JP2004288264A - 光記録媒体、光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリカーボネート製の第1の基板101と、含金属アゾ系色素を含有する第1の記録層102及び第2の記録層105を備え、第1の記録層102及び第2の記録層105の層間に形成され、光透過率が40%以上を示す半透明な第1の反射層103と、ガラス転移温度が45〜95℃であり、硬化収縮率が15%以下の紫外線硬化性樹脂からなる中間層104とを有する光記録媒体100であって、この第2の記録層105を形成する工程は、中間層104を形成する樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱処理が行われる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体及び光記録媒体の製造方法に関し、より詳しくは、大容量のデータが記録可能な光記録媒体及びこの光記録媒体を安定して製造することができる光記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、CD−R、CD−RW、MO等の各種光記録媒体は、大容量の情報を記憶でき、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータのような情報処理装置における外部記憶装置として広く認知され普及しつつある。種々の光記録媒体の中でもCD−R、DVD−R、DVD+R等、有機色素を含む記録層(以下、「色素含有記録層」と記すことがある。)を有する光ディスクは比較的安価で、且つ、再生専用の光ディスクとの互換性を有するため、特に広く用いられている。1例として、有機色素を含む記録層を有する光ディスクとして代表的なCD−R等の媒体は、透明ディスク基板上に色素含有記録層と反射層とをこの順に有し、これらの記録層や反射層を覆う保護層を有する積層構造であり、基板を通してレーザ光にて記録・再生を行なうものである。
【0003】
これら光記録媒体の記録容量を更に大容量化するための1つの手段として、1枚の媒体に記録層を複数、例えば2層(デュアルレイヤ)設けることが挙げられる。また、この場合、2つの記録層を片面から記録・再生ができるようにすることが利便性の上で要請されている。このような2つの記録層に記録された情報を片面から記録・再生を行う方式は、色素記録層を用いた光記録媒体に適用しようとすると複雑な層構成が必要とされることから実現された例が見られない。
【0004】
このような要請に応えるべく、出願人は、ディスク状の透明な第1の基板上に、色素を含む第1の記録層、半透明の第1の反射層、中間樹脂層、色素を含む第2の記録層、第2の反射層、接着層、第2の基板をこの順に有してなる光記録媒体について出願を行った(特許文献1)。これにより、色素記録層を用いた光記録媒体の片面側から第1の記録層及び第2の記録層に情報を記録することが可能になり、再生時にも、デュアルレイヤタイプの光記録媒体として片面側から信号を読み取ることが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】
特願2002−138832号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような積層構造を有する光記録媒体の製造方法としては、例えば、記録トラック用の凹凸が形成された透明な第1の基板上に色素を含む第1の記録層、第1の反射層、記録トラック用の凹凸が形成された中間層、色素を含む第2の記録層、第2の反射層をこの順に形成し、最後に第2の基板を接着することにより製造する方法が挙げられる。この製造方法の場合は、中間層は、第1の反射層上に中間層を形成するための光硬化性樹脂原料等を塗布し、この上に凹凸を有する樹脂製スタンパ等を載置し、光硬化性樹脂原料等を硬化させた後スタンパを剥離し、光硬化性樹脂の表面に凹凸を転写させて形成される(Photo Polymerization:以下、「2P法」と記すことがある。)。
【0007】
しかし、2P法により記録用の凹凸を有する中間層を形成した後、さらに第2の記録層を形成するために色素層を塗布し加熱処理を行うと、基板に反りが発生する現象が見られることがある。これは、中間層を形成する光硬化性樹脂等が完全には硬化しきれず、その一部に残留した未硬化部分が次工程の第2の記録層を形成する際に行われる加熱処理により硬化が促進され、急激に中間層が収縮することに伴い、基板に反りが生じると考えられている。基板にこのような反りが生じると、色素を含む記録層の厚さが安定しない、第2の基板を正確に貼り合わせることが困難になる等の問題が発生するおそれがあり、対策が必要とされている。
【0008】
本発明は、このような色素記録層を用いたデュアルレイヤタイプの光記録媒体を製造する際に浮き彫りになった技術的課題を解決すべくなされたものであり、即ち、本発明の目的は、大容量のデータが記録可能な色素記録層を用いたデュアルレイヤタイプの光記録媒体及びこの光記録媒体を安定して製造することができる光記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明が適用される光記録媒体は、特定の温度範囲にガラス転移温度を有する樹脂からなる中間層を設けた構成を採用している。即ち、本発明が適用される光記録媒体は、基板と、基板上に設けられ、基板側から照射された光により情報が記録される色素を含有する第1の記録層及び第2の記録層とを備え、第1の記録層及び第2の記録層の層間に形成され、45〜95℃の温度の範囲にガラス転移温度を有する樹脂からなる中間層と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明が適用される光記録媒体における中間層は、紫外線硬化性樹脂から形成されていることが好ましく、さらに、基板を形成する樹脂のガラス転移温度より、少なくとも30℃低温の温度にガラス転移温度を有する樹脂から形成されていることが好ましい。また、中間層は、硬化収縮率が15%以下を示す紫外線硬化性樹脂から形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明が適用される光記録媒体においては、第1の記録層と中間層との間に、第1の記録層側から入射した光の一部を反射し、一部を透過させる光透過率が40%以上を示す反射層を設けることが好ましく、この反射層は、厚さの下限が3nmであり、上限が50nmであることが好ましい。さらに、本発明が適用される光記録媒体は、前述した第2の記録層の基板側とは反対側に形成され、第2の記録層を透過した光を反射する第2の反射層と、接着層と、第2の基板とを、この順に更に備えることが好ましい。
【0012】
一方、本発明は、基板上に、直接又は他の層を介して樹脂からなる樹脂層を形成する工程と、形成された樹脂層上に、色素を含有し、照射された光により情報が記録される記録層を形成する工程と、を有し、この記録層を形成する工程は、樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法として捉えることができる。特に、この記録層を形成する工程は、湿式製膜法であることが好ましく、光記録媒体を安定して製造することができる。
【0013】
本発明が適用される光記録媒体の製造方法においては、このように、基板上に樹脂層を形成した後、色素記録層を形成する際に使用した溶媒を除去するために行う加熱工程を、樹脂層を形成する樹脂のガラス転移温度以上の温度において行うことに特徴を有するものである。その結果、加熱工程中、樹脂層を形成する樹脂はゴム状の柔らかい状態になるので、たとえ、加熱工程による熱により樹脂が収縮しても、樹脂層の下側の基板に反りを生じさせるほどの力が働かないと考えられ、例えば、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂製の基板に反りが派生する現象を抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本実施の形態が適用される光記録媒体を詳述する。図1は本実施形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。図1に示された光記録媒体100は、ディスク状の光透過性の第1の基板101と、この第1の基板101上に、色素を含む第1の記録層102と、半透明の第1の反射層103と、中間層104と、色素を含む第2の記録層105と、第2の反射層106と、接着層107と、最外層を形成する第2の基板108とが、順番に積層された構造を有している。
【0015】
図1に示すように、ディスク状の光透過性の第1の基板101上に形成された、色素を含む第1の記録層102に、第1の基板101を介して照射されたレーザ光110により光情報の記録・再生が行われる。さらに、レーザ光110の一部は、第1の反射層103を透過し、中間層104を介して色素を含む第2の記録層105に照射され、光情報の記録・再生が行われる。第1の反射層103により反射されたレーザ光110の一部及び第2の反射層106により反射されたレーザ光110の一部は、それぞれ、レーザ光110を集光するためのフォーカシングに利用される。第2の基板108は、接着層107により第2の反射層106上に積層され、最外層を形成すると共に、光記録媒体100に剛性を付与し、形状の安定性を保っている。尚、第1の基板101及び中間層104上にはそれぞれ凹凸が形成され、それぞれ記録トラックを構成している。
【0016】
なお、本実施の形態が適用される光記録媒体において、「光透過性(又は透明)」とは、色素を含む第1の記録層102及び第2の記録層105に光情報を記録・再生するために照射される光の波長に対する光透過性を意味するものであり、具体的には、光情報を記録・再生するための光の波長について50%以上、好ましくは60%以上の透過性があることを言う。尚、本実施の形態においては、第1の基板101側から入射したレーザ光110により光情報の記録・再生が行われる第1の記録層102及び第2の記録層105の態様を例示したが、第2の基板108側から光を入射させても良い。
【0017】
第1の基板101は、光透過性を有し、複屈折率が小さい等、光学特性に優れることが望ましい。また射出成形が容易である等、成形性に優れることが望ましい。さらに、吸湿性が小さいことが望ましい。更に、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えるのが望ましい。第1の基板101を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。また、ガラス等の基体上に、光硬化性樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設けたもの等も使用できる。これらの中でも、光学特性、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点からはポリカーボネートが好ましい。また、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
【0018】
第1の基板101の厚さは、通常、2mm以下、好ましくは1mm以下である。対物レンズと記録層との距離が小さく、また、基板が薄いほどコマ収差が小さい傾向があり、記録密度を上げやすい。但し、光学特性、吸湿性、成形性、形状安定性を十分得るために、通常10μm以上、好ましくは30μm以上である。
【0019】
第1の記録層102は、通常、例えば、CD−R、DVD−R、DVD+R等の片面型記録媒体に用いられる記録層と同程度の感度を有する。第1の記録層102に使用される色素は、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザでの記録に適する色素化合物が好ましい。中でも、通常CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザ(例えば、780nm、830nm)、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザ(例えば、635nm、650nm、680nm)、波長410nm又は515nm等のいわゆるブルーレーザ等による記録に適する色素がより好ましい。
【0020】
第1の記録層102に使用される色素としては、特に限定されないが、通常、有機色素材料が使用される。有機色素材料としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの中でも、含金属アゾ系色素は、記録感度に優れ、かつ耐久性、耐光性に優れるため好ましい。これらの色素は1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0021】
また、第1の記録層102には、記録層の安定や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、記録感度向上のために金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していても良い。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えば、エチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
【0022】
さらに第1の記録層102には、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0023】
第1の記録層102の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、十分な変調度を得るために、通常、5nm以上、好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。但し、光を透過させる必要があるため、通常、3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0024】
第1の記録層102の成膜方法としては、特に限定されないが、通常、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法等の湿式製膜法が好ましい。また、均一な記録層が得られるという点から、真空蒸着法が好ましい。
【0025】
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、一般的に加熱処理を行い、溶媒を除去する。ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0026】
これらの溶媒を除去するための加熱処理は、溶媒を除去し、且つ、簡便な設備により行うという観点から、通常、使用する溶媒の沸点よりやや低い温度で行われ、通常、60〜100℃の範囲で行われる。また、加熱処理の方法は、特に限定されないが、例えば、第1の基板101上に第1の記録層102を形成するために色素を含有する溶液を塗布して成膜した後、所定の温度で所定時間(通常、5分間以上、好ましくは10分間以上、但し、30分間以内、好ましくは20分間以内)保持する方法が挙げられる。また、赤外線、遠赤外線を短時間(例えば、5秒間〜5分間)照射し、第1の基板101を加熱する方法も可能である。
【0027】
真空蒸着法の場合は、例えば、有機色素と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−2〜10−5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより行われる。
【0028】
第1の反射層103は、記録再生光の吸収が小さく、光透過率が40%以上あり、且つ、通常、30%以上の適度な光反射率を有する必要がある。例えば、反射率の高い金属を薄く設けることにより適度な透過率を持たせることができる。また、ある程度の耐食性があることが望ましい。更に、第1の反射層103の上層(ここでは中間層104)からの他の成分の浸み出しにより第1の記録層102が影響されないような遮断性を持つことが望ましい。
【0029】
第1の反射層103の厚さは、光透過率が40%以上であるために、通常、50nm以下、好ましくは30nm以下、更に好ましくは25nm以下である。但し、第1の記録層102が第1の反射層103の上層により影響されないために、通常3nm以上、好ましくは5nm以上である。
【0030】
第1の反射層103を構成する材料としては、特に限定されないが、再生光の波長における反射率が適度に高いものが好ましく、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、希土類金属等の金属及び半金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く第1の反射層103の材料として適している。また、特に、Agを50%以上含有する金属材料はコストが安い点、反射率が高い点から好ましい。
【0031】
第1の反射層103は膜厚が薄く、膜の結晶粒が大きいと再生ノイズの原因となるため、結晶粒が小さい材料を用いるのが好ましい。純銀は結晶粒が大きい傾向があるためAgは合金として用いるのが好ましい。中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
【0032】
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNd等である。
【0033】
第1の反射層103としてはAuのみからなる層は結晶粒が小さく、耐食性に優れ好適である。また、第1の反射層103としてSiからなる層を用いることも可能である。さらに、金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0034】
第1の反射層103を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、第1の基板101と第1の記録層102との間、第1の記録層102と第1の反射層103との間に、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系または有機系材料からなる中間層、接着層を設けることもできる。
【0035】
中間層104は、ガラス転移温度が、45℃以上、好ましくは、47℃以上、の樹脂から構成される。中間層104を構成する樹脂が、この温度範囲にガラス転移温度を有することにより、通常の光記録媒体が使用される温度において、中間層104は十分な剛性を保つことができる。但し、中間層104は、ガラス転移温度が、95℃以下、好ましくは、90℃以下の樹脂から構成される。通常、2P法により記録用の凹凸を有する中間層104を形成した後、その中間層104の表面に溶媒に溶かした色素を塗布し、溶媒に溶けた色素層を形成する。そして、この溶媒に溶けた色素層を加熱することにより、色素が溶けている溶媒だけを除去して、色素を中間層104の表面にて定着させ色素からなる第2の記録層105を形成する。そして、通常、この溶媒を除去するために行う加熱処理は60〜100℃の範囲で行われる。つまり、中間層104を構成する樹脂が、この加熱処理の温度以下にガラス転移温度を有することにより、溶媒を除去するための加熱処理中に中間層104が急激に収縮したとしても、中間層104がゴム状の柔らかい状態であるため、第1の基板101を反らせるほどの力は働かず、その結果第1の基板101に反りが発生する現象を抑制することが可能となる。
【0036】
さらに、2P法により中間層104を形成する場合は、第1の基板101を構成する樹脂と中間層104を構成する樹脂との関係では、第1の基板101を構成する樹脂のガラス転移温度よりも少なくとも30℃、好ましくは、60℃低温の温度範囲にガラス転移温度を有することが好ましい。これにより、第1の基板101は十分な硬度を保っているため、加熱処理中の中間層104の収縮により発生する反りを効果的に抑えることができる。
【0037】
また、中間層104を構成する樹脂は、光透過性を有し、凹凸により溝やピットが形成可能であることが必要である。また接着力が高く、さらに、硬化接着時の硬化収縮率が、通常、15%以下、好ましくは、10%以下であることが、中間層104の形成時の反りの発生を抑えることができ、光記録媒体100の形状安定性を高めることができるので好ましい。また、中間層104の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上が必要である。但し、100μm以下が好ましい。
【0038】
中間層104には、凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2の記録層105に情報が記録・再生される。溝幅は、通常、50〜500nm程度であり、溝深さは10〜250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。このような凹凸は、コストの観点から、凹凸を持つ樹脂スタンパ等から光硬化性樹脂等の硬化性樹脂に転写、硬化させて製造する2P法(Photo Polymerization法)により行われる。
【0039】
中間層104を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、これを塗布し、乾燥(加熱)することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外光を照射して硬化させることによって形成することができる。これらの材料は単独または混合して用いても良い。さらに、多層膜にして用いても良い。
【0040】
塗布方法としては、スピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。高粘度の樹脂はスクリーン印刷等によっても塗布形成できる。紫外線硬化性樹脂は、20〜40℃において液状であるものを用いると、生産性の観点から、溶媒を用いることなく塗布できるのが好ましい。また、粘度は20〜1000mPa・sとなるように調製するのが好ましい。
【0041】
中間層104の材料の中でも、紫外線硬化性樹脂は、透明度が高く、硬化時間が短く製造上有利な点で好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂が挙げられ、いずれも使用することができる。ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。紫外線硬化性化合物としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、単独または2種類以上併用して用いることができる。ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0042】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1、3−ブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
また、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
また、これらの重合性モノマーと同時に併用できるものとしては、重合性オリゴマーとして、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
更に、ラジカル系紫外線硬化性樹脂には、通常、光重合開始剤を配合する。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好ましい。このような光重合開始剤として、分子開裂型としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2、4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0047】
さらに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良い。水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0048】
また、これらの光重合開始剤とともに、増感剤を併用することができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N、N−ジメチルベンジルアミンおよび4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、遊離した塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量が1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0050】
カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェード、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0051】
さらに、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0052】
カチオン型紫外線硬化性樹脂100重量部当たりのカチオン重合型光開始剤の割合は通常、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部である。なお、紫外線光源の波長域の近紫外領域や可視領域の波長をより有効に利用するため、公知の光増感剤を併用することができる。この際の光増感剤としては、例えばアントラセン、フェノチアジン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0053】
また、紫外線硬化性樹脂には、必要に応じてさらにその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
【0054】
第2の記録層105は、入射したレーザ光110のパワーに比べて、第1の記録層102と第1の反射層103の存在等により約半分程度に減少したパワーにより記録が行われるため、通常、例えば、CD−R、DVD−R、DVD+R等の片面型記録媒体に用いられる記録層より高い感度の色素を使用することが好ましい。また、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素を用いることが望ましい。更に、第2の記録層105と第2の反射層106との組合せにおいて、光の反射及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。
【0055】
第2の記録層105を構成する材料、製膜方法、製膜に使用する溶媒等については、第1の記録層102と同様に説明され、製膜方法としては、湿式製膜法が好ましい。第2の記録層105の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、通常、10nm以上、好ましくは、30nm以上、特に好ましくは50nm以上である。但し、適度な反射率を得るために、通常、3μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。第1の記録層102と第2の記録層105とに用いる材料は同じでも良いし異なっていても良い。
【0056】
第2の反射層106は、高反射率、かつ高耐久性であることが望ましい。高反射率を確保するために、第2の反射層106の厚さは、通常、20nm以上、好ましくは、30nm、更に好ましくは50nm以上である。但し、生産上のタクトタイムを短縮しコストを低減するためには、通常、400nm以下、好ましくは300nm以下である。
【0057】
第2の反射層106を構成する材料としては、再生光の波長において反射率の十分高いものが好ましく、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta及びPdの金属を単独または合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは反射率が高く、第2の反射層106の材料として適している。また、これらの金属を主成分とする以外に他の成分を含んでいても良い。他の成分の例としては、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及び希土類金属などの金属及び半金属を挙げることができる。
【0058】
これらの中でもAgを主成分とするものが好ましく、Agの合金として用いるのが好ましい。Agを主成分とするものとしては、Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1〜15原子%、またはそれらの合計が0.1〜15原子%であることが好ましい。
【0059】
特に好ましい合金組成は、Agを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Auよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有し、かつ少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものである。希土類金属の中では、ネオジウムが特に好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNd等である。
【0060】
また、第2の反射層106としては、Auのみからなる層は高耐久性(高耐食性)が高く好適である。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、第2の反射層106として用いることも可能である。第2の反射層106を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、第2の反射層106の上下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0061】
接着層107は、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと媒体の形状安定性が高く好ましい。また、接着層107は第2の反射層106にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために両層の間に公知の無機系または有機系の保護層を設けることもできる。接着層107の膜厚は、通常、2μm以上、好ましくは5μm以上である。但し光記録媒体をできるだけ薄くするために、また硬化に時間を要し生産性が低下する等の問題があるため、通常、100μm以下が好ましい。接着層107の材料は、中間層104の材料と同様のものが用いうるほか、感圧式両面テープ等も使用可能である。感圧式両面テープを第2の反射層106と第2の基板108との間に挟んで押圧することにより、接着層107を形成できる。
【0062】
第2の基板108は、機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。また接着層107との接着性が高いことが望ましい。このような材料としては、第1の基板101に用いうる材料と同じものが用い得るほか、例えば、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、シリコン、チタン、セラミックスのいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板等を用いることができる。
【0063】
なお、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点からはポリカーボネートが好ましい。耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。光記録媒体100に十分な剛性を持たせるために、第2の基板108はある程度厚いことが好ましく、厚さは0.3mm以上が好ましい。但し、3mm以下、好ましくは1.5mm以下である。
【0064】
光記録媒体100は、上記積層構造において、必要に応じて任意の他の層を挟んでも良い。或いは媒体の最外面に任意の他の層を設けても良い。具体的には、第1の反射層103と中間層104との間、中間層104と第2の記録層105との間、第2の反射層106と接着層107との間等にバッファー層を設けても良い。バッファー層の厚さは2nm以上が好ましく、より好ましくは5nm以上である。バッファー層の厚さが過度に薄いと、上記の混和現象の防止が不十分となる虞がある。但し2000nm以下が好ましく、より好ましくは500nm以下である。バッファー層が過度に厚いと、混和防止には不必要であるばかりでなく、光の透過率を低下させる恐れもある。また無機物からなる層の場合には成膜に時間を要し生産性が低下したり、膜応力が高くなったりする虞があり200nm以下が好ましい。特に、金属の場合は光の透過率を過度に低下させるため、20nm以下程度が好ましい。
【0065】
また、記録層や反射層を保護するために保護層を設けても良い。保護層の材料としては、記録層や反射層を外力から保護するものであれば特に限定されない。有機物質の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等の誘電体が挙げられる。
【0066】
次に、本実施の形態が適用される光記録媒体の製造方法について詳細に説明する。図2は、本実施の形態が適用される光記録媒体の製造方法について説明するための図である。図2(a)に示すように、表面に凹凸で溝及びランド、プリピットが形成された第1の基板201を、スタンパをもとに射出成形または2P法等により作製する。次に、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させた塗布液を第1の基板201の凹凸を有する側の表面にスピンコート等により塗布し、第1の記録層202を成膜する。第1の記録層202を成膜した後、Ag合金等をスパッタまたは蒸着することにより、第1の記録層202上に第1の反射層203を成膜する。
【0067】
続いて、図2(b)に示すように、第1の反射層203の表面全体に紫外線硬化性樹脂層204aをスピンコート等により塗布して形成し、さらに、図2(c)に示すように、型を用いて紫外線硬化性樹脂層204aの表面に凹凸を形成する。型としては、生産性、コスト等の観点から、樹脂スタンパ210を用いる。樹脂スタンパ210は中間層204となるべき樹脂に対して十分な剥離性を有していれば良い。透明である必要はないが、成形性が良く、形状安定性が良いことが望ましい。生産性及びコストの観点から、望ましくは、樹脂スタンパ210は複数回の転写に使用可能であるのが望ましい。また、使用後のリサイクルが可能であることが望ましい。また、樹脂スタンパ210の材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0068】
図2(c)に示すように、紫外線硬化性樹脂層204aをスピンコート等により塗布した後、樹脂スタンパ210を載置し、紫外線硬化性樹脂層204aに凹凸を転写する。このとき、紫外線硬化性樹脂層204aの膜厚が所定範囲になるように調節しつつ行なう。そして、この状態で樹脂スタンパ210側から紫外線を照射する等して紫外線硬化性樹脂層204aを硬化させ、十分硬化したところで樹脂スタンパ210を剥離し、表面に凹凸を有する中間層204を形成する。
【0069】
続いて、図2(d)に示すように、有機色素を溶媒に溶解させた塗布液をスピンコート等により中間層204表面に塗布し、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱して第2の記録層205を成膜する。この場合、加熱する温度は、中間層204を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度、好ましくは、中間層204を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い温度において行われる。第2の記録層205を形成する際に、中間層204を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度において加熱することにより、第1の基板201に反りが発生する現象を抑制することが可能となる。
【0070】
そして、図2(e)示すように、Ag合金等をスパッタ、蒸着することにより第2の記録層205上に第2の反射層206を成膜する。その後、図2(f)に示すように、ポリカーボネートを射出成形して得られた第2の基板208としての鏡面基板を、接着層207を介して第2の反射層206に貼り合わせて光記録媒体の製造が完了する。
【0071】
以上、本実施形態が適用される光記録媒体及び光記録媒体の製造方法について説明したが、本実施形態は上記の態様に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、光記録媒体が3つ以上の複数の記録層を有していても良い。また、各層間や最外層として必要に応じて他の層を設けてもよい。基板入射型光ディスクに限られず、基板/反射層/記録層/保護層からなる積層構造を有し、保護層側(即ち、膜面側)からレーザ光を照射して情報の記録・再生を行なう膜面入射型光ディスクにおいても適用できる。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本実施の形態が適用される光記録媒体を、より具体的に説明する。尚、本実施の形態は、実施例に限定されるものではない。また、実施例中の%は、特に断らない限り総て重量基準である。
(樹脂スタンパ)
第1の基板を作成する際に使用するNiスタンパとはほぼ逆の凹凸を有するNiスタンパを用いて、アモルファスポリオレフィン(日本ゼオン(株)製ゼオネックス)を射出成形して、ランドピッチ0.74μm、ランド幅0.3μm、ランド高さ150〜180nmのランド及びプリピット(凸状)が形成された、直径120mm、厚さ0.6mmの樹脂スタンパを作製した。
【0073】
(ディスク反りの測定)
ディスク反り角測定装置(小野測器(株)製型式LM−1200)を用いて、ディスクの中心から、23−28mm、28−33mm、33−38mm、38−43mm、43−48mm、48−53mm、53−58mm間の合計7点の角度を測定し、これらの角度の平均値をディスクの反りとした。数値が大きいほど、ディスクの反りが大きい(単位:deg)。
【0074】
(実施例1〜3、比較例1)
Niスタンパを用いて、ポリカーボネート(ガラス転移温度155℃)を射出成形して、溝ピッチ0.74μm、溝幅0.3μm、溝深さ150〜180nmのランド及びプリピットが形成された、直径120mm、厚さ0.58〜0.6mmの第1の基板を作製した。次に、含金属アゾ色素の0.2%オクタフルオロペンタノール溶液を第1の基板上にスピンコート法により塗布し、95℃で18分間加熱処理して第1の記録層を形成した(最大吸収波長(λmax)約600nm)。次に、Ag−Cu(0.9±0.1原子%)−Nd(0.7±0.1原子%)なるAg合金を15〜20nmの厚さにスパッタリングし、透過率40%以上の第1の反射層を形成し、この上に、紫外線硬化性樹脂からなる厚さ5〜25μmの保護層を設けた。
【0075】
次に、この保護層の上に、表1に示したガラス転移温度を有する紫外線硬化性樹脂を、厚さ25〜40μmにそれぞれ塗布し、予め作製した樹脂スタンパを凹凸面を第1の基板側に向けて載置し、続いて、樹脂スタンパ側から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂が硬化した後、樹脂スタンパを剥離して、凹凸が転写された、厚さ約40μm(ランド部同士での測定値)の中間層を形成し、加熱処理前のディスクの反りを素早く測定した。
【0076】
次に、中間層の上に、第1の記録層に使用したのと同じ含金属アゾ色素の0.2%オクタフルオロペンタノール溶液をスピンコート法により塗布し、95℃で18分間加熱処理して第2の記録層を形成した後、加熱処理後のディスクの反りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
尚、Ag−Cu(0.9±0.1原子%)−Nd(0.7±0.1原子%)なるAg合金を100〜150nmの厚さにスパッタリングし、第2の反射層を形成し、この上に、紫外線硬化性樹脂からなる厚さ5〜10μmの保護層を設け、さらに、この保護層上に、紫外線硬化性樹脂からなる接着剤を、厚さ40〜70μmに塗布し、予め作製した、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製の第2の基板を載置し、続いて、第2の基板側から紫外線を照射して、接着層を硬化させて光記録媒体を作製することができる。
【0078】
【表1】
【0079】
樹脂A:ラジカル系紫外線硬化樹脂:大日本インキ(株)製SD693
樹脂B:ラジカル系紫外線硬化樹脂:日本化薬(株)製MPZ221
樹脂C:ラジカル系紫外線硬化樹脂:DSM Desotch Inc製4D6−353
樹脂D:ラジカル系紫外線硬化樹脂:日本化薬(株)製MPZ222
【0080】
表1の結果から、中間層を構成する樹脂のガラス転移温度が45以上95℃以下である光記録媒体(実施例1〜3)は、2P法により記録用の凹凸を有する中間層を形成した後、さらに第2の記録層を形成するために色素層を塗布し加熱処理を行う際に、第1の基板に反りが発生する現象が大幅に抑制されることが分かる。また、この加熱処理の温度は、中間層を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度(95℃)において行われることにより、第1の基板に反りが発生する現象を抑制することが可能となることが分かる。
【0081】
これに対して、中間層を構成する樹脂のガラス転移温度が130℃である光記録媒体(比較例1)は、2P法により記録用の凹凸を有する中間層を形成した後、さらに第2の記録層を形成するために色素層を塗布し加熱処理を行うことにより、第1の基板に発生する反りが大きいことが分かる。
【0082】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、大容量のデータが記録可能な色素記録層を用いたデュアルレイヤタイプの光記録媒体及びこの光記録媒体を安定して製造することができる光記録媒体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本実施形態が適用される光記録媒体を説明するための図である。
【図2】本実施の形態が適用される光記録媒体の製造方法について説明するための図である。
【符号の説明】
100…光記録媒体、101、201…第1の基板、102、202…第1の記録層、103、203…第1の反射層、104、204…中間層、204a…紫外線硬化性樹脂層、105、205…第2の記録層、106、206…第2の反射層、107、207…接着層、108、208…第2の基板、110…レーザ光
Claims (5)
- 基板と、
前記基板上に設けられ、照射された光により情報が記録される色素を含有する第1の記録層及び第2の記録層と、を備え、
前記第1の記録層及び前記第2の記録層の層間に形成され、45℃以上95℃以下の温度の範囲にガラス転移温度を有する樹脂からなる中間層を有することを特徴とする光記録媒体。 - 前記中間層は、紫外線硬化性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記中間層は、前記基板を形成する樹脂のガラス転移温度より、少なくとも30℃低温の温度にガラス転移温度を有する樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
- 基板上に、直接又は他の層を介して樹脂からなる樹脂層を形成する工程と、
前記形成された樹脂層上に、色素を含有し、照射された光により情報が記録される記録層を形成する工程と、を有し、
前記記録層を形成する工程は、前記樹脂層の前記樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。 - 前記記録層を形成する工程は、湿式製膜法によることを特徴とする請求項4記載の光記録媒体の製造方法。
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