JP2006236574A - 光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置 - Google Patents

光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の記録層を有する片面入射型光記録媒体において、各記録層に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録推奨パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにする。
【解決手段】片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の記録再生方法であって、各記録層のトラッキング情報を読み出すことにより光記録媒体の構成を判断し、当該構成に応じて情報の記録又は再生を行なう。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えばDVD−Rなどの片面側からレーザ光を照射して情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置に関する。
現在、CD−R,CD−RW,MO等の各種光記録媒体は、大容量の情報を記憶でき、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータのような情報処理装置における外部記憶装置として広く認知され普及しつつある。さらに取り扱う情報量の増大により、記憶密度を高めることが望まれている。
種々の光記録媒体の中でもCD−RやDVD−Rなど、有機色素を含む記録層(色素含有記録層ともいう)を有する光ディスクは比較的安価で、且つ、再生専用の光ディスクとの互換性を有するため、特に広く用いられている。
一例として、色素含有記録層を有する光ディスクとして代表的なCD−Rなどの媒体は、透明ディスク基板上に色素含有記録層と反射層とをこの順に有し、これら色素含有記録層や反射層を覆う保護層を有する積層構造であり、基板を通してレーザ光にて記録・再生を行なうものである。
さて、同じく代表的な片面型DVD−Rは、第1の透明ディスク基板上に色素含有記録層、反射層、これらを覆う保護層をこの順に有し、さらに保護層の上に接着層を介して或いは介さずに、第2のディスク基板(透明でも不透明でも良い)上に反射層を形成したいわゆるダミーディスクを設けた積層構造であり、第1の透明ディスク基板を通して片面側からレーザ光にて記録・再生を行なうものである。ダミーディスクは透明又は不透明のディスク基板のみであっても良いし、反射層以外の層を設けていても良い。
また、光記録媒体の記録容量を更に大容量化するために、上記のような片面型DVD−Rを貼り合わせて2つの記録層を有する媒体とし、両面側から各記録層にレーザ光を照射して記録・再生を行なう(即ち、媒体の一面側からレーザ光を照射し、この一面側に近い方の記録層の記録・再生を行なう一方、媒体の他面側からもレーザ光を照射し、この他面側に近い方の記録層の記録・再生を行なう)両面型DVD−Rも知られている。
ところで、近年、複数の記録層を有する光記録媒体においては、記録再生装置が大型化,複雑化しないようにし、また、複数の記録層にわたる連続的な再生を可能とすべく、片面側からレーザ光を照射することによってこれらの複数の記録層に対して記録・再生を行なうことができる片面入射型光記録媒体(例えば片面入射型DVD−R)を実現することが望まれている。
このため、例えば、以下のような構成を有する片面入射型光記録媒体として、例えば2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rが提案されている(例えば特許文献1参照)。
例えばデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rは、第1透光性基板上に、記録用レーザ光の照射により光学的に情報が記録し得る有機色素からなる第1記録層と、再生用レーザ光の一部を透過し得る半透光性反射膜で構成された第1反射層と、記録用レーザ光及び再生用レーザ光に対して透光性を有する中間層と、記録用レーザ光の照射により光学的に情報が記録し得る有機色素からなる第2記録層と、再生用レーザ光を反射する第2反射層と、第2透光性基板とを順に積層して構成される。
特開平11−066622号公報
ところで、例えばデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rなどのように複数の記録層を有する片面入射型光記録媒体は、記録層毎に、例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ(記録ストラテジ,ライトストラテジ),記録パワー,再生パワー等の最適な記録再生条件が大きく異なってしまう。
このため、複数の記録層を有する片面入射型光記録媒体の各記録層に対して情報の記録又は再生を行なう記録再生装置において、記録層に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、片面側からレーザ光を照射して複数の記録層に対して情報の記録又は再生を行なう光記録媒体において、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにした、光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置を提供することを目的とする。
このため、本発明の光記録媒体の記録再生方法は、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の記録再生方法であって、各記録層のトラッキング情報を読み出すことにより光記録媒体の構成を判断し、当該構成に応じて情報の記録又は再生を行なうことを特徴としている(請求項1)。
本発明の光記録媒体の記録再生装置は、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の記録再生装置であって、各記録層のトラッキング情報を読み出すことにより光記録媒体の構成を判断し、当該構成に応じて情報の記録又は再生を行なうことを特徴としている(請求項2)。
本発明の光記録媒体は、請求項1記載の光記録媒体の記録再生方法によって記録又は再生される光記録媒体であって、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備え、各記録層のトラッキング情報を含む記録再生条件の少なくとも一つが記録されていることを特徴としている(請求項3)。
好ましくは、記録再生条件として、記録パルスストラテジ及び/又は記録推奨パワーを含むものとする(請求項4)。
また、トラッキング情報が、各記録層のうち、最初にアクセスする記録層に記録されているのが好ましい(請求項5)。
さらに、記録再生条件を、各記録層のうちのレーザ光の入射側に最も近い層に記録しておくのが好ましい(請求項6)。
また、各記録層を色素含有記録層とするのが好ましい(請求項7)。
以上詳述したように、本発明の光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置によれば、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようになるという利点がある。
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光記録媒体(追記型光記録媒体),光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置について、図1〜図5を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる光記録媒体は、複数の記録層を有し、片面側からレーザ光を照射することでそれぞれの記録層に情報の記録又は再生を行なうことができる片面入射型光記録媒体である。
本実施形態では、片面入射型光記録媒体(片面入射型DVD−R)として、例えば2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−Rを例に説明する。
(1)光記録媒体の構造
まず、本実施形態にかかる光記録媒体として、積層構造の異なる2つのタイプの光記録媒体(光ディスク)について説明する。
(A)タイプ1
図1は、本実施形態にかかる光記録媒体(タイプ1)を示す模式的な断面図である。
本実施形態にかかるタイプ1の光記録媒体は、ディスク状の透明な(光透過性の)第1基板(第1の基板)1上に、色素を含む第1記録層(第1の記録層)2、半透明の反射層(以下、半透明反射層という)3、中間樹脂層(中間層)4、色素を含む第2記録層(第2の記録層)5、反射層6、接着層7、第2基板(第2の基板)8をこの順に有してなる。光ビームは第1基板1側から照射され、記録又は再生が行われる。
なお、本実施形態において、透明である(光透過性がある)とは光記録媒体の記録又は再生に用いる光ビームに対して透明である(光透過性がある)ことを言う。また、透明である(光透過性がある)層としては、記録又は再生に用いる光ビームを多少吸収するものも含む。例えば、記録又は再生に用いる光ビームの波長について90%以上の透過性があれば実質的に光透過性がある(透明である)ものとする。
透明な第1基板1、中間樹脂層4上にはそれぞれ凹凸(ランド及びグルーブ)が形成され、凹部及び/又は凸部で記録トラックが構成される。ここでは、透明な第1基板1上の記録トラック11は、光の入射方向に対して凸部で構成される。中間樹脂層4上の記録トラック12も、光の入射方向に対して凸部で構成される。なお、記録トラック11,12は、光の入射方向に対して凹部で構成しても良いし、光の入射方向に対して凹部及び凸部の双方で構成しても良いが、一般には、光の入射方向に対して凸部で構成するのが好ましい。特に断らない限り、本発明において凹凸は記録又は再生に用いる光の入射方向に対して定義される。
これらの記録トラック11,12は、所定の振幅,所定の周波数で半径方向に僅かに蛇行させてある(これをウォブルという)。また、記録トラック11,12の間のランドにはある規則にしたがった孤立ピット(アドレスピット)が形成されており(これをランドプリピット,LPP;Land Pre-Pitという)、このランドプリピットによってアドレス情報が予め記録されている。なお、この他に必要に応じ凹凸ピット(プリピット)を有することもある。また、ウォブルの向きを反転させたり、周波数を変調したりして情報を記録することもできる。
次に、各層について説明する。
(a)第1基板1について
第1基板1は、透明であるほか複屈折率が小さいなど光学特性に優れることが望ましい。また、射出成形が容易であるなど成形性に優れることが望ましい。さらに、吸湿性が小さいと反り等を低減できるため望ましい。
更に、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。但し第2基板8が十分な形状安定性を備えていれば、第1基板1は形状安定性が大きくなくても良い。
このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるもの、ガラスからなるものを用いることができる。或いは、ガラス等の基体上に、光硬化樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設けたもの等も使用できる。
なお、光学特性、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からはポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、低吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
第1基板1は薄い方が好ましく、通常厚さは2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。対物レンズと記録層の距離が小さく、また基板が薄いほどコマ収差が小さくなる傾向があり、記録密度を上げやすいためである。但し、光学特性、吸湿性、成形性、形状安定性を十分得るためにはある程度の厚みが必要であり、通常10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上である。
本光記録媒体においては、第1記録層2及び第2記録層5の両方に良好に記録又は再生を行なうために、対物レンズと両記録層との距離を適宜調節することが望ましい。例えば、対物レンズの焦点が両記録層のほぼ中間地点となるようにすると、両記録層にアクセスしやすく好ましい。
具体的に説明すると、片面型DVD−Rシステムにおいては、基板厚さ0.6mmのときに対物レンズと記録層との距離が最適になるよう調節されている。
従って、本層構成において片面型DVD−R互換の場合は、第1基板1の厚さは、0.6mmから、中間樹脂層4の膜厚の2分の1を減じた厚さであることが最も好ましい。このとき、両記録層のほぼ中間地点が約0.6mmとなり、両記録層にフォーカスサーボがかけやすい。
なお、第2記録層5と半透明反射層3の間にバッファー層や保護層など他の層がある場合は、0.6mmから、それらの層と中間樹脂層4の膜厚の和の2分の1を減じた厚さであることが最も好ましい。
第1基板1には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第1記録層2に情報が記録又は再生される。波長650nmのレーザを開口数0.6から0.65の対物レンズで集光して記録又は再生が行なわれる、いわゆるDVD−Rディスクの場合、通常、第1記録層2は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。
本光記録媒体においては第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200〜500nm程度であり、溝深さは120〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
このような凹凸を有する基板は、コストの観点から、凹凸を持つスタンパから射出成形により製造するのが好ましい。ガラス等の基体上に光硬化樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設ける場合は、樹脂層に記録トラックなどの凹凸を形成してもよい。
(b)第1記録層2について
第1記録層2は、通常CD−Rや片面型DVD−R等に用いられる光記録媒体に用いる記録層より高感度である必要がある。本光記録媒体においては、入射した光ビームのパワーが半透明反射層3の存在等で2分され、第1記録層2の記録と第2記録層5の記録とに振り分けられるため、約半分のパワーで記録するために、特に感度が高い必要があるのである。
また、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素であることが望ましい。
更に、第1記録層2と半透明反射層3との組合せにおいて、光の反射、透過及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。記録感度を高くし、かつ記録時の熱干渉を小さくできる。
このような有機色素材料としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。
上述の各種有機色素の中でも含金属アゾ系色素は、記録感度に優れ、かつ、耐久性,耐光性に優れるため好ましい。特に下記一般式(I)又は(II)
Figure 2006236574
(環A1及びA2は、各々独立に置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環であり、環B1及びB2は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族環である。Xは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されている炭素数1〜6のアルキル基である。)で表される化合物が好ましい。
本光記録媒体の記録層に使用される有機色素は、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザでの記録に適する色素化合物が好ましい。通常CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザや、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザ、あるいは波長410nmや515nmなどのいわゆるブルーレーザなどでの記録に適する色素がより好ましい。
色素は一種でもよいし、同じ種類のものや異なる種類のものを二種以上混合して用いても良い。さらに、上記複数の波長の記録光に対し、各々での記録に適する色素を併用して、複数の波長域でのレーザ光による記録に対応する光記録媒体とすることもできる。
また記録層は、記録層の安定や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、記録感度向上のために金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していても良い。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
さらに本光記録媒体の記録層には、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
記録層の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、十分な変調度を得るためには通常5nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。但し、本光記録媒体においては適度に光を透過させるためには厚すぎない必要があるため、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。記録層の膜厚は通常、溝部とランド部で異なるが、本光記録媒体において記録層の膜厚は基板の溝部における膜厚を言う。
記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。また厚みの均一な記録層が得られるという点からは、塗布法より真空蒸着法の方が好ましい。
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱あるいは溶媒蒸気にあてる等の処理を行っても良い。
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
真空蒸着法の場合は、例えば有機色素と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより、記録層を形成する。
(c)半透明反射層3について
半透明反射層3は、光の吸収が小さく、光透過率が40%以上あり、かつ適度な光反射率がある必要がある。例えば、反射率の高い金属を薄く設けることにより適度な透過率を持たせることができる。また、ある程度の耐食性があることが望ましい。更に、半透明反射層3の上層(ここでは中間樹脂層4)の浸み出しにより第1記録層2が影響されないよう遮断性を持つことが望ましい。
高透過率を確保するために、半透明反射層3の厚さは通常、50nm以下が好適である。より好適には30nm以下である。更に好ましくは20nm以下である。但し、第1記録層2が半透明反射層3の上層により影響されないために、ある程度の厚さが必要であり、通常3nm以上とする。より好ましくは5nm以上とする。
半透明反射層3の材料としては、再生光の波長で反射率が適度に高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及び希土類金属などの金属及び半金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く半透明反射層3の材料として適している。これらを主成分とする以外に他成分を含んでいても良い。
なかでもAgを主成分としているものはコストが安い点、反射率が高い点から特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50%以上のものをいう。
半透明反射層3は膜厚が薄く、膜の結晶粒が大きいと再生ノイズの原因となるため、結晶粒が小さい材料を用いるのが好ましい。純銀は結晶粒が大きい傾向があるためAgは合金として用いるのが好ましい。
中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNdなどである。
半透明反射層3としてはAuのみからなる層は結晶粒が小さく、耐食性に優れ好適である。ただし、Ag合金に比べて高価である。
また、半透明反射層3としてSiからなる層を用いることも可能である。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
半透明反射層3を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、第1基板1と半透明反射層3との間に、例えば反射率の向上,記録特性の改善,密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層又は接着層を設けても良い。例えば、第1基板1上に、中間層(又は接着層),第1記録層2,中間層(又は接着層),半透明反射層3の順に積層させることで、第1基板1と第1記録層2との間に中間層(又は接着層)を設け、第1記録層2と半透明反射層3との間に中間層(又は接着層)を設けても良い。
(d)中間樹脂層4について
中間樹脂層4は、透明である必要があるほか、凹凸により溝やピットが形成可能である必要がある。また接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと媒体の形状安定性が高く好ましい。
そして、中間樹脂層4は、第2記録層5にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、中間樹脂層4は通常、樹脂からなるため第2記録層5と相溶しやすく、これを防ぎダメージを抑えるために両層の間に後述のバッファー層を設けることが望ましい。
さらに、中間樹脂層4は、半透明反射層3にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために両層の間に後述のバッファー層を設けることもできる。
本光記録媒体において、中間樹脂層4の膜厚は正確に制御することが好ましい。中間樹脂層4の膜厚は、通常5μm以上が好ましい。2層の記録層に別々にフォーカスサーボをかけるためには両記録層の間にある程度の距離がある必要がある。フォーカスサーボ機構にもよるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上が必要である。一般に、対物レンズの開口数が高いほどその距離は小さくてよい傾向がある。但しあまり厚いと2層の記録層にフォーカスサーボを合わせるのに時間を要し、また対物レンズの移動距離も長くなるため好ましくない。また硬化に時間を要し生産性が低下するなどの問題があるため、通常、100μm以下が好ましい。
中間樹脂層4には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層5に情報が記録又は再生される。通常、第2記録層5は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。本光記録媒体においては中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200〜500nm程度であり、溝深さは120〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
このような凹凸は、コストの観点から、凹凸を持つ樹脂スタンパ等から光硬化性樹脂などの硬化性樹脂に転写、硬化させて製造するのが好ましい。以下、このような方法を2P法(Photo Polymerization法)と称することがある。
中間樹脂層4の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布し、乾燥(加熱)することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外光を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂には様々な種類があり、透明であればいずれも用いうる。またそれらの材料を単独であるいは混合して用いても良いし、1層だけではなく多層膜にして用いても良い。
塗布方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。或いは、粘度の高い樹脂はスクリーン印刷等によっても塗布形成できる。紫外線硬化性樹脂は、生産性を20〜40℃において液状であるものを用いると、溶媒を用いることなく塗布でき好ましい。また、粘度は20〜1000mPa・sとなるように調製するのが好ましい。
さて、紫外線硬化性接着剤としては、ラジカル系紫外線硬化性接着剤とカチオン系紫外線硬化性接着剤があるが、いずれも使用可能である。
ラジカル系紫外線硬化性接着剤としては、公知の全ての組成物を用いることができ、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。紫外線硬化性化合物としては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることができる。ここで、本発明では、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
本光記録媒体に使用できる重合性モノマーとしては例えば以下のものが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル,カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル,ジシクロペンタニル,ジシクロペンテニル,ジシクロペンテニロキシエチル等の如き基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、重合性モノマーと同時に併用できるものとしては、重合性オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
更に、本光記録媒体に使用する光重合開始剤は、用いる重合性オリゴマーおよび/または重合性モノマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できる公知のものがいずれも使用できる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本光記録媒体に好適である。
このような例としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
また光重合開始剤に対する増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
また、カチオン系紫外線硬化性接着剤としては公知のすべての組成物を用いることができ、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂がこれに該当する。カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩およびジアゾニウム塩等がある。
ヨードニウム塩の1例を示すと以下の通りである。ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェード、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等種々のものがいずれであってもかまわない。
エポキシ樹脂としては、反射層にダメージを与えないよう、遊離したフリーの塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量が1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
カチオン型紫外線硬化性樹脂100重量部当たりのカチオン重合型光開始剤の割合は通常、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部である。なお、紫外線光源の波長域の近紫外領域や可視領域の波長をより有効に利用するため、公知の光増感剤を併用することができる。この際の光増感剤としては、例えばアントラセン、フェノチアジン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
また、紫外線硬化性接着剤には、必要に応じてさらにその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
(e)第2記録層5について
第2記録層5は、通常CD−Rや片面型DVD−R等に用いられる光記録媒体に用いる記録層より高感度である必要がある。本光記録媒体においては、入射した光ビームのパワーが半透明反射層3の存在等で2分され、第1記録層2の記録と第2記録層5の記録とに振り分けられるため、約半分のパワーで記録するために、特に感度が高い必要があるのである。
また、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素であることが望ましい。
更に、第2記録層5と反射層6との組合せにおいて、光の反射及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。記録感度を高くし、かつ記録時の熱干渉を小さくできる。
第2記録層5の材料、成膜方法等についてはほぼ第1記録層2と同様に説明されるため、異なる点のみ説明する。
第2記録層5の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、十分な変調度を得るためには通常10nm以上が好ましく、より好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは50nm以上である。但し、適度な反射率を得るためには厚すぎない必要があるため、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
第1記録層2と第2記録層5とに用いる材料は同じでも良いし異なっていてもよい。
(f)反射層6について
反射層6は、高反射率である必要がある。また、高耐久性であることが望ましい。
高反射率を確保するために、反射層6の厚さは通常、20nm以上が好適である。より好適には30nm以上である。更に好ましくは50nm以上である。但し、記録感度を上げるためにはある程度薄いことが好ましく、通常400nm以下とする。より好ましくは300nm以下とする。
反射層6の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta及びPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層6の材料として適している。これらを主成分とする以外に他成分として下記のものを含んでいても良い。他成分の例としては、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及び希土類金属などの金属及び半金属を挙げることができる。
中でもAgを主成分としているものはコストが安い点、高反射率が出やすい点、更に後で述べる印刷受容層を設ける場合には地色が白く美しいものが得られる点等から特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50%以上のものをいう。
反射層6は高耐久性(高耐食性)を確保するため、Agは純銀よりもAgは合金として用いるのが好ましい。
中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNdなどである。
反射層6としてはAuのみからなる層は高耐久性(高耐食性)が高く好適である。ただし、Ag合金に比べて高価である。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層6として用いることも可能である。
反射層6を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、反射層6の上下に、例えば反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層又は接着層を設けても良い。
(g)接着層7について
接着層7は、透明である必要はないが、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと媒体の形状安定性が高く好ましい。
また、接着層7は反射層6にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために両層の間に公知の無機系または有機系の保護層を設けることもできる。
本光記録媒体において、接着層7の膜厚は、通常2μm以上が好ましい。所定の接着力を得るためにはある程度の膜厚が必要である。より好ましくは5μm以上である。但し光記録媒体をできるだけ薄くするために、また硬化に時間を要し生産性が低下するなどの問題があるため、通常、100μm以下が好ましい。
接着層7の材料は、中間樹脂層4の材料と同様のものが用いうるほか、感圧式両面テープ等も使用可能である。感圧式両面テープを反射層6と第2基板8との間に挟んで押圧することにより、接着層7を形成できる。
(h)第2基板8について
第2基板8は、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。即ち機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。また接着層7との接着性が高いことが望ましい。
上述のように第1基板1が十分な形状安定性を備えていない場合は、第2基板8は特に形状安定性が高い必要がある。この点で吸湿性が小さいことが望ましい。但し第2基板8は透明である必要はない。また第2基板8は鏡面基板で良く、凹凸を形成する必要はないので射出成形による転写性は必ずしも良い必要はない。
このような材料としては、第1基板1に用いうる材料と同じものが用い得るほか、例えば、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、シリコン、チタン、セラミックスのいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板などを用いることができる。
なお、成形性などの高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性などの点からはポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、低吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
光記録媒体に十分な剛性を持たせるために、第2基板8はある程度厚いことが好ましく、厚さは0.3mm以上が好ましい。但し薄いほうが記録再生装置の薄型化に有利であり、好ましくは3mm以下である。より好ましくは1.5mm以下である。
第2基板8は凹凸を持たない鏡面基板で良いが、生産しやすさの観点から、射出成型により製造するのが望ましい。
第1基板1と第2基板8の好ましい組合せの一例は、第1基板1と第2基板8とが同一材料からなり、厚さも同一である。剛性が同等でバランスが取れているので、環境変化に対しても媒体として変形しにくく好ましい。この場合、環境が変化したときの変形の程度や方向も両基板で同様であると好ましい。
他の好ましい組合せの一例は、第1基板1が0.1mm程度と薄く、第2基板8が1.1mm程度と厚いものである。対物レンズが記録層に近づきやすく記録密度を上げやすいため好ましい。このとき第1基板1はシート状であってもよい。
(i)その他の層について
上記積層構造において、必要に応じて任意の他の層を挟んでも良い。或いは媒体の最外面に任意の他の層を設けても良い。具体的には、半透明反射層3と中間樹脂層4との間、中間樹脂層4と第2記録層5との間、反射層6と接着層7との間、などに中間層としてのバッファー層を設けてもよい。
バッファー層は2つの層の混和を防止し、相溶を防ぐものである。バッファー層が混和現象を防止する以外の他の機能を兼ねていても良い。また必要に応じてさらに他の中間層を挟んでも良い。
バッファー層の材料は、第2記録層5や中間樹脂層4と相溶せず、かつ、ある程度の光透過性をもつ必要があるが、公知の無機物及び有機物が用いうる。特性面からは、好ましくは無機物が用いられる。例えば、(i)金属又は半導体、(ii)金属又は半導体の酸化物、窒化物、硫化物、酸硫化物、フッ化物又は炭化物、もしくは(iii)非晶質カーボン、などが用いられる。中でも、ほぼ透明な誘電体からなる層や、ごく薄い金属層(合金を含む)が好ましい。
具体的には、酸化珪素、特に二酸化珪素や、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム等の酸化物;硫化亜鉛、硫化イットリウムなどの硫化物;窒化珪素などの窒化物;炭化珪素;酸化物とイオウとの混合物(酸硫化物);および後述の合金などが好適である。また、酸化珪素と硫化亜鉛との30:70〜90:10程度(重量比)の混合物も好適である。また、イオウと二酸化イットリウムと酸化亜鉛との混合物(Y22S−ZnO)も好適である。
金属や合金としては、銀、又は銀を主成分とし更にチタン、亜鉛、銅、パラジウム、及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有するものが好適である。また、銀を主成分とし、少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものも好適である。この希土類としては、ネオジウム、プラセオジウム、セリウム等が好適である。
その他、バッファー層作製時に記録層の色素を溶解しないようなものであれば樹脂層でも構わない。特に、真空蒸着やCVD法で作製可能な高分子膜が有用である。
バッファー層の厚さは2nm以上が好ましく、より好ましくは5nm以上である。バッファー層の厚さが過度に薄いと、上記の混和現象の防止が不十分となる虞がある。但し2000nm以下が好ましく、より好ましくは500nm以下である。バッファー層が過度に厚いと、混和防止には不必要であるばかりでなく、光の透過率を低下させるおそれもある。また無機物からなる層の場合には成膜に時間を要し生産性が低下したり、膜応力が高くなったりする虞があり200nm以下が好ましい。特に、金属の場合は光の透過率を過度に低下させるため、20nm以下程度が好ましい。
また、記録層や反射層を保護するために保護層を設けても良い。保護層の材料としては、記録層や反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布、乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いても良いし、1層だけではなく多層膜にして用いても良い。
保護層の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
保護層の膜厚は、一般に0.1〜100μmの範囲であるが、本光記録媒体においては、3〜50μmが好ましい。
更に、上記光記録媒体には、必要に応じて、記録光又は再生光の入射面ではない面に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具にて記入(印刷)が可能な印刷受容層を設けてもよい。
或いは、本層構成の光記録媒体を2枚、第1基板1を外側にして貼合わせて、記録層を4層有する、より大容量媒体とすることもできる。
(B)タイプ2
図2は本実施形態にかかる光記録媒体(タイプ2)を示す模式的な断面図である。
本実施形態にかかるタイプ2の光記録媒体は、ディスク状の透明な(光透過性の)第1基板(第1の基板)21上に、色素を含む第1記録層(第1の記録層)22、半透明の反射層(以下、半透明反射層という)23、透明接着層24、バッファー層28、色素を含む第2記録層(第2の記録層)25、反射層26、ディスク状の透明な第2基板(第2の基板)27をこの順に有してなる。光ビームは第1基板21側から照射され、記録又は再生が行われる。なお、透明であるとは光記録媒体の記録又は再生に用いる光ビームに対して透明であることを言う。
第1基板21、第2基板27上にはそれぞれ凹凸が形成され、それぞれ記録トラックを構成する。第1基板21上の記録トラック31は、光の入射方向に対して凸部で構成される。第2基板27上の記録トラック32は、光の入射方向に対して凹部で構成される。
なお、記録トラック31は、光の入射方向に対して凹部で構成し、記録トラック32は、光の入射方向に対して凸部で構成しても良いが、一般には、記録トラック31は、光の入射方向に対して凸部で構成し、記録トラック32は、光の入射方向に対して凹部で構成するのが好ましい。また、この他に必要に応じ凹凸ピットを有することもある。特に断らない限り、本実施形態において凹凸は記録又は再生に用いる光の入射方向に対して定義される。
次に、各層について説明する。
本実施形態にかかるタイプ2の光記録媒体の第1基板21,第1記録層22,半透明反射層23,第2記録層25,反射層26は、それぞれタイプ1の光記録媒体の第1基板1,第1記録層2,半透明反射層3,第2記録層5,反射層6と略同様である。
また、中間層としての透明接着層24は、凹凸により溝やピットを形成する必要がないという以外は、タイプ1の光記録媒体の中間樹脂層4と略同様である。なお、本タイプ2の光記録媒体では、上記の溝やピットは後述する第2基板27に形成されている。
さらに、中間層としてのバッファー層28は、第1実施形態において説明したバッファー層と略同様の構成である。なお、このバッファー層は必要に応じて形成するようにしても良い。
第2基板8は、透明であるほか、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。即ち機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。
このような材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるもの、ガラスからなるものを用いることができる。
第2基板27には、凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層25に情報が記録又は再生される。通常、第2記録層25は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。本光記録媒体においては第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部を記録トラック32とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200〜500nm程度であり、溝深さは120〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
このような凹凸を有する第2基板27は、コストの観点から、凹凸を持つスタンパから樹脂を用いて射出成形により製造するのが好ましい。ガラス等の基体上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設ける場合は、樹脂層に記録トラックなどの凹凸を形成してもよい。
なお、ここでは、色素含有記録層を含む追記型光記録媒体(ここではDVD−R)について説明したが、光記録媒体はこれに限られるものではなく、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体であれば良い。例えば、記録層として例えば結晶状態の部分を未記録状態・消去状態とし、非晶質状態の部分を記録状態とする相変化型記録層を含む書換型光記録媒体(例えばDVD−RW,DVD+RW,DVD−RAMなど)や記録層として磁性記録層を含む光磁気型の光記録媒体であっても良い。
ここで、光記録媒体をDVD−RWとする場合には、上述のDVD−Rの場合と同様に、アドレス情報をランドプリピットにより予め記録しておけば良い。また、光記録媒体をDVD+RWとする場合には、アドレス情報をウォブルに重畳させて予め記録しておけば良い(これをADIP;Address in Pre-groove,アドレスインプリグルーブという)。
ところで、上述のように、複数(ここでは2つ)の記録層2,5(22,25)を有し、片面側からレーザ光を照射することでそれぞれの層2,5(22,25)に情報を記録又は再生する片面入射型光記録媒体(例えばデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD−R)では、記録層毎に、例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等の記録再生条件が大きく異なってしまう。
特に、記録条件を最適なものとすることは重要である。これは、再生条件が多少ずれていたとしても再生できないということはあまりないが、記録条件が最適でないと、実際に書き込みが行なえなかったり、書き込みが行なえたとしても、その情報を再生する場合に信号品質が良くなかったりするためである。
このため、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層2,5(22,25)に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。
特に、後述するように、タイプ1の光記録媒体では、第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とし、中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とする。このため、第1記録層2と第2記録層5とでは、トラッキング極性は同じにする。これに対し、タイプ2の光記録媒体では、第1基板21の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック31とし、第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部を記録トラック32とする。このため、第1記録層22と第2記録層25とでは、トラッキング極性を逆にすることになる。
このように、第1記録層と第2記録層とで、トラッキング極性を同じにする光記録媒体と、トラッキング極性を逆にする光記録媒体とが混在する場合であっても、光記録媒体の構成に応じたトラッキング極性で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。
そこで、本実施形態では、光記録媒体に、光記録媒体の各記録層2,5(22,25)の記録再生条件の少なくとも一つを記録している。
ここで、記録再生条件には、トラッキング極性(例えばプッシュプル信号の極性)又はランド記録/グルーブ記録に関する情報(ランドでトラッキングするか、グルーブでトラッキングするかを示す情報)(以下、これらをまとめてトラッキング極性又はトラッキング情報という),記録パルスストラテジ(記録ストラテジ,ライトストラテジ;各記録層に適合したレーザ出力制御パターン),記録パワー,再生パワー等が含まれる。なお、記録再生条件には、トラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー等の記録条件と、トラッキング極性,再生パワー等の再生条件が含まれる。
このような記録再生条件のうち、トラッキング極性以外の記録パルスストラテジ,記録パワー及び再生パワー等の記録再生条件は、光記録媒体を構成する各記録層2,5(22,25)のそれぞれの記録層に記録しておいても良いし、各記録層2,5(22,25)のいずれかの記録層に記録しておいても良い。
一方、上述の記録再生条件のうち、トラッキング極性は、ドライブが最初にアクセスする記録層(例えばレーザ光の入射側に最も近い記録層)に、ドライブが最初にアクセスする記録層以外の記録層のトラッキング極性を記録しておくことが考えられる。つまり、トラッキング極性は、ドライブが最初にアクセスする記録層のみに(即ち、複数の記録層のうちの1層のみに)記録しておけば良い。
なお、他の記録再生条件と異なり、トラッキング極性が異なると情報を再生することができないため、ドライブが最初にアクセスする記録層(例えばレーザ光の入射側に最も近い記録層)のトラッキング極性(ランド記録かグルーブ記録か)は予め決めておく必要がある。
例えば、2層の記録層を有するDVD−Rでは、第1記録層(レーザ光の入射側に最も近い記録層)2(22)は光ビームに対して凸部に記録する(ランド記録)と決めておき、ドライブは第1記録層2(22)に最初にアクセスするようにしておく。そして、第1記録層2(22)に他の記録層[第2記録層5(25)]のトラッキング極性をレイヤ情報と関連づけて記録しておけば、ドライブは、これを読み出すことで第2記録層5(25)のトラッキング極性を認識できることになる。
なお、第1記録層2(22)以外の第2記録層5(25)のトラッキング極性も、第1記録層2(22)の場合と同様に、予め決めておくようにしても良い。この場合、第2記録層5(25)のトラッキング極性は第1記録層2(22)に記録しておく必要はない。
また、記録層5(25)のトラッキング極性を予め決めておく場合であっても、第2記録層5(25)のトラッキング極性を第1記録層2(22)に記録しておき、ドライブがこれを読み出して、予め決められているトラッキング極性を変更するようにしても良い。これにより、ドライブが最初にアクセスする記録層以外の記録層については、トラッキング極性を任意に変更できることになる。
このため、記録再生条件は、各記録層2,5(22,25)のうちのレーザ光の入射側に最も近い層のみに(即ち、複数の記録層のうちの1層のみに)記録するのが好ましい。これは、ドライブ(記録再生装置)は、レーザ光の入射側に最も近い層に最初にアクセスするように構成される場合が多いため、このような構成のドライブにおいて、迅速に、記録再生条件を読み取ることができるようにするためである。
具体的には、記録再生条件は、各記録層2,5(22,25)の記録管理領域(RMA;Recording Management Area,例えばコントロールトラック,最内周部)のいずれかに、例えばプリピット(ランドプリピット)やウォブルによって記録するのが好ましい。
上述のようなトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー等の記録再生条件を記録しておくことは、以下のような構成を有するタイプ2の光記録媒体において有効である。特に、タイプ2の光記録媒体においては、記録再生条件としてトラッキング極性を含ませておくことは重要である。
つまり、本発明を適用するのが好ましいタイプ2の光記録媒体は、案内溝を有する第1基板上に、少なくとも、第1の色素を含有する記録層と、半透明反射層とを順次積層させてなる第1の情報記録体と、案内溝を有する第2基板上に、少なくとも、反射層と、第2の色素を含有する記録層とを順次積層させてなる第2の情報記録体とを備え、第1の情報記録体と第2の情報記録体とがそれぞれ記録層が形成された側を対向させて光学的に透明な接着層を介して貼り合わされてなり、第1基板側からレーザ光を入射させることにより光学的に情報の記録又は再生が行なわれるように構成される。
ところで、複数の記録層を有する片面入射型光記録媒体の各記録層2,5(22,25)に対して情報の記録又は再生を行なう記録再生装置(ドライブ)において、記録層2,5(22,25)に応じて、例えば記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等の記録再生条件を切り替えることができるようにし、情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。特に、上述のように記録条件を最適なものとすることは重要であるため、記録層2,5(22,25)に応じて、最適な記録条件に切り替えることができるようにし、情報の記録を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。
この場合、例えば、複数の記録層2,5(22,25)にわたって連続してアドレス情報を付け、記録再生装置において、読み出したアドレス情報に基づいてどの層であるかを判定することも考えられるが、これではどの層であるかを瞬時に判断するのは難しい。
そこで、本実施形態では、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層2,5(22,25)に応じて、例えば記録パルスストラテジ(記録ストラテジ,ライトストラテジ),記録パワー,再生パワー等の記録再生条件を瞬時に切り替えることができるように、光記録媒体の各記録層2,5(22,25)のそれぞれにレイヤ情報(記録層番号に関する情報;レイヤ0,レイヤ1)を記録している。
ここで、レイヤ情報の記録方法としては、例えば以下の(i),(ii)に示すような方法が考えられる。
(i)各記録層2,5(22,25)の記録管理領域(RMA;Recording Management Area,例えばコントロールトラック,最内周部)に、例えばプリピット(ランドプリピット)やウォブルによって記録する。
(ii)各記録層2,5(22,25)の記録領域のほぼ全面にわたって、例えばプリピット(ランドプリピット)やウォブルによって記録する。ここで、「ほぼ全面」に記録するには、各記録層2,5(22,25)の記録管理領域を含む記録領域の全面に記録する場合(例えば記録管理領域ではアドレスの一部として記録する)、各記録層2,5(22,25)の記録管理領域を除く記録領域の全面に記録する場合などが含まれる。特に、記録管理領域にレイヤ情報を記録することができない場合は、記録管理領域を除く記録領域の全面に記録するのが有効である。また、ランダムアクセスして情報の記録又は再生を行なう場合にも有効である。
例えば、ウォブルやプリピット(ランドプリピット)のアドレス情報の一部として記録すれば良い。これにより、各記録層2,5(22,25)に簡便な方法でレイヤ情報を記録できることになる。また、アドレス情報の一部としてレイヤ情報を記録することで、アドレス情報に基づいてランダムアクセスして情報の記録又は再生を行なう場合に、所望のアドレスにアクセスしてフォーカスサーボをかけただけでレイヤ情報を読み出すことができるため、これに基づいて、例えば記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等の記録再生条件を瞬時に切り替えることができるようになる。
ここで、アドレス情報の一部としてレイヤ情報を記録する方法としては、例えば以下の(i)〜(v)の方法が考えられる。
(i)まず、ウォブルのアドレス情報(例えばADIP;Address in pre-groove)の一部として記録する方法として、例えば2つの記録層2,5(22,25)においてウォブルのアドレス情報(例えばADIP;Address in pre-groove)に含まれるsyncパターン(同期パターン)を反転させる方法がある。
例えば、第1記録層2(22)のADIPに含まれるsyncパターン(同期パターン)の向きに対して、第2記録層5(25)のADIPに含まれるsyncパターン(同期パターン)の向きを逆向き(反転)にすれば良い。
(ii)また、各記録層2,5(22,25)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやランドプリピットのアドレス情報の一部として記録する方法として、各記録層2,5(22,25)においてリザーブビットの値を異ならせる方法がある。
例えば、第1記録層2(22)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやLPPのアドレス情報のリザーブビットの値を、第2記録層5(25)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやランドプリピットのアドレス情報のリザーブビットの値と異ならせれば良い。
(iii)また、各記録層2,5(22,25)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやランドプリピットのアドレス情報の一部として記録する方法として、2つの記録層2,5(22,25)の中のいずれか一方の記録層のウォブルやランドプリピットのアドレス情報全体をビット反転させる方法がある。
例えば、第1記録層2(22)にはアドレス3000〜4FFF(Hex)を入れ、第2記録層5(25)にはアドレス5000〜6FFF(Hex)を入れる場合、第2記録層5(25)のみビット反転させて、アドレスをAFFF〜9000(Hex)とすれば良い。
ここでは、説明を簡単にするために16ビット(16進数では4桁)だけで説明したが、実際は、余裕を持って、例えばDVD−Rではアドレス情報は48ビット(16進数では12桁)で表されるため、第1記録層2(22)のアドレスは000000003000〜000000004FFF(Hex)となり、第2記録層5(25)のアドレスはFFFFFFFFAFFF〜FFFFFFFF9000(Hex)となる。
なお、ドライブには、どの範囲のアドレスがどのレイヤに属するかを関連づける情報を持たせ、アドレスを読み出したときにレイヤを判別できるようにしておく必要がある。
(iv)また、各記録層2,5(22,25)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやランドプリピットのアドレス情報の一部として記録する方法として、2つの記録層2,5(22,25)の中のいずれか一方の記録層のウォブルやランドプリピットのアドレス情報全体を2の補数(全体ビット反転+1)で表す方法がある。
例えば、第1記録層2(22)にはアドレス3000〜4FFF(Hex)を入れ、第2記録層5(25)にはアドレス5000〜6FFF(Hex)を入れる場合、第2記録層5(25)を2の補数(全体ビット反転+1)で表し、アドレスをB000〜9001(Hex)とすれば良い。
ここでは、説明を簡単にするために16ビット(16進数では4桁)だけで説明したが、実際は、余裕を持って、例えばDVD−Rではアドレス情報は48ビット(16進数では12桁)で表されるため、第1記録層2(22)のアドレス000000003000〜000000004FFF(Hex)となり、第2記録層5(25)のアドレスはFFFFFFFFB000〜FFFFFFFF9001(Hex)となる。
なお、ドライブには、どの範囲のアドレスがどのレイヤに属するかを関連づける情報を持たせ、アドレスを読み出したときにレイヤを判別できるようにしておく必要がある。
(v)さらに、各記録層2,5(22,25)の記録領域(記録管理領域を含む)に形成されるウォブルやランドプリピットのアドレス情報の一部として記録する方法として、2つの記録層2,5(22,25)の中のいずれか一方の記録層のウォブルやランドプリピットのアドレス情報の最上位ビットに記録する方法がある。
例えば、第1記録層2(22)及び第2記録層5(25)のうちのいずれか一方の記録層のウォブルやランドプリピットのアドレス情報の最上位ビットの値をビット反転させた値を、他方の記録層のウォブルやランドプリピットのアドレス情報の最上位ビットに入れる。
具体的には、例えば第1記録層2(22)にはアドレス000000003000〜000000004FFF(Hex)を入れ、第2記録層5(25)にはアドレス000000005000〜000000006FFF(Hex)を入れる場合、第2記録層5(25)の最上位ビットのみビット反転させれば良い。
この場合、2進数でビット反転させると「0」が「1」になるが、これを16進数(Hex)で表すと「0」が「8」になる。このため、第1記録層2(22)のアドレスは000000003000〜000000004FFF(Hex)となり、第2記録層5(25)のアドレスは800000005000〜800000006FFF(Hex)となる。なお、ドライブは、アドレスの最上位1ビットをレイヤ情報として認識するようにしておく必要がある。
なお、ここでは、本発明を、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる2つの記録層を備える光記録媒体に適用する場合について説明したが、これに限られるものではなく、例えば3層以上の記録層を備え、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる光記録媒体に適用することもできる。
(2)光記録媒体の記録再生方法
以下、上述のように構成される光記録媒体の記録再生方法の概略について説明する。
上記のようにして得られた本光記録媒体(タイプ1及びタイプ2)への記録は、記録層に直径0.5〜1μm程度に集束したレーザ光を第1基板1,21側から照射することにより行なう。レーザ光の照射された部分には、レーザ光エネルギーの吸収による、分解、発熱、溶解等の記録層の熱的変形が起こり、光学特性が変化する。
記録された情報の再生は、レーザ光により、光学特性の変化が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行なう。
また、2層の記録層には以下のようにして個別に記録又は再生する。集束したレーザの集束位置をナイフエッジ法、非点収差法、フーコー法等で得られるフォーカスエラー信号によって、第1記録層2,22と第2記録層5,25とは区別できる。すなわち、レーザ光を集束する対物レンズを上下に動かすと、レーザの集束位置が第1記録層2,22に対応する位置と第2記録層5,25に対応する位置で、それぞれS字カーブが得られる。どちらのS字カーブをフォーカスサーボに用いるかにより、第1記録層2,22と第2記録層5,25のどちらを記録又は再生するかを選択可能である。
タイプ1の光記録媒体において、好ましくは、図1に示すように第1基板1及び中間樹脂層4にそれぞれ凹凸が形成されてなり、第1基板1の溝部及び中間樹脂層4の溝部を記録トラックとして記録又は再生を行なうものとする。通常、色素記録層は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。このように、タイプ1の光記録媒体においては、第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とし、中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とするのが好ましい。
また、タイプ2の光記録媒体において、好ましくは、図2に示すように第1基板21及び第2基板27にそれぞれ凹凸が形成されてなり、第1基板21の凸部及び第2基板27の凹部を記録トラックとして記録又は再生を行なうものとする。このように、タイプ2の光記録媒体においては、第1基板21の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック31とし、第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部を記録トラック32とするのが好ましい。この場合、第1記録層22と第2記録層25とでは、トラッキングサーボの極性(トラッキング極性)を逆にする必要がある。
なお、タイプ1の光記録媒体であっても、タイプ2の光記録媒体であっても、第1記録層2,22(レーザ光の入射側に最も近い層)は、第1基板1,21の溝部に情報を記録(溝記録)するようにし、この溝部(光の入射方向に対して凸部)でトラッキングをかけて記録又は再生を行なうのが好ましい。これにより、CD−R,一層構造のDVD−Rなどとの互換性が得やすくなる。
本光記録媒体(タイプ1及びタイプ2)について使用されるレーザ光は、N2、He−Cd、Ar、He−Ne、ルビー、半導体、色素レーザなどが挙げられるが、軽量であること、コンパクトであること、取り扱いの容易さ等から半導体レーザが好適である。
使用されるレーザ光は、高密度記録のため波長は短いほど好ましいが、特に350〜530nmのレーザ光が好ましい。かかるレーザ光の代表例としては、中心波長405nm、410nm、515nmのレーザ光が挙げられる。
波長350〜530nmの範囲のレーザ光の一例は、405nm、410nmの青色または515nmの青緑色の高出力半導体レーザを使用することにより得ることができるが、その他、例えば、(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザ、または(b)半導体レーザによって励起され、且つ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザのいずれかを第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによっても得ることができる。
上記のSHGとしては、反転対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP、ADP、BNN、KN、LBO、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザの場合、その倍波の430nm、また半導体レーザ励起の固体レーザの場合は、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の430nmなどが挙げられる。
(3)光記録媒体の記録再生装置
ところで、上述のように各記録層のそれぞれに記録層番号(レイヤ情報)に関する情報が記録されている光記録媒体に対して情報の記録又は再生を行なう光記録媒体の記録再生装置は、以下のように構成される。
なお、記録再生装置(ドライブ)とは、光記録媒体に記録されている情報を記録又は再生しうるものであれば良く、例えば、記録のみを行なう記録装置(ライタ),再生のみを行なう再生装置(リーダ),記録及び再生の両方を行なう記録再生装置(リーダライタ)を含むものとする。
図3に示すように、本記録再生装置60は、光記録媒体50を回転駆動するスピンドルモータ51と、スピンドルモータ51を駆動するモータドライバ52と、光ピックアップ53と、光ピックアップ53を駆動する光ピックアップ用ドライバ54と、各種のサーボ制御を行なうのに用いられるサーボプロセッサ55と、光ピックアップ53によって検出された信号を処理する信号処理部(再生処理部)56と、他のコンピュータ等から送られてくる情報(データ)を処理するデータ処理部(記録処理部)57と、各デバイスに対する制御を行なう制御部58(例えばCPU58Aやメモリ58Bを備えるマイコン)とを備えて構成される。
ここで、光ピックアップ53は、例えばレーザダイオード,光検出器(例えばフォトディテクタなど),フォーカスやトラッキングを行なうために用いられるピックアップ用アクチュエータ等を備えるものとして構成される。
光ピックアップ用ドライバ54は、図3に示すように、レーザダイオードを駆動するレーザドライバ(レーザダイオードドライバ)54Aと、ピックアップ用アクチュエータを駆動するフォーカスドライバ54Bと、ピックアップ用アクチュエータを駆動するトラッキングドライバと54Cとを含むものとして構成される。
ここで、レーザドライバ54Aは、再生用のレーザダイオードを駆動する再生用レーザドライバ54Aaと、記録用のレーザダイオードを駆動する記録用レーザドライバ54Abとを含むものとして構成される。
サーボプロセッサ55は、フォーカスサーボを行なうためのフォーカスサーボ回路55Aと、トラッキングサーボを行なうためのトラッキングサーボ回路55Bとを含むものとして構成される。
信号処理部56は、光ピックアップ53によって検出された信号を増幅するプリアンプ56Aと、プリアンプ56Aによって増幅された検出信号からフォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号,ウォブルやランドプリピットのアドレス信号[アドレス情報(レイヤ情報を含む)]や例えば記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー及びトラッキング極性等の記録再生条件などの情報を含むデータ信号(情報)等を生成するマトリックス回路56Bと、マトリックス回路56Bによって生成されたアドレス信号[アドレス情報;記録層番号(レイヤ情報)を含む]を復調する復調回路56Cとを備えるものとして構成される。なお、マトリックス回路56Bによって生成されたデータ信号は、図示しない2値化回路及び復調回路等を介して処理された後、コンピュータ等へ送られる。
なお、光記録媒体50を作製する際に、レイヤ情報を含むアドレス情報や例えば記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー及びトラッキング極性等の記録再生条件などの情報をプリピット(ROMピット)により記録する場合には、信号処理部56は、マトリックス回路と、2値化回路と、復調回路とを備えるものとして構成すれば良い。
データ処理部57は、他のコンピュータ等から送られてくるデータをアドレス情報とともに変調する変調回路57Aと、変調されたデータをもとに、記録用レーザドライバ54Abに対する記録パルスの制御(記録パルスのマルチパルス変調)を行なう記録ストラテジ回路(ライトストラテジ回路)57Bとを備えるものとして構成される。
次に、上述のように構成される光記録媒体の記録再生装置60の制御部58が所定のプログラムを実行して行なわれる処理(光記録媒体の記録再生方法,記録方法,再生方法)について、図4,図5を参照しながら説明する。
ここでは、2層の記録層2,5(22,25)を有し、レイヤ情報が記録層のほぼ全面に記録されている光記録媒体50に対して情報を記録(又は再生)する場合を例に説明する。
(媒体装着時の処理)
本実施形態では、記録再生装置(ドライブ)に光記録媒体が装着されると、制御部58からの指令に基づいて、光記録媒体50に各記録層2,5(22,25)のレイヤ情報と関連づけて記録されている例えば記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー及びトラッキング極性等の記録再生条件を読み出し(記録再生条件読出ステップ,記録再生条件読出部)、これらの記録再生条件を各記録層2,5(22,25)のレイヤ情報と関連づけてメモリ58Bに記憶するようになっている。
例えば、各記録層2,5(22,25)のうちのレーザ光の入射側に最も近い層[第1記録層2(22)]のみに記録再生条件を記録しておき、ドライブが第1記録層2(22)に最初にアクセスするようにしておく場合、媒体装着時に、ドライブは、第1記録層2(22)にアクセスして記録再生条件を読み出すことになる。この場合、第1記録層2(22)のトラッキング極性は予め決められており、この第1記録層2(22)から読み出されるトラッキング極性は、第1記録層2(22)以外の第2記録層5(25)のトラッキング極性である。また、トラッキング極性以外の記録再生条件は、各記録層2,5(22,25)の記録再生条件である。なお、第1記録層以外の第2記録層5(25)のトラッキング極性も予め決めておく場合には、第1記録層2(22)に記録しておかなくても良い。
特に、本実施形態では、例えば記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー及びトラッキング極性等の記録再生条件などの情報は、ウォブル,ランドプリピットとして記録されているため、光ピックアップ53によって検出されたこれらの情報は、マトリックス回路56B,復調回路56C等の信号処理部56で処理され、制御部58のメモリ58Bに記憶されるようになっている。
なお、例えば記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー及びトラッキング極性等の記録再生条件などの情報を、ROMピット,記録ピットとして記録させている場合には、光ピックアップ53によって検出されたこれらの情報は、マトリックス回路,2値化回路,復調回路等の信号処理部で処理され、制御部58のメモリ58Bに記憶されるようにすれば良い。
(光記録媒体の記録方法)
光記録媒体の記録再生装置(ドライブ)60は、図4に示すように、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータから(又は、ドライブ自体に設けられているボタンなどの入力部を介して)記録指令が入力されると、制御部58が、媒体の記録領域に含まれる目次情報領域にアクセスして、どのアドレスに書き込みが可能であるかを判定する。そして、書込可能と判定したアドレスに基づいて、どの記録層に記録するかを決定する(ステップS10)。なお、媒体がドライブにセットされたときに目次情報領域にアクセスし、予め目次情報を読み出しておく場合には、予め読み出しておいた目次情報を用いて、どのアドレスに書き込みが可能であるかを判定するようにすれば良い。
ここで、アドレス情報にレイヤ情報を含ませておく場合には、アドレス情報に含まれるレイヤ情報を検出することで、どの記録層に記録するかを決定することができるし、ドライブ側にアドレス情報とレイヤ情報とを対応づけたテーブルを持たせておくような場合には、このテーブルを用いてアドレス情報からレイヤ情報を決定することができる。
このように、制御部58は、記録指令が入力されると、記録する記録層をレイヤ情報で特定する。この制御部58の機能を記録層決定部(記録層特定部)という。
次に、制御部58は、ステップS10で特定された記録層のレイヤ情報に基づいてメモリ58Bから記録パルスストラテジを読み出し(ステップS20)、記録ストラテジ回路57Bの記録パルスストラテジを設定する(ステップS30)。
また、制御部58は、ステップS10で特定された記録層のレイヤ情報に基づいてメモリ58Bから記録推奨パワーを読み出し(ステップS40)、読み出した記録推奨パワーに基づいて記録用レーザドライバ54Abの出力設定値を設定する(ステップS50)。
さらに、制御部58は、ステップS10で特定された記録層のレイヤ情報に基づいてメモリ58Bからトラッキング極性を読み出し(ステップS60)、トラッキングサーボ回路55Bのトラッキング極性を設定する(ステップS70)。
上述のようにして記録条件(記録再生条件)が設定された後、制御部58は、フォーカスサーボ回路55Aに対してフォーカスサーボ指令を出し、この指令を受けたフォーカスサーボ回路55Aは、フォーカスドライバ54Bやピックアップ用アクチュエータを介して、光ピックアップ53を制御することで第1記録層2(22)及び第2記録層5(25)のうちのいずれか一の記録層に対してフォーカスサーボをかける(ステップS80)。この制御部58の機能をフォーカスサーボ制御部という。
本実施形態では、上述のように、トラッキングサーボ回路55Bのトラッキング極性が、ステップS10で特定された記録層に応じたトラッキング極性に設定されるようになっているため、記録しようとする記録層に応じたトラッキング極性でトラッキングが行なわれることになる。
ここで、光記録媒体50の各記録層2,5(22,25)のほぼ全面にアドレス情報の一部としてレイヤ情報を記録しておく場合には、アドレス情報に基づいて所望のアドレスにアクセスした状態でフォーカスサーボをかければ良い。一方、光記録媒体50の記録管理領域にレイヤ情報を記録しておく場合には、この記録管理領域でフォーカスサーボをかければ良い。
なお、複数の記録層を有する光記録媒体に対して情報の記録を行なう場合には、複数の記録層のうちのいずれか一の記録層に対してフォーカスサーボをかければ良い。
次に、制御部58は、信号処理部56としてのプリアンプ56A,マトリックス回路56B及び復調回路56Cを介して、フォーカスサーボをかけた一の記録層に記録されているレイヤ情報(層情報)を読み出す(ステップS90)。この制御部58の機能をレイヤ情報読出部という。
そして、制御部58は、ステップS90で読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が、ステップS10で特定された記録層であるか否かを判定する(ステップS100)。つまり、ステップS90で読み出されたレイヤ情報が、ステップS10で特定された記録層のレイヤ情報と一致するか否かを判定する。この制御部58の機能を記録層判定部(レイヤ情報判定部)という。
この判定の結果、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が、ステップS10で特定された記録層(記録しようとする特定記録層)であると判定した場合(即ち、レイヤ情報が一致すると判定した場合)、制御部58は、記録用レーザドライバ54Abを介してレーザダイオードから出力されるレーザの最適パワー制御(OPC;Optimum Power Control)を行なう(ステップS110)。つまり、フォーカスサーボをかけた一の記録層の例えば内周側(又は外周側)に設けられているパワーキャリブレーションエリア(PCA;Power Calibration Area,試し書きエリア)で、レーザパワーを変えて試し書きを行なうことでレーザパワーをステップS10で特定された記録層に応じた最適パワーに制御する。
本実施形態では、上述のように、記録用レーザドライバ54Abの出力設定値が、予め記録層に応じた記録推奨パワーに設定されるようになっており、最適パワー制御を迅速に行なえるようになっている。
一方、制御部58は、ステップS100で、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が記録しようとする記録層でないと判定した場合(即ち、レイヤ情報が一致していないと判定した場合)には、ステップS80に戻り、他の記録層に対してフォーカスサーボをかけ、以後、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が記録しようとする記録層であると判定されるまで(即ち、レイヤ情報が一致するまで)、同様の処理(ステップS80〜S100)が繰り返される。
そして、上述のようにして最適パワー制御を行なった後で、制御部58は、データ処理部57及び記録用レーザドライバ54Abを介して光ピックアップ53に対して記録指令を出し、これに応じてレーザダイオードが駆動されて、フォーカスサーボをかけた一の記録層のアドレス情報によって特定されるアドレスに、記録層に応じた記録条件(記録再生条件)に基づいて、例えばパーソナルコンピュータや他の機器から送られてきた情報(データ)の記録が行なわれる(ステップS120)。この制御部58の機能を記録制御部(記録再生制御部)という。
本実施形態では、上述のように、記録ストラテジ回路57Bの記録パルスストラテジ(記録パルス変調パターン)が、ステップS10で特定された記録層に応じた記録パルスストラテジに設定されるようになっているため、記録しようとする記録層に応じた記録パルスストラテジで情報の記録が行なわれることになる。
また、本実施形態では、上述のように、記録用レーザドライバ54Abから出力されるレーザのパワー(記録パワー)が、ステップS10で特定された記録層に応じた最適パワーに制御されるようになっているため、記録しようとする記録層に応じたレーザパワーで情報の記録が行なわれることになる。
(光記録媒体の再生方法)
光記録媒体の記録再生装置(ドライブ)60は、図5に示すように、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータから(又は、ドライブ自体に設けられているボタンなどの入力部を介して)再生指令が入力されると、制御部58が、再生指令に含まれるアドレス情報に基づいて、どの記録層を再生するかを決定する(ステップA10)。
ここで、媒体をドライブにセットすると、媒体から目次情報(どのアドレスにどの情報が記録されているかの情報)を読み出し、例えばコンピュータの画面上にアイコンを表示させるようにしておき、ユーザがアイコンをクリックすると、ドライブにアドレス情報を含む再生指令が入力されるようにしておけば良い。
このように、制御部58は、再生指令が入力されると、再生する記録層を特定する。この制御部58の機能を記録層決定部(記録層特定部)という。
次いで、制御部58は、ステップA10で特定された記録層のレイヤ情報に基づいてメモリ58Bからトラッキング極性を読み出し(ステップA20)、トラッキングサーボ回路55Bのトラッキング極性を設定する(ステップA30)。
このようにして再生条件(記録再生条件)が設定された後、制御部58は、フォーカスサーボ回路55Aに対してフォーカスサーボ指令を出し、この指令を受けたフォーカスサーボ回路55Aは、フォーカスドライバ54Bやピックアップ用アクチュエータを介して、光ピックアップ53を制御することで第1記録層2(22)及び第2記録層5(25)のうちのいずれか一の記録層に対してフォーカスサーボをかける(ステップA40)。この制御部58の機能をフォーカスサーボ制御部という。
本実施形態では、上述のように、トラッキングサーボ回路55Bのトラッキング極性が、ステップA10で特定された記録層に応じたトラッキング極性に設定されるようになっているため、再生しようとする記録層に応じたトラッキング極性でトラッキングが行なわれることになる。
ここで、光記録媒体50の各記録層2,5(22,25)のほぼ全面にアドレス情報の一部としてレイヤ情報を記録しておく場合には、アドレス情報に基づいて所望のアドレスにアクセスした状態でフォーカスサーボをかければ良い。一方、光記録媒体50の記録管理領域にレイヤ情報を記録しておく場合には、この記録管理領域でフォーカスサーボをかければ良い。
なお、複数の記録層を有する光記録媒体に対して情報の再生を行なう場合には、複数の記録層のうちのいずれか一の記録層に対してフォーカスサーボをかければ良い。
次に、制御部58は、信号処理部56としてのプリアンプ56A,マトリックス回路56B及び復調回路56Cを介して、フォーカスサーボをかけた一の記録層に記録されているレイヤ情報(層情報)を読み出す(ステップA50)。この制御部58の機能をレイヤ情報読出部という。
そして、制御部58は、ステップA50で読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が、ステップA10で特定された記録層であるか否かを判定する(ステップA60)。つまり、ステップA50で読み出されたレイヤ情報が、ステップA10で特定された記録層のレイヤ情報と一致するか否かを判定する。この制御部58の機能を記録層判定部(レイヤ情報判定部)という。
この判定の結果、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が、ステップA10で特定された記録層(再生しようとする特定記録層)であると判定した場合(即ち、レイヤ情報が一致すると判定した場合)、制御部58は、再生用レーザドライバ54Aaを介して光ピックアップ53に対して再生指令を出し、これに応じてレーザダイオードが駆動されて、記録層に応じた再生条件(記録再生条件)に基づいて、フォーカスサーボをかけた一の記録層のアドレス情報によって特定されるアドレスに記録されている情報を信号処理部56を介して再生する(ステップA70)。この制御部の機能を再生制御部(記録再生制御部)という。
本実施形態では、上述のように、再生用レーザドライバ54Aaから出力されるレーザのパワー(再生パワー)が、ステップA10で特定された記録層に応じた最適パワーに制御されるようになっているため、再生しようとする記録層に応じたレーザパワーで情報の再生が行なわれることになる。
ところで、制御部58は、ステップA60で、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が再生しようとする記録層でないと判定した場合(即ち、レイヤ情報が一致していないと判定した場合)には、ステップA40に戻り、他の記録層に対してフォーカスサーボをかけ、以後、読み出されたレイヤ情報によって特定される記録層が再生しようとする記録層であると判定されるまで(即ち、レイヤ情報が一致するまで)、同様の処理(ステップA40〜A60)が繰り返される。
したがって、本実施形態にかかる光記録媒体,光記録媒体の記録再生方法及び光記録媒体の記録再生装置によれば、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようになるという利点がある。
また、光記録媒体にレイヤ情報が記録されているため、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層に応じて、例えば記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等の記録再生条件を瞬時に切り替えることができるようになり、情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようになるという利点もある。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
本発明の一実施形態にかかる光記録媒体(タイプ1)の全体構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる光記録媒体(タイプ2)の全体構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の記録再生装置の全体構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の記録再生装置の制御部によって実行される記録処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる光記録媒体の記録再生装置の制御部によって実行される再生処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1,21 第1基板(第1の基板)
2,22 第1記録層(第1の記録層)
3,23 半透明反射層
4 中間樹脂層(中間層)
5,25 第2記録層(第2の記録層)
6,26 反射層
7 接着層
8,27 第2基板(第2の基板)
28 バッファー層
11,12,31 凸部からなる記録トラック
24 透明接着層(中間層)
32 凹部からなる記録トラック
50 光記録媒体
51 スピンドルモータ
52 モータドライバ
53 光ピックアップ
54 光ピックアップ用ドライバ
54A レーザドライバ
54Aa 再生用レーザドライバ
54Ab 記録用レーザドライバ
54B フォーカスドライバ
55 サーボプロセッサ
55A フォーカスサーボ回路
56 信号処理部(再生処理部)
56A プリアンプ
56B マトリックス回路
56C 復調回路
57 データ処理部(記録処理部)
57A 変調回路
57B 記録ストラテジ回路
58 制御部(マイコン)
58A CPU
58B メモリ
60 記録再生装置(ドライブ)

Claims (7)

  1. 片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の記録再生方法であって、各記録層のトラッキング情報を読み出すことにより光記録媒体の構成を判断し、当該構成に応じて情報の記録又は再生を行なうことを特徴とする、光記録媒体の記録再生方法。
  2. 片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体の記録再生装置であって、各記録層のトラッキング情報を読み出すことにより光記録媒体の構成を判断し、当該構成に応じて情報の記録又は再生を行なうことを特徴とする、光記録媒体の記録再生装置。
  3. 請求項1記載の光記録媒体の記録再生方法によって記録又は再生される光記録媒体であって、
    片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備え、
    前記各記録層のトラッキング情報を含む記録再生条件の少なくとも一つが記録されていることを特徴とする、光記録媒体。
  4. 前記記録再生条件が、記録パルスストラテジ及び/又は記録推奨パワーを含むことを特徴とする、請求項3記載の光記録媒体。
  5. 前記トラッキング情報が、前記各記録層のうち、最初にアクセスする記録層に記録されていることを特徴とする、請求項3又は4記載の光記録媒体。
  6. 前記記録再生条件が、前記各記録層のうちのレーザ光の入射側に最も近い層に記録されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  7. 前記各記録層が、色素含有記録層であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の光記録媒体。
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