JP4788278B2 - トンネル掘削面の安定化工法 - Google Patents
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Description
ところが地山が砂層を主体とする砂地山の場合、掘削面に直接コンクリート吹付けを行うと、その吹付圧で掘削面が剥落したり、吹き付けたコンクリートが掘削面の砂とともに剥落してしまい、また吹付けたコンクリートが掘削面に良好に付着しないといった問題が生じていた。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、コンクリート吹付けに代えてアクリル系エマルジョンを皮膜養生材として吹き付けるもので、コンクリート吹付けに先立つ事前処理乃至予備処理として吹付材を掘削面に吹き付けるといったものではなく、特許文献1或いは本発明とは工法の異なったものである。
A液:アクリル酸又はメタアクリル酸の1価又は2価の金属塩水溶液
B液:アルミニウム水溶性塩の水溶液
C液:重亜硫酸塩水溶液
ここでA液のアクリル酸又はメタアクリル酸((メタ)アクリル酸)の1価又は2価の金属塩は互いに重合反応して重合鎖を形成する。
一方B液のアルミニウム水溶性塩は重合鎖を結合する働きを有し、硬化体の強度を高める働きをなす。
尚C液の重亜硫酸塩は重合触媒としての働きをなす。
従ってその後においてコンクリート吹付けを行ったときに掘削面を剥落させることがなく、良好にコンクリート吹付けを行うことができる。
また吹き付けた薬液が速やかに浸透及び硬化反応するため吹付け作業を短時間で行い得、しかも剥落を生ぜしめることなく良好にコンクリート吹付けを行い得ることから、掘削面の安定化施工のための所要時間を短縮化することができる。
加えて上記薬液はトンネル内で火災を起す危険もなく、またトンネル内の作業環境を特に悪化させることもなく、トンネル内を良好な作業環境に保持することができる。
ここでアルカリ金属塩としてはナトリウム塩が、またアルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩が好適である。
またこのA液の濃度は10〜45重量%の範囲内とするのが好ましく、特にアルカリ土類金属塩の場合は15〜45重量%の範囲内とするのが好ましい。
これらは単独で若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。
またB液の濃度としては10〜70重量%が好ましく、特に30〜50重量%の範囲内とすることが好ましい。
他方C液の重亜硫酸塩としては重亜硫酸のアルカリ金属塩を用いることができ、特に重亜硫酸のナトリウム塩,カリウム塩が好適である。
このC液の濃度は0.5〜10重量%の範囲内としておくことが望ましく、特に1〜5重量%の範囲内としておくことが望ましい。
B液の混合比が0.9未満であると薬液の反応硬化体の強度が不十分となる。
一方1.5を超えると薬液の浸透性が低下する。
このB液のより好ましい混合比は1.0〜1.3の範囲内である。
このC液のより好ましい混合比は1.0〜1.3の範囲内である。
C液の重亜硫酸塩は重合触媒として働くものであり、従ってその濃度を調節することで薬液の反応硬化速度を適宜に調節することが可能である。
尚本発明においては必要に応じて骨材その他を配合しておくことが可能である。
即ちゲルタイムが30秒以内となるように薬液を調製しておくことが望ましい。
薬液のゲルタイムがこれよりも長くなると、特に上向きの吹付けの際に、吹き付けた薬液が垂れ下がってつらら様に硬化してしまう現象を生じる。
しかるに請求項3に従って薬液のゲルタイムを30秒以内としておくことで、こうした現象の発生を良好に回避することができるとともに、表層に浸透した薬液が速やかに硬化反応することによって、薬液が硬化するまでの間に掘削面が剥落してしまうといったことを良好に防止することができる。
尚、薬液のゲルタイムが短か過ぎるとノズル閉塞等の不具合を生じるため、ゲルタイムは短くても5秒以上となしておくことが望ましい。
薬液の粘度をこのような低い粘度となしておくことにより、掘削面に吹き付けた薬液を速やかに掘削面の表面から奥部に、即ち表層に浸透させることができる。
また薬液をこのような低い粘度としておくことで、霧化ノズルから薬液を霧化して掘削面に吹き付ける際、薬液を良好に霧化することができる。尚薬液の粘度の下限値は好ましくは1mPa・s以上としておく。
エアの吹出しによって薬液を霧化し、吹き付けるようになした場合、そのエア圧によって掘削面が剥落を生じてしまう恐れがある。
しかるにこの請求項5に従ってエアレスで液の吐出圧により薬液を霧化して霧化ノズルから吹き付けるようにすれば、掘削面のエア圧による剥落を防止して良好に薬液の吹付けを行うことができる。
図1において、10は砂層を主体とした砂地山で、本実施形態では掘削機等によってトンネルを掘削し、その際に掘削面12に対して先ず図2に示しているようにアクリル酸系薬液を吹付装置14を用いて吹付処理する。
ここでA液タンク20,B液タンク22,C液タンク24は、それぞれの液に鉄分が混入しないようにステンレス製のものが用いられている。
尚これらA液タンク20,B液タンク22,C液タンク24として、鉄分を混入させる恐れのない他の材質から成る容器を用いることも可能である。
またこれらホース26,28,30とは反対側において吐出管40がカプラ42にて合流混合部38に接続されており、A液タンク20,B液タンク22,C液タンク24からホース26,28,30を通じて送られたA液とB液とC液とが、この合流混合部38で合流及び混合された上、吐出管40へと送られる。
吐出管40の先端部には霧化ノズル44が設けられており、吐出管40からの混合液、即ちアクリル酸系薬液が霧化されて掘削面12へと霧状に吹き付けられる。
ただし鉄分を混入させる恐れのないものであれば他の材質でこれを構成することもできる。
本実施形態において液中に鉄分を混入させないようにしているのは、鉄分が液中に混入するとその鉄分によって混合液、即ちアクリル酸系薬液の硬化時間(ゲルタイム)が影響され、硬化時間にばらつきが生じるのを防ぐためである。
そのため本実施形態では、霧化ノズル44として液の吐出圧でこれを霧化することのできるノズルが用いられている。
本実施形態において、霧化ノズル44から霧状に掘削面12に吹き付けた薬液は、吹付後速やかに表層に浸透及び硬化反応して表層をシェル化する。
この重合触媒としてのC液は予めB液と混合しておいて、その混合状態で混合霧化装置18へと送ってA液と混合させるようになすことも可能であるが、この場合C液の混合によってB液自体の反応が進んでしまい、液ライフが短くなってしまう。
しかるにこの実施形態ではA液とB液とC液とを、それぞれ単独に混合霧化装置18へと供給して、そこでそれぞれの液を混合し、霧化ノズル44で霧化して吹き付けるようにしているため上記の問題を生じない。
更にまた予めA液とB液とC液とを人手で混合しておいて、その混合液を混合霧化装置18に送って吹付けを行う場合に比べ、施工現場での人手による液の混合作業を省くことができる。
このシェル46は、砂地山10の表層を構成する土粒子と、そこに浸透して硬化した薬液の反応硬化体とで構成されている。このシェル46は所定の強度を有するもので、かかるシェル46の形成により掘削面12が良好に形状保持され、続いて行われる1次コンクリート吹付けまでの間、更に1次コンクリート吹付けの際に掘削面12が剥落するのが良好に防止される。
このコンクリートの層48によって掘削面12が閉合状態とされ安定化される。
尚、実際の施工にあたっては1次コンクリート吹付け後、H型鋼から成るアーチ状の支保工が設置され、2次コンクリート吹付けがその後において行われる。
そして1次及び2次コンクリート吹付けによって形成された図3に示すコンクリートの層48が、砂地山10へのロックボルトの設置によって砂地山10と一体化され、引き続いて掘削機等によるトンネルの掘進が行われる。
そして最終的に型枠へのコンクリートの流し込み及び固化によって、所定厚みの覆工コンクリートが形成され、トンネル構築物が構成される。
また吹き付けた薬液が速やかに浸透及び硬化反応するため吹付け作業を短時間で行い得、しかも剥落を生ぜしめることなく良好に1次コンクリート吹付けを行い得ることから、掘削面12の安定化施工のための所要時間を短縮化することができる。
また上記薬液はトンネル内で火災を起す危険もなく、またトンネル内の作業環境を特に悪化させることもなく、トンネル内を良好な作業環境に保持することができる。
A液 35%アクリル酸マグネシウム水溶液(20℃における比重1.19)
B液 40%ポリ塩化アルミニウム水溶液(20℃における比重1.33)
C液 1.0%重亜硫酸ナトリウム水溶液(20℃における比重1.00)
混合粘度(mPa・s) 10
ゲルタイム(硬化時間)(秒) 20
混合比(A:B:C、重量比) 1:1.2:1.2
混合比重(理論値) 1.16
発泡倍率 無発泡
尚、液の吐出量(混合液の吐出量)は2kg/分とした。
その際、空洞50内面からの砂の剥落は殆ど認められなかった。
このシェル51の厚みTを測定したところ約10mmであった。
このシェル51は所定の強度を有しており、取扱中良好に形状を保持し崩れることがなかった。
また薬液の吹付け及び硬化反応によって形成されたシェル51の内面にコンクリート吹付けを行ったところ、コンクリート吹付けを良好に行うことができた。
また薬液のゲルタイムが20秒と短く且つ浸透性の高いものであるため、薬液の吹付けの際に、図5に示すような液垂れの現象を生じるのを防止することができた。
図5において、52はその液垂れ及びその後の硬化によって生じたつらら様の硬化体を表している。
44 霧化ノズル
46,51 シェル
48 コンクリートの層
Claims (5)
- トンネル掘削面にコンクリート吹付けを行ってコンクリートの層を形成し、該掘削面を閉合状態として安定化させるトンネル掘削面の安定化工法において、
前記コンクリート吹付けに先立って、下記のA液,B液,C液の混合液であるアクリル酸系薬液をシェル形成薬液として前記掘削面に霧化ノズルから霧状に吹き付け、該薬液を該掘削面の表層に浸透させるとともにそれらA液,B液,C液を反応させて硬化させることにより該表層をシェル化せしめ、しかる後前記コンクリート吹付けを行うことを特徴とするトンネル掘削面の安定化工法。
A液:アクリル酸又はメタアクリル酸の1価又は2価の金属塩水溶液
B液:アルミニウム水溶性塩の水溶液
C液:重亜硫酸塩水溶液 - 請求項1において、前記A液とB液とC液との混合比が、容量基準でA液:B液:C液=1:0.9〜1.5:0.9〜1.5であることを特徴とするトンネル掘削面の安定化工法。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記薬液のゲルタイムが30秒以内であることを特徴とするトンネル掘削面の安定化工法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記薬液の粘度が25mPa・s以下であることを特徴とするトンネル掘削面の安定化工法。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記霧化ノズルからの前記薬液の吹付けを、エアレスで液の吐出圧により霧化して行うことを特徴とするトンネル掘削面の安定化工法。
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