JP4790142B2 - ガスバリア性向上添加剤並びにガスバリア性フイルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、食品等の内容物の保存に好適な酸素等のガスバリア性フイルム、並びに該フイルムのフィラー層を形成するガスバリア性向上添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品、医薬品等の包装用として用いられる包装用フイルムには、内容物の酸化や吸湿を防止するためガスバリア性が必要とされている。
【0003】
このようなガスバリア性フイルムとしては、ポリ塩化ビニリデン系フイルムが知られているが、これは塩素を含むため、廃棄時の焼却の際に、ダイオキシン等の有害物質が発生する問題があったので、最近、塩素非含有フイルムの要求が強くなってきている。
【0004】
このような要求に応えるため、マトリックス中に平板状フィラーを分散させて、ガスバリア性を向上させる方法が提案されている。このガスバリア性発現機構は、平板状フィラーが、水蒸気・酸素等の気体分子がフイルム透過時に防壁として働くことによるものである。即ち、気体分子は平板状フィラーの隙間を縫って透過せざるを得ないので、気体分子の透過経路を著しく長くすることができるためである。
【0005】
従来このような平板状フィラーとしては、一般的に金雲母等の無機層状珪酸塩が用いられていたが、これらの厚みは、薄いものでもμmオーダーであったため、以下のような問題があった。
平板状フィラーを添加したマトリックスをコート剤として使用する場合、ひび割れが生じる。これは、平板状フィラーとして使用されている無機層状珪酸塩は可撓性の小さい無機物であり、その添加量が増えることにより脆くなるためである。
充分なガスバリア性を出すためには、平板状フィラーの添加量を多くする必要があるが、多くすると、通常の有機物のマトリックスの場合は、比重が増加するとともに製品が厚くなるので製品は重くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明のうち請求項1記載の発明は、平板状フィラーの厚みを薄くすることができ、フィルムのひび割れを生じ難くするとともに優れたガスバリア性を付与するガスバリア性向上添加剤を提供することを目的とする。
【0007】
また、請求項7記載の発明は、ひび割れが生じ難いと共に優れたガスバリア性を有するガスバリア性フイルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿う本発明のうち請求項1記載の発明は、分散剤を添加した液体中で遠心分級により粒度をそろえた膨潤性無機層状化合物を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に使用する膨潤性無機層状化合物としては、レーザー回折式粒度分布測定装置でのL値が0.1〜100μm、アスペクト比が100〜10000であるもの(請求項3)又は自由膨潤型無機層状化合物であるもの(請求項2)が好ましい。
【0010】
膨潤性無機層状化合物ゾルに分散剤としてアルカリ電解質もしくはアニオン系界面活性剤を添加すると、膨潤性無機層状化合物の粒子がより均一かつ密に分散し、高いガスバリア性を発現する。(請求項6)
【0011】
膨潤性無機層状化合物の粒径の調製を、遠心分級によって行うと、粒子が凝集し難くなり、粒径分布もシャープとなることから好ましい。膨潤性無機層状化合物に分散剤を添加したものを遠心分級することによって粒径調整を行うと、フイルムはひび割れが更に生じ難く、且つガスバリア性も向上する。
【0012】
また、請求項7記載のガスバリア性フイルムは、マトリックスに分散剤を添加した液体中で遠心分級により粒度をそろえた膨潤性無機層状化合物を有するガスバリア性向上添加剤を混合したものであることを特徴とする。
【0013】
膨潤性無機層状化合物とは、水溶液中で結晶層間に水分子が多く入り、結晶面間隔が広がる化合物である。即ち、水溶液中では結晶層毎に分離してしまうので、分離しない非膨潤性のものに比べ、水溶液中に分散している粒子数は非常に多くなる。そのため気体分子の通過経路が非常に長くなるので、ガスバリア性に優れるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明のガスバリア性フィルムは、膨潤性無機層状化合物に水を添加したゾルをマトリックスに混合し、これをフィルム化するか若しくはこれを別のフィルムにコーティングすることにより得られる。また、このようにして得たフィルムに接着剤を介して別のフィルムを積層してもよい。
【0016】
本発明に使用する膨潤性無機層状化合物としては、自由膨潤型及び限定膨潤型のいずれも使用することができるが、自由膨潤型の方がひび割れは生じ難く、且つガスバリア性も向上することから、自由膨潤型を使用するのが特に好ましい。
【0017】
本発明に使用するマトリックスとしては、高分子材料で膜、フィルムを形成できる物であれば何でも良い。例えば有機高分子であるプラスティック、紙(セルロース等の多糖類)、ゴム、タンパク質等や無機高分子のシランカップリング材等が挙げられる。
【0018】
プラスティックとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のポリエステル、セロファン、防湿セロファン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、フッ素樹脂等の合成樹脂が挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、防湿セロファン、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用する膨潤性無機層状化合物としては、スメクタイト族,バーミキュライト族,マイカ族の天然粘土鉱物及び合成粘土鉱物が好ましく、合成粘土鉱物が特に好ましい。該合成粘土鉱物としては、合成テトラシリシックマイカ、合成リチウムテニオライト、合成ヘクトライト、合成サポナイト、ナトリウム四ケイ素雲母、リチウムテニオライト等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明に使用する膨潤性合成無機層状化合物は、少量の添加で高いガスバリア性を発現させる必要があるという理由で、結晶が大きく且つアスペクト比が大きいものが好ましい。このような膨潤性合成無機層状化合物は、膨潤により容易に厚みがnmオーダー迄劈開するからである。結晶が大きく且つアスペクト比が大きい膨潤性合成無機層状化合物は、溶融法によって容易に得られる。
【0021】
具体的には、本発明に使用する膨潤性合成無機層状化合物の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置でのL値が、好ましくは0.1〜100μmであり、特に好ましくは1〜100μmであり、アスペクト比(X)は、好ましくは100〜10000である。また、超遠心式粒度測定装置で測定した場合の粒径は、好ましくは50%メジアン径で3μm以下である。堀場製作所製超遠心式粒度測定装置(CAPA―700)で測定して、好ましくは50%メジアン径で3μm以下、更に好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。また、アスペクト比(X)は、特に好ましくは1000〜10000である。このような膨潤性合成無機層状化合物を使用することによって、平板状フィラーの厚みを薄くすることができ、ひび割れも生じないと共に優れたガスバリア性を有するフイルムが得られる。
【0022】
膨潤性無機層状化合物の面間隔(単位厚み)(a)は、L/Xで表される。透過型電子顕微鏡による測定で面間隔の平均厚み(a)は、1nm〜30nmが好ましい。
【0023】
本発明の効果を十分発揮させ、高いガスバリア性を発現させるためには、膨潤性無機層状化合物を、均一に且つ密に分散させるのが良い。このようにするには、粒径をそろえる必要がある。粒径を調整する方法としては、ボールミル等の粉砕による方法と遠心分級等の分級による方法があるが、粉砕による方法では、凝集が生じたり、粒度分布がシャープでない等の問題が生じる。また粉砕すると、マイカ表面が平滑で無くなると共に粉砕面に原子が露出し活性サイトになるため、凝集が発生し易くなる。遠心分級によれば、このような問題は生じない。膨潤性無機層状化合物と分散剤を添加した液体、好ましくは水分散液を遠心分級することにより、粒径を調整する。
【0024】
分散剤としては、アルカリ電解質及びアニオン系界面活性剤が有効である。これらは、水溶液として使用するのが良い。アルカリ電解質としては、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ及びケイ酸ソーダ等のアルカリ金属(ナトリウム)塩、及び苛性ソーダのようなアルカリ金属水酸化物が有効である。
【0025】
分散剤を使用する効果は、(1)電気的な斥力による効果(電気二重層の拡大)と(2)吸着した分散剤による立体的な保護作用による効果であり、アルカリ電解質は前者が中心的であり、界面活性剤は後者が中心的である。
【0026】
即ち、マイカ等の膨潤性無機層状化合物の分子は、水中で膨潤し、ある程度の広がりを持つ電気二重層を形成することにより、分散を保持している。ここに少量のアルカリ電解質を添加すると、電気二重層表面にアルカリ金属イオンが吸着され、電気二重層を拡大させて分散安定性が高まる。しかし、電解質濃度が濃くなりすぎると、電気二重層が圧縮されて分散安定性を失う。
【0027】
本発明のガスバリア性フイルムは、品質保存性の優れていることから、食品包装用フイルムとして使用するのに特に適している。食品包装用に使用する場合、フイルム表面の透明性と平滑性が重要になる。即ち、フィルムは通常ロール状に製造・加工されることから、この時点でフィルム表面にひび割れが生じると印刷に不都合が生じると共に、ひび割れの発生によりガスバリア性が低下するからである。
【0028】
また、表面に本発明のフイルムを貼り付けた自動車用プラスチック等としても効果的である。自動車用プラスチック等では、酸素を遮断することにより内部金属の酸化を防止し得る点からガスバリア性が重要になるからである。
【0029】
【実施例】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。尚、実施例中の分散液の平均粒子径、得られたフィルムの特性は次の測定法により測定したものである。
(1)沈降法平均粒子径(S)
超遠心式粒度分布測定装置(CAPA-700;堀場製作所製)による50%平均粒子径(2)ガスバリア性
長さ150mm、幅20mmのフィルムを作製し、温度25℃、相対湿度約55%の条件で酸素透過量を測定した。酸素透過量が5ml/m2day以下の場合はガスバリア性:○、5〜10ml/m2dayの場合はガスバリア性:△、10ml/m2dayより多かった場合はガスバリア性:×と判断した。
(3)フレキシビリティ
長さ100mm、幅10mmのフィルムを長手方向に沿って半分に180度折り曲げる操作を20回くり返したのち、フィルムを観察し、変化のない場合はフレキシビリティ:○、フィルムにひび割れが入ったり、折り曲げた部分から破断した場合には、フレキシビリティ:×と判断した。
(4)アスペクト比
レーザー回折式粒度分布測定装置(LMS−30;セイシン企業製)による50%平均粒子径(L)と透過型電子顕微鏡による面間隔の平均厚さ(a)から、平均アスペクト比(X)を、X=L/aとして算出した。
【0030】
実施例1
膨潤型合成マイカ(Naテトラシリシックマイカ;トピー工業(株)製)を蒸留水(2.0μS/cm以下)に5.0wt%となるように分散させ、これに分散剤(チューポールNV−G5;竹本油脂(株)製)を0.15wt%添加した。この合成マイカ分散液を遠心機にかけ、沈降法平均粒子径1.5μmの分散液を得た。これを合成マイカ分散液(A液)とする。A液のレーザー回折平均粒子径は12μm、面間隔の平均厚さは5nm であり、平均アスペクト比は2,400であった。また、ポリビニルアルコール(和光純薬工業製、平均重合度約900〜1,100、けん化度86.0〜90.0mol%)を蒸留水(2.0μS/cm以下)に5.0wt%となるように溶解させ、これを樹脂溶液(B液)とする。A液とB液とをそれぞれの固形成分比(重量比)が合成マイカ/樹脂=2/8となるように混合し、これを混合液(C液)とした。この混合液(C液)をガラス板上に流延し厚さが均一に1mmとなるように展延し、これを室温で24時間、次いでギヤーオーブンを用いて70℃で1時間、120℃で1時間乾燥した。こののち、ガラス板上に形成したフィルムを剥離して厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0031】
実施例2
A液の分散剤として、ヘキサメタリン酸Na(和光純薬工業製)を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は12μm、面間隔の平均厚さは3nm であり、平均アスペクト比は4、000であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0032】
実施例3
A液として、充分に遠心機にかけた沈降法平均粒子径0.5μmの分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は6μm、面間隔の平均厚さは3nm であり、平均アスペクト比は2,000であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0033】
実施例4
A液の無機層状化合物として精製モンモリロナイト(クニピアF;クニミネ工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は2μm、面間隔の平均厚さは5nm であり、平均アスペクト比は400であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0034】
実施例5
A液の無機層状化合物として限定膨潤型合成マイカ(Naテニオライト;トピー工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均径は20μm、面間隔の平均厚さは80nmであり、平均アスペクト比は250であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0035】
比較例1
A液の無機層状化合物として非膨潤型合成マイカ(フッ素金雲母;トピー工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は20μm、面間隔の平均厚さは1μm であり、平均アスペクト比は20であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0036】
比較例2
A液として、遠心機にかけず沈降法平均粒子径4.5μmの分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は15μm、面間隔の平均厚さは20nmであり、平均アスペクト比は750であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0037】
比較例3
A液として、分散剤を添加しない分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は12μm、面間隔の平均厚さは10nmであり、平均アスペクト比は1,200であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0038】
比較例4
A液として、分散剤を添加せず且つ遠心機にもかけず沈降法平均粒子径4.5μmの分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルムを得た。A液のレーザー回折平均粒子径は15μm、面間隔の平均厚さは25nmであり、平均アスペクト比は600であった。得られたフイルム特性の測定結果を後記表1に示す。
【0039】
【表1】
但し、S:沈降法平均粒子径(μm)
X:アスペクト比
【0040】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、平板状フィラーの厚みを薄くすることができるほか、平板状フィラーが少量でもひび割れも生じないか生じ難くなると共に優れたガスバリア性を有するフイルムが得られる。また、厚みを薄くできるので質量も軽くなる等、従来のこの種フイルムには全く見られない著しく顕著な効果を奏する。
Claims (8)
- 分散剤を添加した液体中で遠心分級により粒度をそろえた膨潤性無機層状化合物を有することを特徴とするガスバリア性向上添加剤。
- 前記膨潤性無機層状化合物が、自由膨潤型無機層状化合物である請求項1記載のガスバリア性向上添加剤。
- 前記膨潤性無機層状化合物が、レーザー回折式粒度分布測定装置でのL値が0.1〜100μmであり、アスペクト比が100〜10000である請求項1又は2記載のガスバリア性向上添加剤。
- 前記膨潤性無機層状化合物が、超遠心式粒度測定装置で測定して、50%メジアン径で3μm以下である請求項1又は2記載のガスバリア性向上添加剤。
- 前記膨潤性無機層状化合物の面間隔の平均厚みは、透過型電子顕微鏡による測定で、1nm〜30nmである請求項3又は4記載のガスバリア性向上添加剤。
- 前記分散剤が、アルカリ電解質もしくはアニオン系界面活性剤である請求項1〜5のいずれか1項記載のガスバリア性向上添加剤。
- マトリックス中に請求項1〜6のいずれか1項記載のガスバリア性向上添加剤を有することを特徴とするガスバリア性フイルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のガスバリア性向上添加剤をマトリックス中に混合し、これをフイルム化するか、もしくは、これを別のフイルムにコーティングするか、もしくは、二枚のフイルム間にこれをコーティングしてなる請求項7記載のガスバリア性フイルム。
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