JP4794094B2 - リンドウ由来の新規抗菌性タンパク質及びその遺伝子 - Google Patents

リンドウ由来の新規抗菌性タンパク質及びその遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リンドウ由来の新規抗菌性タンパク質とその遺伝子及びこれらの利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遺伝子工学技術を用いて植物に有用遺伝子を導入し、有用物質の生産性の向上や特定病害に強い病害耐性植物等を作出する試みが進められている。たとえば、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)、うどんこ病菌(Erysiphe cichoracearum)等の植物病原糸状菌、タバコ立枯れ病菌(Ralstonia solanacearum)、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae)等の植物病原細菌に対する防御機構の強化を目的として、抗菌性タンパク質遺伝子を植物細胞へ導入し、病気に対する抵抗性が高まったという事例も報告されている(西澤ら : 化学と生物 37 : 295-305(1999)など)。
【0003】
植物は進化の過程で他の生物からの攻撃に対する防御の仕組みを獲得してきた。植物は糸状菌、細菌、ウイルスをはじめとする微生物の攻撃を受けると、速やかに種々の防御応答を発現する。防御応答のうち代表的なものとしてPR-タンパク質群(Huub & Linthorst : Crit. Rev. Plant Sci. (1999))の発現が挙げられる。 PR-タンパク質はその性質からPR 1〜14までが知られている。代表的なものとして、β-1,3グルカナーゼ、キチナーゼ、タウマチン様タンパク質、脂質輸送タンパク質(Lipid transfer protein: LTP)等が挙げられる。
これらPR-タンパク質の防御機構に着目し、該遺伝子を植物に導入することによって、耐病性を獲得したという報告もある(西澤ら:化学と生物 37 : 295-305 (1999))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐病性をはじめとする植物のストレス耐性メカニズムについては未だ十分な解明はなされておらず、種間によるその違いも大きいため、遺伝子組換え技術によって必ずしも期待どおりの効果が得られるとは限らない。そこで、広い種類の植物に対し、有用に機能しうる遺伝子の探索と特定が望まれている。
【0005】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、リンドウ(Gentiana triflora)由来の極めて強い抗菌活性を有する新規タンパク質とその遺伝子の単離に成功し、これがLTPの1種であることを同定した。また発明者らは、該タンパク質を微生物により生産させることに成功した。さらに、該遺伝子をリンドウ、バラ、イネ、トルコギキョウなどの植物に導入・形質転換することにより、植物の病害耐性を強化しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供するものである。
(1) 以下の(a)又は(b)の抗菌性タンパク質。
(a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有するタンパク質。
(2) 以下の(a)又は(b)の抗菌性タンパク質をコードする遺伝子。
(a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有するタンパク質。
(3) 以下の(c)又は(d)のDNAからなる遺伝子。
(c)配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗菌活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(4) 前記(2)又は(3)記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
(5) 前記(2)又は(3)記載の遺伝子を導入して得られる形質転換体。
(6) 前記形質転換体が植物である、前記(5)記載の形質転換体。
(7) 前記(5)又は(6)記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から抗菌性タンパク質を採取する、抗菌性タンパク質の製造方法。
(8) 前記(2)又は(3)記載の遺伝子を導入することにより、病害抵抗性を付与された形質転換植物。
(9) 前記(1)記載の抗菌性タンパク質を有効成分として含む抗菌剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明者らは、液体クロマトグラフィーを駆使し、リンドウ葉から抗菌活性を示す各種の抗菌性ペプチドの単離を試みた。その結果、分子量約8kDaおよび約7kDaの抗菌性を有する特異なタンパク質を単離し、精製することに成功した。本タンパク質の抗菌活性を Terras らの方法(Terras et al. : J. Biol. Chem. 267 : 15301-15309)で検討した結果、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、リンゴ斑点落葉病菌(Alternaria alternata)、トルコギキョウ根腐れ病菌(Fusarium solani)の生育を著しく阻害することを見いだした。
【0009】
さらに、本抗菌性タンパク質の N 末端アミノ酸配列に基づき、degenerateしたプライマーを設計し、RT-PCR法によりリンドウで発現している本抗菌性タンパク質遺伝子(タンパク質の全コード領域を含む)の単離を試みた。その結果、2種の抗菌性タンパク質遺伝子のクローニングに成功し、これがリンドウのLTP遺伝子(リンドウLTP遺伝子1及びリンドウLTP遺伝子2)であることを同定した。
【0010】
すなわち、本発明の抗菌性タンパク質はリンドウ由来のLTPである。LTPは脂質輸送タンパク質の1種で、ある種の特定な糸状菌に対して抗糸状菌活性を持ち、植物の防御応答に関連するタンパク質の1つであると考えられており、PRタンパク質群の中ではPR-14の範疇に類別されている。しかしながら、LTPについては、それ以上の具体的な作用については知られておらず、組換え植物等に利用されたとの報告もない。またリンドウ科の植物から単離されたとの報告もない。
【0011】
本発明の抗菌性タンパク質の単離・精製・抗菌活性評価は、たとえば以下のようにして行うことができる。
1.タンパク質の単離・精製
タンパク質の供給源としては、リンドウの葉、茎、葉柄、花、根などが挙げられる。タンパク質の精製は、上記植物組織を各種蛋白質分解酵素の阻害剤、たとえばPMSF(phenylmethanesulfonyl fluoride)等を含むリン酸緩衝液中で摩砕後、イオン交換カラム(SP-セファロース:ファルマシア製)、逆相系カラム(フェニル5PWRP:TOSO社製)、ゲルろ過化カラム(Superose12 カラム:ファルマシア製)等、一般にタンパク質の精製に用いられるカラムを用いて分画することにより行う。
【0012】
2.タンパク質の抗菌活性
ジャガイモデキストロース培地(PDA)で生育させた各種微生物を用い、生育の阻害を指標として、単離したリンドウLTPの抗菌活性の検定を行う(Terras et al. : J. Biol. Chem. 267 : 15301-15309)。抗菌活性は、たとえば吸光度測定、顕微鏡下での胞子発芽阻害率、伸長阻害率の観察等により測定することが可能である。また、PDAなどの培地上で本タンパク質溶液を含む抗生物質検定用ペーパーディスク(ADVANTEC)を置床することにより、観察してもよい。
【0013】
また、本発明の抗菌性タンパク質遺伝子のクローニングは、たとえば以下のようにして行うことができる。
3.リンドウLTP遺伝子のクローニング
1)cDNA の合成及び PCR
mRNA の供給源としては、たとえばリンドウの葉、茎、葉柄、花、根などが挙げられる。mRNA の調製は通常行われる方法により行うことができ、たとえば、上記植物組織を、グアニジン試薬、フェノール試薬等で処理して全 RNA を得た後、特に発現量の低い遺伝子を除き、全 RNA を鋳型に PCR 反応を行う。必要に応じてオリゴ-dT セルロースやセファロース2Bを担体とするポリUセファロース等を用いたアフィニティーカラム法、あるいはバッチ法によって、ポリ(A)+RNA(mRNA)を得ても良い。さらに、必要であれば、ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ(A)+RNAをさらに精細に分画しても良い。
【0014】
このようにして得られた全 RNA を鋳型にオリゴ dT に M13プライマーM4(配列番号5) を付加したプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNA を合成する。この一本鎖 cDNAを鋳型にリンドウLTPのアミノ酸配列(配列番号2又は4)をもとに合成したプライマー(配列番号6、7、8、9)とM13プライマーM4を用いて PCR 反応によって本発明の遺伝子を得ることができるが、プライマーはこれらに限定されるものではない。
【0015】
2)塩基配列の決定
得られたPCR断片をpCR2.1(Invitrogen 社製)、pBlueScriptSK(+)(Stratagene社製)等の適切なベクターにサブクローニングした後、塩基配列の決定を行う。塩基配列の決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等、公知の手法により行うことができるが、自動塩基配列解析装置(PERKIN-ELMER社製 :ABI PRISM 377 DNA Sequence System 等)を用いる方法が簡便で好ましい。
【0016】
配列番号1及び3は、それぞれこうして特定された、本発明のリンドウペルオキシレドキシン遺伝子の塩基配列を示す。本発明にかかる抗菌性タンパク質をコードする遺伝子は、上記配列に限定されず、これら(配列番号1又は3)の遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる他の遺伝子も含むものとする。
【0017】
ストリンジェントな条件とは、たとえば、ナトリウム濃度が300-2000mM、好ましくは600-900mMであり、温度が40-75℃、好ましくは65℃の条件下を言う。なお遺伝子の変異を導入する場合には、Kunkel法やGrapped duplex 法等の公知の手法又はこれに準ずる方法により、たとえば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入キット(たとえば Mutant-K (Takara 社製)や Mutant-G (Takara 社製))、あるいは LA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキット(Takara 社製)を用いることができる。
【0018】
また配列番号2及び4は、それぞれ本発明のリンドウLTPのアミノ酸配列を示す。本発明の抗菌性タンパク質のアミノ酸配列はこれに限定されず、その産物であるタンパク質が抗菌活性を有する限り、前記アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加等の変異が生じたものであっても良い。かかる欠失、置換、付加等の変異の数は、全アミノ酸数に対して好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
【0019】
一旦本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又は本遺伝子のcDNAもしくはゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは核塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、さらに本発明の遺伝子を得ることができる。
【0020】
次に、本発明にかかる形質転換体の作出方法、及び該形質転換体の植物病原菌に対する抵抗性について説明する。なお、以下の形質転換植物、及び植物病原菌は例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
4.リンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子を導入した形質転換植物の作製
公知の遺伝子工学的手法を用いることにより、本発明の抗菌性タンパク質をコードする DNA を植物宿主に導入して、植物病原糸状菌及び植物病原細菌に対して抵抗性を有するトランスジェニック植物を作製することができる。すなわち、遺伝子工学的手法による栽培植物への本発明の抗菌性タンパク質遺伝子の導入は、植物を植物病原性糸状菌および植物病原細菌から防護する有効な手段となる。
【0022】
1)ベクターの構築、及びアグロバクテリウムの形質転換
前記1で得られた DNA はそのまま、又は適当な制限酵素で消化し、あるいは、適当なリンカーを連結して使用することができる。DNA を導入するベクターとしては、 pUC18、pUC19、pUC118、pUC119 等の pUC 系ベクター、pBI101、pBI121、pGA482 等のバイナリーベクターを挙げることができる。特に、アグロバクテリウムのバイナリーベクターを用いる場合は、該バイナリーベクターの境界配列(LB, RB)間に外来遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌内で増幅する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA4404、EHA101、EHA105、C58C1RifR 等に、凍結融解法、エレクトロポレーション法等により導入し、これを植物の形質転換体作出用に用いる。
【0023】
植物体内で外来遺伝子などを発現させるためには、構造遺伝子の前後に、それぞれ植物用のプロモーターとターミネーターを配置させる必要がある。前記プロモーターとターミネーターは特に限定されず、植物体中で機能することが知られている任意のものを用いることができる。たとえばプロモーター配列としては、カリフラワーモザイクウイルス (CaMV) 由来の 35S 転写物[The EMBO J. 6:3901-3907 (1987)、トウモロコシのユビキチン[Plant Mol. Biol. 18: 675-689 (1992) ]、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子、オクトピン(OCT)合成遺伝子のプロモーターが挙げられる。またターミネーター配列としては、たとえばカリフラワーモザイクウイルス由来やノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーター等が挙げられる。
【0024】
また、必要に応じてプロモーター配列とリンドウLTP遺伝子の間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列、たとえばトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ (Adh 1)のイントロン配列[Genes & Development 1: 1183-1200 (1987)]を導入することができる。
【0025】
さらに効率的に目的の形質転換細胞を選抜するために、有効な選択マーカー遺伝子を上記のリンドウLTP遺伝子と併用することが好ましい。該選択マーカーとしては、抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を植物に付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(htp)遺伝子及びビアラフォスに対する抵抗性を植物に付与するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子等を挙げることができる。
【0026】
リンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子ならびに選択マーカー遺伝子は、単一のベクターに一緒に組み込んでも良いし、それぞれを別個のベクターに組み込んだ2種類の組換えDNAを用いてもよい。リンドウLTP遺伝子は前記のようにプレプロ構造をなしており、活性型のリンドウLTPが生産されるためには、小胞体通過の際に、プレ配列であるシグナルペプチドが切断される必要がある。そこでリンドウLTP1及び/又はLTP2遺伝子のシグナルペプチドが他の植物細胞内でうまく機能しない場合には、これらの遺伝子がその植物中でうまく切断される様な配列をリンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子上流に配し、ベクターDNAに組み込むことができる。
【0027】
2)宿主植物への本発明リンドウLTP遺伝子の導入
本発明において宿主植物とは、植物培養細胞、栽培植物の植物全体、植物器官(たとえば葉、花弁、茎、根、根茎、種子等)、又は植物組織(たとえば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)のいずれをも意味するものである。植物培養細胞、植物体、植物器官、又は植物組織を宿主とする場合、採取した植物切片に本発明のタンパク質をコードする DNA を、アグロバクテリウムのバイナリーベクター法、パーティクルガン法、又はポリエチレングリコール法等を用いて導入することにより、宿主植物を形質転換することができる。あるいはプロトプラストにエレクトロポレーション法で導入して形質転換植物を作製してもよい。
【0028】
パーティクルガン法等による直接遺伝子導入法では、選択マーカー遺伝子を含むベクターとリンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子を含有するベクターとを混合して同時に植物の細胞に撃ち込む、いわゆる co-transformation 法により行うこともできる。形質転換の結果得られるシュート、毛状根などは細胞培養、組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用いて、適当な濃度の植物ホルモンの投与などによって、さらに植物体に再生させることができる。
【0029】
リンドウLTP遺伝子が導入された植物細胞は、選択マーカーによるスクリーニング、又はリンドウLTP遺伝子もしくはその発現産物の発現解析により、リンドウLTP1及び/又はLTP2遺伝子を保有する形質転換細胞を選抜することが可能である。得られた植物体は、土壌又はバーミキュライトを詰めたポットで栽培し、株分けすることによって増殖させることが可能である。このように増殖させたリンドウ LTP及び/又はLTP2遺伝子導入植物も本発明のトランスジェニック植物の範囲に含まれる。
本発明によりリンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子を導入された植物は、病原性糸状菌や病原性細菌が原因となる各種植物病害を含むストレスに耐性を有することが期待される。
【0030】
3)本発明の遺伝子の植物組織での発現部位の解析
得られた形質転換植物及びその次世代植物に、目的とするリンドウLTP及び/又はLTP2遺伝子が組み込まれていることの確認は、これらの細胞及び組織から常法に従ってDNAを抽出し、公知の方法、たとえばPCR法又はサザン分析法等により導入遺伝子を検出することによって行うことができる。また、本発明の抗菌性タンパク質遺伝子の組織内での発現部位は、たとえば各組織におけるmRNAの発現又はタンパク質の発現を公知の方法により解析することによって確認することができる。たとえば、RT-PCR 法、ノーザン解析法等により本発明の抗菌性タンパク質遺伝子の発現を確認することができる。また本発明の抗菌性タンパク質の発現の確認方法としては、該タンパク質に対する抗体を用いたウエスタン解析法等が挙げられる。
【0031】
次に、上記遺伝子を用いた新規抗菌性タンパク質の遺伝子工学的生産方法について説明する。
5.本発明の抗菌性タンパク質の遺伝子工学的手法による生産
本発明の抗菌性タンパク質は、たとえば以下のようにして遺伝子工学的に生産ことができる。
1)組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、公知のベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することによって得ることができる。前記ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、たとえばプラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
【0032】
前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(たとえば pBR322, pBR325, pUC18, pUC119, pTrcHis, pBlueBacHis 等)、枯草菌由来のプラスミド(たとえば pUB110, pTP5 等)、酵母由来のプラスミド(たとえば YEp13, YEp24, YCp50, pYE52 等)などが、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらにレトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクター、ジャガイモエックスウイルス等の植物ウイルスベクターなどを用いてもよい。
【0033】
前記ベクターへの本発明の遺伝子の挿入は、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が採用される。本発明の遺伝子はその遺伝子の機能を好適に発揮できるよう、ベクターに組み込む必要がある。そのため、ベクターには本発明の遺伝子の他にプロモーター、必要であればエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を含有させることができる。なお選択マーカーとしては、たとえばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
【0034】
2)形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを目的遺伝子が発現しうるように宿主中に導入することによって得ることができる。ここで宿主としては、本発明のDNAを発現できるのもであれば特に限定されず、たとえば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium melilotei)等のリゾビウム属に属する細菌、またサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cervisiae)、サッカロミセス・ポンベ(S. pombe)等の酵母、サル細胞(COS細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)等の動物細胞、あるいはSf19、Sf21等の昆虫細胞を挙げることができる。
【0035】
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが各細菌中で自律複製可能であるとともにプロモーター、リボゾーム結合配列、本発明遺伝子、転写終結配列により構成されていることが望ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていても良い。大腸菌としてはエッシェリヒア・コリ(E. coli)K12、DH1、TOP10F等が挙げられ、枯草菌としてはバチルス・ズブチリス(B. subtilis)MI114、207-21 等が挙げられる。
【0036】
前記プロモーターとしては、大腸菌等の宿主で発現できるものであれば特に限定されず、たとえばtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌由来のプロモータを用いることができる。tacプロモーター等の人為的に設計されたプロモーターを用いてもよい。
【0037】
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入できる方法であれば特に限定されず、たとえばカルシウムイオンを用いる方法(Cohen, SN et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69 : 2110 (1972))、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0038】
酵母を宿主とする場合は、たとえばサッカロミセス・セルビシエ(S. cervisiae)、サッカロミセス・ポンベ(S. pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母で発現できるものであれば特に限定されず、たとえばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOXプロモーター等を挙げることができる。
【0039】
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入しうる方法であれば特に限定されず、たとえばエレクトロポレーション法(Becker, D.M. et al. : Methods. Enzymol., 194 : 180 (1990))、スフェロプラスト法(Hinnen, A. et al. : Proc Natl. Acad. Sci. USA, 75 : 1929 (1978))、酢酸リチウム法(Itoh, H. : J. Bacteriol., 153 : 163 (1983))等を挙げることができる。
【0040】
動物細胞を宿主とする場合にはサル細胞(COS-7)、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスL細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしては、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられる。また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いても良い。動物細胞への組換えベクターの導入方法は、たとえばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合には、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法は、たとえばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が用いられる。
【0041】
3)本発明の抗菌性タンパク質の生産
本発明の抗菌性タンパク質は、前記形質転換体を培養し、その培養物から該タンパク質を採取することによって得ることができる。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌や酵母等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体を効率的に培養しうる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いても良い。
【0042】
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン、マルトース、デキストリン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としてはアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、NZアミン等が用いられる。
【0043】
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化コバルト等が用いられる。培養は通常、振とう培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下で、約30℃で24〜96時間行う。培養期間中、pH は5.0〜8.0に保持する。pH の調製は無機又は有機の酸、アルカリ溶液による。
【0044】
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加しても良い。プロモーターとして誘導性のものを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加しても良い。たとえば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加しても良い。
【0045】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般的に使用されているRPMl1640培地、DMEN培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地が挙げられる。培養は通常、5%CO2存在下、20〜30℃で1〜7日間行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加しても良い。
【0046】
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C. : Nature, 195:788 (1962))に牛胎児血清等を添加した培地が挙げられる。培養は通常25℃で1〜7日間行う。培養期間中、pH は6.0〜7.0に保持し、必要に応じて通気や攪拌を加える。
【0047】
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合は、菌体内又は細胞を破砕する。一方、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に分泌される場合は、培養液をそのまま用いるか、遠心分離等によって菌体又は細胞を除去後上清を得る。タンパク質の単離・精製には、一般的に、たとえば硫酸アンモニウム沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独であるいは適宜組み合わせて用いることにより、上記の培養物(細胞破砕液、培養液、又はそれらの上清)から本発明の抗菌性タンパク質又はその塩を単離・精製することができる。
【0048】
6.本発明の抗菌性タンパク質の化学合成
本発明のタンパク質の化学合成は通常のペプチド合成手段によって行うことができる。たとえば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC 法、活性エステル法、カルボイミダゾール法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法の何れを適用してもよい。すなわち、本発明のタンパク質を構成しうるアミノ酸と残余部分を縮合させて、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することによって目的のタンパク質が合成される。縮合法や脱離方法は公知の何れの方法を用いても良い。
【0049】
反応後は、通常の精製法、たとえば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて本発明のタンパク質を精製できる。本発明のタンパク質はC末端が通常カルボキシル基(-COOH)、又はカルボキシレート(-COO-)であるが、C末端がアミド(-COONH2)、エステル(-COOR)であってもよい。ここでエステルにおける R は炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアラルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられる。さらに本発明のタンパク質にはN末端アミノ酸残基が保護されているもの、あるいは糖鎖が結合した糖ペプチド等の複合ペプチドも含まれる。
【0050】
7.本発明の抗菌性タンパク質の抗菌剤としての利用
本発明の抗菌性タンパク質は、植物病原性糸状菌に対してその抗菌作用を有し、かつ抗菌スペクトラムが広いため、特に抗菌剤としての利用することができる。また、本抗菌性タンパク質は他の農薬と組み合わせた形態、たとえば、殺虫剤(イネ害虫用殺虫剤等)との組み合わせによる殺虫殺菌剤、植物成長調整剤(イネわい化剤等)との組み合わせによる殺菌植物成長調整剤として使用することができる。すなわち、本抗菌性タンパク質は単独で、あるいは適当な液体、固体又は気体の単体と組み合わせて使用することができる。さらに必要に応じて、液化ガス、噴射剤(フレオン等)、表面活性剤(乳化剤、分散剤、消泡剤等)等を添加し、乳剤、油剤、水和剤、粉剤、粒剤、液剤等の製剤として使用することもできる。
【0051】
製剤に使用する液体担体としては、たとえば、キシレン、トルエン、ベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、クロロエチレン、塩化メチレン等の塩素化芳香族炭化水素、シクロヘキサン、パラフィン等の脂肪族炭化水素、鉱油成分、エタノール、ブタノール、グリコール等のアルコール及びこれらのエーテル類、ならびにエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、水等の極性溶剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。水が溶剤として用いられる場合、純水又は無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、糖(グルコース、ショ糖等)もしくは糖アルコール(D- ソルビトール、D- マンニトール等)の水溶液を用いることができる。
【0052】
また、製剤に使用する固体担体としては、たとえば、カオリン、粘土、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリナイト、珪藻土等の天然鉱物粉末、ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等の合成鉱物粉末、高分子性天然物(結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
乳化剤、分散剤、消泡剤等として使用される表面活性剤としては、ポリオキエチレン-脂肪酸エステル、ポリオキエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルアリールポリグリコールエステル、アルキルスルフォネート、アルキルサルフェート、アリールスルフォネート、アルブミン加水分解物、メチルセルロース、アラビアゴム等が挙げられる。
【0054】
有効成分である本発明の抗菌性タンパク質は、乳剤では0.01〜50重量%、水和剤では0.01〜50重量%、粉剤では0.01〜10重量%が適当であるが、使用目的によってはこれらの濃度は適宜変更しても良い。乳剤、水和剤の場合には、使用に際して水で希釈し、製品重量の10〜5000倍で使用することができ、好ましくは500〜1000倍で使用するとよい。
【0055】
本発明の抗菌剤は、噴霧法、ミスト法、ダスト法、散布法、注入法等を用いて植物病原菌に侵された植物に直接投与してもよく、あるいは物病原菌に汚染された土壌に直接投与してもよい。使用法は使用目的に応じて適宜選択されるが、いずれの場合にも、本発明の抗菌性タンパク質が可能な限り均一に分散されることが望ましい。本発明の抗菌剤の使用量は、その使用方法によって異なるが、たとえば噴霧法の場合10a当たり、有効成分量で1〜1000gで噴霧することが好ましい。
【0056】
本発明の抗菌性タンパク質含む抗菌剤を使用すべき対象となる植物病原菌としては、たとえば、灰色かび病菌、アルタナリア菌、いもち病菌、うどんこ病菌、苗立枯れ病菌等が挙げられる。これらの病原菌は具体的には、灰色かび病菌はキュウリ(Cucumis sativus)、トマト(Lycopersicon esculentum )、ピーマン(Capsicum annum)、レタス(Lactuca sativa)、イチゴ(Fragaria ananassa)、ブドウ(Vitis vinifera)、スターチス(Limonium Mill)、トルコギキョウ(Eustoma grandiflorum)、リンドウ(Gentiana triflora)、タバコ(Nicotiana tabacum)、及びホップ(Humulus luplus)等の栽培植物を侵す病原菌であり、アルタナリア菌はリンゴ(Malus domestica)、ナシ(Pyrus L.)、イチゴ及びタバコ等の栽培植物を侵す病原菌であり、いもち病菌はイネ(Oryza sativa)等の栽培植物を侵す病原菌であり、うどんこ病菌はリンゴ、ブドウ及びピーマン等の栽培植物を侵す病原菌であり、苗立枯れ病菌はイネ、レタス等の栽培植物を侵す病原菌である。従って、これらの病原菌による病害の防除又は予防することを目的として、前記の植物に本発明の抗菌性タンパク質を含む抗菌剤を使用することが好適となる。
【0057】
さらに、本発明の抗菌性タンパク質は医薬組成物として使用することもできる。本発明のタンパク質を有効成分として含む医薬組成物は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤型に応じて上記の中から適宜組み合わせて選択される。
【0058】
本発明の抗菌性タンパク質を抗菌剤又は医薬組成物として使用する場合、その使用対象は特に限定されず、たとえば真菌症の診断、治療又は予防を目的として用いることができる。これらの疾病は、単独又は併発したものもしくは上記以外の他の疾病を併発したものであってもよい。
本発明の抗菌性タンパク質を含む医薬組成物は、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0059】
本発明の抗菌性タンパク質を経口的に投与する場合は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤などとすればよい。とくに顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位量投与形態とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。これら剤型のうち、経口用固形剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0060】
本発明の抗菌性タンパク質を非経口的に投与する場合は、注射剤、坐剤などとすればよい。注射の場合は、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供され、使用する際に適当な担体、たとえば発熱物質不含の滅菌した水で再溶解させる粉体であってもよい。これらの剤型は通常それらの組成物中に製剤上一般に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。注射手法としては、たとえば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。また、その投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。
【0061】
この場合、投与の剤型及びその投与量については被検体(ヒト及び動物を包含する)及び疾病の種類、症状を勘案して、本発明による抗菌効果が認められる限り任意の選択が可能である。たとえば、投与量は約0.001〜10mg/kg 体重であり、好ましくは約0.025〜0.5mg/kg 体重である。
【0062】
8.食品及び飼料添加物としての利用
さらに、本発明の抗菌性タンパク質は、胃や腸に存在する蛋白質分解酵素によって容易に分解されるため、少なくとも結果的には経口投与される場合にはその毒性はほとんどないことが予測される。したがって、本発明の抗菌性タンパク質は食品又は飼料添加物として利用することも可能である。たとえば、本抗菌性タンパク質を固体のまま、又は液体、好ましくは水に適当な濃度になるように溶解し、食品又は飼料に、たとえば、混合、浸積、塗布、噴霧等の方法で添加しうる。その結果、本タンパク質は食肉、魚、野菜等の生鮮食品、又は加工食品、あるいは豆粉、魚粉飼料等のかび等の発生を防ぐことができる。たとえば、有効成分である本発明の抗菌性タンパク質を水溶液として用いる場合、0.00005〜0.05重量%、好ましくは、0.0001〜0.01重量%とすることができる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]リンドウの新規抗菌性タンパク質(リンドウLTP)の精製
1)抗菌性タンパク質の精製
リンドウ系統(矢巾系)の葉、約100gを10 mM NaH2PO4、15 mM Na2HPO4、100 mM KCl、2 mM EDTA、1.5% PVP、2 mM thiourea、1 mM PMSF を含む1リットルの溶液中で摩砕後、ガーゼで繊維部(細胞壁画分)を得た。繊維部(細胞壁画分)より2M LiCl2によって細胞壁結合タンパク質を抽出し、蛋白質画分を滅菌水に対して1晩透析し(分子量 1000 以下排除)、50 mM MES (pH6.0) に調製し、50 mM MES (pH6.0) で平衡化した SP-sepharose カラムに供した。非吸着画分を 50 mM MES (pH6.0) にて洗浄後、 0.5 M NaCl 吸着画分を溶出した。本画分について滅菌水に対して1晩透析後(分子量 1000 以下排除)、本画分に最終濃度 0.1 % になるように TFA を加え、0.1 % TFA を含む滅菌水で平衡化した逆相 HPLC に供し、 0 - 50 % のアセトニトリルのグラディエントによって溶出した。
【0064】
2)抗菌活性の測定
ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)で生育させた糸状菌の胞子を後述の低イオン強度液体培地に懸濁後、胞子数 1×105に調製した。各蛋白質画分10μl に対して胞子懸濁液を90μlを混合し、糸状菌の場合25℃、細菌の場合30℃あるいは37℃で24〜48時間培養した後、菌の生育を OD 595 nm の吸光度を測定することによって抗菌活性の検定を行った。
(1)供試菌
本発明の抗菌性タンパク質の抗菌活性は、糸状菌の代表例として灰色かび病菌(B. cinerea (strain S1))、リンゴ斑点落葉病菌(A. alternata apple pathotype)、トルコギキョウ立枯れ病菌(F. solani (Martius) Saccardo)を用いて評価した。
(2)低イオン強度培地の作成
Terrasらの方法( J. Biol. Chem. 267 : 15301-15309)に従い、次の組成及び濃度の培地を作成した。K2HPO4 (2.5 mM), MgSO4 (50 μM), CaCl2 (50 μM), FeSO4 (5 μM), CuSO4 (0.1 μM), Na2MoO4 (2 μM), H3BO3 (0.5 μM), KI (0.1 μM), ZnSO4 (0.5 μM), MnSO4 (0.1 μM), Glucose (10 g/l), Asparagine (1 g/l), Methionine (20 mg/ml), Myo-inositol (2 mg/l), biotin (0.2 mg/l), Thiamine-HCl (1 mg/l), Pyridoxine-HCl (0.2 mg/l)
【0065】
3)抗菌性の評価
上記の精製方法によって強い抗菌性をもつ2画分を得た。本画分をSDS-PAGE により解析したところ、いずれも8kDa、7kDaのタンパク質の複合体であった(図1)。これらの画分の抗菌活性について灰色かび病菌、リンゴ斑点落葉病菌、トルコギキョウ立枯れ病菌を用いて詳細に解析したところ、いずれの画分もこれらの病原糸状菌に対して抗菌性を有し(図2)、糸状菌の生育を50 %阻害する濃度(IC50)は上記の菌に対して5〜10μg/ml であった。
【0066】
[実施例2]リンドウの新規抗菌性タンパク質のアミノ酸配列の決定
1)N末端アミノ酸配列の決定
精製抗菌性タンパク質(リンドウLTP)を常法によりSDS-PAGE による分画後、PVDF膜にエレクトロブロッティングした。本ブロット体をタンパク質染色試薬であるポンソーS 0.1%を含む2%酢酸溶液にてタンパク質を検出後、タンパク質のバンドをナイフで切り出した。N末端アミノ酸配列に関しては、切り出したブロット体を直接エドマン法によってアミノ酸配列を決定した(Takara社;カスタムサービス)。
【0067】
[実施例3]遺伝子のクローニング
1)全RNAの調製
温室で栽培したリンドウの葉よりFast green RNA isolation Kit (Funakoshi社製)を用いて全RNAを抽出した。
2)一本鎖cDNA作製
上記1)によって得られた、全RNA(polyA mRNAを含む)1μg を用いて RT-PCRキット(Takara社製)により一本鎖cDNAの合成を行った。この反応に用いたプライマーは、オリゴ(dT)20の5'側に既知の配列5' -AGTTTTCCCAGTCACGAC-3'(配列5)を連結したものを用いた。PCRの反応組成は以下の通りである。
PCR 反応組成:
RNA 1μl(1μg)
プライマー 1μl(50pmol)
10×PCR緩衝液 2μl
25 mM MgCl2 4μl
RNAse inhibitor 0.5μl
10 mM dNTPミックス 2μl
AMV 由来逆転写酵素 1μl
DEPC 処理水 8.5 μ l
全量 20μl
上記混合物を、42℃、50℃、55℃、60℃の各温度でそれぞれ10分ずつインキュベートし、次いで99℃で5分間インキュベートして反応を停止した。
【0068】
3)プライマーの作製
新規抗菌性タンパク質1及び2(リンドウLTP1及びLTP2)遺伝子の増幅に用いたプライマー(サワディーテクノロジー社;カスタムサービス)は以下のとおりである。
▲1▼リンドウLTP1
センスプライマー:
5' -ATA TTC ATA GTC ATC ATT CAC TTA CTC TTT-3'(配列番号6)
5' -CCT ACT ACA AAC TAT TCA AAC AAT GGG TAA-3'(配列番号7)
アンチセンスプライマー:
5' -ACA ACA ACC ACT CAA ACG TGG AGC CAA ACA-3'(配列番号8)
5' -TGT TGC AAC ACA TAC TAC TAC ATT TAT AAA-3'(配列番号9)
▲2▼リンドウLTP2
センスプライマー:
5' -GCA AAA CAT ACA TTC GTT TTC TCC TAT AAA-3'(配列番号10)
5' -CTC CTA TAA ATG GAA ACA ACT AGC TAA GCC-3'(配列番号11)
アンチセンスプライマー
5' -AAT TAC TCA CAA AAA AAC AAT TTT GAA GGA-3'(配列番号12)
5' -AAG GAT AAA ATT GTT ATA AGT TAC AAC AAC-3'(配列番号13)
【0069】
4)RT-PCRによる新規抗菌性タンパク質遺伝子の増幅
合成された一本鎖cDNAを鋳型として、上記3)で記したセンスプライマーとアンチセンスプライマーでPCR反応を行った。PCRの反応組成は以下の通りである。
PCR 反応組成:
cDNA 溶液 1μl(1μg)
20μMセンスプライマー 2μl
20μMアンチセンスプライマー 2μl
10×PCR緩衝液 5μl
25 mM dNTPミックス 4μl
ExTaq 1μl
DEPC 処理水 37.5 μ l
全量 50μl
PCR 反応は、95℃で30秒間の熱変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃1分間の伸長反応を1サイクルとして、30サイクル行った。
このPCR反応物を1.6%アガロースゲル電気泳動に供し、約800bpのDNA断片をゲルから切り出した。本ゲル片より Quia Gel Extration Kit(キアゲン社製)を用いてDNA断片を抽出した。
【0070】
次いで、このPCR産物をベクターpCR2.1(インビトロゲン社製)にTAクローニングを行った。すなわち、pCR2.1ベクターに重量比5〜10倍程度のPCR産物を混合し、Ligation kit ver. 2(Takara社製)を用いてライゲーションを行った。この組換えプラスミドを用いて大腸菌(TOP10F')を形質転換した。単一コロニーをLB培地中で培養し、QUIA Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドを精製した。
【0071】
5)塩基配列の決定
得られたプラスミドを鋳型にM13RV及びT7プライマーを用いて Big Dye Cycle sequence Kit(ABI)の方法に準じてシークエンス反応を行い、ABI PRISM 377 DNA Sequence System(ABI)を用いて塩基配列の決定を行った。得られた塩基配列については解析ソフトDNASIS及びGENETIXを用いて解析し、検索ソフトBLASTによってホモロジー検索を行った。それぞれ異なる塩基配列のcDNAが得られ、GtLTP-1およびGtLTP-2とした。ホモロジー検索の結果複数の植物で報告されているLTPと相同性を示した。以上の結果より、これら2種の遺伝子をリンドウLTP(LTP1及びLTP2)遺伝子と同定した。
【0072】
[実施例4]リンドウゲノムDNAのサザンブロット解析
1)ゲノムDNAの調製
リンドウ葉から CTAB 法(Focus 12 : 13-15(1990))によってゲノムDNAを調製した。すなわち、5g のリンドウ茎葉を液体窒素で凍結後、乳鉢、乳棒にて摩砕し、2×CTAB溶液(2%Cetyl trimethyl ammonium bromide (CTAB)、0.1M Tris-HCl, pH8.0、1.4M NaCl、1% PVP)10mlを混合した。55℃で10分間インキュベート後、クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を5ml添加し、30分間室温にて振とうした。3500rpm で遠心分離後、水層部(上清)を回収し、1/10容量の10%CTAB溶液(10%CTAB、0.7M NaCl)を加え、転倒混和後、等量の沈澱バッファー(1%CTAB、5 mM Tris-HCl, pH8.0、10 mM EDTA)を加えて、さらに30分間室温にて転倒混和した。7000rpm で遠心分離後、沈澱部を5mlの1M NaCl-TE(1M NaCl、10 mM Tris-HCl, pH8.0、1mM EDTA)により55℃で溶解し、イソプロパノール5ml加えた。転倒混和後、3500rpmで遠心分離し、沈澱部を5mlの70%エタノールでエタノール沈澱を行い、沈澱部を乾燥後、500μlのTEに溶解した。その後、RNAse(1μg/ml)処理を行い、混入したRNAを除去後、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)により抽出し、エタノール沈澱を行い、沈澱部を乾燥後、500μlのTEに溶解してゲノムDNAを得た。
【0073】
2)ハイブリダゼーション
上記で得られた、ゲノムDNAを制限酵素BamHI、EcoRIで消化し、その分解産物を1%アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、DNA断片をハイボンドN+メンブラン(アマシャム社製)にトランスファーし、そのメンブランを高SDSハイブリダイゼーションバッファー(7%SDS、50%ホルムアミド、5×SSC、2%ブロッキング試薬、50mMリン酸ナトリウム,pH7.0、0.1%N-ラウリルサルコシン)中に42℃で1時間以上プレハイブリダイゼーションを行った。
【0074】
次いで、プローブとしてリンドウLTP1及びLTP2遺伝子の全長cDNAをDIG(ジゴキシゲニン)発光検出キット(ロシュ・ダイアグノステックス社製)を用いてDIG標識した後、ハイブリダイゼーションを行った。すなわち、ハイブリダイゼーションは標識プローブを含む高SDSハイブリダイゼーションバッファー中、42℃で16時間浸積することによって行った。次いで、2×SSC、0.1%SDS中50℃にて2回、0.1×SSC、0.1%SDS中68℃にて2回、メンブランを洗浄した。その後、アルカリフォスファターゼ標識した抗DIG抗体(ロシュ・ダイアグノステックス社製)で処理し、オートラジオグラムを取ってプローブとハイブリダイズしたバンドを調べた。
その結果、いずれの制限酵素でも3本以上のバンドが認められた(図3)ことから、本遺伝子は遺伝子ファミリーを形成しているものと考えられた。
【0075】
[実施例5]植物導入用の組換えベクターの構築
1)植物導入用組換えベクター p35SLTP1、p35SLTP2の構築
リンドウLTP1又はLTP2遺伝子を含むプラスミド10μgを制限酵素SalIとBamHI 10単位で消化した後、断片をアガロースゲル電気泳動により分画し、約700及び600bpのバンドをアガロースゲルから切り出した。このゲルよりQuiaprep. gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて約700及び600bpのリンドウLTP1又はLTP2遺伝子を含むDNA断片を得た。
【0076】
一方、CaMV35S(カリフラワーモザイクウイルス)プロモーターとNOS(ノパリン合成酵素)ターミネーターを含むプラスミドベクターの10μgのDNAをTEバッファー中で10unitずつの制限酵素BamHIとSalIで消化した後、断片をアガロースゲル電気泳動により分画し、約4.5kbのバンドをアガロースゲルから切り出した。このゲルより Quiaprep. gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて消化されたプラスミドを回収した。
【0077】
上記のようにして得られたリンドウLTP1及びLTP2遺伝子を含むDNA断片とベクターDNA断片を各5μlずつを混合し、本DNA混合液と等量のライゲーション溶液(DNA ligation kit (Takara社製))を加えることにより連結させた。この連結反応液の2μLを市販の大腸菌コンピテントセルDH5α(TOYOBO社製)100μLと混合し氷中で30分間、42℃で45秒間、さらに氷中に1分間放置した。このようにして得た大腸菌の形質転換体を含む溶液に、LB培地(1% Bacto trypton, 0.5 % Bact yeast extract, 0.5 % NaCl, 0.1% グルコース pH7.5)100mLを加えて、37℃で1時間培養した後、スペクチノマイシン50mg/Lを有するLB寒天培地にプレーティングした。翌日、培地上に出現したコロニーのうち白色のコロニーの中から1つを選抜し、スペクチノマイシン50mg/Lを含むLB液体培地で37℃で約6〜12時間振盪培養した。この培養液から Quiaprep. miniprep. kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドを調製し、各種制限酵素を用いて消化した後、アガロースゲル電気泳動して解析を行うことにより、CaMV35Sプロモーターの下流にリンドウLTP1及びLTP2遺伝子が正常に連結されているプラスミドを選択し、これを植物導入用組換えベクターp35SLTP1、p35SLTP2(図4参照)とした。
【0078】
2)バイナリーベクターpEbisLTP1KB、pEbisLTP2KBの構築
バイナリープラスミドベクターpEBisKBの10μg及びプラスミドベクターp35SWPR-1 10μgのDNAをTEバッファー中で 10unitずつの制限酵素 SSeIで消化した後、飽和フェノール抽出を2回行うことにより制限酵素を除いた。この抽出液に100分の1容の3M酢酸ナトリウム、2倍容のエタノールを加え、-20℃に6時間放置した。この溶液を1,500rpm、4℃で10分間遠心分離し、得られた沈澱を減圧下で乾燥させ、10μLのTEに溶解し、DNA ligation kit (Takara社製)により連結させた。この連結反応液の10μLを市販の大腸菌コンピテントセル DH5α(TOYOBO社製)100μLと混合し氷中で30分間、42℃で45秒間、さらに氷中に1分間放置した。このようにして得た大腸菌の形質転換体を含む溶液に、LB培地(1% Bacto trypton, 0.5% Bact yeast extract, 0.5% NaCl, 0.1% グルコース pH 7.5) 100 mLを加えて、37℃で1時間培養した後、スペクチノマイシン100mg/L、カナマイシン50mg/Lを含有するLB 寒天培地にプレーティングした。翌日、培地上に出現したコロニーのうち白色のコロニーの中から1つを選抜し、スペクチノマイシンとカナマイシンを含むLB液体培地中、37℃で約6〜12時間振盪培養した。この培養液から Quiaprep. miniprep. kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドを調製し、各種の制限酵素を用いて消化した後、アガロースゲル電気泳動して解析を行うことにより、リンドウLTP1及びLTP2遺伝子が正常に連結されているプラスミドを選択し、これを植物導入用組換えベクター pEbisLTP1KB,pEbisLTP2KB(図4参照)とした。本ベクターによりアグロバクテリウムを公知の方法でトランスフォームし、形質転換に用いた。
【0079】
[実施例6]タバコへのリンドウLTP遺伝子の導入
1)タバコへのpEbisLTP1KB、pEbisLTP2KBの導入
(1)タバコ植物体の育成
タバコ(Nicotiana tabacum SR1)の完熟種子を1%次亜塩素酸で消毒後、MS培地に置床し、発芽・伸長を誘発する。MS培地は3%ショ糖と0.9% 寒天を含むムラシゲ・スクーグ基本培地である。1-2ヶ月間培養後、アグロバクテリウムに感染可能な十分に展開した葉が得られた。
(2)バイナリーベクターpEbisLTP1KB、pEbisLTP2KBの導入
十分展開したタバコの葉を外植片として約1cm四方に切断し、適当な抗生物質を含むYEB培地で28℃、一晩培養したpEBisGt3KBを有するアグロバクテリウム菌液にその外植片を約1分間浸漬し、付着した余分な菌液を濾紙で軽く拭い取りMS培地に移し、25℃弱光下で2日間共存培養した。
(3)形質転換細胞の選抜及び植物体への再生
共存培養後の葉外植片を再分化培地に移し、1ヶ月後に形成したカルス上に生じた不定芽を切り出し、発根培地に置床し、発根を誘導した。再分化培地は1mg/L BAP、0.1mg/L NAA、500mg/L カルベニシリン、5mg/L ビアラフォスを含むMS培地である。発根培地は500mg/Lカルベニシリンと5mg/Lビアラフォスを含むMS培地である。選抜薬剤としては、ビアラフォスの他にカナマイシン等を用いることもできる。
【0080】
[実施例7]形質転換植物体の病害抵抗性の評価
上記の方法で得られたリンドウLTP1遺伝子導入タバコ5系統の再分化個体を、常法により、ノザンブロット解析し、GtLTP1遺伝子の発現を確認後、灰色かび病菌に対する耐病性評価試験を行った。
再分化したタバコの葉を切り出し、灰色かび病菌(B. cinerea)をPDA培地で増殖させた菌そうをコルクボーラー(直径5mm)で打ち抜き、葉1枚あたり、2個の菌そうを接種し、湿度を保つため、水を十分吸収させた濾紙上で25℃、4日間インキュベートした。
【0081】
コントロールの非形質転換体では菌の増殖が進み葉全体が水浸状になり、激しい病徴が見られるのに対し、5系統中3系統で病斑の広がりが抑えられていた(図5A)。灰色かび病菌接種4日後の病斑の広がりを測定したところ、コントロールの非形質転換体に比較し、それら3系統では約1/3以下に抑えられており、リンドウLTP1遺伝子導入タバコにおいては灰色かび病に対する抵抗性が付与されていた。
【0082】
【発明の効果】
本発明の抗菌性タンパク質及びその遺伝子を用いれば、植物の病害抵抗性を向上させることができる。また、本発明の抗菌性タンパク質は遺伝子組換え技術により大量生産可能であり、抗菌剤として利用しうる。
【0083】
【配列表】
Figure 0004794094
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【0084】
【配列表フリーテキスト】
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成DNA
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号11−人工配列の説明:合成DNA
配列番号12−人工配列の説明:合成DNA
配列番号13−人工配列の説明:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、リンドウ抗菌性タンパク質(リンドウLTP1、LTP2)のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す写真である。
【図2】図2は、リンドウ抗菌性タンパク質(リンドウLTP1、LTP2)の各種微生物に対する作用を示すグラフである。
【図3】図3は、リンドウLTP遺伝子1および2のサザンブロット解析結果を示す写真である。
【図4】図4は、植物形質転換体作出用ベクターの構築を示す図である。
【図5】図5は、リンドウLTP遺伝子導入タバコの灰色かび病抵抗性の評価を示す。

Claims (9)

  1. 以下の(a)又は(b)の抗菌性タンパク質。
    (a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有するタンパク質。
  2. 以下の(a)又は(b)の抗菌性タンパク質をコードする遺伝子。
    (a)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗菌活性を有するタンパク質。
  3. 配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
  4. 請求項2又は3記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  5. 請求項2又は3記載の遺伝子を導入して得られる形質転換体。
  6. 前記形質転換体が植物である、請求項5記載の形質転換体。
  7. 請求項5又は6記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から抗菌性タンパク質を採取する、抗菌性タンパク質の製造方法。
  8. 請求項2又は3記載の遺伝子を導入することにより、病害抵抗性を付与された形質転換植物。
  9. 請求項1記載の抗菌性タンパク質を有効成分として含む抗菌剤。
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