JP4794467B2 - 光記録媒体 - Google Patents

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本発明は光記録媒体に関し、より詳しくは、耐候性、耐光性に優れ、高速記録で良好な記録再生特性が得られ、長期保存に耐えうる光記録媒体に関する。
近年、書き換え型のDVD、追記型のDVD等の各種光記録媒体は、大容量の情報を記憶し、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータ等の情報処理装置における外部記憶装置として広く認知されている。例えば、有機色素を含有する記録層を有する代表的な追記型のDVD等は、透明ディスク基板上に有機色素記録層と反射層とをこの順に有し、これらの記録層や反射層を覆う保護層を有する積層構造であり、透明ディスク基板(樹脂基板)を通してレーザー光にて記録・再生が行われる。有機色素を含有する記録層を有するこれらの光記録媒体においては、有機色素層と反射層との界面における水分の影響でエラーが増加することが知られている(特許文献1参照)。
かかるエラーの増加を防ぐために、有機色素の記録層の上に、金または金合金の第一反射層と、その上に、銀合金または銅合金を第二の反射層として積層した光記録媒体(特許文献1)や、有機染料の記録層上に、Pd,Ni,Sn,Au,In,Te,Si,Geあるいはこれらの合金から成る薄い金属中間層を設け、その上に銀あるいは銀合金の反射層を有する光記録媒体(特許文献2)等が報告されている。
ところで、光記録装置は、各種光記録媒体に予め最適化した記録条件を保持しており、これを用いて記録することにより良好な記録が行われる。用いる記録媒体の反射層の種類(反射層の材質や厚みなど)により、反射率や熱伝導度が異なるため、反射層が異なるディスクでは記録条件が異なることとなる。
現在、主流として使われている追記型のDVD、CD−Rディスクでは、ほとんどのディスクで反射層として銀または銀を主成分とする合金が使われている。そのため、通常、光記録装置が予め保持している記録条件は、銀反射層に最適化されたものとなっている。従って、特許文献1や特許文献2に記載された光記録媒体等では、予め光記録装置が保持する銀反射層を用いた光記録媒体に最適化した記録条件では良好な記録特性が得られない虞があった。また、これらの反射層の構成では、銀反射層に比べ反射率が低く、十分な記録特性が得られなかったり、記録材料の選択の幅が狭められる虞があった。さらに、特に高速記録時には、熱干渉を低減し記録特性のマージンを広げる必要があるが、このためには、色素記録膜の膜厚を薄くする必要があり、これにより反射率が低下するため、記録特性を維持することが難しい虞があった。
一方、有機色素からなる光吸収層の上に、純金属からなる高反射率の第1の反射層と、これよりも熱伝導性の低い第2の反射層とを積層することで、高速記録時のパワーマージンと反射率を両立することが知られている(特許文献3)。これは、第1の反射層によって反射率を実用レベルとし、第2の反射層の低熱伝導材料で全体の熱伝導度を下げるというものである。しかし、この場合、第2の反射層の熱伝導度の効果を大きくするために第1の反射層の膜厚を50nm以下と薄くしているため、反射率がある程度低下するのは避けられないという問題点が存在する。また、既に銀反射層の光ディスクに最適化された光記録装置が普及している現在、この構成の光記録媒体では記録特性が異なるため、光記録装置に予め保持された記録条件では良好な特性が得られない虞があった。
また、金またはその合金の単層からなる反射層を用いた光記録媒体も提案されている。金反射層は、その化学的安定性から極めて良好な反射層として知られているが、金反射層を用いた光記録媒体は、上記の通り、既に普及している光記録装置では良好な記録特性が得られない虞があった。さらに、金は有機色素記録層との親和性が低いため、反射層と記録層との界面での剥離によるエラー発生の生じる虞があった。
特開2001−184716公報 特開平11−232695号公報 特開2001−035014公報
有機色素を含有する記録層においては、通常、集光された記録用レーザー光を吸収した色素が分解し光学定数が変化したり、その部分の膜厚が減少すると共に圧力が高まり、高温に曝された記録層周辺が変化するなどして記録部が形成される。かかる記録の際には、相変化媒体の記録層とは異なり、有機色素の熱伝導度が非常に小さいことに起因して、熱拡散が起こりにくい。そのため、樹脂基板の記録層に近い部分や記録層、反射層には大きな熱的ストレス、それに続き起こる物理的ストレスが発生する。これらのストレスは低速記録においてよりも高速記録において大きくなると考えられる。
何故ならば、高速記録の場合、記録パルスを短小化するため、低速記録の場合より高パワーの記録用レーザー光を用いて色素を分解する必要がある。実際に、追記型のDVDの1倍速の記録で一般的に使用されている記録レーザー光のパワーは、およそ6mW〜8mWであるのに対し、追記型のDVDの8倍速(記録線速度28m/s)では、13mW〜18mWである。瞬間的には、記録層や反射層が低速記録の場合より高温に曝されるため、低速記録よりも高速記録において、局所的な熱的、物理的なストレスが大きくなるのである。そして、同様な理由により、記録用のレーザー光波長が短くなるほど、言い換えれば、最短マーク長が0.4μm以下と短くなるほど大きくなると考えられる。
かかるストレスは、耐候性試験による劣化の原因になると考えられる。
即ち、かかるストレスの発生は、例えば、高温高湿度の保持する耐候性試験において、以下の問題をより大きくし、ディスクの劣化をさらに進行させてしまうのである。
即ち、本発明者らの検討によれば、高速記録の場合には、上記ストレスが生じた部位の周辺では、前述のように、低速の場合よりもいっそう、色素が基板あるいは反射層との界面で剥離しやすくなっていると考えられる。それは、そもそも、有機物から成る記録層と、金属から成る反射層とも密着性がよくない上に、記録層と反射層に大きな上記ストレスがかかるからである。そして、特に記録により色素が最も分解した部分は、基板や反射層が、例えば陥没やバンプのような何らかの形状変化、あるいは、形状変化の履歴を生じている場合がある。
その形状変化などの“変化の履歴部位”は、より高温に曝される高速記録において、その周辺の未記録部分とは異なる形状や履歴を有する故に、基板から浸透した水分が、かかる記録部分の記録層やその記録部分を覆う反射層を押し上げて欠陥となったり、温度湿度変化によるディスクの応力変化、反りの変化に追従できず、剥離し、その部分の反射層が小さな欠陥や、それらの欠陥が腐食されたりすることによる巨大欠陥(burst defect)等となる場合がある。
上記は追記型のDVDを例としたが、このような課題は、DVDのみならずCD−Rにおいても同様であった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高速記録用途において良好な記録再生特性が得られる、高い保存安定性を示す光記録媒体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、光記録媒体を構成する反射層を複数の層とし、該複数の層の熱伝導度および厚みを特定の関係とすることにより、上記課題が効果的に解決されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明においては、少なくとも樹脂基板、有機色素を含む記録層、及び反射層を有する光記録媒体であって、前記反射層が、前記記録層に近い側から第一反射層と第二反射層とをこの順で有し、前記第二反射層の熱伝導度が前記第一反射層の熱伝導度よりも低く、かつ、前記第一反射層の膜厚が前記第二反射層の膜厚よりも厚く、前記第二反射層が、Auを主成分とすることを特徴とする光記録媒体を提供する。
本発明によれば、特定の熱伝導度の関係を有する反射層を積層することにより、後述のように、高速記録部分の記録層及び反射層が受けるストレスを緩和することが可能となる。さらに、第一反射層の膜厚を、第二反射層の膜厚よりも厚くすることにより、記録光の減衰を抑制し、記録感度を低下させることなく、良好な記録特性を得ることが可能となる。即ち、高反射率を有する良好な光記録媒体が得られるのである。
また、上記発明においては、上記第二反射層の熱伝導度が、上記第一反射層の熱伝導度より60W/m・K以上低いことが好ましい。
また、上記第一反射層が、銀または銅を主成分とすることが好ましい。
また、上記第一反射層の主成分とする元素と前記第二反射層の主成分とする元素が異なることが好ましい。
また、上記発明においては、上記第一反射層を、銀を主成分とすることが、本発明のより顕著な効果を得られやすいという理由から、好ましい。即ち、第一反射層を、銀を主成分とする場合に本発明を適用すれば、低コストの銀あるいは銀合金を使用した上で、高密度あるいは高速記録部分の耐候性(高温高湿度の耐久性試験での劣化が小さい)を確保でき、さらに、銀に起因する光触媒反応による接着層の劣化、ひいては、劣化した接着剤による反射層の腐食という問題を改善することが可能となるからである。
上記発明においては、上記第一反射層の膜厚が50nm〜200nmの範囲内であり、上記第二反射層の膜厚が0.5nm〜60nmの範囲内であることが好ましい。この範囲にすることにより、充分な反射率と放熱効果が確保でき、記録再生光のストレスを緩和することが可能となるからである。
上記発明においては、上記記録層が、最短マーク長0.4μm以下の記録マークを有することが好ましい。何故ならば、本発明の効果は、かかる高密度の記録、即ち、従来よりも高い記録パワーの光が照射されて、従来よりも高温に記録部がさらされる光記録媒体において、より顕著となるからである。
上記発明においては、光記録媒体が、記録線速度28m/s以上で記録可能であることが好ましい。何故ならば、本発明の効果は、高速記録を行う有機色素の光記録媒体において顕著であるからである。その理由は上記最短マーク長0.4μm以下の記録マークを有する光記録媒体についてのものと同様である。
かくして本発明によれば、高密度、高速記録用途において良好な保存安定性を有する、高品質のアーカイバル用途の追記型光記録媒体が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本発明の光記録媒体としては、一度の記録のみ可能な追記型媒体(CD−RやDVD−RなどのWrite Once媒体)や、記録消去を繰り返し行なえる書き換え型媒体(CD−RWやDVD−RWなどのReWritable媒体)が好適であるが、再生専用媒体(CD−ROMやDVD−ROMなどのROM媒体)を排除するものではない。特に本発明は追記型媒体に適用した場合に、良好な保存安定性を発現することが出来るため好ましい。
また、本発明の光記録媒体としては、基板、記録層、反射層の順に積層され、基板側からレーザー光を入射する、いわゆる基板面入射型の光記録媒体のみならず、基板、反射層、記録層の順に積層され、基板とは反対側からレーザー光を入射する、いわゆる膜面入射型の光記録媒体にも適用することができる。
さらに、本発明の光記録媒体としては、記録層を1層のみ有する光記録媒体にのみならず、記録層を2層以上有する光記録媒体に適用することもできる。
本発明の光記録媒体は、少なくとも樹脂基板、有機色素を含む記録層、及び反射層を有する光記録媒体であって、上記反射層が、上記記録層に近い側から第一反射層と第二反射層とをこの順で有し、上記第二反射層の熱伝導度が上記第一反射層の熱伝導度よりも低く、かつ、上記第一反射層の膜厚が上記第二反射層の膜厚よりも厚いことを特徴とするものである。
本発明では、反射層が、記録層に近い側から第一反射層と第二反射層とをこの順で有し、第二反射層の熱伝導度が第一反射層の熱伝導度よりも低いことを特徴の一つとする。このように、特定の熱伝導度の関係を有する反射層を積層することにより、後述のように、高速記録部分の記録層及び反射層が受けるストレスを緩和することが可能となる。
更に、本発明では、第一反射層の膜厚を、第二反射層の膜厚より厚くすることをもう一つの特徴とする。このように、特定の2層の反射層とその膜厚の関係とを組み合わせることにより、記録光の減衰を抑制し、記録感度を低下させることなく、良好な記録特性を得ることが可能となる。また、反射層の膜応力を適切な範囲とすることが可能となるため、ディスクの反りを適切な範囲とすることが可能となる。さらに、後述のように、貼り合わせ基板(以下、ダミー基板ともいう。)側から可視光が長時間照射される場合においても、接着層の劣化や黄変を抑制することが可能となる。
次に、本発明の光記録媒体について、図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明の光記録媒体の構成を模式的に示す断面図であり、基板面入射型で記録層を1層有する追記型DVDディスクの構成である。図1(a)に示すように、光記録媒体100は、溝及びランド又はプリピットが形成されたディスク状の光透過性の樹脂基板101と、この樹脂基板101のレーザー光110の入射面側に設けられ、有機色素を含む記録層102と、第一反射層103と、第二反射層104と、接着層105と、鏡面あるいは溝及びランド又はプリピットが形成されたディスク状の貼り合わせ基板106と、を有するものである。そして、光記録媒体100は、樹脂基板101側から入射したレーザー光110により、光情報の記録再生が行なわれる。
なお、図1(b)は、従来の追記型DVDタイプの光記録媒体の構成を模式的に示す断面図である。図1(b)に示すように、光記録媒体200は、溝及びランド又はプリピットが形成されたディスク状の光透過性の樹脂基板201と、この樹脂基板201のレーザー光210の入射面側に設けられ、有機色素を含む記録層202と、反射層203と、接着層204と、貼り合わせ基板205と、を有するものである。従来の光記録媒体200は、本発明の光記録媒体100とは異なり、1層の反射層203を有するものであり、樹脂基板201側から入射したレーザー光210により、光情報の記録再生が行われる。
以下、本発明の光記録媒体について、構成ごとに説明する。
1.反射層
まず、第一反射層103および第二反射層104について説明する。本発明では、熱伝導度が相対的に高い第一反射層103と、熱伝導度が相対的に低い第二反射層104とを組み合わせて用いる。まず、そのような反射層を組み合わせて用いる理由について詳しく説明する。
従来の追記型DVDタイプの光記録媒体は、一般に反射層として銀または銅を主成分とする層が単層で用いられている。このように記録層および接着層の間に、銀または銅を主成分とする反射層を用いると、400nm近傍の短波長領域に至る可視光において、高い反射率が得られるという利点がある。また、銀または銅は安価であることから低コスト化が可能となる。しかし、このような光記録媒体に対して高速記録(例えばDVD−Rの8倍速)を行うと、耐候性試験において顕著な劣化が見られる場合がある。具体的には、試験前には良好であった記録部分のジッターが悪化したり、POエラー(Parity of Outer−code Error)が増加するという傾向が見られることがある。このような劣化は、従来の耐候性試験前後の光記録媒体の評価として通例である低速記録(追記型DVDの1倍速〜2倍速)を行い、同様のaging time(耐候性試験処理時間)を経過させた場合には見られない現象である。このような劣化は、記録層と反射層との密着性が、高速記録という過酷な条件においてはとりわけ良くないことを意味すると考えられる。
尚、通常DVD検査においては、8ECC内のPIエラー(Parity of Inner−code Error)と上記POエラーが汎用のDVD検査機で計測されうるエラーとして知られている。これらは、追記型DVD規格書である、“DVD Specifications for Recordable Disc for General Ver.2.0”3.2.7章の「ECC Block configulation」の項目等に記載されている内容に準拠したものである。
PIエラーは、1ECCブロック内の1つの行内に1バイト以上のエラーがあった場合に1つとカウント(count)されるエラーで、内部パリティーで復元可能なものである。一方、POエラーは、1ECCブロック内の1つの行内に、パリティーによる訂正後でも5バイト以上の誤りが含まれているときに1つとカウント(count)されるエラーである。ここで、ECCとは、エラーコレクションコードを意味する。
本発明者らは、高速記録という過酷な条件においてエラーが発生する原因としては、まず、記録層が記録用のレーザー照射により受ける熱的ストレスが一つの要素であると考えた。かかる熱的ストレスは、記録層と反射層との界面でかなり大きい。一方、反射層と接着層との界面については、反射層の放熱効果が比較的大きいために、記録層と反射層ほど大きなストレスは至らないと考えられる。しかし、接着層は厚さが非常に大きく、また、温度が上がりにくいため、反射層の厚さ方向の温度勾配は、ほとんど温度が上がらない接着層に向かって、非常に急峻なものとなる。従って、記録層と反射層の界面と、反射層と接着層の界面とでは、熱的ストレスは大きな隔たりがあるということになる。そこで、かかる反射層と接着層との間に、低熱伝導度の第二反射層を設け、前述のストレスの隔たりを緩和することにより、高速記録における過度の熱的ストレスの残留を抑制できるのではないか、というのが、本発明の思想の一つである。
以上の考察により、本発明者らは、高速記録における熱的ストレスを緩和し、高速記録信号再生特性が良好であり、さらに、耐候性試験に強い記録部を形成することを、本発明の目的としたのである。
従って、本発明者らは、上記の理由により、第一反射層の上には、誘電体や、第一反射層よりも高熱伝導度の金属反射層ではなく、第一反射層よりも低熱伝導度の反射層を積層することが好ましいと考え、本発明に到達した。また、反射層を低熱伝導度の材料のみの単層で構成した場合は、一般に反射層の反射率が低下するため、記録に必要な熱エネルギーを十分に得られない場合や、汎用の装置での再生が出来ない場合が生じることとなる。
尚、一般的に、金属の熱伝導度が高いほど、反射率は高いという傾向が知られている。その傾向は特に、600nm〜650nmで顕著である。従って、本発明の第二反射層は、第一反射層よりも低反射率の層であるとも言える。
さらに、本発明者らの検討により、反射層が銀を主成分とする単層である場合は、ダミー基板側から長時間可視光を照射すると接着層が変質し、さらに接着層の変質によって銀を主成分とする反射層が腐食して、PIエラーが増加することのあることが判った。また、ダミー基板側から長時間可視光を照射すると、接着層が黄変する、即ち、接着層が変質して劣化が生じる場合もあることがわかった。これらの劣化はいずれも、銀に由来する光触媒作用が原因と考えられる。
可視光を長時間照射することにより生じる、かかる問題は、第二反射層に銀以外の金属あるいは合金の層を設けて、銀と接着層とを接触させないようにすることにより改善される。さらには、本発明の銀または銅を主成分とする反射層よりも反射率の低い第二反射層を設けることにより、ダミー基板側から照射される可視光の接着層への反射が減衰される。その結果、接着層の上記の劣化がよりいっそう抑制されると考えられる。
尚、本明細書において、「熱伝導度」としては、キッテル著、「固体物理学入門 上巻」、第6版、117ページの表1「デバイ温度と熱伝導率」に記載された、300Kでの熱伝導率の値を用いるものとする。前記の表に記載された主な材料の熱伝導度の値を下記の表1に示す。
Figure 0004794467
実際の薄膜での熱伝導度を測定する方法はいくつか報告されているが、その実験には特殊な装置(例えば光交流法薄膜熱定数測定装置など)や特殊なサンプルの作製法を必要とする。そのために、これらの手法は一般に普及しておらず、測定には過度の労力を必要とする場合が多い。そのため、本発明においては、一般化されているバルクの熱伝導度を用いた。しかしながら、含金属化合物などを用いる場合には、化合物の熱伝導度は上記装置を用いる等で測定することができる。
尚、合金の場合など、複数の組成から反射層が成り立つ場合には、以下の様に、それぞれのバルクの熱伝導度に、その組成の割合(原子%)をかけた値を求めることにより熱伝導度の値と定める。例えば、95原子%のAgと5原子%のTiから成る合金の熱伝導度は、Agのバルクの熱伝導度(429W/m・K)と、Tiのバルクの熱伝導度(22W/m・K)から、429×0.95+22×0.05=408.7W/m・Kと求められる。このようにして、例えば3元系でも4元系でも同様に算出する。従って、光記録媒体が完成されたディスクの形態であっても、その反射層の組成がわかれば、上記のようにして、本発明における熱伝導度を算出することができる。
次に、第一反射層103および第二反射層104の材料について、具体的に説明する。
第一反射層103を構成する材料は限定されないが、銀または銅を主成分とすることが好ましい。本発明において、「銀または銅を主成分とする」とは、第一反射層103を構成する金属に、銅または銀が、50原子%以上含まれていることをいう。中でも、本発明の効果をより有効に発揮させるためには、銅または銀が、80原子%以上、特に90原子%以上含まれていることが好ましい。
即ち、第一反射層103は、銀または銅の金属単体から成る反射層であっても良く、銀または銅を主成分とする合金から成る反射層であっても良い。特に、第一反射層103は、銀あるいは銀を主成分とする合金から成る反射層であれば、前述のように、本発明のより顕著な効果が得られやすいので好ましい。
第二反射層104は、第一反射層103よりも熱伝導度が低い反射層である。第二反射層104を構成する材料は、第一反射層よりも熱伝導度が低いものであれば特に限定されるものではないが、第一反射層103を構成する材料とは主成分とする元素が異なることが好ましい。すなわち、第一反射層103として銀または銅を主成分とする材料を用いる場合、第二反射層104としては銀および銅以外の元素を主成分とすることが好ましい。ここで「銀および銅以外の元素を主成分とする」とは、第二反射層104を構成する全金属に対し、銀および銅以外の金属が、50原子%以上含まれていることをいう。但し、第一反射層103として銀を主成分とする材料を用いる場合は、第二反射層104として銅を主成分とする材料を用いることが出来る。
第二反射層104を構成する材料としては、耐食性が高いという観点から、Au,Ti,Ta,W,Mo,Cr,Ni,ZnおよびZrから成る群の中から選ばれる金属を主成分とすることが好ましく、特に、Auを主成分とすることが好ましい。本発明において、上記の金属を「主成分とする」とは、第二反射層104を構成する全金属に対し、上記の金属が、50原子%以上含まれていることをいう。中でも、本発明の効果をより有効に発揮させるためには、上記の金属が、80原子%以上、特に90原子%以上含まれていることが好ましい。
即ち、第二反射層104は、上記金属の金属単体から成る反射層であっても良く、上記金属を主成分とする合金から成る反射層であっても良い。更には、上記金属を主成分とする含金属化合物であってもよい。
第二反射層104の熱伝導度と第一反射層103の熱伝導度との差は限定されないが、第二反射層104の熱伝導度が第一反射層103の熱伝導度より60W/m・K以上低いことが好ましく、より好ましくは80W/m・K以上低いことが、更に好ましくは100W/m・K以上低いことが望ましい。第二反射層104の熱伝導度と第一反射層103の熱伝導度との差が前記範囲であれば、耐候性改良の効果が良好となるため望ましい。第二反射層104の熱伝導度と第一反射層103の熱伝導度との差の上限値は限定されないが、通常、400W/m・K以下である。
第一反射層103の熱伝導度は限定されないが、好ましくは350W/m・K以上、より好ましくは400W/m・K以上、更に好ましくは420W/m・K以上であり、好ましくは450W/m・K以下である。第一反射層103の熱伝導度が前記範囲であれば、既に普及している光記録装置で良好な記録特性が得られる傾向にあるため好ましい。
また、第二反射層104の熱伝導度は限定されないが、好ましくは405W/m・K以下、より好ましくは340W/m・K以下であり、好ましくは20W/m・K以上である。第二反射層104の熱伝導度が前記範囲であれば、耐候性改良の効果が良好となるため好ましい。
次に、第一反射層103と第二反射層104の膜厚の組み合わせについて述べる。本発明では、第一反射層103の膜厚を、第二反射層104の膜厚より厚くすることを特徴とする。第一反射層103の膜厚を、第二反射層104の膜厚より厚くすることにより、記録再生光強度を減衰することがなく、第二反射層104のストレス緩和効果を十分得ることができる。
第一反射層103の膜厚は、第二反射層104の膜厚より厚ければ厚み比は限定されないが、第一反射層103の膜厚を基準として第二反射層104の膜厚が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、通常は1未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下であることが望ましい。
第一反射層103の膜厚は、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上である。第一反射層103の膜厚を上記範囲の厚さ以上とすることにより、充分な反射率と放熱効果が確保できる。第一反射層103の膜厚の上限は200nmが好ましく、必要以上にスパッタ成膜時間を長くしないように、より好ましくは150nm以下である。第一反射層103の膜厚を上記範囲以下にすることにより、第一反射層のスパッタ成膜時間を適正な範囲とすることが可能となる。その結果、膜応力の影響を低減させ、ディスクの反りを適正な範囲に保つことが可能となる。
第二反射層104の膜厚は、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、よりいっそう好ましくは20nm以上である。また、第二反射層104の膜厚は60nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。第二反射層104の膜厚を上記範囲とすることにより、記録再生光のストレスを緩和することが可能となると共に、接着層のバリア層として、ダミー側からの光の長時間の照射による銀に由来する光触媒作用を防ぎ、接着層の黄変や第一反射層の劣化を抑制する十分な耐食性を確保することが可能である。
そして、第一反射層103と第二反射層104の膜厚の和は、必要以上にスパッタ成膜時間を長くしないように、200nm以下が好ましく、より好ましくは190nm以下である。また、ジッターを安定して、より良好にするには、第一反射層103と第二反射層104の膜厚の和は160nm以下が好ましい(表4参照)。ディスクの反りの観点からいえば、第一反射層103と第二反射層104の膜厚の和はより小さくすることが好ましく、150nm以下がさらに好ましい。また、第一反射層103と第二反射層104と膜厚の和は50nm以上とするのが好ましく、より好ましくは60nm以上である。十分な反射光量を得て、安定に成膜できるという理由から、さらに好ましくは80nm以上である。第一反射層103と第二反射層104の膜厚の和を上記範囲にすることにより、十分なディスクの反射率を確保できると共に、ディスクの反りも良好に保つことが可能となる。
2.樹脂基板
次に、樹脂基板101について説明する。基板面入射型の光記録媒体の場合、樹脂基板101は、光透過性であることが必要であり、複屈折率が小さい等光学特性に優れることが望ましい。また、射出成形が容易である等、成形性に優れることが望ましい。更に、吸湿性が小さいことが望ましい。更に、光記録媒体100がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。このような材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。また、ガラス等の基体上に、光硬化性樹脂等の放射線硬化樹脂から成る樹脂層を設けたもの等も使用できる。これらの中でも、光学特性、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点からはポリカーボネートが好ましい。また、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
樹脂基板101の溝幅は、トラックピッチをTとして、通常、2T/10以上、好ましくは3T/9以上である。この範囲であれば反射率を十分に確保できる。例えば、トラックピッチを740nmとすると、樹脂基板101の溝幅は、通常、148nm以上、好ましくは246nm以上とする。但し、樹脂基板101の溝幅は、通常、7T/10以下、好ましくは、6T/10以下である。例えば、トラックピッチを740nmとすると、光透過性の樹脂基板101の溝幅は、通常、518nm以下、好ましくは444nm以下とすると、溝形状の転写性を良好にできるので好ましい。
樹脂基板101の溝幅は、トラックピッチをTとして、通常、2T/10以上、好ましくは3T/9以上である。この範囲であれば反射率を十分に確保できる。例えば、トラックピッチを740nmとすると、樹脂基板101の溝幅は、通常、148nm以上、好ましくは246nm以上とする。但し、樹脂基板101の溝幅は、通常、9T/10以下、好ましくは、8T/10以下である。例えば、トラックピッチを740nmとすると、光透過性の樹脂基板101の溝幅は、通常、666nm以下、好ましくは592nm以下とすると、溝形状の転写性を良好にできるので好ましい。
樹脂基板101の溝深さは、記録再生光波長をλとした場合、通常λ/15以上とするのが、反射率や溝信号を十分確保できるので好ましい。より好ましくはλ/12以上である。例えば、記録再生光の波長(記録再生波長)がλ=660nmの場合、樹脂基板101の溝深さは、通常44nm以上、好ましくは55nm以上である。ただし、樹脂基板101の溝深さの上限は、通常2λ/5以下とするのが溝形状の転写性を良好にできるため好ましく、より好ましくは2λ/7以下である。例えば、記録再生波長が660nmの場合、通常264nm以下、好ましくは188.6nm以下である。
樹脂基板101の厚さは、特に限定されないが、基板面入射型の光記録媒体の場合で、通常0.55mm〜0.65mmの範囲内である。
3.記録層
次に、記録層102について説明する。記録層102に含まれる有機色素は、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザーでの記録に適する色素化合物が好ましい。追記型のDVDに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザー(例えば、635nm、660nm、680nm)、波長405nm又は515nm等のいわゆるブルーレーザー等による記録に適する色素がより好ましい。何故ならば、すでに述べたように、本発明の効果は、熱伝導度の小さい有機色素層から成る、より高密度記録、あるいは、より高速記録に用いる光記録媒体において顕著だからである。
また、記録層102は、最短マーク長0.4μm以下の記録マークを有することが好ましい。
記録層102に使用される色素としては、特に限定されないが、通常、有機色素材料が使用される。有機色素材料としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの中でも、含金属アゾ系色素は、記録感度に優れ、かつ耐久性、耐光性に優れるため好ましい。これらの色素は1種を単独で用いても良く、2種以上混合して用いても良い。
また、記録層102には、色素の他にその他の成分が含まれていてもよい。
例えば、記録層102は、記録層の安定や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、記録感度向上のために金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していても良い。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えば、エチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
更に、記録層102には、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
記録層102の成膜方法としては、特に限定されないが、通常、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等、一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法等の湿式成膜法が好ましい。また、均一な記録層が得られるという点から、真空蒸着法が好ましい。
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、一般的に加熱処理を行い、溶媒を除去する。ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、樹脂基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
これらの溶媒を除去するための加熱処理は、溶媒を除去し、且つ、簡便な設備により行うという観点から、通常、使用する溶媒の沸点よりやや低い温度で行われ、通常、60℃〜100℃の範囲で行われる。また、加熱処理の方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂基板101上に記録層102を形成するために色素を含有する溶液を塗布して成膜した後、所定の温度で所定時間(通常、5分間以上、好ましくは10分間以上、但し、通常、30分間以内、好ましくは20分間以内)保持する方法が挙げられる。また、赤外線、遠赤外線を短時間(例えば、5秒間〜5分間)照射し、樹脂基板101を加熱する方法も可能である。
真空蒸着法の場合は、例えば、有機色素と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−2〜10−5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた樹脂基板上に蒸着させることにより行われる。
4.接着層
次に、接着層105について説明する。尚、この接着層105は1層でも複数層から成っていても良い。つまり、第二反射層104の上に、紫外線硬化樹脂から成る接着層105を数μmスピンコートした上に、別の接着層105´を設けて、貼り合わせ基板106を設けても良い。
接着層105を構成する樹脂は、25℃前後での弾性率が、通常1000MPa以上、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは3000MPa以上であることが好ましい。弾性率が1000MPa以上の樹脂を用いて接着層105を構成することにより、良好な接着性を有し、機械特性も良好な貼り合せディスクが得られる。但し、弾性率の上限は、通常、6000MPa以下である。弾性率が6000MPa以下の樹脂を用いることにより、例えば、塗布等の溶液法により接着層105を成膜することが可能となり、工業的に有利である。接着層105を構成する樹脂が上記範囲の弾性率を有することにより、良好な機械特性を有する貼り合せディスクが得られる。
尚、接着層105の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上が必要である。
また、この層があまり厚い場合には、紫外線硬化にも時間を要し、色素に過度の光エネルギーを与えることになり、劣化の原因になる恐れがある上に、ディスクの反りなどの原因にもなる場合があるので好ましくない。以上のことから、接着層105は、通常100μm以下が好ましい。
次に、接着層105を構成する材料の具体例について説明する。
接着層105を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等を挙げることができる。接着層105を構成する材料は、これらの中から適宜選択される。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は、必要に応じて適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布し、乾燥(加熱)することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、貼り合わせ基板106を設置後に、紫外光を照射して硬化させることによって形成することができる。これらの材料は単独又は混合して用いても良い。
接着層105を形成する方法としては、例えば、スピンコート法やキャスト法等の塗布法等が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。高粘度の樹脂はスクリーン印刷等によっても塗布形成できる。紫外線硬化性樹脂は、20℃〜40℃において液状であるものを用いることが好ましい。これは、溶媒を用いることなく塗布できるため生産性が良好となるからである。また、塗布液の粘度は20mPa・s〜1000mPa・sとなるように調整するのが好ましい。
接着層105を構成する材料の中でも、紫外線硬化性樹脂は、透明度が高く、硬化時間が短く製造上有利な点で好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂が挙げられ、何れも使用することができる。
ラジカル系紫外線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。
紫外線硬化性化合物としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは各々1種を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。尚、本明細書においては、「アクリレート」と「メタアクリレート」とを併せて「(メタ)アクリレート」と称する。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1、3−ブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、これらの重合性モノマーと同時に併用できるものとしては、重合性オリゴマーとして、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
一方、光重合開始剤としては、分子開裂型光重合開始剤又は水素引き抜き型光重合開始剤が好ましい。
分子開裂型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2、4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。更に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良い。
また、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4´−メチル−ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
また、これらの光重合開始剤とともに、増感剤を併用することができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N、N−ジメチルベンジルアミン及び4、4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
一方、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、遊離した塩素及び塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量が1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
カチオン型紫外線硬化性樹脂100重量部当たりのカチオン重合型光開始剤の割合は、通常0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上、また、通常20重量部以下、好ましくは5重量部以下の範囲である。尚、紫外線光源の波長域の近紫外領域や可視領域の波長をより有効に利用するため、公知の光増感剤を併用することができる。この際の光増感剤としては、例えばアントラセン、フェノチアジン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
また、紫外線硬化性樹脂には、必要に応じて更にその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤及びエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
また、紫外線硬化性樹脂の中でも、低光散乱性且つ低粘度でスピンコートで塗布可能なカチオン型紫外線硬化性樹脂が好ましい。更に、種類が多く、配合比、組成の自由度が大きい点、また、接着層105の厚さが10μm以上の場合は、酸素による硬化阻害を考慮する必要がない点から、ラジカル系紫外線硬化樹脂を使用することが好ましい。
本発明の光記録媒体には、アドレス情報、媒体の種類の情報、記録パルス条件、及び最適記録パワー等の情報を記録することができる。これらの情報を記録する形態としては、例えば、追記型のDVDの規格書に記載されているLPPやADIPのフォーマット等を用いればよい。
5.貼り合わせ基板
次に、貼り合わせ基板106について説明する。貼り合わせ基板106の材料等については、特に限定されないが、上述した「2.樹脂基板」に記載した内容と同様であることから、ここでの説明は省略する。
また、貼り合わせ基板106の膜厚は、特に限定されないが、基板面入射型の光記録媒体の場合で、通常0.55mm〜0.65mmの範囲内である。
6.光記録媒体
本発明の光記録媒体100は、上述した反射層、樹脂基板、記録層および必要により、接着層および貼り合わせ基板を有するものである。DVDディスクの場合には、接着層および貼り合わせ基板を有することが好ましいが、CD−R等のCDディスクの場合は接着層および貼り合わせ基板を有さずに、保護層に置き換えることが出来る。なお、CDディスクにおける保護層としては、紫外線硬化樹脂等を用いることができる。
本発明の光記録媒体100として、記録層を2以上有する場合の構成は限定されないが、通常、各記録層の間には樹脂等で形成された中間層を介する。また、通常、各記録層に対応して、直接または他の層を介して各反射層が設けられる。従って、複数の記録層に対応した複数の反射層が存在する場合があるが、そのような場合は、少なくとも1つの反射層が前記した構成の反射層であればよい。
本発明の光記録媒体100は、記録線速度28m/s以上で記録可能であることが好ましい。何故ならば、本発明の効果は、高速記録を行う有機色素の光記録媒体において顕著であるからである。
また、本発明において「記録可能」とは、DVDディスクにあっては、通常のDVDディスク再生機器にて正常に再生可能な信号を記録できることを意味する。あるいは、DVD規格に準拠した再生特性が得られる記録部が形成できることを意味する。また、CDディスクにあっては、通常のCDディスク再生機器にて正常に再生可能な信号を記録できることを意味する。あるいは、CVD規格に準拠した再生特性が得られる記録部が形成できることを意味する。
以下、実施例(実験例)に基づき本実施の形態を更に具体的に説明する。尚、本実施の形態は、その要旨を超えない限り以下の実施例(実験例)に限定されるものではない。
(1)追記型DVDディスクの実験例
以下に、追記型DVDディスクの場合の実験例を示す。
[実施例1]
<光記録媒体の調製>
先ず、表面に溝が形成されたNiスタンパを用いて、ポリカーボネートを射出成形することにより、ピッチ0.74μm、幅320±50nm、深さ150±25nmの溝が形成された直径120mm、厚さ0.60mmの樹脂基板を形成した。有機色素化合物として、それぞれ下記化学式で表される含金属アゾ色素である色素A及び色素Bの混合物(色素A:色素B=60重量%:40重量%)のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1.5重量%)を調製し、これを上述の樹脂基板上に滴下し、スピンコートした後、70℃で30分間乾燥し、記録層を形成した。樹脂基板の溝部における記録層の膜厚は約80nmであり、ETA−Optik社製ETA−RTで測定した波長約595nmでのOD値(Optical Density)は、0.81であった。
Figure 0004794467
Figure 0004794467
続いて、記録層の形成後、なるべく時間をおかずに、この記録層上に、第一反射層である純銀(熱伝導度 429W/m・K(300K))のスパッタ膜を100nm成膜した。さらに第二反射層である純金(熱伝導度 317W/m・K(300K))のスパッタ膜を50nm成膜した。
スパッタの条件は以下のとおりである。
純銀:成膜パワー 3.8kW、 電圧640V〜650V、電流4.6A〜5.2A、アルゴン流量 25sccm、到達真空度 1.0×10−2mbar以下
金:成膜パワー 2.6kW、 電圧640V〜650V、電流4.6A〜5.2A、アルゴン流量 25sccm、到達真空度 1.0×10−2mbar以下
なお、後述する実施例2〜8、比較例1〜7では、ターゲットおよびスパッタ条件を適宜変更することにより、所望の膜厚になるように調整して成膜した。
<貼り合わせディスク調製>
上述した方法で調製したディスクの第二反射層の上に、紫外線硬化樹脂(日本化薬製ラジカル系紫外線硬化樹脂 DVD750:弾性率3100MPa(25℃)、ガラス転移温度Tg=98℃)を塗布し、貼り合わせ基板(鏡面レプリカ)を上に乗せながら、前記紫外線硬化樹脂層の膜厚がおよそ50μmになるようにスピンコート回転数を調節して塗布した。続いて、貼り合わせ基板側から紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させ、その層を接着層とすることにより、樹脂基板および貼り合わせ基板で狭持された光記録媒体を調製した。尚、貼り合わせの紫外線硬化樹脂は、キセノンフラッシュランプの他、高圧水銀ランプやメタルハライドランプを用いることが可能であり、本発明においては通常の条件である500mJ強の照射を行って硬化させた。
尚、前記紫外線硬化樹脂の弾性率及びガラス転移温度Tgは、動的粘弾性試験機(レオバイブロン社製:DDVシリーズ)を使用し、測定周波数10Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定した。
<耐候性試験前の記録再生特性の評価>
評価機:記録ドライブ Benq製 DW−822A(FW:B3CC01)
記録速度:DVDの8倍速(線速度28m/s:8Xと記載する場合あり。)
記録パワー:13mW〜18mW
<記録再生特性のOK/NGの判断基準>
以下の内容でのエラー測定をOK/NGの判断基準とした。
評価機: Expert製 DVDT+R(drive unit=Philips DVDR−1000用ドライブ搭載)でエラーを測定し、追記型DVDの規格に従って、PIエラー280個以上、あるいは、POエラーが発生(たちあがり)すればNG(スペックオフ)とした。
<耐候性試験の方法>
上記8倍速の記録をしたディスク各5枚を以下の耐候性試験装置に投入し、90℃,80%相対湿度(但し、昇温中、目標到達温度での試験中及び降温中に結露が無いことを確認した)で100時間保持した後、上記8倍速記録部のエラーを測定した後に、再度耐候性試験機に投入するという操作を繰り返した。尚、耐候性試験はタバイ製 PR−2KPを使用した。
上述の手順に従って作製した、第一反射層として純銀100nm、第二反射層として純金50nmを有する貼り合わせディスクについて、上記耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2および図2(a)、(b)に示す。図2(a)、(b)に点線で示されるように、90℃,80%相対湿度という過酷な条件下に800時間という長い時間保持しても、PIエラーはほとんど変化せず、POエラーは0個と、極めて良好であった。
[比較例1]
実施例1において、反射層を純銀160nmから成る1層としたこと以外は全く同様にして貼り合せディスクを作成し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2および図2(a)、(b)に示す。図2(a)、(b)に実線で示されるように、純銀の反射層1層の場合には、PIエラーが400時間で規格の上限値を超える劣化が見られ、それと同時に、POエラーも400時間を越えると顕著に発生した。
[比較例2]
実施例1において、反射層を純金180nmから成る1層としたこと以外は全く同様にして貼り合せディスクを作成し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2および図2(a)、(b)に示す。図2(a)、(b)に破線で示したように、PIエラーは800時間を経て100個以下であるものの、POエラーは200時間を越えると顕著に発生した。このエラー発生部を観察したところ、金反射層が気泡のように膨れた欠陥が見られた。この欠陥は8倍速記録部の色素と反射層との界面の形状異常と考えられる。このような欠陥は、8倍速記録という高速記録の際に色素と反射層の界面で大きな熱的・物理的なストレスが発生した際に、金が柔らかいために変形が残留し、その変形部に耐候性試験中における樹脂基板からの水の染み出しや、温度湿度のサイクルによるディスクの反りなどが発生したことによる欠陥と考えられる。
金反射層は、従来、その化学的安定性から極めて良好な反射層として知られてきたが、本検討により、かかる高速記録条件で記録した場合に、PIエラーは良好であるのにもかかわらず、局所的な欠陥が発生することがわかった。
尚、この1層のみの金反射層のスパッタ成膜条件は、成膜パワー 3.0kW、 電圧510V〜600V、電流5.0A〜6.1A、アルゴン流量 75sccm、到達真空度 1.0×10−2mbarであった。
[比較例3]
実施例1において、第一反射層を純金のスパッタ膜20nm、第二反射層を純銀のスパッタ膜140nmに変えた以外は全く同様にして、貼り合せディスクを作製し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2に示す。比較例3では、第一反射層を薄く形成したため純金層の影響は小さいと予想していたが、200時間後でPOエラーが発生し、劣化が明らかであった。
[比較例4]
実施例1において、第一反射層を純金のスパッタ膜120nm、第二反射層を純銀のスパッタ膜50nmに変えた以外は全く同様にして、貼り合せディスクを作製し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2に示す。比較例4では、200時間後でPIエラー、POエラー双方とも顕著に発生して劣化が明らかであった。なお、200時間後でPIエラー、POエラーが顕著に発生したため、200時間以降の耐候性試験は行わなかった。
[比較例5]
実施例1において、第一反射層を純銀のスパッタ膜40nm、第二反射層を銅/銀(銀12.8原子%、熱伝導度404W/m・K(300K))のスパッタ膜70nmに変えた以外は全く同様にして、貼り合せディスクを作製し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2に示す。比較例5では、200時間後でPOエラーが発生していたことから、劣化が明らかであった。なお、200時間後でPOエラーが発生したため、200時間以降の耐候性試験は行わなかった。
[比較例6]
実施例1において、第一反射層を純銀のスパッタ膜40nm、第二反射層を純金のスパッタ膜70nmに変えた以外は全く同様にして、貼り合せディスクを作製し、実施例1と同様にして耐候性試験前後のエラーの変化を測定した結果を表2に示す。比較例6では、200時間後でPIエラー、POエラー双方とも顕著に発生して劣化が明らかであった。なお、200時間後でPIエラー、POエラーが顕著に発生したため、200時間以降の耐候性試験は行わなかった。
Figure 0004794467
[実施例2〜5]
純銀の第一反射層と純金の第二反射層の膜厚を表3のようにした以外は実施例1と全く同様にして、貼り合わせディスクを作製した。
表3には、上記実施例2〜5に加えて、実施例1、比較例1〜6のディスクについて実施例1と同様の記録を行った結果の反射率(ディスクサンプル平均値)とジッター値(ディスクサンプル平均値)の値を記載した。なお、何れも耐候性試験前のディスクでの測定値である。
Figure 0004794467
表4には、上記実施例2〜5に加えて、実施例1、比較例1〜3のディスクについて、レーベル印刷の無い、貼り合せ基板側から太陽光に260時間暴露させたあと、ディスクの接着層の黄変劣化の有無を観察した結果を示す。
Figure 0004794467
表4より判るように、最外層の反射層に純銀を有する場合(比較例1と比較例3)には、接着層の黄変劣化が見られた。一方、その接着層の黄変劣化は、第一反射層に純銀を使用したとしても、その上の第二反射層に、反射率が小さい、熱伝導度が純銀よりも低い純金層を設けることにより防げることが判った。
(2)CD−Rディスクの実験例
以下に、CD−Rディスクの場合の実験例を示す。
[実施例6]
<光記録媒体の調製>
先ず、表面に溝が形成されたCD−R用のNiスタンパを用いて、ポリカーボネートを射出成形することにより、ピッチ1.5μmの溝が形成された直径120mm、厚さ1.2mmの樹脂基板を形成した。その樹脂基板の上に、有機色素化合物としてフタロシアニン系色素を有機溶剤に溶解した溶液を滴下してスピンコートした後、加熱乾燥して記録層を形成した。記録層の膜厚は、色素化合物の最大吸収波長におけるOD値が0.57となるように調整した。
続いて、記録層の形成後、なるべく時間をおかずに、この記録層上に、第一反射層である純銀のスパッタ膜を80nm成膜した。さらに第二反射層である純金のスパッタ膜を30nm成膜した。
上述した方法で調製したディスクの第二反射層の上に紫外線硬化樹脂を塗布した後、スピンコートした。続いて、塗布した紫外線硬化樹脂側から紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させて保護層とした。
<耐候性試験前の記録再生特性の評価>
評価機:記録ドライブ Plextor製 PX−R820T(FW:1.03)
記録速度:CDの8倍速(線速度9.6m/s:8Xと記載する場合あり。)
記録パワー:12mW〜17mW
<記録再生特性のOK/NGの判断基準>
以下の内容でのエラー測定をOK/NGの判断基準とした。
評価機: Audio社製 CD−CATSでエラーを測定し、CD−Rの規格に従って、BLER220個(スペック)以上をNGとした。なお、BLERとは、ブロックエラーレートを意味する。
<耐候性試験の方法>
上記8倍速の記録をしたディスク各5枚を以下の耐候性試験装置に投入し、90℃,80%相対湿度(但し、昇温中、目標到達温度での試験中及び降温中に結露が無いことを確認した)で100時間保持した後、上記8倍速記録部のエラーを測定した後に、再度耐候性試験機に投入するという操作を繰り返した。尚、耐候性試験はタバイ製 PR−2KPを使用した。
上述の手順に従って作製した、第一反射層として純銀80nm、第二反射層として純金30nmを有するディスクについて、上記耐候性試験前後のBLERを測定した結果を表5に示す。実施例6では、90℃,80%相対湿度という過酷な条件下に800時間という長い時間保持しても、BLER値は極めて良好であった。また、反射率も表5に示す通り、良好な値であった。
[実施例7、8、比較例7]
第一反射層および第二反射層の膜厚を表6の通りとした以外は実施例6と同様にしてディスクを作成し、実施例6と同様にして反射率および耐候性試験前後のBLERを測定した結果を表5に示す。
実施例6に対して第二反射層の純金の厚みを変えた実施例7、実施例8においても、耐候性試験後のBLER値は極めて良好であった。また、反射率も表6に示す通り、良好な値であった。
第二反射層を設けずに純銀の層のみとした比較例7では、反射率は良好であるものの、耐候性試験において800時間後のBLER値が顕著に悪化した。
Figure 0004794467
本発明は、追記型DVDやCD−R等の赤色半導体レーザー用の光記録媒体や、青色半導体レーザー用の光記録媒体等の用途において、好適に利用することが可能である。
(a)は、本発明の光記録媒体の構成を模式的に示す断面図であり、(b)は、従来の光記録媒体の構成を模式的に示す断面図である。 実施例1、比較例1及び比較例2の耐候性試験前後のエラーの変化を示す図である。
符号の説明
100、200 光記録媒体
101、201 樹脂基板
102、202 記録層
103 第一反射層
104 第二反射層
105、204 接着層
106、205 貼り合わせ基板
110、210 レーザー光
203 反射層

Claims (8)

  1. 少なくとも樹脂基板、有機色素を含む記録層、及び反射層を有する光記録媒体であって、前記反射層が、前記記録層に近い側から第一反射層と第二反射層とをこの順で有し、
    前記第二反射層の熱伝導度が前記第一反射層の熱伝導度よりも低く、かつ、
    前記第一反射層の膜厚が前記第二反射層の膜厚よりも厚く、
    前記第二反射層が、Auを主成分とすることを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記第二反射層の熱伝導度が、前記第一反射層の熱伝導度より60W/m・K以上低いことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 前記第一反射層が、銀または銅を主成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録媒体。
  4. 前記第一反射層の主成分とする元素と前記第二反射層の主成分とする元素が異なることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の光記録媒体。
  5. 前記第一反射層が、銀を主成分とすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の光記録媒体。
  6. 前記第一反射層の膜厚が50nm〜200nmの範囲内であり、前記第二反射層の膜厚が0.5nm〜60nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の光記録媒体。
  7. 前記記録層が、最短マーク長0.4μm以下の記録マークを有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の光記録媒体。
  8. 記録線速度28m/s以上で記録可能であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の光記録媒体。
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