JP4796294B2 - 非水電解液二次電池用負極 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の負極に関する。
リチウムの吸蔵放出が可能な活物質の粒子をバインダーで結着させてなる層を、集電体の上に設けたリチウムイオン二次電池用の負極が知られている。例えば、ポリアミド酸を熱処理して縮合させて生成したポリイミドをバインダーとして用い、ケイ素やケイ素合金からなる活物質粒子及び導電性金属粉末を該バインダーによって結着させたリチウムイオン二次電池用の負極が提案されている(特許文献1参照)。集電体としては、活物質粒子と集電体との密着性を向上させるために、その表面粗さが0.2μm以上の粗いものが用いられている。この負極は集電体の表面上に、ケイ素やケイ素合金からなる活物質粒子及び導電性金属粉末を含む層を形成する工程と、該層を集電体の表面上に配置した状態で非酸化性雰囲気下に焼結する工程とによって製造される。
しかし前述の負極においては、負極製造の際の焼結条件が、例えば700℃10時間や400℃10時間という過酷なものなので、焼結に起因して負極が熱的ダメージを受けやすい。特に、薄手の材料である集電体の強度低下が起こりやすい。集電体の強度低下は、負極のサイクル寿命が低下する原因となり、また負極製造時のトラブル発生のもとにもなる。特に活物質として、充放電に起因する体積変化の大きな材料であるシリコン系材料を用いた場合には、当該体積変化に起因して集電体の変形が一層顕著となることから、集電体の強度低下は深刻な問題となる。
特開2002−260637号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る非水電解液二次電池用負極を提供することにある。
本発明は、活物質の粒子及び導電性フィラーが、合成樹脂の熱硬化又は溶融固化によって結着してなる活物質層を有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明によれば、活物質層に含まれる活物質の粒子及び導電性フィラーの結着に、合成樹脂の熱硬化又は溶融固化を利用しているので、当該結着を比較的低温で行うことができる。従って負極の製造中に負極が熱的ダメージを受けにくくなる。その結果、負極のサイクル寿命を向上させることが可能となる。また負極製造時にトラブルが発生しづらくなる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。先ず図1に示す第1の実施形態の負極について説明する。本実施形態の負極10は、電解液と接する表裏一対の面である第1の面1a及び第2の面1bを有している。負極10は、活物質層2を備えている。活物質層2は、該層2の各面にそれぞれ形成された一対の集電層3a,3bによって連続的に被覆されている。各集電層3a,3bは、第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。また図1から明らかなように電極10は、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体(例えば厚さ12〜35μm程度の金属箔やエキスパンドメタル)を有していない。
各集電層3a,3b間に位置する活物質層2は、活物質の粒子2a及び導電性フィラー2を含んでいる。活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bは、合成樹脂4の熱硬化又は溶融固化によって結着している。そして活物質の粒子2a間、導電性フィラー2b間、及び活物質の粒子2aと導電性フィラー2bとの間に、熱硬化又は溶融固化した合成樹脂4が浸透している。
活物質としては、例えばシリコン系材料やスズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料が挙げられる。特にシリコン系材料が好ましい。活物質層2は2つの集電層3a,3bによって被覆されているので、充放電に起因して活物質が微粉化して脱落することが効果的に防止される。また、後述する縦孔が形成されていることによって、活物質の粒子2aは電解液と接することができるので、電極反応が妨げられることはない。
活物質の粒子2aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜2μmであることが好ましい。最大粒径が30μm超であると、粒子の脱落が起こりやすくなり、電極の寿命が短くなる場合がある。粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。該粒子の製造方法に鑑みると、下限値は0.01μm程度である。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質の量は負極全体に対して好ましくは5〜80重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%、一層好ましくは20〜50重量%である。また、活物質層2の重量を基準として、活物質の量は60〜99.4重量%、特に80〜97重量%であることが好ましい。
導電性フィラー2bは、活物質の粒子2a間の電子伝導性を確保するために用いられるものである。このような作用を有するものであれば、導電性フィラー2bの種類に特に制限はない。例えば導電性フィラー2bとして、アセチレンブラックやグラファイトなどの導電性炭素材料が挙げられる。特殊な導電性炭素材料としてカーボンナノチューブを用いることもできる。また金属粉末を用いることもできる。特に、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等のリチウム化合物の形成能の低い金属の粉末を用いることが好ましい。「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
導電性フィラー2bは、その粒径が40μm以下、特に20μm以下であることが、電子伝導性の付与の点から好ましい。導電性フィラー2bの粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。導電性フィラー2bの製造方法に鑑みると、その下限値は0.01μm程度となる。
活物質の粒子2a間の電子伝導性を十分に確保する観点から、活物質層2中に含まれる導電性フィラー2bの量は、活物質層2の重量を基準として0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが好ましい。
活物質層2に含まれる活物質の粒子2aや導電性フィラー2b(以下、これらを総称して粉粒体ともいう)間には合成樹脂4が浸透しており、粉粒体が該合成樹脂4によって結着している。これによって、活物質の粒子2a間の電子伝導性が導電性フィラー2bによって確保された状態で、これら粉粒体が活物質層2に安定して固定化される。また、先に述べた特許文献1に記載の焼結と異なり、粉粒体の結着は、熱的ダメージを与えにくい方法である合成樹脂4の熱硬化又は溶融固化によって行われるので、製造中に負極10が熱的ダメージを受けにくい。更に、合成樹脂4は外力によって変形しやすい柔軟な材料なので、活物質の粒子2aが充放電に起因して体積変化した場合にその体積変化による応力を緩和することができる。先に述べた特許文献1では活物質の粒子が焼結によって結合しているので、活物質層は硬く脆くなりやすく、その結果、活物質の粒子が充放電に起因して体積変化した場合にその体積変化を緩和することが容易でない。
合成樹脂4は、活物質層2の重量に対して0.5〜20重量%、特に2〜10重量%含まれていることが、同層2に含まれている粉粒体を確実に結着させる観点から好ましい。
活物質層2に含まれる粉粒体間は、合成樹脂4で完全に満たされているのではなく、該粉粒体間に空隙が存在していることが好ましい。この空隙の存在によって、充放電に起因する活物質の粒子2aの体積変化が一層緩和される。この観点から、活物質層2における空隙の割合は0.1〜30体積%程度、特に0.5〜5体積%程度であることが好ましい。空隙の割合は、電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。活物質層2は活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bを含む導電性スラリーを塗布し乾燥させることによって形成されることから、活物質層2には自ずと空隙が形成される。従って空隙の割合を前記範囲にするためには、例えば活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bの粒径、導電性スラリーの組成、スラリーの塗布条件を適切に選択すればよい。またスラリーを塗布乾燥して活物質層2を形成した後、適切な条件下でプレス加工して空隙の割合を調整してもよい。
合成樹脂4としては、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。また、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂も使用可能である。熱可塑性樹脂は、スラリー製造時に加熱が必要となるので、熱硬化性樹脂の方が好ましい。しかし、熱硬化性樹脂の靭性を改良するために、熱硬化性樹脂組成物の一部に熱可塑性樹脂を配合することができる。配合可能な熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂の溶解に使用される有機溶剤に可溶なものや、有機溶剤に不溶であっても、微粒子として配合物に分散可能なものが挙げられる。このような熱可塑性樹脂とは別に、分子内に熱硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸を共重合させたアクリロニトリル−ブタジエン樹脂や、グリシジルメタクリレートをモノマー成分として用いたアクリル樹脂は、分子内にそれぞれ含まれているカルボキシル基やエポキシ基が、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と架橋することができる。熱可塑性樹脂の比率はスラリー粘度や乾燥後の物性に応じて決定されるものであり、特に限定されない。
熱硬化性樹脂としては、硬化性の観点や、硬化時にガスや水、ホルムアルデヒドの発生がない観点から、エポキシ樹脂を用いることが好適である。エポキシ樹脂としては、有機溶剤に可溶であればその種類に特に制限はない。エポキシ樹脂の具体例示としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等がある。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、或いは2種類以上を混合して用いてもよい。
前記のエポキシ樹脂は、一般に知られている硬化剤や硬化促進剤と組み合わせて使用される。硬化促進剤は硬化時間を短縮するために有用である。硬化剤や硬化促進剤の種類は、硬化後の樹脂の物性や硬化時間を考慮して決定される。硬化剤や硬化促進剤の使用量は、理論値又は実験値に基づき任意に決定される。硬化剤の例としては、ジシアンジアミド、ポリアミン類、フェノ−ルノボラック樹脂、酸無水物等が挙げられる。硬化促進剤としては、三級アミン化合物、イミダゾ−ル類、トリフェニルフォスフィン類、尿素化合物等がある。硬化剤や硬化促進剤は、エポキシ樹脂と同様に、単独で用いてもよく、或いは2種類以上を混合して用いてもよい。
硬化後の樹脂物性や、製造時の作業性を考慮して、各種の添加剤を使用することも可能である。具体的には、シリコンを高充填することにより硬化物が、硬く脆くなる傾向があるが、これを避けるために、シリコン系、ゴム系のエラストマーを添加剤として用いてもよい。これらのエラストマ−の添加により樹脂の伸び率が向上し、活物質の粒子2aの体積変化を緩和させやすくなる。添加剤としては、シリコン分散時にその沈降を防止するための分散剤や沈降防止剤、表面形状を向上させるための消泡剤も使用できる。これらの樹脂は、エチルメチルケトンやトルエンなどの有機溶剤に溶解させワニスとして使用される。有機溶剤の種類は、溶解性やコストを考慮して選定される。溶剤は、エポキシ樹脂と同様に、単独で用いてもよく、或いは2種類以上を混合して用いてもよい。このワニスにシリコンやカーボンブラック等を分散させることで、スラリー状の液体が得られる。この液体を、活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bと混合して、導電性スラリーが得られる。
活物質層2の厚みは、負極全体に対する活物質の量の割合や活物質の粒径に応じて適宜調節することができ、本実施形態においては特に臨界的なものではない。一般には1〜100μm、特に3〜60μm程度である。
活物質層2を挟持する集電層3a,3bは、本実施形態の負極10における集電機能を担っている。また集電層3a,3bは、活物質層2に含まれる活物質が充放電に起因して体積変化し微粉化して脱落することを防止するためにも用いられている。
各集電層3a,3bは、従来の電極に用いられている集電用の厚膜導電体よりもその厚みが薄いものである。具体的には0.3〜10μm程度、特に0.4〜8μm程度、とりわけ0.5〜5μm程度の薄層であることが好ましい。これによって、必要最小限の厚みで活物質層2をほぼ満遍なく連続的に被覆することができる。その結果、微粉化した活物質の脱落を防止することができる。またこの程度の薄層とすること、及び集電用の厚膜導電体を有していないことで、負極全体に占める活物質の割合が相対的に高くなり、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高めることができる。従来の電極では、電極全体に占める集電用の厚膜導電体の割合が高かったので、エネルギー密度を高めることに限界があった。前記範囲の集電層3a,3bは、後述するように電解めっきによって形成されることが好ましい。なお2つの集電層3a,3bはその厚みが同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
先に述べた通り、2つの集電層3a,3bは第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。本実施形態の負極10が電池に組み込まれた場合、第1の面1a及び第2の面1bは電解液と接する面となる。これとは対照的に、従来の電極における集電用の厚膜導電体は、その両面に活物質層が形成されている場合には電解液と接することはなく、また片面に活物質層が形成されている場合であっても一方の面しか電解液と接しない。つまり本実施形態の負極10には、従来の電極で用いられていた集電用の厚膜導電体が存在せず、電極の最外面に位置する層、即ち集電層3a,3bが、集電機能と、微粉化した活物質の脱落を防止する機能とを兼ねている。
第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含む各集電層3a,3bは何れも集電機能を有しているので、本実施形態の負極10を電池に組み込んだ場合には、何れの集電層3a,3bにも電流取り出し用のリード線を接続することができるという利点がある。
各集電層3a,3bは、非水電解液二次電池の集電体となり得る金属から構成されている。特にリチウムイオン二次電池の集電体となり得る金属から構成されていることが好ましい。そのような金属としては例えば、リチウム化合物の形成能の低い元素が挙げられる。リチウム化合物の形成能の低い元素としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。これらの金属のうち銅若しくはニッケル又はそれらの合金を用いることが特に好適である。特に、ニッケル−タングステン合金を用いると、集電層3a,3bを高強度となすことができるので好ましい。2つの集電層3a,3bは、その構成材料が同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。
図1に示すように、負極10においては、負極10の表面において開孔し且つ各集電層3a,3b及び活物質層2の厚み方向に延びる縦孔5を多数有している。縦孔5は、負極10の厚み方向に貫通している。活物質層2においては、縦孔5の壁面において活物質層2が露出している。縦孔5の役割は大別して次の2つである。
一つは、縦孔5の壁面において露出した活物質層2を通じて電解液を活物質層内に供給する役割である。この場合、縦孔5の壁面において活物質層2が露出しているが、活物質層内の活物質の粒子2a間に合成樹脂4が浸透しているので、該粒子2aの脱落が防止されている。
もう一つは、充放電に起因して活物質層内の活物質の粒子2aが体積変化した場合、その体積変化を緩和する役割である。体積変化の緩和は、主として負極10の平面方向に生ずる。即ち、充電によって体積が増加した活物質の粒子2aの体積の増加分が、空間となっている縦孔5に吸収される。その結果、負極10の著しい変形が効果的に防止される。
活物質層内に電解液を十分に供給する観点及び活物質の粒子2aの体積変化を効果的に緩和する観点から、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔率、即ち縦孔5の面積の総和を、負極10の表面の見掛けの面積で除して100を乗じた値は2〜30%、特に4〜15%であることが好ましい。同様の理由により、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔径は15〜500μm、特に30〜100μmであることが好ましい。また、負極10の表面における任意の部分に着目したとき、1cm×1cmの正方形の観察視野内に平均して1000〜40000個、特に5000〜20000個の縦孔5が開孔していることが好ましい。
本実施形態の負極10においては、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している。しかし、活物質層内に電解液を十分に供給し、また活物質の粒子2aの体積変化を緩和するという縦孔5の役割に鑑みると、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している必要はなく、負極10の少なくとも一方の表面において開孔し且つ活物質層2の厚み方向に延びていればよい。尤も、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している方が、活物質の粒子2aの体積変化の緩和には効果が高い。
図1に示すように負極10においては、各集電層3a,3bは、それらの表面である第1の面1a及び第2の面1bにおいて開孔し且つ活物質層2と通ずる多数の微細空隙6(微細空隙6は、活物質層2に形成された空隙とは異なるものであることに留意すべきである)を有していることが好ましい。微細空隙6は各集電層3a,3bの厚さ方向へ延びるように該集電層3a,3b中に存在している。微細空隙6は電解液の流通が可能なものである。微細空隙6は、先に説明した縦孔5よりも微細な構造を有するものである。微細空隙6の役割は、活物質層内に電解液を十分に供給するという縦孔5の役割を補助するものである。従って、本発明において微細空隙6は必須の構造ではない。また、微細空隙6は、各集電層3a,3bの双方に形成されていることを要せず、一方にのみ形成されていてもよい。
微細空隙6は、集電層3a,3bを断面観察した場合にその幅が約0.1μmから約10μm程度の微細なものである。微細であるものの、微細空隙6は電解液の浸透が可能な程度の幅を有している。尤も非水電解液は水系の電解液に比べて表面張力が小さいことから、微細空隙6の幅が小さくても十分に浸透が可能である。微細空隙6は、好ましくは集電層3a,3bを電解めっきで形成する際に同時に形成される。
第1の面1a及び第2の面1bを電子顕微鏡観察により平面視したとき、少なくとも一方の面における微細空隙6の平均開孔面積は、0.1〜50μm2であり、好ましくは0.1〜20μm2、更に好ましくは0.5〜10μm2程度である。この範囲の開孔面積とすることで、電解液の十分な浸透を確保しつつ、活物質の脱落を効果的に防止することができる。また充放電の初期段階から充放電容量を高めることができる。
第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、観察視野の面積に対する微細空隙6の開孔面積の総和の割合(この割合を開孔率という)は、好ましくは0.1〜20%であり、更に好ましくは0.5〜10%である。この理由は微細空隙6の開孔面積を前記の範囲内とすることと同様の理由である。更に同様の理由により、第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、どのような観察視野をとっても、1cm×1cmの正方形の視野範囲内に1個〜2万個、特に10個〜1千個、とりわけ30個〜500個の微細空隙6が存在していることが好ましい(この値を分布率という)。
次に本実施形態の負極10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。先ず図2(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。キャリア箔11は、負極10を製造するための支持体として用いられるものである。また製造された負極10をその使用の前まで、或いは電池組立加工の最中に支持しておき、負極10の取り扱い性を向上させるために用いられるものである。これらの観点から、キャリア箔11は、負極10の製造工程において及び製造後の搬送工程や電池組立工程等においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔11は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。先に述べた通り、キャリア箔11の重要な役割は負極10を製造するための支持体である。従って集電層3bの強度が十分である場合は必ずしもキャリア箔を用いて負極10を製造することを要しない。
キャリア箔11としては導電性を有するものを用いることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔11は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔11を用いることで、負極10の製造後にキャリア箔11を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。金属製のキャリア箔11を用いる場合、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、Al及びTiのうちの少なくとも1種類の金属を含んでキャリア箔11が構成されていることが好ましい。
キャリア箔11としては、例えば圧延箔や電解箔などの各種方法によって製造された箔を特に制限なく用いることができる。キャリア箔11上に形成される集電層3b中の微細空隙の孔径や存在密度をコントロールする観点から、キャリア箔11の表面は、或る程度凹凸形状になっていることが好ましい。圧延箔は、その製造方法に起因して各面が平滑になっている。これに対して電解箔は一面が粗面であり、他面が平滑面になっている。粗面は、電解箔を製造する際の析出面である。そこで、電解箔からなるキャリア箔11における粗面上に集電層3bを形成すれば、別途キャリア箔に粗化処理をする手間が省けるので簡便である。粗面を用いる利点については後述する。かかる粗面上に集電層3bを形成する場合、その表面粗さRa(JIS B 0601)は0.05〜5μm、特に0.2〜0.8μmであることが、所望の径及び存在密度を有する微細空隙を容易に形成し得る点から好ましい。
次にキャリア箔11の一面に剥離剤を施して剥離処理を行う。剥離剤はキャリア箔11における粗面に施すことが好ましい。剥離剤は、後述する剥離工程において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために用いられる。剥離剤としては有機化合物を用いることが好ましく、特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)及び2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。これらの有機化合物はアルコール、水、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などに溶解して用いられる。例えばCBTAを用いた場合、その濃度は2〜5g/1とするのが好ましい。剥離性は、剥離剤の濃度や塗布量によって制御できる。一方、有機化合物による剥離層に代えて、クロム、鉛、クロメート処理などによる無機系剥離層を形成させることも有効である。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程(図2(i))において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても集電層3bに微細空隙を形成することができる。
次に図2(b)に示すように、剥離剤(図示せず)を施した上に、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。塗工液はキャリア箔11の粗面に塗工されるので、該粗面における凹部に溜まりやすくなる。この状態で溶媒が揮発すると、塗膜12の厚みは不均一になる。つまり粗面の凹部に対応する塗膜の厚みは大きく、凸部に対応する塗膜の厚みは小さくなる。本製造方法においては、塗膜12の厚みの不均一性を利用して、集電層3bに多数の微細空隙を形成する。
導電性ポリマーとしては、その種類に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。特に、リチウムイオン伝導性ポリマーを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーはフッ素含有の導電性ポリマーであることが好ましい。フッ素含有ポリマーは、熱的及び化学的安定性が高く、機械的強度に優れているからである。これらのことを考慮すると、リチウムイオン伝導性を有するフッ素含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。
導電性ポリマーを含む塗工液は、導電性ポリマーが揮発性の有機溶媒に溶解してなるものである。有機溶媒としては、導電性ポリマーとして例えばポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
本製造方法において、キャリア箔11上に多数の微細空隙を有する集電層3bが形成されるメカニズムは次のように考えられる。塗膜12が形成されたキャリア箔11は電解めっき処理に付されて、図2(c)に示すように塗膜12上に集電層3bが形成される。この状態を図2(c)の要部拡大図である図3に示す。塗膜12を構成する導電性ポリマーは、金属ほどではないが電子伝導性を有する。従って塗膜12はその厚みに応じて電子伝導性が異なる。その結果、導電性ポリマーを含む塗膜12の上に電解めっきによって金属を析出させると、電子伝導性に応じて電析速度に差が生じ、その電析速度の差によって集電層3bに微細空隙6が形成される。つまり、電析速度の小さい部分、換言すれば塗膜12の厚い部分が微細空隙6になりやすい。なお、先に述べた通り、集電層に微細空隙を形成することは、本発明において必須ではないので、集電層に微細空隙を形成しない場合には、導電性ポリマーを含む塗工液の塗工工程は不要である。
キャリア箔11の粗面の表面粗さRaによって微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできることは先に述べた通りであるが、これに加えて塗工液に含まれる導電性ポリマーの濃度によっても微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできる。例えば導電性ポリマーの濃度が薄い場合には孔径は小さくなる傾向にあり、存在密度も小さくなる傾向にある。逆に、導電性ポリマーの濃度が濃い場合には孔径は大きくなる傾向にある。この観点から、塗工液における導電性ポリマーの濃度は0.05〜5重量%、特に1〜3重量%であることが好ましい。
集電層3bを形成するためのめっき浴やめっき条件は、集電層3bの構成材料に応じて適切に選択される。集電層3bを例えば銅から構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有する硫酸銅浴やピロリン酸銅浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜50A/dm2程度であることが好ましい。
・CuSO4・5H2O 150〜350g/l
・H2SO4 50〜250g/l
尚、有機剤により構成される剥離剤層や導電性ポリマー層は塗工の他、浸漬によっても形成させることが可能である。
次に図2(d)に示すように集電層3b上に、活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bを含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。スラリーは、活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bの他に、希釈溶媒などを含んでいる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子の量は14〜40重量%程度とすることが好ましい。導電性炭素材料の粒子の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。希釈溶媒の量は60〜85重量%程度とすることが好ましい。
スラリーの塗膜を乾燥させて活物質層2を形成する。形成された活物質層2は、粒子間に多数の微小空間を有する。次に図2(e)に示すように、キャリア箔11とは別のキャリア箔11’に支持された合成樹脂4付き金属箔3aを、活物質層2の上に貼り合わせる。この場合、合成樹脂4付き金属箔3aにおける合成樹脂4の面が活物質層2に対向するように貼り合わせる。金属箔3aには微細空隙が形成されていてもよく、或いは形成されていなくてもよい。金属箔3aに微細空隙を形成する場合には、先に述べた集電層3bに微細空隙を形成する方法と同様の方法を用いることができる。なお、合成樹脂4付き金属箔3aの製造方法は当該技術分野において良く知られており、例えば本出願人の先の出願に係る特開2002−359444号公報に記載されている。
次に、図2(f)に示すように、キャリア箔11’に支持された樹脂9付き金属箔3aを、活物質層2の上に貼り合わせた後、加圧下で加熱する。これによって、活物質層2中の粒子間に形成された前記微小空間内に合成樹脂4が浸透する。加圧及び加熱の条件は、用いる合成樹脂4の種類にもよるが、一般に加圧の条件は、1×104〜20×105Pa、特に1×105〜10×105Paであることが好ましい。加熱の条件は50〜200℃、特に100〜180℃であることが好ましい。
活物質層2内に合成樹脂4が十分に浸透したら、加圧及び加熱を終了させ冷却する。その結果、合成樹脂4が固化(熱可塑性樹脂の場合)するか、又は熱硬化(熱硬化性樹脂の場合)が完了する。これによって活物質層2内に含まれている活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bが結着する。また、活物質層2と金属箔3aとが密着結合する。金属箔3aは、得られる負極10における一対の集電層のうちの一方を構成する(従って以下の説明では、金属箔3aを集電層3aと言い換える)。
次に、図2(g)に示すように、一方のキャリア箔11’を剥離し、集電層3aを露出させる。この状態下に、図2(h)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3a,3b及び活物質層2を貫通する縦孔5を形成する。縦孔5の形成方法に特に制限はない。例えばレーザー加工によって縦孔5を形成することができる。或いは針やポンチによって機械的に穿孔を行うこともできる。縦孔5は、実質的に等間隔に存在するように形成されることが好ましい。そうすることによって、電極全体が均一に反応を起こすことが可能となるからである。
最後に、図2(i)に示すようにキャリア箔11を集電層3bから剥離分離する。これによって負極10が得られる。なお、図2(i)においては導電性ポリマーの塗膜12が集電層3b側に残るように描かれているが、該塗膜12はその厚さや導電性ポリマーの種類によってキャリア箔11側に残る場合もあれば、集電層3b側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。なお、先に述べた通り、負極10をその使用の前まではキャリア箔11から剥離せず、キャリア箔11に支持させておいてもよい。
このようにして得られた本実施形態の負極は、公知の正極、セパレータ、非水系電解液と共に用いられて非水電解液二次電池となされる。正極は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、さらに裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の従来公知の正極活物質が用いられる。セパレーターとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン又はポリプロピレン多孔質フイルム等が好ましく用いられる。非水電解液は、リチウム二次電池の場合、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、例えば、LiC1O4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiC1、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC49SO3等が例示される。
次に、本発明の負極の第2の実施形態を、図4を参照しながら説明する。第2の実施形態に関し特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4において、図1〜図3と同じ部材に同じ符号を付してある。
本実施形態の負極10は、その基本構成部材として、二つの負極前駆体20及び金属リチウム層7を有している。金属リチウム層7は、負極前駆体20の間に挟持されている。
負極前駆体20は、集電層3と、該集電層3の一面に配された活物質層2とを備えている。図4に示すように、金属リチウム層7は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。
二つの活物質層2間に介在配置された金属リチウム層7は、非水電解液の存在下に、活物質(負極活物質)との間に局部電池を構成する。これによって金属リチウムが、金属リチウム層7の近傍に位置する活物質と化学的に反応してリチウム化物を形成する。或いはリチウムの濃度勾配に起因してリチウムが活物質と反応してリチウム化物を形成する。このように、金属リチウム層7はリチウムの供給源として作用する。その結果、充放電サイクル或いは長期保存時における電解液との反応などによってリチウムが消費されても、リチウム化物からリチウムが供給されるので、リチウム枯渇の問題が解消される。それによって負極10の長寿命化が図られる。金属リチウム層7は、負極10の表面に露出しておらず、負極10の内部に位置しており、またリチウムは活物質中と反応してリチウム化物を形成するので、内部短絡や発火の原因となるリチウムのデンドライトが生成するおそれも少ない。リチウムが反応した後の金属リチウム層7にはリチウムと活物質とが反応して体積膨張したリチウム化合物が存在する。
特筆すべきは、負極10を電池に組み込んで充電を行わずとも、金属リチウムと活物質との反応が起こることである。この現象は本発明者らが初めて見いだしたものである。電池の組み込み前に金属リチウムと活物質との反応が起こることで、活物質は、電池の組み込み前に既に体積が増加した状態になっている。従って、その後に負極10を電池に組み込み充放電を行っても、充放電に起因する負極10の膨張率は極めて小さい。その結果、本実施形態の負極10は、充放電による活物質の体積変化に起因する変形が極めて起こりづらいという非常に有利な効果を奏する。
金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して0.1〜70%、特に5〜30%であることが、容量回復特性が良好になることから好ましい。
次に図4に示す負極10の好ましい製造方法を、図5を参照しながら説明する。なお本製造方法に関し特に説明しない点については、図2及び図3に示す製造方法に関する説明が適宜適用される。先ず、負極前駆体20を製造する。負極前駆体20の製造には、図5(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。次に、必要に応じ、キャリア箔11の一面上に、剥離剤を施して剥離処理を行う。その上に、図5(b)に示すように、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。次に図5(c)に示すように、塗膜12を施した上に、集電層3の構成材料を電解めっきによって電析させて集電層3を形成する。集電層3上には、図5(d)に示すように、活物質の粒子、導電性フィラー及び合成樹脂を含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。
このようにしてキャリア箔11上に集電層3と活物質層2とをこの順で備えた負極前駆体20を形成する。これを一対用い、図5(e)に示すように、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向するように、金属リチウム箔30を両負極前駆体20間に挟み込む。それによって金属リチウム箔30と両負極前駆体20とを貼り合わせにより一体化させる。この状態下に加圧及び加熱を施して、活物質層2に含まれる合成樹脂を、同層2に含まれる活物質の粒子及び導電性フィラー間に浸透させる。合成樹脂が十分に浸透したら、加圧及び加熱を終了させ冷却する。その結果、合成樹脂が固化(熱可塑性樹脂の場合)するか、又は熱硬化(熱硬化性樹脂の場合)が完了する。これによって活物質層2内に含まれている活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bが結着する。また、活物質層2と金属リチウム箔30とが密着結合する。
次に、図5(f)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図5(g)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2及び金属リチウム箔30を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図5(h)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
次に、本発明の負極の第3及び第4の実施形態について図6〜図8を参照しながら説明する。第3及び第4の実施形態に関し特に説明しない点については、第1及び第2の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図6〜図8において、図1〜図5と同じ部材に同じ符号を付してある。
図6に示す第3の実施形態の負極10においては、一対の集電層3a,3b間に、一層の活物質層2及び一層の金属リチウム層7が介在配置されている。そして、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。活物質層2とそれに隣接する集電層3aは、第2の実施形態の負極における負極前駆体20に相当するものである。活物質層2に隣接する集電層3aには必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。一方、金属リチウム層7に隣接する集電層3bには微細空隙が形成されていない。
図7に示す第4の実施形態の負極10は、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を一対備えている。また各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8も備えている。各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。集電層3には必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。更に、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。
図7に示す実施形態の負極10は、図6に示す実施形態の負極に比較して、導電性箔8を備えている分だけ強度が高いものである。このことは、ジェリー・ロール・タイプの電池を作製する場合に有利である。この観点から、導電性箔8はその厚さが好ましくは5〜15μmである。導電性箔8は一般に金属箔から構成される。導電性箔8を構成する材料としては、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が挙げられる。そのような材料としては、集電層3や、浸透めっきに用いられる金属材料4として先に説明した材料と同様のものを用いることができる。また、強度を高める観点から、ステンレス箔や高強度圧延合金箔を用いることも有効である。
図7に示す実施形態の負極10の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、図8(a)に示すように、導電性箔8を用意し、その各面に金属リチウム層7を形成する。金属リチウム層7は公知の薄膜形成手段、例えば真空蒸着法等によって形成することができる。これとは別に、図2に示す第1の実施形態の負極の製造方法に従い、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を予め製造しておき、図8(b)に示すように、金属リチウム層7が形成された導電性箔8を、一対の負極前駆体20によって挟み込む。負極前駆体20はキャリア箔11によって支持されている。挟み込みに際しては、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し、集電層3が外方を向くようにする。次いで加圧及び加熱を施して、活物質層2に含まれる合成樹脂4を、同層2に含まれる活物質の粒子及び導電性フィラー間に浸透させる。合成樹脂4が十分に浸透したら、加圧及び加熱を終了させ冷却する。その結果、合成樹脂4が固化(熱可塑性樹脂の場合)するか、又は熱硬化(熱硬化性樹脂の場合)が完了する。これによって活物質層2内に含まれている活物質の粒子2a及び導電性フィラー2bが結着する。また、活物質層2と金属リチウム層7とが密着結合する。
次に図8(c)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図8(d)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2、両金属リチウム層7,7及び導電性箔8を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図8(e)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず種々の変更が可能である。例えば、図1に示す第1の実施形態や、図6に示す第3の実施形態においては、一方の集電層3bに代えて、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体(例えば厚さ12〜35μm程度の金属箔やエキスパンドメタル)を用いてもよい。この場合には、負極の製造中に、集電体が熱的ダメージを受けにくいので、集電体の強度低下が起こりにくい。また、負極製造中にトラブルが発生しづらくなる。
また、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体の各面に、負極前駆体20を重ね合わせ、これらを厚さ方向に貫通する縦孔を形成して負極を構成してもよい。
また前記の各実施形態においては集電層3(3a,3b)は単層構造であったが、これに代えて、材料の異なる2種以上の層からなる多層構造にしても良い。例えば集電層3(3a,3b)をニッケルからなる内層と銅からなる外層の2層構造とすることで、活物質の体積変化に起因する負極の著しい変形を一層効果的に防止することができる。
本発明の負極の第1の実施形態の断面構造を示す模式図である。 図1に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。 集電層及び微細空隙が形成される状態を示す模式図である。 本発明の負極の第2の実施形態の断面構造を示す模式図である。 図4に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の負極の第3の実施形態の断面構造を示す模式図である。 本発明の負極の第4の実施形態の断面構造を示す模式図である。 図7に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
符号の説明
1a,1b 表面
2 活物質層
2a 活物質の粒子
2b 導電性フィラー
3,3a,3b 集電層
4 合成樹脂
5 縦孔
6 微細空隙
7 金属リチウム層
8 導電性箔
10 負極
11 キャリア箔
12 導電性ポリマーを含む塗工液の塗膜
20 負極前駆体
30 金属リチウム箔

Claims (11)

  1. 活物質の粒子及び導電性フィラーが、合成樹脂の熱硬化又は溶融固化によって結着してなる活物質層と、電解液と接する集電層とを有し、
    前記集電層には、その表面において開孔し且つ前記活物質層と通ずる多数の微細空隙が、該集電層の厚み方向に延びるように形成されており、
    前記活物質層においては、前記活物質の粒子間に空隙が存在しており、
    前記合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との配合物であり、
    前記熱可塑性樹脂として、
    (1)前記熱硬化性樹脂の溶解に使用される有機溶剤に可溶なもの、
    (2)前記有機溶剤に不溶であるが、微粒子として前記配合物に分散可能なもの、又は
    (3)分子内に前記熱硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有するもの、
    を用いることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
  2. 前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる多数の縦孔が該活物質層に形成されている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
  3. 前記負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔率が2〜30%である請求項2記載の非水電解液二次電池用負極。
  4. 前記負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が15〜500μmである請求項2又は3記載の非水電解液二次電池用負極。
  5. 前記集電層よりも内側に前記活物質層が配されており、
    前記縦孔が、前記集電層の表面において開孔し且つ該集電層を貫通して該活物質層の厚み方向に延びている請求項2ないし4の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
  6. 一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層とを備えており、
    前記縦孔が少なくとも一方の該集電層の表面において開孔し且つ該集電層を貫通して該活物質層の厚み方向に延びている請求項5記載の非水電解液二次電池用負極。
  7. 一対の前記集電層間に介在配置された金属リチウム層を更に有しており、前記縦孔が、該金属リチウム層に設けられている請求項記載の非水電解液二次電池用負極。
  8. 一対の前記集電層間に介在配置された一対の前記活物質層を備え、該活物質層間に前記金属リチウム層が介在配置されている請求項記載の非水電解液二次電池用負極。
  9. 一対の前記活物質層に介在配置された一対の前記金属リチウム層を備え、該金属リチウム層間に導電性箔が介在配置されている請求項記載の非水電解液二次電池用負極。
  10. 前記縦孔が負極の厚み方向に貫通している請求項2ないしの何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
  11. 活物質の粒子及び導電性フィラーが合成樹脂の熱硬化又は溶融固化によって結着してなる活物質層と、電解液と接する一対の集電層と、金属リチウム層とを備え、
    前記集電層には、その表面において開孔し且つ前記活物質層と通ずる多数の微細空隙が、該集電層の厚み方向に延びるように形成されており、
    前記活物質層においては、前記活物質の粒子間に空隙が存在しており、
    一対の前記集電層間に前記活物質層及び前記金属リチウム層が介在配置されていることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
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