヘッドと容器をまとめて組立てたものがインクジェットペンを構成する。
【0003】
動作に当っては、各抵抗素子は伝導線を通してマイクロプロセッサに接続されており、ここで、電流搬送信号が選択された1つ以上の素子を発熱させる。この加熱によってチャンバー内にインクのバブルが生成され、それがノズルを通して印刷媒体の方へ射出される。この方法では、与えられたプリミティブの特定順に、複数の該抵抗素子を付勢して、英数字を形成し、区画書き込みを行い、且つその他の印刷機能を媒体上に提供するのである。
【0004】
サーマルインクジェット印刷に用いられるインクジェット用インクは、典型的には、着色剤とビヒクルから成り、そのビヒクルは、しばしば、水と他の比較的低表面張力の液体を含有する。
【0005】
着色剤には、一般に染料をベースとしたものと顔料をベースにしたものの2種類がある。染料は、水溶性であるという利点がある。しかし、染料に関わる問題は、耐水性、耐汚れ性、カラー間のにじみ制御、及び耐光性が全て不十分であるということである。顔料は、一般に、水不溶性であり、従って、それを水溶性にするには分散又はその他の手段を必要とする。
【0006】
関連技術にはこれらの着色剤を使うインクジェット用インク処方の例が多く見られるとはいえ、改良された耐汚れ性、耐水性、改良された印刷品質、改良されたにじみ制御、及び光学濃度を提供する安定で水溶性の顔料から成るインク組成物に対する要求は、依然として存在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、水溶性であり且つ着色剤に共有結合で付着されたビニルポリマー類を含む着色剤を含有するインクジェット用インク組成物が提供される。ここで使用される着色剤は、水溶性をもたらすための官能基並びにインク調合に当たり優れた諸特性を付与するためのポリマー類でその表面が処理されているところの顔料粒子を含有する。そのように処理された顔料は、巨大分子発色団(MMC)と呼ばれる。これらのMMC含有インクは、擦り汚れ(smear)を小さくする上で有効であり且つ増大された耐水性、にじみ制御、光学濃度及び改善された印刷品質を示す。にじみ(bleed)制御は、実質的に、同時的に且つ隣接して印刷された1つの着色インクの第二の着色インクへの浸入の制御として定義される。当該インクは、インクジェットプリンタの高い印刷品質と性能を実現する助けとなるようさらに別の成分を含有してもよい。
【0008】
加えて、本発明によれば、開示したインクを使用し且つそのインクの諸性質を活用するインクジェット印刷の方法が提供される。
【0009】
本明細書における全ての濃度は、別途指定されない限り、重量パーセントで表示する。全成分の純度は、インクジェット用インクとして正常な業務実践に用いられるそれである。全ての参考文献及び引用特許は、引用によりここに組み込まれている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のインク処方に使用される顔料粒子、即ちMMCは、粒子に水溶性を付与するための化学的変性を含む。典型的な化学処理の下で、生ずるMMCの表面は、アニオン発色団としてカルボン酸塩、リン酸塩、及び/又はスルホン酸塩の官能性基(functionalities)、及びカチオン発色団としてアンモニウム、第四アンモニウム、又はホスホニウムの官能性基を含む。
【0011】
本発明のMMC着色剤粒子は、好ましくは、0.005〜12μmの範囲の有効平均直径を有する。この種の着色剤は、溶媒接近可能性官能基が誘導体化されて着色剤を水溶性にする可溶化基を提供するところの、化学反応から生ずる。生ずる巨大分子発色団(MMC)は水溶性であり、その溶解度は、周知の且つ商用されている水溶性の酸性及び塩基性染料のそれと類似している。
【0012】
これらの水溶性ブラック発色団は、Cabot Corp.及びOrient Chemicalのような着色剤販売業者から得られる市販の顔料から作られる。顔料の多くは、本発明の実施に有用である。次の顔料は発明の実施に有用である。次の顔料群は、本発明に有用な着色剤の部分的リストを構成するものである。
【0013】
Paliogen(商標名) Orange, Heliogen(商標名) Blue L 6901F, Heliogen(商標名) Blue NBD 7010, Heliogen(商標名) Blue K 7090, Heliogen(商標名) Blue L 7101F, Paliogen(商標名) Blue L 6470, Heliogen(商標名) Green K 8683, 及びHeliogen(商標名) Green L 9140は、全て、BASF Corp.から入手できるものである。
【0014】
次の顔料はCabotから入手可能である:Monarch(商標名) 1400, Monarch(商標名) 1300, Monarch(商標名) 1100, Monarch(商標名) 1000, Monarch(商標名) 900, Monarch(商標名) 880, Monarch(商標名) 800, 及びMonarch(商標名) 700。
【0015】
次の顔料はCiba-Geigyから入手可能である:Chromophtal(商標名) Yellow 3G, Chromophtal(商標名) Yellow GR, Chromophtal(商標名) Yellow 8G, Igrazin(商標名) Yelolow 5GT, Igralite(商標名) Rubine 4BL, Manastral(商標名) Magenta, Monastral(商標名) Scarlet, Monastral(商標名) Violet R, Monastral(商標名) Red B,及びMonastral(商標名) Violet Maroon B。
【0016】
次の顔料はColumbianから入手可能:Raven 7000, Raven 5750, Raven 5250, Raven 5000, 及びRaven 3500。次の顔料はDegussaから入手可能:Color Black FW 200, Color Black FW 2, Color Black FW 2V, Color Black FW 1, Color Black FW 18, Color Black S 160, Color Black FW S 170, Special Black 6, Special Black 5, Special Black 4A, Special Black 4, Printex U, Printex 140U, Printex V, 及びPrintex 140V。Tipure(商標名) R-101はDuPontから入手可能。次の顔料はHeubachから入手可能:Dalamar(商標名) Yellow YT-858-DとHeucophthal(商標名) Blue G XBT-583D。次の顔料はHoechstから入手可能:Permanent Yellow GR, Permanent Yellow G, Permanent Yellow NCG-71, Permanent Yellow GG, Hansa Yellow RA, Hansa Brilliant Yellow 5GX-02, Hansa Yellow-X, Novoperm(商標名) Yellow HR, Novoperm(商標名) Yellow FGL, Hansa Brilliant Yellow 10GX, Permanent Yellow G3R-01, Hostaperm(商標名) Yellow H4G, Hostaperm(商標名)Yellow H3G, Hostaperm(商標名) Orange GR, Hostaperm(商標名)Scarlet GO,及びPermanent Rubine F6B。次の顔料はMobayから入手可能:Quindo(商標名)Magenta, Indofast(商標名)Brilliant Scarlet, Quindo(商標名)Red R6700, Quindo(商標名) Red R6713,及び Indofast(商標名)Violet。次の顔料はSun Chemから入手可能:L74-1357 Yellow, L75-1331 Yellow,及びL75-2577 Yellow。
【0017】
水溶性を付与する変性 (modification)−ここでのMMCは、少なくとも1つの芳香族基又はC1-C12アルキル基と少なくとも1つのイオン基又はイオン化性基(ionizable group)を含む1つ以上の有機基の付加によって変性される。イオン化性基は、水性媒体においてイオン基の形をとるものである。イオン基は、アニオン性もしくはカチオン性であってよい。芳香族基は、さらに置換されても又は置換されなくてもよい。例としては、フェニル又はナフチル基があり、そしてイオン基は、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、カルボン酸、アンモニウム、第四アンモニウム、又はホスホニウム基である。
【0018】
選択したプロセスによっては、MMCは、性質上、アニオン性又はカチオン性の何れであってもよい。市販される時、アニオン発色団は、通常、ナトリウム又はカリウムの陽イオンと結合され、カチオン発色団は、通常、塩化物又は硫酸塩の陰イオンと結合される。
【0019】
変性のための1つの好ましい方法は、少なくとも1つの酸性官能基を含んでいるアリールジアゾニウム塩によるカーボンブラック顔料の処理である。アリールジアゾニウム塩の例としては、スルファニル酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサルチル酸、7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸、アミノフェニルホウ素酸、アミノフェニルホスホン酸及びメタニル酸から作られたものがある。
【0020】
アンモニウム、第四アンモニウム基、第四ホスホニウム基、及びプロトン化アミン基は、上述の同じ有機基に付着してよいカチオン基の例を代表するものである。
【0021】
変性されたカーボンブラック顔料についての議論及び官能化基を付着する方法に関しては、米国特許Nos.5,707,432; 5,630868; 5,571,311;及び5,554,739参照。
【0022】
第二の変性:ポリオレフィン基を MMC に添加−水溶性官能基の添加によって変性後、重合性ポリオレフィン基、好ましくは、任意のアルキレン基をMMCに共有結合で付着することになる後続の反応によってMMCをさらに変性する。適当なポリオレフィン基は、MMCの表面に共有付着される次の構造を持つ:
R"-CR=C(H)R'
ここで、Rは、H又はメチルであってよく、R'は、H又は約1〜約10個の炭素を有するアルキル又はアリールであってよく、そしてR"は、約1〜約20個の炭素と、任意に、ヘテロ原子、好ましくはN及びOとを有する任意のアルキル、アルケニル、アリール基であってよい。これらの基の好ましい例としては、ビニル、アクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリル酸塩、及びメタクリルアミドがある。それらは、任意の比率で存在してよい。
【0023】
MMC上の重合の開始点として作用するところの適当な官能基の例には、下記が含まれる:
【0024】
【化1】
【0025】
本明細書において開示且つ特許請求されるMMCは、総量で約0.001〜約10 mmol/gの共有付着された水可溶化基と共有付着されたポリマーとから成ってよい。(同ポリマーは、上記のビニル、(メタ)アクリル酸塩類、又はスチリル基の1つを通して共有付着される)。共有付着されたポリマー組成物は、任意の相対比率の1つ以上のモノマー(下記)から成る。
【0026】
ポリマー付着−官能基がMMCに既に共有付着された上記発色団の使用は、水中で起こるべきポリマー反応を考慮している。MMC上のビニル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、又はメタクリルアミド基の配置も、顔料表面上への非特定吸収よりむしろ特定部位でのポリマーの付着を考慮したものである。本発明に使用できる適当な重合プロセスは、溶液、エマルション、又は懸濁の重合方法を含む。ラジカル連鎖重合は、官能化されたMMCの表面で起こり、種々のポリアクリル酸塩類、ポリメタクリル酸塩類、及びその他のホモ−又はコ−ポリマー類を生成する。このように、ポリマーは、ファンデルワール(van der Waals) 又はロンドン(London)の分散力によって単に顔料粒子と結合されるのではなく、MMCに共有結合で付着されるのである。従って、典型的な顔料ベースのインクとは異なり、本発明のインク調合では、非共有結合又はその他の方法で着色剤粒子と結合させることによって水可溶性を付与するところの従来型の分散剤が事実上含まれない(0.005 wt%未満)。
【0027】
重合プロセスに用いることができる適当なモノマー類には、C50以下のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル類;C50以下のアクリル酸及びメタクリル酸のアミド類;アルキレングリコール類及びそれらのアクリル酸及びメタクリル酸のエーテル類;ビニルピロリドン;ビニルカルバゾール;酢酸ビニル及びアルコール類、酢酸アリル、及びスチレンのアミノ及びスルホン酸の全ての異性体類がある。重合プロセスは、通常、反応混合物中に遊離モノマー類が観察されなくなるまで続けられる。この観察は、通常、ガスクロマトグラフィーの方法で実施できるということは、熟練した当業者にはわかるであろう。ここで用いられるポリマー類の重量平均分子量は、約300〜約100,000、好ましくは、約5,000〜約30,000である。ポリマーの分子量は、MMCが無いときに重合された自由ポリマーの分子量から定められる。自由ポリマー類の分子量は、MMCに付着された時と同じであることが想定される。
【0028】
1つ以上の下記モノマー類は、任意の組合せで且つ任意の比率で付加することができる。
【0029】
適当なビニルモノマー類の構造を以下に列挙する。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
ここでのポリマー類は、アクリル酸塩及びメタクリル酸塩のようなビニルモノマー類を有する不飽和化合物のコポリマーから成る。これらの化合物は、表面活性特性を示すことがある。例を以下に列挙する。
【0033】
【化4】
【0034】
ポリマー類の機械的特性を改善するために、ポリマー鎖に任意の架橋結合モノマー類を含有させてよい。ジー及びポリ官能性(di-and polyfunctional)ビニルモノマー類の例を以下に列挙する。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
ここで用いられる好ましいビニルモノマー類の例には、下記が含まれる:
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
架橋結合用の好ましいビニルモノマー類の例には、下記が含まれる:
【0042】
【化10】
【0043】
上記の構造で留意すべきは、種々の炭素鎖は、芳香族(半)部分を有するか又は持っていない飽和又は不飽和炭化水素類に関連し得るということである。さらに、特定モノマー、特に、架橋結合できるモノマー類の最適比率によって、インクジェット用インク調合の性能が影響を受けることがある、ということは熟練した当業者は理解できるであろう。例えば、高比率の架橋結合モノマー類を用いると、MMCのゲル化(gelling)を起こすことがある。
【0044】
インクジェット用インクビヒクル−本発明のインク組成物は、上記の改質MMCの着色剤に加えてビヒクルを含有する。インクとそれらの性質についての議論に関しては、The Printing Manual, 5th ed.Leach et al.(Chapman and Hall, 1993)参照。米国特許 Nos.2,833,736;3,607,813;4,104,061;4,770,706;及び5,026,755も参照。
【0045】
発明の実施において有用なインクの代表的処方は、MMC(約0.001%〜10 wt%)、1つ以上の共溶媒類(0.01〜約50 wt%)、1つ以上の水溶性界面活性剤/両親媒性物質類(0〜約40、好ましくは、約0.1〜約5 wt%)、1つ以上の高分子量コロイド類(0〜約3 wt%)、及び水(バランス)を含む。
【0046】
インク処方には1つ以上の共溶媒をビヒクルに付加してよい。本発明の実施に使用される共溶媒の種類としては、限定するものではないが、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類、ジオール類、グリコールエーテル類、ポリ(グリコール)エーテル類、カプロラクタム類、ホルムアミド類、アセトアミド類、及び長鎖アルコール類がある。本発明の実施に用いられる化合物の例としては、限定するものではないが、30炭素以下の第一級脂肪族アルコール類、30炭素以下の第一級芳香族アルコール類、30炭素以下の第二級脂肪族アルコール類、30炭素以下の第二級芳香族アルコール類、30炭素以下の1,2-アルコール類、30炭素以下の1,3-アルコール類、30炭素以下の1,5-アルコール類、エチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル類、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテルの高級同族体、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル類、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル類の高級同族体、N-アルキルカプロラクタム類、未置換カプロラクタム類、置換ホルムアミド類、未置換ホルムアミド類、置換アセトアミド類、及び未置換アセトアミド類がある。本発明の実施において好ましく用いられる共溶媒の特定例には、限定するものではないが、1,5-ペンタンジオール、2-ピロリドン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、3-メトキシブタノール、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンがある。共溶媒の濃度は、約0.01〜約50 wt%の範囲にあってよく、好ましくは約0.1〜15 wt%である。
【0047】
インクのビヒクルの処方には水溶性界面活性剤類を用いてもよい。これらの界面活性剤類は、自由成分としてインク処方に添加されるもので、そうではなくここに記述したポリマー類の部分となるべく組み合わせ、又は意図されるものではない。便宜上、界面活性剤類の例は2つの範疇に分けられる:(1)非イオン性と両性及び(2)イオン性。前者の種類には、Union Carbideから入手できるアルキルポリエチレンオキシドである、TERGITOLs;Rohm & Haas Co.から入手可能なアルキルフェニルポリエチレンオキシドの界面活性剤である、TRITONs;BRIJs;PLURONICs(ポリエチレンオキシドのブロック共重合体);SURFYNOLs(Air Productsから入手できるアセチレン系ポリエチレンオキシド);POE(ポリエチレンオキシド)エステル類;POEジエステル類;POEアミン類;プロトン化POEアミン類;POEアミド類;及びジメチコン共重合体類がある。置換アミンオキシド類のようなイオン性界面活性剤は、本発明の実施において有用である。米国特許第5,106,416号は、上に挙げたほとんどの界面活性剤をさらに詳しく開示している。非イオン性両親媒性物質/界面活性剤類は、イオン性界面活性剤類よりさらに好ましいものである。本発明の実施において好ましく用いられる両親媒性物質/界面活性剤類の特定例としては、イソーヘキサデシルエチレンオキシド20、SURFYNOL CT-111、TERGITOL 15-S-7、及びN,N-ジメチル-N-ドセシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-テトラデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-(Z-9-オクタデセニル)-N-アミンオキシドのようなアミンオキシド類がある。両親媒性物質/界面活性剤類の濃度は、0〜約40 wt%の範囲にあってよく、好ましくは約0.1〜3 wt%である。
【0048】
光学濃度をさらに改良するために、天然又は合成ソースから誘導した0〜約3 wt%の間の高分子量コロイドを、任意に、インク処方に添加してよい。高分子量コロイドの添加により、印刷品質が改善される。本発明の実施において用いられる高分子量コロイドの例としては、アルギン酸塩類、マンヌロン酸、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、デキストラン、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ニトロメチルセルロース、及びそれらの全ての誘導体がある。これらのコロイドは、米国特許第5,133,803号、"High Molecular Weight Colloids for Bleed Control"に開示されている。本発明のインクの高分子量成分のコロイドの好ましい濃度は、約0.1%〜約0.75 wt%である。
【0049】
本発明の要件に矛盾しないで、様々な種類の添加剤をインクに採用して、特定用途に使えるようインク組成物の諸特性を最適化してよい。例えば、熟練した当業者に周知のように、殺生物剤をインク組成物に入れて微生物の成長を阻害してよい。好ましい殺生物剤の例には、UrarcideTMとProxelTM、及びNuoCeptTMがある。EDTAのような金属イオン封鎖剤を含有させて重金属の不純物の有害な影響を排除してよく、さらに緩衝液を用いてインクのpHを制御してもよい。粘度調節剤及び他のアクリル又は非アクリル系高分子のようなその他の既知添加剤を添加してインク組成物の各種特性を望み通りに改善してもよい。
【0050】
インクは、ビヒクルの種々の成分を組み合わせ且つそれらをここで開示したMMC着色剤と混合して調合される。カルボン酸塩の官能性を有するMMCを採用するインク処方では、そのpHは、約7〜約12である。スルホン酸塩又はカチオン官能性に関しては、そのpHの範囲は、約3〜約12であり、好ましくは、そのpHは、約5〜約9である。最終的インク組成物の粘度は、約0.8〜約8 cpsであり、好ましくは、約0.9〜約4 cpsである。
【0051】
インクジェット印刷の方法も、本明細書に開示される。本発明のインクは、在来型の任意のインクジェット又はバブルジェット又は圧電式プリンタに用いることができる。好ましくは、当該インクは、サーマルインクジェットプリンタに使用する。インクは、典型的には、プリンタのカートリッジに充填され、任意の媒体上に印刷される。印刷に向く適切な媒体の例には、紙、織物、木材、及びプラスチックが含まれる。
【0052】
【実施例】
本発明のMMCは、典型的に、2工程で調製される:1)市販のカーボンブラック顔料上への水可溶化基の共有付着及び2)ビニル含有官能基の共有付着。MMCの合成中、高せん断下での混合は混合効率を最大にする。適当な高せん断ミキサーの例には、磨滅器類、ホモジナイザー、微小流動化器(microfluidizers)、鋭角圧力弁類、2又は3ロール摩砕機類、及び音響器類(sonicators)がある。
【0053】
実施例 I.
反応容器に、11.0gの亜硝酸ナトリウムと、22.0gのパラ−アミノ安息香酸(PABA)と、0℃の水1200gとを充填する。PABAのジアゾニウム塩が生成する。MonarchTM 700カーボンブラック200gが添加され、大量の窒素がその混合物から放出する。反応混合物を濃縮し、高温で乾燥して反応をさらに推進する。生ずる混合物を再溶解し、膜フィルタを通して濾過して未反応カーボンブラックを取り除き、約15 wt%の粗PABA処理のMMC溶液を産出する。
【0054】
3.6gのアミノスチレンと、2.1gの亜硝酸ナトリウムと、150gの水とから上記のように4-アミノスチレンのジアゾニウム塩を作製する。エタノール10gが添加され、完全にジアゾニウム塩を溶解する。PABA処理MMCの溶液をジアゾニウム塩溶液に加え、それを混合しながら18時間反応させる。その溶液を濾過して約11 wt%においてMMC溶液を提供する。このMMCは、MMC粒子に共有付着された安息香酸及びスチレンの両官能基を含む。
【0055】
実施例 II.
反応容器に、11.4gの亜硝酸ナトリウムと、28.0gのスルファニル酸(SA)と、0℃の水 1200gとを充填する。SAのジアゾニウム塩が生成する。MonarchTM 700 カーボンブラック200gがその溶液に添加され、大量の窒素がその混合物から放出する。反応混合物を濃縮し、高温で乾燥して反応をさらに推進する。生ずる混合物を再溶解し、膜フィルタを通して濾過して未反応カーボンブラックを取り除き、約15 wt%の粗SA処理MMC溶液を産出する。
【0056】
3.6gのアミノスチレンと、2.1gの亜硝酸ナトリウムと、150gの水とから上記のように4-アミノスチレンのジアゾニウム塩を作製する。エタノール10gが添加され、ジアゾニウム塩を完全に溶解する。SA処理MMC溶液をジアゾニウム塩溶液に加え、それを混合しながら18時間反応させる。その溶液を濾過して約11 wt%においてMMC溶液を提供する。このMMCは、MMC粒子に共有付着されたベンゼンスルホン酸及びスチレンの両官能基を含む。
【0057】
実施例 III.
反応容器に、11.4gの亜硝酸ナトリウムと、28.0gのスルファニル酸(SA)と、0℃の水 1200gとを充填する。SAのジアゾニウム塩が生成する。MonarchTM 700 カーボンブラック200gがその溶液に添加され、大量の窒素がその混合物から放出する。反応混合物を濃縮し、高温で乾燥して反応をさらに推進する。生ずる混合物をエタノールで12時間ソックスレー抽出して出発物質と反応副産物を除去する。次いで、それを水に再溶解し、そして濾過して、約20 wt%のスルファニル酸処理MMC溶液を産出する。
【0058】
3.6gのアミノスチレンと、2.1gの亜硝酸ナトリウムと、150gの水とから上記のように4-アミノスチレンのジアゾニウム塩を作製する。エタノール10gを添加してジアゾニウム塩を完全に溶解する。SA処理MMC溶液をジアゾニウム塩溶液に加え、それを混合しながら18時間反応させる。その溶液を濾過して約11 wt%においてMMC溶液を提供する。このMMCは、MMC粒子に共有付着されたベンゼンスルホン酸及びスチレンの両官能基を含む。ソックスレー抽出による精製で、比較的高レベルの4-アミノスチレンをMMCの表面に付加することができる。
【0059】
実施例 IV.
50/50 wt%/wt% MMC/polymer(40/40/20 MMA/HA/PEG200-OMeAA)−反応容器中で、窒素雰囲気下で30gの脱イオン水を90℃で脱ガスする。28.13gのMMC溶液(上記実施例III)と、2.0gのメタクリル酸メチルと、2.0gのアクリル酸ヘキシルと、3.0gの脱イオン水に溶かした1.0gのポリエチレングリコール2000モノメチルエーテルアクリル酸塩との混合物を20分にわたり滴状添加する。過硫酸カリウム、0.22gが一度に添加される。反応は80℃で18時間維持され、この場合、均質のまま保持される。その混合物を減圧下で濃縮し、アセトンでソックスレー抽出して未付加ポリマーを除去する。少量のポリマーが、アセトン抽出液中に見られる(<3 wt%)。残りのポリマーはMMC表面上にスチレン基をもって重合される。
【0060】
精製した材料を脱イオン水に再溶解して10 wt%の溶液を生成する。
【0061】
【表1】
【0062】
モノマー類:PEG200-OMe AA = ポリエチレングリコール2000モノメチルエーテルアクリル酸塩;
MMA = メタクリル酸メチル;HA = アクリル酸ヘキシル
開始剤 K2S2O8 = 過硫酸カリウム; ACVA = 4,4-azobis(4-cyanovaleric acid);
Vazo 88 = azobis(cyclohexane carbontrile); AMTA = 2,2-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride
連鎖移動剤:ONV = Iso-octyl mercaptopropionate
安定性の検討
(a)脱イオン水に溶かした3 wt%溶液を60℃に1週間放置する。全ての場合、試験管の底には目立った沈降は目で観察されない。光散乱によりその溶液を凝集についてさらに分析する。粒子径の結果を下表に挙げる。
【0063】
【表2】
【0064】
(b)室温にて3ヶ月にわたり、粒子径の変化又は沈降の何らかの徴候も観察されない。粒子径の結果を下表に挙げる。
【0065】
【表3】
【0066】
産業上の応用性
上述の変性されたMMCの包含によって、インクジェット印刷に使われるインク用としての用途が拓けるものと期待される。
【0067】
以下、本発明の構成要件の組み合わせからなる種々の実施態様を併記する。
【0068】
1.少なくとも1つの水可溶化官能基と少なくとも1つの共有結合で付着されたポリマーを含む巨大分子発色団を含有するンクジェット用インク組成物。
【0069】
2.前記水可溶化官能基が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム、第四アンモニウム、ホスホニウム、及びそれらの混合物から成る群から選択されるイオン化性基が付着されている芳香族基であり;且つ前記ポリマーは、下記構造:
R"-CR=C(H)R'
(式中、Rは、H又はメチルであり、R'は、H又は1〜10個の炭素を有するアルキル又はアリールであり、そしてR"は、1〜20個の炭素と、任意にヘテロ原子とを有する任意のアルキル、アルケニル、アリール基である)
を有するポリオレフィン基によって前記巨大分子発色団に共有結合で付着されている上項1のインク組成物。
【0070】
3.前記の水溶性官能基と前記のポリオレフィン官能基が、前記巨大分子発色団の0.001 mmol/g乃至10 mmol/gからなる上項2のインク組成物。
【0071】
4.前記ポリオレフィン基が、ビニル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びそれらの混合物から成る群から選択される上項2のインク組成物。
【0072】
5.前記ポリマーが、下記の化合物及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから構成される上項1乃至4のいずれか1項のインク組成物:
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
6.前記ポリマーが、下記の化合物及びそれらの混合物から成る群から選択されるモノマーから構成される上項5のインク組成物:
【0079】
【化16】
【0080】
【化17】
【0081】
【化18】
【0082】
【化19】
【0083】
7.
a) 少なくとも1つの水可溶化官能基と少なくとも1つの共有付着ポリマーを含む巨大分子発色団の0.001%乃至10 wt%;
b) 1又は以上の共溶媒の0.01%乃至50 wt%;
c) 1又は以上の水溶性界面活性剤/両親媒性物質類の0%乃至40 wt%;
d) 1又は以上の高分子量コロイドの0%乃至3 wt%
を含むインクジェット印刷用インク組成物。
【0084】
8.少なくとも1つの水可溶化官能基と少なくとも1つの共有付着ポリマーを含む巨大分子発色団含有のインクジェット用インク組成物を媒体上に印刷することを含むインクジェット印刷方法。
【0085】
9.前記水可溶化官能基が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム、第四アンモニウム、ホスホニウム、及びそれらの混合物から成る群から選択されるイオン化性基が付着されている芳香族基であり;且つ前記ポリマーは、下記構造:
R"-CR=C(H)R'
(式中、Rは、H又はメチルであり、R'は、H又は1〜10個の炭素を有するアルキル又はアリールであり、そしてR"は、1〜20個の炭素と、任意にヘテロ原子とを有する任意のアルキル、アルケニル、アリール基である)
を有するポリオレフィン基によって前記巨大分子発色団に共有結合で付着され;
さらに、前記の水溶性官能基と前記のポリオレフィン官能基が、前記巨大分子発色団の0.001 mmol/g乃至10 mmol/gよりなる上項8のインクジェット印刷方法。
【0086】
10.前記ポリオレフィン基が、ビニル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びそれらの混合物から成る群から選択される上項8又は9のインクジェット印刷方法。
【0087】
11.前記ポリマーが、下記の化合物及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから構成される上項8乃至10のいずれか1項の方法:
【0088】
【化20】
【0089】
【化21】
【0090】
【化22】
【0091】
【化23】
【0092】
【化24】
【0093】
12.前記ポリマーが、下記の化合物及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから構成される上項9の方法:
【0094】
【化25】
【0095】
【化26】
【0096】
【化27】
【0097】
【化28】
Claims (8)
- 巨大分子発色団であって、少なくとも1つの水可溶化官能基と前記巨大分子発色団に共有結合している少なくとも1つのポリマーとを含んで成る巨大分子発色団を含有するインクジェット用インク組成物であって、
前記水可溶化官能基が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム、第四アンモニウム、ホスホニウム、及びそれらの混合物から成る群から選択されるイオン化性基の結合した芳香族基であり;且つ前記ポリマーが、下記構造:R"-CR=C(H)R'〔式中、Rは、H又はメチルであり、R'は、H又は1〜10個の炭素を有するアルキル又はアリールであり、そしてR"は、1〜20個の炭素と、任意にヘテロ原子とを有するアルキル、アルケニル、アリール基である〕を有するポリオレフィン基によって前記巨大分子発色団に共有結合しており、
前記ポリマーが、以下の群から選択されるモノマー及びそれらの混合物から構成される、インク組成物。
- 前記水溶性官能基と前記ポリオレフィン官能基が、前記巨大分子発色団1g当たり0.001 mmol乃至10 mmolにて含まれる、請求項1記載のインク組成物。
- 前記ポリオレフィン基が、ビニル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1記載のインク組成物。
- a) 請求項1に記載の巨大分子発色団を0.001%乃至10 wt%にて;
b) 1つ以上の共溶媒を0.01%乃至50 wt%にて;
c) 1つ以上の水溶性界面活性剤/両親媒性物質類を0%乃至40 wt%にて;及び
d) 1つ以上の高分子量コロイドを0%乃至3 wt%にて含む、インクジェット印刷用インク組成物。 - 巨大分子発色団であって、少なくとも1つの水可溶化官能基と前記巨大分子発色団の表面に共有結合している少なくとも1つのポリマーを含んで成る巨大分子発色団を含有するインクジェット用インク組成物を媒体上に印刷することを包含する、インクジェット印刷方法であって、
前記水可溶化官能基が、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム、第四アンモニウム、ホスホニウム、及びそれらの混合物から成る群から選択されるイオン化性基の結合した芳香族基であり;且つ前記ポリマーが、下記構造:R"-CR=C(H)R'〔式中、Rは、H又はメチルであり、R'は、H又は1〜10個の炭素を有するアルキル又はアリールであり、そしてR"は、1〜20個の炭素と、任意にヘテロ原子とを有するアルキル、アルケニル、アリール基である〕を有するポリオレフィン基によって前記巨大分子発色団に共有結合しており、
前記ポリマーが、以下の群から選択されるモノマー及びそれらの混合物から構成される、方法。
- 前記ポリオレフィン基が、ビニル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項6に記載のインクジェット印刷方法。
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