JP4793634B2 - 仮締め切り工法 - Google Patents

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Description

本発明は、水中構造物の耐震補強工事などに採用される仮締め切り工法に関する。
従来、河川や港湾内にある橋脚などの水中構造物が地震などにより被害を受ける場合に備えて、耐震補強を施す工事が実施されている。この耐震補強方法として、鋼板を水中構造物の周囲を覆うようにして組み立て、鋼板と水中構造物との間にモルタルを充填して補強構造を構築する方法がある。ところが、このような鋼板を巻き付ける方法では、水に接している鋼板が腐食するという欠点があった。そのため、水中構造物の外周に拡径するようにコンクリートを打設(コンクリート巻き立て)する施工が多くなっている。この場合、水中構造物の周囲に仮締め切りを設置し、この仮締め切りの内側の水を抜いて施工場所を確保する必要があり、その仮締め切りの施工として長尺の鋼矢板を台船上に搭載した圧入機によって打設する方法が用いられていた。
しかし、例えば橋脚の上部に橋桁があり水面から桁下までの高さに制限がある場合には、鋼矢板の長さを短くし、溶接により継ぎ足しながら打設することになり、時間がかかり、工期が長くなるといった問題があった。そこで、施工の効率化を目的とした仮締め切り工法として、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているものがある。
特許文献1及び特許文献2は、予め工場などで製作した鋼製や鉄筋コンクリート製のプレキャストパネル(セグメント)を橋脚の周囲に環状に組み立てることで仮締め切り壁を構築するものである。これらのパネル同士の接合はボルトなどによって組み立てることができるため、組立作業が簡易となり、施工の効率化を図ることができる。
特開2004−316133号公報 特許第3065927号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の仮締め切り工法では、水中構造物の大きさに合わせた特殊な仮締め切り部材(パネル、セグメント)を製作して使用することになり、これらの製作コストが大きくなるといった問題があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、特殊な仮締め切り部材を製作することなく、コストの低減が図れる仮締め切り工法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る仮締め切り工法は、複数の鋼矢板を環状に連結させてなる締切壁と、締切壁の下端部を橋脚などの水中構造物の基礎上に固定させる根固め部とが設けられた仮締め切りによって水中構造物の外周を取り囲む仮締め切り工法であって、締切壁を周方向に分割させてなる矢板ユニットを予め台船上で組み立て、矢板ユニットを台船に保持させ、矢板ユニットの鋼矢板は、台船に脱着可能に固定させた第一鋼矢板と、第一鋼矢板に沿わせて沈下可能に設けた第二鋼矢板とからなり、矢板ユニットの各々を基礎上に沈下させるときに、先に第二鋼矢板を第一鋼矢板に沿わせて沈下させて基礎に固定し、第一鋼矢板を台船より切り離した後、沈下させた第二鋼矢板に沿わせて第一鋼矢板を沈下させ、矢板ユニット同士を水中接合して締切壁を形成し、基礎と締切壁とを固結材を介して固定させて根固め部を形成させるようにしたことを特徴としている。
本発明では、鋼矢板からなる締切壁の上端部を台船に保持させることで、鋼矢板の大半を水中に沈めた状態で、締切壁を沈下箇所に運搬して基礎上に設置することができる。このため、長尺の鋼矢板であっても、従来のように圧入機を使用して鋼矢板を打設する場合と比較して水面より上方に高く突出させることなく締切壁を施工することができる。したがって、桁下のように高さが制限される施工箇所であっても問題なく鋼矢板を使用した仮締め切りを実施できる。
また、第一及び第二鋼矢板を、夫々が固定されている側の鋼矢板に案内させて沈下させることができる。このため、基礎上の所定の沈下位置に締切壁を精度よく設置することができる。
また、本発明に係る仮締め切り工法では、根固め部は、締切壁を基礎上に載置させた状態で、締切壁の下端部を取り囲むようにして基礎上に型枠体を固定させ、型枠体の内側に固結材を充填させることが好ましい。
本発明では、型枠内に充填した固結材に締切壁の下端部を埋設させることで根固め部が止水構造となり、締切壁の内側を水抜きして水中構造物の周囲に作業領域を確保することができる。
本発明の仮締め切り工法によれば、従来のように圧入機を使用して鋼矢板を打設する場合と比較して水面より上方に高く突出させることなく締切壁を施工することができる。このため、例えば橋桁の桁下のように水面上において高さ制限がある施工箇所であっても、既製品の鋼矢板を使用して仮締め切りを設置することができる。したがって、特殊な仮締め切りの部材を製作することがなく、鋼矢板を転用して使用することができることからコストを低減することができる。
以下、本発明の仮締め切り工法の実施の形態について、図1乃至図10に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による仮締め切り工法の概要を示す立断面図、図2は図1に示すA−A線矢視図、図3は仮締め切りの設置状態を上方からみた図、図4は第一及び第二矢板ユニットの接合部を示す平面図、図5は仮締め切りの根固め部を示す立断面図、図6は図5に示す根固め部のB−B線断面図、図7、図8は矢板ユニットの設置工程を示す説明図、図9(a)〜(c)は仮締め切りの施工工程を示す図、図10(a)〜(c)は同じく施工工程を示す図であって、図9(c)に続く図である。
図1に示すように、本実施の形態による仮締め切り工法は、橋梁の橋脚10(水中構造物)の周囲にコンクリート2(図1に示す二点鎖線)を打設する耐震補強工事に採用され、橋脚10の外周を仮締め切り1によって取り囲み、その内部を排水して水のない作業領域Rを確保するものである。
橋脚10は、周知のとおり道路などの橋桁11を下方より支持し、水底Gの地盤中に杭12と共に下部側が埋設された平面視四角形状(図2参照)のフーチング13(基礎)と、フーチング13の上部に一体に構築された柱状の橋脚本体部14とからなる。橋脚本体部14の断面積は、フーチング13の断面積より小さくなるように構成されている。
図3に示すように、仮締め切り1は、所定長さの複数の鋼矢板21、21、・・・を周方向に平面視四角形状の環状に連結させてなる締切壁20と、締切壁20をフーチング13上に固定させる根固め部30(図1参照)と、この締切壁20を橋脚本体部14に支持させる支保工40とから概略構成されている。
図4に示すように、締切壁20を構成する鋼矢板21は、既製品の鋼矢板が使用され、その形状は断面略コの字形状をなしていてその両側縁部が外側にカール状に湾曲した継手部21a、21aが形成されたものである。連結する隣り合う鋼矢板21、21同士は、互いに対向させ且つ水平方向にずらして夫々の継手部21a、21aを重ね合わせるようにして係合されている。
そして、図3に示すように、締切壁20は、周方向に略同等の大きさに二分割され、平面視略コの字型状をなす第一矢板ユニット22と第二矢板ユニット23とで構成されている。図4に示すように、第一及び第二矢板ユニット22,23は、夫々の端部22a、23aを接近させ、その端部22a、23aをプレート24、25によって挟み込み、溶接させることで止水接合されている。ここで、この接合箇所を接合部Tとする。
次に、締切壁20とフーチング13との根固め部30について図面に基づいて説明する。
図5及び図6に示すように、根固め部30は、締切壁20をフーチング13上に載置させた状態で、締切壁20の下端部20aを取り囲むようにして断面略L型のL型長尺部材31、31(型枠体)をフーチング13の上面に固定させている。L型長尺部材31は、一端面31aがアンカー34によってフーチング13に固定され、他端面31bがフーチング13に対して略直交するように立設した状態で配設されている。アンカー34は、L型長尺部材31の長手方向(締切壁20の設置方向)に所定間隔をもって打設されている。
締切壁20は、締切壁20の外側面20bとL型長尺部材31との間にクサビ状の係止部材33が上方から押し込まれることで、L型長尺部材31に固定されている。そして、L型長尺部材31、31同士に挟まれた空間には、締切壁20の下端部20aを埋設するようにしてモルタルなどの固結材32が充填されている。
図3に示すように、支保工40は、締切壁20の内面に略水平方向に固定された腹起し材41と、腹起し材41と橋脚本体部14とを連結する切梁材42と、同じく腹起し材41と橋脚本体部14とを連結する補助部材43とからなる。なお、切梁材42にジャッキ42aを設け、腹起し材41と橋脚本体部14との間を突っ張った状態にしておく。
そして、図1に示すように、支保工40は、締切壁20の上下方向の複数の箇所に設けられている。これらを上方より第一支保工40A,第二支保工40A・・・とし、総称して支保工40とする。
次に、上述したように構成される仮締め切り1の施工について、橋脚1の耐震補強工も含めて図面に基づいて説明する。
先ず、準備施工として、図示しないバックホウなどを搭載した浚渫船を用いてフーチング13の表面が露出するように浚渫を行なうと共に、フーチング3の表面の清掃をしておく(図1参照)。また、橋脚本体部14の所定箇所には、第一支保工40Aを取り付けておく。
図3、図7に示すように、仮締め切り1の施工には台船50が使用される。そして、台船50を曳航し、橋桁11(図2参照)のないところで固定ワイヤー(図示省略)などによって台船50を固定しておく。そして、この台船50の一方の側面50aには、台船50上で組み立てた第一矢板ユニット22(或いは第二矢板ユニット23)を保持しておくための保持機構60を設置しておく。
図3に示すように、この保持機構60は、各第一及び第二矢板ユニット22,23の外周側を保持するようにH型鋼材などを平面視略コの字形状に組み合わせて構成され、その開口側をなす保持部60bを台船50の反対側に向けて配置されている(図7、図8参照)。そして、締切壁20を橋脚10の周囲に設置する前に、予め台船50上で第一矢板ユニット22を組み立てておく。
ここで、図3に示すように、第一矢板ユニット22(第二矢板ユニット23についても同様)の組み立てる方法について説明する。
第一矢板ユニット22は、予め保持機構60に脱着可能に固定させてなる第一鋼矢板21A(図3に示す係止部材71(後述)が固着された鋼矢板)と、第一鋼矢板21Aの継手部21aに沿わせて沈下させる第二鋼矢板21Bとが適宜配置されている。ここで、これら第一鋼矢板21Aと第二鋼矢板21Bとの配列は、例えば図3に示すように第一鋼矢板21A、21A同士の間に3〜5枚の第二鋼矢板21B・・・を設けた配列となっている。
そして、図7及び図8に示すように、先に第一鋼矢板21A(本実施の形態では8枚設置)のみを、前記第一鋼矢板21A、21A同士の間に複数の第二鋼矢板21B・・・を配置できるように保持機構60の上端部60aの所定の位置に固定する。その固定方法は、切欠部71aを有した係止部材71を第一鋼矢板21Aの台船50側の端面に固着させておき、この切欠部71aを保持機構60の上端部60aに引っ掛けるようにして係止部材71を保持機構60に係止させる。なお、この係止が外れないように、レバーブロックなどの第一締付具72を使用して第一鋼矢板21Aと保持機構60を、係止部材71が保持機構60の上端部60aに係止する方向に締め付けて固定しておく。
続いて、前記第一鋼矢板21A、21A同士の間に、各継手部21aを差し込ませるようにして所定枚数の第二鋼矢板21B・・・を配置させる。このとき、鋼矢板21の夫々の下端が揃うように設置する(図9(a)参照)。ここで、隣り合う鋼矢板21同士が上下方向にずれないようにボルトなどのズレ止め部材75(図8参照)によって仮に固定しておく。
また、図8に示すように、鋼矢板21の下部側にフック73を取り付け、そのフック73にレバーブロックなどの第二締付具74の一端74aを取り付け、その他端74bに上述したL型長尺部材31の上端部31cを吊った状態で取り付けておく。ここまでの工程が、第一矢板ユニット22の組み立て工程であり、このように、鋼矢板21からなる第一及び第二矢板ユニット22、23の上端部を台船50に保持させることで、鋼矢板21の大半を水中に沈めた状態で、締切壁20を沈下箇所に運搬させることができる(図9(a)参照)。
次に、図9(b)に示すように、台船50を移動して、組み立てた第一矢板ユニット22を桁下の所定の沈設箇所まで移動する。そして、第二鋼矢板21Bを仮吊りしているズレ止め部材75(図8参照)を切断し、第二鋼矢板21Bを第一鋼矢板21Aに沿わせてフーチング13上に沈下させ、第二鋼矢板21Bと腹起し材41とをボルトなどで接続して固定する(図3参照)。その後、図9(c)に示すように、係止部材71及び第一締付具72(図8参照)を取り外し、第一鋼矢板21Aを前記沈下させた第二鋼矢板21Bに沿わせて橋脚10のフーチング13上に沈下させ、第一鋼矢板21Aと腹起し41をボルトなどで接続して固定する(図3参照)。このように沈下させることで、フーチング13上の所定位置に第一及び第二鋼矢板21A,21Bを精度よく設置することができる。
続いて、図5、図6に示すように、アンカー34によりL型長尺部材31の一端面31aをフーチング13に固定し、図8に示す第二締付具74によって鋼矢板21をフーチング13側に引き寄せるように締め付け、L型長尺部材31と鋼矢板21との隙間に係止部材33を押し込んで第一矢板ユニット22を固定する。そして、鋼矢板21が動かないことを確認して台船50が桁下の外方に離脱する。
次に、図9(c)及び図10(a)に示すように、第二矢板ユニット23を第一矢板ユニット22に接合できるように、第一矢板ユニット22の場合と同様の手順でフーチング13上に設置する。そして、第一及び第二矢板ユニット22、23同士の接合部Tは、プレート24、25(図4参照)によって挟持させた状態で水中溶接により接合される。次いで、図5、図6に示すように、根固め部30のL型長尺部材31、31同士に挟まれた空間に固結材32を充填し、締切壁20の下端部20aがフーチング13に対して液密に固着される(図10(b)参照)。
その後、図10(c)に示すように、締切壁20内を排水ポンプ80によって水抜きして作業領域Rを確保し、二段目の第二支保工40Bを設置する。そして、締切壁20内の作業領域Rにおいて型枠(図示省略)を組み立ててコンクリート2(図1に示す二点鎖線)を打設して耐震補強が構築される。
コンクリート2の構築が完成した後、締切壁20内に注水すると共に、設置した第一及び第二支保工40A,40Bを撤去する(図1参照)。そして、台船50に鋼矢板21(締切壁20)を固定し、根固め部30と接続されている鋼矢板21を適当な箇所で切断して切り離し、鋼矢板21及び根固め部30を撤去し、台船50を桁下から移動する。
なお、上述した仮締め切り1の締切壁20の上端位置は、海や河川などの最高水位より高い位置となるようにすることは言うまでもない。
上述した本実施の形態による仮締め切り工法では、従来のように圧入機を使用して鋼矢板を打設する場合と比較して水面より上方に高く突出させることなく締切壁20を施工することができる。このため、橋桁11の桁下のように水面上において高さ制限がある施工箇所であっても、既製品の鋼矢板21を使用して仮締め切り1を設置することができる。したがって、特殊な仮締め切りの部材を製作することがなく、鋼矢板21を転用して使用することができることからコストを低減することができる。
以上、本発明による仮締め切り工法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では締切壁20を二分割にしているが、分割数はこれに限定されることはなく、例えば平面視四角形状の各辺毎に4つに分割してもかまわない。
また、本実施の形態のように締切壁20は平面視四角形状であることに限定されず、例えば平面視で円形、多角形などであってもよい。
さらに、本実施の形態では第一鋼矢板21Aを台船50の保持機構60に仮固定する方法として切欠部71aを有した係止部材71を設けているが、このような固定方法に限定されることはない。要は第二鋼矢板21Bが第一鋼矢板21Aに案内されて略鉛直に沈下できるように第一鋼矢板21Aが固定されていればよいのである。
本発明の実施の形態による仮締め切り工法の概要を示す立断面図である。 図1に示すA−A線矢視図である。 仮締め切りの設置状態を上方からみた図である。 第一及び第二矢板ユニットの接合部を示す平面図である。 仮締め切りの根固め部を示す立断面図である。 図5に示す根固め部のB−B線断面図である。 矢板ユニットの設置工程を示す説明図である。 矢板ユニットの設置工程を示す説明図である。 (a)〜(c)は仮締め切りの施工工程を示す図である。 (a)〜(c)は同じく施工工程を示す図であって、図9(c)に続く図である。
符号の説明
1 仮締め切り
10 橋脚(水中構造物)
13 フーチング(基礎)
14 橋脚本体部
20 締切壁
21 鋼矢板
21A 第一鋼矢板
21B 第二鋼矢板
22 第一矢板ユニット
23 第二矢板ユニット
30 根固め部
31 L型長尺部材(型枠体)
32 固結材
40 支保工
50 台船
60 保持機構


Claims (2)

  1. 複数の鋼矢板を環状に連結させてなる締切壁と、該締切壁の下端部を橋脚などの水中構造物の基礎上に固定させる根固め部とが設けられた仮締め切りによって前記水中構造物の外周を取り囲む仮締め切り工法であって、
    前記締切壁を周方向に分割させてなる矢板ユニットを予め台船上で組み立て、前記矢板ユニットを前記台船に保持させ、
    前記矢板ユニットの前記鋼矢板は、前記台船に脱着可能に固定させた第一鋼矢板と、該第一鋼矢板に沿わせて沈下可能に設けた第二鋼矢板とからなり、
    前記矢板ユニットの各々を前記基礎上に沈下させるときに、先に前記第二鋼矢板を前記第一鋼矢板に沿わせて沈下させて前記基礎に固定し、前記第一鋼矢板を前記台船より切り離した後、前記沈下させた前記第二鋼矢板に沿わせて前記第一鋼矢板を沈下させ、前記矢板ユニット同士を水中接合して締切壁を形成し、
    前記基礎と前記締切壁とを固結材を介して固定させて根固め部を形成させるようにしたことを特徴とする仮締め切り工法。
  2. 前記根固め部は、前記締切壁を前記基礎上に載置させた状態で、前記締切壁の下端部を取り囲むようにして前記基礎上に型枠体を固定させ、前記型枠体の内側に前記固結材を充填させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の仮締め切り工法。
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