JP4798714B2 - シリコン単結晶引上用シリカガラスルツボ - Google Patents

シリコン単結晶引上用シリカガラスルツボ Download PDF

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Description

本発明は、シリコン単結晶の引上げに用いられるシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボに関する。
シリコン単結晶の育成に関し、チョクラルスキー法(CZ法)が広く用いられている。この方法は、ルツボ内に収容されたシリコン溶融液の表面に種結晶を接触させ、ルツボを回転させるとともに、この種結晶を反対方向に回転させながら上方へ引上げることによって、種結晶の下端に単結晶を形成していくものである。
従来、このシリコン単結晶を製造するためのルツボとして、シリカガラスルツボが用いられている。このシリカガラスルツボは二層構造であって、外側が不透明層、内側が透明層で形成される。外側の不透明層は、多数の気泡を含み、合成シリカガラスに比べて純度は低いが耐熱性に優れた天然シリカガラスにより形成され、内側の透明層は、天然シリカ質原料あるいは合成シリカ質原料により形成される。合成シリカガラスは不純物が少なく、DF率(単結晶化率)が良いという利点があるので、近年、いわゆる合成シリカガラスルツボの比率が高くなってきている。
しかしながら、前記のようなシリカガラスルツボを用いて単結晶の引上げを行う場合、シリコン溶融液及び種結晶の回転により、或いは、種結晶の浸漬により融液面が揺動(以下、液面振動と称呼する)するという技術的課題があった。即ち、この液面振動が発生すると、種結晶の種付けが困難となり容易に引上げが開始できないという問題や、引上げ中に結晶が転位する虞が高くなり、DF率(単結晶化率)が低下するという課題があった。
このような課題を解決するため、特許文献1には、単結晶の引上げ開始時においてシリコン溶融液の液面(メルトライン)が接するルツボ内周面(初期メルトライン帯域或いはこれを含む上部域)に、多数の凹部を設けたシリカガラスルツボ(図示せず)が開示されている。特許文献1に開示されたルツボによれば、前記多数の凹部の端部に凸部を形成することにより、溶融液面の局部的表面張力を増大させ、シリコン溶融液の液面振動を抑制するようにしている。
特開2005−272178号公報
しかしながら、従来のようにルツボ内周面に凹部が形成されたルツボにあっては、多数の微細な凹部がルツボ内表面に露出して存在するため、ルツボの最終洗浄工程において、フッ酸等の洗浄液が当該凹部の内部まで充分に入り込まず、凹部形成時に生ずる不純物もしくはパーティクル除去が充分になされなかった。その結果、単結晶引上げ時におけるシリコン溶融液によるルツボ内表面の浸食に伴い、当該不純物やパーティクルが溶融液に放出され、シリコン単結晶に転位が発生し、結晶を溶融液に溶かす処理であるメルトバックの必要が生じ、DF率(単結晶化率)が低下するといった問題があった。
また、シリカガラスルツボは、引上装置内においてカーボンルツボ内で垂直となるよう配置制御がなされる。しかしながら、常に正確な垂直配置がなされるとは限らず、傾いて配置された場合には、ルツボ内周面に形成された0.5〜10mmの高さ寸法を有する凹部形成帯域が、引上げ開始時の溶融液面位置(メルトライン)と全周に亘り充分に合致せず、液面振動抑制効果の確実性が充分とはいえなかった。
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、シリコン溶融液を収容し、前記シリコン溶融液からシリコン単結晶が引上げられるシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボにおいて、液面振動をより確実に抑制し、高い単結晶化率を実現することのできるシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボを提供することを目的とする。
前記した課題を解決するために、本発明に係るシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボは、外周側に不透明層が形成され、内周側に透明層が形成された層構造を有し、前記内周側にシリコン溶融液を収容し、チョクラルスキー法により単結晶が引上げられるシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボであって、10〜30mmの高さ寸法を有する前記透明層の初期メルトライン帯域において、該帯域の内周面側には、5〜80μmの厚さ寸法を有する、気泡個数密度が2個/mm 以下の第一の実質的無気泡層が形成され、第一の実質的無気泡層よりも外側には、100μm以上の厚さ寸法を有する平均直径が40〜80μmの気泡が75〜130個/mmの密度で存在する気泡含有層が形成されており、前記初期メルトライン帯域より下方の全域において、この内周面側に、300μm以上の厚さ寸法を有する、気泡個数密度が2個/mm 以下の第二の実質的無気泡層が形成されていることに特徴を有する。
このような構成によれば、シリコン溶融液の収容前は、ルツボ内周面に凹部が形成されておらず、即ち、ルツボ製造段階で凹部を内周面に形成する必要がないため、従来のように凹部形成時に生じ、当該凹部に残存する不純物もしくはパーティクルが、単結晶引上げ時にシリコン溶融液に放出されるといった虞がない。したがって、メルトバックの発生確率を低減し、また、DF率(単結晶化率)を向上することができる。
また、ルツボにシリコン溶融液を収容した際のメルトラインの浸食速度が40μm/h以下で、気泡含有層の気泡膨張率が1.5倍以下の環境で使用される場合、換言すれば、メルトラインの浸食速度が遅く、且つ、気泡が膨張し難い環境で使用される場合であっても、単結晶引上げ開始時までに初期メルトライン帯域の表面を凹凸形状とすることができ、溶融液面がこの凹凸形状に当接するために液面振動を抑制することができる。
ここで、前記第一の実質的無気泡層の厚さ寸法が5μm未満場合には、溶融液Mの侵食により気泡含有層の気泡が原料ポリシリコンの溶融初期段階で開放され、前記侵食の初期段階から多数の気泡の開放が生じる。即ち、この多数の気泡の開放に伴うパーティクル発生によってシリコン単結晶インゴットのクラウン部形成時に転位が生じ、その結果、メルトバック発生の確率が増加し、メルトバックの繰り返しに伴う面荒れによりDF率が低下する。
また、前記第一の実質的無気泡層の厚さ寸法が80μmを超える場合には、シリコン単結晶の引上げ開始までに、実質的無気泡層を溶融液により浸食させ、溶融液を気泡含有層に接触させることができない。
したがって、前記第一の実質的無気泡層の厚さ寸法が5〜80μmに形成されているのが好ましく、シリコン単結晶の引上げ開始までに、実質的無気泡層を溶融液により浸食させ、溶融液を気泡含有層に接触させて、気泡含有層の表面を凹凸形状とすることができる。
また、気泡含有層の気泡径が40μm未満の場合には、液面振動を抑制するに十分な表面凹凸を形成することができず、気泡径が80μmを超える場合には、気泡開放の際に大きな石英片がシリコン溶融液に混入し、結晶の転位が生じる虞があるため好ましくない。
したがって、気泡含有層の気泡径が40μm〜80μmが好ましく、単結晶引上げの初期段階において、液面振動を抑制するに十分な表面凹凸を形成することができる。
その結果、引き上げ中に結晶が転位することなく、DF率(単結晶化率)を向上することができる。
また、前記気泡含有層の厚さ寸法が、100μm以上となされることにより、単結晶引上げ工程中、シリコン溶融液による侵食が進行しても、常に溶融液面を凹凸形状に当接させることができ、液面振動を抑制することができる。
特に、シリコン溶融液のメルトラインの浸食速度が40μm/h以下の環境下で使用されるものであり、気泡含有層の厚さ寸法が少なくとも100μmであれば、引上げ工程中、常に溶融液面を凹凸形状に当接させることができ、液面振動を抑制することができる。
また、前記初期メルトライン帯域の高さ寸法が、少なくとも10mmの高さ寸法となされることで、ルツボ設置時の傾斜角度、原料投入量等に起因する溶融液面の凹凸面からの位置ずれが防止される。即ち、単結晶の引上げ開始時において、溶融液面が必ず初期メルトライン帯域に位置することで凹凸面との接触による液面振動の抑制効果を得ることができる。また、初期メルトライン帯域の高さ寸法が30mm以下となされることでメルトバック発生の確率が低下し、高い操業性が得られると共に、DF率を向上することができる。
また、300μm以上の厚さ寸法を有する第二の実質的無気泡層を形成することで、シリコン溶融液の侵食により、溶融液が所定の気泡数を有する透明層に達し、多数の気泡が開放されることがない。したがって、気泡の開放に起因するルツボ内表面の荒れによる溶融液への異物混入を防止することができる。
特に、シリコン溶融液のメルトラインの浸食速度が40μm/h以下の環境下で使用されるものであり、第二の実質的無気泡層が少なくとも300μmであれば、溶融液が所定の気泡数を有する透明層に達し、多数の気泡が開放されることがない。
また、前記気泡含有層が有する気泡の密度は75〜130個/mm3であることが好ましい。
即ち、ルツボにシリコン溶融液を収容した際のメルトラインの浸食速度が40μm/h以下で、気泡含有層の気泡膨張率が1.5倍以下の環境で使用される場合であっても、このように気泡個数密度が75個/mm3以上と設定されることにより、液面振動を抑制するのに、より充分な凹凸形状を得ることができる。また、130個/mm3以下と設定されることにより、表面の荒れによる溶融液への異物混入をより確実に防止することができる。
本発明によれば、シリコン溶融液を収容し、前記シリコン溶融液からシリコン単結晶が引上げられるシリカガラスルツボにおいて、液面振動をより確実に抑制し、高い単結晶化率を実現することのできるシリカガラスルツボを得ることができる。
以下、本発明に係るシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボの実施の形態について図面に基づき説明する。図1はシリカガラスルツボの構成を模式的に示す断面図である。
図示するように、このシリカガラスルツボ1(以下、単にルツボ1と称呼する)は、外周側に多数の気泡(好ましくは50個/mm3以上)を含有する不透明層2が形成され、内周側に少数の気泡(好ましくは9個/mm3以下)を含有する例えば厚さ2mmの透明層3が形成された二層構造になされている。尚、不透明層2は天然質(水晶等の天然原料を溶融した)シリカガラスからなり、透明層3は合成シリカガラスで形成されている。
また、ルツボ1は、図示するように上部開口部4からストレート部5、円弧部6、及び底部7からなるU字状に形成され、その内周側に原料ポリシリコンが溶融されたシリコン溶融液Mを収容するようになされている。
また、透明層3の内周面側であってルツボ高さの2分の1の高さ位置より上方に、10〜30mmの高さ寸法を有する初期メルトライン帯域10が形成され、単結晶の引上げ開始時におけるシリコン溶融液Mの液面ML(以降、メルトラインMLと称呼する)が、初期メルトライン帯域10に当接するようになされている。
この初期メルトライン帯域10の透明層3は、さらに多層構造になされる。即ち、図2に帯域10を含むエリアA1の拡大図を示すように、帯域10は、その内周面側に厚さ寸法D1が5〜80μm、気泡個数密度2個/mm3以下の実質的無気泡層10a(第一の実質的無気泡層)が形成される。
さらに、その外側には、厚さ寸法D2が100μm以上、気泡含有層の気泡径が40μm〜80μm、気泡個数密度75〜130個/mm3以上の気泡含有層10bが形成されている。
このような構成によれば、シリコン溶融液Mの収容前は、ルツボ1の内周面に凹部が形成されていない。即ち、ルツボ1の製造工程で凹部を内周面に形成する必要がないため、従来のように凹部形成時に生じ、当該凹部に残存する不純物もしくはパーティクルが、単結晶引上げ時にシリコン溶融液Mに放出されるといった虞がない。
また、この構成により、ルツボにシリコン溶融液を収容した際のメルトラインの浸食速度が40μm/h以下で、気泡含有層の気泡膨張率が1.5倍以下の環境で使用される場合、換言すれば、メルトラインMLの浸食速度が遅く、且つ、気泡の膨張がしにくい環境で使用される場合であっても、原料ポリシリコン溶融段階において、単結晶引上げまでに初期メルトライン帯域10の表面を凹凸形状とすることができ、溶融液面がこの凹凸形状に当接するために液面振動を抑制することができる。
即ち、第一の実質的無気泡層10aの厚さ寸法が5〜80μmに形成されている。これは、厚さ寸法D1が5μmに満たない場合、溶融液Mの侵食により気泡含有層10bの気泡が原料ポリシリコンの溶融初期段階で開放され、前記侵食の初期段階から多数の気泡の開放が生じるためである。即ち、この多数の気泡の開放に伴うパーティクル発生によってシリコン単結晶インゴットのクラウン部形成時に転位が生じ、その結果、メルトバック発生の確率が増加し、メルトバックの繰り返しに伴う面荒れによりDF率が低下する問題が生じるためである。
また、厚さ寸法D1が80μmを越えると、気泡含有層10bの気泡を開放するまでに、溶融液Mによる侵食が長時間必要となり、引上げ開始時に凹凸が形成されない虞があるためである。
また、第一の実質的無気泡層10aの気泡個数密度は2個/mm3以下が好ましい。この実質的無気泡層10aの気泡個数密度が2個/mm3を越えて気泡が存在すると、溶融液Mの侵食による気泡の開放で表面が荒れ、その結果、異物が溶融液Mに混入し、DF率が低下する虞があるため、好ましくない。
また、図2に示す気泡含有層10bの厚さ寸法D2は、100μm以上に形成され、より好ましくは300μm以上になされる。即ち、単結晶引上げ工程中に亘り溶融液Mによる気泡含有層10bの侵食が進行するが、このように厚さ寸法D2を形成することにより、例えメルトバックが繰り返され侵食量が大きくなっても、引上げ工程において凹凸形状を形成し、液面振動抑制効果を得ることができる。
また、気泡含有層10bが含む気泡の平均直径は、40〜80μmに形成される。これは、気泡直径が40μmに満たないと、液面振動を抑制するために必要な凹凸形状を形成できないためであり、直径が80μmを超えると、気泡開放の際に大きな石英片がシリコン溶融液に混入し、結晶の転位が生じる虞があるためである。
また、この気泡含有層10bが含む気泡個数密度は、75個〜130個/mm3となされる。これは、気泡密度が大きいほど、液面振動が効果的に抑制されるが、130個/mm3を越えると、表面が荒れ、溶融液へ異物が混入する虞があり、その場合、DF率が低下するためである。また、気泡個数密度が75個/mm3以下であると液面振動を抑制するのに充分な凹凸形状を得られないためである。
また、図2に示す初期メルトライン帯域10の高さ寸法h1は、前記したように10〜30mmに設定されている。このように、少なくとも10mmの寸法を有することで、ルツボ設置時の傾斜角度、原料投入量等に起因するメルトラインMLの凹凸面からの位置ずれが防止される。即ち、単結晶の引上げ開始時において、メルトラインMLが必ず初期メルトライン帯域10に位置することで、凹凸面との接触による液面振動の抑制効果が得られる。また、高さ寸法h1が30mm以内となされることで、メルトバック発生の確率が低下し、高い操業性が得られると共に、DF率を向上することができる。
また、ルツボ1において、初期メルトライン帯域10よりも下方には、図1に示すように、透明層3の内面側全域において、この内周面側には気泡個数密度2個/mm3以下で所定の厚さ寸法を有する実質的無気泡層9(第二の実質的無気泡層)が形成される。
図1に示すエリアA2は、この実質的無気泡層9を含むエリアであり、図3にこのエリアA2の拡大図を示す。図3に示すように、この実質的無気泡層9は、透明層3の内側表面から少なくとも300μm、好ましくは500μm以上の厚さ寸法D3を有するよう形成される。
第二の実質的無気泡層9の厚さ寸法D3が300μmに満たない場合、引上げ工程中にシリコン溶融液Mの浸食により、溶融液Mが気泡個数密度9個/mm3以下の透明層3に達し、多数の気泡が開放されてルツボ内表面の荒れが生じる。このルツボ内表面の荒れが生じると、異物が溶融液に混入してDF率が低下し、好ましくない。引上げ工程中におけるシリコン溶融液Mの浸食量を考慮すると、500μm以上であることが望ましい。
このように構成されたルツボ1を用い、例えばメルトラインMLの浸食速度が40μm/h以下で、気泡含有層10bの気泡膨張率が1.5倍以下の環境でシリコン単結晶の引上げを行う場合、先ず、ルツボ内に投入された原料ポリシリコンが溶融されてシリコン溶融液Mになされる。
ここで、メルトラインMLは初期メルトライン帯域10に当接し、単結晶引上げ開始までに溶融液Mにより気泡含有層10bが浸食され、気泡含有層10bが有する気泡が開放される。
即ち、メルトラインMLの浸食速度が遅く、且つ、気泡の膨張がしにくい環境で使用される場合であっても、実質的無気泡層10aが薄く形成されており、気泡含有層10bの気泡個数密度が高く、気泡径が大きいため、単結晶引上げの初期段階において、液面振動を抑制するに十分な表面凹凸が得られる。
したがって、単結晶引上げ開始時において、凹凸形状になされた初期メルトライン帯域10の表面にメルトラインMLが当接することによって液面振動が抑制される。
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、単結晶引上げ開始時においてシリコン溶融液のメルトラインMLが当接する初期メルトライン帯域10がルツボ内周側に設けられ、この初期メルトライン帯域10が第一の実質的無気泡層10aと、その外側の気泡含有層10bとにより形成される。
そして、この実質的無気泡層10aと気泡含有層10bの厚さ寸法、気泡個数密度、気泡直径等が、引上げ環境条件に応じた所定値になされているため、単結晶引上げ開始時までに初期メルトライン帯域10の第一の表面に凹凸形状を形成することができ、効果的に液面振動を抑制することができる。
また、ルツボ製造工程においてルツボ内周面に微細な凹凸形状を形成する必要がないため、従来のようにルツボ製造工程での凹部形成時に生じ、当該凹部に残存する不純物もしくはパーティクルが、単結晶引上げ時にシリコン溶融液Mに放出されるといった不具合を解消することができる。
したがって、種結晶の種付けが容易となり、また、引き上げ中に結晶が転位することなく、メルトバックの発生率が低下し、DF率(単結晶化率)を向上することができる。
続いて、本発明に係るシリカガラスルツボについて、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に示したシリカガラスルツボを製造し、そのルツボを用いて実験を行うことにより、その効果を検証した。
本実施例で用いるルツボの製造工程としては、先ず、チャンバ内において、外層に天然原料、内層に合成シリカ原料の二層を有する成形体原料に対し、減圧程度、溶融時間等を制御して内側表面全体に微小な気泡を含有するルツボ形状体を成形した。
次いで、ルツボ高さの2分の1の高さ位置より上方に所定の高さ寸法を有する初期メルトライン帯域を残し、それ以外の内側表面を機械研削し、表面の微小な気泡を除去した。
そして、内側表面全体に合成シリカ原料を供給しながらアーク放電により所定厚さの実質的無気泡層を形成し、ルツボ全体の透明層の厚さ寸法が約4mm、不透明層の厚さ寸法が約8mmである24インチ(外径610mm×高さ350mm)のシリカガラスルツボを製造した。そして、その後、フッ酸49%溶液で5分間、シャワーリング洗浄を行い、さらに純水洗浄の後、乾燥処理を行った。
また、ルツボに形成された気泡の密度や径の測定は、CCDカメラとハロゲンランプとを用い、ルツボ内表面からの画像を撮像し、得られた画像を二値化処理することにより行った。測定視野は、500μm2以上(好ましくは1.0mm×1.4mm)で、認識可能な最小気泡径は4.6μm以上とした。また、厚さ方向は、20μmピッチでCCDカメラを移動させることにより、表層から1.0mmの厚さまで測定した。
尚、この測定は、ルツボ周方向に略等間隔で4点(90°間隔)に対して行った。
この実験では、前記製造工程により製造されたルツボを用い、原料ポリシリコンを150gチャージし、8インチウエハ製造用のBドープP型シリコン単結晶インゴットの製造をメルトラインの浸食速度が35μm/hであって、気泡の膨張率が1.5倍である環境下で行い、その際の液面振動の有無、及びDF率の測定を行った。
実験条件及び評価結果を表1に示す。表1に示すように、図1に示した初期メルトライン帯域10における気泡含有層10bの気泡個数密度、気泡平均直径、実質的無気泡層10aの厚さの組み合わせについて複数の条件(条件1〜20)で夫々実験を行い、その結果を検証した。
尚、初期メルトライン帯域の高さ寸法は30mm、気泡含有層10bの厚さを100μm、初期メルトライン帯域より下方の全域において形成される第二の実質的無気泡層の厚さを300μmとした。

Figure 0004798714
表1に示すように、この実験1の結果、気泡含有層の気泡個数密度が75〜130個/mm3、気泡平均直径が40〜80μm、表層の実質的無気泡層の厚さが5〜80μmの条件において、液面振動が発生せず、DF率が100%となった。
以上の実施例の実験結果を鑑みて、本発明のシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボによれば、初期メルトライン帯域における気泡含有層を、含有する気泡の平均直径が40〜80μm、気泡個数密度が75〜130個/mm3に形成し、表層の実質的無気泡層の厚さ寸法を5〜80μmに形成することにより、液面振動を抑制し、高い単結晶化率を実現できることを確認した。
また、上記実験条件において、初期メルトライン帯域10における気泡含有層10bの気泡個数密度80個/mm3、気泡平均直径50μm、実質的無気泡層10aの厚さ10μmとし、初期メルトライン帯域の高さ寸法は5mm、10mm、20mm,30mm、40mmとした場合の液面振動、DF率、メルトバックについて検証した。尚、気泡含有層10bの厚さを100μm、初期メルトライン帯域より下方の全域において形成される第二の実質的無気泡層の厚さを300μmとした。その結果を表2に示す。
Figure 0004798714
本発明は、シリコン単結晶の引上げに用いられるシリカガラスルツボに関し、半導体製造業界等において好適に用いられる。
図1は、本発明に係るシリカガラスルツボの構成を模式的に示す断面図である。 図2は、図1のエリアA1の拡大図である。 図3は、図1のエリアA2の拡大図である。
符号の説明
1 シリカガラスルツボ
2 不透明層
3 透明層
4 上部開口部
5 ストレート部
6 円弧部
7 底部
9 第二の実質的無気泡層
10 初期メルトライン帯域
10a 第一の実質的無気泡層
10b 気泡含有層
M シリコン溶融液
ML メルトライン(シリコン溶融液の液面)

Claims (1)

  1. 外周側に不透明層が形成され、内周側に透明層が形成された層構造を有し、前記内周側にシリコン溶融液を収容し、チョクラルスキー法により単結晶が引上げられるシリカガラスルツボであって、
    10〜30mmの高さ寸法を有する前記透明層の初期メルトライン帯域において、該帯域の内周面側には、5〜80μmの厚さ寸法を有する、気泡個数密度が2個/mm 以下の第一の実質的無気泡層が形成され、第一の実質的無気泡層よりも外側には、100μm以上の厚さ寸法を有する平均直径が40〜80μmの気泡が75〜130個/mmの密度で存在する気泡含有層が形成されており、
    前記初期メルトライン帯域より下方の全域において、この内周面側に、300μm以上の厚さ寸法を有する、気泡個数密度が2個/mm 以下の第二の実質的無気泡層が形成されていることを特徴とするシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボ。
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