JP3978402B2 - 光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法 - Google Patents

光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばDVD−Rなどの片面側からレーザ光を照射して情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、CD−R,CD−RW,MO等の各種光記録媒体は、大容量の情報を記憶でき、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータのような情報処理装置における外部記憶装置として広く認知され普及しつつある。さらに取り扱う情報量の増大により、記憶密度を高めることが望まれている。
【0003】
種々の光記録媒体の中でもCD−R,DVD−R,DVD+Rなど、有機色素を含む記録層(色素含有記録層ともいう)を有する光ディスクは比較的安価で、且つ、再生専用の光ディスクとの互換性を有するため、特に広く用いられている。
一例として、色素含有記録層を有する光ディスクとして代表的なCD−Rなどの媒体は、透明ディスク基板上に色素含有記録層と反射層とをこの順に有し、これら色素含有記録層や反射層を覆う保護層を有する積層構造であり、基板を通してレーザ光にて記録・再生を行なうものである。
【0004】
さて、同じく代表的な片面型DVD−R(片面1層DVD−R)は、第1の透明ディスク基板上に色素含有記録層、反射層、これらを覆う保護層をこの順に有し、さらに保護層の上に接着層を介して或いは介さずに、第2のディスク基板(透明でも不透明でも良い)上に反射層を形成したいわゆるダミーディスクを設けた積層構造であり、第1の透明ディスク基板を通して片面側からレーザ光にて記録・再生を行なうものである。ダミーディスクは透明又は不透明のディスク基板のみであっても良いし、反射層以外の層を設けていても良い。
【0005】
なお、DVD+Rは、DVD−Rとほぼ同じ構成であるため、DVD−Rの説明で代表させる。
また、光記録媒体の記録容量を更に大容量化するために、上記のような片面型DVD−Rを貼り合わせて2つの記録層を有する媒体とし、両面側から各記録層にレーザ光を照射して記録・再生を行なう(即ち、媒体の一面側からレーザ光を照射し、この一面側に近い方の記録層の記録・再生を行なう一方、媒体の他面側からもレーザ光を照射し、この他面側に近い方の記録層の記録・再生を行なう)両面型DVD−R(両面2層DVD−R)も知られている。
【0006】
ところで、近年、複数の記録層を有する光記録媒体においては、記録再生装置が大型化,複雑化しないようにし、また、複数の記録層にわたる連続的な再生を可能とすべく、片面側からレーザ光を照射することによってこれらの複数の記録層に対して記録・再生を行なうことができる片面入射型光記録媒体(例えば片面入射2層DVD−R)を実現することが望まれている。
【0007】
このため、例えば、以下のような構成を有する片面入射型光記録媒体として、例えば2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−R(片面2層DVD−R)が提案されている(例えば特許文献1参照)。
例えば貼り合わせ型のデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rは、第1透光性基板上に、記録用レーザ光の照射により光学的に情報が記録し得る有機色素からなる第1記録層と、再生用レーザ光の一部を透過し得る半透光性反射膜で構成された第1反射層と、記録用レーザ光及び再生用レーザ光に対して透光性を有する中間層と、記録用レーザ光の照射により光学的に情報が記録し得る有機色素からなる第2記録層と、再生用レーザ光を反射する第2反射層と、第2透光性基板とを順に積層して構成される。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−066622号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、デュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rとして、上述のような構成を有する貼り合わせ型のもののほかに、第1基板上に第1色素含有記録層,半透明反射層を積層した後(これをデータ基板という)、例えば紫外線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂を塗布し、表面に凹凸を有するスタンパ(マスター基板)を固着した後、剥離することで凹凸を転写して中間層を形成し、その上に第2色素含有記録層,反射層,接着層,第2基板を積層させてなる積層型のものの開発が進められている。
【0010】
ここで、同様の方法により作製するものとして、例えば片面2層DVD−ROMがある。
例えば片面2層DVD−ROMを作製する場合には、凹凸を有する第1基板上に第1反射層を形成した後、紫外線硬化性樹脂を塗布し、塗布した紫外線硬化性樹脂層に、凹凸を有するスタンパ(マスター基板)を用いて凹凸を転写するとともに、スタンパの表面上に形成しておいた反射膜が紫外線硬化性樹脂層上に残るようにして、凹凸を転写された紫外線硬化性樹脂層上に第2反射層を形成するようにしている。
【0011】
このように、例えば片面2層DVD−ROMを作製する場合には、マスター基板を用いて凹凸を転写する際に、反射膜が残るようにするため、紫外線硬化性樹脂に対するマスター基板の剥離性を考慮する必要がない。このため、一般に、マスター基板としては、厚さ0.6mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)(ヤング率E:3.0×109N/m2)が用いられている。
【0012】
一方、マスター基板としては、扱い易さや繰返し使用等を考慮すると、例えば厚さの厚い(例えば1.2mm)ポリカーボネート製(ヤング率E:2.25×109N/m2)の基板やガラス/UV硬化樹脂(2P)(ヤング率E:9.31×109N/m2)からなる基板などを用いることが考えられる。
しかしながら、デュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rを作製する際に、マスター基板として、PMMA製の基板,厚さの厚いポリカーボネート製の基板,ガラス/UV硬化樹脂製の基板を用いると、マスター基板の剛性が高く、変形しにくいため、マスター基板を剥離する際に、第1基板(データ基板)が変形し、反りが生じてしまうことになる。
【0013】
この結果、作製された光記録媒体の記録・再生に影響を及ぼすことになり、良好な特性が得られないことになる。特に、DVDのようにデータを高密度に記録する光記録媒体の場合には、データ基板(光記録媒体)の反りをできるだけ小さく抑えることが重要になる。
特に、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、マスター基板を剥離した後に第2色素含有記録層を形成するために、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、比較的高温下に保持(いわゆるアニール)することが必要になるが、マスター基板を剥離させる際にデータ基板に反りが生じてしまった状態で、高温下に保持されると、反りがより大きくなってしまうことになる。
【0014】
このように、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、例えばDVD−ROMのような光記録媒体と比べて、反りを小さく抑えるのが難しく、良好な特性のディスクを作製することが難しい。このため、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、反りの制御、即ち、反りを小さく抑えることは特に重要である。本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、積層型のデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rを作製する際に、マスター基板をデータ基板から剥離しやすくし、データ基板が変形しにくくして、データ基板に生じる反りを小さく抑えることができるようにした、光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の光記録媒体の製造方法は、データ基板上に、直接又は他の層を介して樹脂を塗布し、凹凸を有するマスター基板を固着した後に剥離して、樹脂にマスター基板の凹凸を転写して樹脂層を形成する樹脂層形成工程を含む光記録媒体の製造方法であって、データ基板とマスター基板とが、データ基板のヤング率をEd、厚さをhdとし、マスター基板のヤング率をEm、厚さをhmとして、(Em×hm3)/(Ed×hd3)≦1.27の関係を満たすことを特徴としている(請求項1)。
【0016】
好ましくは、マスター基板及びデータ基板は樹脂からなるものとする(請求項2)。
また、樹脂層形成工程の後に、高温下に保持する工程を含むことが好ましい(請求項3)。
また、樹脂層形成工程の後に、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、高温下に保持して色素含有記録層を形成する工程を含むことが好ましい(請求項4)。
【0017】
本発明の光記録媒体用積層体の製造方法は、データ基板上に、直接又は他の層を介して樹脂を塗布し、凹凸を有するマスター基板を固着した後に剥離して、樹脂にマスター基板の凹凸を転写して樹脂層を形成して光記録媒体用積層体を製造する光記録媒体用積層体の製造方法であって、データ基板とマスター基板とが、データ基板のヤング率をEd、厚さをhdとし、マスター基板のヤング率をEm、厚さをhmとして、(Em×hm3)/(Ed×hd3)≦1.27の関係を満たすことを特徴としている(請求項5)。
【0018】
好ましくは、マスター基板及びデータ基板は樹脂からなるものとする(請求項6)。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光記録媒体(追記型光記録媒体)の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法について、図1,図2を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる光記録媒体は、複数の記録層を有し、片面側からレーザ光を照射することでそれぞれの記録層に情報の記録又は再生を行なうことができる片面入射型光記録媒体である。
【0020】
本実施形態では、積層型の片面入射型光記録媒体(片面入射型DVD−R)として、例えば2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−R(片面2層DVD−R,片面2層DVDレコーダブル・ディスク)を例に説明する。
(1)光記録媒体の構造
図1は、本実施形態にかかる光記録媒体(光ディスク)を示す模式的な断面図である。
【0021】
本実施形態にかかる光記録媒体は、図1に示すように、ディスク状の透明な(光透過性の)第1基板(第1光透過性基板)1上に、色素を含む第1記録層(第1色素含有記録層)2、半透明の反射層(以下、半透明反射層という)3、中間樹脂層(中間層)4、色素を含む第2記録層(第2色素含有記録層)5、反射層6、接着層7、第2基板8をこの順に有してなる。光ビームは第1基板1側から照射され、記録又は再生が行われる。
【0022】
なお、本実施形態において、透明である(光透過性がある)とは光記録媒体の記録又は再生に用いる光ビームに対して透明である(光透過性がある)ことを言う。また、透明である(光透過性がある)層としては、記録又は再生に用いる光ビームを多少吸収するものも含む。例えば、記録又は再生に用いる光ビームの波長について50%以上(好ましくは60%以上)の透過性があれば実質的に光透過性がある(透明である)ものとする。
【0023】
透明な第1基板1、中間樹脂層4上にはそれぞれ凹凸(ランド及びグルーブ)が形成され、凹部及び/又は凸部で記録トラックが構成される。
ここでは、透明な第1基板1上の記録トラック11は、光の入射方向に対して凸部で構成される。中間樹脂層4上の記録トラック12も、光の入射方向に対して凸部で構成される。なお、記録トラック11,12は、光の入射方向に対して凹部で構成しても良いし、光の入射方向に対して凹部及び凸部の双方で構成しても良いが、一般には、光の入射方向に対して凸部で構成するのが好ましい。特に断らない限り、本発明において凹凸は記録又は再生に用いる光の入射方向に対して定義される。
【0024】
これらの記録トラック11,12は、所定の振幅,所定の周波数で半径方向に僅かに蛇行させてある(これをウォブルという)。また、記録トラック11,12の間のランドにはある規則にしたがった孤立ピット(アドレスピット)が形成され(これをランドプリピット,LPP;Land Pre-Pitという)、このランドプリピットによってアドレス情報が予め記録されていても良い。なお、この他に必要に応じ凹凸ピット(プリピット)を有することもある。また、ウォブルの向きを反転させたり、周波数を変調したりして情報を記録することもできる。
【0025】
次に、各層について説明する。
(a)第1基板1について
第1基板1は、透明であるほか複屈折率が小さいなど光学特性に優れることが望ましい。また、射出成形が容易であるなど成形性に優れることが望ましい。さらに、吸湿性が小さいと反り等を低減できるため望ましい。
【0026】
更に、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。但し第2基板8が十分な形状安定性を備えていれば、第1基板1は形状安定性が大きくなくても良い。
このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるもの、ガラスからなるものを用いることができる。或いは、ガラス等の基体上に、光硬化樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設けたもの等も使用できる。なお、放射線とは、光(紫外線、可視光線、赤外線など)、電子線などの総称である。
【0027】
なお、光学特性、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からはポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、低吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
第1基板1は薄い方が好ましく、通常厚さは2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。対物レンズと記録層の距離が小さく、また基板が薄いほどコマ収差が小さくなる傾向があり、記録密度を上げやすいためである。但し、光学特性、吸湿性、成形性、形状安定性を十分得るためにはある程度の厚みが必要であり、通常10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上である。
【0028】
本光記録媒体においては、第1記録層2及び第2記録層5の両方に良好に記録又は再生を行なうために、対物レンズと両記録層との距離を適宜調節することが望ましい。例えば、対物レンズの焦点が両記録層のほぼ中間地点となるようにすると、両記録層にアクセスしやすく好ましい。
具体的に説明すると、片面型DVD−Rシステムにおいては、基板厚さ0.6mmのときに対物レンズと記録層との距離が最適になるよう調節されている。
【0029】
従って、本層構成において片面型DVD−R互換の場合は、第1基板1の厚さは、0.6mmから中間樹脂層4の膜厚の2分の1を減じた厚さであることが最も好ましい。このとき、両記録層のほぼ中間地点が約0.6mmとなり、両記録層にフォーカスサーボがかけやすい。
なお、第2記録層5と半透明反射層3の間にバッファー層や保護層など他の層がある場合は、0.6mmから、それらの層と中間樹脂層4の膜厚の和の2分の1を減じた厚さであることが最も好ましい。
【0030】
第1基板1には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第1記録層2に情報が記録又は再生される。波長650nmのレーザを開口数0.6から0.65の対物レンズで集光して記録又は再生が行なわれる、いわゆるDVD−Rディスクの場合、通常、第1記録層2は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。
【0031】
本光記録媒体においては第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200〜500nm程度であり、溝深さは110〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
【0032】
このような凹凸を有する基板は、コストの観点から、凹凸を持つスタンパから射出成形により製造するのが好ましい。ガラス等の基体上に光硬化樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設ける場合は、樹脂層に記録トラックなどの凹凸を形成してもよい。
(b)第1記録層2について
第1記録層2は、通常、片面型記録媒体(例えばCD−R,DVD−R,DVD+R)等に用いる記録層と同程度の感度である。
【0033】
また、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素を用いることが望ましい。
更に、第1記録層2と半透明反射層3との組合せにおいて、光の反射、透過及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。記録感度を高くし、かつ記録時の熱干渉を小さくできる。
【0034】
このような有機色素材料としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。
【0035】
上述の各種有機色素の中でも含金属アゾ系色素は、記録感度に優れ、かつ、耐久性,耐光性に優れるため好ましい。特に下記一般式(I)又は(II)
【0036】
【化1】
Figure 0003978402
【0037】
(環A1及びA2は、各々独立に置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、環B1及びB2は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族環である。Xは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されている炭素数1〜6のアルキル基である。)で表される化合物が好ましい。
本光記録媒体の記録層に使用される有機色素は、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザでの記録に適する色素化合物が好ましい。通常CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザ(代表的には780nm,830nmなど)や、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザ(代表的には635nm,650nm,680nmなど)、あるいは波長410nmや515nmなどのいわゆるブルーレーザなどでの記録に適する色素がより好ましい。
【0038】
色素は一種でもよいし、同じ種類のものや異なる種類のものを二種以上混合して用いても良い。さらに、上記複数の波長の記録光に対し、各々での記録に適する色素を併用して、複数の波長域でのレーザ光による記録に対応する光記録媒体とすることもできる。
また記録層は、記録層の安定や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、記録感度向上のために金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していても良い。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
【0039】
さらに本光記録媒体の記録層には、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0040】
記録層の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、十分な変調度を得るためには通常5nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。但し、本光記録媒体においては適度に光を透過させるためには厚すぎない必要があるため、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。記録層の膜厚は通常、溝部とランド部で異なるが、本光記録媒体において記録層の膜厚は基板の溝部における膜厚を言う。
【0041】
記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。また厚みの均一な記録層が得られるという点からは、塗布法より真空蒸着法の方が好ましい。
【0042】
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱あるいは溶媒蒸気にあてる等の処理を行っても良い。
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0043】
真空蒸着法の場合は、例えば有機色素と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより、記録層を形成する。
(c)半透明反射層3について
半透明反射層3は、ある程度の光透過率を持つ反射層である。つまり、記録再生光の吸収が小さく、光透過率が40%以上あり、かつ適度な光反射率(通常、30%以上)を持つ反射層である。例えば、反射率の高い金属を薄く設けることにより適度な透過率を持たせることができる。また、ある程度の耐食性があることが望ましい。更に、半透明反射層3の上層(ここでは中間樹脂層4)の浸み出しにより第1記録層2が影響されないよう遮断性を持つことが望ましい。
【0044】
高透過率を確保するために、半透明反射層3の厚さは通常、50nm以下が好適である。より好適には30nm以下である。更に好ましくは25nm以下である。但し、第1記録層2が半透明反射層3の上層により影響されないために、ある程度の厚さが必要であり、通常3nm以上とする。より好ましくは5nm以上とする。
【0045】
半透明反射層3の材料としては、再生光の波長で反射率が適度に高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及び希土類金属などの金属及び半金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く半透明反射層3の材料として適している。これらを主成分とする以外に他成分を含んでいても良い。
【0046】
なかでもAgを主成分としているものはコストが安い点、反射率が高い点から特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50%以上のものをいう。
半透明反射層3は膜厚が薄く、膜の結晶粒が大きいと再生ノイズの原因となるため、結晶粒が小さい材料を用いるのが好ましい。純銀は結晶粒が大きい傾向があるためAgは合金として用いるのが好ましい。
【0047】
中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
【0048】
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNdなどである。
【0049】
半透明反射層3としてはAuのみからなる層は結晶粒が小さく、耐食性に優れ好適である。ただし、Ag合金に比べて高価である。
また、半透明反射層3としてSiからなる層を用いることも可能である。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0050】
半透明反射層3を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、第1基板1と半透明反射層3との間に、例えば反射率の向上,記録特性の改善,密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層又は接着層を設けても良い。例えば、第1基板1上に、中間層(又は接着層),第1記録層2,中間層(又は接着層),半透明反射層3の順に積層させることで、第1基板1と第1記録層2との間に中間層(又は接着層)を設け、第1記録層2と半透明反射層3との間に中間層(又は接着層)を設けても良い。
(d)中間樹脂層4について
中間樹脂層(樹脂層)4は、透明である必要があるほか、凹凸により溝やピットが形成可能である必要がある。また接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと媒体の形状安定性が高く好ましい。
【0051】
そして、中間樹脂層4は、第2記録層5にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、中間樹脂層4は通常、樹脂からなるため第2記録層5と相溶しやすく、これを防ぎダメージを抑えるために両層の間に後述のバッファー層を設けることが望ましい。
さらに、中間樹脂層4は、半透明反射層3にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために両層の間に後述のバッファー層を設けることもできる。
【0052】
本光記録媒体において、中間樹脂層4の膜厚は正確に制御することが好ましい。中間樹脂層4の膜厚は、通常5μm以上が好ましい。2層の記録層に別々にフォーカスサーボをかけるためには両記録層の間にある程度の距離がある必要がある。フォーカスサーボ機構にもよるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上が必要である。一般に、対物レンズの開口数が高いほどその距離は小さくてよい傾向がある。但しあまり厚いと2層の記録層にフォーカスサーボを合わせるのに時間を要し、また対物レンズの移動距離も長くなるため好ましくない。また硬化に時間を要し生産性が低下するなどの問題があるため、通常、100μm以下が好ましい。
【0053】
中間樹脂層4には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層5に情報が記録又は再生される。通常、第2記録層5は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。本光記録媒体においては中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200〜500nm程度であり、溝深さは10〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
【0054】
このような凹凸は、コストの観点から、凹凸を持つ樹脂スタンパ等から光硬化性樹脂などの硬化性樹脂に転写、硬化させて製造するのが好ましい。以下、このような方法を2P法(Photo Polymerization法)と称することがある。
中間樹脂層4の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)などの放射線硬化性樹脂等を挙げることができる。なお、放射線とは、光(紫外線、可視光線、赤外線など)、電子線などの総称である。
【0055】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布し、乾燥(加熱)することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外光を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂には様々な種類があり、透明であればいずれも用いうる。またそれらの材料を単独であるいは混合して用いても良いし、1層だけではなく多層膜にして用いても良い。
【0056】
塗布方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。或いは、粘度の高い樹脂はスクリーン印刷等によっても塗布形成できる。紫外線硬化性樹脂は、生産性を20〜40℃において液状であるものを用いると、溶媒を用いることなく塗布でき好ましい。また、粘度は20〜1000mPa・sとなるように調製するのが好ましい。
【0057】
さて、紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂があるが、いずれも使用可能である。
ラジカル系紫外線硬化性樹脂としては、公知の全ての組成物を用いることができ、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。紫外線硬化性化合物としては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることができる。ここで、本発明では、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0058】
本光記録媒体に使用できる重合性モノマーとしては例えば以下のものが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル,カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル,ジシクロペンタニル,ジシクロペンテニル,ジシクロペンテニロキシエチル等の如き基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
また、重合性モノマーと同時に併用できるものとしては、重合性オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
更に、本光記録媒体に使用する光重合開始剤は、用いる重合性オリゴマーおよび/または重合性モノマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できる公知のものがいずれも使用できる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本光記録媒体に好適である。
【0061】
このような例としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
【0062】
また光重合開始剤に対する増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0063】
また、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては公知のすべての組成物を用いることができ、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂がこれに該当する。カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩およびジアゾニウム塩等がある。
ヨードニウム塩の一例を示すと以下の通りである。ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェード、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、などが挙げられる。
【0064】
エポキシ樹脂は、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等種々のものがいずれであってもかまわない。
エポキシ樹脂としては、反射層にダメージを与えないよう、遊離したフリーの塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量が1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0065】
カチオン型紫外線硬化性樹脂100重量部当たりのカチオン重合型光開始剤の割合は通常、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部である。なお、紫外線光源の波長域の近紫外領域や可視領域の波長をより有効に利用するため、公知の光増感剤を併用することができる。この際の光増感剤としては、例えばアントラセン、フェノチアジン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0066】
また、紫外線硬化性樹脂には、必要に応じてさらにその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
(e)第2記録層5について
第2記録層5は、通常、片面型記録媒体(例えばCD−R,DVD−R,DVD+R)等に用いる記録層よりも高感度である。本光記録媒体においては、入射した光ビームのパワーが第1記録層2や半透明反射層3の存在等で減少するため、約半分程度のパワーで記録するために、特に感度が高い必要があるのである。
【0067】
また、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素を用いることが望ましい。
更に、第2記録層5と反射層6との組合せにおいて、光の反射及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。記録感度を高くし、かつ記録時の熱干渉を小さくできる。
【0068】
第2記録層5の材料、成膜方法等についてはほぼ第1記録層2と同様に説明されるため、異なる点のみ説明する。
第2記録層5の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、十分な変調度を得るためには通常10nm以上が好ましく、より好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは50nm以上である。但し、適度な反射率を得るためには厚すぎない必要があるため、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0069】
第1記録層2と第2記録層5とに用いる材料は同じでも良いし異なっていてもよい。
(f)反射層6について
反射層6は、高反射率である必要がある。また、高耐久性であることが望ましい。
【0070】
高反射率を確保するために、反射層6の厚さは通常、20nm以上が好適である。より好適には30nm以上である。更に好ましくは50nm以上である。但し、生産のタクトタイムを短くし、コストを下げるためにはある程度薄いことが好ましく、通常400nm以下とする。より好ましくは300nm以下とする。反射層6の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta及びPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層6の材料として適している。これらを主成分とする以外に他成分として下記のものを含んでいても良い。他成分の例としては、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及び希土類金属などの金属及び半金属を挙げることができる。
【0071】
中でもAgを主成分としているものはコストが安い点、高反射率が出やすい点、更に後で述べる印刷受容層を設ける場合には地色が白く美しいものが得られる点等から特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50%以上のものをいう。
反射層6は高耐久性(高耐食性)を確保するため、Agは純銀よりも合金として用いるのが好ましい。
【0072】
中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
【0073】
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNdなどである。
【0074】
反射層6としてはAuのみからなる層は高耐久性(高耐食性)が高く好適である。ただし、Ag合金に比べて高価である。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層6として用いることも可能である。
反射層6を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、反射層6の上下に、例えば反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層又は接着層を設けても良い。
(g)接着層7について
接着層7は、透明である必要はないが、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと媒体の形状安定性が高く好ましい。
【0075】
また、接着層7は反射層6にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために両層の間に公知の無機系または有機系の保護層を設けることもできる。
本光記録媒体において、接着層7の膜厚は、通常2μm以上が好ましい。所定の接着力を得るためにはある程度の膜厚が必要である。より好ましくは5μm以上である。但し光記録媒体をできるだけ薄くするために、また硬化に時間を要し生産性が低下するなどの問題があるため、通常、100μm以下が好ましい。
【0076】
接着層7の材料は、中間樹脂層4の材料と同様のものが用いうるほか、感圧式両面テープ等も使用可能である。感圧式両面テープを反射層6と第2基板8との間に挟んで押圧することにより、接着層7を形成できる。
(h)第2基板8について
第2基板8は、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。即ち機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。また接着層7との接着性が高いことが望ましい。
【0077】
上述のように第1基板1が十分な形状安定性を備えていない場合は、第2基板8は特に形状安定性が高い必要がある。この点で吸湿性が小さいことが望ましい。但し第2基板8は透明である必要はない。また第2基板8は鏡面基板で良く、凹凸を形成する必要はないので射出成形による転写性は必ずしも良い必要はない。
【0078】
このような材料としては、第1基板1に用いうる材料と同じものが用い得るほか、例えば、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、シリコン、チタン、セラミックスのいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板などを用いることができる。
【0079】
なお、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からはポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、低吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
光記録媒体に十分な剛性を持たせるために、第2基板8はある程度厚いことが好ましく、厚さは0.3mm以上が好ましい。但し薄いほうが記録再生装置の薄型化に有利であり、好ましくは3mm以下である。より好ましくは1.5mm以下である。
【0080】
第2基板8は凹凸を持たない鏡面基板で良いが、生産しやすさの観点から、射出成型により製造するのが望ましい。
第1基板1と第2基板8の好ましい組合せの一例は、第1基板1と第2基板8とが同一材料からなり、厚さも同一である。剛性が同等でバランスが取れているので、環境変化に対しても媒体として変形しにくく好ましい。この場合、環境が変化したときの変形の程度や方向も両基板で同様であると好ましい。
【0081】
他の好ましい組合せの一例は、第1基板1が0.1mm程度と薄く、第2基板8が1.1mm程度と厚いものである。対物レンズが記録層に近づきやすく記録密度を上げやすいため好ましい。このとき第1基板1はシート状であってもよい。
(i)その他の層について
上記積層構造において、必要に応じて任意の他の層を挟んでも良い。或いは媒体の最外面に任意の他の層を設けても良い。具体的には、半透明反射層3と中間樹脂層4との間、中間樹脂層4と第2記録層5との間、反射層6と接着層7との間、などに中間層としてのバッファー層を設けてもよい。
【0082】
バッファー層は2つの層の混和を防止し、相溶を防ぐものである。バッファー層が混和現象を防止する以外の他の機能を兼ねていても良い。また必要に応じてさらに他の中間層を挟んでも良い。
バッファー層の材料は、第2記録層5や中間樹脂層4と相溶せず、かつ、ある程度の光透過性をもつ必要があるが、公知の無機物及び有機物が用いうる。特性面からは、好ましくは無機物が用いられる。例えば、(1)金属又は半導体、(2)金属又は半導体の酸化物、窒化物、硫化物、酸硫化物、フッ化物又は炭化物、もしくは(3)非晶質カーボン、などが用いられる。中でも、ほぼ透明な誘電体からなる層や、ごく薄い金属層(合金を含む)が好ましい。
【0083】
具体的には、酸化珪素、特に二酸化珪素や、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム等の酸化物;硫化亜鉛、硫化イットリウムなどの硫化物;窒化珪素などの窒化物;炭化珪素;酸化物とイオウとの混合物(酸硫化物);および後述の合金などが好適である。また、酸化珪素と硫化亜鉛との30:70〜90:10程度(重量比)の混合物も好適である。また、イオウと二酸化イットリウムと酸化亜鉛との混合物(Y22S−ZnO)も好適である。
【0084】
金属や合金としては、銀、又は銀を主成分とし更にチタン、亜鉛、銅、パラジウム、及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有するものが好適である。また、銀を主成分とし、少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものも好適である。この希土類としては、ネオジウム、プラセオジウム、セリウム等が好適である。
【0085】
その他、バッファー層作製時に記録層の色素を溶解しないようなものであれば樹脂層でも構わない。特に、真空蒸着やCVD法で作製可能な高分子膜が有用である。
バッファー層の厚さは2nm以上が好ましく、より好ましくは5nm以上である。バッファー層の厚さが過度に薄いと、上記の混和現象の防止が不十分となる虞がある。但し2000nm以下が好ましく、より好ましくは500nm以下である。バッファー層が過度に厚いと、混和防止には不必要であるばかりでなく、光の透過率を低下させるおそれもある。また無機物からなる層の場合には成膜に時間を要し生産性が低下したり、膜応力が高くなったりする虞があり200nm以下が好ましい。特に、金属の場合は光の透過率を過度に低下させるため、20nm以下程度が好ましい。
【0086】
また、記録層や反射層を保護するために保護層を設けても良い。保護層の材料としては、記録層や反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等が挙げられる。
【0087】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布、乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いても良いし、1層だけではなく多層膜にして用いても良い。
【0088】
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲であるが、本光記録媒体においては、3〜50μmが好ましい。
【0089】
更に、上記光記録媒体には、必要に応じて、記録光又は再生光の入射面ではない面に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具にて記入(印刷)が可能な印刷受容層を設けてもよい。
或いは、本層構成の光記録媒体を2枚、第1基板1を外側にして貼合わせて、記録層を4層有する、より大容量媒体とすることもできる。
【0090】
また、本層構成の応用例として、記録層を3層以上有する媒体とすることも可能である。
(2)光記録媒体の製造方法(光記録媒体用積層体の製造方法を含む)
次に、本実施形態にかかる光記録媒体の製造方法について、図2を参照しながら説明する。
【0091】
まず、図2(a)に示すように、表面に凹凸で溝及びランド,プリピットが形成された透明な第1基板1(第1光透過性基板)を、スタンパをもとに射出成形又は2P法等により作製する。
次に、図2(b)に示すように、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させた後、第1基板1の凹凸を有する側の表面にスピンコート等により塗布して、第1記録層2(第1色素含有記録層,色素記録層)を成膜する。
【0092】
なお、有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、溶媒を除去するために高温下[例えば60℃以上(好ましくは70℃以上)の温度とし、例えば110℃以下(好ましくは100℃以下)の温度とする]に所定時間[例えば5分以上(好ましくは10分以上)とし、例えば30分以下(好ましくは20分以下)とする]だけ保持される(アニール処理)。これは、低温・短時間であると、第1記録層2の感度やパワーマージンが悪くなるからである。一方、高温・長時間であると、第1基板1の反りが増大し、第1記録層2の色素が劣化してしまうからである。
【0093】
また、赤外線や遠赤外線を短時間(例えば5秒間〜5分間)照射することにより、ディスクの表面温度を高温[例えば60℃以上(好ましくは70℃以上)の温度とし、例えば110℃以下(好ましくは100℃以下)の温度とする]にすることによっても、アニール処理は可能である。
次いで、図2(c)に示すように、例えばAg合金などをスパッタ又は蒸着することにより、第1記録層2上に半透明反射層3を成膜する。
【0094】
このように第1基板1上に第1記録層2,半透明反射層3を順に積層することによって作製されたものをデータ基板13という。ここではデータ基板は透明である。
そして、図2(d)に示すように、データ基板13の表面全体に例えば紫外線硬化性樹脂(放射線硬化性樹脂)等の樹脂を例えばスピンコート等により塗布する。なお、ここでは、データ基板13上に直接樹脂を塗布しているが、これに限られるものではなく、例えばデータ基板13上に他の層を介して樹脂を塗布しても良い。
【0095】
次に、表面に凹凸を有する型(スタンパ)を用いて、データ基板13上に塗布された例えば紫外線硬化性樹脂等の樹脂の表面に凹凸を形成する。型としては、生産性、コストなどの観点から、図2(e)に示すように、樹脂からなるスタンパ(樹脂スタンパ,マスター基板)15を用いるのが好ましい。
ここでは、樹脂スタンパ15は、図2(e)に示すように、表面に凹凸を有する樹脂基板16上に1層以上のセパレート層(剥離層)17を有するものとして構成している。なお、樹脂スタンパ15は、表面に凹凸を有する樹脂基板16のみからなるものとして構成しても良く、この方が生産性やコストの観点から好ましい。
【0096】
ここで、樹脂基板16は、逆(ネガ)の凹凸パターンを有する金属製スタンパ(例えばニッケル製スタンパ)を用いて、例えば射出成形や2P法等により作製すれば良い。
また、樹脂基板16は透明である必要はないが、成形性が良く、形状安定性が良いことが望ましい。このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0097】
例えば、樹脂スタンパ15が樹脂基板16上に1層以上のセパレート層17を有するものとして構成される場合、樹脂基板16は、セパレート層17との密着性が高い樹脂である必要があり、また、成形性などの高生産性,コスト,低吸湿性,形状安定性などの点を考慮すると、ポリカーボネート樹脂からなるものとするのが好ましい。
【0098】
また、樹脂基板16の厚さは、形状安定性及びハンドリングの容易さの点で、0.5mm以上とするのが望ましい。厚さの上限は特にないが、通常、3mm以下で十分である。
なお、樹脂スタンパ15は、中間樹脂層4となるべき樹脂に対して十分な剥離性を有していれば良い。また、透明である必要はないが、成形性が良く、形状安定性が良いことが望ましい。生産性及びコストの観点から、樹脂スタンパ15は複数回の転写に使用可能であるのが望ましい。また、使用後のリサイクルが可能であることが望ましい。
【0099】
例えば、樹脂スタンパ15が樹脂基板16上に1層以上のセパレート層17を有するものとして構成される場合、セパレート層17は中間樹脂層4を構成する樹脂との密着性が低く、剥離性が高いものとすれば良い。また、セパレート層17は、成膜されたときに樹脂基板16の凹凸を忠実に反映した凹凸が形成されるものとするのが望ましい。
【0100】
セパレート層17の材料としては、中間樹脂層4の樹脂との剥離性の点から、金属又は合金が好ましく、例えばNi,Ag,Au,Cu,Pt及びPdから選ばれる金属又はこれらの合金を用いるのが好ましい。
セパレート層17の厚さは、中間樹脂層4からの剥離性を確保するためにはある程度の膜厚が必要で、2nm以上とするのが好ましい。一方、基板の凹凸を忠実に反映するためには厚すぎないことが望ましく、通常、200nm以下が好ましい。
【0101】
一方、樹脂スタンパ15が樹脂基板16のみからなるものとして構成される場合、樹脂基板16は、中間樹脂層4を構成する樹脂との密着性が低く、剥離性が高いものとする必要があり、また、成形性などの高生産性,コスト,低吸湿性,形状安定性などの点を考慮すると、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
例えば、データ基板13上に塗布された紫外線硬化性樹脂上に樹脂スタンパ15を載置し、この状態で第1基板1側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、十分に硬化したところで樹脂スタンパ15を剥離することで、図2(f)に示すように、紫外線硬化性樹脂の表面に凹凸を転写する。
【0102】
なお、樹脂スタンパ15の載置は、紫外線硬化性樹脂の膜厚が所定範囲になるように調節しつつ行なわれる。また、ここでは第1基板1側から紫外線を照射しているが、これに限られるものではなく、例えば紫外線硬化性樹脂の側面から照射することもできる。但し、紫外線の照射により第1記録層1がダメージを受けないようにする必要がある。
【0103】
このようにして、例えば紫外線硬化性樹脂等の樹脂の表面に凹凸を転写することで、表面に凹凸を有する例えば紫外線硬化樹脂層(放射線硬化樹脂層)等の樹脂層(中間樹脂層)4が形成される。
なお、データ基板13上に凹凸を有する中間樹脂層4を積層したものを光記録媒体用積層体14という。このため、上述の図2(a)〜(f)を参照しながら説明した各工程を経て光記録媒体用積層体が製造されることになるため、これらの工程を光記録媒体用積層体の製造方法という。
【0104】
続いて、図2(g)に示すように、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させた後、中間樹脂層4の凹凸を有する側の表面に例えばスピンコート等により塗布し、第2記録層(第2色素含有記録層,色素記録層)5を成膜する。
なお、有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、溶媒を除去するために高温下[例えば60℃以上(好ましくは70℃以上)の温度とし、例えば110℃以下(好ましくは100℃以下)の温度とする]に所定時間[例えば5分以上(好ましくは10分以上)とし、例えば30分以下(好ましくは20分以下)とする]だけ保持される(アニール処理)。これは、低温・短時間であると、第2記録層5の感度やパワーマージンが悪くなるからである。一方、高温・長時間であると、データ基板13の反りが増大し、第1記録層2の色素が劣化してしまうからである。
【0105】
また、赤外線や遠赤外線を短時間(例えば5秒間〜5分間)照射することにより、ディスクの表面温度を高温[例えば60℃以上(好ましくは70℃以上)の温度とし、例えば110℃以下(好ましくは100℃以下)の温度とする]にすることによっても、アニール処理は可能である。
そして、図2(h)に示すように、例えばAg合金などを例えばスパッタ又は蒸着することにより第2記録層5上に反射層6を成膜する。
【0106】
その後、図2(i)に示すように、例えばポリカーボネートを射出成形して得られた第2基板8としての鏡面基板を、接着層7を介して反射層6に貼り合わせる。つまり、上述のようにして光記録媒体用積層体14上に順に第2記録層5,反射層6を積層させたものに、接着層7を介して第2基板8を貼り合わせることで、光記録媒体が製造される。
【0107】
なお、接着層7は、不透明でも、表面が多少粗くてもよく、遅延硬化型の接着剤を問題なく使用できる。反射層6上に例えばスクリーン印刷等の方法で接着剤を塗布し、紫外線を照射してから第2基板8を載置し、押圧して、接着層7を形成できる。或いは、反射層6と第2基板8との間に感圧式両面テープを挟んで押圧することにより、接着層7を形成することもできる。
【0108】
また、光記録媒体の製造方法は、上述のものに限られず、他の製造方法であっても良い。
ところで、上述のように、例えば紫外線硬化性樹脂(放射線硬化性樹脂)等の樹脂によってデータ基板13と凹凸を有するマスター基板(樹脂スタンパ)15とを固着した後、マスター基板15をデータ基板13から剥離して、データ基板13にマスター基板15の凹凸を転写して光記録媒体用積層体14を作製する場合、マスター基板15の剛性が高くて変形しにくいと、マスター基板15をデータ基板13から剥離する際に、データ基板13が変形し、反りが生じてしまうことになる。
【0109】
この結果、作製された光記録媒体の記録・再生に影響を及ぼすことになり、良好な特性が得られないことになる。特に、DVDのようにデータを高密度に記録する光記録媒体の場合には、光記録媒体の反りをできるだけ小さく抑えることが重要になる。
また、上述のように、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、マスター基板15を剥離した後に第2色素含有記録層5を形成するために、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、比較的高温下に保持(いわゆるアニール)することが必要になるが、マスター基板15を剥離させる際にデータ基板13に反りが生じてしまった状態で、高温下に保持されると、反りがより大きくなってしまうことになる。
【0110】
このように、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、例えばDVD−ROMのような光記録媒体と比べて、反りを小さく抑えるのが難しく、良好な特性のディスク(光記録媒体)を作製することが難しい。このため、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、反りの制御、即ち、反りを小さく抑えることは特に重要である。
【0111】
また、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、マスター基板15を剥離した後に第2色素含有記録層5を形成するために、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを例えばスピンコート等によって塗布することになるが、マスター基板15を剥離させる際にデータ基板13に反りが生じてしまっていると、有機色素を溶媒に溶解させたものを均一に塗布するのが難しくなる。この結果、作製された光記録媒体の記録・再生に影響を及ぼすことになり、良好な特性が得られないことになる。
【0112】
これらの課題を解決するために、本発明者らは、マスター基板(2P用マスター基板)15の剛性をデータ基板13の剛性よりも小さくしておくことを考え出した。
ここで、k:比例定数,P:基板に働く力,E:ヤング率,h:基板の厚さとすると、基板の撓みwは、下記式で表すことができる。
【0113】
w=k×P/(E×h3
これによれば、基板の変形しやすさはE×h3で規定できることになる。つまり、E×h3が大きいほど変形しにくく、E×h3が小さいほど変形しやすいことになる。
このため、データ基板13のヤング率をEd、マスター基板15のヤング率をEm、データ基板13の厚さをhd、マスター基板15の厚さをhmとした場合に、マスター基板15のEm×hm3とデータ基板13のEd×hd3の比[(Em×hm3)/(Ed×hd3)]が大きいと、マスター基板15が変形せず、逆にデータ基板13が変形してしまい、データ基板13に反りや歪が生じてしまうことになる。
【0114】
したがって、反りの小さい良好な特性のディスク(光記録媒体)を得るためには、マスター基板15のEm×hm3とデータ基板13のEd×hd3の比[(Em×hm3)/(Ed×hd3)]を小さくすれば良いことになる。
そこで、本実施形態では、データ基板13とマスター基板15とが所定の関係を満たすようにしている。つまり、本実施形態では、データ基板13とマスター基板15とが、データ基板13のヤング率をEd、マスター基板15のヤング率をEm、データ基板13の厚さをhd、マスター基板15の厚さをhmとして、下記式で表される関係を満たすようにしている。実際には、下記式で表される関係を満たすようにマスター基板15の材料の選択や厚さの設定を行なうことになる。
(Em×hm3)/(Ed×hd3)≦1.27
このように、本実施形態では、マスター基板15のEm×hm3とデータ基板13のEd×hd3の比(E×h3比)が1.27以下になるようにしているが、より好ましくは1.15以下になるようにする。
【0115】
一方、E×h3比の下限値は0.001以上とするのが好ましく、より好ましくは0.01以上とし、さらに好ましくは0.10以上とする。これは、あまり小さいと取り扱いに支障をきたすことになるからであり、また、ある程度大きい方が、マスター基板15も大きく反らなくなるので、繰り返し使用が可能となり好ましい。
【0116】
なお、本実施形態の片面2層DVD−Rの構成は、色素含有記録層以外は一般的な片面2層DVD−ROMの構成と同様であるが、片面2層DVD−ROMを作製する場合には、一般にスタンパ(マスター基板)の材料としてはポリメチルメタクリレート(PMMA)(表面に反射膜が形成されたもの)が用いられている。PMMAのヤング率は3.0×109であり、一般に厚さが0.6mmのものが用いられるため、E×h3比は1.304となる。
【0117】
また、マスター基板15のヤング率は、1.00×109以上とするのが好ましい。一方、マスター基板15のヤング率は、5.00×109以下とするのが好ましい。
また、データ基板13のヤング率は、1.00×109以上とするのが好ましい。一方、データ基板13のヤング率は、5.00×109以下とするのが好ましい。
【0118】
さらに、マスター基板15の厚さは、0.3mm以上とするのが好ましい。一方、マスター基板15の厚さは、0.9mm以下とするのが好ましい。
また、データ基板13の厚さは、0.3mm以上とするのが好ましい。一方、データ基板13の厚さは、2.0mm以下とするのが好ましい。
このような関係を満たすようにするためには、マスター基板15及びデータ基板13の双方を樹脂からなるものとする。
【0119】
好ましくは、マスター基板15は、ポリカーボネート,非晶質ポリオレフィン[例えば日本合成ゴム社製のアートン(登録商標),日本ゼオン社製のZEONEX(登録商標),ZEONOR(登録商標)など]からなるものとする。
また、マスター基板15をセパレート層(剥離層)17を含むものとして構成する場合、セパレート層17としては、例えばAg,Niなどの金属層を設けるのが好ましい。
【0120】
したがって、本実施形態にかかる光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法によれば、片面2層DVD−Rの製造工程において、マスター基板15をデータ基板13から剥離する際に、マスター基板15が変形しやすくなるため、マスター基板15をデータ基板13から剥離しやすくすることができ、また、データ基板13が変形しにくくなり、反りを小さく抑えることができるという利点がある。
【0121】
これにより、DVDのようにデータを高密度に記録する光記録媒体において、良好な特性のディスク(光記録媒体)を作製できることになる。
また、マスター基板15を剥離させる際にデータ基板13に反りが生じるのを抑えることができるため、片面2層DVD−Rを製造する際に、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、比較的高温下に保持(いわゆるアニール)したとしても、データ基板13の反りがより大きくなってしまうことがない。このため、本発明は特に色素含有記録層を有する光記録媒体に適用すると効果が大きい。
【0122】
また、片面2層DVD−Rのような光記録媒体では、マスター基板15を剥離した後に第2色素含有記録層5を形成するために、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを例えばスピンコート等によって塗布することになるが、マスター基板15を剥離させる際にデータ基板13に反りが生じるのを抑えることができるため、有機色素を溶媒に溶解させたものを均一に塗布することができるようになり、この結果、良好な特性の光記録媒体を作製できることになる。
【0123】
なお、本実施形態では、積層型のデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rに本発明を適用した例を説明したが、これに限られるものではなく、データ基板上に、直接又は他の層を介して樹脂を塗布し、凹凸を有するマスター基板を固着した後に剥離して、樹脂にマスター基板の凹凸を転写して樹脂層を形成する樹脂層形成工程を含む製造方法によって製造される光記録媒体又は光記録媒体用積層体であれば、他の構成の光記録媒体であっても本発明を適用することができる。
【0124】
例えば、記録層を1層しか有しない光記録媒体に適用することもできる。また、記録層を3層以上有し、中間樹脂層を2層以上有する光記録媒体に適用することもできる。この場合、2層以上有する中間樹脂層のそれぞれを形成するのに本発明を適用することができる。さらに、上述の実施形態ではいわゆる基板面入射型の光記録媒体に本発明を適用する場合について説明したが、いわゆる膜面入射型の光記録媒体に本発明を適用することもできる。
【0125】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、異なる材質で、様々な板厚を持つ基板をマスター基板として用いて剥離テストを行なった。この結果は下記表1に示すようになった。
【0126】
ここでは、全ての実施例及び比較例において、データ基板として、内径15mm、外形120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製の基板を用いた。ここで、データ基板のヤング率Eは2.25×109N/m2である。
なお、表1では、それぞれの実施例,比較例毎に、マスター基板の材質,マスター基板上に設けられる剥離層,UV硬化性樹脂,マスター基板の厚さh(mm),マスター基板のヤング率E(N/m2),マスター基板のE×h3とデータ基板のE×h3の比(E×h3比),剥離試験結果を示してある。
【0127】
また、反り量は、データ基板をマスター基板又はマスター基板+ニッケル薄膜から剥離した後、100℃で30分間ベーキングし、データ基板の端面を接地して他方の端面の接地面からの浮上量を測定して得た。
【0128】
【表1】
Figure 0003978402
【0129】
(実施例1)
実施例1では、内径15mm、外形120mm、厚さ0.60mmのポリカーボネート製のマスター基板を用いた。表1に示すように、ポリカーボネート製のマスター基板のヤング率Eは2.25×109N/m2であり、基板の厚さが0.60mmであるから、E×h3の比は1.00である。
【0130】
ここでは、UV硬化性樹脂の剥離性を考慮してマスター基板上に剥離層を設けるべく、マスター基板上にニッケルをスパッタして厚さ10nmのニッケル薄膜を形成した。
そして、マスター基板の内周側にスリーボンド社製UV硬化性樹脂30Y266Eを2g滴下した後、同じ大きさのデータ基板を載せて、4000rpmで3秒間回転させ、振りきった。これに強度350mJ/cm2のUV光を4秒間照射してUV硬化性樹脂を硬化させ、2枚の基板を固着した。UV硬化樹脂の厚さは30μmであった。
【0131】
このようにしてマスター基板とデータ基板とを貼り合わせてなるディスクの内周側から(外周側からでも良い)マスター基板とデータ基板との間にカッターを挿入して、データ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板とマスター基板+ニッケル薄膜とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
【0132】
また、データ基板の反り量を測定したところ、2mmであった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(実施例2)
実施例2では、マスター基板として厚さ0.10mmのポリカーボネート製の基板(ポリカーボネート製シート)を用いた。表1に示すように、ポリカーボネート製のマスター基板のヤング率Eは2.25×109N/m2であり、基板の厚さが0.10mmであるから、E×h3の比は0.005である。
【0133】
そして、実施例1と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板と、マスター基板+ニッケル薄膜とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
また、データ基板の反り量を測定したところ、1mmよりも小さかった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(比較例1)
比較例1では、マスター基板として厚さ1.20mmのポリカーボネート製の基板を用いた。表1に示すように、ポリカーボネート製のマスター基板のヤング率Eは2.25×109N/m2であり、基板の厚さが1.20mmであるから、E×h3の比は8.00である。
【0134】
そして、実施例1と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、マスター基板が思うように変形せず、データ基板とマスター基板とを剥離させることはできなかった。むりやり剥離させようとしたところ、データ基板が割れてしまった。このため、表1では剥離試験結果を「NG」としている。また、データ基板の反り量は測定できなかった。
(比較例2)
比較例2では、マスター基板として厚さ1.10mmのポリカーボネート製の基板を用いた。表1に示すように、ポリカーボネート製のマスター基板のヤング率Eは2.25×109N/m2であり、基板の厚さが1.10mmであるから、E×h3の比は6.16である。
【0135】
そして、実施例1と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、マスター基板が思うように変形せず、データ基板とマスター基板とを剥離させることはできなかった。むりやり剥離させようとしたところ、データ基板が割れてしまった。このため、表1では剥離試験結果を「NG」としている。また、データ基板の反り量は測定できなかった。
(実施例3)
実施例3では、内径15mm、外形120mm、厚さ0.60mmの日本合成ゴム社製のアートンから成るマスター基板を用いた。表1に示すように、アートン製のマスター基板のヤング率Eは2.84×109N/m2であり、基板の厚さが0.60mmであるから、E×h3の比は1.261である。なお、アートンはUV硬化性樹脂に対して剥離性が良いため、剥離層は設けなかった。
【0136】
そして、マスター基板の内周側に大日本インク社製UV硬化性樹脂SD394を2g滴下した後、同じ大きさのデータ基板を載せて、3500rpmで3秒間回転させ、振りきった。これに強度350mJ/cm2のUV光を4秒間照射してUV硬化性樹脂を硬化させ、2枚の基板を固着した。UV硬化樹脂の厚さは15μmであった。
【0137】
このようにしてマスター基板とデータ基板とを貼り合わせてなるディスクの内周側から(外周側からでも良い)マスター基板とデータ基板との間にカッターを挿入して、データ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板とマスター基板+ニッケル薄膜とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
【0138】
また、データ基板の反り量を測定したところ、1mmよりも小さかった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(比較例3)
比較例3では、マスター基板として厚さ1.20mmのアートン製の基板を用いた。表1に示すように、アートン製のマスター基板のヤング率Eは2.84×109N/m2であり、基板の厚さが1.20mmであるから、E×h3の比は10.09である。
【0139】
そして、実施例3と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、マスター基板が思うように変形せず、データ基板とマスター基板とを剥離させることはできなかった。むりやり剥離させようとしたところ、データ基板が割れてしまった。このため、表1では剥離試験結果を「NG」としている。また、データ基板の反り量は測定できなかった。
(実施例4)
実施例4では、内径15mm、外形120mm、厚さ0.59mmの日本ゼオン社製のゼオノア1060Rから成るマスター基板を用いた。表1に示すように、ゼオノア製のマスター基板のヤング率Eは2.35×109N/m2であり、基板の厚さが0.59mmであるから、E×h3の比は0.99である。なお、ゼオノアはUV硬化性樹脂に対して剥離性が良いため、剥離層は設けなかった。
【0140】
そして、マスター基板の内周側に大日本インク社製UV硬化性樹脂SD394を2g滴下した後、同じ大きさのデータ基板を載せて、3500rpmで3秒間回転させ、振りきった。これに強度350mJ/cm2のUV光を4秒間照射してUV硬化性樹脂を硬化させ、2枚の基板を固着した。UV硬化樹脂の厚さは15μmであった。
【0141】
このようにしてマスター基板とデータ基板とを貼り合わせてなるディスクの内周側から(外周側からでも良い)マスター基板とデータ基板との間にカッターを挿入して、データ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板とマスター基板とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
【0142】
また、データ基板の反り量を測定したところ、1mmよりも小さかった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(実施例5)
実施例5では、マスター基板として厚さ0.60mmのゼオノア製の基板を用いた。表1に示すように、ゼオノア製のマスター基板のヤング率Eは2.35×109N/m2であり、基板の厚さが0.60mmであるから、E×h3の比は1.04である。
【0143】
そして、実施例4と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板とマスター基板とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
また、データ基板の反り量を測定したところ、1mmよりも小さかった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(実施例6)
実施例6では、マスター基板として厚さ0.62mmのゼオノア製の基板を用いた。表1に示すように、ゼオノア製のマスター基板のヤング率Eは2.35×109N/m2であり、基板の厚さが0.62mmであるから、E×h3の比は1.15である。
【0144】
そして、実施例4と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、データ基板とマスター基板とは容易に剥離させることができた。このため、表1では剥離試験結果を「OK」としている。
また、データ基板の反り量を測定したところ、1mmよりも小さかった(表1参照)。このようにデータ基板の反り量は十分に小さく、反りの小さい良好なデータ基板を得ることができた。
(比較例4)
比較例4では、マスター基板として厚さ1.20mmのゼオノア製の基板を用いた。表1に示すように、ゼオノア製のマスター基板のヤング率Eは2.35×109N/m2であり、基板の厚さが1.20mmであるから、E×h3の比は8.35である。
【0145】
そして、実施例4と同様に、マスター基板とデータ基板とを貼り合わせてディスクを作製し、同様の方法でデータ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、マスター基板が思うように変形せず、データ基板とマスター基板とを剥離させることはできなかった。むりやり剥離させようとしたところ、データ基板が割れてしまった。このため、表1では剥離試験結果を「NG」としている。また、データ基板の反り量は測定できなかった。
(比較例5)
比較例5では、内径15mm、外形120mm、厚さ0.6mmのガラス/UV硬化樹脂層(2P)からなるマスター基板を用いた。表1に示すように、ガラス/UV硬化樹脂層製のマスター基板のヤング率Eは9.31×109N/m2であり、基板の厚さが0.6mmであるから、E×h3の比は4.13である。なお、ガラスは0.6mm、2Pは数10μmであり、2Pのヤング率は不明であるが、2Pの厚さはガラスよりも薄く、ヤング率もガラスよりも小さいので、2PのE×h3(剛性成分)は無視できるものとしてE×h3の比を求めた。
【0146】
ここでは、UV硬化性樹脂の剥離性を考慮してマスター基板上に剥離層を設けるべく、マスター基板上にニッケルをスパッタして厚さ10nmのニッケル薄膜を形成した。
そして、マスター基板の内周側にスリーボンド社製UV硬化性樹脂30Y266Eを2g滴下した後、同じ大きさのデータ基板を載せて、4000rpmで3秒間回転させ、振りきった。これに強度350mJ/cm2のUV光を4秒間照射してUV硬化性樹脂を硬化させ、2枚の基板を固着した。UV硬化樹脂の厚さは30μmであった。
【0147】
このようにしてマスター基板とデータ基板とを貼り合わせてなるディスクの内周側から(外周側からでも良い)マスター基板とデータ基板との間にカッターを挿入して、データ基板からマスター基板を剥がそうとしたところ、マスター基板が思うように変形せず、データ基板とマスター基板とを剥離させることはできなかった。むりやり剥離させようとしたところ、データ基板が割れてしまった。このため、表1では剥離試験結果を「NG」としている。また、データ基板の反り量は測定できなかった。
(まとめ)
以上の結果をまとめると、マスター基板のE×h3とデータ基板のE×h3の比が1.27を越える場合には、両基板を簡単には剥離させることができず、無理に剥離させようとするとデータ基板が割れてしまうことが分かった。一方、マスター基板のE×h3とデータ基板のE×h3の比が1.27以下であれば両基板を容易に剥離させることができ、また、反りの小さい(例えば2mm以下)良好なデータ基板が得られることが分かった。
【0148】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の光記録媒体の製造方法及び光記録媒体用積層体の製造方法によれば、積層型のデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rを作製する際に、マスター基板をデータ基板から剥離しやすくし、データ基板が変形しにくくして、データ基板に生じる反りを小さく抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態としての光記録媒体の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 第1基板
2 第1記録層(第1色素含有記録層)
3 半透明反射層
4 中間樹脂層(中間層)
5 第2記録層(第2色素含有記録層)
6 反射層
7 接着層
8 第2基板
11,12 記録トラック
13 データ基板
14 光記録媒体用積層体
15 樹脂スタンパ(マスター基板)
16 樹脂基板
17 セパレート層(剥離層)

Claims (6)

  1. データ基板上に、直接又は他の層を介して樹脂を塗布し、凹凸を有するマスター基板を固着した後に剥離して、前記樹脂に前記マスター基板の凹凸を転写して樹脂層を形成する樹脂層形成工程を含む光記録媒体の製造方法であって、
    前記データ基板と前記マスター基板とが、前記データ基板のヤング率をEd、厚さをhdとし、前記マスター基板のヤング率をEm、厚さをhmとして、
    (Em×hm3)/(Ed×hd3)≦1.27
    の関係を満たすことを特徴とする、光記録媒体の製造方法。
  2. 前記マスター基板及び前記データ基板が樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の光記録媒体の製造方法。
  3. 前記樹脂層形成工程の後に、高温下に保持する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の光記録媒体の製造方法。
  4. 前記樹脂層形成工程の後に、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させたものを塗布した後、高温下に保持して色素含有記録層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の光記録媒体の製造方法。
  5. データ基板上に、直接又は他の層を介して樹脂を塗布し、凹凸を有するマスター基板を固着した後に剥離して、前記樹脂に前記マスター基板の凹凸を転写して樹脂層を形成して光記録媒体用積層体を製造する光記録媒体用積層体の製造方法であって、
    前記データ基板と前記マスター基板とが、前記データ基板のヤング率をEd、厚さをhdとし、前記マスター基板のヤング率をEm、厚さをhmとして、
    (Em×hm3)/(Ed×hd3)≦1.27
    の関係を満たすことを特徴とする、光記録媒体用積層体の製造方法。
  6. 前記マスター基板及び前記データ基板が樹脂からなることを特徴とする、請求項5記載の光記録媒体用積層体の製造方法。
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