JP4788428B2 - 積層型電子部品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品と、その製造方法と、に関する。
積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、電気機器および電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型かつ高性能化に伴い、積層型セラミックコンデンサに対する更なる小型化、大容量化、低価格化、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
現在、小型、高容量のセラミックコンデンサには、一般に、強誘電体セラミック材料が使われている。このような強誘電体セラミック材料は、電界を印加した際に、機械的歪みが発生するという電歪現象を伴うため、強誘電体セラミック材料を用いたセラミックコンデンサに電圧を印加すると、電歪現象による振動が発生する。
特に、このような電歪現象は、セラミックコンデンサを回路基板上に実装した場合に、たとえば、電圧の変動により、コンデンサ自身だけでなく、基板や、さらには周りの部品を振動させる原因となり、ときに可聴振動数(20〜20000Hz)の振動音を発することがある。この振動音は人に不快な音域の場合もあり、対策が必要とされていた。
これに対し、たとえば、特許文献1では、電歪現象によるセラミックコンデンサの振動の基板への伝達を抑止するために、外部端子電極と基板とを接続するための電極接続部をセラミックコンデンサに設け、コンデンサ素子本体の下面と基板との間に一定の離隔距離を設けることが提案されている。
しかしながら、この文献のように、電極接続部により、一定の離隔距離を設ける方法を採用した場合には、セラミックコンデンサの製造コストが高くなってしまうという点や、コンデンサの高さ方向が大きくなってしまい、小型化が困難となってしまうという点より、さらなる改良が望まれていた。
また、特許文献2には、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸バリウムを含有し、これら3つの組成モル比について少なくともチタン酸バリウムの組成モル比が0.3以下であり、正方晶または斜方晶の少なくとも何れか一方の結晶構造を含むことを特徴とする誘電体磁器組成物が開示されている。この文献記載の誘電体磁器組成物は、特に、第3次高調波歪み(THD)を低減することを目的としている。しかしながら、この文献の誘電体磁器組成物では、上述した電歪現象の改善については十分ではなく、しかも、主成分であるチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸バリウムを互いに固溶させた構成を採用しているため、容量温度特性が十分ではなく、たとえば、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC/C=±22%以内)を満足することができなかった。
特開2004−335963号公報 特開2000−264729号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、還元性雰囲気中での焼成が可能であり、容量温度特性に優れ、高い比誘電率を有し、DCバイアス特性(誘電率の直流電圧印加依存性)が良好で、電圧印加時における電歪量が低減されており、しかも、優れた高温加速寿命を有し、高温加速寿命のばらつきが有効に防止された積層型電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品を構成する誘電体層を、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有するとともに、これらが互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含まれ、コンポジット構造を形成するとともに、誘電体層中における、これらの結晶粒子の配置を特定のものとすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の観点に係る積層型電子部品は、
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
前記内部電極層に直接接触している粒子を、電極接触粒子とした場合に、
前記電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、CaTiO結晶粒子の個数の割合が、50〜80%であることを特徴とする。
あるいは、本発明の第2の観点に係る積層型電子部品は、
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子が、対向する一対の前記内部電極層間において、一方の内部電極層から、対向する他方の内部電極層まで、連続して並ばないように配置されていることを特徴とする。
本発明の第2の観点に係る積層型電子部品において、好ましくは、
前記内部電極層に接触していない粒子を非電極接触粒子とした場合に、
対向する一対の前記内部電極層間において、一方の内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子と、対向する他方の内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子と、が複数の非電極接触粒子を介して連結されており、各内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子を連結している複数の非電極接触粒子には、少なくともSrTiO結晶粒子またはCaTiO結晶粒子が含有されている。
本発明の積層型電子部品において、好ましくは、前記誘電体層を構成する複数の前記SrTiO結晶粒子および前記CaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径が、それぞれ、前記誘電体層の厚みの1/10〜1/3の大きさである。
本発明の積層型電子部品において、好ましくは、前記誘電体層の厚みが1〜30μmである。
本発明の積層型電子部品において、好ましくは、前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOの組成モル比を、組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
0.19≦x≦0.23、
0.25≦y≦0.31、
0.46≦z≦0.54、
x+y+z=1、
0.980≦m≦1.01、
である。
また、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品を製造する方法であって、
焼成後に誘電体層となるグリーンシートを形成する工程と、電極ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、前記グリーンシートおよび電極ペースト膜を交互に積層し、グリーンチップを得る工程と、前記グリーンチップを焼成する工程と、を有し、
焼成後の前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物からなり、
前記電極ペースト膜を形成するための電極ペーストとして、導電体粉末と、CaTiO粉末を含有する共材と、を含む電極ペーストを用いることを特徴とする。
本発明の製造方法において、好ましくは、前記電極ペースト中における、前記共材の含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、5〜30重量部である。
本発明の積層型電子部品、および本発明の製造方法により得られる積層型電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
本発明によれば、誘電体層を、主成分としてBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含み、かつ、これらが、それぞれ互いに実質的に固溶せず、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成している。そのため、比誘電率、DCバイアス特性および容量温度特性を良好とし、電圧印加時における電歪量を低減することができる。
しかも、本発明の第1の観点に係る積層型電子部品おいては、誘電体層を構成する結晶粒子に関し、内部電極層に直接接触している粒子である電極接触粒子中におけるBaTiO結晶粒子の割合を所定の範囲としている。そのため、上記各特性を良好に保ちながら、高温加速寿命の向上、および高温加速寿命のばらつきの防止を図ることができる。
また、本発明の第2の観点に係る積層型電子部品おいては、誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子を、対向する一対の前記内部電極層間において、連続して並ばないように配置している。そのため、上記各特性を良好に保ちながら、高温加速寿命の向上、および高温加速寿命のばらつきの防止を図ることができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は第1実施形態に係る誘電体層の微細構造を説明するための図、
図3(A)、図3(B)は第2実施形態に係る誘電体層の微細構造を説明するための図である。
第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について、図1および図2に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2
誘電体層2は、誘電体磁器組成物を含有する。
誘電体層2に含有される誘電体磁器組成物は、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含む主成分を有する。
本実施形態において、主成分を構成する上記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、それぞれ互いに、実質的に固溶していない状態で含有されている。すなわち、本実施形態では、これらBaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、それぞれ別々の結晶粒子としてのBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子として含有され、コンポジット構造を形成している。
ただし、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOは、実質的にBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子として含有されていれば良く、たとえば、BaTiOの結晶粒子とSrTiOの結晶粒子との界面付近においては、一部固溶相が形成されていても構わない。
BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを、それぞれ互いに、実質的に固溶していない状態とし、コンポジット構造を形成させることにより、高い日誘電率を維持しながら、容量温度特性の向上を図ることができ、特に、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC/C=±22%以内)を満足させることができる。なお、この理由としては、たとえば、非固溶とし、コンポジット構造とすることにより、BaTiOに由来するキュリー温度のピークが残存すること等によると考えられる。
主成分を構成するBaTiO、SrTiOおよびCaTiOが互いに固溶しているか否かについては、たとえば、誘電体層2のX線回折により確認することができる。具体的には、誘電体層2に対して、X線源にCu−Kα線を用いたX線回折を行い、2θ=30〜35°の範囲に、それぞれBaTiO、SrTiOおよびCaTiOに起因する分離可能な3つの回折ピークが観測されるか否かにより確認することができる。なお、2θ=30〜35°の範囲に観測される回折ピークは、それぞれBaTiOの(110)面の回折ピーク、SrTiOの(110)面の回折ピーク、およびCaTiOの(121)面の回折ピークである。
さらに、第1実施形態では、誘電体層2を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の3種類の結晶粒子中における、CaTiO結晶粒子の割合(個数割合)に関し、次のような構成とする。
すなわち、図2に示すように、内部電極層3に直接接触している結晶粒子を電極接触粒子22とした場合に、電極接触粒子22を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、CaTiO結晶粒子の個数の割合ACT[%]を50〜80%の範囲とする。
なお、図2は、誘電体層2の微細構造を説明するための図であり、図1に示す一対の内部電極層3に挟まれた誘電体層2の断面を拡大した部分に相当する図である。この図2においては、その断面に平行斜線(ハッチング)を付した粒子は、内部電極層3に直接接触している電極接触粒子であり、図中において、符号「22」で示した。一方、その断面に平行斜線(ハッチング)を付していない粒子は、内部電極層3に接触していない非電極接触粒子であり、図中において、符号「24」で示した。ただし、これらの粒子22,24はともに、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれかで構成される粒子であるという点では同じである一方で、単に内部電極層3に接触しているか否かで、平行斜線(ハッチング)の有無により区別している。また、図2中では、たとえば、電極接触粒子22においては、その組成がいずれであるか(すなわち、BaTiO、SrTiO、CaTiOのいずれであるか)に関係なく同じ電極接触粒子22として図示した(この点については、非電極接触粒子24も同様である。)。
電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTは、好ましくは60〜80%、より好ましくは65〜80%である。電極接触粒子22中における、CaTiO結晶粒子の割合をこのような範囲とすることにより、高い比誘電率を有し、DCバイアス特性および容量温度特性(特に、EIA規格のX6S特性を満足できる温度特性)を良好なものとし、電圧印加時における電歪量を低減しつつ、高温加速寿命を良好なものとすることができ、しかも高温加速寿命のばらつきを有効に防止することができる。電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTが低すぎると、高温加速寿命が悪化し、さらには高温加速寿命のばらつきが大きくなってしまい、信頼性が低下するおそれがある。一方、割合ACTを高くするためには、共材としてのCaTiOの量を増加させなければならず、そのため、焼成後の内部電極の連続性が悪化してしまい、取得容量が低下してしまうおそれがある。
なお、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTは、たとえば、次のようにして求めることができる。
すなわち、まず、誘電体層2の断面についてSEM観察を行い、誘電体層2のSEM像(反射電子像)を得る。そして、SEM像(反射電子像)より、誘電体層2中において内部電極層3に直接接触している粒子を特定し、これを電極接触粒子22とする。次いで、この特定した電極接触粒子22を構成する各粒子について、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれであるか特定する。そして、その結果に基づいて、下記式(1)により、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTを求めることができる。割合ACTを求める際には、少なくとも20個以上の電極接触粒子22を用いて、上記測定を行うことが好ましい。
割合ACT[%]=(CaTiO結晶粒子の個数)/(BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計個数)×100 …(1)
なお、電極接触粒子22を構成する各粒子において、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子のいずれであるかは、SEM像(反射電子像)より、各結晶粒子がBa,Sr,Caのいずれを主として含有しているかを測定することにより特定することができる。
また、第1実施形態においては、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の割合ACTを上記範囲とするとともに、この割合ACT[%]と、非電極接触粒子24中におけるCaTiO結晶粒子の割合BCT[%]と、の差(ACT−BCT)を、好ましくは10%以上、特に20〜40%とすることが好ましい。割合ACTとBCTとの差(ACT−BCT)を、上記範囲とすることにより、高温加速寿命の改善効果、および高温加速寿命のばらつきの防止効果をさらに高めることができる。
上記割合BCTは、非電極接触粒子24を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、CaTiO結晶粒子の個数の割合である。この割合BCTは、誘電体層2中において内部電極層3に接触していない粒子である非電極接触粒子24について、上記測定を行う以外は、同様にして求めることができる。なお、この場合には、SEM像(反射電子像)中において、20個以上の非電極接触粒子24を通る直線を引き、この直線上の非電極接触粒子24について、上記測定を行い、各粒子の種類を特定する方法を採用することが好ましい。
誘電体層2を構成する結晶粒子のうち、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、その平均結晶粒子径が、誘電体層2の厚みの1/10〜1/3の範囲であることが好ましく、特に1/8〜1/5の範囲であることが好ましい。SrTiO結晶粒子、CaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径をこのような範囲とすることにより、高温加速寿命の改善効果、および高温加速寿命のばらつきの防止効果をさらに高めることができる。
なお、本実施形態では、誘電体層2の厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。誘電体層2を薄くしすぎると、ショート不良率が悪化する場合がある。一方、厚くしすぎると、コンデンサの小型化が困難となってしまう。
また、BaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径については、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは1〜3μmと比較的微細なものとする。SrTiO結晶粒子、CaTiO結晶粒子に加えて、BaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径を上記範囲とすることにより、誘電体層2中において、BaTiO結晶粒子間の近傍にSrTiO結晶粒子やCaTiO結晶粒子を効率的に配置することができる。そのため、BaTiO結晶粒子同士が隣り合う位置に配置され難くなり、結果として、高温加速寿命の改善効果、および高温加速寿命のばらつきの防止効果をさらに高めることができる。
また、主成分を構成するBaTiO、SrTiOおよびCaTiOの組成モル比については特に限定されないが、これらを組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、好ましくは、
0.19≦x≦0.23、
0.25≦y≦0.31、
0.46≦z≦0.54、
0.980≦m≦1.01、
であり、より好ましくは、
0.195≦x≦0.225、
0.255≦y≦0.305、
0.465≦z≦0.535、
0.985≦m≦1.0095、
である。なお、上記式において、x+y+z=1である。
記号x、y、zおよびmを上記範囲とすることにより、DCバイアス特性の向上効果と、電圧印加時における電歪量の低減効果と、を高めることができる。また、上記組成式において、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
上記式中、xは、BaTiOの含有割合を示す。主成分中のBaTiOの含有量が増加すると、強誘電性が強くなる傾向にある。xが小さ過ぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。特に、比誘電率が低すぎる場合には、所望の容量を得るためには、誘電体層2の積層数を増加させる必要が生じてくるため、製造コストが増加してしまうという問題や、コンデンサの小型化が困難となってしまうという問題が発生してしまう。一方、xが大き過ぎると、比誘電率は向上するものの、電圧印加時の電歪量が高くなり、さらにはDCバイアス特性が悪化する傾向にある。
上記式中、yは、SrTiOの含有割合を示す。主成分中のSrTiOの含有量が増加すると、常誘電性が強くなる傾向にある。yが小さ過ぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。一方、yが大き過ぎると、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。
上記式中、zは、CaTiOの含有割合を示す。CaTiOは、主に焼結安定性を向上させる効果や、絶縁抵抗値を向上させる効果を有する。zが小さ過ぎると、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。一方、zが大き過ぎると、比誘電率が低下してしまう傾向にある。
主成分中のBaTiOの含有量が増加すると、強誘電性が強くなる一方で、主成分中のSrTiO,CaTiOの含有量が増加すると、常誘電性が強くなる傾向にあり、記号x、y、zを上記範囲とすることにより、強誘電相と常誘電相とのバランスを図ることができる。
上記式中、mは、ペロブスカイト構造のAサイトと、Bサイトと、の比(Ba,SrおよびCaと、Tiと、の比)を示す。mを0.980以上とすることにより、焼成時における誘電体粒子の粒成長を抑制することができる。また、mを1.01以下とすることにより、焼成温度を高くしなくても緻密な焼結体を得ることができる。mが小さすぎると、誘電体粒子の微細化が困難となり、DCバイアス特性が悪化する傾向にある。一方、mが大きすぎると、焼結温度が高くなり過ぎてしまい、焼結が困難となる傾向にある。
上記誘電体磁器組成物には、上記した主成分に加えて、副成分がさらに含有されていることが好ましい。
本実施形態においては、副成分として、Mnの酸化物と、Siの酸化物と、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物から選択される1種以上と、をさらに含有していることが好ましい。
Mnの酸化物は、焼結を促進する効果、および高温負荷寿命を改善する効果を有する。Mnの酸化物の含有量は、上記主成分100モルに対して、MnO換算で、好ましくは0.3〜1モルであり、より好ましくは0.3〜0.8モルである。Mnの酸化物の含有量が少な過ぎると、焼結性が悪化するとともに、高温負荷寿命に劣る傾向にある。一方、含有量が多過ぎると、IR不良率が悪化してしまう場合がある。
Siの酸化物は、主として焼結助剤として作用するが、薄層化した際の初期絶縁抵抗の不良率を改善する効果を有する。Siの酸化物の含有量は、上記主成分100モルに対して、SiO換算で、好ましくは0.1〜0.5モルであり、より好ましくは0.15〜0.45モルである。Siの酸化物の含有量が少な過ぎると、焼成温度が上昇してしまう場合がある。一方、多過ぎると、IR不良率が悪化してしまう傾向にある。
なお、本実施形態においては、Siの酸化物を複合酸化物の形態で含有させても良い。このような複合酸化物としては、SiOと、誘電体磁器組成物に含有される他の主成分や副成分を構成する元素の酸化物と、の複合酸化物が挙げられ、たとえば、CaSiO、SrSiO、(Ca,Sr)SiO、MnSiO、BaSiOなどが挙げられる。これら複合酸化物を使用する場合には、焼成後の組成が所望の範囲となるように、適宜調整すればよい。
V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各元素の酸化物は、高温負荷寿命を改善する効果を有する。これらの酸化物の含有量は、主成分100モルに対して、V、Ta、Nb、W、MoおよびCrの各酸化物換算で、好ましくは、0.02モル以上、0.40モル未満、より好ましくは0.03〜0.30モル、さらに好ましくは0.05〜0.20モルである。これらの酸化物の含有量が少な過ぎると、上記効果が得難くなる。一方、多過ぎると、IRが低下する傾向にある。
なお、上記含有量は各元素換算の含有量であり、たとえば、Vの酸化物において、V元素換算での含有量が0.10モルである場合には、その酸化物であるV換算での含有量は0.05モルとなる。
また、本実施形態においては、必要に応じて、上記以外の副成分を含有させても良い。このような副成分としては、特に限定されないが、たとえば、Ba、Ca、Sr、Li、Mg、Al、Zr、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの各元素の酸化物などが挙げられる。
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、Ni、Cu、Ni合金またはCu合金が好ましく、特にNiまたはNi合金が好ましい。内部電極層3の主成分をNiやNi合金とした場合には、誘電体が還元されないように、低酸素分圧(還元雰囲気)で焼成することが好ましい。内部電極層3の厚さは、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは0.8〜1.0μmである。
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
誘電体ペーストの準備
まず、誘電体ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体ペーストを調製する。
誘電体ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
誘電体原料としては、上記した主成分および副成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
本実施形態では、上記主成分の原料として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を使用することが好ましく、特に、これらのBaTiO粉末、SrTiO粉末、CaTiO粉末は、互いに予め反応させることなく用いることが好ましい。主成分の原料として、これらの粉末を使用し、しかも、予め互いに反応させることなく用いることにより、焼結後の誘電体磁器組成物において、主成分を構成することとなるBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを、それぞれ互いに、実質的に固溶していない構成とすることができる。すなわち、焼結後の誘電体磁器組成物において、これらの複合酸化物を、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で存在させ、コンポジット構造を形成させることができる。
なお、主成分原料としてのBaTiO粉末、SrTiO粉末、CaTiO粉末は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、しゅう酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造することができる。
また、主成分の原料としては、上記した各粉末以外に、ペロブスカイト構造のAサイトと、Bサイトと、の比(Ba,SrおよびCaと、Tiと、の比)を調整するために、TiOをさらに添加しても良い。
また、上記主成分以外の原料(たとえば、副成分の原料)としては、各酸化物や焼成により各酸化物となる化合物を、そのまま用いても良いし、あるいは、予め仮焼きし、焙焼粉として用いても良い。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ブチラール樹脂、アクリル樹脂等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、ターピネオール、アセトン、トルエン、エタノール、キシレン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
電極ペーストの準備
次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を形成するため電極ペーストを準備する。
内部電極層3を形成するための電極ペーストとしては、導電体粉末と、共材と、有機ビヒクルと、を含有するペーストを用いる。
導電体粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
本実施形態では、共材として、CaTiO粉末を含有するものを用いることが好ましい。
共材として、CaTiO粉末を含有するものを用いることにより、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTを、上述した範囲に制御することができる。なお、この理由としては、たとえば、次のようなことが考えられる。すなわち、電極ペースト中に含有させた共材としてのCaTiO粉末が、焼成時に、内部電極層3と誘電体層2との界面付近で焼結し、焼成後には、電極接触粒子22として存在することとなり、そして、その結果、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTが高なると考えられる。
また、共材としては、CaTiO粉末の他、必要に応じて、BaTiO粉末やSrTiO粉末等が含有されていても良い。
電極ペースト中における、共材の含有量は、前記導電体粉末100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部であり、より好ましくは10〜20重量部である。共材の含有量が少なすぎると、焼成時における、内部電極層と誘電体層との間の収縮挙動の差が大きくなってしまい、クラック等の構造欠陥が発生し易くなる。また、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTが低くなってしまい、上記効果が得られなくなる傾向にある。一方、共材の含有量が多すぎると、電極途切れが発生してしまい、内部電極層3の電極被覆率が下がり、その結果、静電容量が低下してしまう。なお、共材の平均粒子径は、特に限定されないが、粉砕後の粒子径で、好ましくは0.01〜1μmである。
有機ビヒクルとしては、上記した誘電体ペーストと同様のものを使用すれば良い。
電極ペーストは、上記した各成分をボールミルや3本ロールミルなどで混合し、スラリー化することにより形成することができる。あるいは、市販の電極ペーストにCaTiO粉末を含む共材を添加する方法などを採用しても良い。
グリーンチップの作製、焼成など
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、キャリアシート上に、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートは、焼成後に図1に示す誘電体層2となる。
キャリアシートとしては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシートの厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
そして、上記にて作製した電極ペーストを用いて、キャリアシート上に形成されたセラミックグリーンシートの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極ペースト膜(内部電極パターン)を形成する。
電極ペースト膜の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、たとえば、スクリーン印刷法などが挙げられる。
次に、以上のような、所定パターンの電極ペースト膜が表面に形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して、グリーンチップを作製する。
そして、焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、1.2×10−7〜3.2×10−4Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1360℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−1〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、高温負荷寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
第2実施形態
第2実施形態は、図1に示す誘電体層2が、以下に示す構成となっている以外は、上述の第1実施形態と、同様の構成および効果を有し、その重複する説明は省略する。
第2実施形態においては、誘電体層2は、第1実施形態と同様に、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含む主成分を含有しており、さらに、これらが、それぞれ互いに、実質的に固溶しておらず、それぞれ別々の結晶粒子としてのBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子として含有され、コンポジット構造を形成している。
そして、第2実施形態においては、誘電体層2を構成するBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の3種類の結晶粒子のうち、BaTiO結晶粒子の誘電体層2中における配置を所定のものとする。すなわち、誘電体層2を構成する複数のBaTiO結晶粒子が、対向する一対の内部電極層3,3間において、一方の内部電極層3から、対向する他方の内部電極層3まで、連続して並ばないような状態で配置される。
具体的には、誘電体層2を構成する複数のBaTiO結晶粒子を、図3(B)に示すような構成とならないように配置する。この図3(B)は、本発明の範囲外である比較例に相当する誘電体層の微細構造を示す模式図であり、誘電体層を構成する複数のBaTiO結晶粒子22BT−1,24BT−1が、対向する一対の内部電極層3,3間において、一方の内部電極層3から他方の内部電極層3まで連続して並んでいる状態を示す図である。なお、この図3(B)中においては、誘電体層を構成する複数の結晶粒子のうち、特定の粒子についてのみ、その断面に平行斜線(ハッチング)を施した。
そして、この図3(B)中、その断面に平行斜線(ハッチング)を施した結晶粒子は、一方の内部電極層3から他方の内部電極層3まで連続して並んでいるBaTiO結晶粒子であり、内部電極層3に直接接触しているBaTiO結晶粒子を、符号「22BT−1」で示すとともに、内部電極層3に接触していないBaTiO結晶粒子を、符号「24BT−1」で示した。図3(B)に示すように、この比較例においては、一方の内部電極層3(たとえば、図中の上側に位置する内部電極層3)に直接接触しているBaTiO結晶粒子22BT−1は、複数のBaTiO結晶粒子24BT−1を介して、他方の内部電極層3(たとえば、図中に下側に位置する内部電極層3)と直接接触しているBaTiO結晶粒子22BT−1まで、互いに接触した状態で、連続的に並んでいる。
すなわち、この図3(B)に示す比較例に係る誘電体層においては、一方の内部電極層3と、他方の内部電極層3とが、互いに接触した状態で、連続的に並んでいる複数のBaTiO結晶粒子22BT−1,24BT−1を介して、対峙しているような構成となっている。
そして、この図3(B)に示す比較例に係る誘電体層のように、対向する一対の内部電極層3,3間に、BaTiO結晶粒子が、連続し、並んだ状態で配置されてしまうと、高温加速寿命が低下してしまうとともに、高温加速寿命のばらつきが大きくなってしまうという問題がある。なお、この理由としては、たとえば、このBaTiO結晶粒子が、連続し、並んだ部分に、電流が集中することによると考えられる。
これに対して、第2実施形態においては、図3(B)に示す比較例に係る誘電体層とは異なり、誘電体層2を構成する複数のBaTiO結晶粒子が、対向する一対の内部電極層3,3間において、一方の内部電極層3から、対向する他方の内部電極層3まで、連続して並ばないような状態で配置されている。
すなわち、たとえば、図3(A)に示すように、対向する一対の内部電極層3,3間において、一方の内部電極層3に直接接触しているBaTiO結晶粒子22BTと、他方の内部電極層3に直接接触しているBaTiO結晶粒子22BTとが、少なくとも一粒子以上のBaTiO結晶粒子以外の結晶粒子(すなわち、SrTiO結晶粒子および/またはCaTiO結晶粒子)を介して、対峙するような構成となっている。
なお、図3(A)中においては、図3(B)と同様に、誘電体層2を構成する複数の結晶粒子のうち、特定の粒子についてのみ、その断面に平行斜線(ハッチング)を施した。具体的には、上記説明に係る結晶粒子のうち、内部電極層3に直接接触しているBaTiO結晶粒子を符号「22BT」で示し、内部電極層3に接触していないBaTiO結晶粒子を符号「24BT」で示した。また、BaTiO結晶粒子24,24の間に存在しているSrTiO結晶粒子またはCaTiO結晶粒子を符号「24ST,24CT」で示すとともに、その断面に、破線のハッチングを施した。なお、この破線のハッチングを施した結晶粒子は、SrTiO結晶粒子、CaTiO結晶粒子のいずれであっても良い。
第2実施形態では、誘電体層2を構成する複数のBaTiO結晶粒子が、対向する一対の内部電極層3,3間において、一方の内部電極層3から、対向する他方の内部電極層3まで、連続して並ばないような状態で配置されている。そのため、BaTiO結晶粒子が、連続し、並んだ状態で配置された場合における問題を有効に解決することができる。すなわち、高温加速寿命を良好なものとすることができ、しかも高温加速寿命のばらつきを有効に防止することができる。
なお、BaTiO結晶粒子が、内部電極層3,3間に、連続的に並んでいるか否かを調べる方法としては、特に限定されないが、たとえば、誘電体層2の切断面について、SEM観察を行い、得られたSEM像(反射電子像)を用いて、BaTiO結晶粒子を特定し、特定したBaTiO結晶粒子が連続的に並んでいるか否かを調べる方法などが挙げられる。
また、誘電体層2を上記した構成とするための方法としては、特に限定されず、たとえば、誘電体層2を構成するための原料として用いるBaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末の粒子径を調整する方法や、これらの分散性を調整する方法などが挙げられる。
実施形態の効果
本実施形態(第1実施形態および第2実施形態)によれば、積層セラミックコンデンサの誘電体層2を、上記した誘電体磁器組成物で構成する。
具体的には、まず、主成分としてBaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含み、かつ、これらが、それぞれ互いに実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有されたコンポジット構造を形成している。そして、第2に、誘電体層2を構成する結晶粒子の配置を特定のものとしている。そのため、高い比誘電率を有し、DCバイアス特性および容量温度特性(特に、EIA規格のX6S特性を満足できる温度特性)を良好なものとし、電圧印加時における電歪量を低減しつつ、高温加速寿命を良好なものとすることができ、しかも高温加速寿命のばらつきを有効に防止することができる。特に、本実施形態では、比誘電率を500以上と高くすることができ、しかも、容量温度特性については、EIA規格のX6S特性を満足させることができる。
また、本実施形態では、500以上という高い誘電率を実現しつつ、上記電圧印加時における電歪量に関し、以下のような特性を有する。
すなわち、一対の内部電極層3に挟まれている誘電体層2の層数をN層とした場合に、セラミックコンデンサを基板に固定し、ガラスエポキシ基板などの積層セラミックコンデンサ1が実装されるような通常の基板に固定したセラミックコンデンサに対し、AC:0.2Vrms/μm、DC:4V/μm、周波数:1kHzの条件で電圧を印加した際における素子本体10表面の振動幅で定義される電歪量を、好ましくは、0.125N[nm]未満、より好ましくは0.1N[nm]以下とすることができる。
上記電圧印加条件における、AC、DCの値は、誘電体層の厚み1μm当たりの印加電圧である。すなわち、たとえば、誘電体層の厚みを5μmとした場合における印加電圧は、AC:1.0Vrms(=0.2Vrms/μm×5μm)、DC:20V(=4V/μm×5μm)である。また、上記電歪量は、誘電体層2の厚みが変化すると、それに伴い変化する傾向にある。そのため、本実施形態においては、誘電体層2の厚みが、好ましくは1〜30μm、より好ましくは3〜10μm、特に5μmの場合に、上記所定範囲となることが好ましい。
その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した第1実施形態、第2実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る積層型電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る積層型電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有するものであれば何でも良い。
また、誘電体層2を、上述の第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成としても良い。すなわち、図2に示す電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTを50〜80%とすることにより、BaTiO結晶粒子が連続的に並ばないような構成としても良い。この場合には、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACTを高くすることにより、電極接触粒子22中におけるBaTiO結晶粒子の個数の割合を相対的に低くすることができる。そのため、効率的にBaTiO結晶粒子が連続的に並ばないような構成とすることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1(試料番号1〜5)
まず、主成分の原料として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を、副成分の原料として、MnCO(焼成後にMnOとなる化合物)、V、SiOを、それぞれ準備した。
次いで、上記にて準備した各原料を、ボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体材料を得た。なお、本実施例においては、焼成後の主成分の組成のモル比を、組成式{(BaSrCa)O}TiOで示した場合に、式中の記号x、y、zおよびmが、
x=0.20、
y=0.30、
z=0.50、
m=1.002、
となるように各主成分原料(BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末)を混合した。また、主成分100モルに対する各副成分の割合は、MnO:0.4モル、V:0.05モル、SiO:0.2モルとした(ただし、MnO、SiOについては各酸化物換算でのモル数であり、VについてはV元素換算でのモル数である。)。
次いで、得られた誘電体材料100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP)5重量部と、溶媒としてのアルコール100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
電極ペーストの作製
まず、導電体粉末としてのNi粉末と、共材としてのCaTiO粉末を準備した。そして、準備したNi粉末と、CaTiO粉末と、有機ビヒクルと、をボールミルで混合してペースト化し、電極ペーストを得た。本実施例では、Ni粉末100重量部に対する、共材の含有量が、表1(試料番号1〜5、ただし、試料番号1は共材を含有させなかった試料である。)に示す量となるように、各電極ペーストを調製した。
これらのペーストを用い、以下のようにして、図1に示される積層型セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、得られた誘電体層用ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に、グリーンシートを形成した。次いで、このグリーンシートの上に、内部電極層用ペーストを用いて、スクリーン印刷により、電極パターンを印刷し、電極パターンの印刷されたグリーンシートを製造した。なお、電極パターンの印刷されたグリーンシートの厚みは、乾燥後の厚みで6μmとした。次いで、上記のグリーンシートとは別に、誘電体層用ペーストを用いて、ドクターブレード法にて、PETフィルム上に電極パターンの印刷されていないグリーンシートを製造した。
そして、上記にて製造した各グリーンシートを次の順序にて積層し、得られた積層体を加圧することにより、グリーンチップを製造した。
すなわち、まず、電極パターンの印刷されていないグリーンシートを合計の厚みが300μmとなるまで積層した。その上に、電極パターンの印刷されたグリーンシートを5枚積層した。さらにその上に、電極パターンの印刷されていないグリーンシートを合計の厚さが300μmとなるまで積層し、積層体とした。そして、得られた積層体について、温度80℃、圧力1t/cmの条件で加熱・加圧して、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップを所定のサイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:30℃/時間、保持温度:250℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:表1に示す各温度、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス(PO:1.0×10−13〜1.0×10−11Pa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガスとした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウェッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料1〜5を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、2.5mm×2.5mm×3.2mmであり、誘電体層の厚み4.5μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
得られた各コンデンサ試料について、電極接触粒子22中および非電極接触粒子24中におけるCaTiO結晶粒子の割合ACTおよび割合BCTと、これらの差ACT−BCTと、高温加速寿命のばらつきと、を次の方法により測定した。
割合A CT 、割合B CT 、およびこれらの差A CT −B CT
電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合ACT、および非電極接触粒子24中におけるCaTiO結晶粒子の個数の割合BCTは、上述した第1実施形態に記載した方法に従って測定した。また、得られた結果より、差ACT−BCTも併せて算出した。なお、測定に際しては、それぞれ、20個の電極接触粒子22および非電極接触粒子24を用いた。結果を表1に示す。
高温加速寿命のばらつき
まず、得られたコンデンサ試料を、175℃で8V/μmの直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより高温加速寿命を測定した。そして、この測定を100個のサンプルについて行い、結果を平均することにより、100個のサンプルの平均寿命時間を算出し、平均寿命時間に対して、寿命時間が20%以下となったサンプルの割合を求め、これを高温加速寿命のばらつきとした。なお、本実施例では、印加開始から絶縁抵抗が2桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。高温加速寿命のばらつきは低い方が好ましい。結果を表1に示す。
また、本実施例では、上記評価に加えて、比誘電率、DCバイアス特性、容量温度特性および電圧印加による電歪量を、下記の方法により測定、評価した。その結果、本実施例のコンデンサ試料は、いずれも下記に示すような各基準を満足していることが確認できた。
比誘電率ε
まず、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率ε(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、いずれの試料も、500以上となり良好な結果であった。
DCバイアス特性
コンデンサ試料に対し、一定温度(25℃)において、25V(5.6V/μm)の直流電圧を印加した際の比誘電率の変化(単位は%)を算出することにより、DCバイアス特性を測定した。本実施例では、DCバイアス特性は、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値とした。本実施例では、いずれの試料も、−20%以上となり良好な結果であった。
容量温度特性(X6S特性)
容量温度特性は、次の方法により測定、評価した。すなわち、まず、コンデンサ試料について、−55℃、25℃および105℃の各温度における静電容量を測定し、25℃における静電容量に対する−55℃および105℃での静電容量の変化率△C(単位は%)を算出した。そして、静電容量の変化率が、EIA規格のX6S特性(−55〜105℃、ΔC=±22%以内)を満たしているか否かを評価した。本実施例では、いずれの試料も、容量温度特性がX6S特性を満足し、良好な結果であった。
電圧印加による電歪量
電圧印加による電歪量は、次の方法により測定、評価した。すなわち、まず、コンデンサ試料を、所定パターンの電極がプリントしてあるガラスエポキシ基板にハンダ付けすることにより固定した。次いで、基板に固定したコンデンサ試料に対して、AC:0.2Vrms/μm、DC:4V/μm、周波数:1kHzの条件で電圧を印加し、電圧印加時におけるコンデンサ試料表面の振動幅を測定し、これを電歪量とした。なお、コンデンサ試料表面の振動幅の測定には、レーザードップラー振動計を使用した。また、本実施例では、10個のコンデンサ試料を用いて測定した値の平均値を電歪量とした。電歪量は低いほうが好ましく、本実施例では、いずれの試料も、電歪量が5nm以下となり、良好な結果であった。
実施例2(試料番号6)
電極ペーストの共材として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を用いるとともに、これらの比率を、モル比で、BaTiO粉末:SrTiO粉末:CaTiO粉末=0.20:0.30:0.50とした以外は、実施例1の試料番号4と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様に評価した。すなわち、実施例2においては、共材の組成を、誘電体層の主成分組成と同じとした。結果を表1に示す。
Figure 0004788428
評価
表1より、電極ペーストに含有させる共材として、CaTiO粉末を用い、Ni粉末100重量部に対する添加量を5〜20重量部とした試料番号3〜5は、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の割合ACTが50〜80%の範囲となった。そして、これら試料番号3〜5は、高温加速寿命のばらつきが5.0%以下となり、良好な結果であった。なお、これら試料番号3〜5においては、いずれも、BaTiO結晶粒子が、一方の内部電極層から、対向する他方の内部電極層まで、連続して並んでいる状態(すなわち、図3(B)の状態)は確認されなかった。
一方、電極ペーストに共材を含有させなかった試料番号1、およびNi粉末100重量部に対する共材の添加量を1重量部とした試料番号2においては、電極接触粒子22中におけるCaTiO結晶粒子の割合ACTが50%未満となる結果となった。そして、これら試料番号1,2は、高温加速寿命のばらつきが5.0%を超え、信頼性に劣る結果となった。また、電極ペーストに含有させる共材として、BaTiO粉末、SrTiO粉末およびCaTiO粉末を用い、これらの比率を、誘電体層の主成分組成と同じ比率とした試料番号6においても、CaTiO結晶粒子の割合ACTが50%未満となる結果となった。そして、この試料番号6は、高温加速寿命のばらつきが5.0%を超え、信頼性に劣る結果となった。
なお、これら試料番号1,2,6においては、BaTiO結晶粒子が、一方の内部電極層から、対向する他方の内部電極層まで、連続して並んでいる状態(すなわち、図3(B)の状態)となっているサンプルが多数確認された。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2は第1実施形態に係る誘電体層の微細構造を説明するための図である。 図3(A)、図3(B)は第2実施形態に係る誘電体層の微細構造を説明するための図である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

Claims (6)

  1. 誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
    前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
    前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO 、SrTiO およびCaTiO の組成モル比を、組成式{(Ba Sr Ca )O} TiO で示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
    0.195≦x≦0.225、
    0.255≦y≦0.305、
    0.465≦z≦0.535、
    x+y+z=1、
    0.985≦m≦1.0095、
    であり、
    前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
    前記内部電極層に直接接触している粒子を、電極接触粒子とした場合に、
    前記電極接触粒子中における、BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の合計の個数に対する、CaTiO結晶粒子の個数の割合が、60〜80%であることを特徴とする積層型電子部品。
  2. 誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
    前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
    前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO 、SrTiO およびCaTiO の組成モル比を、組成式{(Ba Sr Ca )O} TiO で示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
    0.195≦x≦0.225、
    0.255≦y≦0.305、
    0.465≦z≦0.535、
    x+y+z=1、
    0.985≦m≦1.0095、
    であり、
    前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
    前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子が、対向する一対の前記内部電極層間において、一方の内部電極層から、対向する他方の内部電極層まで、連続して並ばないように配置されていることを特徴とする積層型電子部品。
  3. 誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品であって、
    前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物で構成され、
    前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO 、SrTiO およびCaTiO の組成モル比を、組成式{(Ba Sr Ca )O} TiO で示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
    0.195≦x≦0.225、
    0.255≦y≦0.305、
    0.465≦z≦0.535、
    x+y+z=1、
    0.985≦m≦1.0095、
    であり、
    前記誘電体層を構成する複数の前記BaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子は、前記内部電極層に直接接触している粒子と、前記内部電極層に接触していない粒子と、からなり、
    前記内部電極層に接触していない粒子を非電極接触粒子とした場合に、
    対向する一対の前記内部電極層間において、一方の内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子と、対向する他方の内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子と、が複数の非電極接触粒子を介して連結されており、各内部電極層に直接接触しているBaTiO結晶粒子を連結している複数の非電極接触粒子には、少なくともSrTiO結晶粒子またはCaTiO結晶粒子が含有されていることを特徴とする積層型電子部品。
  4. 前記誘電体層を構成する複数の前記SrTiO結晶粒子および前記CaTiO結晶粒子の平均結晶粒子径が、それぞれ、前記誘電体層の厚みの1/10〜1/3の大きさである請求項1〜3のいずれかに記載の積層型電子部品。
  5. 前記誘電体層の厚みが1〜30μmである請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品。
  6. 誘電体層および内部電極層が交互に積層された構成を有する積層型電子部品を製造する方法であって、
    焼成後に誘電体層となるグリーンシートを形成する工程と、
    電極ペーストを用いて、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
    前記グリーンシートおよび電極ペースト膜を交互に積層し、グリーンチップを得る工程と、
    前記グリーンチップを焼成する工程と、を有し、
    焼成後の前記誘電体層が、主成分として、BaTiO、SrTiOおよびCaTiOを含有し、かつ、前記BaTiO、SrTiOおよびCaTiOが、それぞれ互いに、実質的に固溶せず、複数のBaTiO結晶粒子、SrTiO結晶粒子およびCaTiO結晶粒子の形態で含有され、コンポジット構造を形成している誘電体磁器組成物からなり、
    前記誘電体磁器組成物に主成分として含有される前記BaTiO 、SrTiO およびCaTiO の組成モル比を、組成式{(Ba Sr Ca )O} TiO で示した場合に、前記式中の記号x、y、zおよびmが、
    0.195≦x≦0.225、
    0.255≦y≦0.305、
    0.465≦z≦0.535、
    x+y+z=1、
    0.985≦m≦1.0095、
    であり、
    前記電極ペースト膜を形成するための電極ペーストとして、導電体粉末と、CaTiO粉末からなる共材と、を含む電極ペーストを用い
    前記電極ペースト中における、前記共材の含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、5〜20重量部であることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
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