JP2004250305A - 湯面振動を抑制した石英ガラスルツボ - Google Patents

湯面振動を抑制した石英ガラスルツボ Download PDF

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Abstract

【課題】溶融シリコンの湯面振動を抑制した石英ガラスルツボの提供
【手段】シリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、該ルツボ内の溶融シリコンの引き上げ開始湯面に対して、上記湯面から湯面下所定深さまでのルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されており、この天然石英ガラス部分より下側のルツボ内層が合成石英ガラスによって形成されていることを特徴とし、好ましくは上記湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の表面積S2が、上記湯面下のルツボ内層全表面積S1に対して、15〜45%の面積比(S2/S1)を有する石英ガラスルツボ。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、ルツボにチャージした溶融シリコンの湯面振動を抑制したルツボに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボは、従来、ルツボの機械的強度を高めるために外側部分に天然石英ガラスを用い、内側部分には不純物の混入を避けるために合成石英ガラスを用いたルツボが知られている(特開平3−40989号)。しかし、従来の上記石英ルツボはシリコン単結晶引き上げ時に溶融シリコンの湯面振動が大きく、単結晶化率を高めるのが難しい。また、ルツボにチャージした溶融シリコンの液面レベルよりやや上側からルツボ底部に至る内壁部分を合成石英によって形成する一方、該合成石英層の上側からルツボ上端部に至る部分を天然石英によって形成したことを特徴とするシリコン単結晶引上げ用石英ルツボが知られている(特許第2973057)。この石英ルツボは高温加熱下の使用環境においてもルツボ上端が内傾せず、またルツボ上部の天然石英によって形成された部分はシリコン融液に接触しないので、シリコン融液に不純物が混入せず、高純度の単結晶シリコンを引き上げることができ、しかもルツボの変形による損失がないので、単結晶シリコンの製造コストを低減できる利点を有している。しかし、この石英ルツボでは溶融シリコンの湯面は合成石英ガラス部分に接触しているので、湯面振動については従来と変わらない。
【0003】
一方、シリコン単結晶の一般的な引き上げ法(CZ法)では、ルツボ高さの40〜90%の高さまでチャージした溶融シリコンの湯面に種結晶を付け、この種結晶を中心にして周囲に結晶化を拡げ(肩作り)た後に、胴体引き上げを行って棒状の単結晶を引き上げ、底部を整えてこの単結晶を取り出す。この引き上げの際に、溶融シリコンの湯面が周期的に振動する現象が見られる。湯面振動が発生すると種結晶を湯面に接合できなかったり、引き上げ中にシリコンが多結晶化するなどの問題を生じる。この原因として、引き上げ温度の上昇や雰囲気圧の低下などによって溶融シリコンと石英ガラスの反応が活発化し、SiOガスが発生することによって振動すると考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
シリコン単結晶の引き上げ工程において、種付けと肩作りの引き上げ開始工程は溶融シリコンの湯面振動の影響を最も受けやすく、胴体引き上げ以降の工程は湯面振動の影響が比較的少ない。従って、引き上げ工程において溶融シリコンの湯面振動を生じないことが求められる。本発明は引き上げ開始湯面付近のルツボ内層を天然石英ガラスによって形成することによって溶融シリコンの湯面振動を効果的に抑制した石英ガラスルツボを提供する。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明によれば以下の構成からなる石英ガラスルツボが提供される。
(1)シリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、該ルツボ内の溶融シリコンの引き上げ開始湯面に対して、上記湯面から湯面下所定深さまでのルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されており、この天然石英ガラス部分より下側のルツボ内層が合成石英ガラスによって形成されていることを特徴とする石英ガラスルツボ。
(2)上記湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の表面積S2が、上記湯面下のルツボ内層全表面積S1に対して、15〜45%の面積比(S2/S1)を有する上記(1)の石英ガラスルツボ。
(3)上記湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分が該湯面下10cm以上20cm以下である上記(1)または(2)の石英ガラスルツボ。
(4)開口端から上記湯面下までのルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されると共に該天然石英ガラス部分より下側のルツボ内層が合成石英ガラスによって形成されており、外層が天然石英ガラスによって形成されている上記(1)、(2)または(3)の石英ガラスルツボ。
(5)上記湯面から湯面下所定深さまでの天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の気泡含有率が0.005〜0.1%であり、この天然石英ガラス部分よりも下側の合成石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の気泡含有率が天然石英ガラス部分と同等か若しくは小さい上記(1)〜(4)の何れかの石英ガラスルツボ。
【0006】
【具体的な説明】
シリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボは、ルツボ内に多結晶シリコンを入れて加熱溶融することによって溶融シリコンを充填した状態にし、これを引き上げに用いる。本発明の石英ガラスルツボは、図1に示すように、ルツボ10に充填した溶融シリコン11の引き上げ開始湯面Lに対し、この湯面Lから所定深さDまでの帯状部分Hに相当する範囲が天然石英ガラス11によって形成されており、該天然石英ガラス部分11より下側の部分Gが合成石英ガラス12によって形成されていることを特徴とする。
【0007】
天然石英ガラスは合成石英ガラスよりも溶融シリコンの湯面振動に対する抑制効果が大きい。従って、溶融シリコンの湯面が接触するルツボ内周面に沿った帯状の部分を天然石英ガラスによって形成することにより、引き上げ開始時の溶融シリコンの湯面振動を効果的に抑制することができる。ただし、ルツボ内層において天然石英ガラス部分が多いと単結晶化率が低下するので、湯面下の天然石英ガラス部分の範囲は上記帯状部分の範囲に制限される。
【0008】
上記ルツボ内層における天然石英ガラス部分と合成石英ガラス部分の割合は、溶融シリコンの引き上げ開始湯面Lから該湯面のやや下側まで延びた天然石英ガラス部分Hの表面積S2が、上記湯面下のルツボ内層全表面積S1に対して、15〜45%、好ましくは20〜30%の面積比(S2/S1)を有するものが良い。上記天然石英ガラス部分Hの面積S2がこれより小さいと、湯面下において相対的に合成石英ガラス部分が多くなるので溶融シリコンの湯面振動を抑制する効果が低下する。一方、上記天然石英ガラス部分Hの面積S2がこれより大きいと単結晶化率が低下するので好ましくない。
【0009】
具体的な態様として、口径22インチ以上および深さ35cm以上(口径Wと深さDの比W/D=1〜2)の一般的な形状の石英ガラスルツボにおいては、溶融シリコンの引き上げ開始湯面Lに対し、この湯面Lから概ね湯面下10cm以上〜20cm以下までの範囲に相当する帯状のルツボ内層部分を天然石英ガラスによって形成すれば良い。
【0010】
図1に示す本発明の石英ガラスルツボの一例は、溶融シリコン14をチャージしたときの引き上げ開始湯面Lに対して、ルツボ10の内層が開口端から上記湯面Lのやや下側までの部分Hが天然石英ガラス11によって形成されているである。該天然石英ガラス部分11より下側の部分Gが合成石英ガラス12によって形成されており、外層が天然石英ガラス13によって形成されている。なお、本発明の石英ガラスルツボは、溶融シリコンの引き上げ開始湯面Lに対して、該湯面付近の帯状部分のルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されていれば良いので、図1に示すように、ルツボ開口端から湯面下に延びる範囲が天然石英ガラスによって形成されている構造に限らず、ルツボ開口端から上記湯面Lまでの範囲が合成石英ガラスによって形成され、湯面Lから所定深さまでの帯状部分Hが天然石英カラスによって形成されている構造でも良い。本発明は何れの構造も含む。
【0011】
上記湯面下部分Hよりも下側の部分は溶融シリコンの液圧によってSiOガスの発生が抑制されるので湯面振動に対する影響は少ない。従って、引き上げ開始時の湯面振動を抑制するには、上記湯面下部分Hを天然石英ガラスによって形成すれば良い。これより下側の部分Gは単結晶化率が低下しないように合成石英ガラスによって形成するのが好ましい。
【0012】
本発明の上記石英ガラスルツボにおいて、ルツボ内層の天然石英ガラス部分および合成石英ガラス部分の層厚は1mm以上が好ましい。1mmまでの層厚部分はルツボに溶融シリコンをチャージしたときに概ね溶損する部分であり、従ってこの溶損される層厚以上であることが求められる。また、ルツボの機械的強度を高めるにはルツボ外層を天然石英ガラスによって形成すると良い。なお、天然石英ガラス部分および合成石英ガラス部分は、例えば、回転モールド法に基づき、所定部分におのおの天然石英粉または合成石英粉を用い、これを加熱溶融することによって形成することができる。
【0013】
なお、シリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボにおいて、溶融シリコンの湯面振動は一般にこの湯面に接触するルツボ内表面の気泡含有率によっても影響を受けることが見い出され、ルツボ内周面の上記湯面に接触する帯状部分の気泡含有率をこれより下側の部分よりもやや高く調整することによって、湯面振動を抑制する試みがなされている。この場合、天然石英ガラスは合成石英ガラスよりも湯面振動の抑制効果が高いので、上記帯状部分を天然石英ガラスによって形成する本発明の石英ガラスルツボは、ルツボ内層の全面を合成石英ガラスによって形成するルツボよりも上記帯状部分の気泡含有率の値を広く設定することができる。具体的には、ルツボ内表面の上記帯状部分を天然石英ガラスによって形成する本発明のルツボでは、この帯状部分およびその下側部分の気泡含有率は概ね0.1%以下、好ましくは0.05%以下であれば良い。より好ましくは、上記帯状部分の気泡含有率が0.005〜0.1%であって、この帯状部分より下側の合成石英ガラスの気泡含有率が上記帯状部分の気泡含有率と同等か小さいものが良い。
【0014】
【発明の実施形態】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。
〔実施例1〕
溶融シリコンの引き上げ開始湯面に対して、この湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分Hの表面積S2が、上記湯面下のルツボ内層全表面積S1に対しておのおの10〜50%の面積比(S2/S1)を有する石英ガラスルツボについて、シリコン単結晶引き上げ試験を行った。この結果を表1に示した。面積比10%のルツボは湯面振動が見られた。面積比20%以上のルツボには湯面振動が見られなかったが、面積比50%のルツボは単結晶化率が大幅に低下した。従って、上記天然石英ガラス部分の面積比は概ね15〜45%程度が適当であり、20〜30%が好ましい。
【0015】
【表1】
Figure 2004250305
【0016】
〔実施例2〕
溶融シリコンの引き上げ開始湯面に対して、この湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の湯面下の長さを表1のように調製した石英ガラスルツボ(口径28インチ)について、シリコン単結晶引き上げ試験を行った。この結果を表2に示した。湯面下の天然石英ガラス部分の長さが5cmのルツボは湯面振動が見られた。この長さが10cm以上のルツボは湯面振動が見られないが、湯面下の天然石英ガラス部分が30cmのルツボは単結晶化率が大幅に低下した。従って、湯面下の天然石英ガラス部分の長さは10cm〜20cmが好ましい。
【0017】
【表2】
Figure 2004250305

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る石英ガラスルツボの模式断面図
【符号の説明】10−石英ガラスルツボ、11−天然石英ガラス、12−合成石英ガラス、13−天然石英ガラス、14−溶融シリコン、L−湯面、H−湯面下の天然石英ガラス部分、G−H部分より下側の合成石英ガラス部分。

Claims (5)

  1. シリコン単結晶の引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、該ルツボ内の溶融シリコンの引き上げ開始湯面に対して、上記湯面から湯面下所定深さまでのルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されており、この天然石英ガラス部分より下側のルツボ内層が合成石英ガラスによって形成されていることを特徴とする石英ガラスルツボ。
  2. 上記湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の表面積S2が、上記湯面下のルツボ内層全表面積S1に対して、15〜45%の面積比(S2/S1)を有する請求項1の石英ガラスルツボ。
  3. 上記湯面下の天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分が該湯面下10cm以上20cm以下である請求項1または2の石英ガラスルツボ。
  4. 開口端から上記湯面下までのルツボ内層が天然石英ガラスによって形成されると共に該天然石英ガラス部分より下側のルツボ内層が合成石英ガラスによって形成されており、外層が天然石英ガラスによって形成されている請求項1、2または3の石英ガラスルツボ。
  5. 上記湯面から湯面下所定深さまでの天然石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の気泡含有率が0.005〜0.1%であり、この天然石英ガラス部分よりも下側の合成石英ガラスによって形成されたルツボ内層部分の気泡含有率が天然石英ガラス部分と同等か若しくは小さい請求項1〜4の何れかの石英ガラスルツボ。
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