JP2004183324A - 既設杭桟橋の改修構造および改修工法 - Google Patents

既設杭桟橋の改修構造および改修工法 Download PDF

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Koichi Fujiwara
弘一 藤原
Keigo Takegawa
啓悟 武川
Yoichi Takahashi
陽一 高橋
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Abstract

【課題】改修コストを低減し、短工期で施工可能とし、且つ桟橋の性能を向上した既設杭桟橋の改修構造および改修工法を提供する。
【解決手段】多数の鉛直杭で上部工を支持した既設杭桟橋の上部工直下にて杭1を切断して上部工を撤去した後、残された杭上に既設の上部工に替わるジャケット2を設置する。ジャケット2は、陸上製作された鋼製の縦梁3と横梁4からなる格子状のデッキ5の格点6の下方に所定長さの鋼管製のレグ7が突出し、このレグ内周と杭外周の隙間にグラウト材8が注入されている。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多数の鉛直杭で上部工を支持した岸壁等の既設杭桟橋の上部工を解体撤去し、新規な上部工に置替えた桟橋の改修構造とその改修工法に関する。
【0002】
【従来技術】
高度経済成長期に数多く構築された既設杭桟橋は、永年に渡って厳しい海気象に曝されてきたため、老朽化しているものがあり更新の時期にきているものが多い。
【0003】
既設杭桟橋の一部が老朽化している場合は、老朽・劣化している部分のみを部分的に補修することになるが、数十年の耐用年数を過ぎたものは全体的な更新が必要となる。
【0004】
杭支持形式の桟橋における従来工法では、上部工を解体し、杭を引き抜くかまたは水底にて切断して既設杭桟橋の全体を撤去した後に、新設の桟橋を構築するのが一般的であった。
【0005】
しかし、この全体改修工法では改修コストが高額になるばかりか、工事期間が長くなるため稼動中の桟橋では代替施設や仮設設備の建設等を考慮しなければならない問題があった。
【0006】
一方、桟橋を構成する杭は電気防食や塗装によって維持管理が適切になされていると比較的健全性を保っている場合がある。特に没水部分や土中部分についてはあまり劣化していない場合が多い。
【0007】
このようなケースでは既設杭桟橋の更新において、既設杭を有効活用して上部工のみ改修する方が改修コスト、工期短縮の面で有利となる。
【0008】
従来技術において、直立杭と斜杭により支持された海洋構造物において、上部工のみを取替える補修方法が特開平9−170219号公報に開示されている。この補修方法は杭の干満帯若しくは飛沫帯に相当する部位を切断して老朽化した上部工(構造物)を撤去するとともに、実質的に同一構造の上部工を予めプレキャスト部材として製作しておき、切断された杭の上部に固設するものである。直立杭と上部工は上部工の下部に設けた鞘管を杭に嵌合してグラウト結合し、斜杭と上部工は斜杭上端に継ぎ足し管を固着し上部工にコンクリート結合する手段とされている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−170219号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が対象とする鉛直杭で支持された既設杭桟橋の改修工法において、前記特開平9−170219号公報に開示されている従来技術を適用することが考えられる。
【0011】
しかし、前記従来技術は比較的少ない本数の杭で支持された上部工で構成されるドルフィン等には実現可能と思われるが、数十本におよぶ多数の杭で支持された既設杭桟橋に適用する場合、切断された既設杭は平面ずれや傾きがあるため、数十本におよぶ全ての杭に上部工の鞘管を嵌合することが困難である課題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解消し多数の鉛直杭で支持された既設杭桟橋に適用でき、改修コストを低減し、短工期で施工可能とし、且つ桟橋の性能を向上した既設杭桟橋の改修構造および改修工法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題解決を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、下記の構成を要旨とする。
【0014】
本発明は、多数の鉛直杭で上部工を支持した既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去した後、残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置した桟橋改修構造であって、陸上製作された前記ジャケットは鋼製の縦梁と横梁からなる格子状のデッキの格点下方に所定長さの鋼管製のレグが突出し、このレグ内周と杭外周の隙間にグラウト材が注入されていることを特徴とする。
【0015】
既設の上部工に替わる前記ジャケットは、縦梁と横梁を格子状にしたデッキの格点下方に前記レグを設け、さらにレグ間をブレースで連結してトラス構造とした方が望ましい。
【0016】
また、デッキの格点下方に設けたレグの長さをLWL(Low Water Level)以下まで延在させ、且つ残された杭内にコンクリートを充填して杭を補強することが出来る。
【0017】
前記ジャケットの縦梁と横梁からなる格子状のデッキ上にプレキャストコンクリート製の床版を設けた上部工において、端部を斜め状に形成し結合鉄筋を突出した床版の端部を縦梁または横梁のフランジ上面に配設し、隣接する床版の端部同士が略V字状になるようにして打設コンクリートで連続化結合してもよい。
【0018】
また、本発明は、既設杭桟橋の改修工法において、
▲1▼既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去し、
▲2▼残された杭の配置を測量し、
▲3▼縦梁と横梁の格点を前記杭の配置と合致するようにした格子状のデッキの格点下方に前記杭に嵌挿可能なレグを設けたジャケットを陸上にて製作しておき、
▲4▼前記ジャケットを現地に輸送し、
▲5▼前記杭の少なくとも3箇所の杭上端に着脱可能なガイド部材を仮装着し、
▲6▼前記ジャケットを吊り上げ、ガイド部材を装着した杭に対応するジャケットのレグを嵌挿して位置決めしながら他のレグを全ての杭に嵌挿し、
▲7▼前記ガイド部材を取外した後、レグ内周と杭外周の隙間にグラウト材を注入し、既設杭桟橋の杭を切断して残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置することを特徴とする既設杭桟橋の改修工法である。
【0019】
前記改修工法は、既設杭桟橋の法線方向に分割した複数のブロック単位で既設杭桟橋の上部工を切断撤去し、既設杭桟橋の上部工に替わるジャケットを設置するようにしてもよい。
【0020】
【作用】
前記の構成において、撤去した上部工に替えて鋼製の縦梁と横梁からなる格子状のデッキの格点下方に所定長さの鋼管レグが突出したジャケットを使用したのは、鉄筋コンクリート製上部工に較べて鋼製ジャケットの方が軽量で施工性、経済性および桟橋の強度設計面で有利なためである。
【0021】
このジャケットは、前記デッキとレグで構成したものでもよいが、レグ間を水平ブレースや斜ブレースで連結してトラス構造にすると更に高い剛性が得られ、改修後の桟橋の構造的強度を増強できるため岸壁の前面を張出すことができる。その結果、改修後の桟橋は岸壁前面の水深を増深して大型船舶の接舷が可能となる。
【0022】
前記ジャケットは、下方に突出した所定長さのレグを杭に嵌挿し、レグ内周と杭外周の隙間にグラウト材を注入して既設杭に固定されている。このレグ長さ区間はジャケットを杭に結合固定すると共に既設杭を防食し、さらに補強する作用を呈する。
【0023】
前記レグの所定長さは、既設杭が健全であればグラウトの設計付着強度が得られる比較的短い長さにすることができる。しかし、杭の干満帯や飛沫帯の区間は腐食により板厚が減少している場合が多いため、通常はレグの長さをこの区間をカバーするように下端がLWLより下方になるように長さを決める。なお、LWL以深は常時没水状態のため杭の腐食は小さく、特に電気防食され適切に防食電流が管理されている場合は腐食問題はない。
【0024】
なお、杭の腐食が著しい場合は、杭内にコンクリートを充填して中詰コンクリート杭にすることにより杭を補強して更に改修後の桟橋構造強度を高めることができる。
【0025】
また、ジャケットのデッキの上面にコンクリート床版を設ける上部工では、縦梁または横梁の間隔に合わせたサイズのプレキャストコンクリート製の床版ユニットを用いて連続版とした方が版の厚さを薄く出来る。従来、端部を垂直とした床版ユニットを用いていたため確実に床版ユニット端を支持するためにはフランジ幅を広くする必要があった。本発明では床版ユニットの接合において、隣接する床版ユニットの端部を斜め状に形成し、且つU字形の結合鉄筋を突出しておき、この床版ユニットの端部を梁のフランジ上面に配設して隣接する床版の端部同士が略V字状になるようにし、フランジ幅を広げることなく梁で床版ユニット端を支持可能とし、コンクリートを打設して連続化結合することとした。
【0026】
なお、ジャケットのデッキ上面は上記のようなコンクリート床版としないで鋼製床版や鋼・コンクリートの合成床版としてもよい。
【0027】
また、本発明の既設杭桟橋の改修工法においては、杭を切断して上部工を撤去した後、陸上製作した前記の如く構成したジャケットを現地輸送して、残された杭の少なくとも3箇所の杭に仮装着した着脱可能なガイド部材を利用してジャケットを位置決めして全てのレグを杭に嵌挿可能としている。前記ガイド部材はジャケットの設置後、回収して次のジャケット設置に再利用される。
【0028】
既設の上部工に置替えるジャケットは、桟橋法線方向で複数のブロックに分割したものを陸上ヤードや工場にて製作し、現地に海上輸送してブロック単位で既設杭桟橋の上部工を撤去した杭上に設置する工法とすれば、現地施工の工期を短縮できると共に、工事中のブロック以外の既設杭桟橋部分を稼動しながら施工することが出来る。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
【0030】
図1は本発明に係る既設杭桟橋の改修後の横断面図である。
【0031】
本発明の改修桟橋は、海底地盤9に打設した多数の鉛直杭(以下、杭という)1で上部工を支持した既設杭桟橋において、上部工の直下にて杭1を切断し、老朽化した上部工を撤去した後に残された杭上にジャケット2を設置したものである。既設上部工に替わるジャケット2は陸上ヤードや工場にて製作組立られたものを台船等で海上輸送され、現地にてクレーン船等によって吊り上げ杭上に固定されたものであって、その構造はH型鋼等の型鋼を用いた縦梁3と横梁4からなる格子状のデッキ5の格点6下方に所定長さの鋼管レグ(以下、レグという)7を突出したジャケット2とし、前記レグ7を杭1に嵌挿してレグ7内周と杭外周の隙間にモルタル等のグラウト材8を注入して結合したものである。図の右端側は護岸26を示す。
【0032】
ジャケット2はデッキ5とレグ7で構成した構造としてもよいが、図1に示すようにデッキ5の横梁4(縦梁3)と各レグ7を水平ブレース22や斜ブレース21で連結したトラス構造にすると剛性を高めることができ、桟橋の載荷性能を向上でき、且つ海側の張出しを長くすることができる。この結果、岸壁水深を増大して大型船舶の接舷が可能となる。
【0033】
ジャケット2のデッキ格点部6は図2、図3に示すように、下方に突出した所定長さの鋼管からなるレグ7の上部に縦梁3と横梁4の端部を突き合せ、縦梁3と横梁4を結合する上下の補強板10で強固に結合されている。
【0034】
格点部6またはレグ7の位置は、残された杭の平面位置と傾斜を測量して各既設杭にレグ7が嵌挿可能なように配置を定める必要がある。使用するレグ7は杭の外径より大きい内径の鋼管を用い、後述するガイド部材23を装着するガイドレグ7aは上端部を開口状態とし、下端をラッパ状(ラッパ管11で示す)に広げている。これ以外は管内の上部の所定高さに既設杭にジャケット2を設置する際、杭上端を支持するための十字板等の支持材12が固定されている。
【0035】
レグ7の長さは杭の状態によって定めるが、通常は下端がLWL以下になるようにする。この理由は、少なくともLWL以上の干満帯や飛沫帯の腐食環境が厳しい部位について杭1にレグ7を嵌挿し補強するためである。なお、杭1の腐食がひどい場合は杭1内にコンクリートを充填中詰して補強してもよい。
【0036】
また、各レグ7内には杭1に嵌挿するレグ7に該杭1をセンタライズするためにスペーサ13を複数段設けている。スペーサ13はくさび状の鋼片をレグ7の内周方向4乃至8箇所配置し、上段になる程厚さを厚くしてレグ7を杭1に円滑に嵌挿可能としている。このスペーサ13により、レグ7内面と杭1外面に適切な隙間を有せしめグラウト材8の充填性を確保している。
【0037】
前記スペーサ13は杭1とレグ7とのグラウト結合におけるシアキーの作用も発揮する。また、レグ7を嵌挿した杭1は杭上端にリブで補強された蓋14を被せている。この蓋14は前記レグ7の支持材12およびレグ7内に充填するグラウト材8を介してジャケット2の鉛直荷重を支持する。なお、杭1より上方のレグ内にはグラウト材8としてコンクリートを用いてもよい。
【0038】
桟橋上部工の構造において、縦梁3と横梁4からなる格子状のデッキ5上にコンクリート製の床版を設ける場合、現地にてRC床版を製作すると型枠製作が煩雑であり打設コンクリートの養生に期間を要するためプレキャストコンクリート床版を使用した方がよい。この場合、縦梁3または横梁4の間隔に合わせたサイズのプレキャストコンクリート製の床版ユニット15とし、梁上で隣接する床版ユニット15を接合して連続版とした方が版の厚さを薄く出来る。
【0039】
本発明では、図4に示すように床版ユニット15の端部を斜め状端面(イ)に形成し、且つU字形の結合鉄筋16を突出しておき、この床版の端部を縦横梁3、4のフランジ17上面に配設して隣接する床版の端部同士が略V字状(逆台形)になるようにしてコンクリートを打設して連続化結合することとした。また、梁のフランジ17にはスタッドジベル18を溶接しており、連続化した床版ユニット15を縦横梁3、4にも結合している。
【0040】
床版ユニット15の端部を斜め状端面(イ)に形成し、隣合う床版ユニット15の対向する斜め状部(イ)によって略V字状(逆台形)にしている。このため縦梁3や横梁4のフランジ17を広げることなく床版ユニット15を設置できると共に、接合用コンクリート26の充填性を良好に出来る。
【0041】
なお、ジャケット2のデッキ5上面は、上記のようなコンクリート床版15に代えて鋼床版や鋼・コンクリートの合成床版としてもよい。この場合は床版ユニットをボルト接合や溶接接合して連続化する。
【0042】
以下、本発明に係る既設杭桟橋の改修工法について説明する。図5(a)、(b)、図6(a)、(b)、は本工法の工程を示したものである。
【0043】
▲1▼先ず、既設杭桟橋の上部工直下にて杭1をガス切断機等によって切断する。この作業において杭1の切断が進行したら既設の上部工19をクレーン20で吊り保持しておく。改修しようとする範囲の全ての杭1と上部工19の切断が完了したら、上部工19をクレーン20で吊り上げ撤去する。(図5a)
【0044】
▲2▼上部工19を撤去した後、または撤去前に各杭1の配置(上端の法線方向と直角方向間隔および傾斜)を測量する。
【0045】
▲3▼前記測量の結果得られた杭1の配置に基づいてジャケット2を設計し、陸上にて製作する。ジャケット2の設計にあたっては、縦梁3と横梁4の格点6を前記測量結果の各杭配置と合致するようにし、該格子状のデッキ5の格点6下方に前記杭1に余裕を持って嵌挿可能なサイズの鋼管等のレグ7を突設したものとする。ジャケット2は斜めブレース21や水平ブレース22等でトラス構造にした方が望ましく、レグ7を含めた細部は前記のように構成する。
【0046】
▲4▼陸上にて製作した前記ジャケット2を台船等に搭載して現地に海上輸送する。
【0047】
▲5▼ジャケット2を杭上に設置する前に、前記上部工19を撤去して残された杭1の、少なくとも3箇所の杭上端に着脱可能なガイド部材23を仮装着し、これ以外の杭1には杭上端に蓋14を被せておく。前記少なくとも3箇所のガイド部材23を装着する杭1は図5、図6に示すように改修しようとする範囲(ブロック)のできるだけ外側の杭1を選択した方がジャケット2の位置決めを正確に行える。また、ガイド部材23はいずれか1本の高さを高くしておいた方が望ましい。
【0048】
ガイド部材23は例えば図8に示すように、杭1の外径Dと同じ鋼管23cの下側に杭1の内径より僅かに小径Dで下方を先細テーパ状にした挿入鋼管23aを固定し、前記鋼管の上部には上方を短辺とした十字状のテーパ材23bを固定したものとする。前記挿入鋼管23aは杭1の頭部に挿入した状態でぐらついたり落下しないような長さとする。
【0049】
▲6▼次に、図5(b)に示すようにジャケット2をクレーン20で水平に吊り上げ、ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿し、ジャケット2の他のレグ位置を対応する杭1の上方に位置決めしながら他の全てのレグ7を杭1に嵌挿する。また、1本のガイド部材23を高くしておくと、ジャケット2の嵌挿作業において先ず高くしたガイド部材23に対応するガイドレグ7aを僅かに嵌挿した状態でジャケット2を旋回調整して位置決めしてから、他のガイド部材23にレグ7を容易に嵌挿することが出来る。なお、各レグ7とガイドレグ7aの下端をラッパ管11状に広げておくと嵌挿作業を容易に出来る。
【0050】
ガイド部材23を装着した杭1に対応するジャケット2のガイドレグ7aを嵌挿すると、ジャケット2の他のレグ7全ては自動的に対応する杭1に嵌挿される。また、ジャケット2はレグ7を杭1に嵌挿する際にガイドレグ7a以外のレグ7は上部に設けた支持材12が杭上端に支持されて自動的に所定高さに設置される。
【0051】
▲7▼杭上にジャケット2の設置が完了したら図6(a)に示すように、ガイド部材23を取り外し、杭上端に蓋14を被せる(詳細は図10b参照)。杭上にジャケット2を設置した後、レグ下端部にシール材24を装着する。シール材24は筒状の袋をレグ7の下端と杭1間にそれぞれバンド25で固定して装着するが、該シール材24は予めレグ7側に装着しておいてもよい。シール材24の装着が済んだら、レグ7内周と杭外周の隙間にモルタル等のグラウト材8を注入する。グラウト材8の注入作業は、注入管を前記隙間に差し込んで行うか、または予めレグ7の下部に設けておいたグラウト配管を利用する。グラウト材8が硬化すれば杭1とジャケット2は固定される。
なお、回収したガイド部材23は次の桟橋改修の際に再利用する。
【0052】
図9(a)、(b)と図10(a)、(b)は、ガイドレグ7aと杭1の結合のステップを詳細に説明したものであって、図9(a)は、杭頭部に挿入したガイド部材23にジャケット2のガイドレグ7aを吊り下ろしている状況を示す。図9(b)は、杭1の上部にガイドレグ7aを嵌挿した状態、図10(a)はガイド部材23を撤去している状況、図10(b)は杭1の頭部に蓋14をセットし、ガイドレグ7aの先端部に袋状のシール材24をバンド25で止めて、杭1の外周とガイドレグ7aの内周にグラウト材8を充填した状態である。
【0053】
▲8▼図6(b)、図1に示すように、杭上にジャケット2を設置した後、デッキ5の上面にコンクリート床版を設ける場合は、前記説明のようにプレキャストコンクリート製の床版ユニット15を縦梁3または横梁4に配設して各床版ユニット15の端部間に接合用コンクリート26を打設して連続化結合して連続版とする。コンクリート床版の設置が済んだらアスファルト舗装27を行い桟橋の改修を完了する。(図1)
【0054】
なお、満干帯や飛沫帯など既設杭の老朽化や腐食が著しい場合、杭1内にコンクリートを中詰して補強することが出来る。この場合はあらかじめ杭1の蓋14にコンクリート注入用の孔を設けておき、グラウト材8の注入に先立って杭1内にコンクリートを注入する。
【0055】
以上によって、既設杭桟橋の杭1を切断して残された杭上に既設の上部工に替わるジャケット2を設置する。なお、法線方向に長い既設杭桟橋の改修においては、図7に示すように既設杭桟橋の全長を法線方向に複数に分割した改修ブロックの範囲(S)を決め、ブロック単位毎に前記▲1▼〜▲7▼の工程を繰り返して改修を行うことにすれば、工事中のブロック以外の既設杭桟橋を稼動しながら改修することが出来る。
【0056】
以上各種の実施形態、運用形態について説明したが、図示の構成を適宜設計変更して実施することは構わない。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、撤去した上部工に替えて鋼製ジャケットを使用したことにより、上部工を軽量化し、且つ施工性、経済性および桟橋の強度設計面で有利な改修構造とした。
【0058】
ジャケットは、トラス構造にすると更に高い剛性が得られ、改修後の桟橋の構造的強度を増強できるため岸壁の前面を張出すことができる。その結果、改修後の桟橋は岸壁前面の水深を増深して大型船舶の接舷が可能となる。
【0059】
前記ジャケットは下方に突出したレグを腐食環境の厳しい干満帯や飛沫帯をカバーするように下端がLWLより下方になるようにした所定長さとし、既設杭に嵌挿しレグ内周と杭外周の隙間にグラウト材を注入して固定するようにしているため補強された杭に強固に結合されている。
【0060】
また、既設杭の腐食が著しい場合は既設杭内にコンクリートを充填することにより、さらに杭の強度を増加して改修後の桟橋構造強度を高めることができる。ジャケットのデッキの上面にコンクリート床版を設ける上部工では、プレキャストコンクリート製の床版ユニットを用い、U字形の結合鉄筋を突出した床版の端部を梁のフランジ上面に配設して隣接する床版の端部同士が略V字状になるようにしてフランジ幅を広げることなく梁で床版ユニット端を支持可能とし、コンクリートを打設して連続版としたことにより床版の厚さを薄くした。
【0061】
ジャケットは桟橋法線方向で複数のブロックに分割したものを陸上ヤードや工場にて製作し、ブロック単位で施工することができるため、現地施工の工期を短縮できると共に工事中のブロック以外の既設杭桟橋部分を稼動しながら改修することが出来る。
【0062】
また、本発明の桟橋改修工法によれば、既設杭桟橋の杭を切断して上部工を撤去した後、陸上製作した前記の如く構成したジャケットを現地輸送して、残された杭の少なくとも3箇所の杭に仮装着した着脱可能なガイド部材を利用してジャケットを位置決めして全てのレグを杭に嵌挿可能としているため、極めて容易な作業で杭上にジャケットを設置でき、経済的、且つ短工期で既設杭桟橋の改修を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る既設杭桟橋の改修構造の横断面図である。
【図2】ジャケット格点部の平面図である。
【図3】同上縦断面図である。
【図4】床版ユニットの接合部である。
【図5】(a)、(b)は、本発明に係る既設杭桟橋の改修工法の前半のステップ図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明に係る既設杭桟橋の改修工法の後半のステップ図である。
【図7】同上改修工法におけるガイド部材の平面配置図である。
【図8】(a)は、ガイド部材の断面図、(b)は、同図(a)の平面図、(c)は、同図(a)のA−A断面図である。
【図9】(a)、(b)は、ガイドレグと杭の結合の前半のステップ図である。
【図10】(a)、(b)は、ガイドレグと杭の結合の後半のステップ図である。
【符号の説明】
1 鉛直杭
2 ジャケット
3 縦梁
4 横梁
5 デッキ
6 格点
7 鋼管製のレグ
7a ガイドレグ
8 グラウト材
9 海底地盤
10 補正板
11 ラッパ管
12 支持材(十字版)
13 スペーサ
14 蓋
15 床版ユニット
16 結合鉄筋
17 フランジ
18 スタッドジベル
19 既設の上部構
20 クレーン
21 斜めブレース
22 水平ブレース
23 ガイド部材
23a 挿入鋼管
23b テーパ材
23c 鋼管
24 シール材
25 バンド
26 護岸
27 接合用コンクリート
S 改修ブロック範囲

Claims (6)

  1. 多数の鉛直杭で上部工を支持した既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去した後、残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置した桟橋改修構造であって、陸上製作された前記ジャケットは鋼製の縦梁と横梁からなる格子状のデッキの格点下方に所定長さの鋼管製のレグが突出し、このレグ内周と杭外周の隙間にグラウト材が注入されていることを特徴とする既設杭桟橋の改修構造。
  2. 既設の上部工に替わるジャケットは、縦梁と横梁を格子状にしたデッキの格点下方に前記レグを設け、さらにレグ間をブレースで連結してトラス構造としたことを特徴とする請求項1記載の既設杭桟橋の改修構造。
  3. デッキの格点下方に設けたレグの長さをLWL以下まで延在させ、且つ残された杭内にコンクリートを充填して補強したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の既設杭桟橋の改修構造。
  4. 縦梁と横梁からなる格子状のデッキ上にプレキャストコンクリート製の床版を設けた上部工において、端部を斜め状に形成し結合鉄筋を突出した床版の端部を縦梁または横梁のフランジ上面に配設し、隣接する床版の端部同士が略V字状になるようにして打設コンクリートで連続化結合したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の既設杭桟橋の改修構造。
  5. 多数の鉛直杭で上部工を支持した既設杭桟橋の改修工法であって、
    ▲1▼既設杭桟橋の上部工直下にて杭を切断して上部工を撤去し、
    ▲2▼残された杭の配置を測量し、
    ▲3▼縦梁と横梁の格点を前記杭の配置と合致するようにした格子状のデッキの格点下方に前記杭に嵌挿可能なレグを設けたジャケットを陸上にて製作しておき、
    ▲4▼前記ジャケットを現地に輸送し、
    ▲5▼前記杭の少なくとも3箇所の杭上端に着脱可能なガイド部材を仮装着し、
    ▲6▼前記ジャケットを吊り上げ、ガイド部材を装着した杭に対応するジャケットのレグを嵌挿して位置決めしながら他のレグを全ての杭に嵌挿し、
    ▲7▼前記ガイド部材を取外した後、レグ内周と杭外周の隙間にグラウト材を注入し、
    既設杭桟橋の杭を切断して残された杭上に既設の上部工に替わるジャケットを設置することを特徴とする既設杭桟橋の改修工法。
  6. ジャケットを既設杭桟橋の法線方向に分割した複数のブロックとして陸上製作し、ブロック単位で既設杭桟橋の上部工を切断撤去し、残された杭上にジャケットを設置することを特徴とする請求項5記載の既設杭桟橋の改修工法。
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